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マスター:楠原 日野
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/01/19


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 突如として現れた人類の敵、天魔。彼らは太陽の黒点をゲートとし、向こうの世界からこちらへ流れ込んできた。
 目的は地球という星の略奪――ではなく、地球にどこかにあるという古代神の遺産。それを手にいれんがためのついでで、地球の略奪を開始する。
 もちろん人類は抵抗したものの、彼らが生み出す大量の生物兵器、それと巨大にして強大な機動兵器によって窮地に立たされていた。
 だが人類とて指をくわえ略奪を傍観していたわけではない。機動兵器に対抗して造られた人型兵器『アウルブレイカー(AB)』、そしてそれを動かす事ができる撃退士の存在は人類にとって希望であった。
 そしていよいよ、反撃の時。煉獄艦『エリュシオン』壱番艦は太陽に向け、出発を開始。
 一方地球では、地上防衛の弐番艦、海洋防衛の参番艦、航空防衛の零番艦が撃退士達とともに、支配域を増やされつつある地球を奪還すべく、激戦を繰り広げるのであった――


●エリュシオン・格納庫
 やあ! メカニックのルッタだよ!
 マードックさんはどうしたって? 今日のためにほとんど寝ないで頑張ったから、今日は寝かせてあげてるんだ。
 前とシステムを変更したから、気をつけてね!
 ユニットの外観はあたしが責任もって変更するから、気兼ねなく言ってくださいね。それとスキルの名前は自分アレンジで呼んでくれてもいいですから。


AB1 特殊「瞬間加速装置(行動値1消費し1回、移動距離倍加)」

AB2 特殊「オーバーパワー(1回、火力を1段階or2段階、任意上昇。1段階は1T、2段階は2Tの間、再使用不可)」

AB3 特殊「予測処理(1回、ロックオンした攻撃全て必中。ただしスキルで回避される事も。1T、回避行動がとれなくなる。1T後再使用可)」

AB4 特殊「幻影(発動に5T必要だが、それ以降どんな攻撃も50%の確率で完全回避可能。スキルとの併用可)」

AB5 特殊「断絶フィールド(使用中、行動不能。かわりにほとんどの攻撃ダメージ0。高火力には貫かれる事も)」

AB6 特殊「広域ジャミング(使用中、回避2段階下降。戦闘フィールドにいる敵の回避、命中、探知に−補正)」


機体性能
攻撃C 防御C 回避C 命中C 加速C 探知C 耐久C(30)

 これに手持ちの5pを振り分け。最高でA、最低でE。どこかを削ってどこかを上げる事もできるよ?
※探知はレーダー性能。命中に補正、Aなら400m先もセンチ単位の精度で認識(A40sq B30sq C20sq D10sq E1sq)
※加速は移動距離。回避に補正、Aで10sq以降、2sq刻みでダウン。行動0・5消費ならその半分
※耐久は1段階で10ずつ増減。
※補正は1つの項目に3回かかる事でやっと1段階の変化。


 さてお次は特殊改造だね。 これも5pを自由に割り振るんだけど、改造でAより上のSやSSに踏み込む事もできるんだ! 
 でも重複取得は不可能だから、気をつけてね。


‐1p WC・武器改造(武器の火力を1段階アップ)

‐1p TS・ターゲットスコープ(モニターにスコープを映し、武器の命中を1段階アップ)

‐1p FC・フレームカスタム(フレームの反応速度を上げ、回避を1段階アップ)

‐1p PM・パノラマモニタ(映像モニターを全方位映し、回避、命中、探知に補正)

‐1p 脱・武装パージ(任意で主兵装以外の武装とほとんどの装甲を脱ぎ捨て、回避を3段階上昇。耐久は5になる)

‐1p 爆・自爆(自分を中心に半径範囲3sqにいる者すべてに、最大耐久値分のダメージ。使用後、死亡)

‐2p FF・飛行変形(行動消費0で飛行ユニットに変形・飛行可能・加速2段階上昇。飛行状態なら海と空を自由に行き来できる)

‐2p AR・自己修復(パッシブ・ターン終了時、耐久5回復)

‐2p SP・スペシャルウェポン(主兵装のリミットを解除し、10ターンの間全性能1段階上昇。効果が切れると5ターン再使用不可)

‐3p H・ハイパー化(一度だけ使用可能。発動から20ターン、全能力2段階上昇。効果が切れると3ターンの間、全能力1段階減)

‐3P 分・分身(自分の意思で操る同性能機を質ある残像として生み出す。残像は本体から4sqまでしか離れる事が出来ない。残像の攻撃も当たるが、残像はどんな攻撃でも一撃で消え去る。残像が残像を生み出す事も可能。残像は最大7機まで留まる事が出来る)

 それと今回から合体(合体したABの主兵装を保持。2体合体で全能力A。3体目以降、1体増えるごとに攻・防・耐が1段階ずつ上限なしに上昇、回・命・加に−補正。3体合体で一段階下がる。だが各機の特殊改造効果を重複できる。行動は一番高い人の数字を採用。メインパイロットはいつでも変更可。火・命S、幅3sq射程無限の超必殺技が1回撃てる。ただし合体する人間の意志がひとつにならねば合体不可。使用回数1回のみ。ターン解除はないが、任意で分離可)は通常機構として、とりいれたよ! やったね!
 ……ただちょっと、お金(500久遠)が必要なんだ。まあほら、ジゴクノサタモカネシダイって言うじゃん?

 武器の説明だけどこれもシステムが……あ、出撃要請だよ!
 武器説明はマニュアルにあるから、そっちを参考にして、すぐ着替えきなよ! ばっちり、仕上げてあげるから、みんながんばってね!
 オープニングテーマ? ごめんねーあたしカットしちゃう人なんだ。



……Now Loading……Now Loading……Now Loading……




●静止したデブリ地帯
 一切の運動エネルギーを持たず、その場で漂うだけのデブリ地帯。そこに紅蓮の悪魔・ジーンがデブリに張り付き、ひっそりと待っていた。
「次こそは、やってやるよ……!」
「次と考えるから、貴様はダメなのだ。全てに次が無いと思え」
 淡々と、ややくすんだブロンドの女性がジーンをたしなめる。
「あんなやつらに負けるだなんて、考えるわけないだろう? エミナ」
「たとえ相手が格下だろうが、それは個々の能力での話。どんな相手でも負ける可能性は存在するのだと、一切の驕りを捨てろ。でなければ、負けんとするための思考が働かん。肝に銘じておけ」
 そしてそれっきり、一方的に通信が途絶える。
 ジーンは苦々しく、エミナの乗る『レッドシェイド』を睨み付け、舌打ちする。
「……ッチ。人のくせして色々癪な小娘だね」
 だがそれでも何も言えない。自分とはまるで別次元と呼べるほど格上の存在なのだから。
 それ以上の文句を噛み殺し、ジーンもただ黙って壱番艦が来るのをジッと待ち続けるのであった

「デブリ地帯か……迂回したいけど、そんなことしてたら何日無駄にするか、だもんね」
「と、考えるだろうから敵も待ち伏せしているのでしょうね」
 黒松 理恵艦長の言葉に、冴木少尉が続けた。
 それは言われるまでもない――そんな顔で理恵はムスリとするが、冴木が苦笑して頭をなで繰り回すと、照れながらその手を払いのける。
「いまでこそABで盛り返しているように見えるけど、あいつらがこっちを軽視しなくなって大攻勢に転じられたら、人類はどうしたって勝てっこない。だから、無理をしてでもいそがなきゃね」
「敵反応です! デブリに擬態したディアボロ、センサー異常により数は把握できません!」
 立ち上がった理恵が手をかざす。
「やっぱりね。全機発進! 壱番艦の道を確保せよ!」


リプレイ本文

 翼のような背面の推力偏向スラスターと、脹脛側面の推力偏向スラスターの他、全身に多数のスラスターを装備したAB『エクリプス』がカタパルトへ。
「ナイトヘーレだ。エクリプス、出るぞ」
 ナイトヘーレ――皇 夜空(ja7624)が淡々と告げると、デブリ群へと射出される。
「兄さんのようにはいかないでしょうけど、僕なりのやり方を見せてあげましょう――マーナガルム、発進します」
 イアン・J・アルビス(ja0084)の乗る4足歩行型AB『ハティ』の改造機『マーナガルム』が滑走路を駆け抜け、宇宙空間へと跳躍する。
 続けざまにレーザーガトリングガンを携えたAB『鵬挙』がカタパルトへ。パイロットは若干11歳の少年、楊 礼信(jb3855)であった。
「……僕と『鵬挙』の初陣か。皆の脚を引っ張らないように、頑張らないといけないな」
(それに、地球でもがんばってるんだしね)
 地球でABに乗って頑張っている、大切な人の顔を思い浮かべると自然と笑みがこぼれる。これから命のやり取りが待っているというのにもはや、怖くない。
「楊 礼信、鵬挙。出ます」
 平常心で、礼信の鵬挙が飛び立つ。
(今日も誰1人、欠ける事無く生き残ってみせます)
 笑顔を護るために天魔側を抜け、人間側についた悪魔・ユウ(jb5639)中尉が今日も誓いを繰り返す。彼女にとって、共に戦う仲間が――いや、この艦にいる全員が家族なのだ。
 だから、誰も亡くしたりはしない。
「ベネボランス、出撃します」
 試作型AB支援機『ベネボランス』が出撃する。
 そして共に生き延びる事を考えているのが、もう1人。
「まだ始まったばかりであります、こんなところで終わるわけには、いかないのであります」
 黒くあるが孔雀を思わせる独特なフォルムの、特殊粒子炉搭載機『虹孔雀』の中ではシエル・ウェスト(jb6351)が指を鳴らしていた。
「その通りよ。まだまだ道のりは、長いんだからね」
 冴木少尉の『ブルーファントム』が虹孔雀の横を通り抜け、滑走路から跳躍して飛んでいく。それの後を追い、虹孔雀がナナイロ粒子の尾を引き飛び立った。
 そして全身を鎧で覆った戦乙女が如き決戦仕様の『ラ・ピュセル』が、ゆったりとした動作でカタパルトに。
 ラ・ピュセルの中では、夢前 白布(jb1392)が目を閉じ呼吸を整えていた。
(守るべき未来は『今』なんだ。決して遠くにあるわけじゃない――だから、今エースになる。
 そして守った未来を地球の皆に手渡すんだ。どんなに強い敵が立ち塞がっても、きっと突破してみせる)
 目をゆっくり開く。発進の合図だ。
(そして、僕達の最後の希望を掴んでみせる!)
「夢前白布、ラ・ピュセル”ワルキューレ”……行きます!」

 無数に浮かぶデブリ群の中、常にフルバーニアという恐るべき速度でデブリを蹴り、直線的かつ鋭い立体軌道で駆け抜けるエクリプス。
「これで!」
 ラ・ピュセルが手榴弾を投げつけると破裂し、蹴られて流れてきたデブリに向け無数の破片が降り注ぐ。
 自らには当たらぬようエクリプスはデブリを後ろへ蹴り続け、飛び交う破片とデブリの中を進み続けた。
「障害物は排除だ」
 虹孔雀がグレネードランチャーの甘果とビットの酸果で、運よく逃れたデブリを撃ち落してく。
「道が開けると、楽なものね」
 デブリやボウラー以外に警戒しつつ、ブルーファントムが3人を追う。
「ここはまだ僕の出番じゃないですね」
 追いかけながら常にデブリの動きを観察している、礼信。
「少し、速度差がありすぎますかね。仕方のないことですが」
 本来なら速度こそが長所であったハティ型のマーナガルムは、思いのほか速度が出ていなかった。生存性を高めようと装甲を積んだ事で、速度が低下してしまっているのだ。
 無論、その分防御力が上がっているので仕方のない対価である。
 そして一番遅れているのは、TB隊を引き連れた支援機であるベネボランスだが、誰よりも広範囲のレーダーではすでに敵を感知していた。
「LS起動、各ABとのリンク開始」
 リンクスステムが起動し、データーの相互通信が行われ、共有化を果たす。
「……完了。皆さん、リンクの確認をお願いします」
「こちらナイトヘーレ。システムは正常に作動した――まずは狙い撃つ。ミサイルオロチ、全弾射出」
 30発のミサイルが射出され、それは生き物の如き動きでデブリを避け、デブリに扮したディアボロ『ボウラー』へ次々にピンポイントで直撃する。自立誘導ではなく、画像誘導のためなせる業である。
 もちろん、そのぶん夜空の負担も並ではない。だからこそ独立型支援ユニットを搭載しているのだ。
『マスター、左方より接近。ナックルの使用を提案します』
「わかっている」
 変則的に飛んできたボウラーを、受け流す様に超振動の裏拳を叩き込み、弾く。弾かれた先に待ち構えていた鵬挙のビットが、撃ち貫いた。
「レーダーじゃすぐ横のデブリと見分けつかない場合もあるんだ。点じゃなく、面攻撃開始!」
 レーザーガトリングを最大角にまで広げ、広範囲にわたって攻撃する。
 凄まじい連射性能を誇っていて、範囲を広げれば扱いにくくなるものだ。それでもしっかりデブリとボウラーを狙い、味方には一切当てないという高い命中精度があってこその芸当を、披露していた。
 そんな最中でも、ボウラーとデブリの観察をかかさない。
「……デブリの動きは、玉突きを利用しているだけ。いくら複雑に見えても法則性はあるはず――ならば、それを見切れば十分に戦いようはある」
 すっと飛んできたデブリを横にかわし、不自然な挙動で飛んできたデブリ――ボウラーを狙って撃ち落す。
「皆さん、警戒してください。まだ距離はありますが、膨大なエネルギー反応を探知しました」
 皆のレーダーにも、その反応が映し出された。
「どう考えても、指揮官機でしょうね。
 見分けがつきにくいくらいでボウラーは思ったほど数もいませんし、この際、TB隊の皆さんにお任せしてしまって僕達は指揮官機を狙いましょうか」
「そうですね。ついでにデブリの処理もお願いしましょう」
「ではTB隊の隊長さんに私が、位置情報等伝えましょう。
 そのかわり、指揮官機との直接戦闘はお願いしますね――ジャマー展開、ビット最大数射出」
 ベネボランスを中心に、不可視のアウルがフィールド全体を覆い尽くす。10基のビットとTB隊を引き連れ、常に周囲へ気を配る。
「雄人さん、その場で停止してください!」
 TB隊員の1人を名指しで指示を出すと、停止した隊員の目の前をベネボランスのアサルトライフルの弾が通過。直撃コースだったデブリを粉砕する。
「ここは心配いらないな――人の力を増幅するマシーンだ。
 お前はそのために作られた。人の心を、悲しさを感じる心を知る人間のために……」
 はっきり敵と呼べる強大な存在が控えている先を、夜空が見据えた。ほんの微かだが、紅い機体が見える。
「行くぞ『侵食(Eclips)』」
 真っ直ぐに加速する。
 周囲の空間ごとデブリを凍結させたラ・ピュセルが、赤い機体を睨み付けた。
「ここからはもう短期決戦だ――勝利の未来を見せろ。ヘブンズヴォイス、起動!」
「短期決戦、上等でありますな。ハイパーモード!! 桜花爛漫!!」
 虹孔雀が煌びやかな尾、光子ガトリングガン『桜火』を広げ、黒色の機体は艶やかな光沢を帯びる。
 デブリの間断を縫うように黒一色の世界が、七色の光の尾によって染め上げられていった。
「早いわねぇ」
「僕らも行きますか、マーナガルム」
 イアンに応える様に、マーナガルムのエンジンが吼える。
「援護は任せてよ!」
 ビットを引き連れ、鵬挙も目指すのであった――

「この距離からなら、一気に行ける」
 ジーン機に狙いを定め30本のミサイルを放ち、先ほどよりも鋭く高速で飛来するミサイルに紛れ、エクリプスが爆発的な加速で一気に距離を縮める。
「そんなもんが、なんだい!」
 8本の触手の先端から広範囲にわたって拡散ビームが放たれ、ミサイルが次々に撃ち落される――が、エクリプスは距離を詰め切らずにデブリを蹴って急制動をかけると、8本の矢のような光弾を放ち後ろへ下がる。
 触手が2本潰され、本体にも1本突き刺さる。だが、少し浅い。
「く……そんな程度、効かないよ!」
「こちらも同じですね。当たっても効かなければ、どうということはないのです」
 拡散ビームの雨にさらされながらも装甲に物を言わせ真っ直ぐに距離を詰めた、マーナガルム。ジーンが反射的に小型のミサイルを撃つが、イアンも同じように反射的に圧倒的な数のミサイルで撃ち落す。
 そして残ったミサイルがジーンの機体を激しく揺さぶり、近距離からのミサイルにビームを照射する触手の先端が、使い物にならなくなっていた。
 もちろん、狙ってみせたのだ。
「さぁ、殴り合いといきましょうか!」
 イアンがコックピットで吼えると、ジーンの確かな視線を感じた。
「上等じゃないかい!」
 触手を鞭のようにしならせ、マーナガルムに叩きつける。
 だがメインである拡散ビームにすら耐えたその装甲の前には、児戯に等しい。そんな攻撃など一切無視して、4本脚を押しつけそのまま加速。大きなデブリに組み伏せる。
「こんなもの……!」
「逃げ出すのは難しいと、僕は思いますよ」
 装甲が固く重い4本脚でデブリに貼りつけるよう組み伏せてしまえば、イアンの言う通りに抜け出すのは至難であった。ましてやジーンのScarlett Greedは、戦闘機の様な平たい形状。
 手も足も出ないとは、このことである。
「さらに、こんなものもあるんですよね」
 尻尾の先端を見せる。それはナイフさながらに、鋭かった――もうこうなると、一方的にメッタ刺しである。
 ただ、尻尾の動力では一撃一撃が非常に軽い。だからこそ何度も刺すのだが、なかなかラチが明かない。
 そこへ。
「横に避けろ、イアン君」
 夜空からの通信。
 瞬時にジーン機から離れたマーナガルムの横を、ソニックグライダー形態となった最高速のエクリプスが超高速で過ぎ去り、その先端がジーン機のコックピットに突き刺さる。
 そこからさらに爆発的に加速し、ジーン機ごとデブリを突き抜け、2つ、3つとデブリを貫いて、4つ目にしてやっと突き刺さって停止した。
 完全に沈黙した、ジーン機を縫い付けて。
「浸食、完了」

(この気配……もしかして!)
「エミナ――エミナ・スチムなの!?」
 レッドシェイドから感じた気配に、思わず冴木が叫ぶ。
「久しいな、冴木。私の相手はお前か?」
 エミナの名前に、一同が一瞬、恐れおののく。
(かつて冴木少尉よりも才ありと言われていた彼女に、どこまで太刀打ちできるかわからないけれど――)
「エミナ・スチム……お前の相手は僕だ!」
 焼夷手榴弾を投げつけ、辺りを焼き尽くす――前に、レッドシェイドが恐るべき速度でラ・ピュセルとの距離を詰め縦切りからの、一歩踏み込んで横切り。
 それを横に後ろにとかわしたラ・ピュセルが、お返しにとランス型のハルバード『ユニコーンホーン』の4連突き。機体を少し捻るだけでかわすレッドシェイドへ、横から鵬挙のレーザーガトリングは襲う。
 それは距離を開ける事で、かわしてみせた。
「ここでも私は足止め担当っと」
 鵬挙の陰からぬっと姿を現した虹孔雀の桜火が火を噴き、レッドシェイドの周囲にあったデブリを次々と弾いてその挙動を妨害しようとする。
 そして後ろからブルーファントム。前からはラ・ピュセルが距離を詰める。
「どれ。お前達はかわせるか?」
 レッドシェイドの両腕が、掻き消える。
「後ろです!」
 ユウの警告に2人が反応。後ろを見るよりも早く、なんとなくの感覚で斬撃をかわしてみせた。
(腕だけを空間転移……!?)
 ブルーファントムの後ろにあるレッドシェイドの片腕に、目を見開く白布。
「まだ終わりではないぞ」
 8基のインプアタッカーが飛来。それが2基ずつに分かれて4人を同時に襲う。
「このくらい!」
 当たれば沈むラ・ピュセルは、余裕を持ってかわす。ブルーファントムはやや危なげなようにも見えるが、攻撃そのものは物干し竿で受け流していた。
 鵬挙に関しては耐え忍んだ、としか言えない。そしてアタッカーの攻撃をかわす、虹孔雀。鵬挙に回っていた2基まで合流し、さらに追撃をかける。
 だが虹孔雀は幾重もの残像を見せつけ、まるっきり的を絞らせない。
「舐めてもらっては困る。この機体が虹たる由縁をお教えしましょう」
 尾が二重に増え、そして2機の虹孔雀が七色尾を引きながら飛翔しているのが、全員の目に映った。
 そのうちの1機から、ビームが放たれる。それにインプアタッカーがまとわりついてビームを降らせると、小爆発が起こった。
「ふん、その程度か――」
 だが虹孔雀からビットの残骸が出てきた瞬間、息をのむエミナ。
 その僅かな隙を見逃さない。
「いっけぇー!」
 機体の計器が振り切り、高火力となったガトリングガンがエミナに直撃した。それにビットも交え、まとわりつかせる。
「悪くないが、その程度では私を倒せんぞ」
「左舷より敵機接近」
 ユウの声がエミナの脳裏に直接届く。
(左?)
 敵からの声だというのに、エミナは思わず反応してしまった。意識がビットに向いていたせいもあるが、異常とも言える反応速度が仇となった。
 最大級のチャンス。
 ヘブンズヴォイスの超演算が『完全なる未来予測』を打ちだした。
「僕は、皆を護れるようなエースになるんだーッ!」
 コックピットへユニコーンホーンが突き刺さる未来の見えた白布が叫び、トドメの一撃を繰り出す。
 ――だがしかし。
 完全なる未来予測をさらに上回る、エミナの反応。未来をほんの少しだけ変えてみせた。たった数cmの移動で、コックピットへ突き刺さるはずのホーンが、ほんのわずかに逸らされる。
 こうなると、途端にラ・ピュセルがピンチである。それを見越して、虹孔雀が電磁ネットをレッドシェイドへ放った。
 絡みつくネット――だがレッドシェイドはもがく事もせず、ただじっとしていた。
「……悪くはないのが育ってきている、か」
 やっと流れてきたエミナの第一声。死んではいなかったようだが、通信のかすれ具合から機体への損傷は十分大きいものだと伺わせてくれた。
「だがそれでも、まだ足りん――もっと精進しておくのだな」
 ゲートが開き、レッドシェイドを包み込む。
「待ちなさい!」
 冴木の制止も虚しく、ゲートが消え去った時にはすでにレッドシェイドの姿も消え去っていた――

 全機の撤収が始まったが、白布だけは動かず、MIAとなった尊敬する先輩へ語りかけていたのだった。
(先輩……僕はここで頑張っています)




 強敵エミナ・スチムを1人もかける事無く、撤退させることに成功した壱番艦。それでも太陽への道のりはまだまだ長く、険しい。
 負けるな! 人類の希望達よ!
【初夢】煉獄艦エリュシオン、次回へ続く!


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 神との対話者・皇 夜空(ja7624)
 Little Brave・夢前 白布(jb1392)
重体: −
面白かった!:5人

守護司る魂の解放者・
イアン・J・アルビス(ja0084)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
神との対話者・
皇 夜空(ja7624)

大学部9年5組 男 ルインズブレイド
Little Brave・
夢前 白布(jb1392)

高等部3年32組 男 ナイトウォーカー
闇を解き放つ者・
楊 礼信(jb3855)

中等部3年4組 男 アストラルヴァンガード
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
久遠ヶ原から愛をこめて・
シエル・ウェスト(jb6351)

卒業 女 ナイトウォーカー