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マスター:楠原 日野
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/07/21


みんなの思い出



オープニング

【憧葛】
 五月雨でたおやかに頭を垂れながらも、輝く緑を誇る、葛。
 雨に濡れても輝き、生命溢れる君に、ただひたすら憧れる――


「父さんは、母さんの何を好きになったって言ってるの?」
『久方ぶりに電話してきたと思えば、ずいぶん今更で突然な質問するわね』
 電話越しの母の声には、多少呆れたような気配がする。
『それに、スズカも父さんがなんて言いそうな人か、わかるでしょ?』
「ああ、うん……たぶんだけど……」
「『全てが好きさ』」
 見事な一致。
「なら母さんは?」
『さあねぇ……なんでかしら。会うたびに好きだ好きだ繰り返して、死ぬ寸前まで追いつめても無抵抗で。また懲りずに会いに来ては好きだと連呼するから、刷り込まれたのかしらね』
(なんだか思ったより参考にならないのかも……)
『何で心を許してしまったのかしらと、今でもよく思うわ。なんだか最近はコソコソ隠れて何かしているし、お金の使い道も不明な所があるし。今日なんて朝からずっといないのよ。
 まったく、本当になんでなのかしらね……おかげで天界から逃亡する事になったし、人の地に隠れ住むようになっちゃって――でも、幸せね。一緒にいられて、スズカも生まれてきてくれたから』
 いつも父に冷たい対応をする母の姿を思い浮かべると、温かみのある声や視線も思い出される。
 思い出す、というよりは気が付いたという方が正しいが。母は父が好きじゃないのでは、なんて思ったりもしたが、今ならそうではないとはっきりわかる。
(少しは成長できた――のかな?)
 依頼に出るようになってから、半年。
 まだ半年だが、もう半年。自分が過ごしてきた10数年よりもずっと濃密だった気がする。
 いや、間違いなく濃密だった。
 だからこそ、昔聞けなかった事が自然と口から出る。
「悪魔――種族が違う事に抵抗はなかったの?」
『もちろん、あったわ。でも、どうでもいいかしらって思えてきたのよ。結局のところ、そんな感情を抱くのに天使も悪魔も人も、関係ないかなって』
「やっぱり、そうだよね」
 母の答えに、スズカは自然と空いてる手を握りしめ、拳を作っていた。
 すると電話の向こうで、母の気配が少しだけ変わる。
『その様子なら、好きな人ができたというところかしら』
「……え?」
 問い返そうとした瞬間、けたたましい電子音がスマホから流れ、母の声がそこで途切れる。画面も真っ暗で、全く反応してくれない。
(こんな時に限って……)
 だが仕方ない。
 もともとバッテリーの残量は少なかったが、ちょっと外出するだけのつもりだったし、ましてや電話するつもりもなかった。
「降ってきちゃうんだもんなぁ」
 久遠ヶ原に【大雨】が降り注いだその日、遠く、東北の地でもあいにくの天気だった。アスファルトを叩き続ける大粒の雨――少しは薄くなった曇天を仰ぐ、スズカであった。


 少しほつれたブロンドの髪から頬に伝い、そして首筋から服の中へ。
 冷たい雨が少しずつ体温を奪っていく感覚を、天使アルテミシアは目を閉じて感じ取っていた。緑色の軍服ワンピースも、その全てが深い緑色となっている。唯一、髪留めの朱色に近い櫛が鮮やかさを保っていた。
 人の手が入らなくなり荒れ果てた平原で、傘もささずにぽつりと1人でいる。
 弓に矢を番え下に向けたまま、ただずっと、黙って立っていた――


(わざわざ雨に濡れるたぁ、物好きですねぃ)
 アルテミシアから数キロは離れている森、そこの木の枝の上で、奇しくも近しい緑色の着物を着ている悪魔の与一は番傘を手にずっと観察を続けていた。見張っているとかそういうものではなく、ただ見つけたからずっと見ていた、それだけである。
「透過させればいいだけの話ですがね……ま、物好きって点なら変わりゃしやせんけど」
 葉から垂れる雨だれを番傘で受け止め、その手に伝わる感触を愉しんでいた。
 天魔には雨も関係ないが――やはりこんな日はいまひとつ、動く気にはならない。
「せせこましく動き回らず、のんびりする日があってもいいですさ」
 そして与一は動かぬ彼女が動くまで、ずっと眺めるのであった――


リプレイ本文

●雨に濡れる大天使

 たまには雨も良いものだ――そう思って傘を片手に、少し肌寒いかと温かい物を買って暖を取りながらぶらりと歩いていた数多 広星(jb2054)はずぶ濡れの女性、アルテミシアと、それに近づいていく人影に「……?」と眉をひそめ、遠くから眺めているのであった。
 突如、アルテミシアが腰の剣を抜き、後ろへ突きつけた。
「やあやあまた会ったね、この間はお疲れ様! こんな雨の日だけどさ、折角会えたんだしお話でもどうかね?」
 傘を差したまま不破 怠惰(jb2507)が肩をすくめると、左手の閉じた傘で切っ先を横に押し付ける。
「ああ戦うのはごめんだよ、私弱いし――まあ前と同じく、言っておくけど攻撃されるようなら応戦はするけどね。この命は友人の形見でもある。
 まいっちゃうよね。そうでなければいくらでも粗末にできたんだけど、楽じゃないや」
 そして刃に滑らせるようにして、傘の柄をアルテミシアに向けた。
「濡れて参ろうも一興だけど、これもまた一興だよ?」
 切っ先など気にせず一歩踏み込んでずいっと、傘をさらに突きだすもアルテミシアは剣を鞘に戻すが、傘を受け取ろうとはしない。
 だがそれでも怠惰は頑なに差し出し続けていると、やがて傘を受け取ってくれた――が、腰のベルトに差しただけであった。
「いやぁ、強情だねシア君は――まあいいよ。
 それにしても最近どうにも忙しそうだよね、そちら側は。このままだと君も、トビト君に何か頼まれごとするかもしれないね」
「アレが無意味に呼ぶわけがない。今もこうしているわけだしな」
「ふうん……上司は選んだ方が良いよ、天界の者はどうにも働きすぎが多くてさ。
 私はね、こっちに来てすぐ友達が死んじゃったの、ちょっと後悔しているよ。もっとやり方があったんじゃないかなってさ」
 ふいと上を見上げる怠惰は「後悔は大概、何かが起きてからするものだからさー」と、アルテミシアだけでない誰かへも言い聞かせるように呟く。
「君は、大天使ともなれば個人だけの正しさを貫くわけにはいかないと言った。私の言い分は間違っていないとも。
 私もね、君は間違ってはいないと思うよ。こういうのは、どっちかか、もしくはどっちもか、妥協しないと近付かないんだろうね。
 ……君は本当に、天と魔は争うしか道はないと思うかい?」
「我らの王はベリンガム様だ。もしも王のためにならぬと判断すれば、私は弓を引くまで――たとえそれが、力天使であろうとだ」
「へえ、たいした覚悟のようだね……ああそうだ。君、スズカ君のことはどう思ってるんだい?」
 肩をすかされたアルテミシアだが、辛うじて「どう、とは」とだけは言えた。
「私はねー好きだよ。天魔の血が流れる彼は、まるで本当の人間のような心を持ってる――長い雨の後に見る、虹のような子だよ。
 そういえば、シア君すごい顔が広そうだけど、まさか彼の母君とは面識ないよね?」
「さてな。もしも弓を使う天使であれば、聞き及んでいるかもしれんが――」
「弓は使うみたいだね。名前は知らないけれども、フィアライトって方には覚えないかな?」
 ふいに懐かしむように目を細め、「ああ……」と漏らした直後に、「覚えてない、な」である。怠惰は意味ありげな目を向け肩をすくめると、背を向けた。
「傘はあげるね。次の時返してくれてもいいよ」
 上機嫌で怠惰は街へ戻っていくのであった――そして、遠巻きにずっと見ていた広星がゆっくりと近づいていく。
 途端、広星の顔を知らないアルテミシアに矢を向けられるが、両手を挙げて敵意がないと示しながら、上を見上げた。
「雨、好きなんですか?」
「……いや、そうではない」
「へー。天使でも風邪って引くんですか?」
 広星自身にとっても、どうでもいい問いかけには答えが返ってこないが、それでも「寒いとかないんですか」などぽんぽんと、どうでもいい事を問いかけ続けた。
 しかし、今更ながらある事に気付く。
「ていうかびしょ濡れ……じっとしててくださいねー」
 タオルを取り出し、自分の傘をアルテミシアの上に向けながら有無を言わせず、頭から拭いていく。
 抵抗らしい抵抗もなく、拭かれるままのアルテミシア。広星の行動が、女性を相手にしているというよりは、妹にでもするかのように躊躇も下心も感じられないからかもしれない。
 やがて気が済んだのか、タオルをしまうと手に持っていた傘と飲み物を突き出した。
 腰に傘が差さっていても、おかまいなし。
「敵からの施しは受けない人ですか? じゃあ問題ないです。自分は貴方の敵ではないですから」
 そう言っては無理に持たせると防水ダンボールを組み立てて頭から被り、「あ、段ボールだと手に持たなくていいから楽かも」と呟き、来た道を引き返し始めた。
「それ、捨ててもいいですけど、不法投棄はダメですからね?」
 最後に釘を刺して、後にするのだった――




●見るは悪魔騎士

「雨音が響いていますね」
 亀山 淳紅(ja2261)が声をかけるが、木の上の与一は顔すら向けない。
「はろーはろー、ストーカー予備群っぽい与一さんこんにちわ? こんな雨の日に黄昏てると、風邪ひきますよ」
 その瞬間、淳紅の姿が掻き消え、与一のすぐ横に現れて枝に腰を掛けた。だが与一が眉一つ動かさない事に、淳紅は少しだけむくれる。
「ここは驚いた言うところですよ」
「何でもあると思っとかにゃぁ、この歳まで生きてこれませんぜ」
 それもそうかと納得し、双眼鏡で与一の見ている方向を覗き込んで、ちょっとの間、どちらも身じろぎもせずに眺めていたが、やがて淳紅が「ね、与一さん」と呼びかけ、指先をついと与一の胸へ押し当てるように向けた。
「貴方の『それ』は恋ですか?」
 そこにパシャリと水溜りを踏む足音が響き、与一と淳紅がそろって地上へ目を向けると、雨に濡れたラファル A ユーティライネン(jb4620)がそこにいた。
「与一っちゃんよぉ、俺と遊んでくれよなー」
 この場で戦いを挑むべきではないかもしれないが――ラファルは悪魔が嫌いだった。
 半身に流れる血が厭わしいのもあるが、今の身体にならざるを得なかった理由を作ったのが、戯れで死の直前まで追いやった悪魔だからであった。
(まあ、あいつがそいつだとは言やしねぇけどよ。そいつだって、生きてるかわかったもんじゃねーしな)
 だがそんな事はどうでもいい。
 淳紅が与一の顔を覗き見ると、口元には実に悪魔らしい笑みを浮かべていて、首を振った淳紅は両手をひらりと挙げると瞬間移動で枝から降りると、2人の様子をスマホで撮影しながら傍観する事にした。
「いいでさ、いつでも始めてくんなまし」
「おおよ。偽装解除、水陸両用モード『ラッガイ』、起動」
 ラファルが偽装を解除し、その細い身体はシンプルで安定感あふれるずんぐりとした物へと変化する。
 さらには独特の効果音と共に蒼き光の本流を纏い、鈍重そうな身体からは思いもよらない速度で彗星の如く樹を駆け上がると、与一の前に躍り出た。
 白狼の彫られた鞘から抜き放った刀で、顔を狙う。
 与一は左の掌を突き出し、貫かれながらも受け止めた――瞬間、ラファルの肩にも貫かれる衝撃が襲い掛かり、木にもまるで貫かれたような跡が出来上がった。
「ぐっ……」
 刀で突き刺したような肩の傷を押さえ、地上に落ちるラファル。水溜りの上を音もなく着地し、憎らしげに与一を見上げる。
 掌を舐めていた与一が素朴な和弓を取り出したかと思うと、一息に4本の矢を放ってきた。
「そのくらいで当たってやんねーよ。雑魚とは違うんだよ、雑魚とは」
 巨星にして蒼き彗星は、水溜りの上を滑るように移動して次々とかわしていくと、与一が「これはどうですかね」と矢を1本だけ上に向けて射る。
 チャンスと言わんばかりにラファルが再び与一へ刀を向けるも、今度は腕で防がれたかと思えば、やはり自分にも貫かれた傷が新しく生み出される。
(なんか飛ばしてるわけでもねーし、反射っつーのもなんかちげーな)
 地上へ着地し上を見上げたラファルの目に映ったのは、先ほど与一が放った1本だったはずの矢。その数が、数百、数千と、雨よりも細かく広範囲にわたって降り注いできた――それこそ、かわしようがないほどに。
 食らっては不味いという所を防ぎつつ、矢の雨を耐えきったラファルだが、決して軽い傷ではない。
 それでも三度、木を駆け上がり突きこまれた刀は、番傘で受け止められたが、ラファルは瞬間的に与一の身体を磁化させると、磁力の反発でほぼ強制的に隣の樹へと跳んでいた。
 そしてそのまま音もなく逃げて行くラファルの背に、与一の矢が向けられる――が、その前に淳紅が出現した。
「はーい、ストップ。もう十分でしょう?」
「……ま、あんたの顔でも立てますかねぇ」
「淳紅。あんたじゃなくて、亀山淳紅です」
 肩をすくめ「へいへい、淳紅さんね」と投げやりに返事をする。
「――最初に言った言葉ですけど、『愛していました』って意味もあるんですって。
 直接言葉を繋げない美学という奥ゆかしい文化は自分も大好きですが、でも、愛してましたなんて、なんか寂しいじゃないですか」
 ねえと話を振るのだが、それには応えてくれない。
 頬をかく淳紅は枝から飛び降り、瞬間移動で地上へ着地すると歩き始めると、思い出したかのようにクルリと振り返る。
「あ、おまけ。雨止みませんねで、もう少し傍にいたいですって意味になるんですって。
 今、もう少し降っててほしいとか、思ってました?」
 答えの代わりに「とっとと行きなせぇ」と言葉を返され、肩をすくめた淳紅はスマホを取りだしながら街へと向かう――と、そこに。
「恋かと言ってましたけどね、その通りでさ。自分とは正反対の力を持つ彼女は、存分に楽しめそうでしてねぇ」
 振り返った淳紅は、与一の目が学園でもよく見かける目にそっくりだと感じた。
(戦える事に恋するってのも、1つの愛かもしれんやね)




●少年の心は

「ス〜ズ〜カ〜ちゃん」
「――あ、むっちゃん」
 手を振りながら走ってくるレインコートの新田 六実(jb6311)と、その後ろを悠然と歩く川内 日菜子(jb7813)だが、六実は何かに気付いたようで首を傾げると足を止め、引き返していった。
 チラリとだけ目を向けた日菜子は「ああ」とだけ漏らし、足を止める事無くスズカの前へ。
 傘とタオルを差し出し受け取らせると、傘を閉じて横に並ぶ。
 2人して空を見上げ、雨音だけが沈黙を紛らわせてくれた。
「――この際ハッキリとさせよう」
 日菜子が前置きひとつ。
「敵とか味方とか、そういうのは全部考えるな。スズカは『あの』2人についてどう思う? 好きか、嫌いか、無関心か――わからないという回答は無関心と見なすぞ?」
 問われたスズカは空を見上げるのを止め、かわりに日菜子の顔を見上げてはっきり「なんでか好きだよ」と答えると、日菜子は口元に笑みを浮かべて大きく頷いた。
「……そうだ、それがスズカの本当の気持ちさ。所属や立場で左右される好感度など、所詮は理性で補正した気持ちに過ぎない。
 これでスズカが『本当はどうしたい』かも見えてくるハズだ。
 いいか、スズカ。想いの力とは、味方につけると非常に心強い。しかしただ感情のままに動くのは、理性の手綱がない暴れ馬みたいなものだ。
 力無き者の盾でもある撃退士が、そんな無責任なモノであってはならない」
 そこへメールが届き、日菜子がそのメールに目を通した瞬間、穏やかだった日菜子の顔が少し険しいものとなった。
「……すまない、用事が出来た」
 自分の傘を放り投げ、雨の中を全力で日菜子は駆け出すのであった。
 残されたスズカが言葉を反芻してうつむいている様子に、角からハラハラとした目で見守る人物。その後ろから、六実が顔をひょこっと覗かせた。
「あの……もしかしてですが、傘を届けるように依頼した方ですよね?」
 振り向いてくれたその顔を間近で見た六実は、もはや確信を持っていた。
(目の色が違うけど、スズカちゃんにそっくり……)
 目の色こそ黒だが、肌の色、髪、顔つき、全てがスズカの将来像そのものであった。
「あ、いや、うん、ナンノコトカナ? 通りすがりの悪魔だよ!」
 デジカメを手にしていた六実から足早で去っていく男性を見送り、くすりと笑うとスズカの元へと向かう。
「なんで、ここにいるって知ってるの? 傘がないのもなんか、知ってたみたいだし――まぁ、ちょうどスマホのバッテリ切れて助けも呼べずに困ってたんだけどさ」
「なんでだろうねー? スマホのバッテリー切れは、電話してたの? 相手はお母さん?」
 笑って誤魔化されたスズカだが、首を縦に振る。
 少しだけ浮かぶ笑みを握った手で隠しつつ「そういえば」と、少し白々しくも思い出したついでのように口を開いた。
「両親は天使と悪魔なんだっけ。写真とか見たいな〜」
「いいよー」
 写真を見せてもらえた六実は、ああやっぱりなと、口には出さず微笑んだ。
 紫の瞳でまさしく天使っぽい金色の髪をした女性と、黒い瞳でスズカそっくりな緑髪の男性――こうなると尋ねたくなってきてしまう。
「ね、スズカちゃんはお父さんと仲いい?」
「あんまり、かなぁ。父さんは母さんばっかりに夢中だし、この前の電話もなんか素っ気なかったし」
 それを聞いてニンマリする六実へ、スズカが「どうしたの?」と投げかけてくるのだが「知らな〜い」と笑いながら軒下から出ていくと、レインコートに当たる雨粒の音が聞こえない。
 気が付けば雨が止んでいる天を見上げ、六実はスズカに広げた手を差し向けた。
「帰ろ、スズカちゃん!」




 天を見上げたアルテミシアが、手に持たされた傘を閉じ――2本の傘を見ては、小さく笑った。
「まったく……撃退士とはおかしなやつらだ」
 立ち去るアルテミシアを確認した与一も番傘を閉じ腰をあげるのだが、その腰がとても、重い。
「さて、そろそろ本格的に動かないとお嬢に怒られますかっと」
 最後にもう一度だけアルテミシアに目を向け、そして北へと向かう与一であった。


(あいつ自身の火力はそこそこでしかねーけど、分散つーか、拡散させるってのがあいつの力か……何もわかんねー状態からすりゃ、大きな収穫だぜ)
 どうにかここまで歩いてきたラファルが、とうとう膝から崩れ落ちるも、誰かの腕が抱き止めた。
「まったく、無茶をやらかすな。傷だらけの上に、びしょ濡れじゃないか」
「ヒナちゃんも、な」
 濡れた日菜子の腕に抱かれ、気を失う様に眠りにつくラファル。
 眠りについた相棒を抱いたまま、雲の切れ間から差し込む光に目を細めた日菜子は、独り言のように呟いた。
「撃退士として大切な者たちを守るために戦うのか、スズカ個人として己の意志を貫くために戦うのか――選択肢は用意できた、あとはスズカ次第だ」




【一矢】少年、困惑す  終


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: ペンギン帽子の・ラファル A ユーティライネン(jb4620)
重体: −
面白かった!:6人

歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
死のソースマイスター・
数多 広星(jb2054)

大学部4年4組 男 鬼道忍軍
撃退士・
不破 怠惰(jb2507)

大学部3年2組 女 鬼道忍軍
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍
Survived・
新田 六実(jb6311)

高等部3年1組 女 アストラルヴァンガード
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅