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マスター:皆瀬 七々海
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
形態:
参加人数:5人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/12/01


みんなの思い出



オープニング

「たッ、たすけてくれぇ!!」
 その男は悲鳴ともとれる無様な声を上げた。

 ドドドドドドッ! ガガガガガッ!

 迫りくる恐怖に一心不乱に走る。だんじりも走る。急カーブをすり抜け、だんじりが軋む。
 ぞわぞわと背を這う、忌まわしき未来への序章という予感に戦慄していた。
 まさか、こんなことに巻き込まれるとは……わが身が呪わしい。
 交友を深めようと新入生を誘って全国神輿協会主催のだんじり試験曳き体験イベントに参加していたのが運の尽き。この前後不覚の事態に、久遠が原学園の教師は狼狽していた。むしろパニックだった。
「先生ぇーー! 目がッ、目に毒が飛び込んでくるよォォッ! あれは目に毒だよお!」
「恨んでやるう!」
「俺だって逃げてぇわッ!!」
 男に追いすがる、恐怖の弾丸。それはディアボロ化した【だんじり】。いや、そう言う風に見えるだけで、それはだんじり化したディアボロだった。
 だんじりにかける魂は岸っ子(岸和田市の住民)の根源たるエネルギー。死してなおだんじり化するとは、見上げた根性である。
 さっきまで並走して走っていたドリンク配布用のミニトラックを吹き飛ばし、中身の乳酸飲料原液を引っ被ってもなお走りつ続けている。
 そして、振り返ればありえねーモノがだんじりに聳え立っているのが見えた。

 これって、※蔵倫※じゃね?(しろめ。

「来るなぁぁっ!」
「むしろ、来ないでくださーーい!」
『ばなな・ふぃーっしゅ! ばなな・ふぃーっしゅ!!』
「ひいいいいいっ!」
 生徒たちはだんじりを止めることもできずにひたすら走った。機械的な『ばなな・ふぃーっしゅ!』の音声が妙に腹立つ。家一個分の大きさもあるだんじりは、関西でも有名な大きさと破壊力の神輿。止めるのも走らせるのも、高難易度と言う珍しい神輿なのだ。
 見学だけと思って来てみたら、着替え一式を貸してくれると言う少年に出会い、運良く参加できたわけだが――この有り様。
「こんなところで出くわすとは……っ」
「センセー! あいつの※蔵倫※がひゃっほい☆してるんですがッ?!」
「知るか!」
「数が増えましたが、気のせいですかッ?!」
「知るか!!」
「アレ、ディアボロですよね? 俺たちだけ狙ってるって、気のせいですよね? ねーっ?!」
「知りたくねえよッ(怒」
「き、キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゜Д゜)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_-)=゜ω゜)!!」
『ばなな・ふぃーっしゅ! ばなな・ふぃーっしゅ!!』

 アーーーーーーーーーーーーーッ!

 ………………………………

 ………………

 ……アッ(

  ずぎゃんッ!☆

 教師は星になった(ちーん

●祭り会場某所
「なぁ、ヴァイス。アイスもっと食う?」
 少年はペンギンに言った。正確には、ペンギンの姿をした悪魔に、だ。
「当然もけ!」
 差し出されたアイスを悪魔――ヴァイスはもしゅもしゅと食べ始める。
 事の発端はこの少年。悪魔を呼び出してみたいと思っていたわけだが、描いた小さな魔法陣から出てきたのは、この悪魔だった。
 そして、つい先日手に入れた魔法書の続きを読むと「悪魔から富や知恵を得て将来を約束されるには、より大きな魔法陣にてエネルギーを与える必要がある」と書いてあったのだ。
 少年は苦悩した。そんな大きな魔方陣は描けない。だが、街に貼られたイベントのポスターを見た時に、それは実現可能だと知ったのだった。なんと、その魔方陣と、試験曳きのコースは同じだったのだ。
(「ふふ……だんじりに細工もしたし。魔方陣はOKだな」)
 少年はほくそ笑んだ。
 帰ると言って聞かないヴァイスに、少年は町の祭りには好物があるとほのめかした。しかし、悪魔の好物は人間だと思っていた少年は「アイスあるもけ?」の言葉に絶句。
 まあ、祭りにフラッペやアイスがあるのは普通のことなので、それを伝えるとヴァイスは二度返事で「まだいても良いもけ」と答えた。
 先程、遊びに来ていた教師と学生らしき団体に半纏を貸したし、自分もだんじりを引くフリをしてだんじりに野球用のラインカーをこそりと設置。準備はOK。
 かくして少年は、悪魔を引きとめ、魔方陣を描く準備に成功した。
 だがしかし、ヴァイスが面白がってディアボロを放ったことを、まーったく知らなかったのだった。

●星になった生徒たちの前で
「たすけてぇ!」
「神羽(にけ)ちゃん、頑張って!」
「わぁん! 燈辻(ひつじ)に付き合ったらこんなことにっ」
 月遊 神羽(jz0172)(ゆづき・ ―)は友人の励ましに泣きながら答えた。
 事の発端は、久遠ヶ原の教師が入学生徒の親睦に神輿イベントに行くと、妹の燈辻から聞いたことからはじまった。なにしろ寮生活は暇であるし、だんじりは結構前から有名だったので目の前で見て見たかった。
 本来なら祭りの衣装一式を持っていなければ参加できない。しかし、そこにその衣装を貸してくれると言う少年が現れたのだ。教師二人と久遠ヶ原学園の生徒は4つのチームに分かれ、だんじりの試験曳きに参加した。そして、この状況。神羽は運命を呪った。
「あ゛ーーッ!」
「先生ーー!」
 背後では、だんじりが大破し、引率の先生と他の生徒たちが何者かに背を折られて地面に伏しているのが見えた。しかし、もうそれ以上確認する暇がなかった。今度は自分たちをターゲットに追いかけてきている。
 神羽は同級生の男の子と共に別の班に行った妹がとても心配だった。
 同じようにこんなディアボロに追われていなければいいと。
 そして、姉は知らなかった。向こうは向こうで悲惨なことになってると……
「ううっ……まだ燈辻は中学生なのに。桂くんに何かあったらどうしよぅ」
「安心しろ、きっと大丈夫だ」
 そう言ったのは、V研部長。だんじりにV武器とか妙な野心を持って参加したため、巻き込まれていた。
「とりあえず、俺たちで倒すしかあるまい」
「ヤダもぅ、こんな展開(涙) ねぇ、みんな。どうする?」
 そう言って、神羽は半泣きになりながら皆に――仲間の撃退士たちに言った。 


リプレイ本文

●キミヲノセテ
「いや個人的には下ネタ嫌いじゃないけど! お子様や女性の前で、ソレはちょっとご遠慮願いたいっていうか。アレだよ、そう……」
 アレを見た瞬間、神宮陽人(ja0157)は言った。
「自重しろ!(無駄に格好いい声)」
「ふはは! 祭りと聞いたら黙ってはおれん! 血が騒ぐぜぇ!」
 海城 恵神(jb2536)はやる気満々。花菱 彪臥(ja4610)の方は、自分たちの背後に見える巨大なモノに面食らっているようだ。
「うおっ、何だあれっ?? よくわかんないけど、勢いがハンパねぇっ!」
 花菱は「「だんじりって狭い道をすっげー勢いで突っ走ってくやつだろ、俺、テレビで見たことあるぜっ。ギリギリすり抜けてくのが面白いよなー!」と、ここに来るまでに力説し、とても楽しんでいたようだった。
 なので、今あるそれを普通に「だんじり」と認められるようになるのに、少々、時間を要したのかもしれない。
「あーーーはっは! だんじりとV武器の素敵にキッチュな開発の世界ィーーー!」
 こんな状況でも楽しげなのは、無論、V研部長。
「ううう……ごめんね」
 月遊 神羽(jz0172)は、とにかくみんなに謝った。
「泣くなっ、俺が守ってやるぜ!」
「わぁい、ありがとう!」
「ええ、本当にね。地元の男子からまたとないお祭りを楽しむ機会を貰ったのに。こんな※蔵倫※に追いかけられるなんて、きっと商店街の人も困ってるわよね(特に視覚的に」
 遠石 一千風(jb3845)は休日の珍事に眉を顰めていた。
「うおお、だんじりなどに負けてたまるかぁーーーーーーー!」
 熱血最強の滾りで叫んでいるのは、カイゼリオン・GB(jb8084)。少々変わった格好をしているが、間違うことなく彼は立派な悪魔だった。
「つか……とにかく、祭りの邪魔する奴は止めねーとなっ!」
 花菱はビシッと背後の敵(?)を指さし宣言した。
 そう、自分たちの後ろで走っている……正確には、自分たちを追いかけてきているのは、「だんじり型ディアボロ」だった。
 しかも、活き活きと踊り狂う巨大な※蔵倫※をばばーん!と乗せて。

『ばなな・ふぃーっしゅ! ばなな・ふぃーっしゅ!!』

「ゆーれーるなあああああ!!」
 神宮はその冒涜的なあれやそれや。だんじりに聳え立つ※蔵倫※に向かって叫んだ。
 先程、このだんじりの前を走っていたミニトラックが横転し、乗せていた乳酸飲料の原液をぶちまけた後だった。
 目に毒と言うか。直視できないと言うか。色々アウト。
 そのだんじりの家一軒ほどもある大きさも相まって、どーーーん☆な感じに見えなくもない。
 「花の乙女には大変危険です」とかナントカ。商店街の放送で注意を促していたが、むしろそれは逆効果と言うべきか、かつての花の乙女――近所のおばちゃんが頬を染める光景などあちらこちらで見ることができた。
 色んな意味で地上戦では勝てる気がしない……ので、神宮はとりあえず最初はだんじりに飛び乗れないか試してみることにした。
「では!」
 自分が曳いていただんじりから離脱し、予測される進行方向にある民家の屋根に登った。
 近づいてきたタイミングでえいやっと飛び乗る。上手にだんじりの屋根に手をかけ、渾身の力を込めて体を支えた。
「よーし!」

―― 乗っかりさえすれば、大分狙いやすくなる……気がする(カモ

「どっこせ、よいしょ!!」
 よじ登ることに成功した神宮はだんじり本体と言うか、ご神体というか。それにしがみついた。なんだかそこは乳酸系ジュース原液に塗れ、甘酸っぱいにおいはするわ、滑るわで、神宮は掴るのが大変だった。
 おまけに神宮は甘い物が余り得意ではない。そのジュースの原液にも顔をしかめる。
「美少年、キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゜Д゜)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_-)=゜ω゜)!!」
『ばなな・ふぃーっしゅ! ばなな・ふぃーっしゅ!!』
「うぇぇ……」
 力の限り苦い顔の神宮。扇情的なその姿は(以下略
 すみません、ここまでで勘弁してください(涙)。
 ……で、神宮はだんじり型ディアボロに忍法「胡蝶」かけた。アウルによって無数の妖蝶を形成し、敵を攻撃させる技だ。

『ばなな・ふぃーっしゅ! ばなな・ふぃーっしゅ!!』
 ソレは戦慄いた。
「おい(汗」
 妖蝶に朦朧となり、しおしおと元気がなくなる。
 そんな様子に思わず神宮はご神体にうっかり一発食らわせた。そして、武器をショットガンに持ち替え、タイミングを測りつつ遠距離にある他のディアボロを妖蝶の力を纏わせて撃つ。
 相手の反応は……泣いているようだった。泣くわけないのだが、なんとなく、そんな雰囲気が漂っているような。

『ばなな・ふぃーっしゅ……(泣』

 まさにこんな感じ。
「うっわ……どういう……」
 傷ついたそれの姿。ちょっと、形容しがたい感情を感じざる得ない。
「おお、なんということだ」
「元気にな〜れ♪ 元気になぁ〜れっ!」
「……(汗」
 周囲のあばちゃんやおじさんが両手を合わせて拝む姿に、なんかよくわからないが、渋い顔になってしまう神宮だった。


「わあー! 助けてくれぇ!」
 叫びを上げ、突進を辛うじて免れた住民の声が響く。
 花菱と恵神はさっと手を貸し、巻き込まれないよう住民の避難を手伝った。
「にゃろー、だんじり気取るなら、周りを巻き込むんじゃねーっ!」
「暴走だんじりが無差別に攻撃を行っています! 一般人の皆様はすぐに避難をお願いします!」
 恵神は屋台で使用されていた拡声器を借り受け、住民の呼びかける。だんじりがキケンというか。ディアボロであろうことも相まって、その危険度は増倍する気がした。
 それもあって、何度も何度も声掛けをしたのだった。
「早く建物の中へ入るか遠く離れてっ! だんじりディアボロが来るぞー!」
 敵を一体ずつ撃破しようと恵神はだんじりを見る。
「うーむ、戦力分散はキツイな」
 恵神は突進してくるだんじりに向かって、スキル「封砲」ぶっ放した。
「おっりゃああ!!」
 少しでも傷を与えれたらいいなぐらいの気持であったが、先程の神宮の攻撃もあって有効な攻撃を与えられた。
 今度は、十字手裏剣を使い車輪を破壊。恵神はノリノリで攻撃をしてゆく。そして、スキル・光の翼を使用して、上空から先回りして攻撃の準備を開始した。
「先回りだぁ!!」

『ばなな・ふぃーっしゅ!』

 だんじりの■■がビクンビクンと※蔵倫※のようにのたうち回る。しかし、足代わりの車輪は片方が回り続け、巨体を引き摺りながらも突進を止めなかった。
(「ふーむ、突進しか脳が無いとなれば、横に飛び込めば安全かな?」)
「よーし、ワッショイ!」
 恵神はだんじり型ディアボロに向かって横っ飛びした。


「ディアボロが出ました、逃げてください!」
 一千風は周囲の人々に避難を呼びかけつつ、ディアボロから遠ざかるどころか、逆に接近した。
 ただ走り回る状態では埒があかなそうと思い、カーブなどでスピードが落ちたところを見計らいだんじりへ飛び乗る。
「……あら? これって、ラインカー?」
 何かしらと首をかしげつつ、一千風はそれを破壊した。そして、それが自分たちに祭の衣装を貸し、魔法陣を完成させようとしていた少年が設置したものなのだが、一千風はそのとことを知らない。そして、少年の野望はいとも簡単に潰えたのだった。
 そして、今度はだんじりに対し、山をも打ち砕くと称される、重い一撃を食らわした。

『ばなな・ばばばばばーなーななっばなな・ふぃーっしゅ!!』

「ああ、もう! うるさいし何故か滑るし、あらぶってるし、さっさと止まりなさいッ!」
 目に焼き付いて離れないばなな・ふぃっしゅ犠牲者の有様を振り払い、一千風は果敢にだんじりへ挑む。
 破山を交えて、頭上から繰り返しディアボロに攻撃を与える。
(「試験曳きのコースに沿って移動しているから、先読みは難しくない。やれるわ」)
 一千風はカーブで振り落とされないようにしがみつきながら耐えた。が、聳える※蔵倫※は以下略なので、足場にする程度で他の場所にしがみついていた。
 花菱はすかさず仲間の攻撃に次いで、ディアボロにフォースぶち込んで勢いを削いだ。
「うるぁーーー!!」
『ふぃーっしゅ!!』
「カイゼルソード、真っ向唐竹割りぃぃぃーーーーーーー!!」
 全力で走ってきたカイゼリオンは、これ以上の被害拡大を防ぐ為、だんじりディアボロに闇の翼を全開で立ち向かった。だんじりより高く飛び、垂直に斬る。ディアボロの傍まで来ると、アウルの力を込めて強烈な一撃を放った。
『ふぃーっしゅ!!』
 だんじり上のご神体は、感情らしきナニカ。そう、それはまるで怒りを表現しているかのようだった。
 しかし、カイゼリオンはこんなことでは負けない。悪魔として似つかわしくない程、熱い正義の心を持っている。如何なる依頼にも熱き魂が尽きぬ限り、全力全開で臨むのがカイゼリオンなのだ。
「カイゼルソード、真一文字斬りぃぃぃーーーーーーー!!」
「おおッ、すげぇーーーーーーーーーー!」
 戦うカイゼリオンを見て、避難しようとしていた小学生たちが瞳を輝かす。カイゼリオンはナイス&爽やかな笑顔で少年たちに応えた。
「君たちも、応援してくれぇぇッ!」
 曇天を拳で穿ち突き上げるようなポーズでビシッと決める。
「いぇーい!」
「かっこいいー♪」
「「カイゼリオーーーーーーン!」」
「ありがとう、そして、ありがとうッ! さあ、今からヒーロータァーーーーーイムッ! カイゼルソード、クロス・スラーーーーーーーッシュッ!!」
 ひたすらに剣で斬っているだけというのは抜群に秘密! そこ! 小学生の夢を壊すようなことは(以下略
 必殺技は?とか言わない! そう、どの特撮だって、必殺技を叫んで剣を真一文字切りとか、CGで稲妻バリバリだったりとか。CGも数か月に一回の使用頻度とか。そこは大人の事情だよっ(
「よしっ、皆でなんとかすれば大丈夫かも……」
 神宮やカイゼリオン達の活躍に、希望を見出した神羽は妹の燈辻(ひつじ)に携帯電話で連絡をする。向こうもマッシブボディーの幼女がなんとかとか、色々と大変らしいが、合流することになった。
「それなら、進路と速度を調整して2台を衝突を狙ってみたいんだけど」と、やぐらの上から言う一千風。
「OKOK! じゃあ、任せたわよ!」
 神羽は快諾した。

●合流する変態 
 一方……
『にゃおーん!』
 猫サーバントだか、ディアボロだか、の攻撃を潜り抜け、彼は走り抜けた。時々、怪幼女に石火を食らわす。
 破れかぶれで敵の急所と思えるところを攻撃したが、「い゛や゛ん゛、痒゛い゛♪」と言われただけだった。
 そして、そこに猛進するだんじり型ディアボロが突っ込んだ。
 一千風が上から足下を攻撃したりしつつ、だんじりのスピードと方向を調節してここまでやってきたのだった。なかなかのコントロールである。
「燈辻ー! 桂君!」
「お姉ちゃん!」
 答えたのは妹の燈辻だ。
 燈辻の後ろでは、巨躯を震わせ突っ込んでくるツインテールの変態がいた。
 残念無念なだんじり型ディアボロがご神体を跳ねさせて突っ……
 お願い、もうここまでで許してください(涙)。

「今だ!」
 誰かが叫ぶ。猛進してきただんじりと怪幼女が激突し、店や的屋を巻き込んで両者はすっ転んだ。
「痛゛い゛よ゛ォー」
『ばなな・ふぃーっしゅ! ばなな・ふぃーっしゅ!』
 ※蔵倫※が勢いよく、勢いよく、大事なことだから(
 魚のように地面で跳ねた。
 両者の力が拮抗するのだろうか、怪幼女は轢かれて少々弱ったらしい。そして、撃退士の一人が怪物的幼女を誘惑しつつ、口八丁手八丁で丸め込む。
「さて、片付けましょうか……」
 一千風はだんじりの前に立つと、 機械剣S-01を振りかざした。彼女の背後で同じように仲間たちも武器を構える。そして、一斉にそれは振り降ろされた。

「やっつけられてよかったな!」
 だんじり型ディアボロを倒し、怪物的幼女はいずこかへと消えたのを確認したカイゼリオンは、ポーズを決めて言った。仲間たちは倒した喜びに浸っている。
 そして、一人の少年がそっと覗いているのに花菱は気が付いた。
「おっ? さっき半纏貸してくれた奴じゃねーか」
「あわわっ!」
「もけっ」
「ん? ちょっと待て」
 事件を心配して見に来たような感じでもなく、慌てて去ろうとしているところに不審な雰囲気を感じた花菱は、その少年の襟をひょいと掴んだ。隣にアイスを食うペンギンがいること自体、妖しすぎる。ありえない。
「は、離せって!」
「何もないなら、逃げる必要ねーじゃん?」
「うん……」
「どうしたのー?」
 そこに仲間が集まり、益々もって少年は逃げることができなくなってしまった。
 ペンギンの方はと言うと、我関せずでアイスを食べ続けている。
「あの……」
 少年は撃退士たちに何か言おうと、口どもっていた。しかし、ペンギンはアイスを食べ終わってしまうと、少年に興味はないと言った風に歩きだそうとした。
「あ、ヴァイス! どこ行くんだよ」
「は? 帰るもけよ」
「「「「「ペンギンがしゃべったああ!!」」」」」
 驚く撃退士たちを横目に、ヴァイスと呼ばれたペンギンは答えた。
「当たり前もけ。僕は悪魔もけ。フツーに変身できるもけよ?」
「悪魔! まさか、さっきのディアボロは?!」
「僕しか、それができるわけないもけよー。さて、少年。面白かったもけよ、じゃぁ……」
「おおっと、そこのペンギン!」
 恵神が何かを抱えながら走ってきた。ペンギンが振り返る。攻撃か、と思ったがそうではない。
「もけっ? もけけっ♪」
 きらりと光る、ペンギンの目。恵神の手にあるのは……
「アイスあるけど食べるー?」
「もけーっ♪ 食べるもけ、よこすもけよ!」
「え?!」
「敵の前だとか、そういう緊張感ねーの?」
「ないもけ。敵なら倒せばいいもけ。そこの女は殊勝な心がけもけねー。いただくもけ♪」
「恵神さん……(涙」と、心配げな神羽。
「んー、ペンギンは別にいたぶるつもりは無いし、友好を築く事が出来たらいいなとか」
「え?」
「何か面白そうだしな(」
「ふむ、おいしいもけ。今だけは……(じゅるる)…攻撃しないで、(ぺろぺろ)……やっても、(じゅびび)良いもけ」
 こうして、一時的なものだが悪魔と交流することができ、少年の野望は一千風のラインカー破壊によって潰えたことがわかった。
 正確を記せば、魔導書は色々記述がおかしいので発動することはない。それを指摘され、少年は落ち込んだが、事件がこれ以上大きくならなかっただけでも御の字と、撃退士たちに怒られた。
 そして、色々とアレでソレな騒ぎだったが、無事、生徒たちは学園へと帰還したのだった。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: いつでも元気印!・花菱 彪臥(ja4610)
 常識は飛び越えるもの・海城 恵神(jb2536)
重体: −
面白かった!:4人

俺の屍を越えてゆげふぁ!・
神宮陽人(ja0157)

大学部5年270組 男 インフィルトレイター
いつでも元気印!・
花菱 彪臥(ja4610)

高等部3年12組 男 ディバインナイト
常識は飛び越えるもの・
海城 恵神(jb2536)

高等部3年5組 女 ルインズブレイド
絶望を踏み越えしもの・
遠石 一千風(jb3845)

大学部2年2組 女 阿修羅
撃退士・
カイゼリオン・GB(jb8084)

大学部5年268組 男 ルインズブレイド