●本日は晴天なり
その日は晴天だった。スタート地点である海岸にはトライアスロンの参加者がスタートの時を待つ。
「スポーツ日和のいい天気だね!」
ようやく新しい水着を着ることができた中島 雪哉(jz0080)が顔を輝かせている。
「スポーツの秋ィ‥‥って言いたいけど、そろそろこの季節になると秋って感じじゃないわよねェ‥‥」
白い肌と黒く長い髪に映えるのは白スクール水着。その胸元に『くろゆり』と書いてあるので、それを言ったのは間違いなく黒百合(
ja0422)本人である。
「社会的には11月はまだ秋でも大丈夫ですよ。‥‥秋晴れの日は運動するに限りますね」
雁鉄 静寂(
jb3365)は念入りな準備体操をこなしながら、そう言った。
実際、ここまで天気が良い日ならば冬であろうと体が動かしたくなる気分になれる。
「そうねェ‥‥まァ、楽しみましょうかァ♪」
黒百合の笑顔に思わずつられて笑顔がこぼれる。‥‥普段の黒百合を知っている者なら『何か裏が‥‥?』と思われているかもしれないが‥‥。
「悠‥‥頑張って‥‥」
「もちろんだよ、威鈴。たまにはイイトコ、見せないとな!」
一方こちら、浪風 悠人(
ja3452)とその妻・浪風 威鈴(
ja8371)は仲睦まじく準備体操を行う。威鈴は今回悠人の応援ということで競技にはでない。だが、準備は万端である。
「‥‥怪我とかしないように‥‥でも、準備はしてあるから‥‥ゴールで待ってる」
不幸属性の悠人を気遣いつつ、可憐に健気に微笑む威鈴。そんな威鈴の姿に悠人は押さえきれぬ衝動‥‥をトライアスロンへの優勝意欲へと昇華させた!
「威鈴。俺、頑張るよ!」
夫婦の絆は果たして、優勝の旗をはためかせることができるのであろうか?
川澄文歌(
jb7507)と木嶋香里(
jb7748)はフロル・六華(jz0245)と中島をその会場に見つけ、駆け寄った。
「こんにちは、雪哉ちゃん。新しい水着? 可愛いね♪」
「! はい! これのためにボクは‥‥頑張ります!」
おニューの水着を褒められて、中島は大変喜んでいる。
「文歌の水着、雪哉のとは違います」
フロルの疑問に川澄は答える。
「これはウエットスーツっていうの。でも、中にちゃんと普通の水着も着てるんだよ。‥‥六華ちゃんも来てたんだね」
「はい、文歌。俺、雪哉と約束しました」
フロルはそう言って笑う。少し前のことなど忘れてしまったかのように。
「‥‥その後、変わったこととかない? 記憶を取り戻して戸惑ってることがないか、ちょっと心配だったから‥‥」
少し前‥‥フロルは記憶喪失だった。その記憶は戻ったが、フロルの戸惑いは相当だったと想像に難くない。
「俺、大丈夫です。今、考えがまとまりません。でも、文歌も雪哉もいます。俺、大丈夫です」
「‥‥そっか」
前向きであり続けようとするフロルに、川澄は自分の選択が間違っていなかったことを再確認した。
競泳水着に翡翠色のパーカーを羽織った木嶋は中島に訊ねた。
「雪哉ちゃん、準備はもう済んだのですか? まだならしっかりと調えておきましょう」
そんな木嶋の準備はばっちり、加えて疲労回復・エネルギー補給に重点を置いた特製スポーツドリンクの手配もしてある。
「ばっちりです!」
元気印の中島に香里も思わず微笑む。
「雪哉ちゃん、六華ちゃん。今日は一緒に楽しみましょうね♪」
「真面目に頑張る!」
クロ・カニム(
jc1854)は初めてのトライアスロンに意欲的だった。
「もし怪我したらテーピングとか用意してあるからな」
田崎和哉(
jc1761)は体をほぐしながらクロにそう答えつつ‥‥どこか視線がフラフラしている。
「田崎?」
「な、なんでもない」
クロが先ほどまでの田崎の視線の先を辿ると‥‥中島の姿がある。田崎は『中島雪哉のファン第一号』と自負している。
「‥‥最近体がなまってたからなー、久々に真面目に運動しよ」
「‥‥」
そうか。これがきっと恋なのだ、とクロは思う。人に悟られぬように思い人を視界に入れるのが恋なのだ。
「雪哉、フロル。お互い頑張ってゴールしような!」
スタート直前に中島とフロルの元に悠人がそう挨拶してくれた。
と、会場のアナウンスが流れた。
『えー、本日はトライアスロン大会へのご参加ありがとうございます。本日参加予定でしたエイルズレトラ マステリオ(
ja2224)さんですが、依頼にて重体し今回は辞退したいとの旨を書簡にてご連絡いただきました。誠に残念ではございますが、快癒を願いここにご報告させていただきます』
「‥‥それはトライアスロンやってる場合じゃないね。早く良くなるといいなぁ‥‥」
中島がポツリとそう言うと、ようやくスタートの銃を持つ係員が定位置についた。
いよいよ、トライアスロンの火ぶたが切って落とされる。
●スイム
轟いた銃声とともに、一斉にスタートが切られた。
「うわっ!?」
そのスタートで中島は人波に押される形で前につんのめった。スタートは海岸。砂浜と海の瀬戸際。大怪我になりかねない。
「っと! 大丈夫か?」
それを助けたのはお腹のタトゥーが印象的なユーラン・アキラ(
jb0955)だった。
「ありがとうございます! えっと‥‥?」
「アキラでいいよ。怪我しないように気を付けて行こうな」
少しつり気味の目が笑うと人懐っこい印象になるユーランに、中島は「はい!」と頷いてまた走り出す。
さて、それを見て戦慄が走ったのは田崎である。その場所に‥‥中島の前後を不自然にならないように付いていきその手を差し伸べるべきは自分のはずだった‥‥のに!
まさかのライバル出現の瞬間であった。
今先頭を争っているのは、ペースを崩さずに泳ぐ雁鉄と海に憧れを持つ悠人の2人だ。
岐阜県は山のない県である。その岐阜県を故郷に持つ悠人にとって海は憧れだ。そして、この海を泳ぐことがどれだけ意味のある事かを悠人は知っている。
しかしながら常日頃の鍛練を怠らずバスケを得意とする雁鉄も負けてはいない。むしろ意識は同じ。
『できれば勝ちに行く』
海で疲れ切るわけにはいかない。このレースはまだ自転車、マラソンと繋がっている。
悠人と雁鉄は其々、体力とペース配分に気を配りながら進んでいく。
黒百合は防水バックをプカプカとさせながら、海面を行く。学園が遠くに見える。山はすっかり紅葉している。
「すっかり秋よねェ‥‥」
のんびりと風景を楽しみながら、白い水着の黒百合は泳いで行く。
「!!!」
足の着くところまではよかった。だが、その次に水が襲ってきた。
クロは体が勝手に思いつくままに泳いだスタイルが『犬かき』であることを知らずに、一旦岸へと引き返す。
「およ‥‥げない‥‥」
しかし、リタイアするという選択肢はない。ならばこの海を渡らねばならない。どうにかして。
「そうだ!」
クロはいいことを思い付いた!
「‥‥トライアスロンはペース配分が大事です。水泳は特に体力を使いますから温存の方向で」
木嶋のアドバイス通りにフロルはゆっくりと泳ぐ。と‥‥。
「香里。水の上も泳ぐのですか?」
フロルの唐突な質問に、木嶋はフロルの視線の先を手繰る。
「え!?」
そこにはアウルの力で海の上を駆け抜けるクロの姿が‥‥!!
それは泳いでないよ。
●自転車
海から上がると自転車が待機している。ここから自転車で商店街を抜け、学園を目指す。
ほぼ同時に海から上がったのは悠人と雁鉄である。
雁鉄は水分を拭き取った後、運動服を着込む。時間短縮と動きやすさを重視である。
一方悠人は威鈴からの差し入れをありがたくいただいていた。テーピングとスポーツドリンクである。ぬかりない妻の愛に感謝である。
前傾姿勢、風の抵抗をなるべく抑えてピッチをあげる。バスケで鍛えた脚力を武器に、雁鉄は自転車をこぎだす。
悠人も体力を押さえつつも引き離されぬように順位を守ることを優先する。
雁鉄と悠人、どちらも一歩も譲るつもりは無いようだ。
海を泳ぎ切った黒百合は防水バッグからタオルを取り出して体を拭いてから、体操着を着込んだ。ブルマからすらりとした白い足が眩しく光っている。体操着にはやはり『くろゆり』と明記してある。
海から出るとさすがに秋風が冷たい。しっかり水分を拭いておかねば風邪をひきかねないだろう。
沿道の植物などを見ながら、黒百合は秋の道を楽しむように自転車にまたがった。
「大丈夫か? 中島」
「はい、大丈夫です!」
泳ぎ終えた中島に田崎はタイミングを見てようやく声を掛けることができた。ひらひらとした水着がとても可愛らしく似合っている。思わずにやけそうになる顔を引き締める。
「雪哉ちゃん、六華ちゃん。スポーツドリンクをどうぞ。水分補給はこまめにですよ。皆さんもよろしければ」
木嶋がそう声を掛けてくれたので、中島とフロルは遠慮なくいただいた。
「疲れたら、ゆっくり漕いで行こうな!」
「はい!」
そんな会話を中島とユーランが交わす間、川澄はウエットスーツを脱ぎ花柄のサイクルウェアを着込む。
「うわぁ! 文歌先輩の服、可愛いなぁ。ボク、そこまで用意してなかったや‥‥」
そう言った中島は久遠ヶ原学園指定の体操服である。
「そん‥‥」
『そんなことはない』と田崎は声を掛けたかった。しかし、そこで『彼』が言ったのだ。
「そんなことないって。体操服は動きやすい服だし、雪哉もそう思ったからそれ持ってきたんだろう?」
「そっか。そうですよね! ありがとうございます、先輩!」
ユーランはニカッと笑って自分の腰巻から特製スポーツドリンクを取り出して飲んだ。
またも田崎に衝撃が走る。その台詞‥‥そして『雪哉』って‥‥。
「そろそろ出発しましょうか」
川澄の言葉を合図に自転車をこぎだして少しした頃‥‥それは後ろからやってきた。
「!?」
それを見たものは声を失った。
クロは自転車に乗れなかった。だから、自転車をその肩に担ぎ走っていた!!
「なんであんたら、これ乗れるんだ? 俺、倒れたんだけど??」
それは自転車こいでないよ。
●マラソン
商店街の店先から声援を受け、久遠ヶ原学園の門が見えてくる。その門をくぐれば自転車は終了だ。そして、次に来るのがマラソン。校内を一周だ。
声援に出てきた学園生に混じり、威鈴はソワソワと悠人の到着を待ちわびていた。先頭を行く雁鉄と悠人がその門に着くと学園生からの声援が届く。
「悠人‥‥! もうちょっと‥‥これ食べて‥‥頑張って‥‥!」
威鈴は最後の差し入れを悠人に手渡す。バナナだ。
「威鈴‥‥! ありがとう!」
自転車を飛び下り、モグモグとバナナを食べながらマラソンに移行する悠人。それに後れをとらずスポーツドリンクを一口含んだ雁鉄も自転車からマラソンへと移る。喉の渇き具合を確認しつつ、最適な量を飲む。
ラストスパート。徐々にペースを上げる雁鉄に対し、バナナを完食し全身全霊、手加減無用に白閃の如く走り切ろうとする悠人。
勝つのはどっちだ!?
「冬桜が咲いていたわねェ‥‥」
自転車を降りた黒百合は、冬に咲く桜を見つけていた。春のように一斉に咲くわけではないので目立ちはしないが、冬景色になりつつある中では目を引く花だ。
久遠ヶ原近郊でここまで秋を感じられたなら、黒百合としては満足であった。あとは、ゴールするのみだ。
「あともうちょっとだ! 頑張るんだ!」
「おー!」
自転車を降り、ユーラン、川澄、木嶋、田崎、クロ、フロル、中島はマラソンへと移る。
川澄はアイドルらしく、ここでも着替えを行った。『アイドル部。』と書かれた練習用ウェアに。
「六華ちゃん、疲れていませんか? 大丈夫ですか?」
「俺、大丈夫です。香里は大丈夫ですか?」
「私は大丈夫よ。ありがとう」
入ってきた一同に「周回遅れかよ」との声も聞こえたが楽しむこと、完走することが優先だ。
丁度、優勝争いをしている雁鉄と悠人が一同の横を通り過ぎようとした。沿道の生徒たちが一気に盛り上がる。
そして、それは起こる。
まず、沿道の学園生たちが前のめりになった。そして、その一番前にいた威鈴は悠人が食べたゴミを落としてしまった。
田崎は中島に励ましの言葉をかけるかどうかを悩んでいた。その田崎に業を煮やしたクロはその背中を押した。物理的に。
雁鉄は田崎にほんの少しだけチャンスを与えるつもりだった。雁鉄は中島にほんのちょっとだけ、ぶつかってしまった。
悠人は雁鉄の後ろを走っていた。あと少し、手を伸ばせば届く位置。
ユーランは中島をサポートするつもりだった。そう、それは絆を深める為。
そして、そのチャンスは訪れた。
中島のバランスが崩れ、田崎とユーランの手が中島を助けに入る。しかし、なにかを踏んだ悠人が思い切りバランスを崩して中島と田崎、ユーランの間に割り込むように雪崩れ込む。
「‥‥‥‥」
雁鉄がゴールテープを切ったのち後ろを振り返ると、田崎とユーランが悠人を助け、運よくバランスを立て直した中島が立っている姿があった。
●ゴールのあとは‥‥
「すご‥‥い!! 悠、完走‥‥!」
悠人がゴールすると威鈴は感極まって悠人に抱き着いた。
「ありがとう、威鈴。威鈴のおかげだ」
ぎゅっとすると汗のにおいがしたが、それよりも頑張った悠人に喜びを伝えるのが大事だと威鈴は思った。
結局、優勝は雁鉄。悠人は2位に終わった。しかし、それも今の自分なのだと悠人は受け止める。
やりきることが大事だ。
抱き合った2人の後ろをようやく、みんなのゴールが終わった。
「頭とか打ってない? ホントに怪我ない?」
ゴールした田崎は悠人にそう訊いた。悠人は申し訳なさそうに笑う。
「大丈夫です。‥‥しかし、俺、何を踏んで転んだんでしょうね?」
あの後、転んだ場所を見たが既に跡形もなかった。いったい何があったのだろう?
疑問は答えを持たぬまま。田崎も悠人もスポーツドリンクを口に含んでその謎ごと飲み込んだ。
「静寂先輩、お疲れ様です! これ、おしるこ。どうぞ」
中島が雁鉄に温かなおしるこを持ってきた。雁鉄はそれを視認すると受け取った。
「おしるこ‥‥214kcalですか」
一口飲むと温かさと共に甘さが体に沁みる。
「運動は気持ちいいですね」
勝っても負けても。晴れ晴れとした達成感がこの青空のようだった。
「黒百合先輩、お疲れ様です。おしるこ、どうぞ」
「ありがとォ‥‥あらァ? お茶はないのかしらァ?」
中島が運んできたおしるこに、黒百合は首を傾げる。
「え!?」
「‥‥なぁんてェ‥‥自分で持ってくるから大丈夫よォ♪」
にっこりと微笑むその笑顔が、ものすごく可愛いのに、ものすごく怖いように感じた中島だった‥‥。
「アキラ先輩、お疲れ様でした! さっきの田崎先輩と悠人先輩を助けたの、凄かったですね! やっぱり撃退士を目指すもの、とっさに体が動くんですね。ボクもそういう風になりたいなぁ!」
おしるこを運んできた中島が堰を切ったようにそう捲し立てた。
「そ、そうだな。やっぱり小さい事でも助けられるんなら助けたいもんな」
偶然だった‥‥とはいえ、羨望の眼差しで見られるのも悪くはない。
「おしるこ、お待たせしました!」
中島が4つのおしるこを持って川澄たちの場所へと戻ってきた。
「ボク、これが楽しみだったんです!」
「私もだよ♪」
川澄はフーフーしながらおしるこを飲む。フーフーと中島も飲む。それを見ながらフロルも真似しておしるこを飲む。
「頑張りましたね。楽しかったですか? 六華ちゃん」
木嶋がそう訊ねると、フロルはにっこりと笑って頷く。
「トライアスロン、楽しいです」
実際は多分、みんなといたから楽しかったのだ。
そんな女子4人の脇に立ち尽くす田崎。声を掛けたい。の、だが‥‥。
「痛っ!!」
「!!」
突然悲鳴を上げた田崎に、女子4人は振り返る。田崎がなぜか尻をさすりながら涙目になっていた。
「田崎先輩? あ!? さっき悠人先輩受け止めた時にどこか痛めたんですか!?」
中島が心配げに駆け寄ってきたが、実際は通り過ぎざまにクロがお尻を蹴っていったからである。
「大丈夫、怪我してないから。あのさ‥‥」
口ごもる田崎の視界に、サムズアップする雁鉄の姿。頑張れ、頑張れ俺!
「し、しるこが‥‥」
言葉がそこで止まった。冗談ぽく、冗談ぽく言えば‥‥!
「あ!? 田崎先輩におしるこ持って行くの、ボク忘れてましたね! ごめんなさい!」
ダーッと立ち上がり、中島はおしるこを取りに行った。
やっぱり言わないでおこう。『しるこを一口くれ』なんて。
「はい、おしるこです。お疲れ様でした! これで温まってくださいね」
にっこりとおしるこを手渡され、田崎はそれを受け取るとハッとした。これは遊びに行く約束を取り付けるチャンスかもしれない‥‥と!
「あのさ、今‥‥」
ところが‥‥。
「そうだ、忘れてた。雪哉ちゃん! 今度久遠ヶ原のアイドル関係の部活で集まって温泉旅行に行くの。一緒に行かない?」
川澄がそう言って中島がそちらを振り向く。
「温泉ですか!? うわぁ! 行きます!」
タイミングは‥‥消えた。
通りかかったユーランがポンポンと肩を叩いていった。
反省と後悔と前向きな思考を繰り返す田崎の横で、クロはお茶とおしるこを目の前に置いた。
まず匂いを嗅ぐ。ひとまずおしるこは美味しそうだ。お茶はよくわからない。
次におしるこを一口飲む。熱い! 甘い! 熱さで尻尾がビンッと立ち、甘さでブンブンと尻尾が揺れる。
そして、お茶を飲む。苦い! 耳がせわしなくヒクヒクと動く。
おしることお茶を交互に飲むと‥‥なんとなくいい感じかもしれない、と気が付いた。
‥‥今日の田崎を見ていると、恋愛というのはこんな感じなのかもと思った。苦くて甘くて熱い。これにどう対処していけばいいのか‥‥今の田崎からはわからない。クロには大きな問題が残った。
そして、クロはトライアスロンの全行程を走ってのけた。
「みんなの完走を祝して! おしるこで乾杯!」
悠人がみんなの健闘を祝し、乾杯の音頭をとった。
秋のトライアスロンはこうして、幕を下ろしたのであった‥‥。