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マスター:楠原 日野
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/01/21


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 突如として現れた人類の敵、天魔。彼らは太陽の黒点をゲートとし、向こうの世界からこちらへ流れ込んできた。
 目的は地球という星の略奪――ではなく、地球にどこかにあるという古代神の遺産。それを手にいれんがためのついでで、地球の略奪を開始する。
 もちろん人類は抵抗したものの、彼らが生み出す大量の生物兵器、それと巨大にして強大な機動兵器によって窮地に立たされていた。
 だが人類とて指をくわえ略奪を傍観していたわけではない。機動兵器に対抗して造られた人型兵器『アウルブレイカー(AB)』、そしてそれを動かす事ができる撃退士の存在は人類にとって希望であった。
 そしていよいよ、反撃の時。煉獄艦『エリュシオン』壱番艦は太陽に向け、出発を開始。
 一方地球では、地上防衛の弐番艦、海洋防衛の参番艦、航空防衛の零番艦が撃退士達とともに、支配域を増やされつつある地球を奪還すべく、激戦を繰り広げるのであった――


●エリュシオン・格納庫
 やあ! メカニックのテッタだよ!
 マードックさんはどうしたって? 今日のためにほとんど寝ないで頑張ったから、今日は寝かせてあげてるんだ。
 前とシステムを変更したから、気をつけてね!
 ユニットの外観はあたしが責任もって変更するから、気兼ねなく言ってくださいね。それとスキルの名前は自分アレンジで呼んでくれてもいいですから。


AB1 特殊「瞬間加速装置(行動値1消費し1回、移動距離倍加)」

AB2 特殊「オーバーパワー(1回、火力を1段階or2段階、任意上昇。1段階は1T、2段階は2Tの間、再使用不可)」

AB3 特殊「予測処理(1回、ロックオンした攻撃全て必中。ただしスキルで回避される事も。1T、回避行動がとれなくなる。1T後再使用可)」

AB4 特殊「幻影(発動に5T必要だが、それ以降どんな攻撃も50%の確率で完全回避可能。スキルとの併用可)」

AB5 特殊「断絶フィールド(使用中、行動不能。かわりにほとんどの攻撃ダメージ0。高火力には貫かれる事も)」

AB6 特殊「広域ジャミング(使用中、回避2段階下降。戦闘フィールドにいる敵の回避、命中、探知に−補正)」


機体性能
攻撃C 防御C 回避C 命中C 加速C 探知C 耐久C(30)

 これに手持ちの5pを振り分け。最高でA、最低でE。どこかを削ってどこかを上げる事もできるよ?
※探知はレーダー性能。命中に補正、Aなら400m先もセンチ単位の精度で認識(A40sq B30sq C20sq D10sq E1sq)
※加速は移動距離。回避に補正、Aで10sq以降、2sq刻みでダウン。行動0・5消費ならその半分
※耐久は1段階で10ずつ増減。
※補正は1つの項目に3回かかる事でやっと1段階の変化。


 さてお次は特殊改造だね。 これも5pを自由に割り振るんだけど、改造でAより上のSやSSに踏み込む事もできるんだ! 
 でも重複取得は不可能だから、気をつけてね。


‐1p WC・武器改造(武器の火力を1段階アップ)

‐1p TS・ターゲットスコープ(モニターにスコープを映し、武器の命中を1段階アップ)

‐1p FC・フレームカスタム(フレームの反応速度を上げ、回避を1段階アップ)

‐1p PM・パノラマモニタ(映像モニターを全方位映し、回避、命中、探知に補正)

‐1p 脱・武装パージ(任意で主兵装以外の武装とほとんどの装甲を脱ぎ捨て、回避を3段階上昇。耐久は5になる)

‐1p 爆・自爆(自分を中心に半径範囲3sqにいる者すべてに、最大耐久値分のダメージ。使用後、死亡)

‐2p FF・飛行変形(行動消費0で飛行ユニットに変形・飛行可能・加速2段階上昇。飛行状態なら海と空を自由に行き来できる)

‐2p AR・自己修復(パッシブ・ターン終了時、耐久5回復)

‐2p SP・スペシャルウェポン(主兵装のリミットを解除し、10ターンの間全性能1段階上昇。効果が切れると5ターン再使用不可)

‐3p H・ハイパー化(一度だけ使用可能。発動から20ターン、全能力2段階上昇。効果が切れると3ターンの間、全能力1段階減)

‐3P 分・分身(自分の意思で操る同性能機を質ある残像として生み出す。残像は本体から4sqまでしか離れる事が出来ない。残像の攻撃も当たるが、残像はどんな攻撃でも一撃で消え去る。残像が残像を生み出す事も可能。残像は最大7機まで留まる事が出来る)

 それと今回から合体(合体したABの主兵装を保持。2体合体で全能力A。3体目以降、1体増えるごとに攻・防・耐が1段階ずつ上限なしに上昇、回・命・加に−補正。3体合体で一段階下がる。だが各機の特殊改造効果を重複できる。行動は一番高い人の数字を採用。メインパイロットはいつでも変更可。火・命S、幅3sq射程無限の超必殺技が1回撃てる。ただし合体する人間の意志がひとつにならねば合体不可。使用回数1回のみ。ターン解除はないが、任意で分離可)は通常機構として、とりいれたよ! やったね!
 ……ただちょっと、お金(500久遠)が必要なんだ。まあほら、ジゴクノサタモカネシダイって言うじゃん?

 武器の説明だけどこれもシステムが……あ、出撃要請だよ!
 武器説明はマニュアルにあるから、そっちを参考にして、すぐ着替えきなよ! ばっちり、仕上げてあげるから、みんながんばってね!
 オープニングテーマ? ごめんねーあたしカットしちゃう人なんだ。



……Now Loading……Now Loading……Now Loading……




●分厚い雲の中を行く
 陸部隊に合わせ、零番艦は極寒の地の上空に進路を取っていた。
 そこのゲートコア(GC)は空中要塞というより、天候制御装置としての役割を担っている。そのため、雲の中にその身を隠しているのであった。
「厄介なこと、この上なしだね。おまけに通常のセンサーは全滅。アウル計器だけがかろうじて、か」
「ここはすでに支配領域内、ということなのでしょうね」
 ミル艦長の傍らに立つ御神楽百合子副館長へ、頷いて返す。
「という事だな。雲の粒子をうまく利用してるのか、ABの探知性能も半減してしまうだろう。見えにくいし、スピード戦闘になると言うだろうが、それでも目視に頼らざるを得ない――だいぶ彼らには負担を強いるが、がんばってもらうか」
「お嬢、偵察からの伝令。すでに敵は展開済みだって」
「やはり、踏み込んだことがバレバレか――全機発進。 本艦をこの形態のまま現在座標に固定、TB隊は全力で防衛にあたれ。
 そしてAB隊は雲に乗じて最短最速でGCを破壊、撤収せよ。敵は必要戦闘以外、放置しておけ。どんな敵がいるか、わからんからな」

「また奴らか……雪辱、晴らさせてもらう」
「そういう事を言わないほうがいいと思うぞ? なんとなく、やられる側の口調だ」
 後ろ髪が少し長い、ブロンドの男がサドに笑いかける。
「次はやられはせん――ジャック、お前が手を貸してくれているのだしな。どういう風の吹き回しだ?」
 問われるが、後ろ髪を指ではじいたジャックは「気まぐれだ」としか答えない。
「まあいい。お前にここの防衛を任せる。俺は、前に出させてもらうぞ」
「お構いなく。いってらっしゃいっと」
 手をひらひらさせるジャック。やる気のなさにサドは眉をひそめたが、何も言わずに前進を開始する。
「さて――ここはもう守る価値がないし、ゆっくり見物させてもらうか。どれほどの動きを見せるのかを」


リプレイ本文

 零番艦の甲板の上に立つは、大きな猫型ロボット『猫神』。
「ムッフー……目標はコアにゃ!」
 マフラーがチャームポイントな黒猫が、コックピットの中で見えぬ先を見据えた。
「あれを破壊したら、ボーナス出るかにゃ? 艦長」
 問いかけられたミルが笑いながら出してやろうと答えると、黒猫――カーディス=キャットフィールド(ja7927)が小躍りする。
 モニター越しでその様子を見ていたオペレーターが、怪訝な顔をしていた。
「お嬢……あれって何?」
「流浪の猫傭兵。黒猫型宇宙人で、故郷では黒猫忍者の上忍らしい――本人曰くだけどな」
 天魔がいるからにはいてもいいかもしれないが、胡散臭さ爆発である。
「あと20秒後に本気だすにゃ」
「その間、索敵ですねー」
 OB隊に紛れていたが、ほんの少し装甲の厚いOBが飛行形態へと変形する。間下 慈(jb2391)の『OB改』であった。
 次世代量産機を目指して作られたそれは、OBとの外見的違いはほとんどない。
 ただそのわりには結局ABのシステムを一部流用する事となり、結局『一般兵では乗れないOB』という、本末転倒な機体である。
 そのため廃棄される予定だったのだが、撃退士としての覚醒が遅く、周囲の撃退士に劣等感を抱く慈与えられた。だが本人曰く、自分にぴったりだと、いささか自虐的だが喜んだものだった。
「ジャミング展開。そして探知できた範囲での敵反応を、共有いたします」
 OB改から不可視のアウルが、フィールドを覆い尽くす。そして各機のレーダーに、敵反応が表示された。
「ああ、それなりに居ますねぇ。群れなきゃ何もできないんでしょうか」
 本人にその意思があるかは謎だが、あからさまな侮蔑を口にするエイルズレトラ マステリオ(ja2224)。
 タキシードを思わせる外観、そして白と黒のツートンカラー。液体金属のマント型シールドを羽織ったエイルズレトラの愛機『マジシャン?』は一足早く出撃し、零番艦の外周をぐるぐると回っていた。
 先代である『マジシャン』は耐久性を犠牲にし過ぎたため、飛行中に空中分解を起こし大破。その遺志を継いだマジシャン?は耐久性を改善――どころか、さらに軽量化され、削りようのない装甲をさらに任意でパージできるようにしたのだ。
「そろそろ始まりますか」
 マジシャン?の後を追うように幻影が生まれると、さっさと装甲を脱ぎ捨ててしまう。さらに軽量化され、耐久性はないに等しい。
 マントで空気抵抗を減らさなければ、間違いなく先代同様そのうち空中分解するであろう、こだわりの逸品である。
 そんなマジシャン?とうってかわって、全体的にマッシブで他のABよりも一回り大きい、リオン・H・エアハルト(jb5611)の『マローダー』。
 見た目通りに耐久性は高いが、運動性は低い。ただ装甲がナノスキン構造のため、ある程度の破損は自己修復できてしまう。おまけに大型のシールドも装備しており、まさしく耐久性に優れた機体である。
「さて、お手並み拝見かな?」
「どんな装甲だろうと、撃ち貫くのみだ!」
 黒とオレンジのツートンカラーという警告色で、やや角ばったデザインの『ワイルド・ホーネット』のコックピットでは、川内 日菜子(jb7813)が拳と掌を打ち付けていた。
「完璧に叩きのめしてやるぞ」
 右腕部のパイルバンカーを振り回し、もはや待ちきれないと言わんばかりに飛びだす。その後を周 愛奈(ja9363)の『カルラ』が追った。
「……愛ちゃんと『カルラ』も頑張って戦うの!」
「さて、僕も行きますか」
 OB改が雲に紛れ、姿を消していく。
「こうも視界が悪くては……厄介ですね」
 レーダーのみを頼りに、シールドを構えながらアサルトライフルを撃つマローダー。その横を準備できたにゃと、幻影を纏った猫神が通り抜けた。
 猫神はすでにその存在が、希薄となっていた。飛行形態になっている事すらも、誰も気づいていないかもしれない。
 皆が皆、敵に悟られぬようにひっそりとしている中、とにかくまとまっているところを目指してツッコんでいくマジシャン?。
「その程度の腕で、僕を狙おうとしないで下さい」
 シュトラッサーとヴァニタスが入り乱れ、次々と羽型のミサイルやら三又の槍でマジシャン?を狙い続けるが、まるで散歩でもするかのように悠々とマジシャン?はかわし続けた。
 そしておちょくるように、わざわざ接近しながらも真っ直ぐに通り過ぎ去るのであった。
 そんなマジシャン?に気を取られているから、反応が遅れるのだ。
「愛ちゃんが援護するの! 思う存分戦って欲しいの!」
 飛びまわるマジシャン?の後を追うカルラのバスターライフルが、シュトラッサーの胴を撃ち貫く。
「まあ、やる事はやりますよ」
 距離を置いて、マローダーのアサルトライフルも、ヴァニタスの胴に直撃していた。それで落とせなくとも、カルラによるバルカンの追撃できっちり落とされる。
 そしてやっと反応した敵の間を、ビットで牽制し意識をさらに逸らして潜り抜けていくカルラ。
「……速いスピードで飛び回っていれば、簡単に攻撃は当たらないはずなの。スズメバチみたいに雄々しく戦うの!」
 通り過ぎ去るカルラに気を取られると、またマローダーのアサルトライフルをかわせない。
 そうやって存分に目を惹きつけているからこそ、余計に動きやすいのが雲に潜むOB改。
 さらに拾った情報を次々に更新し、仲間へと送っていく。
「敵位置の座標送ります――さてそろそろ狙いますか」
 すでに潜みながら、雑魚たちへのロックオンは全て果たしている。
「アシッド・オロチ。掃射します」
 そう宣言すると、OB改から30本のミサイルが一斉に飛び立ち、一直線だったり弧を描いたりしながら、シュトラッサーとヴァニタスが次々と被弾していく。
「なかなか、爽快ですねぇ」
 飛来するミサイルをわざわざジグザグに潜り抜け、自由に飛び回るマジシャン?。敵はミサイルの直撃を受けた所が煙を上げ、徐々に浸食されていった。
 その爆風に紛れ込み、さらにOB改はゲートコアを探るのであった。
 まずは射程順という定石にちなんで、マローダーへと突っ込んでいくヴァニタスがフォークを突き出すが、強化手甲でフォークを払い、意表をついてシールドの先端を頭部に突き立てる。
「シールドにはこういう使い方もあるのですよ」
 そして腹部を蹴りつけ引き離すと、カルラのバスターライフルが貫いていくのであった。

「生かして帰さんぞ!」
 雲を行くOB改の前にホワイトシェイドが立ち塞がり、長大なエネルギーブレードを振り下ろす。
 だが決して接近せずに後ろへと下がり、アシッド・オロチを射出していた。
「強敵遭遇……情報送ります!」
 下がりつつ情報を送るOB改に、アシッドオロチを数発受けながらも前へと詰めてくるホワイトシェイド。
「荷が重いですが……やるしかないか」
 覚悟を決め、操縦かんを握りしめた時、雲の隙間から黒とオレンジの警告色が飛びだす。
「当たると痛いぞ!」
 距離を詰めたワイルドホーネットが、やや反応の遅れたホワイトシェイドにパイルバンカーをぶちこむ。
 腐食された腕で受け止められたと判断した時、すでに胴体へと狙いを定めていた。
「零距離……取ったぞ!!」
「取られたの、間違いだろう」
 射出されていたインプアタッカーがワイルド・ホーネットの背後を襲い、その機体を激しく揺らす。
「く……まだだ、まだいける! ここは私の距離だッ!」
 損傷をしながらも、迫りくるエネルギーブレード。そこにOB改のバルカンがホワイトシェイドの視界を塞ぐようにばら撒かれると、意識の逸れたブレードへバンカーを撃ちこみ、火花を散らし受け止めていた。
 横へ流し、距離を取ろうとしたところへまたもインプアタッカーの攻撃が。しかし今度はシールドでちゃんと受け、流す。
 それでも距離を詰めようとするホワイトシェイドがブレードを掲げたが、マローダーのアサルトライフルに反応して横へと身体を捻る。
「やらせないって言ったでしょ?」
「小癪な奴め……!」
 狙いを変え、マローダーへ突進するホワイトシェイドへチェーンガンで牽制しながら、再びワイルド・ホーネットがバンカーを構える。
 不意打ちではない、ほぼ真正面からの打ち合い。無謀とも言える――が、日菜子は楽しそうに笑う。
「分の悪い賭けは嫌いではない!」
 分が悪いどころでない賭け。バンカーが虚しく空を切る。
「お前はこれで落ちておけ」
 至近距離からのグラビティボム。直撃を受けたワイルドホーネットが爆風に押され、吹き飛ばされる。そして重力場の波が潜んでいたOB改にも、多大なダメージを与えた。
「メインブースターがイカれただと……ッ!?」
「く……まだ落ちませんよ」
 半分は削られたOB改。しかしホワイトシェイドの狙いは、マローダーに向けられていた。先にインプアタッカーが纏わりついていたが、装甲と盾でしのいでいる。
「伊達に盾と装甲取りつけてるわけじゃないってね!」
「次は貴様だ!」
 そう叫んだ瞬間、彼の目の前をただの偶然だが、マジシャン?が通過していった。狙って通過したわけではなく、本当に、たまたま。
「あの機体……この前のやつに似ている……!」
「サド、俺にも遊ばせろ」
 通信にサドが驚いた。
「ジャック! 防衛はどうした!?」
「どうせそれほど重要な物ではないだろ。それにここを狙われた時点で、アレはほぼ落とされたようなものだ。
 それなら少し楽しんでもいいだろう? お前も狙いたいのがいるようだしな」
 しばしの沈黙。
 そして何も言わずサドは、マジシャン?の後を追うのであった。
「連中は早い。この大型マローダータイプでは……追い付けんか」
「まだ――強い反応来ます」
 慈の警告にサドへの追撃を諦め、機体限界値を超えてチャージしていたアウルをアサルトライフルに込め、新たな反応に向けて放つ。
 それがファントムシェイドに直撃した――ように見え、ぼんやり半透明と化しているファントムシェイドの身体を通り抜けていった。
「無駄玉使ってる場合じゃあないぞ、人類」
 周囲に火の玉とナイフがぼんやり浮かび上がり、複数の火の玉が高速でマローダーに飛来し縦横無尽に機体へ体当たりを繰り返す。「く、機体が重くて小回りが……!」
「落とさせませんよ!」
 OB改のミサイルオロチが一斉に、ファントムシェイドに狙いを定め飛んでいく。だがそれを、空中に浮かんだナイフをジャグリングして投擲し、次々に迎撃する。
 数的にはミサイルオロチのが圧倒的なため、さすがに全部は捌ききれなかったようで数発直撃を受けるのだが、またもすり抜けていく。
「まだまだだ。まだ足りないぞ、その程度の攻撃じゃあな!」
 ジャックが叫び、OB改との距離を詰めると空中に浮かんだナイフに裏拳をかまし、OB改に突き立てる。動揺に蹴りつける際も、ナイフを押し込むように蹴りつけ、深々とOB改に潜りこむ。
「落とさせないの!」
 フルチャージのバスターライフルがファントムシェイドを貫く――がもちろん、無傷であった。
 だがそれでも退くだけの隙はできたOB改。だが小爆発を繰り返し、コックピット内ではレッドランプが点灯、アラームがけたたましく鳴り響く。
「くぅぅぅ……もはやこれまでか」
 その瞬間、慈は覚悟を決めた。そして何よりも、彼の中のどす黒い敵意がジャックに向けられていた。
(それだけの才能が有りながらも、人類の敵に回るだなんて……!)
「戦線、離脱します。後の事は……頼みました」
「了解。任せてください」
 静かにそう告げリオンが応えると、OB改はファントムシェイドに背を向け――後ろ向きの全速で、突っ込んだいった。
「これが凡人の……僕の……意地です」
 OB改が膨らむ。それがどういう意味か真っ先に察したジャックが、なぜか声を荒らげる。
「あほう!」
 ファントムシェイドは貫手でOB改のコックピットを貫き――OB改の爆風に巻き込まれるのであった。

「むっふーん。艦長さん、指定の座標に大口径キャノンぶちこむにゃ」
「よし来た」
 カーディスの指定した座標を、零番艦の大口径キャノンが薙ぎ払う。ゲートコア近辺にいた3機のシュトラッサーが、不意の攻撃になすすべもなく、大破していった。
 かろうじて範囲から逃れていたヴァニタス1機――猫神は機体性能をフルに使いひっそり全速で回り込むと、背後に立ちコックピットを忍刀で穿つ。
「貴様も死にゆく定めだったのにゃー!」
 少し目立ってしまった猫神に注目が集まり、ゲートコアに寄り添うよう守っているシュトラッサーからミサイルが撃ち込まれる。
 それを肉球でそっと押し、受け流す。
 お返しと言わんばかりに浮遊していた毛玉ビットが、にゃにゃー言いながら広範囲にわたって影を凝縮した棒手裏剣を次々に吐き出す。
 その間に、猫神は再び己の存在を希薄と化す。
 回り込み、回り込み――チキッと忍刀の鯉口を切った。
「猫神よ! 全ての力を出すにゃーーー!」
 不意を打ち、機体性能の限界まで加速しゲートコアへ真っ直ぐに突き進む猫神。通り抜け様に鈍い光が一閃し、疾風が切り裂かれる。
「任務、完了にゃ」
 忍刀を鞘に納めると、遅れてゲートコアが中心からスライドし、大爆発を起こすのであった――

 雲が晴れ空間が元に戻りつつあるのに気付いたサドが、支配領域が解け、天気が本来あるべき姿に戻ろうとしている事を理解した。
 つまり、ゲートコアが破壊されたのだと。
「く、貴様は囮か……!?」
「何を言ってるんですかねぇ。勝手についてきたのは貴方ですし、僕は貴方なんて相手にしていませんよ?」
 さんざんシュトラッサーとヴァニタスの間を通り抜け、なおかつホワイトシェイドの攻撃すらも悠々と回避していたマジシャン?だが、エイルズとしてはただ、今この瞬間を楽しんでいただけでサドなんてもともと眼中になかった。
「くそう、くそう、くそう! 撤退だ!」

 零番艦の甲板に、ワイルド・ホーネットが横たわっていた。
 操縦不能になって墜落かと思っていたのだが、吹き飛ばされた先がちょうど零番艦の上だったのだ。恐るべき強運である。
 甲板の上で心配そうに声をかけてくれている仲間達に、日菜子は嬉しそうに微笑んだ。
「私にはまだ、帰れる場所があるのだ。こんなに嬉しいことは無いな……」

 そしてもう1人。
 意識を失っているが無傷の慈をファントムシェイドの手から担ぎ上げ、凍てつく大地にそっとジャックが寝かせる。
「お前らが死んでは、困るんだ。俺達がこうしている意味がなくなってしまうからな――」
 そして意識を取り戻しそうな慈が目覚める前に、救難信号を出してその場を静かに去るのであった――




 サドは今回もしてやられたりだが、恐るべきはファントムシェイド。だが自爆する機体から慈を助け出したジャックの、いや、ジャックの言う『俺達』の真意とは!?

【初夢】煉獄艦エリュシオン2空  次回へ続く!


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
ウェンランと一緒(夢)・
周 愛奈(ja9363)

中等部1年6組 女 ダアト
非凡な凡人・
間下 慈(jb2391)

大学部3年7組 男 インフィルトレイター
撃退士・
リオン・H・エアハルト(jb5611)

大学部3年264組 男 ルインズブレイド
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅