.


マスター:クロカミマヤ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/04/20


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

●そんな志望動機で大丈夫か?

 平成の世に訪れた、第2の就職氷河期である。
 撃退士とて氷河期に変わりはない。
 公務員の採用もウン%カットされているし、企業だって【お察し下さい】。
 いくら天魔が攻めてこようが、人員削減ができないのは撃退庁だけではない。
 警察官を全員クビにして撃退士確保! とかそういう無茶が通る訳などないのだ。
 嗚呼、なんという世紀末。次の世紀末までまだ九十年弱あるけど。

「……働いたら負けなんじゃないかと、最近思い始めた」

 久遠ヶ原の某所で、飲んだくれつつ管を巻く男がひとり。
 言わずもがな、大学部3年――就職活動真っ只中の、桐江零(jz0045)である。
 なぜかリクルートスーツ姿である。完全にスーツに着られている。
 そのくせ額には燦然と輝くネクタイの王冠。
 全く、いつの時代のサラリーマンを意識しているのだ、と鼻で笑いたくなっても仕方のない様相であった。

「学歴で左右しないとか、嘘だー! 嘘だぁぁー!
 どうせ書類の段階で『久遠ヶ原? ププー天魔でも倒してろよ』ってゴミ箱直行なんだろ、知ってる!」

 自分で言いながら涙目である。
 しかし実際、任務さえこなせば単位が歩いてくる久遠ヶ原学園。
 『一部の異端児を除いて基本的に脳筋のすくつ(なぜか変換できない)』
 という社会のレッテルも、ある種必然なのかもしれない。あくまで可能性論として。

「でもなぁ……地方公務員の撃退士とか、就職板でもトップクラスのブラック認定だし……
 やっぱホワイト大企業で相応の福利厚生を享受したいよね、どうせ撃退士続けるならさぁ。
 営業とか開発は無理でも、撃退士枠なら通るんじゃないかって思ってるんだよねー。
 SPIもほら、撃退士枠で受けてる中ではそこそこ良い方のはずだし。一応俺、模試で某国立大A判定だったし」

 誰と話しているのかいまいち定かではないが、桐江は一升瓶を抱えたまま、雄弁に語り続けるのであった。
 痛い、痛いよ! 誰かとめたげて!


●無い内定を破壊せよ

 そんな男のもとに、一通のメールが届いた。

『――就職活動に行き詰っていませんか?』

 いわゆる、就活塾の案内である。藁にも縋る思いで、桐江はメールの差出人へ電話をするのだった。

「ESで落とされまくって面接に進めません」
『上っ面だけの志望動機で大手企業ばかり狙っていませんか?』
「……!?」
『皆と同じ行動をして、就職活動をやっている気になっていませんか』
「!!」
『――図星のようですね。そんな貴方にアドバイス! 知らない会社や中小企業も視野に入れていきましょう』
「……?」
『案外、そういう会社こそ貴方を必要としているかもしれませんよ。
 就活は試験ではありません。自分を売り込む、営業活動なんです。
 あなたという商品を、使わない会社に売っても誰も得しません。
 必要とされる場所で力を発揮してこそ、仕事のやりがいが生まれるんです』

 なんだかよく分からないが、無駄に説得力のある口調で向こう側の男は語る。
 桐江の目が輝きだした。駄目だこいつ、うまいこと乗せられている!

「ありがとうございます、俺がんばります!」
『……あ、そうそう。そういえばね、私の知り合いの会社で、新卒の方を募集しているんです』
「えっ」
『小さい会社ではありますが――本当に本当に若い力が足りないんですよ。
 ぜひご一考ください。きっと貴方の力を必要としていますから』
『 』

 まんまと乗せられた桐江青年。
 次の日には意気揚々とエントリーシートをポストに投函していたのであった。


●件の会社はどんなとこ?

 株式会社エンジェルエンジニアリング本社、7階。
 表向きは、工場向けの機械製品を製造している会社である。
 BtoBのビジネスが中心の為、カスタマである学生には余りその名を知られていないのだ。
(と、採用担当者は合同企業説明会でしきりに口にしていたらしい)

「室長、面接の手はずが整いました」
「ククク……今年もまた、新卒の青臭いガキがやってくるな」

 部下の報告を受け、人事室のトップが薄く笑う。
 およそ人とは思えぬ冷たい笑みだ。
 ……ていうか人なんすかね、この方?

「ヒャッハー! 今年も新鮮な人間の感情あつめ放題だぜー!」

 あ、やっぱ天界の方ですか。ですよねー。
 労基署のかたこっちです。これがブラック企業です。ある意味ホワイトだけど(天使的な意味で)。

「ちなみにレベル20以上のそこそこ強い撃退士とかいないよな? ちゃんと書類で落としてるな?」
「Yes、Sir! ……あ、でも1人高レベルの男がいました」
「何?」
「いえ、しかし証明写真がひ弱すぎて、とてもじゃないけど脅威には思えませんで」

 ……それってもしかして。

「構わん、捨て置け。外見がもやしなら、どうせ経歴詐称だろう」

 ひどい言われようである。

「全く、情報ネットワークの普及さまさまだぜ。バブルの頃はいちいち個人面談しなきゃいけなかったが……
 今となっちゃ書類通過の4文字でホイホイやってきやがる! ボロい商売よのう」
「おっしゃる通りでございます。内定を得るべく必死な学生の熱意ほど、強い感情エネルギーはございませんからね」

 嗚呼。
 まったくもって、あこぎな会社だこと。
 


リプレイ本文


 一次・書類選考。届いた封筒の山を見つめ採用担当の使徒ジーン・ジーは溜息を一つ。
 次々開封しながら、明らかな秀才等をふるい落とす簡単なお仕事。
「頭のいい奴は反逆しやがる。使い捨て人員を大量に稼ぐには中堅レベルだよな」
 黒いご説明ありがとうございます。

 まず手に取ったのは、ラグナ・グラウシード(ja3538)の履歴書だった。
「どれ学生時代に頑張った事、は……」

『跳梁跋扈するリア充どもの殲滅に心血を注いでまいりました。
 入学した当初より志は揺らぐことなく、日々の努力も惜しみませんでした。
 結果、数々のリア充を倒す事に成功。私の大学生活はリア充の為にあったと言えます』

「……いやリア充『殲滅』の為だろ、そこ抜かすなよ」
 ツッコミと共にドカンと押される1次通過の判子。いいのかブラック企業。

 続いて取り上げられる鐘田将太郎(ja0114)のES。
『一流企業を含めて様々な会社を並べ、目隠ししてのあみだくじで決定しました』
「成程な、運も実力のうち……ってなんじゃそりゃー!」
 バーンと机を思い切り叩くジーン。落ち着け隣の席の触手(3年目)が怯えてる。
「ここで働きたいって気持ちは本気……? 解せぬ」
 こんなの絶対おかしいよ、とゴミ箱に放り投げそうになった刹那、ふと学生時代の事が目に入る。
『学生時代は24時間自己研究に没頭した。仕事には寝食忘れて取り組める自信がある! 』
 なんという社畜予備軍。マーベラス!
 慌てて机上に書類を戻し、判を押す。やる気さえありゃ無問題!

 次に夜来野 遥久(ja6843)から送られてきた封筒を開封。
 ――ざっと目を通し、無言で判を押すジーン。
 完成されたテンプレだ。これぞ約束された勝利の動機《テンプレート》!
「一字一句変えずに他の企業へ行ける完成度……想定外の質問にどう答えるか、面接が楽しみだ」
 さすがブラック企業えげつない。

 ……さて、まだまだ。続いて朱鞠内ホリプパ(ja6000)の履歴書。
『ガイアがここでもっと輝けと囁いていたので志望します。目標は社内結婚です』
 簡潔な文章からにじみ出る謎の威圧感、もとい千の言葉より残酷な説得力に、絶句するジーン。
『アイヌをより知ってもらう為の活動を頑張りました!
 その為の努力なら惜しみません! 仕事も片手間で頑張ります!』

 ヤバイ、こいつにお祈りメール出したら後々何されるか分かんない。
 本能で察した、サーバントすらも食い殺すワイルドさ。ジーンは再び、無言で合格判を押した。

 で。アーレイ・バーグ(ja0276)の履歴書。見た瞬間から鼻の下を伸ばし判子を押すエロ人事。
 それもそのはず、貼り付けられている小さな証明写真には彼女の豊満な胸が映し出されている。
 リクルートスーツは前がぱつぱつ。更に学生時代頑張った事欄には胸のサイズが明記されていた。
 高1でKカップ。高3の現在(AP仕様)、驚異のNカップ。ABC、と指折り数え感動のあまり落涙。
「これは……、実にけしからん」

 最後に残ったのは、鈴木 紗矢子(ja6949)の履歴書だった。
「動機はありがちな感じだな、同じ文章で他の企業にも送っているのだろう」
 的確な指摘を入れつつ『物作りをしたい』というテンプレを流し読む。
「で、自己アピール……」
『久遠ヶ原学園では、鍵無しでドアを開けられるようになりました!
 今は、20m以内のひそひそ話を聞き取れるようになる事と、
 暗いところでもペンライト程度の光源があれば問題無く見えるような訓練を頑張っています』

 ……うん、で、その技能うちの会社のどこで役立てるんだ?



 そんなこんなで2次試験。集団面接である。
 敵の本拠地、いや本社に乗り込む……撃退士、もとい企業戦士候補生。
 本日の面接は3,4人のグループに対し人事2名。
 集団面接最大の敵は――そう、他者の輝かしい経歴を聞くことで生じる劣等感だ。

「お入り下さい」
「失礼します!」
 面接官の声に応えるように、四名の撃退士が面接会場へやって来た。
 列の先頭には、ピアスを外し、かっちりとしたスーツに身を包んだ将太郎の姿。
 髪型もきっちり整え、まさに新社会人の風采である。
 次いで入ってきたのは遥久だ。隙のない履歴書の男は外見にも隙がなかった。
 将太郎よりも更に真面目な印象の、ぱきっとしたスーツに高級感のあるネクタイ。
 その立ち姿は、さながら紳士服店のモデルだ。
 さらに続いて現れる、ラグナの姿。
 着慣れたスーツをいつもより気持ち真面目に着込んで、背筋を伸ばし悠然とした立ち姿。
 最後に姿を現した桐江はいつも通りの金髪によれよれスーツ。就活舐めてるぞこいつ。

 着席した所で、面接官の女性が両手――いや触手(ピンク色)をくねらせる。
「本日はご足労をお掛けしました。それでは早速ですが、一番目の方から自己紹介をお願いします」
 腕以外はすごくまともな女性に少しだけ驚きつつ。将太郎が起立し、自己アピールを始める。
「1番、鐘田将太郎。『熱血企業戦士志望』です! 御社の為なら粉骨砕身、不眠不休で戦えます!
 撃退士で培った力を存分に揮います、宜しくお願いします!」
 体育会系ノリで熱血アピール。ピシッとした姿と相まって、これ以上ない好青年に見える。
 これに対して面接官、ESの隅をつつくいやらしい質問。
「あみだでウチの会社に決めたそうですが」
「はい」
「他社さんに当たってたら、向こうで同じこと言ってました?」
 出た。いきなりの圧迫面接。周囲の学生にも僅かに緊張感が生まれる――が。
 将太郎は察していた。面接官は、こちらを動揺させるために言っているだけだと。
 胸を張り、堂々とした態度のまま言い切る。
「いいえ、そもそも『もし』という前提が間違っています。私がここへやって来たのは運命です!」
 本気なのか取り繕っただけなのかは不明だが……触手、完全に虜。将太郎、恐ろしい子……!

「……で、では次の方」
 恥じらう触手に促され、今度は遥久がアピール開始。
「営業職志望の元芸能人・夜来野遥久です。学生時代は常に自己鍛錬に徹してきました。
 企業間交渉でも粘り強く相対し、必ず貴社の役に立ちます。宜しくお願い致します」
「早速ですが、学生時代最も印象に残った経験を教えて下さい」
「芸能界の仕事もさる事ながら、最も記憶に残っているのは長期休暇の住み込みアルバイトですね」
「どんなアルバイトですか?」
「夏は昆布干し作業を」
 突然出てきた予期せぬ単語に、他の志望者が俄かに動揺する。
 しかし周囲の動揺に気を向ける素振りもなく、堂々とした振る舞いのまま遥久は続けた。
「波に飲まれた事もありましたが……今はいい思い出です。
 晩夏は網にかかる巨大クラゲとの戦いでしたが、一流品の生産に全力を注ぎました」
「壮絶ですね」
 クラゲだって一生懸命がんばってるんだ、たまに網にかかっても恨まないであげて!
 あれ何かいま海神からのお告げ的なサムシングがオラクル。
「ええ。おかげで、何事にも動じない強い精神力と忍耐力が養われました」
「ち、ちなみに冬は……」
「冬? 冬は、暴れ牛や言い寄る雌牛と戦いながらの酪農手伝いを。最終的に全ての牛を従わs」
「あーりがとうございましたァ次の方ーッ!」
 触手さんまさかの試合放棄! そして矛先はラグナへ……。

「ラグナ・ラクス・エル・グラウシードと申します。
 1つの物事に『気持ち』を込めて取り組み続けられるのが長所です。本日は宜しくお願いします」
「グラウシードさんは弊社に将来性を感じられた、と。……ちなみにどの辺り?」
 問われ、一瞬目を泳がせるラグナ。しかし熱意だけはある。
 平静を装い、動揺などしていないと言わんばかりにアピール。
 幸せな結婚の為には安定した生活基盤が不可欠。ここで怯む訳にはいかぬ!
 ……そもそも結婚の為にはパートナーが(略)とか気にしてはいけない。
「御社の製品は、この分野では日本国内に留まらず海外、果ては並行世界においても、
 シェア6割と非常に安定した評価を得ており……
 数年内にはシェア8割も夢ではない、素晴らしい成長を遂げています」
「その通りですが、逆に言えば頭打ち……とも言えますよ」
「いいえ。御社主力製品の耐用年数は10年、新規販路が尽きる頃には機械の入替えが発生します。
 その際に積極的に売り込む仕事に、私は携わっていきたい」
「……なるほど。よく調べていただいたようで」
「はい、私は御社で働きたいです!
 恵まれた福利厚生(高い家族手当)、育児休暇の充実(男性30歳既婚者率7割超)。
 アットホームな社内の雰囲気(職場結婚年間5組)!
 素晴らしい。内定を頂けた際は、一生勤め上げる覚悟で入社します!」

 完璧な回答に、人事担当者も思わず唸った。心の声は人事には聞こえていないので無問題。
 しかしさて、ひとつ課題があるぞ――
「ところで。例えば……例えばですよ? 隣の同僚が超リア充だったら、貴方どうします」
 人事の触手の先を目で追うラグナ。ピンクの先端は、静かに桐江を差していた。
 染めた金髪。ピアス。なんかチャラそう。スーツもくたびれている。……よもやこの男、朝帰り?
「き、決まっています。仲良く……仲、良く」
 就職のため。就職のためだ。
 言い聞かせて己を律しようとするが……良くも悪くも正直なラグナ、本能に逆らえる訳はなかった。
「できるかーッ! く・た・ば・れ・リア充!」
 華麗に炸裂、リア充瞬殺剣。その太刀筋が捉えるのは、勿論――
「えっ、ちょっ、えっ!? ひでぶ!」
「……コミュニケーション力が不十分、と。あと金髪の方は髪染め直して出直せ論外」
 2名脱落。

(なおその後、桐江=モテの誤解は解けた模様だ。
 非モテ系ディバインナイト2人組がおでん屋台で呑んだくれる姿の目撃情報も随所で聞かれるが、
 こちらと本件との関連、および真偽は現在のところ不明である)



 さて、面接は第二グループへ移行していた。
「鈴木紗矢子です、私は物作りをする仕事に就きたいと思っています。
 学生時代……えっと、今の学園に入る前は、夜遅くまで働いてるお母さんの代わりに妹達の世話をしてました。
 支えてくれた家族の為にも、私もお母さんと同じように働いて……お世話になった方へ恩返ししたいですっ」
「ありがとうございます。鈴木さんは沢山働きたいんですね?」
「はい。(若いうちに働いてお金を貯めて、35歳で)退職して、田舎でスローライフを送りたいと思っています」
 心の声は(以下略)。
「成程。それでは他の方の意欲も伺いましょう」
 そして水を向けられたのは、写真と同じくスーツの前がお祭り騒ぎなアーレイ。
「アーレイ・バークです。宜しくお願いします」
「えー、アーレイさんは仕事をするにあたって目標などありますか?」
「そうですねぇ。強いて言うなら沢山お仕事したいです」
「というと?」
「週140時間くらいまでなら頑張ります。
 残業代なんて請求しませんし、繁忙期は会社に住むので交通費も不要です!」
 早くも堂々の社畜宣言である。驚き隣へ視線を向け始める面接官のしょk……女性。
 ――おっと。ここで初めて、もう1人の面接官が動いた!
 今の今まで何も喋らず座るだけだった年配の男性社員。カッと目を見開きアーレイに問う。
「ねーちゃんそのスーツで出社するんか?」
 これは……! セクハラ撲滅が叫ばれる現代、とうに絶滅したと思われていたセクハラ上司だ!
 だが周囲が戦慄する中、当のアーレイだけは冷静であった。
「勿論そのつもりですが……汚れた時、近くのコインランドリーで洗濯できますよね?
 下着会社に干したら怒られます?」
「構わん、干したまえ」
 頬を染めるアーレイ。もう分かってやってるとしか思えないよ! おっさん騙されてるよ!
「はいはい部長次いきますよ次ー!」
 強制終了。

 ホリプパの番である。にっこり笑顔を浮かべ、用意していた数多の言葉を面接官へ放つ。
「何時でも元気なコロポックル・朱鞠内ホリプパです! 私も御社で働きたいですにゃ。
 出産・育児休暇の充実(女性28歳既婚者率8割超)。
 アットホームな社内の雰囲気(職場結婚年間5組)!
 内定を頂けた際は、一生勤め上げる覚悟で入社しますにゃ☆」

 あれ何か同じような事言ってた奴いたな。
「えーっと朱鞠内さん。ひとつ確認したいのですが」
 言い辛そうに顔を歪め、触s……女性が遠慮がちに問う。
「久遠ヶ原に入学する前は、大学卒業後公務員をしていた……と。
 年齢欄15歳って書いてありますけど、どっちが正解ですか? 実年齢は――」
「実年齢なんて飾りにゃ」
「は」
「実年齢なんて飾りにゃ。偉い人にはそれが分からんのにゃ?」
 笑顔だ。笑顔が黒い。謎の威圧感に涙目のしょk女性。
 しかし空気を読まず、セクハラオヤジが禁句を口にした。
「大卒=少なくとも22、下手すると三十路間近かm」
「おい」
「もしかしてウチを選んだのって社内結婚率かn」
「おいお前ちょっと表出ろにゃ♪」
 問答無用でエロい人をお外へ引きずり出すホリプパ。
『周囲が次々結婚して、自分だけ取り残される悲しみがお前に分かるか! もう1回行き遅れとk(ry』
 彼女が試験時間中に帰ってくることはなく……その後のエロい人の行方も知れない(合掌)



(俺は……社長を倒して入社する!)
 社長室の扉を押す将太郎の手に気合が入る。彼の後ろに続く遥久とアーレイが頷く。
 志半ばで果てた戦友の為にも。絶対に、揃って内定を――!

 扉の先で2次通過者を待っていたのは、当然BOSS。
「よくぞここまで辿り着いた」
 くるりと社長椅子を回転させ振り向く。膝に猫。マフィアかと。
「楽にしたまえ。私は君達に試験を課しはしない」
 どういう事だ、と訝しむ撃退士達へ、社長は一つの要求をする。
「君達は、我が社の社訓を覚えているか?」
 当然さ――できる限りの対策はしてきた。今が、全ての力を解き放つ時!

「1、陰口を言わない!
(中略)
 1、出来ないと言わない!」

 よし八秒以内。満足げに笑う社長は、しかし思いもよらぬ事を告げる。

「流石ここまで残っただけの事はある。いや、実は君達の能力を見込んで、単なる営業とは違う仕事を任せたいのだ」
 出た、ブラック企業の採用の定石です!
「まあつまり何だ……僕と契約してシュトラッサーになってよ!」

 な、なんだってー(AA略)
 営業ノルマめちゃめちゃキツイ上に超☆転勤ばっかじゃないですかーやだー!
 最初に聞いたのと話が違うよ! と、理不尽さに震える撃退士達。

「……貴重な時間と交通費を返せ」
 経歴詐称しまくったお前が言うな、なんて声は黙殺。
 遥久が放つ怒りの一撃によって、社長は社屋の外へフライアウェイ。

 こうして内定を巡る争いはなあなあの終焉を迎えた。
 だが忘れるなかれ、彼ら就活戦士の戦いはまだ始まったばかりだ――!

 先生の次回作にご期待下さい!(完)


(※エイプリルフール)


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:8人

いつか道標に・
鐘田将太郎(ja0114)

大学部6年4組 男 阿修羅
己が魂を貫く者・
アーレイ・バーグ(ja0276)

大学部4年168組 女 ダアト
KILL ALL RIAJU・
ラグナ・グラウシード(ja3538)

大学部5年54組 男 ディバインナイト
実年齢は嫁に行きました・
朱鞠内ホリプパ(ja6000)

大学部9年275組 女 鬼道忍軍
蒼閃霆公の魂を継ぎし者・
夜来野 遥久(ja6843)

卒業 男 アストラルヴァンガード
おこもりガール・
鈴木 紗矢子(ja6949)

大学部5年76組 女 アストラルヴァンガード