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マスター:皆瀬 七々海
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2012/11/23


みんなの思い出



オープニング

 文化祭である。
 大事なことだから、もう一度。
 文化祭である。
 それなら、何やってもいいよね? お祭りだから。
 学生は元気な方がいいよね? 世知辛い世の中だし。
 それでは、我は告げよう――魔乳党の夜明けを。

●校舎屋上
「あーつまんねー!」
 高校生Aは本を放り投げて言った。背表紙には「激闘! 久遠ヶ原学園TRPGマニュアル」と書いてある。同人誌のようだ。ちなみにエキスパンションはまだない。
「高校にもなって、文化祭でやることないからって屋上でTRPGかよ。俺の青春こんなんでいいの?」
 高校生Aはキャラシートをペラペラと振った。その度に、彼が描いた魔乳の美少女が揺れた。
「お前の青春なんて知らねーよ」
 高校生Bが薄情にも言った。
「お前の弟とやりゃあいいだろ! 俺は文化祭の雰囲気に浸りたいんだ」
「ほう……文化祭の雰囲気ねぇ。それなら、思う存分その忌まわしき空気を吸うがよい!」
 そう言って、高校生Bは校庭の方を指さした。
 下から出店を回る学生たちの楽しそうな声が聞こえている。その中に恋人との逢瀬を楽しむキャッキャウフフな声も交じっていた。
 それに気が付いた瞬間、高校生Aのこめかみがピクピクと動く。
「何か……ムラムラッと……じゃなかった。ムカムカッとくる声が聞こえるんだが」
「あぁ、ムラムラするし、ムカムカする声でもあるな」
「俺たち……もしかして【ぼっち】なのか?」
「もしかしなくても【ヒトリぼっち】だろ。俺たちは【ぼっち友】だな」
「認めたくないものだな、若さゆえのあ……あ"ぁ"ッ"!?」
 意味不明の言葉を紡いだ瞬間、高校生Aはいきなり叫び声を上げた。沈痛な表情を浮かべると、拳を握りしめてフェンスの向こうに見える、すぐ下の教室の情景に目を奪われる。硬直したかのように動かなくなっていた。
 そして、何気なくその視線の先を見た高校生Bも驚愕し、同じように硬直した。
「なん……だとうッ……」
「俺の……」
「いや。俺たちの、だ」
「「マドンナ(おっぱいちゃん)がぁ……」」
 斜向かいの教室の窓際で、二人の生徒が仲睦まじげにしているのが見えた。どうやら恋人同士のようだ。
 弾けるような笑顔の女生徒と、そんな彼女と過ごす時間がまんざらでもない様子の彼氏。幸せそうである。
 そして、なんと女生徒の方は、シャツを第二ボタンまで外していた。
 彼を誘う魅せ魅せシルエット。ちょっとだけ解放した襟元からは、ボリュームのある胸がわずかに見えていた。どうしてその距離で見えるのとか言ってはいけない。青春時代の男子の眼力とはそういうものだ。
 (大 好 きっ ♪)
 そんなオーラが見えそうな甘い情景。
 沸々と、高校生AとBの心に黒い感情が沸き起こる。
「ぶるああああああああああああああ!!! 憎いィ! ヲレのおっぱいを奪った奴が憎いィ!!」
「正気でなどいられるものかっ。彼女に彼氏がいただと! うおお……俺はおっぱいが好きだッ! 俺はおっぱいが好きだッ! 大事なことだから以下略だ。もにゅりと揺れるあの姿が好きだ! ちっぱいが大きく見せようと必死に寄せ上げブラをする姿も好きだ! おっぱいは心のオアシスだ。決して邪悪な欲望ではない。母性と一つになりたい永遠の願望(嘘)だ。そうだ! 今は文化祭。俺たちのカーニバル&フェスティバ〜〜ルだ。パイ拓取って神に収穫を感謝する儀式をすべきだ! 決してリア充が憎いわけでは……憎いわけでは……やっぱ、憎いわッッ!!」
「俺も同じ気持ちだ。そうだ、革命を起こそう。窮屈なブラウスから溢れる愛を開放し、まるごと君に捧げよう!」
「そこに痺れる、憧れるゥゥゥ!!」 
「「乳(にゅう)、乳! ハイル、おぱーい! ひゃっはァ!」」
「ちょーっと待ったァ!」
「だれだ!」
「アタシは【愛の雄っぱい♂】党員。乳はお父ちゃんのためだけにあるのではなく、ましてや女だけにくっ付いてるものではなくってヨ!」
「「漢女キターーーーーーーーーーーー!!!」」
 振り返ると高校女子の制服を着た男子生徒――乳(にゅう)カマーな香りが漂う漢女がそこにいた。
 お肌のお手入れは完璧。化粧もばっちりセクシーメイク。女より高い女子力が高そうだ。ただし、その筋肉の存在感から漲る雰囲気は尋常ではないものを感じる。
 高校生AとBは重戦車を目の前にした気分になった。これが同じ撃退士と思うと恐ろしい。
「アナタ達は女のおっぱいが欲しいんでショ? アタシに男の方は任せて頂戴。でゅふふの腐♪ じゅるじゅるリア充、美゛味゛し゛く゛い゛た゛た゛き゛ま゛ーす」
「「 命キケーン!」」
「失礼ネ。邪魔者が半分減るんだからいいじゃないのヨ。ああ、そうそう。こよなく臀部を愛する【愛臀党】も呼んであげるワヨ」
「あいでん?」
「尻ヨ、尻」
「し、尻か……それは魅惑的なご提案。だがしかし、人員が足りないんじゃないか?」
「あら、うちには精鋭の女の雄っぱい党員も男子の雄っぱい党員もいるのヨ? 十分に戦えるワ」
「そ、そうか」
 とんでもないことを高校生Aは聞いた気がしたが、気にしないことにした。憎っくきリア充をブチブチぶちのめして恥辱に塗れさせ、栄光のパイ拓を得るには協力者は必要だ。
「紙だッッ! 紙と墨を持てぇぇぇ!! 合戦じゃぁ!」
 高校生Aは立ち上がり、キャラシートを握りしめた。幸いにして紙はいくらでもある。
 出店で賑わう校庭を見下ろし、高校生Aはニタリと笑った。

●教室
「ごめんなさいね……文化祭の最中なのに」
 依頼を担当する教師は言った。
 誰か馬鹿をやる子が出るのはお約束。そう思っていたのだが、被害のヒドさに溜息をついていた。
「【魔乳党】を名乗る生徒がその……パイ拓を採ろうと暴れてるのよ。服の上からだけど。とにかく足が速くてね。恋人同士を狙う率が高いみたいだけど、今のところ5件ほど被害が出てるの。でもね……」
 溜息をつくと、教師は話を続ける。
 【魔乳党】幹部は二人。以外にも【雄っぱい♂党】と【愛臀党】という仲間がいるということを告げた。
 【雄っぱい♂党】は四人。重量級ボディーを活かしたベアハッグが得意な男子生徒を筆頭に、腐女子二人と男子中学生の構成だ。
「これが送られてきた写真よ」
 教師は送られてきた写メを見せる。出店での撮影だろうか、飛び散るケチャップを背景に、パイ拓を採ろうと襲いかかる生徒が写メに映っていた。
 方や、【愛臀党】の幹部は一人であった。どうやらマイナーなのだろう。
 「お尻愛になりませんか?」と書かれたたすき掛けをかけ、端の方にいるあたりは非常に侘しいものがあった。
「リア充が羨ましいのはわかるけど、これはダメよ。お願いだから、この子たちをとっ捕まえて頂戴」
 そう言って、教師は何とも言えない深いため息をついた。


リプレイ本文

●撃退士、天城出陣
「むぅ……風が……」
 邪悪なるものを感じた――ような気がした。禍々しき欲望の嵐の予感というべきか。
 いつもの木の上で、下界たる文化祭の様子を監視していたのは、天城 空我(jb1499)。古風な口調が特徴的な生徒だ。
 自分が依頼を受けた仕事、例の連中が現れたのかもしれない。天城はにわかに騒がしくなった方向を見ると、意を決して木を降りた。悲鳴と怒号が入り混じっているはずの、事件現場へと走る。
 騒がしい場所を探して走れば、難なく目的の相手へと遭遇することができた。
「乳(にゅう)! 乳! カップルが憎いィ!」
「助けてえ!」
「やはり、魔乳党かッ!」
 天城は全身黒タイツ姿の軍団を前に、緋色に輝く刀身と二重の鍔が特徴的な大ぶりの刀を抜き放って構えた。女生徒が狙われていては黙っていることはできない。
「自分と同じく撃退士なれど、容赦はせん! いや、それゆえに容赦できぬ」
「わけわからん奴が来たニュウ。こいつのパイ拓採って恥ずかしい姿を晒してやるニュウ」
「おい、本来の欲望を忘れて男のパイ拓なんぞ採ったら許さねーぞ」
 一冊の書物を手にする青年が魔乳党員を制した。
「ほう……それは魔法書。お主はダアトと見た」
 他の者が全身タイツであるのに、この人物だけ普通の制服を着ているあたり、これが魔乳党幹部Bという奴だろう。同じ撃退士同士でありながら上下関係ができるということは、この男は強いかもしれない。
 天城は気を引き締めた。
「全く、悪意持ちて襲い掛かる事かなし、されど同じ額学びたる同志、峰打ちに致すゆえ安心してかかって参れ」
「こいつ、エラそうだニュウ!」
「行けぃ、わが同朋よ!」
「アイサー!」
 魔乳党員が数人がかりで天城に襲い掛かる。
 瞬時に刀身が蒼く輝き、天城が光纏を纏った。
「女性は大事にするもので御座る」
 天城はアウルの力を込めて強烈な一撃を放つ。
「ウリィィィ! 邪魔者は許さないニュウ!」
「滅せよ、悪!」
「たそがれーーーーーーッ!」
「奴の屍を超えていくのだニュウ!」
「キリがないでござる!」
 相手も同じようにアウルの力を放ってくる。仕方なく、天城は逃げては放ちを繰り返し、なんとか一息吐いた時には幹部Bに迫ることができた。
「悪は許すまじ!」
「話せばわかる!」
「わからんでござる!」
「ご、ごめんなさ……っぎゃー!」
 緋の太刀で斬りつけられる代わりに、幹部Bはぶん殴られてその場に倒れた。

●魔法少女は永遠のアイドル
 一方、 猫野・宮子(ja0024)と桜井・L・瑞穂(ja0027)は寒さをこらえて浴衣姿になっていた。頑張ってみるものの、寒さに震えて我慢ができない。
「さ、寒いですわ! 此の秋の空の下で浴衣など……それに此れは少しキツ過ぎるのではなくて!?」
「ええと……ちょっとサイズ間違えちゃったかな? ま、まあ着れるんだし細かい事は気にしない方向で?」
「気にしますわよ!」
 宮子はフリフリの付いたミニ浴衣、瑞穂には普通の浴衣を用意したものの、見事にサイズミスであった。
 どちらもお尻は強調気味。臀部を愛する者たちにはちょうど良いチョイスではあるのだが、瑞穂にとっては恥ずかしいこと極まりない。
 雑談ついでに目撃情報聞きながら、二人は捜索を続けた。
 索敵で常に警戒しつつ、現れた敵にマーキングしているという仲間から情報を得る。
「やっぱり騒がしいところに現れているらしいですわね。次はきっとここですわ」
 文化祭のパンフレットを指さし、目抜き通りに当たるこのメイドカフェの前で待機することを提案した。標的の特性から、ここにやってくるだろう。そして、その通りになった。
「あ、あのっ……そこの素敵なお嬢さん! お、お尻愛に……」
「来ましたわ! わたくしを差し置いて目立つだなんて許しませんわよ」
 瑞穂はある意味嬉々として言い放った。これで浴衣が脱げる。温かい恰好ができる。これで勝つる。
「現れたね!」
 宮子は持っていた変身道具、猫耳尻尾をつけ華麗に魔法少女に変身した。変装と言ってはいけない。
「人をお尻だけで判断する変態さんは、魔法少女マジカル♪みゃーこ(着物バージョン)と、マスコット(違います)の瑞穂さんがお仕置きにゃよ♪」
 びしっとステッキを突きつけ、ばっちり口上。ついでにマジカルステッキからテーマソングが鳴った。
(決まったにゃ♪)
「ほら、わたくしの美しい姿を堪能なさい?」
 瑞穂は蠱惑的な微笑みで愛臀党を誘惑する。高潔で美しい日仏ハーフの少女の桃尻は垂涎の的……のはず。
「なんですとっ!」
 期待以上の獲物に愛臀党は反応したようだ。
(きましたわ……ふふふ……)
 隙を見計らう形で、瑞穂は宮子と二人がかりで取り押さえに掛かろうと、相手との距離を縮めた。隙を作るためなら多少のことは我慢する所存。
「ちょっと其処の貴方。お待ちになって?」
 瑞穂は持ってきた手錠を彼の両腕にまわしてかけようと隙を窺う。
(もうちょっとで届きますわ……)
「じょ……」
「え?」
 だがしかし、愛臀党はロリヲタでもあった。
「よぅ、じょ。 しかも、魔法少女ーーーー!! 萌えー!」
「そ、そっちですの?! きィィィッ! 絶対に許しませんわ!」
 だが、愛臀党は聞いてなかった。
 確かに瑞穂の臀拓も欲しい。しかし、よぅじょも捨てがたい。お膝の上に抱っこしたい欲望には勝てるわけがない。
「よぅじょー!」
 身長が140センチしかない猫野の猫耳浴衣魔女っ娘姿に、愛臀党の幹部は興奮していた。そして、敵はそれだけではなかった。
「おーい! メイドカフェの前で浴衣魔女っ子(よぅじょ)が戦ってるぜ!」
「え?」
「よぅじょだとッ! 俺を釣る作戦だなッ」
「お、お待ちになって……」
「俺もちょっと釣られてくるわ」
「「「「「「「よぅじょ。よぅじょ」」」」」」」
 そう、ここはメイドカフェ前。
 お客さんは大抵が、ヲタ。その場にいたのは魔法少女ヲタであった。
「き、危険にゃ!」
 宮子は自慢の脚力でメイドカフェの壁を蹴って愛臀党の後ろに回り込む。スカートがふわりと揺れた。
「瑞穂さん、挟み撃ちにするのにゃよ♪」
「絶対領域が見えないお約束ゥ! よぅじょー!」
「マスコットは無視ですって? ふふっ……絶対に、許しませんわよー!」
 愛臀党の興奮はマックスだったが、瑞穂の怒りはクライマックスだった。
 随所に様々な花の意匠が刻まれた美しい蒼穹色の鎧を纏い、かくも美しい戦乙女が降臨したかのようであった。
 宮子に追いすがるヲタの猛進を、瑞穂はその防御力で耐え抜く。宮子はアウルの力を脚部に集中させ、雷の如く飛び出し相手を翻弄した。
「ひれ伏せ、愚民ども。をーほほほ!」
「姫様ーァ」
 瑞穂の美しさと勇ましさに、ヲタ共は平伏した。愛臀党もどうやら大人しくなったようだ。
 そして、宮子がすべて捕獲し、縄で縛りあげると教師の元へ連れていくことにした。
 縛り方が亀甲だとか何だとかは気にしてはいけない。
 てへぺろ☆笑顔の宮子の横で、瑞穂が騒動起こした『全員』を正座させていた。
 鬼気迫る勢いのお説教は常に笑顔だったが、微笑む背後に鬼神が見える勢いであったそうな。

●パイは正義
「イケメンは滅せよ! 清純系女子と可愛い系女子を両手に花など許すまじ!」
 グラン(ja1111)と七種 戒(ja1267)と碓氷 千隼(jb2108)がいちゃつきながら模擬店を巡りをしていると、予想通り【魔乳党】と【雄っぱい♂】派の幹部がやってきた。
 千隼はグランに腕に抱きついてみた。その刹那、幹部Aであろう人物の眉がぴくりと動く。
 クランはふむと頷いた。何か考えているようだ。
「文化祭というイベントが人の理性を如何に破壊していくのかを調べるには、丁度良い機会かも知れませんね」
 グランはおもむろにデジカメ取り出し、観察を始める。
「ぐ、グラン?」
「では、魔乳党。しかと堪能させて頂きましょう」
 すでに立場中立となったグラン。
「ふっふっふ……お前の味方は邪魔はしないいてくれそうだな。では! 【雄っぱい♂】派よ、逝けぃ!」
「「いただきまーすv」」
「ちょっと待った。君たちみたいな可愛い子がこんなことをするなんて悲しいよ」
 かわいこちゃんには目が無く、すぐにお姉様と呼ばせたがる戒の悪い虫が疼く。
「可愛いだってー」
「どうしよっか?」
 自称清純派乙女の戒に言われると、まんざらでもなさそうである。
「君は残念な方ですね。仲間の心は揺らいでいますよ?」
 グランは幹部Aに言葉責めで改心させようとした。Sっぽいとか言ってはいけない。
「こんな虚しいことをするならば、身近な女子にアタックしてみなさい」
「いるか、ヴォケ。彼女いない歴16年の俺にそんな……」
「「はァい♪」」
 不意の幹部女子二人の声に、グランとAが顔を見合わせる。
 俄かにAの表情が明るくなった。しかし、にこやかに幹部女子たちを見た瞬間、幹部Aの表情が憎しみの表情に満ちた。
「お姉さまァ、今度の日曜日はお暇ですか?」
「えー、私もー♪」
「ふふっ……愛い奴だなあ」
 戒は得意げにAを見やる。
「ククク……ふふふ……こんなに悔しいなら、愛などいらぬゥ!」
「そう? 女の胸狙って恥かかせてきたんだし、狙われても文句は言わないよね!」
 千隼はその素早さに物を言わせて、おいなりキックを炸裂させた。Aの両足の付け根の間を狙ったのである。
「俺のお芋は大収穫ゥ!」
 こうなるとAはもう戦闘不能。
 グランは用意していた縄で、幹部Aを亀甲縛りという恥ずかしい恰好に縛り上げた。
 千隼は変化の術で胸だけこっそりと「貧」に変装し、「偽者に興奮しといて魔乳党とか、看板降ろした方がいいんじゃないの?」と嬲る始末。
「いいか貴様、良く聴け。大きい乳が大好き、ソレはイイ。心から賛同する。だが、ソレだけしか見ないとかどういうことだね? 私は貴様に失望する。いいか? 乳は、ずばり【カタチ】だ。次点で【触り心地】。乳とは、どんな姿であれ素晴らしいのだよ」
 そして、こっそりと「揉めば大きくなるのでは?」とアドバイスした。その瞬間、Aの目が光る。
「そうかッ! その手があったか。お前、イイ奴だな」
「乳の素晴らしさを知る同志に悪いヤツはいないと信じていた。さぁ行こう、理想のカタチと触感を目指してッ!」
「同志よ! 俺の心が真っ黒に燃えるゥ! ぱいちゃん握れと轟叫ぶゥ!!」
「「もぎ取れ、果実!」」
 戒とAは共に叫んだ。
「あぁ、分かっていましたよ。君がアッチ側の人間だってコトはね。しかも、パイ拓から生絞りに変更ですか?」
 グランが身構えたところ、戒はすでにAの縄を外していた。
「諸君、また会おう!」
 相手の顔は見ずに、戒は猛烈ダッシュで逃げて行った。
 その後、チラリズム至上主義 の【蒼き閃光】と噂される魔乳党党員が猛威を振るう。
 しかし、戒はチラリ主義だったようで、拓を採ることも、それを握ることもなかった。

●お仕置きは愛の鞭
「よくわかんねーけど、みんな大変だなー」
 彪姫 千代(jb0742)はずり落ちてくる黒縁インテリ伊達メガネを指先で上げた。
 現在は来崎 麻夜(jb0905)と共に行動中だった。カップルを装おってはいるが、カップルが何かは知らない。
「愛臀党の方は捕まったみたいだし……あとは、七種さん?」
 クスッと笑って麻夜は言った。
 逃げた魔乳党と戒を追っているのだが、探せば探すほどに【蒼き閃光】という人物の話を聞くことになった。多分、戒のことだろう。確か、戒は目に見えないほど細く、海のような蒼色をしている糸状の武器を持っていたはずだ。
「さてさて、誰が掛かるかなぁ?」
「何か面白い事してるぞー! おー? 男の胸のどこが楽しいんだ?」
「あぁ……やつら、ね」
 彪姫の視線の先を見れば、カップルが悲鳴を上げて逃げ惑っていた。魔乳党のようだ。
「よくわかんねーけど、お前達が悪いやつなんだな!」
 彪姫は見るからに異様な雰囲気を醸し出す【雄っぱい♂】派の漢女男子を敵と認識して言い放つ。
「あらァ、素敵なお坊ちゃんネ」
「趣味嗜好は自由だけど、迷惑掛けちゃイケナイよねぇ。悪い子にはオシオキだよー? あ、七種さん」
「む、来崎……」
 戒は先程の女子幹部二人組を侍らせていた。
 「追手との交戦を避けてきたのに」
 かなり不服そうだ。
「あらら、やっぱり先輩の言う通りかー。【蒼き閃光】ねぇ。ダメだよー、オシオキしなくちゃいけないじゃない」
「断る」
「わ〜ォ! メガネ君がいるよー。ねぇ、アレ欲しいなー」
「任せて頂戴」
 【雄っぱい♂】派の男子二人が彪姫と麻夜に襲い掛かる。そして、同時に下っ端党員が襲い掛かるも、麻夜は軽やかに避けた。
 あらゆる物を利用し、視界から姿を隠して立ち回った。
「あ!」
「遅いよ」
 麻夜はメガネ男子好きの中学生に死角から奇襲を仕掛けた。
 一撃離脱を繰り返し、距離によりサーベラスクローとツインクルセイダーを切り替えて使用する。
 怪我を恐れた中学生党員は足を滑らせて転倒する。
「わァッ!」
「案ずるな、峰打ちだ……なーんて、ね?」
 麻夜は笑みを浮かべて言った。
「ほひょひょ☆ 愛のベアハッグだわヨ……おおゥ?!」
 周囲が深い闇に包まれ、漢女男子は感覚を失ったような感じがして衝撃を受けた。
「どこなのォ、可愛い子ちゃん☆」
「可愛くなんかないぞー! 俺の氷はほんのりこーるど、お前の悪事をがっちりほーるど! ……って、誰かが言えって言ってたぞ」
「あはン☆ 眠いのゥ〜……ぱた☆」
 ぱた☆まで自分で言って、漢女男子は倒れた。周囲を凍てつかせられたせいか、少々ダメージを受けてもいるようだ。
「どこまでもお約束過ぎ……で、七種さん。覚悟できた?」
「こっちの射撃能力を甘く見てもらっちゃ困る」
「当たらなければ、どうということはない!」
 見物客を障害物とみなし、麻夜それを利用して戒に向かって一気に肉薄する。
 もちろん、単独での戦闘はダメだろう。だが、背後には仲間がいた。その戒に対する心理的圧力を利用して、相手の隙を突く。
「あァ!」
「「お姉さま!」」
 戒に侍っていた腐女子二人は叫んだ。しかし、グランによって捕縛されているので助けに行けない。
 幹部Aも可哀想だが再度、お芋ブレイクでオーバーキル状態。戒を助けるものはいない。
「ち、乳の魔力は永遠なりィ!」
「覚悟!」
 麻夜は器用に戒を縛り上げた。

 こうして、魔乳党はすべてお縄になり、下っ端党員も少しの時間を経て捕縛されたのである。
 【魔乳党】そして、【愛臀党】は何故か亀甲縛りの上、教師たちに先生に引き渡された。
 無論、七種 戒も同じくそのような格好に処された。
 だがしかし、魔乳の魔たる所以は、その香しき感触を忘れられないということ。
 心の中に魔物のような魅力植え付けて、この宴は終わった。
(もぎ取れ、果実)
 いつの日か、再び魔乳が学園に嵐を起こすまで、その種火は燻らず燃え続けるのである。

 ■END■


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
ラッキースケベの現人神・
桜井・L・瑞穂(ja0027)

卒業 女 アストラルヴァンガード
天つ彩風『探風』・
グラン(ja1111)

大学部7年175組 男 ダアト
あんまんマイスター・
七種 戒(ja1267)

大学部3年1組 女 インフィルトレイター
撃退士・
彪姫 千代(jb0742)

高等部3年26組 男 ナイトウォーカー
夜闇の眷属・
来崎 麻夜(jb0905)

大学部2年42組 女 ナイトウォーカー
久遠ヶ原の将軍様・
天城 空我(jb1499)

大学部3年314組 男 インフィルトレイター
撃退士・
碓氷 千隼(jb2108)

大学部6年61組 女 鬼道忍軍