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マスター:三咲 都李
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:25人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/12/23


みんなの思い出



オープニング

●クリスマスだ!
「綺麗! やっぱりクリスマスは華やかな飾り付けがいいよね〜!」
 中島 雪哉(jz0080)は商店街の中を歩きながら、一緒に買い物に来たフロル・六華(jz0245)にそう言った。
「? クリスマスって寝てるとサンタクロースが来てプレゼントをくれる日のことですか??」
 六華の人間界の知識はただいま『幼稚園の絵本クラス』である。
「…う…ん。まぁ、間違ってないような間違ってるような…うーんと…日本では家族でパーティーする日かなぁ。友達とパーティーでもいいよね」
 中島の人間界の知識はただいま『小学生クラス』である。
「パーティー? どんなパーティーをするのですか?」
「えっと、ケーキとかお菓子とか食べるんだよ」
 そう答えた中島に、六華は顔をぱぁっと明るくする。
「食堂でお茶やケーキを食べるのですか? 雪哉、俺もやりたいです!」
「いや、それは違う…かな。うん、でもクリスマスパーティーやりたいね! みんなに声かけてみようか♪ 六華ちゃんの初クリスマスパーティーだね!」
 中島が笑うと六華もにっこりと笑った。


●小学生っぽいクリスマス会です
「という訳で、クリスマス会やりまーす!」
 詳細が書かれた小さなメモ用紙を配りながら、中島は説明を始める。
「えっと、参加費は300久遠。場所は小等部の教室です。やることはケーキを食べることと、クリスマスプレゼント! お友達や先輩を呼びたい人は遠慮なく呼んでね! みんなでやる方が楽しいもんね。あとは…ゲーム…とかする? 歌とか歌ってもいいかもしれないけど…」
 う〜んと首をひねった中島。どうやらケーキとクリスマスプレゼントしか考えていなかったようだ。

「なにかやりたいことあったら教えてね! みんなで楽しいクリスマス会にしようね!」


リプレイ本文

●クリスマス会に向けて
「クリスマス会? 行く行く!!」
 神谷 愛莉(jb5345)のはしゃぐ姿に、礼野 明日夢(jb5590)は差し入れを持っていくことを提案した。
「アシュ、何がいいかなぁ? うーんと、大人の人もいるし…鳥さん? でも1人1枚だと、エリ達食べられないし…」
「ボクは飲み物を持っていきましょうか。ミカンジュースとリンゴジュースでよいかな? …甘いのが駄目な人用には緑茶…かな」
 礼野の言葉に、神谷は何かを閃いたようだ。
「そうだ! エリ、鳥の唐揚げとフライドポテトにしよっと。でも家から作ってくると冷めちゃうし…部室、使わせてもらえないかなぁ」
 所属する『剣術部。』の部室にはキッチンがある。
「お姉さ…部長さんにお願いしてみましょう」
「そうだね! アシュ、行こう!」
「行くからエリ、服引っ張らないで」
 神谷と共に『剣術部。』の部室へ歩く礼野は、楽しそうな神谷の姿に小さく微笑む。
「持って行くの、アシュも手伝ってね」
 問答無用の神谷の笑顔に礼野の微笑みは思わず苦笑いに変わった。

「クリスマス…もうそんな時期か」
 グリムロック・ハーヴェイ(jb5532)はクリスマス会のメモを見ると目を細めた。
 久遠ヶ原で過ごす初めての冬、小さな催しのようだが参加を決めたからには楽しい時間になるようにしたいと思った。
 他の参加者が何をするのかわからないが、グリムロックはこの催しにクッキーを皆に振舞うことを決めた。
 ケーキが用意されていると書いてあったが、他に披露する芸も思いつかない。
 甘党らしいグリムロックのクリスマスのプレゼントが決まった。

 調理室に集合した3人。オブリオ・M・ファンタズマ(jb7188)は浪風 威鈴(ja8371)の手に持つ食材を見て驚いた。
「コレは猪肉…熊肉…カモシカ肉…シカ肉…茸に山菜…。コレで…いいかな?」
 威鈴は隣に立つ恋人、浪風 悠人(ja3452)に視線を投げかけた。
「オブリオ、威鈴は家が猟師なんだ。これで、ピザ作れる…よな?」
 悠人の視線がオブリオに移る。オブリオはじっと食材を見たまま考える。
「鹿とか猪とか熊と後色々とか、今まで料理した事無いのです! …でも、そういう時こそ僕の腕前の見せ所なのです。みんなに本場仕込のおいしいピッツァを食べて貰って楽しいクリスマスパーティーにするのです!」
 コクリと自信を持ってそう言い切ったオブリオに、悠人はホッとした顔を見せた。が、当の威鈴が首を傾げている。
「ピザ…ってなに?」
「ピザってのはね…あぁ、料理しながら教えるよ。オブリオが作る本物を見た方がきっと早い」
 悠人はそう言うとにっこり笑って、料理を始める。
「威鈴さんがピッツァを知らないなら、美味しさを教えてあげるいい機会なのです! 腕によりをかけるのです!」
 早速下処理を開始しようとしたオブリオに威鈴はまた首を傾げる。
「ぅ? …下処理…してるよ?」
 さすが猟師の子。のんびりしているように見えてシッカリしていた。

 小等部の一教室で中島 雪哉(jz0080)とフロル・六華(jz0245)は折り紙で作った輪っかを飾り付けていた。
 それを手伝うのは黄昏ひりょ(jb3452)。中島や六華では手が届かない場所を飾り付けてくれている。
「ひりょ先輩、ありがとうございます!」
「これくらいどうってことないですよ」
 優しく笑う黄昏に小学生たちはきゃっきゃとはしゃぐ。
 そこにババーン! とドアを開け放ちやってきた男がいた!
「遅くなったな! 第三の助っ人がやってきたぜ」
 男の名は命図 泣留男(jb4611)。しかし、『メンナク』と呼んでほしいと本人談。
「全然遅くないですよ。っていうか、まだ準備中で…」
「なんてことだ! だがしかし! 俺のソウルがお前たちのSOSを感じ取ったのかもしれないぜ…」
 大げさにそう言うと命図は黒いロックな袋から色々な物を取り出した。
「ツリーにもドレスロックなオーナメントはいるだろう?」
 キャンディなどの入ったちょっとストリートチックなオーナメントを取り出して命図はニヤッと笑う。
 だが、逆に中島はハッとした。
「…ツリー…用意…してませんでした…!!」
 致命的な忘れ物だった。がっくりと項垂れた中島に、黄昏が声を掛ける。
「どこかから借りてきましょうか?」
「その必要はないぜ!」
 黄昏の言葉を制し、命図が黒板の前に颯爽と立つ。そして緑のチョークでささっと三角を3つ縦に並べて描いた。
「どうだ? オリジナルツリーの完成だ! これにこの磁石でオーナメントを飾り付ければ…」
 黒板に描かれたモミの木に、オーナメントがキラキラ光る。
「すごーい! 命…えっとメンナク先輩、すごい!」
 中島がキラキラと尊敬の眼差しを命図に向ける。
「いいアイデアですね」
 黄昏も感心したようにそう言った。そんな中、六華がポツリと言った。
「ツリーって…黒板に描くものなのですか」
 何やら誤解したようです。

 黒タイツで防寒対策は完璧。ミニスカサンタ姿の天道郁代(ja1198)はフライドチキンとデコレーションケーキを白い大きな袋に入れて満足げに頷いた。
 さっそうとサンタ姿で現れれば、わたくしのクリスマス大作戦も完璧。
 ポニーテールを揺らし、きらりとメガネを光らせてやる気は充分である。
 サンタは煙突から侵入するのでしたわねっ。
「…ん? 学校に煙突ってありませんわね…」
 少し考えると、天道は白い袋を持って颯爽と屋上へと昇っていくのであった。


●クリスマス会の開始
 予定の時刻になると、ポツポツと人が集まり始めた。
「雪哉姉様、お久しぶりなの!」
 周 愛奈(ja9363)は愛らしい笑顔で中島に挨拶をした。
「愛奈ちゃんだ! いらっしゃい、久しぶりだね!」
「愛ちゃん、クリスマス会、とっても楽しみなの。素敵なパーティーにするの!」
 嬉しそうな周の笑顔に、中島もつられて笑顔になる。
「中島さん、こんにちは」
 声のする方を見ると雫(ja1894)が大きな箱を持って立っていた。
「参加させてもらいますね」
「雫ちゃん! うわー、嬉しいなぁ♪ 来てくれたんだぁ!」
 他にも小等部からはアラベル=D=クラヴリー(jb5255)や相馬 カズヤ(jb0924)、礼野、神谷などが集まってくれた。
「雪哉ちゃん、六華ちゃん、ベルもしょーとーぶの5年生なんだよ♪ おんなじだね! …教室が教室じゃないみたいなの! ベル、すごい楽しみ〜♪」
「ゲームも用意してきたからな! 今日はたくさん遊ぶぞ」
 小等部の生徒たちが来てくれたのは、とても嬉しいことだった。
「おんなじ5年生ですか? それはお友達です?」
 六華の問いにアラベルはつい故郷での習慣そのままに、六華と中島と握手を交わした後にぎゅっと抱きついた。
「そうなのです。お友達なのです〜! リスさんのぬいぐるみ、仲良しの印! 受け取ってくださいなのです!」
 テンションも高くアラベルは六華と中島にお手製のリスのぬいぐるみを渡した。
 そんな小等部の子供たちの姿に、命図は黒い袋の中をまさぐりながら温かく見守る。
「ほう、こいつは愛されブラックフェロモンを感じるぜ」 

「おまたせ。寒い冬だけどせっかくのパーティーだから皆で召し上がれっ!」
 悠人がパーティーに運び込んだのは愛知県の名物・八丁味噌と醤油、砂糖で出汁を作った、猪鍋風の鍋料理。
 猪肉が綺麗に皿に盛りつけられて、まるで花のようだ。威鈴も鍋に入れる材料を手にしている。
 オブリオは焼き立ての本場仕込みのピッツァを何枚も焼いてきてくれた。
「おかわりはいくらでも作るのです! いっぱい食べてほしいのです」
 たくさん人が来るのなら、食べきれないくらい作りたい! そう思ったオブリオは、焼くだけの状態にしたピザをいくつも用意しておいた。
 雫が持ってきた箱の中には山鳥で作ったフライドチキンが入っていた。
「七面鳥はこの島の山にいなくて…数日前に狩った物なので肉の熟成度合いも良い頃合いになっています」
「わざわざ買ってきてくれたんだ。雫ちゃん、わざわざごめんね」
 中島がそう言うと、雫は少し首を傾げた。
「? いえ、丁度私も山鳥が食べたいと思っていたので」
 どうやら雫と中島の会話がかみ合っていないようだ。
 グリムロックのクッキーはツリーの飾りを模したアイシングクッキーや、苺を半分に切って生クリームを挟んで白と黒のチョコペンで顔や帽子のチョボを書いたイチゴサンタ。白くて丸いクッキーを白のチョコペンでくっつけてから黒のペンで顔を描いてそこを平らにして立たせたクッキー雪だるまなどとても可愛らしいクッキーの数々。
 相馬もクッキーの差し入れをしてくれた。
「アシュ、ひーちゃん、早く!」
 神谷がバスケットを持った召喚獣と礼野を連れ、たくさんの鳥の唐揚げとフライドポテトを運んできた。
「これ、ボク達からの差し入れです」
 箱に入ったジュースを差し出し、礼野はにこやかに言った。
「好きに食べるといい」
 そう言ってフライドチキンを渡したのは影野 恭弥(ja0018)。
 影野はたくさんの人が集まった教室の中をちらっと一瞥すると、その中に紛れていった。
「ありがとうございます! …差し入れ、いっぱいだぁ! 教室中がいい匂いだなぁ」
 中島が嬉しそうに感激していると、窓を叩く音がドンドンと聞こえた。
『ちょっと、窓を開けてくださらない? そこの鍵、鍵ですわ!』
「ミニスカートのメガネっ子サンタ!?」
 悠人のツッコミに慌てて近くにいた黄昏が窓を開けた。冷たい風と共に現れたのは天道であった。
「あ、ありがと。…寒かったですわ…」
 煙突がなければ窓から入ればいいじゃない! とばかりに屋上から小天使の翼で降りてきた天道であったが、まさか窓に鍵がかかっているとは計算外であった。
「サンタクロースは女の人?」
 六華が不思議な顔をしていると、いつの間にか隣に来ていた最上 憐(jb1522)が声を掛けた。
「‥‥ん。六華。久しぶり。ちゃんと。ご飯。食べている?」
「憐! ご飯、食べてます!」
 最上は六華の返事に頷くと「‥‥ん」と言葉を続けた。
「サンタを。捕獲すれば。好きな。モノが。手に入るらしい」
 最上曰く、クリスマスの夜には、サンタクロースが部屋に忍び込んで来て無事にサンタを倒して捕獲すると、何でも好きなモノがプレゼントされる…らしい。
「捕獲? 捕まえる??」
「‥‥ん。やっぱり。罠を仕掛けて。機動力を。奪うとか。目潰しとかが。有効かな?」
 何やら恐ろしげな計画が練られ、その視線は天道へと注がれる。
「参加費は全員からいただきました! ありがとうございます。それじゃ、クリスマスパーティー始めますね!」
 威鈴や黄昏がジュースを配り、ケーキを配ると『メリークリスマス!』の掛け声とともに、パーティーが始まった。


●出し物
 パーティーが始まると中学生コンビの九十九 遊紗(ja1048)と緋野 慎(ja8541)が紙の束を持って黒板の前に立つ。
「雪哉ちゃんと六華ちゃんはクリスマスの日ってどんな日かあまり分かってないみたいなので、クリスマスの始まりの紙芝居をしまーす!」
 高等部の織宮 歌乃(jb5789)や大学部の光坂 るりか(jb5577)とジェンティアン・砂原(jb7192)も手伝う。
 光坂はナレーションを担当し、主に九十九と緋野の掛け合いで話は進む。感情をこめてでも楽しく。
「…なんでやねん! とは言いませんでした♪」
「入れないのかよ!? じゃあなんで付け加えたの!?」
 九十九と緋野の楽しい掛け合いに笑いがドッと起こる。彼らなりのアレンジだ。
 光坂の聞き取りやすい口調と楽しいアレンジで中島も六華もクリスマスの始まりをよく理解できた。
 そんな中島を影野はジュースを飲みながらじっと眺めていた。
 前に依頼で一緒になった時、中島の友人である『森本小松』という少女と一悶着あったのだ。
 その後、一体どうなったのか…? 気になるが、まあ元気そうならそれでいいか。
 遠目に紙芝居を眺めつつ、影野はそう思った。
 紙芝居が終わると、織宮の神聖な歌が始まる。クリスマスにふさわしい透き通った歌声。
 ジェンティアンもそれに重ねるように歌い始める。
 誰しも、産まれながらに祝福されている。私達皆、産まれたからには特別なのだと。持つ心、楽しむ感情、祝福されるべき魂は在りて。
 そんな織宮の思いが伝わったのかはわからないが、歌い終えると大きな拍手が起こった。
「紙芝居、すごく面白かったです! 歌もすごく素敵でした!」
 感激したようにキラキラした目で中島がそう言うと、九十九も緋野もにっこり笑った。
「よかった! わかりやすいように頑張ったんだよ」
「楽しんでくれてよかったよ!」
 そんな九十九と緋野をナレーターを務めた光坂が後ろからむぎゅーっと抱きしめた。
「よく頑張りましたね。私、とっても感動しました」
「るりかお姉さん、く、くるし…」
「俺、中学生だから! 離して!」
 青ざめる九十九と顔を赤らめてもがく緋野を離して、光坂は小さな包みを取り出す。
「メリークリスマスです。私からのプレゼントです」
「わぁ、キーホルダーだ!」
 色違いの小さなぬいぐるみが付いたキーホルダーが光坂からのプレゼントだった。
「ありがとう! るりかお姉さん、慎君。ケーキ貰いに行こう!」
 仲良く3人は差し入れが並ぶテーブルへと歩いて行った。
「やっぱりクリスマスって言ったら何はなくともケーキだよね!」
 幸せそうにケーキを頬張る九十九の顔に生クリームが付いている。
「遊紗、ほっぺにケーキのクリームが付いてるぞ〜?」
 それを緋野がティッシュでふきとる。
「皆でわいわいするの楽しいね! 慎君といると特に! ね、るりかお姉さん」
「そうですね。ふふふ」
 九十九と緋野の仲の良い姿に光坂はまるで母親のような気持ちで見守るのだった。

「お邪魔するよっ!」
 唐突に可愛らしい大きな声が聞こえた。
 現れたのは学園のアイドルにしてエクストリーム新聞部の秘蔵っ子・下妻ユーカリ(ja0593)である。
「私のクリスマスソングを皆にプレゼントだよっ♪」
 流れ出るの自作、持ち歌、作詞作曲・下妻ユーカリ。
 ― 久遠ヶ原メリークリスマス ―
「クリスマスなのに 電飾が足りていない
 クリスマスなのに 電飾が圧倒的に足りていないんだ

 明かりをつけろ 明かりをつけろ(※)
 明かりをつけろ 明かりをつけろ

 クリスマスなのに キラキラ光っていないなんて
 そんなの ありえないんだ
 なに 電飾がない?
 ならばダアトを吊るせ そして輝くトワイライト
 あの木なんて ちょうど良い高さだろう

 (※くりかえし)」
「ユーカリ先輩だぁ!」
 中島は尊敬の眼差しで下妻を見つめる。
「ダアトを…吊るすのですか??」
 六華が不思議そうに歌を聞いている。ジェンティアンが六華の肩をポンと叩いた。
「そこは間違えて覚えなくてもいいからね」
「ジェンティアン・砂原・レディ!」
「うん、それも間違いだね。六華ちゃんは学園慣れたかな? 2人がどうしてるか気になってたけど、流石に小等部の方に行く事は少なくてね」
 ジェンティアンは微笑みながら六華の髪にポケットから取り出した雪の結晶の髪飾りをパチンと止めた。
「だからクリスマスパーティーに誘われてみたよ。僕からプレゼントだよ。うん、よく似合ってる」
 中島は…下妻に釘付けのようなので後で渡すのがいいだろう。ジェンティアンは六華とお揃いの髪飾りを中島にも渡すつもりだ。
「ありがとう」
 六華の笑顔にジェンティアンはポケットから紙を取り出す。
「後でみんなで歌うと思うから、この歌詞カードを渡しておくよ。ひらがななら読めるよね?」
「はい、読めます!」
 即答した六華にジェンティアンは笑顔で頷いた。

 下妻の歌が終わりそうになると指宿 瑠璃(jb5401)が中島にこそりと耳打ちをする。
「あの、サイリウム用意してもらえましたか?」
「はい! ひりょ先輩と六華ちゃんにも頼んでおきました!」
「よかった…」
 ホッとしたように微笑んで、指宿は中島の服を少しいじると指宿とお揃いのアイドルっぽい服に見える工夫を施した。
 そして、下妻の後に黒板の前に躍り出る。登場曲付きで。
「わ、私なりにクリスマスを楽しくします! あの、サイリウムを振ってもらえると…嬉しいです。私たち、今会えるアイドル!」
 サイリウムとはよくアイドルのコンサートで使われる化学発光するもので、別名・ケミカルライトともいう。
 それを黄昏と六華がみんなに配ると、持ち込んだCDでアイドルの歌を完全コピー&振り付けも完璧に踊りこなす指宿と中島。
 そこに命図もサンタの白髭をつけて飛び入り参加する。
「サンタクロースが俺にもっと輝けと囁いているのさ!」
 黒のストリートファッションに白い髭が焼けにういて見えるのは気のせいだろうか?
 歌って飛んで跳ねて、2〜3曲を熱唱すると指宿は満面の笑顔で言った。
「みんな、いい子にしていたら、本物の私たちに会えるかもね!」


●クリスマスに願いを
「見た目通り、美味しいケーキなのです…!」
 アラベルはケーキに舌鼓を打ちつつ、ずらっと並んだご馳走に目を向ける。
 しかし、飲み物の中になぜかカレーが紛れている。
「憐、カレー飲みますか?」
 六華が最上にそう訊くと、最上はコクリと頷いた。
「‥‥ん。飲み物。カレーも。ある。いいこと」
 カレーを飲む最上を六華はにこにこと見つめる。
「わたくしのプレゼントをあげてもよろしいですわよ」
 椅子に女王様の如く気高く座って足を組み、袋の中からケーキやフライドチキンを渡す天道。
「ありがとうなの! ‥‥やっぱりケーキがないとクリスマスという気がしないの。美味しく頂くの!」
 周の可愛らしい笑顔に思わず天道の顔も緩む。
 下妻はアイドルとしての使命を果たし、ケーキを美味しそうに食べている。そこに指宿が羨望の眼差しで話しかけていき、何やらアイドル談議に花が咲いているようだ。
 悠人は威鈴に並んだ料理を説明しながら、自らの料理を取り分けて威鈴やオブリオに渡す。
「あの、悠人先輩。威鈴先輩」
 そんな悠人や威鈴の前にケーキを持った中島と六華が少し困ったように声を掛けた。
「…?…」
 威鈴が不思議そうに見つめると、中島がケーキをグイッと悠人と威鈴に渡す。
「あの、いっぱい食べてくださいね! 怪我が早く良くなるように…!」
 目を丸くする威鈴に、オブリオと悠人は理解した。どうやら威鈴と悠人の怪我を心配しているようだ。
「大丈夫、だいぶ良くなってきてるから」
「…ありがと…」
 威鈴がわずかに微笑むと、中島はホッとしたように笑う。
「あなたたちもボクのピッツァ食べてほしいのです。美味しいのです!」
「よかったら俺の作った鍋も食べてよ。体が温まるよ」
 逆にオブリオと悠人から料理を取り分けてもらい、中島と六華は「ありがとう!」と受け取った。
 その姿を見て威鈴は悠人の隣で嬉しそうに優しく微笑んだ。

「初めまして…」
 雫はそう言って六華の前に立った。
「初めまして。雫?」
 中島に紹介を頼んだが、ここから先の会話が続かない。
 ずっとにこにこしている六華の顔は、雫とは別の意味で感情が読みづらい。
「…雫ちゃん、大丈夫?」
 心配そうに雫を覗き込む中島に、雫は慌てた。
「いえ、嫌っている訳でも怒っている訳でもありませんよ。あの、友達になれたらって思うんですが…」
「友達? 雫と俺、友達です?」
 にこにこと疑問で返す六華に雫は混乱する。なんだか誤解されている気がする!
「中島さんからもお願いですから何か言ってあげて下さい。私は…!」
 言いかけた雫を六華がぎゅっと抱きしめる。
「お友達です〜!」
「な、中島さん!?」
 ワタワタとする雫に中島は苦笑いした。…六華、どうやらアラベルのハグを覚えてしまったようです。
「ボクとゲームしようぜ!」
 声高に、相馬がそう言った。手には紙とペンを持っている。
「雫ちゃん、六華ちゃん。ゲームしに行こう!」
 中島はそう言って相馬の元へと足を向ける。
「愛ちゃんもやるの!」
「ベルも!」
 相馬の元に周とアラベルも近寄ってくる。
「結構集まったな。トランプに、ペンと紙を人数分っと…」
「参加するからには、愛ちゃん、負けないの! …そうだ。雪哉姉様。愛ちゃん、プレゼント用に教えて貰いながらワンコを編んでみたの。プレゼント交換はいつするの?」
 ハッと中島が俯く。
「ご、ごめん。ボク…誤解するようなこと書いちゃったんだね。あのね、プレゼントはボクたちが用意してるんだ折角可愛く作ってきてくれたのに…」
 少し網目が甘い部分もあるが可愛らしく愛嬌のある日本犬の編みぐるみに、中島は「ごめんね」と呟く。
「それ、ゲームの勝者にあげるのはどうでしょうか? …周さんがよければですが」
 雫の提案に周は顔を輝かせる。
「うん! 貰った人が喜んでくれると、愛ちゃんも嬉しいの!」
「よし、じゃあゲームの説明するぞ。今回やるのは『イラスト連想伝言ゲーム』。まず、キーワードを最初の人に伝える。最初の人がそれを絵で説明して、次の人がそれを単語で説明する。で、その次の人がまた絵で説明して、最初のキーワードを当てるってゲーム。勝敗はキーワードを当てた数な。ゲームは中島もライバルだからな!」
「負けないからね!」
 お菓子とジュースとケーキを並べて、ゲームは開始される。
 相馬チームと中島チームに分かれての攻防。
「え? これキリンじゃないのですか?」
「違うの〜!」
 思ったよりも難しいゲームに、回りで見ていたグリムロックや礼野、神谷も思わず笑ってしまう。
「…ここまで年齢がばらばらなクリスマス会ってある意味凄いかも」
 礼野がポツリと呟くと、神谷はにこっと笑って言う。
「でも部室のクリスマス会もこうなると思うよ?」
「そりゃそうだけど…」
 織宮はそんな楽しげな風景を見ながら思いをはせる。
「とどのつまる所、楽しきクリスマスを。記憶に残る思い出の欠片とすべく」
 祈りを秘めた、歌を。今日のこの日をよき思い出にするために。共に語らい笑い合う聖夜を楽しみたい。
 思いを歌にのせて、クリスマスの歌を唇に刻む。
 誰もが知るその歌を悠人も歌いだす。
「一緒に歌おう」
 悠人にそう言われて六華も先ほどジェンティアンに貰った紙に書かれたひらがなを読みながらなんとか口ずさむ。
「今年のクリスマスは、中島さんの御蔭で平和に過ごせそうです」
 雫の言葉に、中島は照れたように笑うとクリスマスの歌を歌いだした。
 そうして、織宮の歌は教室から溢れるほどの大きな歌声となって学校中に響いていった。


●メリークリスマス
「プレゼントのプレゼントです♪」
 お菓子の入ったクリスマスブーツと缶バッジ。中島と六華が選んだクリスマスプレゼントを参加者に手渡し、ジェンティアンが用意してきたアロマキャンドルもプレゼントされた。
「ごきげんなパーティ、ありがとねっ♪」
「雪哉ちゃん、あの、また一緒に歌いましょうね」
 下妻と指宿がそう言って帰っていく。
「慎先輩、遊紗ちゃん、るりか先輩。紙芝居すっごくわかりやすくて面白かったです!」
「よかった! 雪哉ちゃんもお疲れ様。遊紗もすっごく楽しかったよ!」
「雪哉も六華さんも楽しめたなら良かったよ! また遊ぼうな!」
「紙芝居、楽しんでくれて嬉しいです。六華さんも雪哉さんもお疲れ様でした」
 労いの言葉と笑顔が、何より嬉しかった。
「…捕まえてもいいですか?」
 六華が天道にそう聞くと、天道は驚いたように慌てた。
「だ、ダメ! サンタクロースは捕まえてはダメなのですわ! サンタクロースにも帰る家があるのですわよ!」
 天道の言葉に六華は納得したように頷いて、最上を見た。
「燐、サンタは捕まえてはダメなんだそうです」
「‥‥ん。少し。多分。ものすごく。間違い。だった。かも」
 最上も何やら頷いた。実はうろ覚えな知識での発言だったのでここで六華への訂正ができたのはよかったかもしれない。
「ファンタズマ先輩、ピザ美味しかったです!」
「そうなのですか! それは作ったかいがあったのです!」
 オブリオは嬉しそうに笑う。
「お鍋ご馳走様でした! 威鈴先輩、悠人先輩。早く怪我治るといいですね」
 中島が再び心配そうに威鈴と悠人にそう言うと、悠人は苦笑する。
「心配しなくても大丈夫だから。威鈴には俺がついてるし、俺には威鈴がいるし…って小学生相手に俺、何言ってるんだ!?」
「…ぅ?」
 自己ツッコミの悠人に威鈴は首を傾げる。中島は少し赤くなって下を向いてしまった。
「六華さん、お友達としてこれからも仲良くしてくださいね」
「雫、俺とお友達です。お願いします」
 雫と六華は握手をして笑う。少しずつ、友達が増えることが嬉しい。
「愛ちゃん、六華姉様と雪哉姉様も仲良しなの〜!」
「雪哉ちゃん、六華ちゃん。また遊びましょうなのです」
 周とアラベルも笑顔でそう言ってくれた。
「アシュ、部室のお片付け行くよ! あ、楽しかったです!」
「エリ、待って! お、お疲れ様でした!」
 急ぎ足で帰っていく神谷と礼野を見送る。
「クッキーご馳走様でした!」
「いや、こちらこそありがとう。楽しませてもらった」
 グリムロックはそう言うと軽く頭を下げて、帰路についた。
「歌乃先輩、素敵な歌をありがとうございました!」
「歌は難しいです…」
 六華は困ったようにそう言ったが、織宮とジェンティアンがフォローする。
「フロル様が望むのであれば、私がお手伝いいたします」
「六華ちゃんならきっと覚えられるよ。僕も手伝うからあきらめないでね」
 六華はそんな言葉に嬉しげに「ありがとう」と答えた。
 そうして、クリスマス会は無事に終わった。

 たくさんあった料理は、いつの間にか空だった。
 …その大半は最上の胃の中にご案内されたのだが…。
「メンナク先輩、ありがとうございます。準備から片付けまで…」
「お前たちの頑張りに、この伊達ワルも心動かされたぜ」
 そう言いながら命図は片づけを手伝ってくれた。
「カズヤ、ゲーム楽しかったです。俺、絵を描けるように頑張ります」
 ゲームで六華は壊滅的に絵が描けなかったが、どうやら楽しめたようだ。
「また今度リベンジな」
 相馬がそう言って笑う。
 黄昏や影野も手伝ってくれたおかげで、片づけは思ったより早く終わった。
「ありがとうございました!」
 中島は深々とお辞儀をした。
 命図や影野が帰り、相馬も帰ろうとしたところで中島がそれを引きとめた。
「カズヤ君、いつも色々ありがとう! これ、ボクからのプレゼント」
 小さな袋を相馬に手渡すと、中島は六華を連れて「メリークリスマス!」と逃げるように去ってしまった。
「……」
 相馬はその袋をまじまじと見つめる。おそらく中身はハンカチか何かだろう。
 中島たちは気付くだろうか? 鞄にこっそりひそませたクリスマスプレゼントに。喜んでくれるかな?
 相馬はピンクと白、色違いのバレッタにメッセージを添えて2人の鞄に忍ばせておいた。
「…青春ですね」
「!?」
 いつのまにか…いや、ずっとそこにいた黄昏にそう言われて相馬は慌ててその袋を自分の鞄に突っ込んだ。
「こ、これは…あの…」
 赤くなって言い訳する相馬に黄昏は微笑む。
「内緒にします。大丈夫ですよ」
 黄昏の笑顔に、相馬は言葉を失って一礼するとこれまた逃げるようにその場を去った。

 こうやって皆でワイワイ過ごすクリスマスは初めてかもしれないな。
 そんなことを考えながら、黄昏は少し寂しげな笑顔で今日を振り返る。
 皆の笑顔が何よりの報酬。…俺も早く心からの笑顔取り戻さないとな…。

 みんなの心に幸せが来るように。
 メリークリスマス!


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:12人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
みんなのアイドル・
下妻ユーカリ(ja0593)

卒業 女 鬼道忍軍
撃退士・
九十九 遊紗(ja1048)

高等部2年13組 女 インフィルトレイター
撃退士・
天道郁代(ja1198)

大学部4年319組 女 インフィルトレイター
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
白銀のそよ風・
浪風 威鈴(ja8371)

卒業 女 ナイトウォーカー
駆けし風・
緋野 慎(ja8541)

高等部2年12組 男 鬼道忍軍
ウェンランと一緒(夢)・
周 愛奈(ja9363)

中等部1年6組 女 ダアト
未来につなぐ左手・
相馬 カズヤ(jb0924)

中等部3年5組 男 バハムートテイマー
カレーは飲み物・
最上 憐(jb1522)

中等部3年6組 女 ナイトウォーカー
悪魔囃しを夜店に響かせ・
饗(jb2588)

大学部3年220組 男 ナイトウォーカー
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
ソウルこそが道標・
命図 泣留男(jb4611)

大学部3年68組 男 アストラルヴァンガード
温和な召喚士・
日ノ宮 雪斗(jb4907)

大学部4年22組 女 バハムートテイマー
子供キャンプ参加者・
アラベル=D=クラヴリー(jb5255)

中等部3年3組 女 バハムートテイマー
リコのトモダチ・
神谷 愛莉(jb5345)

小等部6年1組 女 バハムートテイマー
夢見る歌姫・
指宿 瑠璃(jb5401)

大学部3年195組 女 鬼道忍軍
心重ねて奇蹟を祈る・
グリムロック・ハーヴェイ(jb5532)

大学部7年171組 男 ディバインナイト
撃退士・
光坂 るりか(jb5577)

大学部8年160組 女 ディバインナイト
リコのトモダチ・
礼野 明日夢(jb5590)

小等部6年3組 男 インフィルトレイター
闇を祓う朱き破魔刀・
織宮 歌乃(jb5789)

大学部3年138組 女 陰陽師
アツアツピッツァで笑顔を・
オブリオ・M・ファンタズマ(jb7188)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプB
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
悪魔でも楽しく・
ドロレス・ヘイズ(jb7450)

中等部2年10組 女 ナイトウォーカー