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マスター:楠原 日野
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2015/01/19


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオは初夢・シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 突如として現れた人類の敵、天魔。彼らは太陽の黒点をゲートとし、向こうの世界から地球にどこかにあるという古代神の遺産を手にいれんがため、地球の略奪を開始する。
 彼らが生み出す大量の生物兵器、それと巨大にして強大な機動兵器に対抗し、撃退士のみが操縦できる人型兵器『アウルブレイカー(AB)』が人類にとって希望であった。
 人類の反撃。煉獄艦『エリュシオン』壱番艦は太陽に向け、出発を開始。地球では、陸の弐番艦、海の参番艦、空の零番艦が撃退士達とともに地球を奪還すべく、激戦を繰り広げるのであった――


●エリュシオン・格納庫
 よう、マードックだ!
 改良に改良を重ね、更なる進化を遂げたABに驚きやがれ!
(ユニット外観は自由に設定。PCスキル使用可、世界観にあった名称等に変更自由)

AB1 特【超速(1Tの間移動距離倍加、火力命中補正あり・1Tの冷却時間あり)

AB2 特【オーバーリミット(耐久を1or2消費し、1回火力を1段階or2段階上昇)

AB3 特【予知(1回、ロックオンした攻撃全て必中。ただしスキルで回避される事も。1行動後、再使用可)

AB4 特【幻影(発動に5T必要、発動後永続的にどんな攻撃も50%の確率で完全回避。スキルとの併用可)

AB5 特【断絶F(1Tの間ダメージ0にするフィールドを展開。超火力には貫かれる。使用中行動可だが武器は不可。体当たり攻撃可)

AB6 特【ジャマー(使用中、回避2段階下降。戦闘フィールドにいる敵の回避、命中、探知を1段階ダウン)


機体性能
強化AB改 攻B 防B 回B 命B 加B 探B 耐B(40)

(手持ちの5pを振り分け。最高はS、最低でE。どこかを削ってどこかを上げる事も可)
※加速=移動距離。回避に補正、Aで10sq以降、2sq刻みでダウン。行動0・5消費ならその半分。PCの移動力/5が数値に加算
※探知=レーダー。命中に補正、敵映を確認できる距離(A40sq B30sq C20sq D10sq E1sq)
※耐久は1段階で10ずつ増減。
※補正は1つの項目に3回かかる事でやっと1段階の変化。


 お次は特殊改造だ。これも5pを自由に割り振けだが、これでSより上に踏み込む事もできるんだぜ!
(重複取得不可)


1p WC・武器改造(火力を1段階アップ)

1p TS・ターゲットスコープ(命中を1段階アップ)

1p FC・フレームカスタム(回避を1段階アップ)

1p PM・パノラマモニタ(回避、命中、探知に補正)

1p LS・リンクシステム(ユニットの得た情報を他のユニットと共有できる。全ユニットの命中と探知に補正)

1p 脱・武装パージ(任意で主兵装以外の武装とほとんどの装甲を脱ぎ捨て、回避を3段階上昇。耐久の最大値が5になる)

1p 爆・自爆(自分を中心に半径範囲3sqにいる者すべてに、最大耐久値分のダメージ)

2p FF・飛行変形(行動消費0で飛行ユニットに変形・飛行可能・加速2段階上昇。飛行状態なら海と空を自由に行き来できる)

2p AR・自己修復(パッシブ・ターン終了時、耐久5回復)

2p SP・スペシャルウェポン(兵装のリミットを解除し、10Tの間、兵装性能1段階上昇。効果が切れると5ターン再使用不可)

3P 分・分身(1Tに1機、自分の意思で操る分身を生み出す。分身は生み出された時の機体状況に依存。本体から4sqまでしか離れる事が出来ない。攻撃可。耐久1。最大3機まで留まる事が出来る。分身はスキル、特殊発動不可)

3P EC・エネルギーコーティング(全身をエネルギーで包み、ビーム攻撃を無効化する。一度無効化すると、1行動の間を置いて再度展開される)


 ハイパー化(全能力2段階上昇。任意切替え可)は標準装備だ! 通常の運転ではアウルなしで運転してるが、アウルを発現させると、ハイパー化って感じだ――が、1Tでパイロットの生命が3消費される。気絶しちまわねぇようにな。
 それと合体(2体合体で全能力A。3体目以降、1体増えるごとに攻・防・耐が1段階ずつ上限なしに上昇。回・命・加に−補正。各機の特殊改造効果を重複。武器は合体した機体全ての物を使える。行動値は一番高い人の数字を採用。メインパイロットはいつでも変更可。火・命S、幅3sq射程無限の超必殺技が1回撃てる。使用回数1回のみ。任意で分離可)も通常機構だ!

 武器は好きな組み合わせを選んでくれ。主兵装は1つ、副兵装は0〜2だ。
(弾数無限。次弾装填には一定の行動値を消費。武器の形状は自由に設定可)

主兵装
ドリルナックル  火力・A 命中・B チャージ・無 射程・1

ハルバード    火・B 命・A チ・無 射・4

ガトリング    火・B 命・B チ・2 射・16(威力分散するが、前方3sqまで拡散可)

ショットキャノン 火・B 命・C チ・1 射・10(前方2sqの範囲攻撃)

アサルトライフル 火・B 命・A チ・0.5 射・50

ミサイルオロチ  火・A 命・B チ・2.5 射・30(威力分散するが、最大30機までロック可)


副兵装
ナイフ      火・C 命・B チ・無 射・1

強化手甲     火・D 命・B チ・無 射・1(受け流し可能)

シールド     火・E 命・D チ・無 射・1(打突可能。受けが可能)

バルカン     火・D 命・C チ・0.5 射・12(装着部位は自由)

ハンドグレネード 火・B 命・D チ・1.5 射・8(十字に合計5sqの範囲攻撃)

小型ビット    火・E 命・D チ・2.5 射・20(ビット本体は射・1の耐・1。チャージ後、再射出可能。場に最大10基まで)




……Now Loading……Now Loading……Now Loading……



「目が覚めたか、冴木」
「エミナ……」
 薬液が満たされたカプセルに、頭だけを出して横たわらせられている冴木が、わずかに動く機微を動かしてエミナの顔を睨み付ける。
「そう怖い顔をするな――お前にも、私達に協力してもらいたい」
「人類と戦えって? 冗談じゃないわ」
「人類の為に、だ。
 地上で馬鹿がもうやられたようだから、私達4人の目論見は一部で知れ渡っているかもしれないが、少なくともここまで通信は届くまい。
 私達が強敵となり人類の力を底上げする――それこそが私達が人類を裏切った理由だ」
 冴木の目が丸くなり、そして、ああやはりエミナはエミナだったと安堵する。
「人類のために会えて裏切り者の汚名を着る、ね……」
 目を閉じた冴木の答えは――


「太陽までもう一息だけど、きっとこの最大級のデブリ群で間違いなく襲撃があるよね」
 艦長の理恵はつい、誰もいないはずの隣に語りかけてしまっていた。
(しっかりしなきゃ……!)
「艦長、敵影確認しました!」
「でしょうね。規模は?」
「それが……ネームドクラスのみです。それに、こちらをご覧ください」
 モニターに映し出された機体に、理恵は固唾を飲む。
 シェイドの他に見慣れた機体。
 全方位スラスター、それに大太刀と小太刀の二刀流ではあるが、その青い機体は紛れもなく冴木のブルーファントムだった。
 そんなブルーファントムの出している識別信号は――敵と示していた。
 通信で呼びかけたい、そんな思いが理恵によぎったが自分は艦長なのだと戒め、表情を引き締めるとモニターを睨む。
「迷わず、力で止める。
 AB隊だけ、発進。数で勝てる相手じゃない、TB部隊は万が一以外には発進しないこと」
(願わくば、彼らの技量が姉さん達を上回っていますように……)


リプレイ本文

「おや、敵にまわりましたか。僕にはあまり関係ない事ですが」
 出撃命令すら聞く間もなく、宇宙空間を飛行するタキシードを思わせる白と黒のツートンカラーの機体『マジシャンIII?(以降マジシャン)』では、エイルズレトラ マステリオ(ja2224)が楽しげな笑みを浮かべ、レッドシェイド(以降・赤陰)とブルーファントム・スペシャルカスタム(以降・青幽)を品定めするかのように交互に見比べ、あいも変わらず装甲を全て脱ぎ捨てた薄氷のような機体で、常に全速で戦場を駆けまわるのであった。
「どうあろうと、俺はいつも通り目の前の敵を撃つ。
 ナイトヘーレだ。エクリプス、出るぞ」
 皇 夜空(ja7624)が『エクリプス・ヴァンガードオーバードブースト(以降エクリプスVOB』のコックピットで、左右10個ある指輪状の操縦桿を指にはめて起動させると、カタパルトで射出、変形して飛んでいった。
 地上モデルだった黒をメインに白で彩られた『ネメシス』のバックパック両脇に高出力のエナジーウィングを搭載し、空・宇宙仕様にして臨む狙撃主・如月 千織(jb1803)はデブリに覆われた戦域を見渡している。
「うん、障害物が随分多くて射線を通すのがなかなか難しい――けど、そこが腕の見せ所。
 ネメシス、及び如月千織、発艦します……!」
 背中の折り畳み式スナイパーライフルを構え、発艦する。
「あなたまで裏切ったというんですか……残念です、冴木さん。
 だから、それなら僕はあなたを超える。あなたを倒して真のエースになり、人々を守る!」
 改修が終了し、向こう側のオーバーテクノロジーから生み出されたニーベルンゲン・リングが機体の周囲に浮遊する『ラ・ピュセル“ニーベルング”(以降ラピィN)』で、夢前 白布(jb1392)は顔をあげて真っ直ぐに見据える。
「誰が相手だとしても、僕はもう迷わない!
 ラ・ピュセル、ニーベルング! アクション!」
 出撃と同時に【ヘブンズヴォイス】を起動させた。
「重力制御、使えるかは分からないけど、使いこなしてみせる――ニーベルンゲンリング、アクティブ!」
(リングが空間に触れ、声が伝えてくれる……敵影2――いや3……離れに1、デブリ多数捕捉!)
 見えてないものすら見据えて、ラピィNは冴木を目指すのであった。
「きゃはァ、誰が相手でも問題ないわァ♪」
 楽しそうな黒百合(ja0422)が、至高の肌触りを追求した表皮を持ち、どこかの猫型ロボのように可愛いらしい姿の『ユリ・クマ』(本来イベントマスコット用に作ったが落選した違法改造品)の胴体背部に露出しているカプセルのようなコックピットに滑り込み内部へとすっぽり収まると、両腕を広げて宇宙空間へと飛び立つ。
「そう。私は戦う事しか知りませんから」
 パイロットの居住性や衝撃緩和などを最低限に収め、かなりの小型化に成功した黒一色の機体『ニーズホッグ』のパイロット雫(ja1894)は表情を作る事無く、出撃していった。
 ほとんどが出撃した格納庫の外、全長85m、全幅48m、全高182mという規格外サイズのAB『ゾス・サイラ』の出撃準備も完了していた。
 深紅ではあるが、その特異な外見から『サンフィッシューマンボウ』とも呼ばれているそれは、北米に本拠を置く巨大軍産複合体『D社』の開発した宇宙重巡洋艦型ABの実験艦であり、天魔の技術を利用したバグアドライブを主動力炉とした、異形の宇宙船である。
 そんな奇怪なABのパイロットは、その開発にも手がけたであろうリリル・フラガラッハ(ja9127)中尉。
「裏切りかー……まぁ敵として立ちはだかるなら理由は問わず容赦なく討つのみだよね。
 さて、それじゃ始めるよ……!」
 ゾイ・サイラが発艦し、次々とエイ型のビットを射出する。
 全員が出撃したか、というタイミングでやっとふらっと出てくる1機。
「さて、最高の相手です☆ いいデータを期待しますよ♪」
 白と黒で統一され、一部青いラインとライトが用いられているが、とても矮小で地味に見える機体『Phantasmagoria(ファンタスマゴリア)』を操縦するのは、ここでもブラックパレード商会社長・ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)であった。
 Phantasmagoriaが動く度に尾を引くような残像の幻影が付いて回り、ビットもすでに出せるだけ出して戦場に赴くのであった――




 真正面の巨大デブリ群をジグザグに高速で潜り抜けてきたマジシャンが、敵2機の間を高速で駆け抜けていった。
「速いな……総合ではこちらに遠く及ばないだろうが、特化機であればこちらをはるかに凌駕している」
「ええ。
 と言っても、人類の強さはそれだけじゃないけどね」
 2機が同時に半身を逸らすと、−の右手と+の左手を合わせて謎のパワーを得た手刀突きで突進してきたマジシャンが通過していく。
 その際、青幽が真横を通る瞬間に合わせて突き出してきた小太刀の鞘がマジシャンの装甲を掠め、それだけで大きく揺らぐほどに機体はギリギリの状態であった。
 まともに直撃すれば間違いなく一撃で死ぬというのにもかかわらず、エイルズレトラは平然としている。
「まあ多少のハンデは必要ですからね」
 まるで自分の方のが強者のような振る舞いで、デブリ群の中へと消えていった。
「お、冴木じゃないか。お前もこっちに来てたか」
「その声……君田大尉ね。また昔の様に後方を任せるわ」
 1人で戦場を駆ける事の多かった冴木がその昔、短い間だがその背を預けた事のある君田 夢野に、今回もその背を託して地を駆けるようにデブリを足場にして、前線へと向かう。
 赤陰もその進攻に合わせ距離を保つように前へ動き出すと、夢野の『ヴァダーニア・ナイトメア(以降・夢魔)』もゆるゆると動き出す。
「さて、お姫様の手伝いと行くか。専門外なんで、大目にな? エイトメロディ、アインザッツ」
 夢魔が4基8門の射出口から、細い槍のような物を一斉掃射すると、青幽と赤陰を狙いデブリ群をすり抜けあらゆる角度から猛烈な速度で飛来するマイクロミサイルを相殺する。
「そこかッ!」
 デブリを駆ける青幽の上から、エクリプスVOBがビームを纏いナイフの様に鋭い機首の先で気迫を込めて突進。それを先に読んだ青幽は退き、太刀の横一閃――するかと思えば、軌道を変えてエクリプスVOBが通り抜け様に射出した2連装グレネードランチャーを払いのける。
 エクリプスVOBはそのまま止まらずに、赤陰へと目指したかと思えば、急に方向を変えた。
 ――直後。
「目標を捕捉……」
 雫のニーズホッグの正面に小さな火花が集まり、そこから一直線に伸びる光の粒子がいくつもの巨大なデブリを貫くが、3機が散開してそれを避ける。
 そして砕けたデブリをビットで蹴散らしながらも、ニーズホッグが強制的に雫の生命を吸い上げ加速し、青幽に肉薄する。
 ハルバードにショックウェーブを乗せて払うが、下からの斬撃で上へと弾かれ、小太刀の突きがニーズホッグのメインカメラを狙うも、その刃が実弾の狙撃により弾き飛ばされる。
 そこへ間髪入れずに、複数のビットが高圧エネルギーの射出で青幽をニーズホッグから引き離す。
 退きぎわにアウル網で護られていたのニーズホッグの腹部に蹴りをいれるほどの余裕を見せた青幽だが、跳弾した弾がかすめたのか頭部には少しの損壊が見えた。
「仲間は落とさせませんよ?」
 邪魔なデブリをいくつか破壊しつつ、ネメシスがデブリとデブリの隙間を通して刃に当てたのである。狙撃主としてはこれ以上ないタイミングでの援護かもしれない。
「確実に落す一手を……!」
 次弾を装填し、紛れるように飛んでいる赤陰のインプアタッカーを狙撃しつつも、千織はチャンスをひたすら窺い続ける。
 Phantasmagoriaが分身と共に青幽を取り囲み、触れたモノを分子レベルで破壊する超強化マニピュレーターを飛ばすのだが、それに触れる事すら危険と察知しているのか、切り払わずに避け続ける青幽が、見た目とは裏腹に化物のような高速で機動するPhantasmagoriaの分身2機を太刀と小太刀で貫き、さらに返した刀で十文字に本体を斬りつけてきた。
 2連撃のうち1刀が装甲にめり込むも、本体に届く寸前で装甲を脱ぎ捨てて更なる加速を得たPhantasmagoriaが大きく退く。
「ははっ! 最高ですよ、貴方☆」
 ここで冷静に様子を窺っていたラピィNが前へと出た。
 指で弾く様に不可視の弾丸を撃ちかわされるが、見えていた未来。夢魔の放った小さなAB『イミテイテッドファンタジア』がレイピア状の片手剣で背後から近づいているのも、見えていた。
 真後ろにユニコーンホーンを突き出し、破壊。
「不意打ちなんて無駄だ、ラピィが全部教えてくれる!」
「んじゃ、ベテランの戦い方ってのを見せてやるよ、ルーキー」
 夢野の挑発に、むしろ冴木の方が反応する。
(そう――この刹那で学び、超えてみせなさい……ッ!)


「もう少し、ですわァ……」
 ユリ・クマがひょこひょことデブリに隠れながら大回りで移動。頭部から出撃したユリ・クマをスケールダウンした『チビ・クマ』が着いて回っている。
 特殊薬液が全身に行き届いたユリ・クマの各部から怪しげな粒子が放出され、顔は目を回しているような感じに変化して真っ赤になていた。
 そして頭部が膨れ上がったかと思うと、そこから実寸大のユリ・クマ弐号機、続いて参号機が出現する。明らかに収まるはずはないのだが、気にしては負けである。
 準備を整え、ユリ・クマはじわりじわりと、赤陰に気付かれないように移動を続けるのであった。


「あれだけ接敵されてたら避けてくのは面倒だし、クリューニス、あっちを狙うよ!」
 リリルがAIの名を呼び、隠れきれていないがデブリを盾にしてゾス・サイラの上下に張り出した部分から、各15基、合計30基の砲門から発射された光線が曲線を描き、直線軌道ではなく1本1本が蛇のようにうねり、細かなデブリもすり抜けて赤陰へと襲い掛かる。
 さらに5体1組群体となったビット20組が編隊を組み、赤陰を目指していく。
 だがほんの少しの移動で、いとも簡単にかわされてしまう。
「性能はいいが、色々なものをAIに頼り過ぎだな。パイロットとしての腕は並程度だ」
「そんなのわかって……!」
「パピー、今」
 誰かの声。
 もう1つのAI・バーデュナミスが警告を報せ、レーザー式の対空機銃が真下の生体反応へ牽制を続ける――が、盾鋏を構えてデブリを透過してきた大怪獣パピルサリアの巨体を止める事は出来なかった。
 少しでも勢いを止めようと修理用のマニュピレーターで殴打するが、体当たりによる激しい衝突、そしてデブリの陰から炙り出された所で目の前に赤陰の姿が。
「鈍重な超巨人機と侮らないで……こいつのことはよく知ってるんだからっ」
 散らばった表皮はナノマシンにより再生し、光り輝くゾス・サイラの表面に全てを断ち切るフィールドが張られると、躊躇する事無く赤陰にぶち当たる。
 揺らぐ赤陰が不意に振り返り、剣を盾に振り下ろすが、マジシャンはそこから回避してみせた。
「今のは惜しかったですね――さあ、僕なんかよりおっかない人がきましたよ」
 デブリからゆるふわな機体が一斉に飛びかかる。
「さあ、簡単に壊れないでもらいたいものだわァ♪」
 丸い手からぬるりと4本の巨大な爪が生え、ユリ・クマのハッピー・ナックルが赤陰に襲い掛かる。
 初撃はかわされたが、続けざまにチビクマのナックルが触れると装甲を溶断破砕し、まだまだ弐号機と参号機が四方から順に襲い来る。
 それらをしのぎきれば終わりではなく、再びユリ・クマから順に襲い掛かっては何度も何度も何度も何度も、赤陰の体勢が整う前に襲い続ける。
 10数発目で内部構造がむき出しになれば、そこにナックルを当てた瞬間、星形の傷がつくスターバルカンを叩き込む。
 星形の傷と聞くとファンシーなイメージだが、損壊面積を増やし、内部構造に深刻なダメージを与えるのが目的のため、全然ファンシーではない。
 肘打ちでの反撃がユリ・クマに当たった時もあったが、モフっと機体にはあり得ない感触で衝撃を吸収されて、ダメージにはならなかった。
「いい子ねェ。ご褒美よォ!」
 これだけ打ちこんでもまだ回避運動を続ける赤陰の損壊箇所に、トリモチ付のクラッカーを置き土産にユリ・クマは離脱する。
 爆裂した直後、再びユリ・クマが同じように襲い掛かりさらに赤陰を苛め抜くのだが、ユリ・クマが再び離脱してもまだ赤陰は墜ちてはいない。
「きゃはァ、丈夫ねェ♪」
「……色々冗談のような機体だな」
 エミタが珍しくもぼやいたところで、エクリプスVOBが真っ直ぐに突進してくる。
「お前は人でいる事を諦めたのだ、自己犠牲が尊いか? ――笑わせるな。そんな物は何も産まん、何一つもだ」
 機体が虹色に輝き始め、更なる加速でマイクロミサイルを掃射した。
「決して」
 回避性能の低下した赤陰に、被弾。
「決して」
 もう1発。
「決して」
 また1発
「決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決して決してお前は認めないッ!!」
 30発のミサイルを叩き込み、そのまま機首で赤陰へ貫かんばかりの勢いでぶつかると、機首がカシャカシャとスライドしていく。
「ユナイトライズ・ランス・オブ・ロンギヌス――シュート!!」
 光沢↓機首からエネルギーの奔流が、赤陰を貫いた――はずだった。
 突き刺さったはずのエクリプスVOBは赤陰を通り抜け、トドメとなる一撃が当たらなかったのだ。
 そしてその直後、赤陰の姿が揺らめき、空間に消えていった。
「ちぃ……最後の一撃ではだめか。二撃でなければ……!」


 赤陰が消えると同時に、まだ戦える青幽の姿も同時に掻き消える。
「引き時か――奴らと違い、お前らのために死ぬ気はないんでな」
(これでいいんだろう? リツ)
 距離を取り続けていた夢野が戦域を離れると、「私達も帰ろう、パピー」とパピルサリアの内部にいるルナリティスが呼びかけると素直にパピルサリアも戦域を離脱した。
「逃げられたか……」
「頭のまわる人は撤退の判断も早いから、厄介だね☆」
 1撃必殺の狙撃ができなかった千織が悔しそうに呟くが、ジェラルドの方はそれほど悔しそうでもない。むしろまたチャンスがあると嬉しそうだ。
「聴こえますか! そちら側に行っても、あなた達は僕の恩人で憧れの人です!
 理由なんて知らない……だけど、戻ってきてください! あなた達は、それでも仲間だから!」
 いなくなった後も白布が呼びかけるも、虚しい声が響き続けるだけであった――




 寸前まで追い詰めるも倒しきれぬ強敵たち。きっとこれからも立ち塞がろうとするのであろう。
 それでも先へと進むのだ!
【初夢】煉獄艦エリュシオン宇4  次回に続く!


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:2人

赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
神との対話者・
皇 夜空(ja7624)

大学部9年5組 男 ルインズブレイド
カミソリリリル・
リリル・フラガラッハ(ja9127)

卒業 女 ディバインナイト
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
Little Brave・
夢前 白布(jb1392)

高等部3年32組 男 ナイトウォーカー
海の悪魔(迫真)・
如月 千織(jb1803)

大学部3年156組 女 ダアト