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マスター:皆瀬 七々海
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:5人
リプレイ完成日時:2013/01/10


みんなの思い出



オープニング

●教室内
 私たちに若者に与えられたものは、過ぎ行くもの。掴めないもの。見えないもの。不確かなもの。
 そして――力。
 あなたはどこにも行かないって言ったのに、逝った。私はいつまでも変わらないって言ったのに、変わってしまった。
 そして、あなたは穏やかな笑顔で手の届かぬ場所へと去って行った。
 どうやって止めればよかったの? 
 私には、今でもわからない。
 永遠に変わらないでいられる方法を教えて……

 そこまでノートに書いて、少女は手を止めた。
 窓際の席は寒い。ふと漏らした溜息も朝の空気に冷やされてほんの少しだけ白くなった。
 思いを綴るには静かな朝の教室がいい。特に、嫌な夢を見た朝には。
 でも、逃げている気がして悔しさが増してくる。
「こんなの……意味ない」
 呟けば、涙が零れてノートに落ちていった。
 悔しくて書いたページを真っ黒に塗りつぶす。書いた言葉さえ見たくない。
 インクと涙で滲んだノートは見るも無残な彼女の心の色に染まる。
 見なくていいという安堵と、後ろめたいような気持ちがない交ぜになって胸の奥を満たした。
 アウルという力で未来を切り開く勇気のない自分は、この久遠ヶ原学園に入学したにもかかわらず、前に進まず立ち止まっている。
 脳裏にひらめく、あの時の記憶。
 流れた血の多さと失ったモノのの多さに、心は鉛のように重くなってしまった。
「もう……悩むの、やめたいなぁ……馬鹿みたいだもん」
 吐き出してもマシにならないこの気持ちは隠しこんでしまおう。そう思ってノートに手を伸ばした瞬間、ドアが元気よく開く音が聞こえ、少女は驚いてそちらを見た。
「おっはよー! って……あれ?」
「おはよう……ございま、す」
「こんな時間にどうしたの? もしかして、クリスマスパーティーの準備? ……ってか、泣いてるの?」
「ち、ちがいます」
「そう……ならいいんだけど」
「購買行ってきます」
 それだけ言うと立ち上がって少女は教室を出ていく。
 クラスメイトは何か言いたげにしていたが、彼女が逃げるように教室を出ていってしまったので聞くことができなくなった。
 ただ、時々見かける落ち込んだような横顔と、いつも手にしているノート。
 それが印象的で、どうしてもクラスメートは彼女の寂しそうな姿が忘れられなかった。

●久遠ヶ原学園、廊下にて
「ねぇ、だからお願い!」
 いきなり目の前の女生徒は頭を下げた。
「彼女さぁ、編入してきたばかりなんだよね。最初は元気だったんだけど……なんだか日に日に元気が無くなっちゃって、心配でさー」
 正義感溢れる女生徒は、一つ溜息を吐いた後、同じ寮の隣人である同級生の身上を皆に熱く語って聞かせた。
「前の学校でさ、クラブとか頑張ってたみたいでね……虚脱状態っていうのかな。でも、今朝のはそんなレベルじゃなかった! それに、いきなりアウルの力に目覚めましたーって言っても、はいそうですかって言うわけにもいかないでしょ? アタシもそうだったしさ」
 週末はその子のために時間を使ってあげたいと言いたいのだ。
 とは言え、彼女と二人頭を突き合わせて話をしたところで、明るいムードを保てるかわからない。でも、なんとかしたい。
 そんな気持ちが空回りして、皆に声をかけてきたようだった。
「えぇい! バイト代も奮発してクリスマス兼歓迎会しちゃおうかな。寮の玄関脇の談話室でもいいし、行きつけの店でもいいかなあ。お金出せて5千久遠か一万か……うぐぐ、キツイ。でもいいや、出すわ!」
 暫し悩んだ後、景気よく女生徒が言った。


リプレイ本文

●朝の談話室にて
「おはようございます!」
 澄空 蒼(jb3338)は元気よく言った。
 きらきらと眩しい朝日が窓の外に見え、今日も一日素敵なことが起きそうな予感がする。
(楽しさは力なり、なのです♪)
「おはよう。いい天気だね」
 そう答えたのは、長身痩躯、白の長髪がトレードマークのジェラルド&ブラックパレード(ja9284)。
「本当にいい天気ですよね。雪のクリスマスも素敵だけど」
 楽しそうに黒井 明斗(jb0525)が笑った。
(主よ、彼女はきっと乗り越えられます。僕はそれを信じます!)
 信心深いキリスト教徒で人の役に立つ事が好きな彼にとっては、この手伝いはまさにクリスマスに相応しいイベントだった。
「夜には降るとは思うんですけど、どうかな?」
 高野 晃司(ja2733)はエプロンを付けながら言った。
 自分のクラスの教室前で、いきなり同じ学年の女生徒に頭を下げられたのにはびっくりしたが、そういう事情なら手伝わないわけにもいかない。
「予めチキンや飲み物は用意したんだけど、足りないものもでてくるよね? ……あ、おはよう」
 不意にドアが開く音がして、喋りはじめた君田 夢野(ja0561)はそちらを見た。
「おはようございまーす! 昨日は眠れなかったぁ」
 言いながら飛び込んできたのは、依頼人の女学生である高等部1年の月遊 神羽(ゆづき にけ)だ。
 ふわふわの白いニットにアーガイルチェックのプリーツスカート姿が似合っている。アップにした真紅の髪は緩くカールしているようで、印象としてはお洒落な生徒と言った感じの少女だ。
 そして、その後ろには大炊御門 菫(ja0436)が居た。
 二人は談話室の前で出会ったようで、二人一緒にやって来たようだった。菫はいつもの動きやすさをメインとした服装である。
「眠れなかったのか?」
「あははー☆ ドキドキしちゃってね。大炊御門さんが談話室を借りる手配してくれたし。こうしてみんなも集まってくれたし! 絶対イケるよ♪」
「そうか?」
「うん。誰かがやってきてくれて。目的に向かって動き出すんだなーって思うと、すごく嬉しい」
「目的?」
「「笑顔!」」
 神羽は人差し指をびしっと立てて言った。
「ん?」
 同時に聞こえたのは晃司の声。
「晃司くん、わかってるじゃん」
「まあ、ね。これは手伝わないわけにはいかないですよ」
「ひゃっほーう♪ 晃司くん優しーっ、愛い奴め〜☆」
「あわわっ!」
 いきなりハグされて晃司は仰け反った。
「あ、ごめーん」
「まあ、はしゃぐ気持ちもわかるけどね。……おや、彼女が来たよ」
 談話室の窓ガラスに映った姿に夢野が言った。
 ドアを開けようと手を伸ばした少女の姿に、皆の意識を促そうと視線を配る。
 そこには大きな瞳が印象的な少女がいた。
 元気な時であれば、そこそこ男子生徒にも人気は出そうな子に見える。

「あ、あの……おはようございます」
 消え入りそうな声で少女が言った。
「おはよう。そこは寒い。中へどうぞ」
「はい。高等部の柳瀬です。呼んでいただいてありがとうございます」
 柳瀬と名乗った少女は頭を下げた。
「あ、柳瀬さんと言うんですね! お名前聞いてなかったので……よかった」
 嬉しそうに明斗は言った。
「会場の準備が終わったら迎えに行こうと思ってたんですよ」
「お手伝いしなきゃと思って」
「それはありがたいな。で、呼び捨てでいいならいいんだが。それも何だし、下の名前も教えてもらえるだろうか?」
「あ、すみません。みほと言います。漢字は、美術の『美』に、稲穂の『穂』です」
 まだ戸惑いの中にいるらしい。時々、視線を彷徨わせながら答える。
 その様子に、菫は自分が幸運であるとは思う反面、共感や辛い気持ちを共有できないことやるせなく思った。
 撃退士としての力で守っていく事を使命とする家で育った菫には、相応の辛い経験を積んだ過去などない。口で幾らでも言えるが、そんなのは偽善になってしまう。
(だが、せめて出来る限りの事を)
 菫の情熱が、更に熱を帯びた。
「手伝ってもらえたら嬉しいんだが」
「じゃぁ、お料理のお手伝いをさせていただきますね。片付けとか」
「あ、こっち手伝ってくれると嬉しいです」
 晃司はネットで調べたチーズケーキとアップルパイの材料をまとめたメモを、夢野に渡しながら言った。
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそ。じゃあ、キッチンに行きましょうか」
 晃司は歩き出し、美穂も後を追った。
「私のクッキーの材料もお願いするのですー」
 蒼は精一杯背伸びして、夢野にメモを渡す。
「了解。え? み、ミカン?」
「はい、そうですよ。マーマレードにして挟むのです」
 満面の笑顔で蒼は言った。
「よーっし! 私も頑張って手伝うわ。頑張りましょ〜!」
 万歳ポーズで神羽が笑った。
 彼女自身も楽しく、快哉を上げたい気持ちなのだ。
 見渡せば、頼もしい仲間の笑顔がある。
(なんか、気持ちがばんばん伝わってくる感じ! 絶対に成功する!)
 神羽は思った。

●談話室の飾り付け
「よし、できた! あとはこっちを飾って」
 真剣な表情で、明斗は会場の飾りつけをしていた。
「月遊さん、これでどうですか?」
「OKOK! で、何で手作りなの? やっぱり安心感?」
 時々、依頼主に声をかけては入念に仕上げていく明斗に、神羽はふと気が付いたことを訊いてみる。
「お金をかけてたら、柳瀬さんが気を使うかもしれないと思って」
「わざわざ、大変な方を選んだの?」
「手間はかかっていますけど、大変っていうほどじゃ……」
「ふぅ〜ん、明斗くん。優しいんだ」
「そ、そんじゃないですよ」
「うふふ♪ あ、美穂が来た」
「え?」
 顔を上げると、セッティングの準備にテーブルを見に来た美穂の姿が見えた。
「みーほ〜♪」
「はい?」
「あ、月遊さん!」
「えへへ☆ 飾り付け、どう?」
「教室の中でパーティーしてるみたいで……素敵です」
 美穂は前の学校のことを思い出したのか、微かに笑った。
 それが嬉しくて、明斗も笑う。
 だが、談話室の飾り付けをしていた菫の視線を感じ、恥ずかしくなった美穂は俯く。
 菫の想いがまっすぐな視線へと現れたせいなのだろう。戸惑う美穂は嫌じゃないと感じているのに、上手く伝えられなくて走り去る。
 しかたないなと苦笑して、菫は飾り付けの続きをすることにした。
 ツリーは勿論、クリスマスらしい飾り付けを意識して明るい雰囲気になるよう飾り付けに努める。
 絡まった心の縺れはいつか解消する。でも、今はできることをやるだけ。
 菫は黙々と手を動かし続けた。

●買い物
「紅玉とバター、小麦粉……あとは、牛乳、クリームチーズにレモンか」
 ポイポイと籠に入れて、次なる食材を探す。
(俺が彼女と同じ境遇だったのは、13年前だったかな)
 ふと、夢野は思い出した。
 大好きだった家族は死んでしまい、5歳にして天涯孤独になった。でも、今の義父さんや学園の友人と出合ったお陰で前向きに生きていられる。
 辛くて――大事な思い出。
 かけがえがない経験だからこそ、辛くても手放したくない大切なもの達。
 夢野は先輩として彼女を助けてあげたいと思った。
(何よりも、人々の"夢"を護る事は俺の生きる指標だから)
「ま、気取って言えば学園への恩返し、って所かな」
 独りごちて、笑った。
「あ、これは結構いいヤツだ。彼女の為なら安いもんかな」
 イベリコ豚のベーコンを見つめつつ、クラブハウスサンドに使えるなと考える。
 最悪、自腹を切ることも覚悟していた夢野は、それを籠に入れた。
「さて、みんなが待ってるし。早く帰ろう」
 夢野は立ち上がると、レジに向かった。
(帰ろう、仲間の元に。俺たちの大切な場所に)
 そして、彼女にとってもそうなるように。夢野は祈った。

●キッチン
「柳瀬さん、テーブルは運んであった?]
「はい、高野さん。夢野さんも帰ってきました」
「じゃあ、始められるね」
「高っ。わーぉ、イベリコ豚♪」
 美味しそうな食材が揃い、楽しそうに声を上げるジェラルド。
「伊達にバーのマスターやってませんよっと♪」
 おどけて言いつつ、美穂と晃司の方を見てクスッと笑った。
 その視線に、美穂は恥ずかしそうに下を向く。
 美穂にはジェラルドが人との「大人の付き合い方」というものに慣れているように感じ、心を見られそうで恥ずかしかったのだ。
「美味しいモノは幸せ気分になれるです」
 手伝う蒼も小麦粉片手に笑顔で言った。
「だねぇ」
「柳瀬さんの『寂しい』も幸せで消えるのです」
「悲しい思い出も時には大事。でも、前に進まなきゃいけないんだよねぇ。ツライね、人生ってのはさ☆」
「でも、彼女には今があるです」
 蒼は恨まれる側にいた者だから、彼女の過去を慰めるのは良くない事だと思い自重していた。
 彼女が自分を否定したり、攻撃しないだけでも、幸せなこと。きっと、道はあるはず。
 そう納得すると、蒼はタコヤキの材料を食べやすいサイズに切り揃えたりして、ジェラルド達を手伝った。

「あの……柳瀬さん」
 スイーツを作りながら、晃司は美穂に言った。
「はい?」
「俺も目の前で人の死を見たよ」
 自分にも彼女にも重い言葉だった。
「少し昔話に付き合ってくれないかな」
「はい……」
 バターを織り込みながら言う晃司の言葉に、美穂は頷いた。
「俺は二年ほど前まで天魔の存在を知らなかった。というか、聞き流してた。興味なかったから。そしたら、ある日目の前でディアボロに姉弟を……。
そこで、初めて天魔を知った」
 天使や悪魔なんてアニメの世界みたいで面白い。すぐに強くなって英雄にだなんて思っても、実際にはそうじゃない現実。
「頑張ったさ、伯父や祖父に特訓してもらった。それで、撃退士になった――柄にもなく頑張ったよ」
 チーズケーキとパイを焼き始める晃司を、美穂は黙って見つめた。
 晃司も振り返り、一瞬、見つめ返した。
 彼女の瞳は、凍ってない。
(……大丈夫)
 晃司は思った。
(炎は消えてない)
「頑張れなんて言わない。今すぐ決めろ何て言わない。戦えなんて言わない。逃げるななんて言わない」
(……言えない)
 晃司は想いをゆっくりと伝え、彼女はただ頷いた。
 晃司は彼女を見た。
 瞳の炎は、消えていなかった。

●パーティー
「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」
「めりくり!」
 神羽が声を上げた。
「メリークリスマス、です」
 控えめながら、美穂も言った。
 少しだけ、彼女の雰囲気が変わっている。
 ミートローフ、チキン、クラブハウスサンド、パイ、ケーキ、たこ焼きになどの料理。ノンアルコールカクテルは飲みやすい炭酸系で、レモン、桜、ライム。シアトル風コーヒーはバーからこだわりの豆を持ってきてその場で挽いて淹れるという贅沢ぶりだ。
「さ、お好きなモノを注文してね☆」
「私が作ったクッキーです。色々な味を用意したのですよぅ」
(悲しみを超えられる物を作りたいのです)
 これから先にも楽しい事があるって知ってほしくて、蒼は美穂に微笑みかけた。
 美穂は少し微笑んだ。
(雪が降り積もるように、彼女の中にも温かい何かが積もったのかもしれないね☆)
 ジェラルドは笑みを浮かべた。
「さあ、イベントと言えば。ロシアンたこ焼き! 激辛味はもれなく昇天一名様だよ」
 その言葉に、明斗がごくりと喉を鳴らす。
 中には、道産子も唸る「涅槃へ旅立つ地獄のピッキーノペーストカレー」入り。
 当たりのたこ焼きには、真ん中に紅生姜を立てておき、それを明斗が引き当てるよう事前に打ち合わせを行っていた。
「じゃ、じゃあ僕が」
 明斗が手を伸ばそうとした瞬間、神羽が楽しげに言った。
「あ、たこ焼きのアホ毛だー♪」
「え?」
「紅生姜のアホ毛、いっただきー☆」
(あー! それは激辛死亡フラグです!)
「ぼ、僕が先ですぅ!」
「ふわぁ? あッ!」
「ゲットー!」
 横からたこ焼きを取り上げると、明斗は自分の口に放り込んだ。
「う、お。あー!」
「大丈夫?!」
「あ"〜〜〜ッ!」
(食道が、食道が痛いィ!)
 オーバーキル完了。
 明斗は本気でのたうちまわった。
「アイスラテをどうぞっ」
 美穂は慌てて明斗に差し出す。
「牛乳は保護膜作ってくれますから」
 そう言いつつも、涙目になった明斗の様子に、ふと美穂は微笑んだ。
 明斗とジェラルドの仕掛けたイベントに美穂は気が付いたのだ。
「あの、無理しないで」
「え?」
「ふふ……気が付いた?」
 ジェラルドが口角を上げる。
「はい」
「よかったね、キミを想ってくれる仲間がこんなに出来て♪」
「ありがとうございます。私、前の学校に代わるものなんてないと思ってましたっ」
「そんなのあるわけないよ」
 ハーモニカを片手に、夢野が笑った。
 クリスマスキャロルの楽譜を広げる。
「宝物なんだから、代わるものなんてないさ」
 変わり行く事は怖い。優しい過去が無くなる事も、先の知れない未来へ行く事も。
 だけど『今』だけは、友と笑いあうこの一瞬だけは、決して変わらない。
「もしかしたら、変化した先はもっと楽しいかもしれないじゃないか。怖ければ友達を頼ればいい。その一点だけは決して変わらないから」
「はいっ。私……やめますから、悩むの」
「悩んでも頼ればいいのさ。折角だし、一つ俺の音楽を披露してもいいかな?」
「はいっ」
 美穂が頷く。
「俺からは、このパーティーが終わった後でも会える方法をプレゼント♪ 同じ学校だけどね」
 バーの名刺を渡し、ジェラルドは微笑んだ。
「とりあえず、メアド。心に色々溜まったら、此処に遊びにおいで☆ いつでも待っているよ♪」
「あの……照れます」
「私も、いつでも遊びたいのですよ」
 蒼は美穂に抱き付いて甘えてみた。
「私からは、これを」
 菫は美穂にウンディーネの涙という名の指輪を渡した。
 そして、アウルの力で霞を現し、金属製の糸――カーマインを放っては仕舞う。発生した冷気が霞の中で輝き、一瞬で消える小さな雪景色になった。
 手品の一種だと言うつもりだったが、もう大丈夫そうだ。
「綺麗ね」
 ぼんやりと美穂は言った。
 どうしたらいいのかと悩み、そして戸惑いつつ指輪を手のひらで包む。
「綺麗に使うのも、自分たち次第だよね」
 神羽が呟いた。
 靄が凍って光に照らされ、光の塵が輝く。それは、紛れもなくアウルの力によるものなのだ。
 きっと、みんなから貰った気持ちやエネルギー。その他、言葉にできない色々なものは、自分が用意したプレゼントには遠く及ばない。
 でも、皆に還したい。
 この気持ちだけは。
 美穂は顔を上げて、皆を見つめた。そして、プレゼントを紙袋から出す。
「あの……ありがとう。それと、ごめんなさい心配かけて。これ、月遊さんと作ったチョコバーなの。貰ってください」
 今、美穂に言える精一杯。
 自分から、仲間へ。友人と、呼びたい人たちへ。
 「ありがとう」と、「よろしくね」を二つ。
 今一番受け取ってほしいもの。それは――自分の今と、未来。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

創世の炎・
大炊御門 菫(ja0436)

卒業 女 ディバインナイト
Blue Sphere Ballad・
君田 夢野(ja0561)

卒業 男 ルインズブレイド
覚悟せし者・
高野 晃司(ja2733)

大学部3年125組 男 阿修羅
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
鉄壁の守護者達・
黒井 明斗(jb0525)

高等部3年1組 男 アストラルヴァンガード
チョコバーが繋ぐ絆・
澄空 蒼(jb3338)

中等部3年4組 女 陰陽師