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マスター:真人
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/02/04


みんなの思い出



オープニング

 明日は私達の誕生日。
 パパはお仕事の帰りにプレゼントを買って、ママは美味しいケーキとご馳走をたくさん作る。
 お姉ちゃんが弾くピアノの伴奏に合わせて、皆で楽しく歌を歌う。
 いつもの誕生日。
 来年も、再来年も、ずっとずっと続くはずだった。

 でも、もう二度と来ない……


「……で、それから? どうなったの?」
 ソファーに腰を掛けながら幸野 笑子は身を乗り出すように尋ねた。
 可愛らしい仕草で続きをせがまれた撃退士は、酒の勢いもあり、つい調子に乗ってしまう。
 久遠ヶ原学園で起きたドタバタ劇からトカゲ型天魔の尻尾に踊らされた失敗談など、自身の体験に多少の脚色を加え、面白おかしく解説をする。
 笑子はどんな話にも興味を示し、年相応に笑い、驚いた様子を見せていた。
「植物型ディアボロの花粉がまた曲者で、吸い込むと猛烈な眠気が……」
 その時の様子を再現したのか、撃退士はがくんと体を傾けると、笑子の膝に頭を乗せるように倒れこんだ。
 機に乗じたセクハラか? と思いきや、笑子はそっと彼の頬に手を添えた。
 撃退士は何の反応も示さない。目を半開きにしたまま、豚が鳴くようなイビキをかいている。
「ようやく……効いてくれた」
 耳を引っ張っても、鼻をつまんでも反応はない事を確認すると、笑子は撃退士の胸元をまさぐり、ドッグタグを取り出した。
 それは、先ほど撃退士が得意げに見せてくれたヒヒイロカネだ。
「みんな……今、仇を討つからね」
 笑子はドッグタグを自身の首にかける。
 暗い闇に沈んだ瞳を一度だけ奥の和室に向け、笑子は静かに家を出た。


 自宅のリビングで眠りこけている不審な男を見て、帰宅した西田夫妻は大きな悲鳴を上げた。
 男は居合わせた撃退士達の手により拘束され、悲鳴を聞いた周辺住民の通報を受けて駆け付けた警察に引き渡されたのだが……話はそこで終わらなかった。
 ――チャットで知り合い、久遠ヶ原の事を教えてくれと『依頼』を受けた。
 ――相当量の睡眠薬を酒に混ぜ飲ませられた。
 それらの事情を聞いた西田氏は言葉を失い、夫人は声を上げて泣き出した。義娘が罪を犯した、という事実を考慮しても、それらは大げさな程の狼狽ぶりだった。
「……源三郎、事情を説明せよ」
 笑子を久遠ヶ原へ迎え入れるため西田家を訪れていた御影は、眉一つ動かさずに弟へ命ずる。
「そう言われても、どこから話せば良いか……」
 蒲葡 源三郎(jz0158)は悩みつつも幸野笑子という少女の身の上を説明する。
 先日、I市で発生した天魔事件は、週末ということもあって多くの市民が巻き込まれた。その中には、笑子と彼女の家族も含まれていた。
 駆け付けた撃退士によって天魔は討たれ、笑子は救助活動を行っていたチーム飛狼に助けられたのだ。
 しかし彼女の両親と双子の姉は……
「彼女は家族が命尽きる様を、じっと見つめていたんですよ」
 病院で目を覚ました笑子は泣きじゃくり、自分を助けた源三郎達を責めた。
 なぜ皆を助けてくれなかったのか。なぜ自分も一緒に死なせてくれなかったのか、と。
「その時の検査で、笑子は自分にアウル能力者の素質があると知らされたんです。久遠ヶ原学園へ行くと言い出したのも、あの子の方からなんですよ」
 西田――笑子を引き取った伯父夫婦が説明を繋ぐ。
「編入が決まってあんなに喜んでいたのに。なぜこんな事を……」
 疑問の答えは、この場にいた誰もが予想できていた。
 仇討ち。
 自分自身の手で家族の命を奪った天魔を倒すために。
「お願いします。あの子を、笑子を救ってやってください。本当は、素直な明るい子なんです」
 もし笑子が本当に天魔と戦うつもりなら命が危ない。彼女はまだ戦い方を知らないのだから。
 土下座して懇願する西田夫妻の願いを受け、警察は急ぎ捜索の手続きを始める。
「私の生徒達を駆りだそう。同年代の者ならば、その娘も話を聞く気になるやもしれん」
 御影は淡々と斡旋所の事務員へ指示を出し、源三郎は笑子の行先を探るよう、関東一円の部下達に下知を飛ばした。

 刻々と時が過ぎる中、次第に情報が集まってくる。
 笑子が向かっているのはI市――彼女の家族が命を落とした街だ。


 笑子は瞳に暗い光を宿したまま歩いていた。
 自分を保護しようという者達から逃れ続けるため、大切に伸ばしていた髪をばっさり切り落としてまで。
 周囲の人間を味方にするため何度か使った手段は、もう使うことはできない。この次に見つかったら、きっと連れ戻されてしまうだろう。
(だからお願い、早く来て)
 灰色の空を見上げ、笑子は天魔の出現を願う。
 願いが聞き届けられた時、日常というささやかな幸せに満ちたこの町が、鮮血で染まることを想像すらせずに……


リプレイ本文

●消えた微笑みを探して
 駅から吐き出される人の波に逆らいながら、イシュタル(jb2619)は失踪した幸野 笑子の姿を探す。
「己の力量を弁えず復讐者になるなんて……何を考えているのかしら……」
 身に余る武器を手に飛び出した無謀にも等しい行動に、イシュタルは呆れを隠しきれない。
「天に恨みを持つ少女――ああ、これは期待出来るかもしれないね。ならば私が手を貸してあげようじゃないか」
 楽しげにつぶやいたのは冥界出身のハルルカ=レイニィズ(jb2546)だ。ゴシックファッショに身を包んだ少女に、すれ違う人々が物珍しげな視線を向ける。
「とにかく、早く見つけ出さないと、笑子さんが危険です」
 クリフ・ロジャーズ(jb2560)は西田夫妻から預かった笑子の写真を片手に、良く似た背格好の少女を根気よく探し続けた。
 駅から出てきた紫ジャンパーの話では、駅構内に笑子の姿は無かったという。
 だとすれば彼女は外。3人は頷きあうと、雑踏に紛れているかもしれない笑子を探すため、走り出した。

 一方、常木 黎(ja0718)、森田良助(ja9460)、ユリア(jb2624)の3人は、人気のない駐車場方面を回っていた。
「ねぇ、あれってもしかして」
 ユリアが視線を向けたのは、フェンスに背を預けている人影だ。
 安っぽいパーカーのフードを目深に被り、じっと俯いている。手荷物一つ持っていないところが、どこか不自然さを感じさせていた。
「どうだろう? 僕には男の子っぽく見えるんだよね」
 良助は訝しみながらもその人物を注意深く観察する。
 背格好は確かに似ているが、髪が短すぎる。笑子は腰まで届くロングヘアのはずだ。
「あの骨格は間違いなく女の子だよ」
 黎はあっさりとユリアの意見に賛同する。
「怪しいと思ったら、声を掛けてみるべき。別に弾数が限られているわけじゃないんだから」
 そう言って黎は独り走り出した。駐車場の中を突っ切って『標的』の反対側へ位置取り、万一の逃亡に備える。
 準備が整った事を確認した後、ユリアは相手に警戒心を抱かれないよう、静かに話しかけた。
「あの。笑子、さん?」
 はたして――名を呼んだとたん、少女は驚いた様子で顔を上げた。

 幸いにも、笑子は逃亡することはなかった。
 初対面である6人の撃退士達を警戒してはいるものの、敵愾心は感じられない。ただ、蒲葡 源三郎の名を滑らせた時だけは、あからさまに不快な表情を見せた。
「あの人に頼まれて、私を連れ戻しに来たの? 嫌、帰らない。自分の手で仇を討つって決めたもの」
 特定のサーバントがいつ、どこに現れるかなど、判るはずもない。それは今すぐかも知れないし、もう二度と無いかも知れない。
 それでも笑子は、家族の命を奪ったサーバントを探し続けると言う。
「仇を討ちたいなら、手を貸してあげるよ」
「だから僕達のいう事を聞いて欲しいな」
 ユリアと良助は、子供じみた願いを否定することなく、笑子に語り掛ける。
 笑子は驚いて皆の顔を見渡した。信じていいのか、自分を言いくるめているだけなのか、見定めるように。
「……判ったわ。信じてみる」
 少しの間を置いて、笑子は頷いた。
「じゃあ、先に伯父さん達に連絡を入れよう? きっと心配しているよ。僕達が一緒だって判れば、無理に連れ戻されたりはしないよ」
 携帯電話を取り出した良助が、源三郎のナンバーを呼び出したその時――

 ――晴天の空を暗い影がよぎり、化鳥が鳴いた。

●日常と悪夢の狭間
 鋭いブレーキ音に巨鳥の泣き声が重なる。人々の悲鳴をかき消し、羽ばたきが舞い降りる。
 日常が、終わる。

『I駅に天魔が出現しました。すでに撃退士が来ています。安心してください。落ち着いて、誘導に従って避難してください』
 けたたましいサイレンと共に発せられる緊急速報。周囲に居た通行人の何人かが紫色のジャンパーを纏い、頑丈な建物の中へ避難するよう、呼びかける。
 そんな中、笑子だけが人々とは逆の方向へ走りだした。待ち望んでいた天魔の出現に、心の底から歓喜する。
『現状は把握しているな?』
 通話状態になった電話から流れてきたのは源三郎の声だ。
『サーバントの相手はお前達に託す。奴らに厄介な能力は無ぇ。強襲にさえ気を付けていりゃ何とかなる。敵はたった2体。お前達の腕なら、そう時間をかけずに殲滅できるだろう』
 敵の能力はおろか、出現した総数さえ把握できなかった前回とは違うのだと。
『……嬢ちゃんを頼んだぞ』
 最後にそう言い足して、電話は切れた。

●闇を穿つ
「どうしてダメなの? 手伝ってくれるって言ったじゃない!」
 突出しようとした笑子を寸でのところで引き止めたクリフは、直後に非難の視線を浴びせられた。
「私だってアウル能力者なんでしょ? ちゃんと戦えるはず。飛んでいる敵を倒す武器だってあるんだから」
 ヒステリックに叫んで、笑子はポケットからドッグタグを取り出した。家で撃退士がやって見せたように、手の中で握りしめ出でよと強く念じる。
 その瞬間、ヒヒイロカネは偽りの主の願いに応え、全長1メートルほどのスナイパーライフルに姿を変えた。
「え……何?」
 予想以上の重さに、笑子は体力を一気に奪われ、その場に座り込んでしまった。肩で息をし、ライフルを杖代わりにして昏倒を堪えた。
 助け起こそうと再び手を伸ばしたクリフの横で、ハルルカは冷めた視線で笑子を見下ろす。
「大した力も無く、戦いも知らず、復讐に囚われ周りの見えない死にたがり。今のキミに出来ることなど在りはしない」
「それ、ちょっと言い過ぎ……」
 あまりにも冷たい言い様、思わず声をあげるユリア。しかしハルルカは構うことなく、悔しそうに唇を噛む笑子の耳朶に、唇を寄せる。
「彼女たちから武器の扱い方を教わると良い。その手で仇を、討ちたいんだろう?」
 そう言って、白い鎧を身に纏ったハルルカは空に舞い上がった。
「笑子ちゃんを頼みます」
 続いてクリフとイシュタルも己の翼を広げ、傍若無人に飛び回るサーバントを迎え撃つため、後に続いた。

 逃げ惑う人々を追い回していたサーバントは、突然現れた邪魔者に気付き、矛先を変えた。
「I市上空では一時的に大気が不安定となるでしょう。天の眷属は、魔の雨にご注意ください――『黒雨』」
 鋭い鉤爪を避けたハルルカは、玲瓏たる口上を述べて黒き雨を呼ぶ。纏った闇の力は諸刃の剣だ。鋭い鉤爪を持つ脚に斬りつけるも、受けた反撃のダメージは決して小さくない。
「危ない、直ぐに離れて……っ!」
 もう1体のサーバントがハルルカの背後から強襲してきた。
 クリフは警告と同時にラジエルの書を開く。放たれた一葉の刃が片翼を薙ぎ、サーバントは大きく高度を落とした。
 空を飛ぶ者は強敵と察したサーバントは、ハンターの本能で最も仕留めやすい獲物に狙いを定め、強襲する。狙いはもちろん、笑子。
「幸野には近づかせないわ」
 サーバントの目的を察したイシュタルが一気に肉薄する。白鎧を纏ってイオフィエルを振るう姿は、まさに戦乙女だ。
 蒼みを帯びた二対の翼をはためかせ、イシュタルは華麗に踊る。

「皆は、攻撃しないの?」
 先ほどまでの威勢はどこへ行ったのか。笑子は冷たいアスファルトに座り込んだまま尋ねた。
「今撃てば、“当たる”のよ」
 返ってきた答えはそっけないものだった。
 銃を持っていれば、地上からでも鳥を撃ち落とすことができるだろう。しかし乱戦になっていれば、誤って味方を傷つけることもある。
 特に銃器に込めた『力』は、何かを傷つけるまでどこまでも飛んでいく。
「……うそ」
 手にした武器が天魔だけを滅ぼす物でないと知り、笑子は愕然とした。
 そんな笑子に気を取られることなく、黎はじっくり機会を窺う。射線を遮るものが無くなった瞬間を見計らい、ここぞとばかりに引き鉄を引いた。
 腹部を貫かれたサーバントは苦しそうに吼える。
「“蝕甚”は伊達じゃあないのよ」
 それでも敵はまだ生きている。必中の喜びを顔に出すことなく、黎は耽々と次の照準を合わせた。
「僕達の戦い方、しっかり見るんだよ」
 良助は笑子の前に立ちヨルムンガルドを構えた。銃の扱い方を見せるため、丁寧に狙いを定め撃つ。
「笑子さん。最後はあなたの手で!」
 突撃を仕掛けてきたサーバントを細氷で包み込んだユリアが、狙撃のための射線を開ける。
 笑子は慌てて頷くと、先ほど見た手本通りにライフルを構えた。しかしその動作は拙く、照準を合わせることすら覚束ない。
 結局射撃は間に合わなかった。落下の衝撃で目覚めたサーバントは直ぐに体勢を整え、笑子を狙い強襲する。
 イシュタルの放った乾坤網はギリギリの所で届かなかった。代わりに良助がその身を盾にして笑子を庇う。
 傷は浅い。掠っただけだ。それでも。
「いやあぁっ」
 目の前に飛び散った赤い色に、笑子が悲鳴を上げる。

 ――また何もできないの?

 笑子の胸に、残酷な現実が突き刺さる。
 アウル能力がありながら、家族を守るために最下級の天魔1匹倒すことができず。
 アストラルヴァンガードでありながら、かすり傷一つ癒すこともできない。
 君の所為ではないと暗示のように言い聞かせられ、立ち直ったフリをしてきたけど。ふとした事で、心の糸がぷつりと切れた。
 もう二度と会えない家族。この世界に一人遺された、自分。
 そんな現実、認めたくなんかない。受け入れたくない。
 自分だけを助けた人達を憎んで。自分にもできる事があると証明したくて。『あの日』をやり直すために、飛び出してきたのに。
 仇討ちなんて夢のまた夢。
 本当に許せなかったのは自分自身なのだと、今更ながらに思い知らされる。

「まだ終わっちゃいないよ」
 絶望に堕ちかけた笑子に発破をかけるよう、黎はシニカルな笑みを浮かべ、上空へと逃れた手負いのサーバントを一撃で撃ち落す。
「泣かないで。僕なら大丈夫だから」
 傷ついた肩を押さえて、良助は安心させるように笑いかけた。
 撃退士達に守られながら、笑子は再び立ち上がった。
 残るサーバントは1体。
 
 蝕甚の穢れを受けたサーバントが羽を舞い散らせて暴れ回る。
 炎の双剣が、氷の剣が両翼を薙ぎ、夜より深い闇がサーバントの視界を覆い尽くす。
 その間、僅か数秒。
 二条の銃撃を受けたサーバントは地に堕ち、苦しそうに悶え苦しんだ。
「大丈夫。きっとできるよ」
 ユリアは背中から手を伸ばし、ライフルを構える笑子の腕を支えてやった。
「笑子ちゃん、今だ!」
 周囲から掛けられる声援に後押しされた笑子は、自らの意思で指に力を込め、引き金を引ききった。
 放たれた弾丸は光の軌跡を描き、サーバントの頭部を深く穿った。

●夢から目覚めて
 天魔の脅威が去り、町は日常を取り戻した。
 見知らぬ者同士で協力し、黙々と破壊された町を片付け始める光景は、力無き者達の強さを見せつけていた。
「ドッグタグがどういう物がご存じですか?」
 初めて奪った『命』に震える笑子が落ち着いた頃を見計らい、ゆったりした口調でクリフが問いかけた。
「これ、そういう名前なんですか」
 笑子は遠慮がちに首を振る。やはり、何も知らずに持ち出したらしい。
「これは戦いに赴く者が身元を証明するため、肌身離さず身に着けるものなんです。だから、場合によっては唯一の形見になることもあるんです」
 そんな意味があったのか、と笑子は小さな金属板を改めて見つめた。
 プレートは十字架の意匠が施されたファッション性の高いもので、裏側に持ち主自身の名前と撃退士ナンバーが刻印されていた。
「ちゃんと謝って、返したほうが良いよ。あたしも一緒に行ってあげるから」
 怒られたら庇ってあげる、とユリアは胸を張る。
「これだけは必ず伝えておくわ」
 淡々とした口調で告げたイシュタルは、広場の向こう側を差す。
 そこに立っていたのは、紫色のジャンパーを着た男達に守られた西田夫妻だった。笑子のことを心配するあまり、駆け付けていたのだろう。
「貴女は一人じゃない。心配をしてくれる人がいるのだから、馬鹿な真似をして心配を掛けるような事は慎むべきね」
 西田夫妻の隣には、ライフルの本来の持ち主である撃退士も居た。魔具を騙し取った笑子を憎んでいる様子はなく、逆に無事を確認し、ほっとしているようだ。
「ほら、行きな」
 黎が静かに背中を押す。
 一歩進んで、笑子は戸惑いながらも振り向いた。
「僕もキミの仲間だってこと、忘れないでよ」
 笑顔で別れの握手を求める良助。
「迷惑をかけて、本当にごめんなさい。……助けてくれて、ありがとう」
 一人ひとりと握手を交す笑子の表情に、出会った当初の暗さは感じられなかった。それでも晴れやかと言い難いのは、迷惑をかけた事に対する悔悟のためか。
「いつの日か、キミが天を討つ力となれることを願っているよ」
 耳元でささやくハルルカ。
 そう遠くない未来。互いに名前で呼び合うような日が来るのだろうか?
 ハルルカの横に並び、イシュタルは家族の元に駆け寄っていく笑子の背中を見送った。

●新な道へ
 一週間後。学園を訪れた源三郎は、笑子から託されたという手紙を撃退士達に手渡した。
 飾り気のない便箋には、年相応の可愛らしい文字で、先日の事件に対する謝罪と感謝の言葉が綴られていた。
 元気でやっているらしいと判り、撃退士達の顔に自然な笑みが浮かぶ。

 ――私はもうすぐ、新しい気持ちで久遠ヶ原の門を潜ります。
 もう、迷ったり焦ったりはしません。一歩ずつ確実に、進んでいきたいと思います。
 そしていつの日か、私の本当の力で、皆さんのお役に立てるようになれれば嬉しいです。

 西田 笑子――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

筧撃退士事務所就職内定・
常木 黎(ja0718)

卒業 女 インフィルトレイター
セーレの王子様・
森田良助(ja9460)

大学部4年2組 男 インフィルトレイター
黒雨の姫君・
ハルルカ=レイニィズ(jb2546)

大学部4年39組 女 ルインズブレイド
天と魔と人を繋ぐ・
クリフ・ロジャーズ(jb2560)

大学部8年6組 男 ナイトウォーカー
誓いの槍・
イシュタル(jb2619)

大学部4年275組 女 陰陽師
カレーパンマイスター・
ユリア(jb2624)

大学部5年165組 女 ナイトウォーカー