●桃色おにごっこ
「何故だ…どうしてだ! 何の因果で、こんな変態に遭遇するんだ!」
笹森 狐太郎(
ja0685)は追いすがるだんじりと怪物的幼女から目を背けた。正確に言えば、前を見ないと巻き込まれるという理由でもある。
気を抜けば地獄行き。捕まれば地獄行きのワンウェイ。
「手伝おうと思ったことが罪だとでも言うのか! 神よ!」
周囲に被害が出ない様に、変態(幼女)と一定の距離をとりつつ逃げていた。
(「せめて一般人には被害を出さない、これは撃退士の使命! 使命とは! 嵐の中を突き進む道標!」)
そう考える事で、恐怖を紛らわせていた。
「お神輿イベントやなかったんかΣ」
木瀬 陽愛(
jb7790)は、ぶるああああっっと走ってくる幼女に対して恐怖を感じざる得なかった。でも片手にスマホを持ってパシャリ☆
「ふふ…またこういう事になっちゃったんですね……うわあああん!」
泣きながら走る、ロシールロンドニス(
jb3172)。
体が小さく、丁度サイズの合うだんじり装束が無かったロシールは同居してる女性が用意してくれた祭装束に着替え……
で、この有り様。( ´∀`)
「わぁああん! 下半身は褌一丁なんてヒドイっ!」
丸見えなお尻がprprしていた。防御力の欠片もない己の姿に運命を感じざる得ないロシールだった。
追い掛けられて必死にだんじりを曳くロシールの姿(主に尻がw)は、上気してほんのり赤くなった白桃。
それを震わせ走るその様は、まさにラブリーピーチ!
「可゛愛゛い゛お゛兄゛ち゛ゃ゛ん゛達゛大゛好゛ぎ♂」
天使よ、天使。心は天使。姿は――トロール。
「あのコテカなんですかっ(」
「俺も可愛いお兄ちゃん入りかよっ」と、陽愛。
「んー……外見は、TransgenderとかDragQueenの知合い多いから問題なし」
「え゛ぇっ?!」
ロシールはさらりと言った 江戸川 騎士(
jb5439)の言葉に愕然とした。
人生、色々な人間に遭遇するもので。ハイでファンキーでマッドでデンジャーなんて、どこにだって転がってるマイ・ウェイ(人生)。
石を蹴ったら当たって跳ね返るぐらい見てきた。
「だが、どうもこの手を見るとイジメたくなる……(ウズッ」
イケメンの騎士は怪物幼女を逆に品定めするような視線を投げた。
「儀礼服は似合う似合わないに関わらず細心の注意。隙なく着こなすべしと教わっているからな。どうも、奴さんの髪型はイケてねぇから直したいぞ。むーん」
「そっちですかッ」
ツッコんだ陽愛はお神輿イベントを楽しむ目的で参加表明したのだが、来てみればこの調子で、わが身の危険が危うくなっている(別な意味でも。
「ここはうちに任せて逃げたって!」
「木瀬さんっ……あなたを独りにはできません。僕も一緒に戦います」
陽愛の申し出に、涼風 桂(すずかぜ けい)は涙を浮かべながら陽愛に言った。意を決して桂は告げる。
「ほな、逃げるで、とうk……あっ、アイツ、休みやったああああ」
「木瀬さん!」
軽くパニくった陽愛に桂は声を掛ける。
「お、おうっ……大丈夫。堪忍な。ちょ、ちょっと焦っただけや。よ……よしっ、皆落ち着くんや、落ち着いて素数を数えつつ逆立ちして犬の真似や!」
「えーっと、素数って?」と、狐太郎は真顔で。
「「わんわんっ!」」
燈辻と桂は同時に言った。
「うああッ!!! 素数が必要なんや! 泣き声はあとやっ。素数ー! そーすーうー!」
パニックで度忘れした陽愛に訪れた悲哀。突っ込んでもらえなかった芸人のような反応で仰け反った。
「とにかく、これでも食らえぇ!」
陽愛は丁度良く直線状にだんじりが見えなかったのをチャンスとばかりに、炎の球体を出現させて撃ち放ちった。
「お゛兄゛ぢゃぁぁぁーーーーん゛!」
その直撃を食らい、怪物幼女は……
ズギャーン!!
………………………………
………………
ドコッ!
「やった!」
陽愛は歓声を上げ……そして、
絶望した。
「なんでやねん!」
頬を赤く染めながら、少々お約束ぽく髪の焦げた怪物的幼女はお尻をブリブリと振って走ってくる。本人はぶりっこしている気らしい。
「お゛兄゛ぢゃん゛、どっ゛でも゛照゛れ゛屋゛だな゛ん゛だぁ♂ 桃゛実゛ぢゃん゛……照゛れ゛ぢゃう゛♪゛」
「ぎゃー! 人外!」
「木瀬さん、落ち着いてっ」
燈辻が言った。
「うちが相手や! 抱くなら抱けや!」
「木瀬さんっ! いのち、大事にだよっ! 無茶はダメだよォ!」
桂は手を伸ばした。しかし、陽愛はまるで子供向け番組の主人公の様に瞳を輝かせ、皆に言った。
「俺が礎になるから……」
「木瀬さん……」
「どやァ!(ドヤ顔」
何故か止まって陽愛は上着を脱ぎ、皆の逃げる時間を稼ごうとした。そして、幼女の顔面めがけて容赦なく【炸裂符】。
小爆発する札を手の中が生み出され、冒涜的幼女に投げつけた。
ギャァァァーン!!
………………………………
………………
パアンッ!
「お゛兄゛ぢゃ゛ん゛の゛情゛熱゛、受゛げ止゛め゛だげる゛の゛ォ゛♪」
「ちょっとだけやで? ちょっとだけやで?! ぎょーさん、抱くなしー!」
陽愛は走った。たとえ、それが勝ち目のない闘いであっても、戦わずにいられない。曲げられない想い、叶えたい夢がある。
そう、うちは撃退士。正義の味方。
脳内にエンディングが流れる。
GO GO! 陽愛(まちがっても ひあい って よむなよ?
行け、負けるな 天魔を倒せ
君のいく道 険しくとも
お前の後に 誰かがイクさ
レッツ ゴー! サークル潜って
一般人を救うんだ
たとえ、重体になっても(
「うちの生き様を見ろやあ!」
皆と逆方向に走り、陽愛は囮になった。
怪物的幼女はしっかりと先程の攻撃で温度を感じることに困難を感じてはいた。しかし、今は活きのイイお゛兄゛ぢゃ゛ん゛がこちらに向かって来ていることで、そんな障害など気になってはいなかった。
「おまえなんか、可愛くねぇし!」
どこか、カッコつけた幼稚園児のようなセリフを吐きつつ、幼女に向かって鋭い視線を投げた。
しかし、幼女には通用しない。むしろ、お兄ちゃんが傍に来てくれたことが嬉しいようだった。
飛んで火に入るナントやらとは、これ如何に。
――皆が無事ならそれでいい……うちがダメでも、仲間が何とかするやろ……堪忍、な。
「ぶるああああああああ!! お゛兄゛ぢゃ゛ーん゛!」
「ふっ、うちもここまでのようやな…優しくしたってな?」
「あ゛い゛っ゛♪」
ぶちゅうううう♪
………………………………
………………
陽愛は逝った(気分的な意味で
●肉屋の前で
「木瀬さーん、木瀬さーん!」
桂は己の不甲斐なさに泣いた。
「木瀬さんのためにもみんなを助けなくっちゃ」
「うん……」
だがしかし、桂たちが思ってもみなかった事件が起きたのだった。
途中のカーブは一階がお肉屋さんの商店街の入り口。その入り口でロシールがまさかの転倒。
だんじりに引かれる事は無かったが、その後が悪かった。
ぶちっ!
「えっ?」
そうなんです。
その時、僕――ロシールロンドニスは異音を聞きました。
と、同時に僕の運命とアレやソレな展開が待っていることも……どうやら褌の紐が切れて落ちてしまったようです。
転倒して、前のめりに両手をつき、あぁ……そんな恰好するだなんて(涙)
丁度、四つん這いでお尻を高く上げた状態になっていまして。
つまり……後ろからは丸見えと言いますか……隠すところ無いぐらいにっていいますか。
おまけに、僕――つい、何時もの癖で、無意識のうちにタウントを使用してたんです。
近づいてたんです、ソレ。
そう、それは猪の様に。
怪物的巨躯の幼女の不気味な笑みが見えました。足元には、木瀬さんが最高の笑顔で倒れていました。
ズキュン☆
「き、キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゜Д゜)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_-)=゜ω゜)!!」
あぁ、視線が痛いです。
「抱゛ぎじめ゛で、世゛界゛の゛果゛で゛ま゛でー♪」
アーーーーーーーーーーーーーッ!
………………………………
………………
……アッ(
あとは目くるめく走馬灯のように、僕の人生が流れていきました。
※蔵倫※られ、背後からハグされたら……
僕の全ては見物の皆さんに曝け出されてしまうでしょう。
開脚ばっち来い☆ だなんて、アァ……
「※蔵倫※! ※蔵倫※※蔵倫※! ああああアッー!」
叫ぶしかありません。
「お゛兄゛ぢゃ゛ーん゛♪」
「もう許して…※蔵倫※…※蔵倫※ゃううう!! 」
ぶちゅうううううう♪
日頃の仕込みを恨みます。
甘く抱きしめて、子猫さんの甘噛みを受け入れないなんて紳士の名折れ。
熟練した※蔵倫※で無意識のうちに迎撃してしまいました……僕、変態ですよね?
「ロシールさああああん!」
桂さんの絶叫が聞こえます。きっと、彼の兄さんには説明できないあれやこれやな学園生活。むしろ、あなたの人生に幸あれ。
「完……食……」
きっと、今の僕はいい笑顔のはず。あぁ、やっとこれで気絶でき……
●誘導
そうして、ロシールは倒れたのだった。
勿論、お尻も完食されている。○んぐりがえしの恰好に倒れ伏す。ロシールの桃も、※みゃー※も、肉屋にポロリと零れた。
「まあ…突撃と腕の届く距離には注意だな」
走りながら騎士は呟いた。
近づいた時に異臭がしたので、あれは口臭じゃないかと騎士は判断した。
(「そう言えば、さっきやられた他の撃退士はキスされていたな。髪がぼさぼさな点からして、息が"フローラル"とかってのは無理だろうな」
口臭で死にそうになるかもしれないと考えると、騎士は軽くブルーになった。
「さぁ、今度はこっちだ!」
騎士は携帯片手に叫ぶ。
月遊 燈辻の姉である月遊 神羽(jz0172)と携帯電話で連絡していた。
向こうも向こうで大変らしい。バナナ・フィーッシュ!な「だんじり」に遭遇するのも勘弁だが、その状況は使えないことはない。
怪物幼女が「だんじり」に出会いがしらに轢かれる様、鬼ごっこ曰く、遠距離攻撃しながら誘導することを思いついた。
「岸和田の"だんじり"は4t位だから。衝突すれば、そこそこの足止めになるはず!」
「え? 大丈夫ですか?!」
桂は心配して騎士に言ったが、理論的にも、状況的にも、不可能ではないし。やれないことはなさそうだ。
そして、騎士はつり橋効果を使う秘策を考えていた。
一方……狐太郎は別の事を考えていた。
そう、桂をダシにしようと考えていたのである。
(「考えろ、考えるんだ狐太郎。突破口は必ずある。ヤツが満足したら消えてくれるかもしれない! ここには美形が多いからなッ!」)
狐太郎は桂の方を向いて言った。
「涼風桂君! キミなら……いや、キミにしか出来ない!」
「へ?」
「ヤツを満足させれば、一般人が逃げる隙を作れる!」と、駄目元で提案。
「キミの勇気で皆が助かるんだ! 人助けだと思って!」
「えー! やだよー、爽兄さぁーーーーん!」
種子島で待っている、大切な兄の名を呼んで、桂はイヤイヤと首を振った。
「チッ……だめか。だろうなぁ」
「僕……嫌です。まだ死にたくない」
桂は悲しそうな顔で言った。やっと、心から友人と呼べる人達ができたのだ。いつもカメラを持っている彼。お料理の上手な子と音楽が好きなあの子。そして、他の人々。
大切な大切な絆。
「んー、それ以外の真っ当な対処法としては、もう一方と合流して月遊さんのお姉ちゃんが言ってたって言う「ぶっ飛んだだんじり」とそこの幼女同士を対面させる事ぐらい、か」
狐太郎は唸った。
「そのだんじりとアレ(幼女)が反応するか分らんが、毒を持って毒を制すれば、あるいは! という訳で、他に手段が無ければ目的地まで敵を誘導し続けることを提案したい」
「こっちもやりたいことがあるし、それで行こう」
「皆さんがそう言うなら……頑張りましょう」
桂は頷き、怪物幼女を誘導し始めた。
『にゃんにゃー!』
「くそォ…可愛くて攻撃できんわっ!」
『にゃおーん!』
猫サーバントだか、ディアボロだか、の攻撃を潜り抜け、狐太郎は走り抜けた。時々、怪幼女に石火を食らわす。
破れかぶれで敵の急所と思えるところを攻撃したが、「い゛や゛ん゛、痒゛い゛♪」と言われただけだった。
「燈辻ー! 桂君!」
「お姉ちゃん!」
神羽の声が聞こえた。
向こうから、残念無念なだんじり型ディアボロがご神体をピクンビクンさせ、※蔵倫※と突っ込んできた。
「今だ!」
騎士が叫ぶ。猛進してきただんじりと怪幼女が激突し、店や的屋を巻き込んで両者はすっ転んだ。
「痛゛い゛よ゛ォー」
『ばなな・ふぃーっしゅ!』
両者の力が拮抗するのだろうか、怪幼女は轢かれて弱ったようだ。騎士は狙っていた作戦を敢行する。
「やぁ、大丈夫かい?」
奴さんの隙を突き、騎士は背後からタッチ。新しく身につけたスキル『友達汁』を使った。ついでに、相手の心を惑わせるような、妖しく美しい笑み『魔笑』でにっこり。
「ほら、男がなびかないから襲うのは、女子力を下げるよ? それに、ピンクが好きなら髪はローズピンクなどグラデーションに染めるほうが似合う」
髪型を直してやると、怪幼女はうっとりと見つめていた。
「お゛兄゛ち゛ゃ゛ん゛…」
「美の追求は、一日にならず。俺は太らない。筋肉をつけすぎない努力をしているぞ」
「う゛ん゛♪ 桃゛実゛も゛頑゛張゛る゛♪ 今度はお゛兄゛ち゛ゃ゛ん゛に゛お゛礼゛に゛来゛る゛ね゛(はあと」
怪物的幼女は白い翼を広げ、ぶわっと翼を広げて飛んだ。
今度はこのお兄ちゃんに好きになってもらえるように、この幼女は心に誓う。
そして、彼女はいずこかへと消えた。
だんじり騒ぎはロシールの件もあって、ラブリーピーチと称され、依頼のファイルへとしまわれた。
色々とアレでソレな騒ぎだったが、無事、生徒たちは学園へと帰還したのだった。