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マスター:三咲 都李
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2012/06/11


みんなの思い出



オープニング

●転入しました
 久遠ヶ原学園の転入生は毎日山のように来る。
 空き教室は瞬く間に学級として椅子や机が運び込まれ、さらに転入生を迎え入れる準備をする。
「転入生なんて、インパクトないなぁ‥‥」
 最近、ここ久遠ヶ原に転入してきた少女はそうため息をついた。

「アイドル志望です!よろしく!」

 インパクトのある挨拶をしたつもりだったが、その日は他にも転入生が3人。
 さらに選択授業でクラスメイトはバラバラの教室に行ってしまうし、翌日にはまた転入生が入ってきた。
 もう誰が誰やらこちらのほうが混乱だ。
 はぁ‥‥っとため息をつく。
 どうにかしてまず、この学園に慣れること。そして友達を作ること。
 これが大きな壁として少女の前に立ちふさがったのだった。

●友達を作りましょう
「先生!このポスター、掲示板に貼ってもいいですか!?」
 職員室に駆け込んだ少女は、手に大きな紙の筒を持っていた。
「なんだこりゃ?」
「友達を作りたいから、ちょっと皆で遊べないかなって。ね?貼っちゃダメですか?」
 教師は少女から紙を受け取ると広げた。
 大きな子供らしい字で募集をかける文面が書いてある。
「‥‥ま、いいんじゃないか。自分で何か考えて行動を起こすことも必要だろう」
 教師はそう言うと「頑張れよ」と少女を激励した。

 かくて、少女はポスターを学園入り口にデカデカと貼り出した。

『求む!だるまさんがころんだ参加者!
 みんなで遊ぼう、だるまさんがころんだ
 やり方は簡単。鬼が後ろを向いている間に進み、振り向いた時は止まって動かない
 最後に鬼に捕まらなければ勝ち!
 ボクと勝負だ!』 


 ざわざわと集まり始めた生徒たちに向かって少女は宣言した。
「鬼はボク、中島 雪哉(jz0080)がやるからね!だから、ボクと友達になってよ!」


リプレイ本文

●この指とまれ!
「‥‥だるまさんがころんだ‥‥?」
 ショートパンツにパーカー姿のNicolas huit(ja2921) が貼り出されたポスターに首を傾げた。
 いったいこれは何のことだろう??
 一方、ポスターに立ち止まったアーデル・ツヴァイ(ja8209)は一見クールな顔してポスターを見つめた。
 指定された時間は今日の放課後この場所で。
 アーデルは一通り目を通すとその場から何事もなかったかのように立ち去った。

 しかし、アーデルはその放課後、その場所に現れた。
 そんなアーデルの肩をポンと叩く者がいた。名を楯清十郎(ja2990)と名乗った。
「これはまた懐かしいです。小さい頃は友達とよく遊びましたね」と楯はにこやかに話しかけてくる。
 見れば既に何人か集まっている。
「凪ちゃん、ニコラくんも来たんだね」
 雪成 藤花(ja0292)は友達を見つけて微笑んだ。ニコラはNicolas huitの愛称である。
「トーカもきたんだね!」
 ニコラは満面の笑みで雪成の手を取って飛び跳ねた。
 雪成に呼ばれた澤口 凪(ja3398)は「藤花先輩!」とにこにことツインテールを揺らして小走りに近寄ってきた。
「雪成のおねちゃん、おひさしぶぅりなの」
 ぶんぶんと雪成たちに手を振る黒い羊のリュックを背負ったぴっこ(ja0236)も駆け寄ってきた。
「なんかみなで あそぶなぁの? ぴこも いれての〜」
 と、足元にころころとサッカーボールが転がってきた。
「ごめんごめん!君たちも参加するの?僕、露草 浮雲助(ja5229)だよ。よろしくお願いします〜!」
 にこにこと笑顔の絶えない露草は屈託なくそう自己紹介した。
「ところで、主催者がまだ来ていないみたいだけど」
 桐村 灯子(ja8321)が辺りを見回す。表情には出ていないが心配しているのかもしれない。
「ご、ごめん!遅くなって‥‥」
 白い重そうな袋を両手に抱え、ようやく中島が現れた。
「じゃあ、とりあえず名前教えてもらえますか?あ、ボク、中島 雪哉(jz0080)です」
 中島がぴょこんと頭を下げると皆、口々に自己紹介をした。それが終わったあと、澤口が言った。
「えっと、会ったばかりなのだけど。名前で呼んでもいいかな?」
「も、もちろんです!あの、今日はだるまさんがころんだに集まってくれてありがとう!」
 中島がそういって深々と頭を下げた。
 とニコラとぴっこが口を揃えて言った。

「だるまさん〜? それおいちーなの?」
「おー…だるまさんがころんだ…って、なんだ?」

 どうやらそこから説明する必要があるようだった…。

●始めのいーっぽ
「おー…つまり『un deux trois soleil』と同じのようなもの…」
『un deux trois soleil』がよくわからないが、みんなが説明しただるまさんがころんだにニコラはやや納得したようだった。
 楯が言った。
「魔具をポーズに使ってもいいですかね?あ、戦いをするわけではないですよ?ちょっとした演出ですよ」
「なら、私も使おうかしら」と桐村が言い、どうやら一同何か考えるところがありそうだった。
「うん。皆が危なくないなら大丈夫じゃないかな‥‥何に使うのかすごく気になるけど」
 中島がそう言うと、アーデルはクールな顔でふっと微笑んだ。
「それは始まってからのお楽しみだ」
 これはとてつもなく期待が高まる。
「じゃ、ここの線からスタートで、ボク鬼やるから!」
 つま先で軽く地面に線を引っ張って雪哉はだーっと手ごろな壁に手をついた。
「よーし!じゃ、いっくよー!始めの一歩!」

「だるまさんが…ころんだ!」
 わずか3秒、中島が背を向けているうちに世界は変わっていた。
 頭にサッカーボールを乗せて微動だにせぬ露草。実はサッカーのプロ!?
 雪成はピコピコハンマーをぴっこに向かって振り上げ、対するぴっこは釘バットを振り上げて叩こうとしている。2人に何があった!?
 桐村はハリセンを構え、ニコラに突っ込みを入れるポーズ。
 そしてニコラは‥‥(「・ω・)「‥‥
「おっとっと‥‥!」
 止まる途中にポーズを取ろうとして勢い余ってこけてしまった。
「た、叩いてないわよね?」
 桐村が心配そうにニコラに声をかけると、ニコラはにこっと笑った。
「うん、僕がバランス崩しただけだよ。灯子のせいじゃないよ」
「ニコラ先輩、うーごいた!」
 中島は嬉しそうにニコラの名前を呼んだ。
 澤口は何故かもふらのぬいぐるみを頭に乗せている。なんか可愛い。
 楯はクロスファイアを構え、アーデルに向かい腕をクロスさせてポーズを取っている。
 対して、アーデルはリボルバーを構え、楯に向かってどや顔で格好良くポーズを決めた。たった今。
「アーデル先輩、うーごいた!」
「!?しまった!」
 かくてニコラとアーデルは鬼に捕まった。
「1回目で動いてしまうとは‥‥」
 アーデルはそういいながら鬼のほうへと歩いていく。
「ざんねんー‥‥やっぱり決めのポーズって思いつかないよね」
 ニコラはそういいながらスタート地点へと歩いて‥‥え!?
「ニコラさん!鬼のほうに行かないと」
 澤口がそう声をかけると、ニコラはえ?っと首を傾げた。
「フランスではスタート地点に戻る‥‥うわわわわ」
「日本では、鬼に捕まっちゃうんですよ」
 いつの間にか来ていた中島がニコラの手を取って、所定の位置に戻った。
「どういう事だった…」

 中島は再び壁に顔を伏せた。右手にニコラとアーデルが繋がっている。
「だーるまさんがころんだっ」
 4秒後の世界は再び、激変していた。
 ボールがころころと露草の前を転がっていく。4秒の間にもしかしたらドリブルしていたのだろうか?
 雪成はヨーヨーが動いてはいるものの、本人が動いていないためセーフ。笑顔で止まっているのが不思議なほどだ。
 楯が真ん中でクロスファイアーを落としてしゃがんでいる両脇で、澤口が構えた銃口と桐村の銃口がそれぞれ楯を狙っている。し○ら後ろ〜!!

「たっちぃーの」

「へっ?」
 ハッと中島が下を見ると、突っ伏したぴっこがにこっと笑って中島の足を触っていた。
 捕虜解放の合図である!逃げるべし!
「ひー」
「鬼さんこちら〜」
「にゃー!こっち来るな!」
「あ‥‥あ‥‥止まれー!」
 中島が慌てて号令をかけると皆ぴたっと足を止めた。
 中島と一番近い距離にいるのはアーデルだったので、アーデルとじゃんけんをすることにより中島の移動距離5歩と決まった。
「1‥‥2‥‥3‥‥4‥‥5!」
 手をぶんぶん振り回す。誰にも届かない。
「ボクの‥‥負けです」
 中島はガックリと肩を落として苦笑いした。

●ちょっと休憩
「ぴっこ しんぞー ばくばく だだなの」
 ぴっこは胸を抑えそう言った。桐村は「すごい早さだったわね」とわずかに微笑んだ。
「だかあ のどかあいたなーの」
 ぴっこがそう言うと、中島は「ちょっと待って」と最初に持ってきた白い袋を取り出した。
「運動したあとは水分補給だよ。はい、どーぞ」
 スポーツドリンクはまだ少し冷たかった。中島はそれを配りながら言った。
「ボクさ、誰もきてくれないんじゃないかって思ってたから嬉しかったよ。あの‥‥よかったらボクと友達になってくれるかな?」
 そう言った中島にアーデルはスポーツドリンクを受け取りながら言った。
「俺もまだ転校して来たばかりで知り合いらしい知り合いもいないし、この機会に交流してみるのも悪くないかもと思ってきた。交流があれば友達にもなれるだろう」
「わっ私は、最初からそのつもりだったよ?雪哉ちゃん」
 もふらのぬいぐるみを抱えて、澤口はコクコクと頷いた。
「この学校は人も多くて大変だけど、大丈夫 。みんなと仲良くなれるよ」
 雪成の言葉は、優しくとても安心できた。
 楯はスポーツドリンクを受け取ると、雪哉に握手を求めた。
「一緒に遊んで『また一緒に遊びたい』とお互いが思えたなら、もう友達なんですよ」
「‥‥じゃあ、また遊んでくれる?」
「また遊ぶ時は呼んで下さいね。もちろん遊ぶ時以外でも歓迎しますよ」
 照れたような笑顔を見せて、中島はその手を掴んだ。温かかった。
 そしてさらに楯は後ろを振り向いた。
「見ているより一緒に遊んだ方が楽しいですよ。一緒に遊びませんか」
 気がつけば、いつの間にかギャラリーがたくさん。どうやら中島のポスターを見て集まってきた生徒たちのようだ。
 楯はその子たちに呼びかけた。
 するとその子達も「実は友達が欲しくて…」と次から次へと参加者が増えた。
「みんなで友達になれるといいな〜!よーし、もう一回やろう!」
 露草はそう言うとクルクルッとサッカーボールを回した。
「そうね。たくさんいたほうが遊びがいもあるわ」
 桐村がフッと目を細めた。そこはかとなく勝利への自信を感じる。
「では今度こそだるまさんがころんだを本気でやるとこうなる、ということを教えてやろう」
 アーデルは立ち上がると、クールにそう言った。
「びしっとポーズ決めよ〜!」
 露草はサッカーボールをぽんぽんと蹴って、びしっとボールを止めた。
 周りの生徒たちからおぉ〜っと小さく拍手が起こった。
「今日は楽しいねー、お友達も増えたので、とっても幸せの日だ!」
「友達が出来るって‥‥いいですね」
 ニコラの満面の笑顔に澤口も思わず笑顔になった。
「じゃあ、今度はわたしが鬼をやりたいな、いいかな?」
 雪成がそう言うと、中島は動揺した。
「で、でもボクが誘ったのに…」
「中島さん1人が鬼なのもつまんないでしょ?みんなで楽しんでこそのゲームなんだから!」
 にっこりと笑った雪成にぴっこが言った。
「ぴこも おにぃさん やるなぁの!」
「じゃあ、順番ね?ぴっこくん」
 雪成の言葉にぴっこはわーいと喜んで駆け回った。

●皆で一緒に
「はじめのいーっぽ!」
 雪成を鬼に、メンバーもたくさん増えてもう一度だるまさんがころんだは始まった。

「だるまさんがこーろんだ!」
 振り向いた雪成。
 なぜか中島とぴっこがじゃれあっていた。
「中島さん、ぴっこくん、捕まえた」
 ぴっこはそれを聞くとしゃがんで丸くなり「くわくわくわくわ」とぷるぷる怯えてしまった。
 そんなぴっこの背中をぽんぽんっと中島は撫でた。
「大丈夫、皆が助けてくれるから。一緒に行こうよ」
 ぴっこと中島は手を繋いで鬼と手を繋いだ。
 助けに来てくれる仲間の方へ伸びをしたり手を振ったりするぴっこ。
 それを見て笑顔になったり、思わず動いて捕まってしまうものもいた。

「だーるまさんがころんだ!」
 また振り返った雪成がそこで見たものは‥‥!
 両端に楯とアーデルが武器を小脇に抱えて捧げ持ち、その内側の澤口はトンファー、桐村がマジカルステッキを中央に向けて構える。
 そしてその中央では、ニコラがさっと(/・ω・)/構えている。
「なに戦隊‥‥?」
 即席にしてその絶妙のバランスと安定感あるポーズがなんとも神々しい。
 その横で露草がサッカーボールをリフティングしていた。
「露草さん、動いてますよ」と他の生徒に指摘され、露草はハッと我に返った。
「しまった〜!」
 照れながら露草が雪成の元へ行く間、雪成は中島に尋ねた。
「ねぇ、中島さんはここにくるまでどんな生活してたの?」
「普通の小学生だよ。今までの友達と離れるの寂しかったけど…でも、ボクここにこれてよかったよ」
 にっこりと笑った中島に雪成は皆に呼びかけた。
「ねぇ、あとでみんなで記念に撮影したいな!きっといい思い出になるから!」
 ニコラが「うん、それいいね!」にこっと笑った。
 澤口はちっこいほうなので前に並ぼうかなと考えながら「賛成です」と言った。
「記念写真か‥‥うん、いいアイデアだね!僕はいいと思うな」
 露草が捕まった者たちの最後尾に繋がりながら、ニコニコと笑った。
「アーデルさん、写真だそうですよ。‥‥何か妙案はおありですか?」
「写真か‥‥。清十郎よ。後々残ることを考えると、こういったノリのポーズは出来ないと思うんだが?」
 男2人がそんな話をする中、桐村は静かに言った。
「その案には賛成だわ。でも、とりあえずこの姿勢は辛いから次のターンに入ってもらってもいいかしら?」
「あ、ごめん!‥‥勿論写真の真ん中は中島さんだよ」
 慌ててターンに入った雪成は、中島にそう囁いた。
「ぴこも おしゃしん とぉるなの」
 ぶらぶらと中島と繋いだ手を揺らすぴっこを見て、「皆、ありがとう」と中島は笑った。


 そんな様子を見ていた1人の教師がいた。雪哉にポスターの掲示許可を出した教師だ。
 友達を作るということは、この学園では戦闘において信頼し、助け合える仲間を作ることになる。
 本来なら少しずつそれは勝ち得ていくものだが‥‥あいつらはそれを遊びの中で一気にやってのけた。
 これは評価に値することだ。
「ちょっとご褒美を考えておくかな」
 教師はそう言うと、まだ楽しげに遊ぶ生徒たちを見て微笑んだ。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

一太郎のそこそこチーム・
ぴっこ(ja0236)

中等部1年4組 男 ダアト
思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
お洒落Boy・
Nicolas huit(ja2921)

大学部5年136組 男 アストラルヴァンガード
道を切り開く者・
楯清十郎(ja2990)

大学部4年231組 男 ディバインナイト
君のために・
桐生 凪(ja3398)

卒業 女 インフィルトレイター
ゆるきゃらおばけ・
露草 浮雲助(ja5229)

大学部3年325組 男 阿修羅
撃退士・
アーデル・ツヴァイ(ja8209)

大学部6年65組 男 インフィルトレイター
余暇満喫中・
柊 灯子(ja8321)

大学部2年104組 女 鬼道忍軍