.


マスター:丸山 徹
シナリオ形態:イベント
難易度:難しい
形態:
参加人数:25人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2016/01/11


みんなの思い出



オープニング

 右の拳を左手で包み、人中(じんちゅう)という急所を守る位置に。それが開始の姿勢。
 祈るような姿で始まるそのトゥル(型)が好きだ。
 シジャ(はじめ)と呟く。
 サーデ(左方) ニウンチャソ・サンパルモマッキ(L字スタンス両拳上中段受け)という前面二方向からの攻撃を防ぐ動作。ここから、近い敵にソンカル・テリギ(首狩り打ち)、遠い敵にカウンデ・パロ・チルギ(中段突き)
 武道の型はある意味で試合より実戦的だ、現実的かはともかく、一対多数や武器への対応も考えられている。
 シッ! 呼気が鳴る。
 無心に動く。
 手が、脚が、それを支える体幹が、力を生み出す重心が、すべてを定める意識が、動く。
 ……ノプンデ・ヨプチュア・チルギからニウンチャソ・パルモ・テビマッキ、もう一回、ウーデ。
「元暁!」
 トゥルの名を叫び、終了。
 拍手。
「とんでもない上達だな」
 角河トホルは驚きを隠さなかった。
「ありがとう」
 知らずにかいていた汗を拭いながら、マリスは笑顔になる。
 トホルがマリスに武術を教え始めてどのくらい経っただろうか。興味本位で習い始めたマリスだが、今では自分で研究し、研鑽するほどになった。得意の人形兵器と連携させる練習もしているらしい。都会派ゆえ、それを人に見せることはないが。
「やっぱ天魔は体力が違うな」
「若さじゃなくて?」
「おいやめろ」
 たまに勘違いされるのだが、トホルは並外れて体力があるというわけではない。能力者同士で比べた場合、平均よりやや上くらいだ。
 天魔を悶絶させる一撃は、筋力のみでは生まれない。打撃は距離・角度・タイミング……教えをそのまま実践した結果、「いい時にいい感じの一撃」ができるようになった。つまり「効く」技だからダメージが大きいのであって、実のところ破壊力はそれほどでもない。
「まあ実際若いんだし、色々学んだほうがいいよ。僕が教えられるのは武術だけだから」
 過去、急所の存在しない奴とか出てきて「どないせっちゅーねん」とあっさり任務を放棄したことがある。必死に逃走する相手を追いかけるのも苦手だ。向かって来ない相手を後ろから叩きのめす動きなど知らない。
 武とはそういうものだ。無手の技に限らず、例えば剣術だって、延々と切り合うような戦闘は想定していない。普通の人間は一太刀浴びれば死ぬ。
 最近では頭を捻って戦いかたを考えるようにしているが、それでも空から飛び道具を撃つような相手には、挑発するくらいしか手がない。
「飛び道具でも覚えたら?」
 マリスは気楽に言うが、それはあまり簡単なことではなかった。
「僕のダーツの最高点知ってる? ガンシュー(ガン・シューティングゲーム)とかも苦手でね」
「あ、そういう理由? 素手にこだわりがあるとかじゃなくて」
「他の戦い方を知らないだけさ。剣とか槍、弓だって触ったことあるんだ。でも実戦に使えるほどじゃない」
 それこそ魔法などをマリスから学ぶという手はあるのだが、この歳から覚えられるとはとても思えなかった。
「ガハラの子たちはホント凄いよ、何でもできるんだから」
 久遠ヶ原学園では、ほとんどあらゆる兵器の扱いを学ぶことができる。だからこそ新しく手に入れた武器を次の任務で軽々と扱い、アウルを馴染ませ、スキルに活かすことができるのだ。
 合理的だ。∨兵器は日々進歩している。現代戦において、効率よく兵器を扱うことは、そのまま強さに直結する。
 そこまで考えてふと気付いた。
「マリス、あの子たちと練習したら?」
「え……」
 マリスの表情が複雑に変化する。
 興味、期待、喜び、不安、苦悩……
「でもわたしは、あの学園に所属できない。ディーを捨てられないもの」
 奉仕種族を持つ限り、学園には所属できない。小さな妖精のような姿をした調査・記録用のディアボロ・ディーは、今となってはマリスの唯一の家族だった。
「所属の必要はない、僕が依頼を出すよ、撃退士の戦闘技術をお互いに交換するセミナーやってくれ、とか」
「……」
「新しい戦い方を学ぶのは必ず役に立つ。何より、君には仲間が必要だ」
 トホルは熱心に言った。
 マリスはこれからも戦うことになる。しかし、魔界にいた頃と同じ戦い方はもうできない。新しい力を身につける必要があるのだ。
 それは技術に限らない。知識だって良い、何より仲間が増えれば、一番良いことだ。
「部外者に、技術を知られたくないというひとだって、いるかも」
 迷いに満ちた声で、マリスが言った。
「そんな臆病者はいないよ」
 トホルは笑う。
「仲間になってくれる者たちは……少なくとも彼らは、絶対にそんなこと言わない」
「……」
 共に戦った戦友たちを思う。
 彼らのような存在が、この後にも現れるのだろうか。
「いいものは、いくらあっても、いい」
 迷うマリスの隣で、訳知り顔のトホルが軽い口調で言う。
「あり過ぎると困るなら、それはいいものじゃないんだ」
 視線を戻して笑う。
 その言葉が、ついにマリスの顔を上げさせた。
「仲間は、いいもの?」
 トホルは笑みを大きくした。
「確かめてみろ」


リプレイ本文

●戦技交友

 始まりの合図は静かなものだった。
「実演で見せるのが早いかな?」
 鳳 静矢(ja3856)の一閃は風切る音すら鳴らさずに、一同の度肝を抜いた。
 目を見張る者、声を上げる者、対抗心を燃やす者……
 鳳流抜刀術、瞬翔閃。アウルによる高速化を破壊力に上乗せする技法。速度が上がれば破壊力も上がる、単純で効果的なスキルだ。
 黒羽 拓海(jb7256)は黒百合と銘打たれた愛刀を納め、一礼した。
 静矢も応え、頭を下げた……共に、頭を下げても相手の爪先からは目を逸らさず。

 廃棄された運動場を改造した、アウル能力者用の訓練施設。
 久遠ヶ原学園にあるような最新式の設備などは無いが、負荷調節可能な加圧式トレーニングマシンや、∨兵器と同じ機構で作られた練習用武具、ロ
ッカーやシャワーといった最低限の設備はある。なにより、屋外にある大小様々な障害物の並ぶ闘技場めいた模擬戦会場は珍しかった。

 その会場の片隅に、27名の撃退士が各々好きな距離で固まっている。
 二人の剣士はその中で、開会の合図とも言うべき斬撃を披露した。
 抜刀の技は練習用のものだと発揮できない。それを受けるとなれば、やはり練習用の武具では無理だ。
 愛刀を手に打太刀を申し出た拓海と、同じく長刀を構えた静矢の対面は、経験の浅い撃退士たちからは一大事にも見えた。
 無論、型通りの動きなのだから、打太刀は負けると決まっている。
 だが向き合って一呼吸、拓海の心に武人としての興味が湧いた。
「打ち込んでも?」
「ああ」
 やり取りに言葉はなかった。構えも動きも、型どおり。
 込められた気質だけが、違う。
「天神流、瞬刃が崩し」鬼剣・瞬獄。
 鬼剣という技は世に幾つかあり、単純に言ってしまえば相手を呑んでかかるという技だ。殺気や闘気に圧倒された相手を切り倒すのは造作も無い、
その圧倒的な気迫を身につけ、相手にぶつけて、包み込む。
 要は気持ちを操る技なのだが、天神流にあるこの技もまた、気を操る。
 気配、打ち気、殺気、そういったものを取り払い、一切の『起こり(予備動作)』を消して、動く。つまり、斬る。
 火の粉のごときアウルが舞ったのは愛刀・黒百合が振り切れた後だ。
 その時には決着、当然だが仕太刀の勝ち。
 静矢の長刀、天狼牙突もまた、抜き付けを終えていた。それが先ほどの瞬翔閃であり、形としては拓海を両断していた。
 だがそのとき静矢が先に放っていたのは、護法という防御の技だった。
 彼をしても、拓海の淀みない斬撃の起こりを見誤った。同時では間に合わぬと察した静矢は抜きつけた刃を防御に使い、その刃の軌道を変えずに反
撃したのだ。
(あの一瞬に2つ、いや、3つのスキルか)
 防御、攻撃、そして……手加減。
(これが、久遠ヶ原の体現者)
 心中で呟く拓海に、静也が声をかける。
「正しく揺るぎなき不動の刃だった。ご協力、感謝する」
「……こちらこそ」
 涼やかな闘志が、拓海の心を駆け巡った。
 爽快な気分だった。
 幾人かの拍手や喝采を浴びながら、二人は穏やかで力強い笑みを交わした。

「ありがとうございます」
 大きな拍手を響かせていた主催に、拓海は生真面目に頭を下げた。
 主催、角河トホル(jz0314)の周りには、練習用武具のやりとりや、単純に世間話などでかなりの人数が集まっている。
「いきなりクライマックスを見せつけられた感じ」
 九鬼 龍磨(jb8028)が朗らかに笑う。
「非常に勉強になりました」
 言葉は静かだが、エルム(ja6475)の瞳には熱っぽい煌めきが灯っている。「しかし我流の身としては、継承している術理もなく、お返しできるもの
がありませんね」
「ご謙遜を」
 静矢が応える。「見世物をやるわけではない。むしろ何をやっても良いのだから、いっそ吹っ切れてしまえば」
「自分はもう吹っ切れました。真っ二つだ」
 飲み物を手にして拓海が言うと、一同の間に笑いが起きた。
 トホルも、久しぶりに見知らぬ人々の中で笑えた。気持ちのいい奴らだと素直に思う。特にエルムのような子にはのびのびとやってほしい。今朝一
番にもらった丁寧な挨拶は非常に好感が持てたのだ……外見も含めて。
「何でもということでしたら、最近習得した阿修羅のスキルを」
 エルムは木刀を手に進み出る。借り物ではなく、彼女自身のヒヒイロカネから出した∨兵器だ。
「まだ名前を考えてないのですが」
 オブジェのように並ぶ障害物のひとつ、裂け目から錆びた鉄筋が覗くコンクリートの壁。
 構えも呼吸も正すことなく、無造作に歩み寄ったまま木刀を振るうと、カカァンと高い音がして、オブジェは粉々になった。
 およそ木と石の生み出す音ではなく、結果でもない。木刀の突きが石壁を穿ち、摩擦のみで振り上げた一撃が縦に割り、返す一撃が横に割り、浮い
たままの破片の幾つかをまとめて薙ぎ払う。
 速度が威力になることを体現した、先の抜刀術と同じ理を持つスキルだった。
 エルムは静かに振り返る。
「ご静聴、感謝」
「お見事!」
 トホルの拍手は、先程よりも大きく聞こえた。 

 

●苦手なもの

 それぞれが分かれて交友が始まっても、トホルの周りにはそれなりの人数が集まっていた。
 飲み物などを準備しながら、黒田 紫音(jb0864)が先程からずっと疑問だったことを口にする。
「どうしてトホルさんは、何もしてないのにクライマックス状態なの?」
「あー」
 湿布や包帯まみれの顔を撫でながら、トホルは難しい顔になる。
「それには深いわけが」
「あの募集要項の解説を見られたんだろうな、マリスって子に」
 詠代 涼介(jb5343)があっさり見破った。「そこは大人しく怒りを受け止めておけ。下手に逃げると後が怖いぞ」
「自業自得です。素直に謝った方がいい」
 涼介のみならず黒羽拓海にも言われ、トホルは咳払いした。
「えっと鳳くんって、武器は刀一本だって? 僕も色々扱うのは好きじゃない(*できない)から親近感あるね」
 だいぶ無理のある理論はあっさり覆された。
「そうかなー? ちょっと違うと思う。好き嫌いじゃなくて試行錯誤の結果だし」
 素直な感想を述べる紫音。後方支援を役目と決めているが、戦術眼が鈍いわけではない。
「それに鳳さんって、交友関係広いんだよ? トホルさんってわりと一匹狼じゃない」と続けて、笑う。
 まあね、と苦笑しかけたトホルだが、
「全然タイプ違うよね、向こうのがハンサムだし」
 と、龍磨が混ぜっ返して、
「もう結婚してるらしい」
 というふうに涼介も乗ってくると、だんだんトホルの笑みが消えてきた。
「あと若いし?」
「クールだよな」
「女の子の悪口とか言わなそうだしー」
「ぼっちじゃないから」
 がしっ。
「後でおじさんと組手しようか」
「うっす」「おてやわらかにー」
 顔面を掴まれてぶら下げられながら、ちゃんと返事をする二人。
「でも鳳さんって凄いよね、刀だけでどんな相手にも対応するんだよ」
 紫音の意見は吊るされた二人への助け舟だったが、真実でもある。
 先ほど静也が見せた紫鳳翔という技は、銃弾にも負けない有効射程だった。
「あれなら空中の相手もいけるよなあ」
 空中の相手が苦手なトホルは、過去の失敗談を語った。ほとんど何もできなかった依頼の話。
 興味深そうに撃退士たちが集まってきた。
 聞き終えて、まず牙撃鉄鳴(jb5667)が言った。
「スキルで埋めるには限界がある。早い話「タマ切れ」が早い」
 抑揚の少ない話し方は投げやりな応答と誤解されそうだが、内容は経験に基づいた事実だ。
「遮蔽物のない場所で戦わないこと。できれば高い建物があると良い」
 新たな武装にも等しい助言。
 他にも、安易な跳躍は厳禁であること、回避行動は不規則かつ距離を詰めていることを悟られないように、など……
「最も有効なのは長射程の武器を使うことだがな」
 そう締め括ったのは凄腕の狙撃手としての経験と実績があるからこそ。
「召喚獣に意識を向けさせて俺が不意打ちする、という方法を使ったことがある」
 バハムートテイマーならではの戦術を説明するのは涼介。「まあ、召喚獣に限らず仲間や人形とやらと連携する時なんかでも、意識を向けさせ別の
本命を用意するというのは有効な方法だとは思う」
 龍磨も頷く。
「そうそう、いちばんは飛べる人や、飛び道具が使える人に任せること」
 龍磨に言われ、トホルは少し考えを改めた。チームで戦う機会が、どういうわけか増えてきた。
 しかし、2015年進級試験主席の意見はひと味違った。
「空中の敵? レーザーポインタ使って目潰しってのはどうだ」
 どこまでが本気なのか、サングラスに隠れたミハイル・エッカート(jb0544)の表情は推し量ることができない。「もしくはシュールストレ○ングを
開封し、アカレコスキルの春一番で匂いを上空へお届け……開封者も覚悟が必要だ」
 どこまでが本気なのか。
「それ……ただの、いやがらせ……」
 Spica=Virgia=Azlight(ja8786)でなくとも同じ意見は続出したが、
「そこをついて仲間が攻撃すれば有利になるだろ」
 ミハイルは折れない。
「臭い……だけ」
「いや、こういう援護も意外と」
「くさい……」
「……」
 ミハイルが傷ついた顔になったので、トホルは助け舟を出した。
「もうやめなさい、息女に言われたら落ち込むワード、ワースト3に入る一撃だよ」
「待て、息女じゃない。それ以前にコイツはそういう意味で言ってない」
 親交を深めるおじさんたち。
 一人の少女の接近にさえも気づかなかったのは、油断というよりもはや怠慢だ。
「!!」
 言葉にならない悲鳴というものが、この世にはある。
 この時、トホルの口から飛び出したのが、まさにそれだ。
 襟口に投入された保冷剤が、トホルに未知の発声法を会得させたが、それよりもはるかに冷たい声が背中に突き刺さった。
「セクハラ発言も程ほどにしないと、愛娘から『大嫌い』って鉄槌を下されても仕方がないと思います。『マリスパパ』」
 北條 茉祐子(jb9584)の視線もまた、同じくらい冷たかった。
「な、なんでしょうかコレは……」
「腫れを冷やしてあげようと思って」
「そう……」
 本当は叫び続けたいくらい冷たいのだが、茉祐子の冷たい視線のほうが効いていて何も言えないトホル。
「マリスが模擬戦はじめますよ」
「……」
 トホルは、茉祐子を見て、後ろを振り返って、「いやこっち見んな」とミハイルに言われ傷ついて、それから視線を茉祐子に戻した。
「は?」
「いいから来てください!」
 茉祐子に手を引っ張られながら、トホルは「じゃ、また」と皆に別れを告げた。



●天魔

 ほんのわずか時間を遡る。
 男女で分かれる理由など無くても、ある程度の分化は起こる。
 マリス(jz0344)は女性陣の輪に混ざっていた。よく見れば天魔の血を継ぐメンバーが多いことも、偶然とは言い切れない。
「クリスマスは……サンタクロースが、ジャスティス……」
 ベアトリーチェ・ヴォルピ(jb9382)の説明はとにかく個性的なので、マリスは受け止めきれず目を瞬かせた。
「え?」
「恋人友人も……ジャスティス……独り身は……ガッデム、な、日……」
 いわゆる『自由系』か……
 人間世界の不条理を知っていたマリスは、また一つ不条理への耐性を得た。そもそも身近にいる。
「クリスマスですか」
 エルムが補足する。「日本では、恋人同士の日になっていますね」
「恋人の日?」
 マリスの中で様々なワードが繋がってゆく。
 なるほど、デートスポット。なるほど、ディナー。なるほど、聖なる夜……
 だんだんと顔が赤くなりかけてきたところに、恐らくもっとも適切な答をシェリー・アルマス(jc1667)が教えてくれた。
「とある宗教での降誕を記念する日です」
 普通の女の子という知り合いに乏しいマリスにとって、明るく接してくれるシェリーは新鮮な話し相手だった。親友や憧れの人とはまた違う存在だ

「リア充爆発しろの流れもありますね」
「……え?」
「どうせ私もクリぼっちですよ、きっと次回もね」
 純粋な人間こそが、最も難しい存在なのかもしれない。
 そんな風に、戦闘技術を語る合間をぬって少女らしい会話がなされるような、平和な時間だったのだが。
「ディバインナイトが防衛に適さぬこともある」
 フィオナ・ボールドウィン(ja2611)の解説を、少女たちは熱心に聞き入っていた。
 特に熱心に聞いているのはシェリーだ。経験豊富なディバインナイトに話を聞きたいと思っていたところに、学園でも屈指の実力者に出会えたのだ
から。
「どんな時ですか?」
「強い負のカオスレートを持つ相手だ、その場合は攻守の交代も視野にいれるべきであろう」
 フィオナの話を聞きながら、マリスはある銀髪の天使のことを考えていた。
 イリン・フーダット(jb2959)……天使にしてディバインナイトの彼が、冥魔との戦闘で大きな傷を負うのを何度も見た。それでも彼は皆の盾で居続
けた。
(それはなぜ? ディバインナイトだから?)
 ただあの光景だけが、忘れられない。
 そのせいか、ついこんな質問をしてしまった。
「「人間のように戦う」のと「天魔として戦う」のはどちらが有効だろうか? 実際の動きでも、精神論でも」
 奇妙な質問に、少女たちの会話が一瞬だけ、止まった。
 素っ気ない返答がそれをいびつに動かす。
「騒ぎを起こしたくないという点なら、一般人相手には人間の様に接する方が無難だと思うが」
 フローライト・アルハザード(jc1519)は、自身もまた無難な回答を行っていた。「戦闘の点では好きにすると良い。繕った所で、いずれは無理が祟
る」
 そもそもこの会話も、マリスが人に害を為すか否かを測るためのものであり、そこに好奇心はない。
「……」
 それに気付いたわけではないが、マリスもまた、そんなものだろうと受け止めていた。ちゃんとした答えが得られるとは思っていなかった。 

 たぶん、どうでも良いのだそんなことは。
 彼を最も傷つけたのが、自分と同じ冥魔であるということが、辛いだけなのだ。
(何をくだらない、私なんて、ヤナギの片腕を切り落としかけたこともある)
 ベーシストの腕を傷つけるなどまさしく悪魔の所業ではないか……ヤナギ・エリューナク(ja0006)は冗談にしてくれたが。
「そうなっても俺には歌がある。そん時はお前が弾くんだぜ?」
 ヤナギは笑い、マリスは泣いた。
 答などわかっているのだ。
 だから。

「くだらん」
 開口一番、フィオナは冷たく言った。
「人間のように戦ったところで人間になれるわけでもあるまい」
 マリスの心が軋んだ。
 そうとも。
 わたしは悪魔で、彼らは人間で、彼は、天使だ。
 誰が見たって分かるだろう……
 フィオナの言葉は続いた。
「他者に答えを求めるのがそもそもの間違いだ」
 だから分かってるって。
 それを、何を、知ったかぶって。
「答えは己自身しか持っておらんよ。過去を否定するのが怖いだけではないのか?」
 フィオナは愉悦混じりの笑みを浮かべた。
 賛同する者がいた。言い方はともかく、間違っていない。
 進み出たのは橋場 アイリス(ja1078)
 アイリスにとって戦いは日常であり、戦いが生み出す悲しみも身近なものだった。
 負けたら死ぬのは常識だ。
 彼女の武技は、生きるために戦い続けた結果の産物、それゆえの我流。
「人間として戦うとか天魔としてとか手加減じゃないですか?」
 傷痕の残る目の光は、冷たい。「マリスさんというヒトが色々な事を学び、全力で敵を倒すのです」
 言って、アイリスは胸を張って挑発する。
「その練習とかなら……胸を、かしますよ」
 それは。
 意外と、大きい。
 その事実が、色々と嫌なことを思い出させた。
 マリスは笑った。
「貸してもらおうか、その二つの大きな的。お前もだ教育ママ、今度は私が教育してやる」
 こう見えてまだ義務教育の歳。
 保護者の影響は絶大だった。



●模擬戦

 逢見仙也(jc1616)は2mを超える長身で、同じく手も大きい。
 その大きな掌が見えなくなるほど無数の刃を指先に構え、声をかけた。
「いくぜー?」
「はい」
 夕貴 周(jb8699)の返答に、仙也は一旦腕を下ろした。
「おいおい、同級なんだしタメ語でいいって」
「あ、うん」
 周は困ったように微笑し、「じゃあ……いいよ」と頷いた。
「よしっ」
 仙也の放った無数の短剣を、周の両手の二刀が払い落としてゆく。∨兵器の確認なので、互いに本気ではない。
 落とされた傍から短剣はカードに変わり、アウル光を残して消えてゆく。エミシオンカードという、カードが別の物体の幻影をまとう∨兵器だった
のだ。
「おもしろい、ね」
「なー? アレか、花とか、紙飛行機とかにもできるのか?」
 どことなく話しづらそうに敬語をやめた周に対し、仙也は無邪気に笑って手元の兵器を眺めている。
 真剣だけど本気ではなかった、先ほどのやり合いと似たような空気。
 ただ、そんなに悪いものでもない。

 模擬戦では練習用武器の使用が義務付けられる。
 アクセサリ、防具的な∨兵器は全て使用推奨。ヒートアップしたら周りが止めること。決まりはそのくらい。
 ここにいるのは撃退士だ。少々の傷なら数日で完治し、大きな傷でも回復スキルの熟練者が揃っている。

 その少し離れたところでは、ペイント弾を使った演舞が行われていた。
 集まった撃退士たちによる銃撃の雨の中、優雅に歩くのはエイルズレトラ マステリオ(ja2224)
「相変わらず、当たる気がしないな」
 川内 日菜子(jb7813)が素直に感心した声を上げた。
「これでも、一心不乱に強さを磨き続けてますからね」
 エイルズレトラは楽しく一礼。

 ちなみに模擬戦の射撃はペイント弾で、急所へ2発命中したら脱落、それ以外の部位でも合計5回命中したら脱落というやや特殊なルールが有る。
盾や武器に当たった場合は無効だ。
 有利か不利かは微妙なところだ、これでは絶対に遮蔽を抜けないし、鎧の厚みも無意味にしてしまう。少なくとも完全武装で撃ち合った時と同じ結
果にはなるまい。
 それでも、誰も文句は言わなかった。
 当然だ、ここで勝敗を競う意味は無いのだから。
 ……普通なら。

「わーお、ガチ」
 茉祐子に連れられて来たトホルの第一声だ。
 二人の見上げる空中では、模擬戦と呼ぶにはやや激しい何かが行われていた。
 見物人の中には見知った顔がちらほら。
「よ」
 ゼロ=シュバイツァー(jb7501)が片手を上げ、
「こんにちは」
 華桜りりか(jb6883)がお辞儀をした。
「で? どないしたん?」
「それが……」
 茉祐子が説明する。又聞きではあるが、人数もさほど多くない現状では大した齟齬はないだろう。
 天魔の話がどうとか原因は色々ありそうだが、要はケンカだ。不安定な子供が暴れるのはどの世界も同じ。
 それ故か、模擬戦とはいえこの戦いは緊迫感が違う。
 橋場アイリスとフィオナ・ボールドウィン、共に学園屈指の実力者だ。幾多の実戦で磨きぬかれた戦闘技術を操る、文字通りの戦士。
 マリスとて、自力では劣らない。だが経験は圧倒的に足りない。
 それを閃きが補っていた。
 アイリスは携帯品にある剣を投げつけるが、それは途中で掻き消える。投擲用の武器ではない、単なる目くらましだ。それを追いかけ、模造大剣で
斬りつける。練習用とはいえ∨兵器と同じ機構で作られた道具、使い手ならば意識を飛ばす程度は容易。
 それを防ぐ、銀の盾を構えた人形。
 首から上の造形が見事すぎて、ちょっと異様なフォルムとなっている、白い天使の人形『IRIN』……無論、特注品だ。
 マリスの操る、∨兵器にオリジナルのスキルを混ぜた人形術。
 赤毛の人形(こっちは造形適当)が練習用武具を振り回し、フィオナの盾に防がれる。反撃が来たらひょいと引っ込む。
「見たか! 『最強小隊(S・Platoon)』の連携を!」
 勝ち誇るマリス。
 だが、人形が自律しているわけではないことに二人は最初から気付いていた。操作中は腕の動きが制限される。
 マリスの人形が入れ替わる瞬間に、フィオナが高度をとる。アイリスは下方から接近。
「『おねえちゃん』!」
 マリスの手から白い服の小さな人形(適当)がやる気なく飛んでいくが、べしゃっとフィオナの平手に潰された。
「カトンボめ」
 人形が消える。
 アイリスの大剣にアウルの色が滲む。
 その瞬間に、マリスは反転した。急降下し、アイリスの眼前で身を翻す。
 逃げたのではない、オバクサシブ・トルリョチャギ(540旋回蹴)をずっと狙っていたのだ。
 硬い音が響いて、アイリスの身体が弾かれたように下がり、止まった。
「……」
 顔を上げたアイリスの目が、いつもの様に冷たく静かに、マリスを見据えた。
 マリスの顔に怯えが走る。

「狙いは良かった」
 トホルが呟く。
 本当は掠めるように蹴り抜いて脳を揺らす技だ。模擬戦で使うには危険な技だが、撃退士は脳震盪で後遺症など残らない。追撃さえなければ問題は
ない……そこまでマリスが考えていたかは分からないが。
 どのみちアイリスは読んでいて、額で受けた。もう通じまい。

 それは模造大剣のはずだった。
 しかし、アイリスのアウルに染まった今、マリスの目には処刑刀にしか見えなかった。
「い、りん……」
 掠れるような声をあげ、天使の人形を操るが、それはフィオナに阻まれた。防衛役としての練度に雲泥の差がある。
 盾で盾を抑えれば、剣から身を守るには剣しかない。そしてマリスの剣は先ほど破られた。
 Regina a moartea
 死の女王。
 それが技の名前なのか、アイリス自身のことを言うのか、それとも今この瞬間の、鮮血のごとき刃を振るう姿を指すのか。
 恐らく、全てだ。
 IRINを呼ぶ声は轟音にかき消された。
「!!」
 酷い音だった。
 銀の盾が鮮血色の刃を止めるとこんな音がするのを、マリスは初めて知った。
 イリン・フーダットの背中がこんなに広いことも、その背を飾る白い翼の美しさも。
 アイリスとイリンが、表情のない視線を交わす。
「助太刀ですか?」
「申し訳ありません、頼みを受けまして」
 イリンの視線が下がったので、アイリスもそちらに目をやると、主催者の男が見上げていた。
「……」
 アイリスは身を引いた。男性は苦手だ。
 イリンは目礼すると、フィオナにも向き直った。
「さすが、お強い。勉強になりました」
「む? ああ」
 さっき捕まえたIRIN人形とイリンを二度ほど見比べてから、とりあえず人形を返し、
「頼まれたからと?」
 興味を持ったように訊ねる。
「はい」
 イリンはただ肯定した。
「ふむ、見事」
 フィオナは満足そうに頷くと、地上へ降りていった。
 

 
●より強く在る為に

 見物人たちが散り始めて、しばらく。
 トホルはいきなりマリスの頬を張った。凄い衝撃に、マリスは、すぐには立ち直れなかった。
「∨兵器でケンカするやつがあるか」
「じ、自分だって!」
「謝ってこい」
 有無を言わさぬ、穏やかな声。
 マリスは俯きながら言い返した。
「……誰に」
「お前が悪いと思ったひと達にだ」
 トホルの声は穏やかだが、返答は素早く、やはり有無を言わせなかった。
「僕には謝らないでくれ、お前と同じケンカするバカヤロウだからな」
 言って、背を向けた。
 茉祐子が駆け寄る。
「トホルさん!」
 トホルは小さな声で告げた。
「あいつは僕の前じゃ泣けない、頼むよ」
「……」
 茉祐子は立ち止まり、踵の向きを決めかねていたが、やがて身を翻し、マリスのもとへと駆けていった。
 トホルは振り返らぬように努力した。
 ……離れたところで見ていたジェラルド&ブラックパレード(ja9284)が、いつもの笑顔で言った。
「真面目だねぇ」
「……」
 隣で見ていた紫音が呟く。「私、パパにぶたれたことあったっけ」
「もっと酷いことしちゃう?」
「怒るよ?」
「うん、ごめん」
 わざとらしい笑顔での応酬は、やはり親子の間柄ということなのだろう。
 そんな茶番で元気づけてくれるパパも、優しいんだけど。
「マリスちゃん」
 呟く声は、ここからでは届くまい。
 それでも祈る。
 声でなく、祈りなら、もしかしたらと信じて。
「誰かのようにではなく……あなたはあなたらしくあればいいって思うよ……」
 
 マリスは泣き崩れた。
 それからやがて、イリンと茉祐子に支えられ、立ち上がった。
 りりかはマリスに駆け寄ろうとしたが、ゼロに止められた。
「行ってくる」
 案ずる二人には笑顔を向けた。
 黙って見送る二人には、「ありがとう」と頭を下げた。
 マリスは歩いた。
 熱を持った頬に触れると、痛かった。
 悪魔の少女は歩いた。
 周りでは、熱心に技を練習し、戦術論を語り、武器を確認する撃退士たち。
(何人いたっけ)
 確か25人、自分たちを入れて、27人。
 人間は何人?
 悪魔は?
 天使は……
「失礼致します」
 立ち止まる。
 顔を上げたマリスの行く手、あと二歩というところに、執事然とした若者が立っていた。

「リアンと申します」
 リアン(jb8788)は慇懃に礼をした。
「マリス」
 ……だ、と続くのか、……よ、と続くのか、決めかねたまま、語尾は曖昧に消えた。
「お名乗りいただき、ありがとうございますマリス様」
 声の調子は変わらない。
 不思議と嫌味に感じないのは、彼がこの仕草を自分のものにしているからと、心からの善意で声をかけてきたからだろう。
「その瞳、私には覚えがあるのです。何かを受け入れようとする、その瞳。強く、強く「生きる為」の瞳」
 とても大切なものを語っているような、ただ聞いてもらいたいだけのような、奇妙な独白は続く。
「私は護れなかった者なのですよ。私は天魔として育てられ、生活をし……壊された」
 その語りでマリスは理解する。人間以外に、天魔という呼び方をするものがいたら、それは。
 天魔ハーフ。
 リアンは、少しだけ笑った。
「何を以ってして天魔なのかすら判らぬ紛い物……その上、心は人間であろうとしております」
 どれでもあって、どれでもない。
 生まれた時はどれかだったはずだ。天界にいたか、魔界にいたか、そこで育ったはず。
 それが壊されて……
 どれでもない路を、自分で選んだのだ。
「……」
 リアンはマリスの瞳に何を感じたか、語るのをやめた。
 一礼し、次の瞬間、その姿は消えていた。
「……」
 一歩、二歩と進む。
 三歩目からは普通に歩き出した。

 力強い歩みは、一分も歩かぬうちに彼女たちのもとへ辿り着かせてくれた。
 マリスは、フィオナに、そしてアイリスに、暴言を詫びた。
 フィオナはちょっと驚いて、笑った。
「貴様自身が何においても武器と呼べるものが何か考えるのだな。そうすれば、自ずと答えは出る」
 彼女にしてみれば、れっきとした助言なのだろう。やたらと偉そうだが。
 アイリスは髪をかきあげ「気にしてません」と言って、
「またいつでも、練習しましょう」
 そう言って、軽く手を上げた。我流の礼儀としては充分すぎるものだった。
 マリスは礼を言って振り返ると、更に強い足取りで歩き出した。

 しばらく行くと、見知った顔があった。
 桜色の木漏れ日と、黒い影。 
 りりかが口元に手を当て、ゼロが苦笑した。二人の視線はマリスの頬にとまっていた。腫れてきたようだ。
「パパともケンカか」
「いいえ、叱られただけです」
 ゼロは楽しそうに頷いた。
 りりかは怪訝そうに、そして心配そうに頬に手を伸ばす。
「大丈夫、これはこのままで」
 マリスはそっとりりかの手を押し留め、そのまま握りしめた。「祓い給へ 清め給へ」と祝詞を唱え傷を癒やす彼女の力は、もっと大きな怪我に使
うべきだ。
 そんなマリスの反応をどう受け取るべきか分からず、それでもりりかは、彼女の思う精一杯を示した。
「あたしはマリスさんを仲間だと思っているの」
「……」
 マリスはりりかを抱きしめた。「わたしも、そう思ってる」
 ゼロはぶらりと足を動かし、少女たちから距離をとる。
「人とか天魔とかどうでもええねん。嬢ちゃんは嬢ちゃんらしく、ってやつや」
 ガラにもないと自分でもわかっているからこそ、茶化してしまう。
「せやからそのおすましモードで無理するんもやめとけよ」
 抱き合いながら、マリスは顔を上げて、ゼロにウィンクした。
 ちょっと、してやられた気がして、ゼロはもうひとことお節介を言ってみる。
「あぁ、これは忠告やけどな。あんま簡単にひとを信じすぎんなよ?」
「えぅ……ひどいの」
 顔だけ振り返ったりりかは、ちょっと泣きそうだった。
「大丈夫、わたしはりりかを信じてるから。ゼロさんは無視する」
「ひどいの……」
 りりかと同じ目線にしゃがみ込んでモノマネをするゼロを左右からしばき倒し、「また後で」と別れを告げて、歩き出す。

 イリンと茉祐子が見えたときは駆け出していた。
 先に茉祐子に駆け寄った。イリンに駆け寄るのは照れ臭かったからだが、茉祐子にはバレていて、イリンの方へ押しやられた。
「ヤなやつ」
 肩を小突くと、茉祐子は目を細めて微笑み、一言。
「甘えん坊」
 ……マリスは真っ赤になって追いかけたが、茉祐子は手を振って駆けていってしまった。
 イリンを置いてゆくこともできず立ち止まり、振り返ると、やはりイリンがいた。
 いつもの、穏やかな無表情。
 マリスは一歩近づいて、向き合った。
「イリン」
 自然と、その名を呼んだ。「あなたが皆を守るのは、なぜ?」
 イリンも一歩近づいた。
「皆ではありません、守りたいものだけです」
 もう一歩、距離が縮まる。「守りたいから、守るのです、私がやりたいように」
 マリスは笑った。微笑むと言うには少しだけ大きな笑いだった。いたずらっ子のような笑みで、イリンの手をとって、自分の頬に当てた。打たれた
頬はちりちりと痛んだ。
「痛みますか」
 イリンの問いはいつもの調子で、彼を知らないものなら素っ気なく感じるだろう。
「あなたがいなければ、耐えられなかった」
 マリスは少しだけ手に力を込めた。
「……」
 天使がその手を外すと、悪魔の頬がそれを追いかけるように進む。
 背伸びした少女の唇が彼の頬に触れた。



●バトル

 マリスを打った右手が、ずっと重かった。
「……」
「どうした?」
 日菜子に問われ、トホルは、曖昧に返事をした。
「仲間たちに結構な厄介事を押し付けちまった気がして、気に病んでた」
「仲間なら問題無いだろう」
 日菜子はこともなげに言った。「何もかも抱え込むより、自分にだけ出来るコトを見つけたらいい」
「いやー、僕の問題って気が」
「手の届かぬ敵は味方に任せ、自分はその味方の盾になるなど、やれることはいくらでもある」
「そんなバトル感覚で」
「同じことだ」
 そんなものかなと、トホルは首をひねる。
「じゃ、子育ての得意な仲間に頼むか」
「……いったいどんな厄介事なんだ」
 今度は日菜子が首をひねった。
「それこそ連携が大切だろう」
 パイプ椅子に腰掛けている鳳静矢が笑った。この中では唯一の妻帯者だ。
 トホルは苦笑を返す。
「連携ね……」
「器用貧乏の集いより特化の集いの方が都合がいい」
 日菜子に言われ、では不器用貧乏な僕はどうしましょうかねとトホルは頭を掻いた。
 三人の立ち位置は、今まで日菜子とトホルが技の稽古をし、静矢が見物していたということに起因する。
 日菜子の技は東洋の運動力学に則ったもので、トホルは久しぶりに新たな技との出会いを堪能した。代わりに日菜子はトホルから、関節の脆い角度、骨格の薄い部分、循環器や呼吸器などにダメージを与える方法を教わっていた。
「間合い調節が上手いな、日菜子」
 トホルは初対面から名前を呼んだ。川内日菜子の持つ、誰とでも戦友になりそうな熱い空気が、自然とそうさせた。
「ほとんどの相手が私より大きいからな、入り込む技術がどうしても必要になる」
 武術とは自分より有利な相手を想定して稽古する。体格、武装、人数。
「角河の、まず攻撃を捌いて入りこむという技術も使えるな。接近戦の苦手な相手なら完封できる」
「名前で呼んでくれ、嫌でなければ」
 トホルは少し笑ってから、遠い目になる。「師匠が上手くてね、アレ。敵は二の手が絶対にうてないんだ」
「撃退士だったのか?」
「さて、僕が学んだのは覚醒する前だから」
 覚醒してからは、会っていない。
 川内日菜子は腕を組んだ。
「覚醒の前後は確かに違うが……習い覚えた技そのものに違いはないと、私は思う」
 トホルは少し考えて、
「模擬戦で試してみるかい?」
「ああいうのは」
 日菜子は苦い顔で首を振った。以前リングの上で相棒たちと繰り広げた、乱痴気騒ぎのような戦いを思い出してしまう。
「何より、学園の撃退士はチームを組んで任務に当たる。あの形式では何の訓練なのか分からん」
「一理あるな」
 静矢が頷いた。

 まったくだ。
 悪友に誘われて参加した模擬戦のさなか、トホルは非常に後悔していた。
「……せめてチーム戦に」
 ボヤいてる間に隠れなければ、ペイント弾の雨が降ってくる。
 そんな中、エイルズレトラは特に隠れようとはしなかった。
「被弾しないために重要なもの」
 召喚獣ハートに背を守らせ、闘技場の外周を駆け抜けてゆく。「半分は個人の回避能力、もう半分は致命打を受けないための位置取りです」
 その位置取りこそが普通は隠れるという選択肢なのだが、圧倒的な回避力を持つ彼には死角をなくし動きまわることが最善の位置取りだった。
 逢見仙也は、最初から勝ちを考えていなかった。
「ちょっとコレ使わせてくれよ、加減するから」
 デュラハンブレイドを引っさげて頼んでみると、
「いいですよ」
 というエイルズレトラ。
 無論、どれだけ振っても掠りもしない。
「どうなってんだよ」
 流石に息が上がりかけるころには、仙也も天を仰いでいた。
「手品と同じですよ」
「種も仕掛けもありません、ってか?」
「ありますよ、努力です」
 それが、たったひとつのタネ明かし。「手品と同じ。結果だけ見ると凄く感じるんです。実際はもっと泥臭い、血腥いことだってたくさんある」
 語る少年の周りで渦を巻くトランプはアウルでもなんでもないただの手品、純粋な指先技。
 タネはただ一つ、血の滲む修練。
「……」
 仙也は目を閉じ、少しだけ吹っ切れたような表情で目を開いた。
「先は長いってことか」
 エイルズレトラは優雅に一礼した。
「ええ、お互いに」

 これだけ遮蔽があって、この人数、なおかつ射撃に関しては変則ルールなので、意外な形で脱落する者もいれば、なぜか生き残っている者もいる。
「くらえ! 腹に響く重低音!」
 オブジェが吹っ飛び、九鬼龍磨も吹っ飛ぶ。
「命の彫像って脆すぎて盾にもならないよねえ。撹乱するには前もって準備する必要があるけど、時間制限あるし」
 吹っ飛びながら冷静な分析。そもそもバトルロイヤルでは自分以外すべて敵なので、誰の彫像を作ってもあまり意味が無い。
「暗いところとか、かなあ? あとあんまり知能の高くない相手とか〜」
 やがて場外へ。
 場外に出たところで即失格というわけではないのだが、龍磨は戻る足を止めた。
「やられてた」
 右半身……肩、腕、腰に全部で5つののペイントが付いている。
「吹っ飛んでる時にもらったのは2発。その前のゴタゴタしてる時にも喰らってたかあ」
 何処からかは分からない。
 何者かは一目瞭然。
「おっかないね、味方だから良いんだけど」
 龍磨が弾道の先を見やった時には、牙撃鉄鳴はすでに別のポイントで、コッキングレバーを引き直していた。
「地に足が付いてないと格好の的になる」
 どんな名人達人にも、防げない瞬間はあるのだ。

 はるか上空から、フローライトは戦場を見下ろしていた。戦闘に参加できる距離ではないが、もっとも観察しやすい位置だ。
「位置取り、それもまた技術だが」
 立ち回り次第で、自他の能力を活かすも殺すも可能。
「能力を変えるのは修練、動きを変えるのは……経験か」
 見ることもまた経験であり、修練だ。
 フローライトの視線が、また別の組を捉えた。

「積極的参加……ガンバルゾー」
 ベアトリーチェは大きな遮蔽となる壁際に身を貼り付け、古いスパイ映画のBGMを口ずさみながらペイント・ライフルを構える。気分はボインな女スパイ。「インク塗れに……シチャウゾー……」
 そんなことをやっていて隠密になるはずがない。
 彼女の背後から、凄まじい跳躍で壁を超えて、夕貴周が強襲する。
 咄嗟に両手でライフルを掲げ持ち、刃を防ぐベアトリーチェ。
 しかしこの体勢では反撃のしようもない。長身の周にじりじりと押し込まれ、小柄な身体がついに尻餅をつく。
「……いて」
(手加減しないと)
 周は練習刀にアウルを漲らせ突き込み……旋風に脚を払われ、地面に叩きつけられた。
 転んだという程度ではない。風は脚にまとわりつき、離れない、離そうとしない。
(違う、これは……牙?)
「最近は……囮作戦が、ジャスティス……」
 尻を払って立ち上がるベアトリーチェ。
 主の危機を救ったフェンリルは、周の身体を前足で押さえ、誇らしげに吠えた。
 ふぅっと周は力を抜いた。
「まさか自分を囮になんて」
「名づけて……囮大作戦……」
「勉強になったよ。名前は、ちょっとアレっていうか、まんまだけど」
「それなら……次回も、乞う、ご期待……」

 闘技場の外から戦いを見ていた詠代涼介が頷く。
「あれは俺も考えてた」
 まず相手の意識を別に向けさせ、その隙に頭上にティアマットを召喚し落下させ押し潰す……という方法だが、なるほど高速召喚術ならさらに効果的だろう。
 試しに高速召喚術を使ってみる。なるほどこのタイミング、自分にもできそうだ。
「……俺も出れば良かったか?」
「?」
 召喚獣は首を傾げるのみ。

 訓練というよりゲーム、そう考えれば。
「楽しめないこともないよね」
 ジェラルドの意見に、トホルは全く賛同できなかった。ノりづらいパーティに誘われた気分だ。
 そんな空気を盛り上げるのは、やはりこの男だった。
 〜 滅ビノ嵐ヨ 全テヲ 朽チ 果テサセヨ 〜
 大爆発。
 一気にオブジェが減った。
「あ、パパごめーん」
 全く可愛くないゼロの謝罪に、ホコリまみれにされたトホルが怒鳴り返す。
「何やってんだあああ! おまえ模擬戦でねーっつったろおおお!」
 そのゼロの隣で、長身の少女が二人、トホルを見下ろしていた。
「わたしがスキル見せてって頼んだだけ」
 マリスの頬には湿布。
 トホルは一瞬怯んだが、腕を組んで仁王立ちになった。
「降りて来なさい。今度はお尻にしてあげるから」
 マリスは片目の下を指先で引っ張って、小さく舌を出した。
 隣で茉祐子が口元に手を当て、トホルの隣ではジェラルドが笑う。
「反抗期だねえ」
「一発じゃ済まさん、百叩きだ」
「腫れ上がっちゃうね」
「は! 胸がないんじゃせめて尻くらい」
 タイヤの無いサビの浮いた自動車が飛んできてトホルの頭を直撃した。
 上空で、マリスと茉祐子が手を取り合って大はしゃぎしていた。
「降りてこい小娘どもーっ!」
「はいはいトホルくん、模擬戦に戻るよ〜?」

 ボディペイントでの潜伏はこのルールに最適だった。交戦回数を減らすことで生存率を上げ、攻撃する好機も増える。
 にも関わらず、ミハイルはその好機を自ら手放そうとしていた。
 視線の先ではSpicaがアイリスと戦っている。見つかったときの距離が良かった。Spicaは光翼を広げ、射程の長さと地の利を活かして上手く距離をとっていた。
「防御を捨てて、射程外から……」
 基本的に遮蔽は飛び道具の敵となるはずだが、今回はたまたまうまく働いた。それがなかったらとっくに捕まっていただろう、アイリスのAtomizareaは文字通り目にも留まらぬ。
 アイリスとてむやみに追い立てるのではなく、Atomizareaの使える地形を伺いながら距離を詰めてゆく。Spicaもそれを警戒してのらりくらりと動き、銀の粒子が奇妙な軌跡を描いた。
 ……位置が、悪い。
 鉄鳴が狙っているのだ。
 Spicaとアイリスの両方を狙える位置だ。撃てば場所が割れる、ならばいつ撃つか……それを図っている。
 それはミハイルも同じ。声を上げる、援護射撃をする、どれも彼の潜伏を知らせることになる。
(頼むぜ……)
 ミハイルは静かに拳銃を構えた。
 タタッとペイントがアイリスに命中する。2発だ、残りは全て振り向きざまに弾かれた。なんという反応。
「!!」
 Atomizarea……アイリスの身体を霧のようなアウルが覆う……
 しかし、そこへさらなるペイントが降り注ぎ、アイリスは5発以上の被弾を認めた。鉄鳴の銃撃だった。
 それより早くミハイルは叫んでいた。
「降りろ!」
 その意味をSpicaははっきりと理解し、実行していた。次に狙われるのは彼女だ。
 ミハイルは鉄鳴へ銃口を……
 ばしゃりと音がして、ミハイルの横顔にペイントがぶちまかれた。
「やっぱそこにいたね」
「……」
 ミハイルはサングラスを外し、ジェラルドに投げ渡す。ジェラルドは受け取り、丁寧に汚れを拭ってから、渋い顔をする渋い男にかけ直してやった。
「……お前、さっきまでトホルとやりあってたよな?」
 ジェラルドとトホルは、観戦側から声が上がるほどの技工を駆使して、必殺の一撃を躱し、交わすという、模擬戦とは思えぬ戦いを繰り広げていた。下手に手を出すとどちらかが怪我をしそうなので無視していたのだが……
「うん、でも彼ぜんぜん当たってくれないから、予定変更しちゃった」
「……」
 ミハイルが向こうを見やれば、トホルがSpicaを追い掛け回していた。
 先程とは逆で、Spicaの初期位置が悪い。いずれ捕まる。
 ミハイルはため息をついた。
「お前ら、グルか」
「ぴんぽ〜ん」
 
 エイルズレトラが勝ち残るのは何ら不思議ではない。個人戦の中、彼は一人ではなかった。
「召喚獣はオプションじゃないんです、独立した一個の戦闘員として活用しないと」
 小さな竜は契約者にとってもう一つの目となり、鉄壁の守りとなった。
 そして、侵入と索敵のスキルを操り、ほとんど姿を見せなかった牙撃鉄鳴。交戦回数は間違いなく最少だが、撃墜数は決して少なくない。
「そろそろ隠れる必要もなくなったか」
 言って、静かにペイント・ライフルのレバーを起こす。
 そして、トホルとジェラルド。
「つーかルール違反じゃないのかコレ……」
「僕らは別にコンビじゃないよー? トホル君を利用してただけだよー?」
「うん、事実だねそれ」
 さり気なく互いの死角をかばい、交戦しているように見せていきなり相手を包囲する……片や職業ジゴロ、片や元俳優、そういうのは得意中の得意だ。
 Spicaの善戦も、他に飛行する者がいなかったという絶対的な優位性に裏打ちされている。
「……次は、コンビ」
「ああ、本番でな。頼りにしてるぜ」
 渋く微笑むミハイルの前髪に、まだ少しペイントがついていた。


●武は心

「あのルールなら間違いなく最強だった者がおる」
 フィオナが言ったので、皆が振り返った。
「え? 誰ですか?」
 シェリーが、ちょっとウキウキした感じで訊ねる。
「……ゼロ・シュバイツァー氏ですか」
 リアンが言った。
 エルムも、合点がいったと頷いた。
「戦わなくて良いのなら、彼は逃げまわる。追いつける者はいない。逃げまわる彼を気にして四方の敵とやりあうのは、なかなか面倒でしょうね」
「え、それ……」
 シェリーが、純粋で素朴な疑問を挟む。「そんなふうに勝っても、その……何か得るものが、あるんですか?」
 無論、ない。
 あれはただのゲームだが、彼らはきちんとそれを理解していた。
 だからこそ、ゼロも出場しなかったのだろう。
「能力に頼りきっては戦いも言動も荒くなる 」
 腕を組んで、鳳静也が言った。「武は心……どう強くなっていくかの過程も大事だと、昨今は特に思う」


「だいじょぶ、です? まだもう少し、冷やしたほうが」
「じゃあ、りんりん、是非ともその膝枕で」
「トホルさん、そういうお話はあまり良くないみたいの、ですよ? ……めっ、なの」
「い、今のもっかいやって!」
「……保冷剤ありますよ?」
「閉会式いってきます!」
 準備委員会の女の子たちから手当を受けていたトホルだったが、背後から浴びせられた茉祐子の一言で全快したようだ。
 閉会式といってもひな壇があるわけでもない。トホルが現れると、参加者たちは銘々そちらに歩み寄ったり、視線だけを向けたりした。
「まずは、今日は、ありがとうございました」
 ありがとうございましたと、数名から返ってくる。
 トホルは一礼すると、大きく息を吸って、静かに語りだした。
 師の、受け売りだ。

「もしも君が武術を極めたとしても、100人の敵が団結して襲ってきたら絶対に敵わない。寝こみを襲われ、身内を害され、生活を侵されることで弱っていき、いつかは負ける」

「……では、どうすればいいでしょう」
 トホルが一同を見渡すと、彼らは黙って聞いていた。
 皆、わかっている顔だった。
 だからトホルは笑った。
「簡単ですね、100人の仲間と、団結して戦えばいいだけです」
 どこが簡単なものか。
 100人の仲間など、まして団結など。
 だからこそ努力するのだ。
 本当に、それしか方法は無いのだから。
「皆さんは撃退士です。今日一日で、いきなり仲間にはなれなくても、いつかは……チームになれると思います。ありがとうございました」
 拍手は……主催者としては、とても大きく聞こえた。
「いよっ! トホルっ! おとこまえっ!」
「カラスが鳴くんで帰りましょう」



●またね

 それぞれが練習場を後にする、夕暮れ。
 トホルは少女の声に呼び止められた。
「ねえ、友達に呼ばれてるんだけど、行っても良い?」
 マリスだった。
「なんで僕に言うんだ」
 トホルは苦笑して。
 真顔になって。
 一度、目を逸らして。
 咳払いして。
「……遅くなるなら、連絡しろよ」
「わかった!」
 マリスは身を翻して駆けていった。
 見送る暇もなく、肩を抱かれた。
「ボクたちもどっか行っちゃわなーい?」
「……じゃあお前んち」
 トホルが言うと、ジェラルドは嬉しそうに手を上げて、
「みなさーん! 主催が奢ってくれるってー!」
 おお! と声が上がる。
 バカか! とも声が上がる。
「大丈夫ですよ、角河さん。アルコールを呑むメンバーばかりじゃない」
 黒羽拓海は笑顔だが、トホルは暗い顔で世の理を教える。
「バーによっちゃソフトドリンクはビールより高いんだよ……」
「今日いちばん勉強になりました」
 真顔で拓海に礼を言われ、トホルは味方を探して周りを見た。
 かなり遠く、女の子たちのグループで、一人こちらを見ている影がある。
 女性としては長身の、お下げ髪が少しアンバランスな、でも可愛くてきれいな少女。
「ま、た、ね」と少女の口が動いた。
 そうかいそうかい君は女の友情なんてものを選ぶのかいああわかったよウチのむすめをよろしくな……心の中で絶叫し。
「よっしゃ行くぞ!」
 その勢いのまま、叫んで、振り返った。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:18人

Eternal Flame・
ヤナギ・エリューナク(ja0006)

大学部7年2組 男 鬼道忍軍
踏みしめ征くは修羅の道・
橋場 アイリス(ja1078)

大学部3年304組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
『天』盟約の王・
フィオナ・ボールドウィン(ja2611)

大学部6年1組 女 ディバインナイト
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
穿剣・
エルム(ja6475)

卒業 女 阿修羅
さよなら、またいつか・
Spica=Virgia=Azlight(ja8786)

大学部3年5組 女 阿修羅
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
ご注文はうしゃぎですか?・
黒田 紫音(jb0864)

大学部3年2組 女 陰陽師
守護天使・
イリン・フーダット(jb2959)

卒業 男 ディバインナイト
セーレの大好き・
詠代 涼介(jb5343)

大学部4年2組 男 バハムートテイマー
総てを焼き尽くす、黒・
牙撃鉄鳴(jb5667)

卒業 男 インフィルトレイター
Cherry Blossom・
華桜りりか(jb6883)

卒業 女 陰陽師
シスのソウルメイト(仮)・
黒羽 拓海(jb7256)

大学部3年217組 男 阿修羅
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅
圧し折れぬ者・
九鬼 龍磨(jb8028)

卒業 男 ディバインナイト
白花への祈り・
夕貴 周(jb8699)

大学部1年3組 男 ルインズブレイド
明けの六芒星・
リアン(jb8788)

大学部7年36組 男 アカシックレコーダー:タイプB
揺籃少女・
ベアトリーチェ・ヴォルピ(jb9382)

高等部1年1組 女 バハムートテイマー
守り刀・
北條 茉祐子(jb9584)

高等部3年22組 女 アカシックレコーダー:タイプB
守穏の衛士・
フローライト・アルハザード(jc1519)

大学部5年60組 女 ディバインナイト
童の一種・
逢見仙也(jc1616)

卒業 男 ディバインナイト
もふもふコレクター・
シェリー・アルマス(jc1667)

大学部1年197組 女 アストラルヴァンガード