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マスター:真人
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:7人
リプレイ完成日時:2012/06/20


みんなの思い出



オープニング

●闇ニ堕チル
 ――にいちゃ、おなかすいた。
 ――きょうはおそいね。

 幼い兄弟は身を寄せ合っていた。
 薄暗い四畳半の子供部屋と、今は街灯の灯りが差し込む小さな窓から見える景色。それが2人にとって世界の全てだった。
 一度だけ、兄は『外』へ出たことがあった。
 隣のお姉さんを驚かせてしまい、父親に酷く叱られてしまったけれど。

 ――ごはん、まだぁ?
 ――しぃーっ。パパにきこえちゃうよ。
 
 父親は毎日のように酒を飲み、気まぐれで兄弟を殴る。機嫌が良い時にはおにぎりやお菓子をくれるが、今日はまだ1度も子供部屋を覗いていない。
 2人の母親は、いない。
 初雪が降った日、父親にいつも以上に大声で怒鳴られてから、帰らなくなった。
 いつも体のどこかに痣を作っていた母親だった。

 ――にいちゃ、おなかすいた。
 ――がまんだよ。
 ――ママ、いつかえってくるの?
 ――ひろ。だめだよ。
 ――ママにあいたいよぅ。ママぁ。
「うるせぇっ!」

 父親が怒声と共に扉を蹴り、驚いた弟はとうとう声をあげて泣き出してしまった。
 開け放たれた扉からもたらされたのは慈悲の手ではなく暴力の拳。
 泣き止まない弟を身を呈して庇い、兄はごめんなさいと謝ることしかできなかった。


 そんな父親だったから………


 四畳半の子供部屋を夕日と同じ色に染め、自分達を解放してくれた真っ黒なお姉さんは。
 2人の兄弟にとって、彼女は本当の天使のように見えた。


●餓エル狂気
 放たれた獣達は、待ち望んだ自由に悦び、吠えた。
 それは貫頭衣に身を包んだ2匹の鼠――もちろん普通の、ではない。少なくとも普通の鼠は人間と同じ大きさはしていない。
 最初にそれを見とめた男は、大きめの鼠に喉元を食いちぎられて真っ先に絶命した。
 天魔の出現に逃げ惑う人々があげる悲鳴を、鼠達は心地良さそうに浴びていた。

 ――クイタイ。
 ――モットクイタイ。
 
 鼠は地下街の中を駆け回る。
 阻む者が居ないことを悟った鼠は縦横無尽に暴れ、喰いたい思えば何でも構わず貪った。
 人々にとって幸運だったのは、彼らの食欲が『肉』に限らなかったことだ。おかげで多くの人々が逃げ出すことができた。
 しかし。
 「ママーっ、どこー?」
 非常口へ殺到する人々の後方から幼い声があがったのは、地下街封鎖のためにシャッターが降ろされようとしていた時だった。
 騒ぎの中で逸れてしまったのだろう。3歳ぐらいの女の子が、壁際に座り込んでいた。
 マネキン人形を食い散らかしていた鼠が声に反応して顔を上げる。距離は、そう離れていない。
 母親らしき女性が悲鳴をあげた。必死に手を伸ばす。
「由紀ぃ――!」
 喉が裂けるほどの声で叫んだ母親の横を、一陣の風が駆け抜けた。
「娘さんはボクが助けます。だからお母さんは早く……」
 それは亜麻色の髪をポニーテールに結い上げた、可憐な少女だった。
「……早く、安全なところへ」
 そう言い残し、少女は臆することなく鼠に立ち向かう。
 今まさに女の子を切り裂こうする牙を手にしたトンファーで受け止め――

 その姿はシャッターの向うに消えた。


リプレイ本文

●黄泉の坂の上
 撃退士達が到着した時、現場はかなり混乱していた。
 命からがら逃げ出した者、負傷し治療を受けている者。避難者の中から肉親知人を探し出そうと、名前を呼び続ける者も――
「深紅さん達のほかにも、まだこの地下街に取り残されている人達がいるそうです……迅速に安全を確保しないといけませんね……」
 その様子を遠巻きに眺めながら、鳳 螺旋(ja8215)が顔を上げた。
 身を隠した場所がいつまでも無事とは限らない。時間が掛かれば、それだけ要救助者達に危険が増すのだ。
「とにかくなんとかして救出をしないと」
 紅葉 公(ja2931)も、逸る心を抑えて突入の時を待つ。
「通報してくれた人がいつまで光纏を維持できるか分からないしな……」
 周防 水樹(ja0073)は阻霊符の状態を確認すると、戦闘で破損しないよう、上着の裏ポケットへ仕舞い込んだ。
「2班に分かれて、それぞれが戦闘と救出を臨機に行う……で良いよね」
 戦場ではちょっとした意見の相違が失敗につながることがある。最悪の事態をさけるため、三崎 悠(ja1878)は移動中に話し合った内容を、改めて確認する。
「敵がいるなら討伐優先だな……。戦いに一般人は巻き込みたくない……」
 戦闘と救出、二者択一しなければならない瞬間がきっとあるだろう。雨下 鄭理(ja4779)は、この場で己が優先する選択を明言した。
「ボクは要救助者の防衛を目標にするですよ」
「それなら、おねーさんは敵を抑える事に重点をおこうかしら?」
 黒瓜 ソラ(ja4311)はやや救助寄り。インニェラ=F=エヌムクライル(ja7000)は討伐よりと言ったところか。
 小学生かと見間違えるほど華奢な体格の海柘榴(ja8493)は、自身の身長の倍はあろうかというハルバートを抱え、間合いの確認をしていた。
 情報によると、地下街の通路は4メートルほどの幅だという。おそらくは振り回すことはできないだろう。何度か試した後で、結局槍の様に刺突することが良さそうだという結論に至った。

『現在、鼠の姿は確認できません。でも、非常階段付近に居ない事は確かです』

 深紅から、内部の状況を知らせる通信が入った。
 今が突入の好機――撃退士達それぞれの武器を手にして頷きあう。
「膳は急げって言います。助けなきゃいけない人たちを、敵の膳にしない為にも、急ぎましょう!」
 冗談とも付かない言葉で仲間達を鼓舞するソラ。
 ―─『自分』は人形。力を余して、己を喰らう、狂気の想を絶つ偽活の人形……
 闇のように深く、鮮やかな赤を身に纏い、鄭理は誰にも聞きとめられる事のない声で自身に暗示を掛ける。

 そして、撃退士達は閉ざされた世界へと、身を躍らせた。


●鼠の巣の中
 右に悠、ソラ、インニェラ、海柘榴。左に水樹、公、鄭理、螺旋――撃退士達は突入と同時に左右に分かれ、背中合わせで周囲を窺った。
 電気系統は生きているため、地下街の中は問題なく視界が通る。光源の確保で片手を塞ぐ必要が無くなったことは、撃退士達にとって良い状況といえるだろう。 
「ひどい……」
 予想していた事とはいえ、そこに広がる惨状に公は言葉を失った。
 無造作に転がる物とモノ。3本の爪痕が刻まれたショーウインドウ、半顔が砕けたマネキン人形にひしゃげたベビーカー。そして、血に染まった背広姿の……
(もう助けられない相手より、助けられる人を助けることを考えないと)
 引き裂かれた日常を一瞥して、悠は通路の先を見据える。
 同情はする。しかし、何の前触れもなく天魔が現れ、突然に愛するものが命を落とす光景もまた、日常の一場面でしかないのだ。
「それにしても……生物ばかりか無機物まで食べるなんて、どれだけ餓えてたのかしらね 」
「どんな事情があるか知りませんが、鼠は退治するべき害獣なのです」
 呆れたような口調で呟くインニェラに、海柘榴が言葉を重ねる。
「左側に鼠の姿を発見しました」
 螺旋が前方を指で示した。書店の前――倒れた本棚の向こうに蹲る黒い影。それ単体が生き物のようにも見える尾が、ゆらゆらと揺れていた。
「あら……。この子達、2匹一緒には居てくれなかったようね」
 落胆とも歓喜とも付かない口調でインニェラが言う。
 鼠は反対側にもいた。おそらくは此方に居るのが小さい方。赤く光る眼で撃退士達の様子を探っている。
 鼠達は突然の闖入者を警戒しているようだが、その双眸には、明らかな敵意が宿っていた。
「速攻でいくぞ。少しでも早く倒し、要救助者達を探そう……!」
 張り詰めた空気の中、最初に動いたのは水樹だった。ハルバードを構えて走り出す。ほぼ同時、大鼠も一斉に駆け出した。
「俺が相手をしてやる、こっちを向け!」
 初撃は軽々と避けて後方――シャッター側へ回り込んだ。圧倒的な存在感を放つ挑発に、大鼠は誘われるままに振り向いた。
「その背中、いただきましたっ」
 忍術書を手に、公の放った風が無防備な背中を切り裂く。
 傷ついた大鼠に、今度は白銀の炎を纏った腕が飛燕翔扇を投げ放った。死角を取られた大鼠に、避けられるほどの余裕は無い。扇は大鼠の片耳を削ぎ落とし、螺旋の手の中にに戻った。
 この通路で弓を射るのは不利。鄭理は得物をミセリコルデへと持ち替え、接近戦に備える。間合いを詰めながらも、戦闘に一般人を巻き込むことのないよう、周囲を確認することを怠らない。
 予定通り大鼠を包囲する位置に付いた撃退士達。先行した仲間からの情報にあった突進攻撃に備え、射線が重ならないよう、慎重に陣を組む。
 罠に嵌められたことを察したのか、大鼠は怨嗟の咆哮をあげた。

 ◆

 閉ざされてしまったとはいえ、ここはようやく手に入れた自分達の縄張りだった。
 誰に阻まれることもなく、好きなだけ喰い、走ることができる、至福の世界。
 しかし今、それを邪魔するモノが現れた――
 自分達を恐れることなく向かってくる撃退士達を前にして、小鼠はとても不快そうに喉を鳴らした。

 小鼠は貸しギャラリーだった店舗に居座り、撃退士達を待っていた。
 店内には展示されていた絵画やパネルが散乱しているだけで、救出すべき一般人の姿や、彼らが身を隠せるような場所はどこにも無い。
「害獣退治もメイドの仕事の一部です。では、天魔の連中を綺麗に清掃させて頂きます」
 先陣を切ったのは海柘榴。丁寧に会釈をするとハルバートを心置きなく振るい、小鼠の足を薙ぐ。
 しかし小鼠は鞭のようにしなる尾でハルバードを絡めとり、逆に海柘榴の動きを封じ込めた。そのまま引き寄せようとする。バランスを崩して転倒したところを、ガブリといくつもりなのか。
 その危機を救ったのは、入り口付近で待機していたソラ。
「援護はボクに任せてください。ダンスの如き戦闘で敵より優位にたたねば!舞うっす(マウス)よ!」
 言葉遊びを織り交ぜながら、アサルトライフルを狙い撃つ。
 目前の『敵』に意識が向いていた小鼠は突然の攻撃に対処することができなかった。撃たれた衝撃と痛みで、あっさりと海柘榴を解放する。
「エヌムクライル先輩、右サイドをお願いします」
 悠は隙を突いて小鼠の左側へ回り込んだ。狙いは左班同様、包囲陣を敷いての波状攻撃――
「Frieren Spiess……」
 詠唱と共に、足元に刻まれた魔方陣が青い輝きを纏った。インニェラを中心に渦を巻く氷塵はやがて槍の形に収束する。
「凍てつく氷の槍で痛みを止めてあげるわ」
 微笑みと共に放たれた魔法は一条の光のように閃き、小鼠の身体を穿った。
 甲高い悲鳴があがる。
「このまま一気に畳み掛けましょう!」
 悠の掛け声に応えるように、撃退士達はそれぞれの位置で武器を構えた。

 その時だった。戦場のすぐ傍で、赤ん坊の泣き声が響いたのは――。

 ◆

 風は自由の象徴だった。
 走るたびに己の身を包みこみ、心地よい悲鳴(おと)を響かせていた。
 しかし今自分にまとわり付く風は、悪戯に身を切り裂いていくばかりで……
 小鼠の悲鳴(こえ)を遠くに聞きながら、彼は考える。
 この『風』が、半身を奪おうとするのだと――

 どこからか聞こえてきた赤ん坊の声に、撃退士達は周囲に意識を傾けた。
 その隙を突いて、大鼠が壁を蹴る。
 跳弾のような攻撃が螺旋へ届くより前に、間に割って入った水樹が迎え撃つ。右肩に毒牙を受けながらも、ハルバートの穂先で鼠の右前足を切り裂いた。
「くっ……」
 牙は掠った程度。しかし傷口が焼けるように疼き、水樹は斧槍を取り落としてしまう。
 毒を受けたのだ。
「大丈夫ですかっ?!」
 駆け寄った公は青黒く腫れた傷に眉を顰め、急ぎレジスト・ポイズンを行使する。腫れは数秒で治まったが、腕の疼きはもう少し後を引きそうだ。
 足を失いながらも、大鼠は綻んだ包囲陣をすり抜け、仲間と合流を試みる。鄭理は素早く回り込むと、強引に後方へ押し戻した。
 「天魔にもいろんな奴が居るのだろうが……これも仕事だ。覚悟してくれ」
 こんな状態でも片割れを護ろうとしているのか、大鼠は撃退士達との戦いに集中できずにいる。
 だからと言って手を抜くことなどできるはずがない。要救助者を抱え込んだ右班のためにも、2匹を合流させるわけにはいかないのだ。
 鄭理は迷うことなく、自身を睨む眼に針剣を突き刺した。
「その行動は生前の心の表れなのかもしれないが……ディアボロになった以上容赦はできない。そこを突かせてもらう!」
 ようやく毒の影響から回復した水樹が戦線に復帰する。
 渾身の力を込めて放った一撃で、大鼠の身体をそのまま壁とへ縫い付けた。
「……あなたはそのような状態になってもなお同胞を庇い護ろうとしているのですね……」
 必死に戒めを振りほどこうとする大鼠に、憐れみを込めて語りかける螺旋。
「私にも護るべき姉弟がいます……だからこそ……この私が全力を持ってあなたを討ち倒し解放してあげましょう」
 生み出された白銀の風が、大鼠の喉を切り裂いた。

 ◆

 小鼠が煩わしそうに尻尾を打ち鳴らす。傍にあったイーゼルを弾き跳ばしてみたが、耳障りな『音』は鳴り止まない。
 撃退士達を威嚇し続けながらも耳をしきりに動かし、発生源を探っているようだ。
「お向かいの……入り口。たぶん、あそこですね」
 視線を動かさずに囁くソラ。彼女の示した位置には、背中を血で染めた女性が身を丸めて蹲っている。
 一目見て手遅れと判る傷だ。しかし、その腕に赤ん坊が抱きかかえられていたとしたら?
「ここは僕達が引き付けます」
「ソラさんは赤ちゃんの保護をお願いします!」
 小鼠の意識を赤ん坊から逸らすため、海柘榴はハルバートを振るい、鋭い突きを繰り返していく。狙い通り、奥の壁際へと身をかわした小鼠の左右から、今度はアウルの銃弾と雷が襲い掛かった。

 その母親は、最期まで我が子を守ろうとしていたのだろう。死してなお優しい笑みを浮かべ、赤ん坊をあやし続けていた。それは2人を引き離すことを躊躇ってしまうほど、辛い光景だった。
 意を決して手を差し伸べる。
 ソラの腕の中で、赤ん坊は最初ぐずっていたが、服越しに聞こえる鼓動に安心したのか、やがて落ち着きを取り戻した。
「少しの間だけ……お子さんはボクが預かります。必ず、助けてみせるですよ」
 そしてソラは通路の奥へと向かう。その先のブティックに身を隠す、仲間と他の一般人達を安心させるために……。

 ――ギャン!
 逃げ場を失った小鼠は、悠とインニェラ2人の攻撃をまともに喰らった。
 天井に身を打ち付けるほど跳ね飛ばされたが、それでもまだ致命傷には至らない。
 よろめきながらも起き上がった小鼠は身を低く構える。直後、包囲網を押し破るかのように、一気に跳ねた。
 『突進』の射線上にいたのは悠1人だけ。
 赤ん坊の元へ向かった仲間を護るため、ギリギリまで敵を引き付け、ゼロ距離で顔面に銃弾を喰らわせる。
 小鼠の鋭い悲鳴があがった。
 頭の半分を吹き飛ばされた小鼠は、どさりと床に崩れ落ちた。
 ディアボロ故の生命力からか。鼠はそんな状況でも立ち上がり、反撃をしようとする。しかし。
 2度3度、大きく痙攣を繰り返し……再び倒れ付す臥す。小鼠の両眼から次第に光が薄れ、やがて消えた。

 ◆

 討伐終了の報告を済ませた撃退士達。休む間もなく、今度は逃げ遅れていた一般人を探すため、再び活動を開始する。
「あ……!」
 救急箱を持って左側へと急いだ公が思わず声をあげた。
 通路の先に、床を這う黒い影。それは、左班が止めを刺したはずの大鼠。
 あの戒めから無理やり抜けだしてきたのだろう。壁に突き刺さったままのハルバートから、白い帯が延々と延びている。
 自由に動かない3本の足を不器用に動かしながら、鼠はゆっくりと、撃退士達の前を通り過ぎていく。
 誰も攻撃をしようとはしなかった。
 撃退士達が見守る中、彼は最後の一滴まで力を絞りきり、息絶えた小鼠に顔を摺り寄せる。そして……
 チュゥ、と小さく啼いた後、大鼠は偽りの命を手放した。


●中有の回廊
 忌むべき来訪者が消えた地下街から、要救助者達が次々と運び出されていく。
 光が差し込む扉の漏れる歓喜と絶望の声を聞きながら、撃退士達は救出作業を続けていた。
 海柘榴はメイドの本領を発揮し、戦闘で汚れた一角を綺麗に片付けた。その場所は軽傷者の治療の場として利用されている。
「情報感謝ですっ。間に合わせですけど……ともかく、これでっ」
 ようやく合流を果たした深紅。受けた毒の傷は当人が思っているよりずっと重いはずなのに、何故か頑なに治療を拒む。自分より他の人を優先しろという気持ちは判るのだが、今はソラに諭され、大人しく応急処置を受けていた。
 生存者の中には、掠り傷を指して『早く病院へ運べ。俺を殺す気か』と騒ぎ立てる男もいる。
 そのような者に限って、妖艶なインニェラに微笑まれたとたん、まるで借りてきた猫のように大人しくなったりするのだが。
 もちろん、中には不幸にも命を落としてしまった者達もいた。
 胸元で小さく十字を切り犠牲者に祈りを捧げる水樹。
 遺体が運び出される前に、鄭理と共に、誰がどの場所でどのように亡くなったのかを書き留めていく。それは、家族の最期を知りたいと願う遺族への、せめてもの配慮だった。
「これだけの被害を出した相手でも、やっぱりやり切れませんね」
 最期まで互いを庇い守ろうとした姿が忘れられない――いまだ通路の隅に捨て置かれている鼠達を見つめ、小さく呟いた公に螺旋が小さく頷き返す。
「……おやすみ」
 もう二度と、悪夢に悩まされないように……。
 少し離れた場所では、誰に見止められることなく、悠が静かに黙祷を捧げている。
 救われるべき魂があるのなら、せめて『来世』は幸福に――
 そう、願わずには居られなかった。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:2人

消えない十字架を抱きて・
周防 水樹(ja0073)

大学部4年82組 男 ディバインナイト
そよ風が如く・
三崎 悠(ja1878)

大学部1年12組 男 鬼道忍軍
優しき魔法使い・
紅葉 公(ja2931)

大学部4年159組 女 ダアト
インガオホー!・
黒瓜 ソラ(ja4311)

大学部2年32組 女 インフィルトレイター
撃退士・
桜雨 鄭理(ja4779)

大学部4年300組 男 鬼道忍軍
終演の幕を降ろす魔女・
インニェラ=F=エヌムクライル(ja7000)

大学部9年246組 女 ダアト
撃退士・
鳳 螺旋(ja8215)

大学部5年143組 女 阿修羅
リトル・猫耳メイド・
海柘榴(ja8493)

高等部3年21組 女 ルインズブレイド