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マスター:京乃ゆらさ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2012/11/22


みんなの思い出



オープニング

 久遠ヶ原学園、某所。
 文化祭に浮かれた賑やかな空気を存分に吸い込み、宇野ひかりは決意した。
「劇団が、ほしい。あたしの劇団が! こないだ初めて観て面白かったし!」
 演劇部ではない、演劇サークルでもない、既存の劇団でもない。自分の、劇団が!
 辺りに木霊する声。ぐっと天に突き出された拳。――彼女を包む、静寂。
 ひかりの決意に賛同してくれる人は、誰もいなかった。そう、何を隠そう彼女に友達は1人もいn
「ふ、ふはははははは! あたしの壮大な野望についてこれる者などそうはいまい! だがあたしは必ず劇団を作る、己の劇団をなぁっ!!」
 秋の冷たい風が吹き抜ける。ひかりは偉大なる1歩を踏み出そうとし――舞い上がった木の葉に視界を塞がれた拍子にずるっと踏み外した。
 びたーん。
 …………。
「……ま、また1つ伝記に記すべき事が増えてしまった……」
 いそいそと1人で立ち上がると、溢れる涙を拭って駆け出した。

 ◆◆◆

『劇団立ち上げのお知らせ』
 そんな募集が斡旋所に載ったのはその日の夕方の事だった。
 生徒達がその広告を次々に見ては去っていく。その光景を陰から眺め、ひかりは項垂れていた。
 ――あ、あたしの計画が間違っていたというの? バカな……このあたしが初手で躓く筈がない! 筈がない、のに……。
 秘かにどきどきしながら待機していたのは最初の30分だけ。後は去り行く人々の背を虚しく見送る一方という有様で。それを暫く続けていれば流石の彼女と言えど凹むのは当然だった。
 壁に背を預け、ため息をつく。鼻を啜って目を瞑った。
「ぅ……ううぅううぅぅうう! だ、大丈夫、大丈夫なんだから! が、が、頑張れば何だってできるし……そ、それにいざとなったら猫の手を借りれば……そ、そだ、猫の手! 名前は猫の手にしよう、劇団猫の手! そうと決まれば……ふ、ふふはははは、もうよい! あたし自らが金も! 人も! 集めてみせるんだからなぁー!!」
 と、さっきまで体育座りでうじうじしそうだった少女が、次の瞬間には勝手に立ち直って勝手に走り出している。
 めんどくさいような、ある意味めんどくさくないような、とりあえず何というか痛い少女という事だけは確かだった。
 何やら雰囲気が暗かった彼女を心配して声をかけそうだった生徒の1人が、ぽかんと口を開けたまま固まる。
「……、今の、何?」
「さぁ」
 劇団そのものでなく、彼女についての話が瞬間的にその場で盛り上がったとか何とか。

「皆さん始めましてー、劇団猫の手でーす! 今度立ち上げる事になりましたので皆さんよろしくお願いしますー! あ、ちなみに団員募集中ですので気になる方はお早めにどーぞーっ」
 島内、某商店街。ひかりは街頭に立って大声を張り上げる。
 が、街頭に立つという事はある程度の『何か』を求められるわけで、
「おーい、宣伝ばっかじゃねえで早く芸の1つでもやれー!」「そうだそうだ!」
「ネエちゃん。何かしてくれるってんならこっちの売り上げも良くなるってえもんだが、何もしねえでそんな所に突っ立ってられるとこっちとしちゃ邪魔にしかなんねえのよ。やるならやる、やらんならやらんでさっさとしてくれねえか?」
 そんな野次が飛ぶのも当然の事だった。
 ひかりが俯きかけ、しかし思いなおしたようにキッと野次ってきた店主を睨みつける。そして制服の上着を脱ぎ捨てブラウス姿になると、盛大に啖呵を切った。
「や、や、やってやろうじゃないのよ! ふ、ふはは、ふはははは! あ、ああああたしの芸を見るからにはお捻りの準備は充分でしょうねぇ!?」
 ……可哀想なくらい、震え声だった。


リプレイ本文

 ごくり。
 村上 友里恵(ja7260)が見つめる先には劇団猫の手の宇野ひかりと名乗った子。その子が、きっとこれから物凄い事をやるのだ。
「あんなに声が震えて……あれが世に言う武者震いっ……スゴイです!」
 友里恵の期待感はみるみる高まり、釣られた周囲の観客も地味にどきどきしてきた。
 椿 青葉(jb0530)が品定めするように立ち止まる。何やら面白そうなひかりのお手並拝見とばかり鈴野アイラ(ja0360)が微笑を湛えて眺めた。偶然買物に来ていた桜井・L・瑞穂(ja0027)が胡乱げに目をやる。
 そんな視線を一身に背負い、ひかりは深く息を吸い込んだ。そして!

♪ほ〜せきゃ〜にゅ〜し〜↑ ば〜いだ〜んあ〜りら〜い↓

「アメリカ国歌!?」「何で!?」
 観客が盛大にずっこけた。

●気を取り直して
 静寂の中で歌われる星条旗。場の空気は一気に氷点下に冷え込んだ。
「ッおいネエちゃんふざk」「団長! 舞監やのに無理に芸ぇしてスベってたら元も子もないでしょー!」
 野次より早く客を掻き分けてきたのは亀山 淳紅(ja2261)。客に向き直る。
「やー、ごめんなさい。あのー、劇団言うても色々ありますやん。役者、音響、脚本、演出。要は彼女裏方でして」
 苦し紛れに説明するうち、瑞穂、アイラ、焔・楓(ja7214)といった面々がさも団員かのように駆け寄る。
「ふあ、瑞穂おねーさんこんにちはなのだ♪ ヒカリおねーさんとお話しようと思ったんだけど……」
「あ、あら楓これはご丁寧に……ではなくひかりとやら! こっちゃ来なさいませ!」
「なななに!?」
 言いたい事が溢れ返って言葉もおかしい瑞穂である。
 強引にひかりを隅に連れて行く。一方淳紅は自らに注目を集めるべく声を張り上げた。
「まぁ役割が色々あるんですよ。あ、ちなみにうちは役者も裏方も絶賛募集中なんですけどもー。とはいえね、一度街頭に立って芸をすると言った以上甘えは許されない、いう事で……どうしましょうかね」
「けれど彼女――団長がはしゃぐのも無理はありません。何故ならここは久遠ヶ原、時は文化祭。新米撃退士の彼女は持て余す身体能力を過信してしまったのです」
 と引き継ぐように口上垂れたのはシルヴィア・エインズワース(ja4157)。小噺の入りのようなそれは、客に手並拝見と静観させるに充分だった。
「さてここに語られるは新米さんの始まりの1歩。先輩撃退士達が彼女を歓迎します」
 大学演劇によくある客を巻き込んだ開演演出という形で収めるシルヴィア。淳紅に目配せすると、淳紅が腹から息を吸い――。

「貴女、お困りのようですわね♪」
「え?」
「え、じゃありませんわよ! 目立ちたいのは人間として至極当然、しかしあれは余りにも……というか何で星条旗ですの!?」
 隅に連れ込まれたひかりに瑞穂がツッこんだ。「あ、あれはあたしの全世界的野望を表した……」などとひかりが謎の供述をしていると、横から声をかけられる。
「何や楽しそなコトになってますなー? 折角やしウチも交ざらせてもらいましょかな♪」
「少々お待ちを、今はわたくひぃいぃっ!?」
 声の方を向きながら瑞穂が言いかけ、素っ頓狂な声を上げた。そこには「や」なんて軽くはにかむウルブライエ・メーベルナッハ(ja0145)がいたのだが、問題は彼女の立ち方だ。……突如自分の真横に壁から逆さに直立した人が現れたとしたら?
 誰だってこうなる。瑞穂だってこうなる。
「ひぃて……酷いですなー」
 わざとらしくよよと泣き崩れるウルである。
 何かもうバカらしくなって瑞穂が他の人を呼び寄せた。
「と、ともあれひかりを捨て置くのは仁義に悖る事ですし、協力して乗り切りますわよ」
「だーいじょうぶぅ! かっわいいあたしが居るんだから誰が失敗しても何とかなるわよぉ♪」
 青葉がきゃらきゃらと笑った。

 体が1つの楽器となり、淳紅の声は喉を通って鼻腔を抜け、頭から溢れる。
 脳に響くファルセットで歌われる、夏にお嬢さんがアイスをちゅーちゅーする的な歌。左右にステップ。恥ずかしげな身振り。素朴な魅力というやつだ。
 そこにいるのは淳紅でなく、郁●ちゃんだった。
 ただ残念なのはここが久遠ヶ原――コテコテの昭和アイドル世代が少ないという事だ。とはいえ単純に歌として上手いだけに客も感嘆の声を漏らす。そのうち手拍子も出てきた。
「まだまだいきますよー!」
 淳紅が続いてオバさんになっても色々デートしてほしい的な歌に切り替える。シルヴィアがクラリネットを構えると、即興で適当に奏で始めた。

「わぁーっ」
 友里恵が歓声を上げる。彼女にとって知らない歌だが、その声、その音色、きらきらして胸が躍る。
「ここはいつもこんな催しをしてるのですか?」
「ん? いや、あの子は初めてだね」
 友里恵が商店街の人と話す。そこにチラシを持った女性が来た。女性は友里恵が斡旋所で見た劇団立ち上げのお報せを手にしていた。
「劇団猫の手、団長はあの通りではありますが行動力は人一倍! 未来の大劇団間違い無しでして。宜しければ如何?」
「ぁ……」
 煌びやかな服と甘い匂い。友里恵にとっての別世界に思わず尻込みする。が、それを見逃さず拾い上げるのが、彼女だった。
 振り返って目を合せ、微笑む。友里恵が唾を呑み、徐に進み出た。
「ぁの……私……劇団ってどんなのかなぁって……」
「この後で集まる予定がありましてね? 貴女も、来る?」
「っはい!」
 友里恵が勢いよく頷くと、彼女――アイラは犬を可愛がるようにいいこいいこした。

 クラの落ち着いた音色が静かに響く。
 淳紅は歌いながらひかりの方を窺う。準備完了したようだ。シルヴィアと示し合せ締めに入ると、腕を広げて礼をした。
「という事で、あちらも準備ができたみたいですのでこの辺で。我らが劇団猫の手の即興劇、皆様どうぞご覧になって下さい! それでは、亀山淳紅と」
「……あ。シルヴィア・エインズワースでした」
 拍手喝采の下、2人が下がる。代って楓が飛び出すや、元気良く言い放った。
「ここからが本番なのだ♪ 歌や踊りや色々するから皆楽しんでいくのだ〜♪」

●『初めての久遠ヶ原』
 ぽんと放り出されたひかり。びくびく左右を見回すも、誰も彼女を気に留めない。恐る恐る歩いてみると、麗しい女性――アイラが観衆に囲まれ何かをしていた。
「さてご覧になりまして! あたくしの取り出したりますハンカチ、種も仕掛けも……」
 お決まりの台詞と共にアイラはハンカチをピンと張り、空へ放る。するとそれは1本の杖となって落ちてきて、掴んだと思えば花束となる。さらにそれを投げると今度は宙でポンと破裂し、白煙と花弁が舞う中で白鳩が現れた。
 鳩は大空へ羽ばたいていき、客がアイラに視線を戻した時には彼女の手に再びハンカチが握られていた。
 アイラはその一端を突如ひかりに持たせると、対角を自分が持って離れていく。と、ハンカチは1本の万国旗になっていき――
「あら」
 途中で、ハンカチの中からひよこが1羽2羽と零れてきた。
「こ、こら、出番はまだでしてよ!」
 なんて慌てて隠すアイラの仕草が面白い。そしてアイラはひよこを回収してハケていき、ひかりは再び独りになった。
 てくてく歩くと、今度は白百合の髪留めの少女――青葉がいる。彼女はフルートを構えるや、
「あたしのフルートを聴けぇっ!」
 吹き始めたのはシチリアーノ。どこか物悲しく揺蕩う音色が幻想的な世界を創る。友里恵がほわぁなんて声を上げた。
 世界に迷い込むように、ウルがひょこっと顔を出した。悪戯っぽい仕草で青葉に忍び寄る。それを知ってか知らずか、青葉は別の曲に移行せんとし――脇から、2本の腕が伸びてきた。
 その腕は青葉の胸を見事キャプチャー――寸前、咄嗟に青葉が跳び退く!
「なっ、あっ!?」「あや、なかなか鋭いですなー。では失礼しましょか」
 退いた青葉を追うウル。青葉が牛を制御するようにボレロを吹き始めると、いつしか2人のドタバタは不思議なダンスになってきた。
 ウルが膝をつき、前屈みのまま音に合せて腰を上げ、曲が盛り上がる瞬間に前宙。ビートを刻むようなリズムに合せロックダンス。
 シルヴィアもクラで交ざってきていよいよボレロらしくなる。ウルがバタフライからブレイクダンスへ繋げ、曲の終りに向け回転は速くなっていく。
 そして、終演。歓声がどっと湧き、3人は手を挙げ応えた。青葉が劇団猫の手を宣伝し、3人は退場していく。
 楽しい世界を後にしてひかりは歩く。そこで最後に出逢ったのは、
「おいでませピンスポさん!」
 んばっと光纏して青の鎧を纏った瑞穂。右手を挙げると後ろの楓、ウルが輝くヴェールに覆われ、左手を挙げると真上から星の光が降り注いだ。ちなみにそれはピンでなくサスだというツッコミはなしだ。
「おーっほっほっほ♪ わたくしオンステージですわ!」
「よく解らないけど頑張るのだ!」
 瑞穂が歌い始めると、楓もわたわた追従する。ウルは打って変ってしっとりしたステップを踏んでいく。瑞穂の故国フランスはシャンゼリゼの出逢いを紡いだ歌。
 シルヴィアと青葉、2種の木管が絡み合う。淳紅がハモってくる。瑞穂が促し、ひかりを誘った。小さく、どんなパートかも判らない程度にひかりは歌う。
 何だってあるんだ、シャンゼリゼには。
 田舎の少女がドレスを着せられたような楓。都へ来たばかりのひかりはただ目を輝かせる。お上りさんを歓迎するお姉さんがウルで、都の素晴らしさを誇るのが瑞穂だ。
 1列になってスイングする彼女達は、見ているだけで楽しくなる幸せに溢れていた。
 歌が終り、揃って礼をする。瑞穂達は退場し、またひかりは独りとなった。でも、今なら違う。独りでだってきっと楽しくなれる。
 深呼吸するひかり。余韻で空気まで熱い気がした。客が息を呑む。友里恵が頑張れと声援を送った。
 そしてひかりが息を吸い込み――!

♪ほ〜せきゃ〜にゅ〜し〜↑ ば〜いだ〜んあ〜りら〜い↓

「て何でやねん!?」「星条旗好きなの!?」
 盛大に、爆死した。
「ありがとうございましたー。以上、劇団猫の手による即興劇でした!」
「ええと、劇と芸は違いましてね? ただ芸を見ていただいて歓声をもらうものではありません。皆様観客も含めた一体感こそ大切でして。きっと成長予定の猫の手をゆっくり見守って下さいな♪」
 淳紅、アイラが何とかフォローする。ここまでくると逆に微笑ましいとなるのは何故だろう。客の誰もが苦笑で仕方ないとばかり拍手をくれてやっていた。
「劇団猫の手をよろしくねぇー!」
「次も楽しみにしてますっ」
 青葉が天使の笑顔を振り撒きハケると、率先して友里恵が叫ぶ。
 かくして商店街の一角で巻き起った騒動は終りを告げたのだった……。

●劇団
 公園。子供達が騒ぐ遊具から離れ、彼らはいた。
「全く呆れ果てますわ。芸も人もないのに」
「いいでしょ……別に」
 瑞穂の言にそっぽを向くひかり。が、数秒するとおずおず向き直り「……さっきはありがと」と小声で言って頭を下げた。
 子犬みたいな子やなぁと思いつつ、ウル。
「んーでも0から劇団立ち上げよっちゅうヒカリちゃんの心意気はええんと思いますよー。勢いっちゅうんは大事ですしね!」
「勢いにも程がありますわ! ま、まぁ? 夢を抱くのは大変宜しい事ですけれど……それも然るべき段階を踏んでからでしょうに。例えば部活から初めてみるだとか」
 瑞穂の提案に淳紅が「成程」と反応する。青葉が唇に指を当て、
「いいかもねぇ。お金も団員もない今から無理するよりぃ」
「ですね。予算や人や場所はありませんが、歌はまずまずで何より度胸は据わってますし……まず部活に落ち着いて、そこから先を努力する方が早いかもしれません」
 しゅんとしたひかりに思わず同情するシルヴィアである。淳紅が苦笑し、
「確かに。1人でも立ち上げようとするその姿勢、自分は好きやよ。ま、多少準備不足でも、ね!」
「部活作って団員揃えて商店街で演劇したら皆喜ぶのだ♪ それで人が集まれば商店街も活気が出て点滴二丁なのだ! ……あや、点滴? 一席?」
 むむと頭を抱え始める楓に、ひかりを除いた7人が笑う。瑞穂が一件落着とばかり胸を張った。
「栄光とは小さな1歩から始まるものですわよ。おーっほっh」「何で?」
 不意に、ひかりがそれを遮った。先程までとは違う、野望を湛えた瞳で。
「部活にして良い事あるの?」
「当然でしょう。部室や部費や、その他盛り沢山ですわ!」
「部屋なんかいらない。部費なんか10人満たない新興の部に大した額下りないよ。そもそも劇団に大金がいるの? だってあたしTVで観た事ある。貧乏劇団が何とかって」
 小劇団が団員に給金を払う事など少なく、逆にハコ代を徴収する事もしばしば。無名劇団は貧乏なのだとTVで言っていた、と。
 照明どころかパネル1枚ない現状、保管場所も必要ないし、暫くは自室に置けばいいのだ。自室から溢れる程大道具を揃えられたなら、その時は貸し倉庫を借りる金がある筈で。無論公演できる段階になれば給金は払うが、猫の手はまだ公演自体できない。そして芝居を打たない劇団の維持費などタカが知れている。
「部活って劇団と何が違うの?」
「では貴女は何故劇団に拘るんですの?」
「学園から独立していたいから」
 初めて観た舞台は外の劇団だったから。同じ環境に身を置きたい、と。
 ひかりの決意は固い。瑞穂が「でしたら勝手になさいませ」と突き放すと、「そのつもりだし!」なんて粋がった。
「……ただ。あたしの為に色々考えてくれた事は、ありがと」
「こ、困っている人を助けるのは当然ですわ」
 破天荒なのに妙に律儀なひかりに瑞穂も複雑な心境だ。とそこに、
「私はよく解りませんけど……さっきの皆さんが凄くて……私もちょっとだけやってみたいなって」
「え……入る、の?」
「多分?」
「ぁ……ふ、ふははははー、団員第1号の誕生だ!」
 友里恵が名乗り出ると、ひかりが何やら強がるように高笑いした。青葉がうーんと首を傾ける。
「確かにぃ、そういう事なら部活も劇団も変らないかもねぇ。じゃあじゃあっ、今ならこの超アイドル椿青葉ちゃんがトップスタァとして入団してあげるぅ!」
「ふ、ふ、ふ。2人目にして早くも主演女優確保か。負け知らずの自分が恐ろしい!」
 途端に増長するひかり。一同唖然である。
 夕日(?)に向かって勇ましく指差すひかりの腕を、アイラがぴしゃりと打ち据える。
「ひたぁ!」
「劇団を志すのならもっと優雅に! 観てもらうという姿勢を努々忘れませんよう」
「は、はい……」
 涙目で痛む腕を擦るひかり。ウルが背筋にそっと指を這わせた。
「うぃい!?」
「まぁ頑張って下さいな♪ 縁ありましたらばウチも手伝わせてもらいますよって」
 ひかりがウルと距離を取ってぺこと頭を下げる。
 ともあれ。
 劇団猫の手は漸く上り始めたばかりなのだ。この果てしなく遠い芝居坂を……。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: Ms.Jブライド2012入賞・シルヴィア・エインズワース(ja4157)
重体: −
面白かった!:8人

ラッキースケベの現人神・
桜井・L・瑞穂(ja0027)

卒業 女 アストラルヴァンガード
聳え立つ双子山・
ウルブライエ・メーベルナッハ(ja0145)

大学部2年33組 女 鬼道忍軍
撃退士・
鈴野アイラ(ja0360)

大学部5年219組 女 インフィルトレイター
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
Ms.Jブライド2012入賞・
シルヴィア・エインズワース(ja4157)

大学部9年225組 女 インフィルトレイター
パンツ売りの少女・
焔・楓(ja7214)

中等部1年2組 女 ルインズブレイド
春を届ける者・
村上 友里恵(ja7260)

大学部3年37組 女 アストラルヴァンガード
【猫の手】新進気鋭の星・
椿 青葉(jb0530)

大学部1年177組 女 アストラルヴァンガード