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マスター:クロカミマヤ
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:8人
サポート:5人
リプレイ完成日時:2012/01/10


みんなの思い出



オープニング

●島に潜む、闇

 久遠ヶ原島の外れ、うらぶれた路地。
 風紀委員会に縁のある知人から頼まれて、
 桐江 零(jz0045)は島のはずれに存在するという違法風俗店を摘発すべく、調査を続けていた。
(違法風俗ねぇ……。確かにこの島は治安が良くないけど、そんなものが本当に……?)
 半信半疑ながらも、順調に調査を進める桐江は、
 『どうやら拠点になっているらしい』ビルの存在を突き止めたのだが……。

「……、……」
「……!」
 地下へ続く階段の前で、黒服をまとった二人の男が密談を交わしていた。
 遠目でよく見えないが、ヒヒイロカネと思しきものを手にしている。
 大方、学園をドロップアウトして闇稼業に身をやつした者たちなのだろう。

 何らか言い争う声が聞こえるが、男たちが何を話しているかは、ここから伺い知ることは出来ない。
 ……だが。
(背の高い男が連れている少女――、未成年かな)
 胸元のざっくりと開いた扇情的な衣装を着せられ、憂えた表情を浮かべる十代半ばほどの少女。
 まるで地獄でもみたかのように、顔色がすぐれない。体中にあざがあり、明らかに無理を強いられているのがわかる。
 ……と、そのとき。
「――!」
 男が少女の胸を強く押した。反動で少女が、コンクリート造りの壁にぶつかり、崩れ落ちる。
(――っ! 何を……!)
 思わず飛び出しそうになるが、自身をなんとか諌める。
 ここで出て行っても、根本の解決には至らないことは明らかだ。
 自分にできることは、すべきことは、風紀委員への報告であって少女の保護ではない。
 桐江は目を伏せる。

(ん? 待てよ)
 違和感。
 うっすらと目を開け、桐江は遠巻きに、少女の姿をじっと見つめた。
 頭を強打したようにみえた少女は、不思議なことに、体を起こして立ち上がっていた。
(――怪我をしてない。ってことは、……あの娘も撃退士? でも、それなら全身にアザがあるのはおかしいだろう)
 一般的に、撃退士の身体能力は普通の人間と比較して非常に高い。
 市民ならば大怪我をするような場面でもかすり傷程度で済むことがほとんどだ。
 ……その撃退士が、怪我をしている。
(いやな予感がする。もしかすると、違法っていうのは、……年齢のことだけじゃないのか?)
 黒服に引きずられるようにして、少女は地下の闇へ消えていく。
 さすがに一人では部が悪すぎる。誰か、手を貸してくれる人間を探さなければ。
 後ろ髪引かれる想いを抱えつつも、桐江は静かに立ち去るのだった。


●久遠ヶ原学園、とある教室にて

「……そういうわけで、力を貸して欲しいんだ」
 桐江は難しい顔をしたまま、話を聞きつけた後輩撃退士たちに向けて語った。
「正直に言って、あの地下店を潰したところで、背後にあるだろう何らかの組織までつぶせるとは思えない。
 それでも――俺たちが生活しているこの久遠ヶ原に、そんな怪しげな店があるのを許してはおけないだろう?」
 つぶやきながら、桐江は1枚の紙を取り出した。
 件の地下施設の見取り図のようなものに、赤字でさまざまな注意点が書き連ねてある。
「俺が今まで調査してきた内容を書いておいた。作戦開始までの間に熟読しておいてほしい。
 わからないところは遠慮なく質問してくれ」
 いつになく真剣な表情の桐江の言葉に、参加者たちは顔を見合わせ、頷いたのだった。


リプレイ本文

●丑三つ時に、誰が泣く
 午前2時。昼のうちは賑やかな商店街も、今はわずかに、コンビニと居酒屋の明かりが灯るだけ。
 静まり返った久遠ヶ原のはずれ。路地裏から現れては、人目を忍んで消えていく黒い人影。
「――大方、客はひいたな」
 物陰で息を潜め、それらの背中を見送る桐江 零(jz0045)。
 彼の傍には、それぞれの正義を胸に秘めた8名の後輩の姿があった。
「合意の上なら放置するけど、今回は流石に黙ってられない」
 呟く桐江。年若い撃退士たちも彼の言葉に頷き、苦い表情を浮かべる。
「アウルの力と特殊性癖。両方有する者が苦しむのは当然だろうが……だからといって捨て置く訳にもいくまい」
 口を開いたのは、入学早々に学園屈指の有名人となった下妻笹緒(ja0544)。
 トレードマークであるジャイアントパンダの着ぐるみを着込んだまま、わずかな月明かりの下で器用にペンを走らせる。
 常ならば人を和ませるその立ち姿も、今日はどこか不気味な色を孕んでいた。
「裏社会、か。実に興味深い問題だ」
「それにしたって、無抵抗の女の子痛めつけて喜ぶなんて。悪趣味すぎるでしょ」
 笹緒の言葉に繋げるように神喰 茜(ja0200)が言うと、ファティナ・F・アイゼンブルク(ja0454)も眉をひそめた。
「どこにも、このような輩はいるんですね」
「……いつの世も結局、一番恐ろしいのは『人』なのよね」
 司 華蛍(ja4368)がため息まじりに呟く。
 複雑な生い立ちゆえ、人の心に巣食う闇は嫌というほど見てきた。
 ……それでも。たとえ現実に打ちひしがれることがなくなろうと、心はいつだって敏感に悪を拒む。
 声をひそめたまま、体の奥から絞り出すように、一条 真樹(ja0212)が唸る。
「世の中に、万人に通用する正義なんて存在しないかもしれない。
 それでもボクは……ボク達は、間違っていない。この志だけは、誰に恥じる事もない!」
 勇敢な言葉。陽波 飛鳥(ja3599)も、それに賛同するように頷いた。
「許せない」
 己の無力さに、ただ、唇を噛む。
「……否、許さない」
 無意識に呟いた、そのとき。
 店員らしき影が現れる。そして申し訳程度に点されていた、表の灯りを静かに消した。
「作戦、開始だな」

●革命の狼煙は誰がために
「行くぞ!」
 青柳 翼(ja4246)が、予め用意しておいた爆竹を店内に放った。
 ドアを蹴破る音に気づき、一斉に振り向いた関係者の目を眩ませる。
「!」
 その隙を突いて、青江・S・リップマン(ja0672)が先陣を切る。ほの暗いロビーへと。
(潰すのは仲間に任せるけれど。護るのは……私!)
 事前に確認し、桐江に写真を見せてもらったのが功を奏した。
 苦無を逆手に構えたまま店内を見回し、即座に状況を把握する。
 店員風の男が2人。座席付近に、常連と思われる撃退士風の男が1人。その隣には少女が1人座っている。
 そして奥へ通じると思われる扉の傍に、1人の少女を連れたスーツの男。焦った様子で、懐に手を差し入れ――
「武器を捨てなさい!」
 男の腕めがけ、青江が飛び込みざまに一撃を放つ。
 その手の拳銃をはじき飛ばすまでには至らないものの、敵に一瞬の隙を生んだ。
「桐江さんっ」
 青江の声を合図に、盾を手にした桐江が飛び出す。怯える少女を背に庇うように男との間に割り入った。
「青柳君、もう一人を!」
「了解です!」
 ヒヒイロカネから武器を喚び出そうとする、テーブル脇の常連。
 その動きに先んじて、翼がサバイバルナイフで切りかかる。
「――退けッ!」
 早い。武装される前に、無尽の光を纏った刃が敵をとらえた。
 わずかながら、油断しきった相手に傷を負わせる。
(落ち着け、僕……! 先輩達もいる。冷静に行動すれば、いけるはずだ)
 肩を竦ませる少女を背に庇い、翼は告げる。己に言い聞かせているようにも聞こえる声色で。
「大丈夫、安心して。……僕らは、君達を助けに来たんだ」
 忌々しげな視線をこちらへ向けながら、スクロールを喚び出した客。その怒りのオーラに決して負けないように。

「ロビー内の被害者は2人か。どちらもうまく、敵から隔離できたようだな」
 背後からの増援がないかを警戒しつつ、突入の様子を後方から見守っていた笹緒が店内へ踏み入った。
「残り3人は奥の部屋でしょうか? ……とにかく、まずはここを押さえてしまいましょう」
 ファティナが呟く。返事の代わりに、茜と飛鳥が剣を抜き放つ。

●驕れる者は、塵となりて
 入口近くの黒服が、ヒヒイロカネからダガーを喚んだ。
 駆け寄りざまに繰り出した茜の太刀を、ぎりぎりのところで受け凌ぐ。
「ねえ、店員さん? この店、加虐おっけーなんでしょ。――斬らせてよ」
 心の有り様としては、互いに一歩も譲らぬ鍔迫り合い。
 しかし得物のリーチが茜を有利に傾ける。
 優勢を悟り、艷やかに笑むのはうら若き少女。可視化したアウルの力が、漆黒の焔となり相手を圧倒する。
「冗談だよ。殺すなって言われちゃったから、手加減してあげる……命拾いしたね!」
 金属が奏でる不協和音。
 せめぎ合う刃は一寸の隙も許さぬ緊迫の下。微笑みさえ浮かべる少女に戦慄し、僅かに敵が、押し負ける。
 その瞬間に勝敗は決した。
「――ァ……ッ!」
 ダガーが弾かれ、弧を描いて地に堕ちる。茜の太刀が、敵の利き腕に致命的な傷を刻んだ。
「この程度で武器を持つのが間違いだね。もう二度と持たないほうがいいと思うよ? ……あぁ、どっちにしろ持てないか」
 退屈そうに刀から滴る鮮血を振り落として――少女は再び、ひどく妖艶な笑みを浮かべた。

(客の出入りから察するに、残る客は差し引き1人。計算は合ってる……客はあの男だけだ)
 状況を冷静に分析しながら、フロアの中央を真樹が駆ける。
「……Unchain」
 小さな呟きに反応するかのように、ヒヒイロカネが煌めいた。
 光を伴い片刃の剣が現れる。柄を取り、抜き放つ。
(敵も顔が割れてる奴は全員いるね……あとは奥の部屋に、保護対象以外が何人いるか……)
 絨毯敷きの床を蹴る。体勢を低くし、飛ぶように疾走する。
 店の奥で大太刀を構える男へ、一気に詰め寄った。
「無抵抗の子を傷付ける悪人は……ボクが許さない!」
 カトラスを振りかざす。
 だが敵のほうが刹那早い。真樹は咄嗟に体勢を変え、初撃を刀身で受け止めた。
「――っ」
 骨に響く重圧。だが所詮は力押しの剣だ。奥歯を噛み締めて、耐える。
「声変わりもしてねえガキが、生意気なんだよ!」
 返す刃で斬りかかってくる敵。その後ろには、リーダー格の男の姿がちらついて見える。
 意識は桐江と少女の方に向けられてはいるが、男が持つ銃の射程は長い。
(……距離を取りたいな)
 木製のテーブルを蹴り上げ、敵の太刀を凌ぐ。そのわずかな時間で後退し、同時に背後を振り返った。
(笹緒!)
「ぱ……パンダ……!?」
 突然現れた巨体に驚く男を尻目に、スクロールを手にした笹緒が叫んだ。
「一条、右へ!」
 言われるまま、真樹が右へ跳ぶ。ほとんど同時に無尽の光球が男の足下へと着弾。床が大きくえぐれる。
「ふむ? 加減を間違えたか」
 今一つ納得いかない様子で自身の掌を見つめる笹緒。
 コンクリートの削れる音と共に、爆風で弾き飛ばされた男が、壁へ背を打ち付けた。
「ねぇお兄さん、一つ教えてあげる」
 一気に詰め寄り、崩れ落ちた男の首筋に再び剣の切先を向けて、真樹が不敵に笑った。
「……ボクは、女の子だよ」

●伯爵の名を騙るもの
 店内には、一見アンティーク調の家具や調度品にも見える、がらくためいた装飾が並べられている。
 だが、事前に伝えられていた店のコンセプトから察することができる。
 それらは古今東西、様々な場面で用いられてきた、いわゆる拷問器具たちのレプリカだ。
(ふざけんじゃないわよ……! 悪趣味にも程がある)
 桐江の盾に庇われた、少女の白い顔を見つめ、飛鳥は唇を噛み締めた。
(決めたのよ、私は。あの子達を助けるって! その為なら、何でもするって……!)
 ふつふつと胸の奥からこみ上げる想いが、堰を切り、無尽光のオーラとなって溢れ出す。
「人の痛みが分からないってんなら――ぶった斬って教えてやるわ!」
 黄金の焔を纏う少女は、上体を低く保ち、両刃の剣を手に疾く駆ける。
「気をつけて! 右……!」
 背後で華蛍が叫んだ。注意を削がれない程度、わずかに視線を横へやる。
 客と思われるダアトと翼が、わずかな間合いでせめぎ合いを続けていた。
 華蛍が右へ向き直る。彼女の掌から生まれた光の一撃は、少女を庇う翼を助けるように投じられた。
(銃の男は多少心得がありそうだけど……、ううん。大丈夫。やってみせる……!)
 胸に渦巻く不安を打ち消すように、飛鳥はガラステーブルに飛び乗った。
 男の銃撃が卓の上の酒瓶を撃ち抜く。飛散した瓶の破片と、2発目の弾が身体をかすめた。
 それでも、怯まない。怯えているわけにはいかない。進む。進まなければ。
「陽波さん!」
 飛鳥の傍を、青江の放った苦無が抜けていく。
 かわされる。だが、牽制としては十分だった。
 敵が回避行動を取った、その一瞬の隙を突くように。
 飛鳥の後ろに隠れるように立っていたファティナが動いた。
「そっちに避けることは計算済みです!」
 スクロールを構える術師に気づき、慌てて銃を持ち直すスーツの男。
 銃口はファティナの方向へ。だが、
「させるわけないでしょ!」
 一気に距離を詰めた飛鳥が、構えたリボルバーを剣で弾き飛ばした。
「……私が自由に動けるのは、アウルの力のお陰。大切なその力を悪用する輩、断じて許すことなどできません!」
 艶やかな銀髪が、光に包まれ静かに揺れる。
 身体から湧き上がる無尽の光が――可視化され、力へと変化を遂げる。
「『伯爵』を騙るあまりか、この所業。どれだけ『私達』の名を汚し、愚弄すれば気が済むのですか!?」
 スクロールを開いた少女から、光の弾丸が生まれ出る。
「貴族でも何でもないくせに……!」
 吹き出す光はまるで煉獄の炎のように、すべてを浄化する力を秘めている。
「――っ、やめろ、すべて話す! だから命だけは……!」
 情けなくも、くずおれ若人たちに縋りつく男。
「許す訳じゃないわ。……死ぬより苦しい罰を、受けなさい」
 非情な声色でそう告げ、飛鳥は剣を収めた。

●片翼の白鳥たち
 抵抗を見せた4人の撃退士を無事に取り押さえた面々。
 翼と華蛍が中心になり、持ち込んだ縄で犯人の身柄を拘束した。
「もう大丈夫よ。気をしっかりね」
 華蛍と真樹は2人の少女のフォローを。
 翼と笹緒は、客や他の関係者が戻ってくる可能性を鑑み、引き続き入口を警戒している。
 当然、捕縛済の関係者たちの監視も忘れない。
「後は、顧客リストなんかが見つかれば文句なしかな?」
「そうだな。不用意なことはできないが、手近な場所から探してみるか」
 監視を続けながらも、持ち前の好奇心ゆえだろうか、笹緒は引き出しの中などを漁り始める。
「……まだ奥が片付いてないからね。何事もなければいいけど」
 そう言って、真樹はカウンターの向こう側へ視線を向ける。
 閉ざされていた扉を開き、仲間が飛び込んでいったのは何分前だったか。

 ロビーよりもさらに薄暗い、奥の個室。
 まだ誰かが潜んでいる可能性もある。警戒を解くにはまだ早い。
 戦力を分散させないよう、茜と飛鳥が先を行く。間にファティナを挟み、退路を青江と桐江が警戒する。
 手前側の部屋から順に、慎重に扉を開いていくが……
「許せない」
 惨すぎる現実を目の当たりにし、悔しさに涙を浮かべる飛鳥がいた。
 発見した2人の少女を青江がロビーへ連れ出す間も、傷つき怯える少女の後姿に、堪えきれない涙が溢れる。
「もう少し早く来てあげられれば良かったのにね。はは……ごめんなさい……」
 肩を落とし落涙する少女の肩を桐江が優しく叩く。
「悔いても仕方ない。今はただ、出来ることを」
「……はい」
 唇を結ぶ。涙を拭い、再び立ち上がる。
「お待たせしました。次へ参りましょう」
 青江が戻ってくるのと同時に、一行は最後の個室へ足を向けた。
 扉の前で、茜が顎を引く。
「最後の女の子がいるかもしれない。それに『4人目』も気がかりだね……気をつけて行こう」
 油断はしない。武器を手に取り、壁に隠れて扉を蹴破る。
「動くな! もう逃げられ……」
 しかし。飛び込もうとした茜が、ぐっと踏みとどまる。
「神喰さん? 陽波さんも、どうし――」
 彼女らの後ろから室内を覗き込んだ青江が、絶句する。
「……あなたは」
 本能が警鐘を鳴らす。息の詰まるような威圧感。背筋を走る冷たいもの。凍りつく。……動けない。

●黎明に誓う
 5人目の少女がいた。鎖で繋がれ、腕には無数の傷。血溜りに浮く白い足。
 直視しがたい光景から、目をそらすように視線を右へやる。
 そこには――苦渋に満ちた少女の表情を、鑑賞するかのように座する女。
(こいつが『4人目』……)
「風紀委員会の差し金? なんだか嗅ぎつけるのが早くなったわね」
 淡々とした語り口。立ち上がる。女王然とした立ち振る舞い。艷やかな笑み。
(行かなきゃ。畳み掛けて、捕まえなきゃ)
 飛鳥の心は正義に燃えている。それなのに、足は竦み身体は動かない。
 茜も同じだ。動かないのではない。動けない。
 青江は苦無を構えるが、手が震えて狙いが定まらない。ファティナも同じだった。
 助けを求めるように桐江に視線を送る。だが――
「少女を解放しすぐに消えろ。そうすれば『奴』との繋がりは見つからなかったと報告する」
「!?」
「……ふ、言われなくても。そもそも証拠なんて残してない、どれだけ店を探っても出ないわよ」
 女が部屋の奥の壁を押す。隠された扉が現れ、女王はそのまま姿を眩ました。
「桐江さん、どうして……」
 裏組織との関係を匂わせる女。それをみすみす逃したことに、強い正義感を持つ少女たちは納得できない。
 だが、
「馬鹿言うな、下手したら死んでたんだぞ!」
 本当は、その場の全員が理解していた。絶対に敵わない敵であることに。
 それでも……言葉にされると、現実は心に重くのしかかる。
「これ以上は生半可な気持ちで関わってはいけない世界だ。有望な君達の未来を、今、潰させるわけにはいかない」
 唇を噛むファティナ。拳を握り締める飛鳥。そんな彼女らを諭すように、青江が言う。
「悔しいですが、もっと……強くなりましょう。そして次は――絶対に」
 逃がしはしない。
 若き撃退士達は誓う。久遠ヶ原にくすぶる闇を、いつか真実の意味で潰やすのだと。

 店は潰れ、少女は保護された。形式上の経営者も捕縛され、警察へ引き渡される。
 裏に巣食う闇は残る。訪れるのは仮初の平穏にすぎない。
 ――だが、それでも。
 考えうる最善は尽くした。
 今はこの若者達へ、素直な賞賛の言葉を贈りたい。

 明けない夜がないように……この悔しさを晴らす日は、きっと、訪れる。
 


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

血花繚乱・
神喰 茜(ja0200)

大学部2年45組 女 阿修羅
撃退士・
一条 真樹(ja0212)

大学部4年142組 女 ディバインナイト
Silver fairy・
ファティナ・V・アイゼンブルク(ja0454)

卒業 女 ダアト
パンダヶ原学園長・
下妻笹緒(ja0544)

卒業 男 ダアト
撃退士・
青江・S・リップマン(ja0672)

大学部7年184組 女 鬼道忍軍
金焔刀士・
陽波 飛鳥(ja3599)

卒業 女 阿修羅
『力』を持つ者・
青柳 翼(ja4246)

大学部5年3組 男 鬼道忍軍
挺身の巫・
司 華螢(ja4368)

大学部5年190組 女 ダアト