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マスター:楠原 日野
シナリオ形態:イベント
難易度:非常に難しい
参加人数:25人
サポート:6人
リプレイ完成日時:2014/06/21


みんなの思い出



オープニング

「違う違う違う! いいか! 全てを魅了するはまず、尻!」
 女子生徒の前にもかかわらず、お構いなしにその男子生徒は自分のズボンを下ろし、ビキニパンツを露わにするときゅっと尻を引き締める。
 筋肉質で形のよい尻だった。男だが。
「そして、脚!」
 高々と蹴り上げるように持ち上げた脚も、無駄な贅肉などなく、筋肉質だがすらっとしていて実に美しい。男だが。
「この2つを兼ね備えてこそ、美と言うものなのだ! ここに男も女もない!」
 拳を作り力説する下半身パンツ男を睨みつけていた女子生徒が、鼻で笑う。
「はん! なにが美よ。美はね、女のためにあるのよ! だからこそ、天は与えた!」
 腰に手を当て、胸を張り出す女子生徒。言うだけあって、なかなかに立派なもので、形やバランスも均整がとれていた。
「そしてこれをさらに際だたせつつ、確かな存在感と美をかもし出してくれる、このくびれ!」
 だぼつく服を手できゅっと引き締めると、くびれたウェストがはっきりとわかる。
「これらがあってこそ、かわいさも兼ね備えた究極美よ! 天性のもので、誰でももっているわけではない、言わば選ばれた者達!」
 尻脚男と胸腰女のにらみ合いといがみ合いが続く中、げんなりした表情の黒松 理恵(jz0209)が椅子に座ったままの若林 雅に向け、肩をすくめた。
「……なに、あれ」
「見ての通り、尻脚VS胸腰対決のようだ。確かどちらも飲食店で働いてて、店同士もライバル関係にあるとか何とかだった気がする」
「へー……」
 完璧他人事なので、理恵の反応はそれだけで、その話はそれで終わりだった――と思っていた。
 突如理恵の腰が掴まれる。
「見なさい! 黒松さんのこの美乳とくびれを! ボリュームはそれなりだけど、この美しさは完璧よ!」
「うひぇ!?」
 奇声を上げ、突然巻き込まれた理恵はすぐ後ろの胸腰女を睨み付けたが、肩を挟むように叩かれ、続いて脇、脇腹、腰と、順々にチェックされる。
「うん、これなら余裕で合格ライン越え。うちのお店でホールに出られるわね」
 勝手に触ったあげく、評価までくだす胸腰女――雅の方へ一瞬だけ視線を投げかけたが、その胸を見るなりため息をつき、言葉もかけず尻脚男へと向き直った。
 分厚く硬い辞書を手にゆっくりと立ち上がる雅を、理恵が苦笑いを浮かべながら座り直させる。
「このままじゃ埒があかん! 勝負だ!」
「へぇぇぇぇぇぇ! いいわよ、やってやるわ!」
 びしっと指さしてきた尻脚男へ、指を突き返す胸腰女。
「勝負の方法は! 今度の開店1周年フェアで、売り上げをより多くのばした方の勝ちとする!」
「日頃の売り上げもうちが勝ってるから、売り上げの上昇幅で勝負ってわけね――いいわ、それくらいのハンデは許してあげる。
 どうせ、勝つのはうちだからね! がんばろう、黒松さん!!」
「はえっ!?」
 もう完全に蚊帳の外だろうと油断していた理恵が奇声をあげ、胸腰女を凝視した。
「1周年記念フェアに向けて、人員募集中なのよ。うち。そして黒松さんは選ばれたの――これは光栄な事だよ?」
 関わりたくないと力一杯首をぶんぶんと横に振り続け、後ずさる――が、胸腰女はずいっと逃げた分、踏み出してくる。
「バイト代はちゃんと出るよ。それも結構多めに」
「む、それならまあ考えなくも……雅はどう――?」
 すると言いかけて、雅がこちらに背を向けて去っていく姿に首を傾げる。
 そして尻脚男の隣に行くと振り返り、鋭い眼差しで胸腰女と理恵を睨み付けた。
「理恵……まさかこんな形で敵対する日が来ようとはな」
「なんで!?」
「家で見た時にも、もしかしてとは思っていたが――隠れ巨乳と認定された今、私はお前と戦わねばならん定めなのだ。
 それに、隣にいるそれとは絶対に相容れない。なによりも、私を必要としていないのだろうしな」
 睨み付けられた胸腰女は「だって小さいし」と、空気など知らんと言わんばかりに、はっきり言ってはいけない事を言いきる。
 その言葉が決定的だったのか、雅は尻脚男へ「私が君を勝たせよう」と、がっちり固い握手を交わすのであった――



「あ、ちゃんと普通に可愛い」
 その日の放課後、衣装合わせという事でカフェ『テンダー』に来ていた理恵は、店の制服を見るなり、そんな感想を口にした。
 胸が強調された、フリルをあしらった花柄スカートに編み上げコルセット風ミニワンピース――カフェ用に作られてはいるが、原型としてはチロルドレスとかディアンドルと呼ばれるモノであった。
「そう、ちゃんと可愛いし、接客の指導もちゃんとしているからこそ、うちは人気なの。
 味だってもちろん、一流! ……とまでは言えないけど、値段に見合うだけの味、そしてそれ以上に価値があるのが私達!」
 両手を天に向け広げ、スカートをふんわりさせながらもくるくると回る、胸腰女。
「まあ、ウリが制服ですって所は確かにあるけどさ……でも私で大丈夫? 普通位だし、そっちみたいにパッドとか入れる気ないんだけど」
 回る胸腰女がピタリと止まると、信じられないという表情を理恵に向けた。その表情が意味する所を察した理恵が「揺れ方見ればわかるよ」と事もなげに言い、制服の試着を始める。
「……人間、服着てる姿を見る時間の方が多いんだから、これが真実の姿なのよ!
 けど、みんなには黙っててね」
「いいけど……そのかわり、選り好みせず詰め物OKで他のバイトも募集してね。そこにこだわってるから、人が集まんないんで」
 理恵の交換条件に、胸腰女は渋々頷くしかなかった。
「さって――あっちはどうなってるのかな」


 雅と尻脚男は尻を美しく見せる服で揉めていたが、先に雅が折れた。
「もうこの際、いっこうに譲らないのならバニーでもナースでもいいとして、今のままではただのキモい仮装集団だ」
 そこは少しでも自覚があるのか、むうとうなって黙りこくる。
「そこで、諸君等が勝つために――尻脚がきれいなだけでなく、奇跡のメイクで顔もきれいになってもらう。
 その奇跡のメイクアップアーティストに来てもらっている――入れ」
「ああ、どうも。こんちわ」
 中本 光平が入ると、尻脚男は見覚えのあるただの同級生の姿に、首を傾げる。
「ただの同級生じゃないか、そう思っているな。ここに有志の被験者がいるので、実際に見てもらおうか」
 カーテンを開けると、椅子にがんじがらめに括り付けられている杉田 亮の姿が。聞いて無いよ的な顔をしている。
「やめろー! ぶっとばすぞぉぉぉおふっ!」
 雅が鳩尾に一発入れ、大人しくなったところで光平がカーテンを閉め直し、それから数分後、再び開けられた。
 そこには、美人というほどではないにしろ、可愛い顔をした子が椅子に括り付けられている。
「これが……アタシ? やだ、キレイ……」
 鏡を見せられたその子の第一声。声は亮のままである。
 だがその完成度の高さに、尻脚男はおおっと感嘆の声をあげた。
「とまあ、このような変貌を君達全員に遂げてもらう。
 源氏名のネームプレートには普段の顔写真も入れて、その差を楽しんでもらうと同時に、客にも体験できますよという触れ込みでいく」
 すでに作った料金表を見せ、雅は得意満面の顔であった。
「今日からここは、誰もが笑いのネタのためだけに来る女装カフェ『パリダム』ではない。奇跡の女装っ子カフェ『パリダム』だ!」



リプレイ本文

「むっふーん、こんなところでしょうか」
 モフモフ黒猫執事、カーディス=キャットフィールド(ja7927)が小奇麗になった店内を見わたし、満足げに頷く。
 空のテナントは、今ではにゃんことわんこ、それにその他の虎やらなんやらと、尻尾のある動物達のヌイグルミや、そんな柄の壁紙やらと、とにかくファンシーな仕上がりである。
 食器ももちろん、可愛いもので統一。
「そしてこれを掲げるのです!」
 外に出て脚立を登り、手作り感満載の看板をぶら下げる。
 店の名前は――
「もふもふカフェ?」
 目をキラキラとさせながら、その看板……いや、カーディスを見上げていたのは文月 輝夜(jb8554)だった。
 脚立から飛び降り、軽やかにしゅたっと着地して、注目を集める様によくわからないポーズをとってみせる。
「そう、猫耳もしくは犬耳&しっぽを全員着用、頭に輝く△耳! お尻に揺れるもふもふしっぽ!
 可愛いは正義をモットーに、お客様をおもてなしするカフェです!」
 そしてぺたっと、窓に『バイト募集のお知らせ』を貼るのであった。
 そのお知らせを見た輝夜が、テンダーとパリダムへ目を向ける
(胸腰、尻脚は別にいいけど……)
 くるりと向き直ると、カーディスの尻尾を握りしめる。
(この耳と尻尾がたまらないよね!)
「ここで輝夜、バイトしたい!」
「よろしいですよ〜。では早速、衣装を合わせしょ〜」
「あ、ニャーディスさん、手伝いに来ましたよ」
 頭にチョウセンシマリスを乗せた東城 夜刀彦(ja6047)が手を振ると、カーディスも手をフリフリと振り返し、夜刀彦と輝夜の背を押して入口に額を打ち付けながらも店の奥へと消えていく、カーディス達。
 こうして小さいながらも『もふもふカフェ』は、開店の準備が整った。


 カーディスの言葉にうごめく影。
「尻尾……? では、尻尾の重要性と必要性を教えよう。
 尻尾勢以外の喧しい奴らが尻尾素敵! 尻尾欲しい! 尻尾万歳! と言うまで、我輩がな……」


 テンダーとパリダムのある通りのど真ん中。
 身を隠しながら胸腰女と尻脚男のいがみ合いを見て、時折、Unknown(jb7615)は嘲るように低く笑っていた。
「くだらん。実にくだらんな。時代は尻尾だというのに」
 そこへ颯爽と金髪の女性2人が、胸腰女と尻脚男の間に立ちはだかる。
『久遠ヶ原の毒りんご姉妹、華麗に参上! ですわ 』
 アンジェラ・アップルトン(ja9940)とクリスティーナ アップルトン(ja9941)。知る人ぞ知る、毒りんご姉妹である。
「脚か胸の戦いだそうです、クリス姉様」
「虚しい争いですわね。完全なる美を誇る私達が、この争いに終止符をうちますわ」
 ビシリと、胸腰女と尻脚男に指を突きつけるアンジェラ。
「そう、頭からつま先まで全ての美しさをバランスよく兼ね備えてこそ、究極の美――その差を思い知らせてやろう」
「さぁアンジェ。出張MAPLEの開店ですわ!」
 来た時と同じく、颯爽と去っていく2人。
「……嫌味な女とか、思われなかったかしら?」
「大丈夫です、クリス姉様。自信をお持ちください」
 そんなやり取りをしながら、すぐ近くにいつの間にか構えられていた『黄金色カフェ・MAPLE【出張】』の看板を、くぐっていくのであった。
「噂に名高いMAPLEが挑んでくるとはね……負けてられないわ!
 さぁ、新規のバイトさんの指導して、こっちも開店準備よ!」
「あの、フェア期間中のバイト募集しているって聞いたんだけど……」
 桐原 雅(ja1822)が、おずおずと声をかけ、それから理恵の着ているテンダーの制服に目を向ける。
(可愛い制服……自分には似合わないかもしれないけど、フェアの期間中くらい着てもいいよね)
 勝負には無関心だが、その制服には少し――いや、かなり関心が高い。むしろ憧れである。
 だから今日、知り合いには内緒でここへ来ていた。特に、恋人には。
 ――見られたら、恥ずかしいので。
「あ、どうぞどうぞ。あそこのボスさんが、どこかを見て何か言うかもしれないけど、気にしないで」
 そして視線を下に下げる。
「綺麗な脚、だねー。フットワークで鍛えられてるって感じ」
「あ、ありがと」
 褒められ、照れた笑みを浮かべる雅。
「なんだか胸のお店みたいなイメージをアレのせいで植えられてるけど、女の子ってそれだけじゃないもんね」
「胸って大事よ? 顔見ようと思ったら、ついつい上半身まで目に入っちゃうでしょう?
 真っ先に見える部分って、とっても大事なのよ?」
 理恵の肩に手が置かれ驚いた理恵が振り返ると、その言葉通りに真っ先にその肉感的で豊満な胸が目に飛び込んできた。
「ね?」
 にっこりと笑う紅 貴子(jb9730)を前に、事実その通りだっただけに理恵は何も言い返せない。雅共々、その現実から逃れる様に、視線を逸らすのが精いっぱいであった。
「なんだかある意味、大変な所に巻き込まれてしまったみたいね」
 逸らした先には、苦笑する倉敷 織枝(jb3583)。さらに視線を逸らすしかなかった。
「厨房で働きたいのだけれど、いいかしら?」
「私も、こちらの厨房にはいりたいのですけど、よろしいですか?」
 無言でただコクコクと頷くと、まさしくモデルクラスで圧巻スタイルの織枝と貴子は、鼻歌混じりに店内へと入っていく。
 残された理恵と雅は、確かな格差を目の当たりにして、さすがにやや黄昏ていた。
 そこへさらに、木嶋香里(jb7748)と黒神 未来(jb9907)の2人が。どちらも年齢的にも高校生だが、しっかりメリハリのある身体つきをしていて、気にしていないはずの理恵ですらも、軽くショックを受けている。
 そんな事を2人がわかるはずもなく、不思議そうな顔をしていた。とりあえずはなんとか、「よろしくね」と頭を下げる理恵。
「お店が盛り上がるように、がんばりますね。ですから――」
 香里が出してきた一枚の紙。
 そこには【料理投票】と表記されており、内容が記載されていた。
「こんなイベントで、料理でもよく思われたいですよね♪」
「こんなもんごちゃごちゃ言わんと、分かりやすい方法でバチッと白黒はっきりさせりゃええねん!」
 未来が腕の節をパシーンと叩いては、有無を言わせず、通りのど真ん中でなにやら支柱を立て始めている。
「何をするかわかりませんけど、それもまた、盛り上がりそうですね♪ 私も頑張ってきます!」
 青いリボンとポニーテールを揺らし、料理投票の説明用紙を手に持ったまま香里は他の店へと協力を仰ぎに行くのであった。
 もはや手に負えそうにないほど、話は拡大しつつある。
 だがそれでも、我に返った理恵は咳払いすると、「じゃ、制服合わせようか」と平静を装い、雅を案内するのだった――

 随分と賑わい始めてきた通りの真ん中で、レイ・フェリウス(jb3036)が辺りを見回していた。
 テンダーの制服でリングの設営をしている、未来。
 どこからともなく響き渡る、どことなく聴き慣れたフレーズの社歌に乗って、タキシードバニーにドイツ軍帽、そして乗馬用の短鞭
片手に歩く日本撃退士攻業 美奈(jb7003)が、パリダムへと入っていく。
 そのパリダムでは脚立に登り、これでもかというほど脚と揺れる尻を見せつけながら、ディアドラ(jb7283)が窓を拭いていた。
 もふもふカフェの店先に置いた黒板へ、楽しそうにひたすら絵を描き続ける黒猫執事のカーディスと、猫耳メイド服(しっぽ付)の輝夜。
 MAPLEでは、黒白基調としたムチムチでセクシーなメイド衣装に身を包んだクリスティーナが、最初はチラシを道行く人に手渡ししていたが、そのうちに面倒になったのか、ばら撒いていた。
「色々な衣装があるね――でも、バイトしたら着れるのはもちろん、どれか一つだけか」
「にーちゃ、一箇所にバイトいったらそこのことしかしっかり見れないけど、お客で行ったら色々見れるんじゃない?」
 ファラ・エルフィリア(jb3154)の言葉に、レイは一瞬呆気にとられたかと思うと、目を見開き、口を大きく開けた。
「……わぁ、にーちゃが青天の霹靂みたいな顔してる」
「ファラ…おまえ天才だな!?」
 兄の将来が心配になってきたファラの事などつゆ知らず、レイがファラの手を取っては感激している。
「よし、じゃあ慎吾も呼んでおこうかな」
「それならにーちゃ、後は2人でね。レポートとか書くといいよ―写真よろしくね!」
 元気よく腕を振り、その場を後にするファラ。
(あたしはパリダムに行くぅぅぅ! ひゃっほぅ!)
 叫びたい一心だったが、何とか押し殺してパリダムの扉に手をかける――と、その手がシルヴィア・マリエス(jb3164)と重なった。
 何も言わず、2人して頷くと扉を押す。さすがは同志である。
「うおー。何かすごい熱気を感じる……」
 窓の外にいるはずのディアドラからさえも、何故か熱気を感じる。きっとその目に、炎が渦巻いているからだろう。
「私の名前は日本撃退士攻業 美奈よ。美脚すぎる撃退士とネットでも有名なあの撃退士と言えば私の事――この一角、利用させてもらうわ」
 名前も姿も色々危ない美奈が、店の隅を壁で区切り、そこには『SM』の文字が燦然と輝き、そこからも妙な熱気を感じる。
 だがそれ以上に熱いのは、尻脚男と並び、熱演しているマリア(jb9408)の周りに集まる男達の熱気に違いなかった。
「美尻に美脚! これこそ正義だわぁ。胸なんてパッドでも入れれば何とでもなるし、くびれもコルセットを使えば誰でも綺麗なラインが作れるけど――美尻と美脚はそうは行かないモノ!」
 暑苦しい同意の声が、店内に響く。
「さぁ、勝つためにメイクを! 完璧なメイクを皆に施してア・ゲ・ル」
(いいわン、若々しくて引き締まった尻と脚ばかり――アタシにとってここはまさに花園!)
 意気揚々として、光平の隣でマリアはメイク作業に取り掛かるのであった。
 ナースと燕尾服バニーの若い男達を、食い入るように見ていたアレクシア・フランツィスカ(ja7716)も、並び始めた男達を前にずらっとメイク道具を広げる。
「私は! 全力を尽くそうぞ!!!!!」
 通常の戦闘よりもはるかにテンションの高いアレクシアが店内で高らかに宣言すると、拍手が沸き起こる。
「そのテの店を目指すのでないのなら、別の方法を模索する必要もあると思うが……とまれ、今は美の追究。さぁ、美しくなるがいい」
 目を爛々と輝かせ「美はそれぞれだ。髪もすこしいじるぞ」と、ヤル気を見せていた。
「今日から始める美脚への道、とかやってみない? そこから美脚への理解を広げるというのも手だよっ」
 すでに燕尾服バニーで美脚を露わにしている大和 陽子(ja7903)の提案には、柊 悠(jb0830)が手を叩く。
「それはいいですね。美脚って女の子にとっても大事なのよね。
 そのあたり、戦略に取り入れてもいいんじゃないかな?」
「そうそう、でも押し付けると皆引いちゃうから、脚綺麗になりたいな、っていう乙女心とかを上手く掴んでねっ」
 尻脚男も「うむ、それはいいな!」と、快諾していた。そして今日の気分は、どうやらナースらしい。
 そして同じナースだが、少し恥ずかしそうに短い裾を押さえている雪之丞(jb9178)が実に初々しく、もはや初々しさのない男どもはその新鮮さに目が釘付けだったりする。
「あまり、じろじろ見るな……」
 その反応に、さらに熱気が増した気がする。
 だがその中、意外とシルヴィアが不満げな顔を見せていた。
「男の人のお尻と脚の色気って、どっちかっていうと『見えないけど形がうっすらわかる』的なほうが滾るんだけどなー……むしろこう、ストイックな感じのとかバーテンダーさんの衣装とか」
 目に浮かぶキュッとしたお尻を持ち上げる様に、手で表現すると、胸の前で握り拳を作ってほわわんと、夢見る乙女の目を浮かべる。
「スラッとした脚とか、すっごい萌えるよねっ」
 そこに、スラッとした脚、パンツルックでもわかるキュッと引き締まったお尻に尻尾を付けたもふもふ猫耳な執事服のカーディスが店長らしく、ライバル店への挨拶に来てしまった。
 何故か過度のスキンシップを取りながら、マリアが店長代理的な状態でカーディスと世間話をしていると、シルヴィアが「眼福!」とにじり寄り、じっくりたっぷりねめ回していた――ら、開かれた扉に顔をぶつけて、床に沈んでいく。
「すみません、盛り上げるためにご協力願います――どうかしましたか?」
 床に沈んだシルヴィアを、香里は不思議そうな顔で見下すのであった。
 負けじと立ち上がるが、すでにカーディスはいない。やや下がったテンションで、着替えとメイクの手伝いに向かうのだった。
「ふふ、おそろいね」
 悠がヒリュウにもお手製の燕尾服バニーを着せ喜んでいると、燕尾服バニーに着替えたファラがどたどたと外へと向かう。
「呼びこみ、行ってきまっす!」
「あ、あたしも行くぅぅ!」
 同じく燕尾服バニーに着替えたシルヴィア。
 その2人を悠が呼び止め、プラカードをぶら下げたヒリュウをついて行かせるのだった。

 呼び出され、合流した早見 慎吾(jb1186)だったが、ディアドラの燕尾服バニー姿を見て何かを察したと言うか、勘違いしたらしく、到着するなりツカツカとレイに詰め寄って胸倉をつかみ、がっくんがっくん揺さぶる。
「おーまーえーはーどこでどうやっていつも毎回毎回ぃいいいいッッ」
「ええええ客で行くの駄目だった!?」
 揺すられながらもレイが訴えると、ぴたりと止まった。
「え? 今回は客!? まじで!?
 お前が普通に客で行くとか、どうした、台風でも来るのか……?」
 パリダムとレイを交互に見比べる慎吾の酷い偏見からくる早とちりに、なんだかすごい偏見を持たれていると思いもしたが、口にはしないでおいた。
「美味しい料理と楽しい一時は如何かなっ? 今ならメイクアップ体験と美脚講座も開催中でっす☆」
「冷たい飲み物はいかがですか? 『パリダム』は楽しい一時を皆様にご提供いたしまっす☆」
 呼び込むファラと、紅茶の試飲サービスをするシルヴィア。
 そしてそこら中をふよふよと、『楽しい一時を貴方に 美脚になる方法講座開催中』のプラカードを下げたヒリュウが飛びまわっている。
 それに慎吾が気を取られると、レイの方も誤解を抱く。
「慎吾が興味津々みたいだったから、先にそっち行ってみようか。なんかファラもいるみたいだし」
 その誤解を解く暇も与えず、客引きするファラに手を振りながらすたすたと行ってしまうレイを、慎吾は慌てて追いかけるのであった。
「やれやれ……胸とかお尻とか、全くもって品がありませんねえ」
 何か面白いことでもあるのかとやってきたエイルズレトラ マステリオ(ja2224)は頭を振り、本当にくだらないと言わんばかりに深いため息をつく。実に正論かもしれない。
「やっぱ顔ですよねぇ」
 その正論は、瞬時に砕け散った。
「ま、物は試しです。行ってみますか」
 エイルズレトラも、パリダムの戸をくぐるのであった。
 ディアドラ曰く「あまり高すぎても膝が痛くなって姿勢悪くなりますものね♪」ということで、ヒール高めだが、決して高すぎない足をより美しく見せる靴を選び、足とお尻の美しさを引き立てる姿勢と歩き方をキープしながら接客を続ける、ディアドラと悠。
 どちらも優雅な足取りで、笑顔をキープ。
 立ち姿を意識し、てきぱきと動いているのはこれまた笑顔の陽子である。
「お飲物とご注文の品、お持ちいたしました! それでは、ごゆっくりどうぞ」
 注文された品物を並べ、なおかつ何やら書かれているコースタの上に飲み物を置き去っていく陽子。
 興味を惹かれた慎吾は、そのコースターをじっくりと見る。
「美脚になるお約束、その八。足のむくみを取る方法、か……へぇ、小技が利いてるな。レイ、そっちのも見せろよ」
「ああ、うん」
 一心不乱にレポートをしているレイが少し気にもなったが、コースターを受け取り、美脚になるお約束その三を読みながら、シーザーサラダを口にする。
「なんかこう、働かずに食べに行くとか久々過ぎていいんだろうか? みたいな……おいレイ、なんでお前カメラ構えてるんだ」
「え、いや。なんだか色々な試みがあるらしいから、写真付きでレポートしてまとめておこうかなと」
 その返答に、口を開け、意外すぎるという表情の慎吾が、唇を震わせる。
「お前がフツーのまともな仕事するなんて……」
「慎吾、君ね……それにしてもここは、舞台的なこすぷれ喫茶ってやつなのかな?」
「さてね。料理は結構美味いし、まあなんていうか楽しめる雰囲気は――」
「さあ、ぶひぃとお鳴き」
 一角から聞こえる美奈の妖しげな声とピシリピシリと何かを叩く音に、慎吾は吹き出しそうになるが、何とか持ち堪えた。
 何とか持ちこたえて一安心――したのも束の間。
 ステージに燕尾服バニーのマリアが立つと、怪しげな音楽と共にショウダンスを披露する。
「さぁ、とくと見なさい!」
 鍛え上げられ、引き締まったボディラインを見せつける様に身をくねらせ、慎吾達ににじり寄ってきては頬や首筋を触っては戻って行く。
「……次、行くか」
 マリアがまた来る前に慎吾とレイが立ち上がり、店を後にする。
 フォークに肉を突き刺したまま、マリアのバックダンサーをする尻脚男へ向け、しかめっ面のエイルズレトラ。
「うーん、何と言うか、ケバケバしい格好ですねえ。品がないというか、言葉を選んで言うならば……変態?
 前々から思ってましたが、バニーの上に燕尾服とか、正気を疑いますね」
 ごもっともで。


 通りの真ん中で金髪で着物姿の女性が位牌を胸に、目をキラキラさせていた。
「おじいさま、人間界に来てはや数か月でござるが……人の子のばいたりてぃには感心するばかりでござるよ!」
 リングを作っている未来、まっとうに呼びこみをしているが、時折店の中をのぞいて何かを補充しているファラとシルヴィア、接客もしながら呼び込みもするという、超人的な働きを見せるクリスティーナ。
 それと猫耳をつけて外のプランターに水をやりながら、猫の置物の位置にこだわっている、何故かメイド服の夜刀彦。
 活気というよりは熱気にあふれるこの通りで、位牌を胸にした淡雪(jb9211)はきょろきょろと見回していた。
「ゆうめいなおみせ、と聞き申したが、はて、どれがその店でござろうか……?」
「お昼はお決まりですか? よかったらテンダーへ足を運んでみてください」
 緑色の制服に身を包んだ香里から投票用紙を渡され、それぞれの店舗の名前がわかった淡雪は嬉々として、テンダーへと入っていくのだった。
 見送った香里の目に、影からテンダーをじっと眺めている久遠 仁刀(ja2464)の姿が映る。
「雅はあそこに入って行ったはずだが……喫茶店に行くのに、何で隠れて……?」
「どうかしましたか? あ、バイト募集を見た方ですか、もしかして」
 香里に声をかけられ、何を言われているのかと仁刀は、一瞬、きょとんとする。
「は、バイト募集? いや、俺は雅がここに――」
「ああ、桐原さんと一緒にホールで働きたいんですね! わかりました!」
「待て、一緒に働きたいのは分かったとか何だ!?」
 仁刀がどう言おうと「はいはい、わかってますって!」というばかりで、香里はその背中を押して強引に店舗裏の従業員出入り口へと連れて行くのであった。

「なかなかのお味でござるな。制服が愛くるしゅうござるが、なぜに胸に厚めの布を仕込んでいるのかが謎でござる」
 口をもぐもぐと動かしながら、横を通り過ぎ去った胸腰女の胸を横目で見る淡雪。
「しょ、食事の後のコーヒーをお持ちいたしましょうか、お客様」
 ややぎこちない笑みを浮かべる雅が、なんとか接客もそつなくこなしている。
「うむ、頼むでござろう。その『こーしー』とやらを」
「かしこまりました、少々お待ちください」
 踵を返し、厨房へと戻って行く雅。
「なんでこんなことに……いや、流れとはいえ引き受けた以上はきちんとこなさないと」
 渋々、レーダーホーゼンを履いた仁刀が厨房に姿を現すと、雅と正面からばったり出会う。
 トレイを落しそうになる雅がなんとか胸の前でしっかり抱きしめ、落とさずに済んだが、顔がみるみるうちに赤くなる。
 そんな雅を見やって、仁刀は「まあ……いいもん見れたからいいか」と顎に手を当て、呟く。
「うん、可憐だ」
 その一言がトドメだったか、耳まで赤くした雅がトレイを落し、ようやく完成した料理投票用の料理を手にした織枝の後ろへと逃げ込むのだった。
「料理も出来上がり厨房に立つつもりで、制服、着てみたのはいいのですが……何だかこのディアンドルにレーダーホーゼン、胸とお尻周りがきついような……んっ、ぁ……」
「……レーダーホーゼンは男性用だよ」
 後ろに回り込んだ雅が仁刀をチラチラと覗き込みながらも忠告すると、「ああ、そうでしたか」と、壁役だった織枝が着替えに戻って行ってしまう。
 照れる雅を見ているうちに『成長』ぶりに気付く仁刀だが、男性客までもが見ているのに気付くと、その男性客を鋭く睨み付ける。
(多少は許すが、必要以上は許せん……!)
 トレイにコップを乗せ、戦場へ赴くかのような面持ちで接客に臨む仁刀であった――
 そしてここにも、エイルズレトラが。
「おや、このお店の人達は、もう一軒と比べると色気のない恰好ですねえ。
 料理のお味は……ふむ、まあ……おいしいですね、普通に。普通ですが、あちらの方がおいしいような」
「お客様」
 颯爽と厨房から貴子が現れると、エイルズレトラの皿を交換する。同じ料理のような気もするのだが、華やかな盛り付け方や匂いが違っていた。
「こちらが、『真』テンダーの味となります。ご賞味くださいませ――」
 勧められ、それを一口。そして、また一口。黙々と、料理を口に運ぶのであった。
 その様子に満足した貴子が恭しく一礼。
「テンダーの由来は、愛情のこもっているさま……お客様がために、私達はこれからもたっぷりの愛情を料理にこめていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします」
 次々に料理を作り上げていく織枝にも、その言葉が耳に入る。
「テンダーもまだまだやれるって所、教えてあげないとね」
「そうです、がんばりましょう! 皆さん、楽しんでいってくださいね♪」
 手製のハーブソーセージに少し甘めのザワークラウトセットを手にした香里が、店内へ笑顔を向けるのであった。
「テンダーのも噂より美味しいな? でも本格的ならMAPLEかな」
 ここでもレポートを続けていた、レイであったとさ。

「むう、なかなか硬いな」
 笑顔のUNKNOWNがMAPLEの外壁をちまちまと破壊し、口にしていたのだが――あまりのちまさに、いい加減飽きてきたようであった。
「あっちに行くのだ」
 お次はパリダムの壁を、ちまちまと。撃退士御用達のお店だけあって、とても頑丈に作られているのだと、いつになったら気が付くのであろうか。
 外で地味な浸食が行われている事も知らずに、淡雪はなぜか雪之丞を指名して横に座らせていた。
「いらっしゃい。今日はどうします?」
「食事を所望するでござる」
「指名ありがとう……嬉しいよ。その……なんだ……変じゃないか……?」
「こうして、隣に誰かを座らせるのがここのしきたりなのではござらんのか?
 ――まあいいでござろう。そんな事はござらんよ、実に愛くるしゅう格好でござるよ」
 運ばれてきた織枝の料理に手を付け、「美味でござるな」と口を動かしながらきょろきょろと見回す。
 尻脚男やら、衣装まで着てアレクシアによって美人に変化させられていく男性客を見ては、首を傾げる。
「面白い格好なのは、目を楽しませようという算段でござろうか」
「たのもー!」
 未来がズバーンと戸を開けて入ってくると、ビシッと誰にでもないが指を突き立てる。
「わかりやすい方法でバチッと決めるで! そちらさんの代表と、どっちが強いか決めようやないか!」

 そしてなぜか中央のリングでは、胸腰派代表・未来と、尻脚派代表・雪之丞が対峙していた。
 それぞれ制服のまま、ゴングが鳴り響く。
 未来のフロントチョークで胸に押し付けられるも、極められる前に腕を割り込ませ頭を引き抜いた。
「ふ……テンダーの代表がこの程度の者とは聞いて呆れる」
 だが、今しがた居たはずの未来の姿が、ない。
 一瞬で後ろに回り込み、頭へと飛び付くと胸を押しつけながら首に腕を回そうとする――が、それも極められる前に払われた。
「負ける気がしないな」
「やるやないけ、雪之丞クン!」
 バックステップで距離をと思ったが、その前に身を低くした雪之丞による足払いで転倒、そこを後ろから足を足でロックして、腕を掴んでの――
「ロメロスペシャル、か……まったく、優雅とは程遠いな」
 外の様子を厨房で手を動かしながらも眺めていたアンジェラが、深くため息をつく。
 厨房が見える作りになっているため、美女の溜め息を吐く顔を見れた男達は怪しげなカルト集団となりつつあった。
「いらっしゃいませ」
「人気の極上すいーつとやらを所望するでござる」
 クリスティーナが淡雪を席へと案内すると、すぐににふわふわしっとりなパンケーキが運ばれてくる。
「メイプルシロップを好きなだけかけて、お召し上がりくださいませ。
 追加注文はお気兼ねなく。トッピングも、好みで選べますわ」
 メニュー表を指さして丁寧に説明。様々な果物やソースの他に、ベーコン、サーモンなど、甘くない食事パンケーキメニューまでそろっていた。
「本格的でござるな。紅茶が飲みたいでござる」
「もちろんご用意いたしますわ――アンジェ、アールグレイをご用意して差し上げて」
「わかりました、クリス姉様」
 日頃から営業しているだけに、味、スピードだけでなく、接客も全て完璧にこなす、究極と呼べる美貌を持った姉妹。
「紅茶のおかわりはいかがですか?
 皆さま、黄金カフェ・MAPLEの本店も、よろしくお願いいたしますわね」

「あ、レイだ。いらっしゃいにゃー」
 頭にメイド服チョウセンシマリス・はむを乗せたまま、てててとハムスターならぬ猫スターとなった猫耳メイドの夜刀彦がレイに駆け寄ると、レイが目を見開き、ずしゃあッと両膝を地につけ、天を仰ぐ。
(モフモフ喫茶……だと……!? 誰だこれ考えた人はありがとうございます!!)
「にーちゃがにゃんこメイドに釘付けになってる」
 可哀そうなものを見る目のファラの言葉など気にせず、喜びに打ち震えるレイを、慎吾はハリセンでどつき倒すのだった。
「あ、悠達はパリダムに行ったのかー……すごい衣装だねー……」
「やとちゃんは違和感なかったり可愛かったり、ですねー」
 ちょっと遊びに来た悠がカメラを構えると、ファラとシルヴィアが夜刀彦を挟み込み、身を起こしたレイも、ちゃっかりフレームに。
 後ろでは慎吾が、ハリセン片手に頭を振っている――というところでパシャッと一枚。
(パリダムに来ると思ったのに)
 少し口を尖らせた悠が腹いせとばかりに、「何履いてるのか、すっごい興味津々!」と夜刀彦のスカートをめくってはレイがダメージを受けて倒れるのだった。
 その横を淡雪が通り抜けて、店内へ。
「いらっしゃいませお客様〜」
 カーディスが耳をピコピコさせ、出迎えた。
「メニューはこちらになります〜本日のおすすめは猫耳ケーキアラカルトと紅茶のセットですにゃ☆」
「モフモフの可愛いを体感してね♪」
 メニュー表を見せるカーディスに、笑顔で水を運んでくる輝夜。
 輝夜は最初こそ人生初のキングオブお洋服・メイド服、しかも猫耳にしっぽ付で恥ずかしがっていたが、それでもお客様の為に頑張って、精いっぱいモフモフの素晴らしさを伝えているうちに、板について来ていた。
 それが伝わったのか、淡雪は「癒されるでござるな〜」とほわわんと見惚れているのだった。
 オムライスを猫型に成形し、アイスクリームを猫の形にしたフローズンパフェなんかも作る夜刀彦を、癒されるという眼差しのレイがずっと、目で追う。
「こいつの奢りだそうだ」
 レイを指さして慎吾が勝手にそう決めつけ、遠慮なしにファラ、シルヴィア、悠がどんどんと、猫耳犬耳なメニューを制覇していくのであったとさ。



「さっきはすまんな」
「勝負に、すまんはないんやで。言うなら、対戦してくれてありがとう、や」
 リングの上で背中合わせに座り込んでいた未来と雪之丞が、夕陽をバックにがっちり握手を交わしていた。
「ところで……さっきからパンツ、見えてんで」
 涼しい顔のままだが耳を赤くし、ずばっと精一杯、まくれあがっていたスカートの裾を伸ばす雪之丞。
(もう、やだぁ……!)。

「えーっと、投票用紙が無くなって、しかも全部回収できたので、料理投票のをこれから集計しま――」
 香里が投票用紙を手に持っていると――ばくんと、UNKNOWNがそれに食いつき、もぐもぐごっくん。集計する前に、飲み込まれてしまった。
 香里達が唖然としていると、UNKNOWNは夕陽を見上げる。
「カラスが鳴くから、帰るのだ」
 飽きたUNKNOWNは、夕陽へ向って去っていく。
 夕陽の優しい光に照らされる、首から雄っぱい――腰からふくらはぎ、そして足首へ流れるような悪魔的美のライン。
 禍々しい棘。
 そしてもっちりとした弾力ある――尻尾!
 しかもかぎしっぽ的な、なんかいい感じの尻尾を揺らし、去っていく。
「あの悪魔も、ぱーふぇくとばでぃーだな」
 アレクシアがポツリと、もらすのであった――




 さてさて皆様、勝負の行方は? と思いでしょう。
 今回、あまりにも盛り上がりすぎて売り上げが格段にあがってしまい、そんな勝負の事など忘れてしまったのです。
 今は祝杯で茹った頭も日が立てば冷めてしまい、きっとまた、起こりうる――かもしれない。

【FD】胸腰女と尻脚男の決戦  終


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:17人

戦場を駆けし光翼の戦乙女・
桐原 雅(ja1822)

大学部3年286組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
撃退士・
久遠 仁刀(ja2464)

卒業 男 ルインズブレイド
災禍祓いし常闇の明星・
東城 夜刀彦(ja6047)

大学部4年73組 男 鬼道忍軍
大切なのは楽しむこと・
アレクシア・フランツィスカ(ja7716)

大学部6年32組 女 アストラルヴァンガード
和の花は春陽に咲う・
大和 陽子(ja7903)

大学部7年326組 女 鬼道忍軍
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
華麗に参上!・
アンジェラ・アップルトン(ja9940)

卒業 女 ルインズブレイド
華麗に参上!・
クリスティーナ アップルトン(ja9941)

卒業 女 ルインズブレイド
未来導きし希求の召喚士・
柊 悠(jb0830)

大学部2年266組 女 バハムートテイマー
穏やかなる<時>を共に・
早見 慎吾(jb1186)

大学部3年26組 男 アストラルヴァンガード
闇夜を照らせし清福の黒翼・
レイ・フェリウス(jb3036)

大学部5年206組 男 ナイトウォーカー
おまえだけは絶対許さない・
ファラ・エルフィリア(jb3154)

大学部4年284組 女 陰陽師
欲望の赴くままに・
シルヴィア・マリエス(jb3164)

大学部3年96組 女 陰陽師
『ぶれいかぁ』従業員・
倉敷 織枝(jb3583)

大学部7年215組 女 阿修羅
美脚すぎる撃退士・
日本撃退士攻業 美奈(jb7003)

大学部7年273組 女 アカシックレコーダー:タイプB
おまえだけは絶対許さない・
ディアドラ(jb7283)

大学部5年325組 女 陰陽師
久遠ヶ原学園初代大食い王・
Unknown(jb7615)

卒業 男 ナイトウォーカー
和風サロン『椿』女将・
木嶋香里(jb7748)

大学部2年5組 女 ルインズブレイド
可愛いは正義!・
文月 輝夜(jb8554)

高等部1年1組 女 陰陽師
秘名は仮面と明月の下で・
雪之丞(jb9178)

大学部4年247組 女 阿修羅
撃退士・
淡雪(jb9211)

大学部5年203組 女 バハムートテイマー
スプリング・インパクト・
マリア(jb9408)

大学部7年46組 男 陰陽師
ゆるふわ森ガール?・
紅 貴子(jb9730)

大学部6年308組 女 ルインズブレイド
とくと御覧よDカップ・
黒神 未来(jb9907)

大学部4年234組 女 ナイトウォーカー