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マスター:皆瀬 七々海
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/11/15


みんなの思い出



オープニング

●V研にて
「今度こそ、【V研】の汚名挽回をするのだー!」
 バックに雷を背負いそうな勢いで言ったのは、【V研】の部長だった。
 ちなみに、【V研】ことV武器研究会は学園のアイドルとして有名なレミエル・ネフィリム・ヴァイサリス様とは何の関係もなく、部活内容は「日常的な品とV武器との融合」と言う意味不明な研究であった。しかも、その規模は小さく、自称部活レベルの集まり。どことなく中二臭い雰囲気も漂う。
「えー、ヴァイサリス様はァ〜?」
 不意に前列に居た女生徒が言った。
「だから、何度も関係ないと言っとろうが! ここは日常的なものとV武器を融合し、身近でキッチュな武器を作ろうと言う……」
「超ダルい、ダッサ〜」
「イミフだし、帰るわ。今日、バーゲンあるしィ〜。ここ、ゴミ作ってるだけじゃん」
「やかましいわ! だから、さっきから説明を聞いてないのは、そっちだろうに」
「ヴァカじゃん?」
「帰ろ帰ろ〜」
「あぁ、帰れ! ……はァ」
 勘違いして入会してきた女子を教室が出ていくと、部長は深い溜息を吐いた。
「部長……」
 しかし、変なものばかり作るV研と言うのが、友人たる『NO・ZO・KI隊☆』の隊長のご意見である。ちなみにNOZOKI隊☆は「究極の変態道」をモットーとした集団で、我が最強の武器――ローラーブレード式突撃シューズを勝手に持ち出しぶち壊した挙句、こともあろうに今年の文化祭で問題を起こしたのである(無論、のぞきだ)。
 そして、この評価!
「ぐぬぬぬぬ……」
 部長は唸った。
 ついでに、ローラーブレードは武器じゃなく装備品だろうとNO・ZO・KI隊長は指摘していったのである。だったら盗むんじゃねえよと言ってやりたかったが、沸き起こる研究心の発露たる説明を聞いてくれるのは奴しかいない。つまり、ぼっちなわけだ。
 まあ、そこは肯定する気も否定する気もない。研究に孤独は必要なのだ、人様にはわかるまい。
 ……と、言いたいが、そういうわけにもいかなかった。
 文化祭での事件で、先生からの注目がこちらに向くようになったのだ。無論、良い意味で、ではない。
「まぁ、気にするな。汚名挽回する手立てはある……はず」
 そう言って、部長は新作の武器をみんなに見せる。
「今度こそは……このK−2マシーンなら」
 部長はそう言って、教室に集まったV研究会員を見たが、皆の目は「で、何?」とか。「で、何するん?」とか、妙に寒い反応だった。
 そこにあったK−2マシーンこと――キコキコ☆マシーンなる武器は、どう見ても『子供の乗る、足こぎの車型のアレ』であった。

――どないすんねん……コレ。

 V研究会員は思わざる得なかった。
「な、何を固まってるんだ! スバラシイではないか! なじみ深い玩具で勇敢に戦う! 昔、玩具の変身ヒーローベルトやら剣やらで戦えると思ったことはないのか? ないのかッッッ?! そうだったら嬉しいじゃないか! 俺は嬉しい。お前ら、ブウゥーーーン! バァーーーン! とか言って、こいつを乗り回したことはあるだろう。時速1kmも出なく、三輪車にすら負けても、心はマッハ☆ヒャッホウ轟(ゴウ)なんだよっ。だからして、俺は大好きだった愛機と一体になりたいんだ! 闘いたいんだ! わかってくれぇ!」
「わかりませんよ」
「ガビーン☆!」
 部長はガビーン☆まで自分で言っちゃって、居た堪れなさに廊下へ飛び出した。
「もういいよッ、バカァーーーーーーーーーーー!!」
「あ、あぶなっ……わァ!!」
 飛び出した部長は、教室を通りかかった少女にぶつかった。少女が手に持っていた物が転がる。
「す、スマン……あっ! お約束展開!」
 部長は目の前の銀髪の美少女に釘付けになった。
「え?」
 少女は愛らしい瞳で不思議そうに部長を見る。思わず部長は口走った。
「光で瞳の色が変わる金緑石(アレクサンドライト)の瞳は長い睫毛に縁どられ、少し憂いを秘めているように見えた。そして、その瞳が俺の事を見つめていた。\(ヒャーーーーッホォウゥゥゥゥ!)/」
「あ、あのっ」
 相手はアップし始めた部長に驚き硬直している。
「しかも、床に落としたのはチラシとかじゃなくって――亀の甲羅だとォォ! クソォ! 手に追えねえじゃじゃ馬さんだな☆ 新しいラノベのガチェットかッ! 良いぞヒロイン、新しい展開の始まりだよゥ!」
「……ひ、ヒロインじゃないです」
「は?」
「ぼ、僕……男だからっ。あの……」
 恥ずかしそうに少女、じゃなかった少年は言った。
「男……だとぅ?! 俺の純情踏みにじりやがってぇぇ!」
「た、たすけっ……爽兄さぁん!」
「よしっ、俺をたぶらかしたお前には罰を与えてやる……お前は俺のK-2マシーンの素晴らしさを広めるのだ!」
「いや、やめっ……あっ!」
「アッ(」
 かくして、銀髪の美少女こと涼風 桂(すずかぜ けい)はK-2マシーンを押し付けられたのであった。

●帰り道
「はぁ……」
 桂は溜息を吐いた。友人の月遊 燈辻(ゆづき ひつじ)は心配そうに見つめた。今は依頼の帰り。二人でブラブラと街中を歩いているのだった。
「で、昨日は服を脱がされそうになったのね?」
「違うよ。服を掴まれたまま、僕が転んだだけ。それでボタンが千切れちゃって……」
「あら、そうなの。何もなくてよかったわ。みんな心配してたわよ。で、何か案はあるの?」
「うーん」
 押し付けられたのは足漕ぎの玩具、8台。アウルの力を応用して走るマシーンで、常にアウルを自力で供給せねばならないと説明を聞いた。これで戦うなんて、冗談ではない。桂は深い溜息を吐いた。
「困ったわねぇ……あら、こんなところに」
「あ、本当だ」
 ゆっくりと歩いていた二人は、子供たちの笑い声が聞こえて立ち止まる。ビルの中に小さな保育園があった。近場の病院で働く人のための保育園らしく、病院の名前も書いてあった。
「この頃の子たちって、可愛いわよね」
「そうだね……保育園か。施設のころは和幸兄さんと遊んだっけなぁ」
 しみじみと言った桂は、ふと閃いた名案ににっこりと笑う。
「保育園……そうか! ここなら良い評判は貰えるかも!」
「え?」
 意味が解らなかった燈辻は、桂を見つめて目を瞬いた。
「保育園で遊べばいいんだ。膝の上に乗せて、走る。障害物競争とかしてあげれば喜んでくれるよ! 武器としてじゃなく、競争に使うんだよ」
 そう言って、桂は久遠ヶ原学園へと急いだ。燈辻も微笑んで追いかける。まだ放課後で誰かは居残っているであろうと願って。


リプレイ本文

 ズババーン! GOGO!
 行くぞ マイ・カー☆
 それいけ パトカー
 げんば に きゅうこう! れっつごー!
 走れ☆ ハイホー はたらく くるま
 げきたいし を のせて
 ぼくたち はなぞの ほいくえん
 わるい あくま を げきたいだー☆

●学園で
「うっしゃー! 子供達かかってこいっす!」
 九 四郎(jb4076)は桂の話を聞いて、ガッツポーズ。
 保育園で手作りカートのイベントをすると聞いてワクワクしていた。目の前にあるペダルカーを見て、四朗は目を輝かせた。
「へえ、楽しそうだね。どうせなら保育園の子達にも楽しんでもらいたいけど」と、沙 碧葉(jb7043)。
 弟の沙 夏樹(jb7044は「なんで僕が…」と愚痴りつつ、でも本当は興味津々だった。
「そういう楽しいことは、早く教えてくれなきゃ〜、良かったら協力するわよ」
 桂がなにか難問をかかえてるのではと心配した木嶋香里(jb7748)。そして、目の前のペダルカーに一瞬目が点になったが、しかたないなぁと言った風に苦笑した。
「あ、うん……香里さん。ありがとう……ちょっと、恥ずかしいんだけど、ね」
「でもさ、何するにしても一生懸命で可愛いよねェ」
 三島 奏(jb5830)は子供好き。触れあいに期待して手伝うとにしたようだ。
「んー、不思議なカートもあるものですね。というか、これを普通に応用すれば、撃退士向けのバイクとかできません?」
 何でそういうものを作ろうとしないのかと思いつつ呟く、ゲルダ グリューニング(jb7318)。
「はーーっははッ! 説明しよう、幼女☆ それはなァ、つまらんからだ!」
「キャッ!」
 いきなり現れた人物に驚いて、ゲルダの背が跳ねる。
「うっわ、ビックリしたっす! 一体どこから(汗;」
「あんた、誰?」
 奏も驚き、ぎょっとした表情で相手を見た。
「フハハッ! 俺こそが、マッド・スチューデントにしてV研の部長である!」
「アーハハッ!! マッド・スチューデントとは片腹痛いわ。マッド……それは、私こそ【本家】ッ!」
 サーシャ ヴァレンシア(jb6734)は腰に手を当て仁王立ち。その豊かなバストをブルンと振るわせて高笑いした。
 本当はV研の開発した『K−2』、カートの日常品とV兵器を融合という、奇抜な発想に同じ科学を志すものとして心打たれた為に手伝う気になったのだ。だがしかし、目の前にすると純粋なる対抗意識が燃え上がる。
「ぬう……ならば、俺は【元祖】!」
「【元祖】と【本家】は常に競い、戦うがサダメっ! いざ尋常に勝負!」と挑発したものの、碧葉と夏樹など小等部メンバーがいるので、すぐ部長は自重した。
「それはさておき。すまんな……同志が居たようで、つい滾ってしまった。……まあ、あれだ。俺は【つまらない大人になる気はない】のだ」
 この発明もどうかと思うのだが、本人には夢があるらしい。とにかく、可愛い保育園園児と遊ぶのならと一同はペダルカーを改造することにした。
 その隣で、香里が携帯電話を出し、保育園に連絡する。香里は桂と燈辻と共に、イベントの開催と調理室の利用許可を頂く交渉するために電話は必要である。
「こちらの保育園でカート大会を実施させて頂きたいのですが……あ、はい。これからそちらに伺いますね♪」
 三人は顔を見合わせると、「やったね♪」互いに笑った。そして、保育園へと向かった。

●楽しい改造♪
「ふむ……子供の玩具、ペダルカーとはいえ手加減はなしよ」
 サーシャは意気揚々とカートを改造し始めた。
 カートを改造するために必要な資材を持ち込んでいる。とがった部分を隠すためのカバー部材、子供が指を入れそうな穴など塞ぐ樹脂パテ。また体の大きな人が運転しやすいように、設計的に無駄な部分を省いて少しでも運転しやすい空間を作るための工具などもあった。
「んー……これ、いらないんじゃないのかしら?」
「な、なんだとぅ! ……ん……そうだ、な」
 主にK−2カートの全車両、安全面での設計を見直しされ、大人しく部長は作業を始める。
 完全を考慮し、二人でパテを使って穴を埋めたり、角ばった部分を削りウレタンなどで丸くした。
「どうだ、ここをこうしてMP3なんぞ聞けるようにだな……」
「それより、内部の無駄を省いて車内空間を快適にするべきよ。クラクションの音を子供が好きそうな曲や効果音などのメロディーに改造するほうが……」
「効果音か……それなら、戦隊物の玩具をそのまま組込むか。確か、鍵状の玩具があったな。あと、スイッチのも」
「ああ、あれね。いいんじゃないかしら」
 色々と案を言いつつ、サーシャは自分の車両「ヴァレンシア号」の外装を金ピカに塗りたくっていた。
「ふふふ……私にふさわしい圧倒的ゴージャス感!」
 すばらしい金ピカぶりに、周りはドン引きしていた。それは、よくある金ピカ招き猫の貯金箱のような色合いなのだ。
「……すごいね、それ(主に色が」
 奏は自分のペダルカーを必死で改良していたが、サーシャの出来が何というか凄かったので、思わず声を掛けてしまった。
「素晴らしい出来で満足してるわ……あら、奏のペダルカーは随分と小さそうね」
「あぁ、あたしの身長じゃねー……どうしようかと思ってさ」
 足漕ぎ車は自分の身長では拷問としか思えないので、事前に何回か試乗せねばと、先程から練習していた。でも、やはり小さい。さすがに身長が189cmもあれば当然と言えた。しかし、もっと大変なのは四朗の方で……。
「うおー! 超狭いっすー! 痛ててッ」
「あーあ……」
「四朗は251cmか……ちょっと、無理ね」
「だねぇ〜」
 二人は肩を竦め、苦笑する。そして、三人で奏と四朗の機体を少し余裕を作るための改造をし始めた。
「これでやっとマシになったね」
「あざっす! これで少しは痛くないっす」
 四朗は満足そうだ。
 奏の機体は黒字に紅い☆マーク。その機体を眺め、ビビッドな雰囲気に目を細めて奏は笑った。そして、他の機体をみんなで各人の好みに塗装した。
「へぇ……エアロやマフラーやエンブレムを段ボールで作りったんですね」
 夏樹は感心したように言う。
「私のはくまさんですよ。ちょっと、スイカカラーのボディーですけど」
 ゲルダは楽しげに言った。手には手作りのスイカの飾り物。風船も少し貼りつけて、ゲルダの機体は完成した。
 あとは、着る予定のクマの着ぐるみと保育園児に見せる芸の小道具を用意して準備万端OKだ。
「クマの顔と足も付いてら〜」
「はい♪」
「さて、あとはこっちと……」
 夏樹は双子の兄の碧葉と一緒にコース作りに励んでいた。先程の香里からの電話を聞いて、必死の沙兄弟のコース制作が続いていた。
「円を描くだけだと物足りないよなあ……歪曲させてみるかあ」
 碧葉がブツブツと呟きながらコースのラフを描く。材料が足らないところは、白線だけにしようと赤いコーンを用意するつもりだった。
「あぁ、なんでこんなのやってるんだろう……」
「素直じゃないなあ、興味あるくせに」
 弟の呟きに、碧葉はちょっとツッコむ。そんな弟がやはり可愛い、とは本人には言えないが。
 言われてカチンときたのか、なんとなしに兄の気持ちがわかっているのか、夏樹がくるりと振り返って言い返す。
「わかったような口きくな」
「こらこら、喧嘩するんじゃないわよ」
「むー……なんで僕が……」
 そう言ってプイと背を向けた。没頭できる作業にのめり込み、協力しつつも心はちょっと貝の口だった。もちろん、兄限定だったが。
「段ボールで1〜2mの短いトンネルとかは?」
「……もう。グラウンドが借りれるなら、自由度高くできるよ。好きにすればいいよ」
「んー、もっと時間があれば細かい仕掛けもできたのになあ 」
 言い合ってもさすがは兄弟と言うべきか、なんだかんだと結局は話しつつ、坂道などを作ってコースを完成させた。

●当日
「わー、晴れた!」
 碧葉は嬉しそうに声を上げた。
 余った段ボールと塗料で、作った屋台の看板とアレルギー表記付きのメニュー表は奏のお手製。そして、カート競争が始まるまでは、屋台横でバルーンアート作って配布していた。
 香里が燈辻と一緒にロールサンドサンドイッチやクレープの屋台は大盛況で、「当日 皆が楽しめる様に下拵えをしておかなくちゃね♪」 と言って、冷蔵保管出来る物と園児達に渡す軽食引換券を準備しておいたのが良かったようだ。
 テーブルには、いちご、クリーム、チョコ、バナナが並ぶ。ロールサンドはパラフィンに包んでリボンで飾った。
「いらっしゃいませー! サンドイッチはいかがですか?」
「いっち、ください。なんえん?」
「はい、100くおんです♪」
「みーちゃん、わかんない」
「このチケット100くおんだよー、ハイっ!」
 上のクラスの子が女の子から取って香里に渡す。その途端、火がついたように女の子は泣き始めた。
「みーちゃんの! わぁーーん!」
「じゃぁ、もう一回おねーさんに渡してね?」
「う、うん……」
 万事が万事こんな感じで、テキパキとはいかなかったけれど、香里はなんだかとても温かい時間を過ごしている気がした。
「燈辻ちゃん、あとはよろしくね」
「はい、いってらっしゃい」
「みんな順番を守ってカートを楽しんでいってね♪」
 さあ本番。香里はカートに乗りたい子の列整理をしつつ、自身も園児達を乗せて試運転した。
「はいっ、どうぞ☆ 割れると危ないからお姉さんがやりますねー」
 ゲルダは園児達に風船を膨らませてあげていた。この年頃の子供は待つのが苦手。レース開始まで手持無沙汰にならない様、気を付けていた。
「ねーねー、ふーせん、まぁだ?」
「はいはい、ちょっと待ってくださいね」
(「うふふ、弟ができたみたいです♪」)
 そして、順番待ちの退屈さに暇そうな子供たちが居ると、その子たちを集めて手品や芸を披露してあげた。
「縦縞のハンカチが、あっという間に横縞になっちゃったー」
「もー、いっかい!」
「ゆーちゃんやりたいっ!」
  自分の方がお姉さんだからというのは、自分にとってとても大切な気持ちなのだ。ゲルダも大切な時間を過ごした。
「お、車運転してみるかい? おいでおいで」
 子供相手にする時は長身のせいで驚かさないよう、奏は屈んで同じ高さまで目線を降ろす事を心がける。
「お嬢さん、お手をどうぞ 」
 碧葉は女の子の園児に対しては紳士的に王子様っぽくエスコートしていた。無意識な辺りが将来不安な小学生である。一方、弟の方はというと。
「よし来い。思いっきり飛ばすぞ! 」
「おー!」
 構える必要もないので、素で居られたようだった。園児を乗せて、コースを試運転している。 
 四朗はレース以外のとこでは子供たちの相手をしていた。子供たちと触れ合う目的以外にも、父母の方の負担軽減をしようという心遣いがあった。
「体が大きいからいっぱい乗れるお馬さんすよ」
「おにーちゃん、おっきい!」
「わーい!」

 べちべちっ☆

 園児は容赦なく四朗のスキンヘッドを叩く。しかし、もみじのお手てはちっとも痛くない。むしろ、その可愛さに四朗は笑っていた。
 大きな体を利用して抱き上げたり、腕に皆をしがみつかせてぶらーんとしたり。
 模擬店と風船でのサービス、子供たち御ふれあいは成功だった。

●カート大会!
「フハハッ! 怖かろう! この圧倒的な私の頭脳と科学力が!」
 サーシャの高笑いに0〜2歳児は号泣。3歳以上は戦隊モノの敵に似てると大喜びだった。それもそのはず。彼女は人気アニメ「キャッチザスカイ」の金色のパイロットスーツのコスプレをしていたからだ。
 幼児たちの絶大なる賞賛を受けつつ、サーシャはカートに乗る。一緒に乗り込んだ園児は諸手を挙げての参加表明で、見事サーシャの膝の上をGETしたのだった。
「いくぞ! せかいは、おれたちのてに!」
「当然よ!」
「「おー!」」
『それでは、全員揃いました! レッツ、GO!!』

 キコキコキコッ!!

 燈辻のアナウンスの後に、パーンと音が鳴って皆一斉にサーキットに飛び出した。
「かめをけっとばせー!」
「まかせときなさーい!」
「あたしの存在を忘れてもらっちゃ困るねぇ」
「あー、わるものだー!」
 危険が無い程度に幅寄せ、割込で進路妨害しながら、「そこをおどきーッ!」と高笑いしてやって来たのは、奏。
 彼女の登場に、会場は沸き上がる。
「いけいけー!」
 カートは亀の甲羅を吹き飛ばし、サーシャの行く手を遮ろうとする。奏はキャットスーツにマスクとマントという、ヒール(敵役)らしい出で立ちだ。

 ギャギャーン!

「はーっはっは! 俺の愛機は世界一ィィ! ブウゥーン! バァーーン!」

 キコキコキコッ!!

 相変わらずなV研部長だった。
「わんわん、まけるなー!」
「負け無いッす!」
 マスコット感を出すために着ぐるみを着ている四朗は大きい体を無理やり押し込んで、乗り切らないので肩車した園児と共に必死に奏を追いかける。
「行くっす!」
「いくっすー!」
 四朗は思いっきり漕いで体当たりした。
\(アッ)/
「どーーーん!」
「ぎゃー!」
 吹き飛ばされた甲羅に乗り上げ、奏は派手に自爆。 ついでにV研部長も巻き込んで、お空の星になる勢いでぶっ飛んだ。
「たそがれーッ!」
「あーん、もうッ、なんで簡単に引っ繰り返るンだよッ、このすかぽんたん!」
「ミーのフロントギアが真っ二つーッ(死」
 ハンドルが憐れなところに食い込んでいる。南無三。
「あはは♪」
「へんなのー! おにーちゃん、跳ねてるー」
 奏の演技と部長の様子に園児が湧いた。
「おりゃー! どけどけ、亀の甲羅!」
 四朗はスキルで黒色に見える風の一撃を放って場を盛り上げる。

「よーっし、負けるかー!」
「わーい、おにいちゃんがんばってー♪」
 夏樹の膝に乗った園児が言った。夏樹も高揚する気持ちを隠せない。コーナーを曲がり、碧葉が追い上げ追いついてくる。
 碧葉が少し大きな声をかける。
「言った割にはずいぶんと、楽しそうだねー」
 それはどこか嬉しそうで。
「うるさいな!」
(「素直じゃないね」)
 心で呟いて、碧葉は笑った。

「せっかくだから、ゆっくり走りますよ」
「わーぁい♪」
「ちょっと、蛇行しましょうね♪」
「ねー、ママのところまでー」
「はーい」
「やったあ☆」
 ゲルダは勝ち負けよりも楽しさ重視で運転した。乗ってる子供を景色や蛇行運転で楽しませる。
「じゃあ、写真も撮ますよ〜」
 園児が自慢げにゲルダのくまさんカートの前に並ぶ。
 そして、時々ゲルダは子供たちが遊ぶ写真も撮った。きちんと楽しそうな様子を狙いつつ、子供全員を漏らさず撮る。
(「またやって欲しいと言われたら成功ですよね♪」)
 そう考えて、ゲルダは微笑んだ。
「猫さん、行きまーす!」
「ねこさん、いくまーす☆」
 香里の、猫をイメージしたコーディネートカーはクラクションも猫の鳴き声で女の子たちに大人気だった。
 最終的な芸術点などの結果は、「全員、花マル」。
 それよりも何よりも、園児の笑顔がそれを物語っている。
 大好きな玩具とおにいちゃん、おねえちゃん。たくさん遊んでもらって、おおきな「ありがとう」の声援を、子供たちは撃退士達にプレゼントとしてくれたのだった。

 心の中の報告書に、桂は「大成功」と書き添えた。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 月夜の宴に輝く星々・三島 奏(jb5830)
 マッド・サイエンティスト・サーシャ ヴァレンシア(jb6734)
 和風サロン『椿』女将・木嶋香里(jb7748)
重体: −
面白かった!:5人

葬送華・
九 四郎(jb4076)

大学部4年210組 男 ルインズブレイド
月夜の宴に輝く星々・
三島 奏(jb5830)

大学部7年170組 女 阿修羅
マッド・サイエンティスト・
サーシャ ヴァレンシア(jb6734)

大学部7年258組 女 ダアト
撃退士・
沙 碧葉(jb7043)

中等部1年1組 男 ダアト
撃退士・
沙 夏樹(jb7044)

中等部1年12組 男 ダアト
マインスロワー・
ゲルダ グリューニング(jb7318)

中等部3年2組 女 バハムートテイマー
和風サロン『椿』女将・
木嶋香里(jb7748)

大学部2年5組 女 ルインズブレイド