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マスター:黒川うみ
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:12人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/08/31


みんなの思い出



オープニング

●SIDE:アリス

「皆の衆……これは由々しき事態なのぢゃゾ」

 誰がそう呼んだか――気づけばお祭り教師と呼ばれ早数ヶ月。
 アリス・ペンデルトン(jz0035)は、いつになく真剣な表情で生徒達へ告げた。

「前々から、あやつとは一度腰を据えて話をせねばと思っていたのぢゃがの。
 どうやら話は通じないようなのじゃよ。我々には、拳で語り合う選択肢しか残されていないのぢゃ!
 当然ぢゃな、……相手は悪魔のような男、いや、悪魔そのものなのぢゃから」

 悪魔。その言葉を聞き、生徒達は一時騒然とする。
 あの強大な存在と、アリスは剣を交えようというのか?
 止めるべきなのだろう。だが彼女のここまで真剣な表情を、今まで誰が見た事ある?(反語)
 それでなくとも、火のついたお祭り教師を止められる度量を持つ生徒はいない。
 なにせ学園長さえも篭絡する魔女(笑)である。彼女に対抗できそうな人間なんてこの学園には……、ん?

 待て。いるではないか、人間ではないけれど。彼女を唯一抑止できると思われる悪魔教諭――太珀(jz0028)が。

「……ん? 悪魔?」

 ふと、一人の学生が察する。まさかとは思うが、アリスの言う悪魔って――

「うむ。悪魔の名は太珀、人の世に帰依し甘い蜜を吸う、極悪非道の悪魔……!
 球技大会を開催し、あやつのチームと正々堂々、スポーツで勝負するのぢゃっ!」

 成程、納得である。


●SIDE:太珀

「今朝、ポストに果たし状が入っていた。無記名――だが、犯人は分かってる」

 腕組みをしたまま、悪魔教師は苦虫を噛み潰したような顔をした。
 彼が差し出した件の手紙には、デカデカと赤文字。

『どちらがより多くの生徒から信頼を集めておるか、思い知らせてやるゾぃ。紅白対抗☆球技大会で勝負なのぢゃ☆』

 書き文字なのにバレバレってどういうこと。

「あのすちゃらか魔女、どうも頭の中までお祭り状態らしい。何でも大会にすりゃいいと思ってるのか?
 ……まあいい。売られた喧嘩を買わない道理はない、こちらも全力で行くまでだ」

 なんだかんだ言って、この悪魔ノリノリである。



 サッカーである。
 白と黒のボールを蹴る定番の球技である。

 ただし、普通のサッカーはあくまでも目安にすぎない。

「キーパー以外は手を使わない。これがルールだ」
 簡潔すぎる説明に参加者は目を点にする。
 説明用紙を手に、審判係を押しつけらrゲフン、公平な審判が出来るということで任された岸崎蔵人(jz0010)が一番疑問を抱えていそうな険しい表情で説明を続ける。

「1チーム6人。1人はキーパーを兼ねる。手を使わなければ武器・スキル・その他使用可…」
 待っ 待っ 待ッ!
「それサッカーですか!?」
 人数はまだいい。
 他の種目に参加する人数を考えれば公式とは異なっても仕方がない。
 しかし武器・スキル使用可って。
 しかもその他って何。

「『なんちゃって』がつくぐらいだから、サッカーではないんだろうな」
 蔵人は淡々と告げる。
「キーパー役は手を使ってもいいから、盾でゴールを守るというのもひとつの手だ。
 逆に手を使わなくても武器を使えるなら使って良し、とのことだ。
 スキルも使い方次第だろうな。
 まあ、サッカーボールを割ると退場だからその辺は加減してくれ」

 手を使わない。
 サッカーの基本は押さえているが、これは基本だけしか押さえていないような気もする。

「我々は撃退士だ。
 ゆえに、撃退士にしかできないサッカーを、という注文が来ている」
 どこから?
 大体は主催者とか和やかに観覧している教師陣から。
「6人という少数でどこまでできるか、見せてもらおう」

 サッカーというより、6vs6の格闘戦のようだと参加者達は思ったのだった。


リプレイ本文



「あの‥‥コレ読んで下さい!」

 学園の一角。木陰で読書中の若杉 英斗(ja4230)に、1人の女子生徒が声をかけた。
 彼女が差し出したのは、ハートのシールで封をされた純白の手紙。
「サッカーでのご活躍、素敵でした。1度の失点も許さなかった若杉先輩‥‥、格好良かったです!」
 ぎこちなく話す女子に、英斗は優しく微笑みかける。
 学園中が注目する行事で活躍したのだ。こんな話があっても不思議はない。

 そう、彼の恋愛に確率変動が起こったのは、あの球技大会のことだった――。


「‥‥さっきから一人で何をブツブツ言うてるん?」
 烏丸 あやめ(ja1000)に不気味がられ、英斗はハッと顔を上げる。
 場は校庭。時は試合開始5分前。
「いい天気だね、まさにサッカー日和かな」
 アップをしながら酒々井 時人(ja0501)が空を仰ぎ、
「サッカーなのだ!サッカーなのだ!楽しみなのだ!」
 その前ではレナ(ja5022)が、スク水にハチマキという勘違いマッハな恰好で跳び回る。
 目指すは夢の実現――仲間と敵を交互に見て、英斗はぐっと拳を握る。
「今日の俺は‥‥いつもと違うぜ!」
 京都の大規模作戦の時より燃える彼と、ただただ訝るあやめであった。

 太珀好きを公言する、白組アラン・カートライト(ja8773)は既に動く。
 彼の秘策は、アウトロー。
 不真面目な者を好む対象に好印象を与えるスキルを、試合ペースの掌握の為にあらかじめ審判に使っ

 審判:岸崎蔵人(超真面目)

 ておくのは、止めておこう。

 12人がコートに並ぶ。

「正々堂々と‥‥試合をしよう‥‥不不不‥‥」
 日谷 月彦(ja5877)の笑顔は、すごく爽やかじゃなかった。


 じゃんけん後。キックオフの権利を得たのは、白組のMF:並木坂・マオ(ja0317)だ。
「さあ、しまっていこーっ!」
 たたんっと助走をつけ、マオがボールを蹴り上げる。
 その飛距離たるや半端じゃない。放物線を描いたボールは一気に赤組ゴール前、白組FW:名芝 晴太郎(ja6469)へ渡る。
「ナイスパスだ!」
 ドリブルする晴太郎を、赤組唯一のDF:時人が目視。マークすべく駆ける。

「遅いぜ?」
 短パンから伸びる晴太郎の脚でアウルが煌めく。

 爆発的な加速で時人を躱し、晴太郎はゴール前に出る。
 そのまま迷わずシュートを放った。

 バッシィインッ!

 赤組GK:英斗が、白銀に燃えるシールドでそれを弾く。
「絶対にゴールは許さない」
 彼も必死である。英斗が時人へ。ゴールキック。
「さあ、行くよっ!」
 時人は、思いっきり高くボールを蹴った。
 マオが跳躍するも届かない。ボールはそのまま白組ゴール前に落下する。

 しかしその下に、赤組メンバーの影は無し。

「貰たで!」
 白組随一の俊足を誇るDF:あやめが駆ける。が。

「待ってたぜ、時人!」

 あやめの背後から、風を巻き起こして双城 燈真(ja3216)が追い抜いた。
 縮地の勢いでジャンプして、宙でボールを胸に受ける。
「サッカーならこの俺! 翔也さまにお任せたぜ!」
 着地と共にゴールへ接近、人格交代中の彼は足を振り上げる。

「誰にお任せだって?」

 飛来した衝撃派が、燈真の足を直撃した。
「ぐあっ?!」
 狙いを逸らされたシュートを、白組GK:レナが易々キャッチする。
「フットボールの母国を教えてやろうか?」
 レナに転がしたボールをキープし、衝撃派の射手、アランが言う。
「イングランドだ。俺の母国発祥のスポーツ、絶対に負ける事は出来ねえ」
 普段は体力の消耗を嫌う彼も、今回ばかりはガチである。
「勝ちにいかせて貰うぜ」
 アランがコート中央のマオへ、パスを出す。
 ドリブルを始めるマオに、左右から赤組MFのテト・シュタイナー(ja9202) と森浦 萌々佳(ja0835)が迫った。
 ざっと視線を滑らすと、遠くには同じく赤組MF:ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)の姿も見える。
(1対3‥‥さすがに部は悪いなぁ)
 さてどうしよ。悩む暇も無いマオめがけ、アリス先生大好きな萌々佳がスライディング。
 慌てたマオは、無理を承知で指を向ける。

「あ! あそこにチアリーダー姿のアリスセンセーがー!」


「え!!」


 効いた。
 滑りながら体を回し、萌々佳は目を輝かせてアリス先生を探す。
 マオは隙を逃さず、駆けだした。
「おぉっと、そう簡単には抜かさせねぇよ?」
 前に立ちふさがるはテトである。
 マオはFW陣にパスを狙うが、ここからでは時人が怖い。かといって無理に抜こうとすればジェラルドか、「アリス先生いないじゃないですか〜!」と怒る誰かにボールを攫われるのがオチ――
「マオさんこっちなのだ!」
 はっと目を向けると、なんとレナが前方に走っていた。
 ゴールの無人は心配だが、これで攻めは繋がる。
「うん、お願いっ!」
 マオはテトの脇を狙い、迷うことなくボールを蹴った。
「だから――」
 テトが、にっと笑う。

「簡単には抜かせねぇって」

 テトの前に一瞬で、淡い障壁が展開される。

「っ!」
 現れた魔法の盾は短く澄んだ音を立て、蹴られたボールを空中で跳ね返す。落ちたボールに向かい、テトは足を振りかぶる。
「頂きだぜっ!」
 そのままシュート。
 回転するボールが、無人のゴールエリアにバウンドした。
(危ないのだ!)
「ダッシュなのだ!!」
 迅雷の如くレナが地面を蹴る。
 高速でシュートに追いつき、その指先がボールに届きかけるも――、あと一歩及ばず。

 ばすんっと気味の良い音を立て、ボールはネットを靡かせた。



 ゴール前。
 ボールを両手で抱きつつ、レナはゴールキックのコースを見極める。
 白組にとっての難所は、言うまでもなくコート中央だ。
 MFの数が1対3。策が無いではないが、やはり鬼門には違いない。
(悩んでても仕方ないのだ!)
 可能な限り遠くに蹴るしかない。
「行くのだ! ニンジャは足も強いのだ!」
 思いっきりのゴールキック。ボールが高く上がった時だ。

 白い羽を舞い散らし、萌々佳が小天使の翼で飛翔した。

 ボールを上空でトラップし、白組のゴール前へパスを返す。
「やるねぇ! 萌々佳ちゃん♪」
 追いついたジェラルドがボールを受けた。
 いつも通り軽薄な雰囲気のジェラルドだが、サッカー初心者の萌々佳に技能を教えたのは彼だったりする。
 駆け込むマオのスライディングをひょいと越え、さらに猫のように追撃する彼女の脚を楽しげに躱し、ジェラルドはテトにパスを出す。
 ドリブルを始めるテト、右の奥に居るアランの飛燕は要注意だが、彼女にも魔法の盾があるのだ。
(一気にいくぜ!)
 ボールを蹴ろうとした彼女の脚が、すかっと空振る。
「あ?」
 ボールが無い。振り向けば、

「油断したなあ!」

 あやめがドリブルしていた。
 忍びの技術で気配を消し、小柄な体躯でボールを攫ったのだ。
 晴太郎へパス。
 受けた清太郎は、背後から迫るジェラルドに気付いて月彦にボールを蹴った。
「不不不‥‥さあ‥‥こちらの番だ‥‥」
 立ちはだかる時人を前にして、月彦の笑顔はまるで活き活きとした仮面のよう。
 すっとその手が懐に伸び、

「砂袋かい?」

 目潰しの策を見破った時人に、月彦がかすかに驚く。
「ルールを忘れたの? GK以外は武器を手に持っちゃいけない」
 ぐっ、と息を呑む月彦。
 しまった。これではチーム・アクマの名が廃る――!
 ん。いや待て、砂‥‥?

【月彦の視線の推移】

 前→

 下↓

 前→

 不→

「うわっ!?」
 月彦が満面の笑み(冷)で蹴り上げた校庭の土をモロに受け、顔を抑えた時人の脇を月彦が不不不っと駆け抜ける。
 反則? ウチのシマ(久遠ヶ原島)じゃノーカンだから。
 撃ち込まれた月彦のシュートを、英斗は盾で弾き返す。
「ルールが大雑把すぎるぞ‥‥」
 試合の自由度に呆れつつも、晴太郎は跳ね返ってきたボールを補足。間髪空けずに再びゴールに蹴り込んだ。
 しかしさすがは本職の防御。英斗はそれも受け止める。
 ボールを高く遠くへ蹴る。
 萌々佳が空中で追いついた。胸でボールを受け、

 オーバーヘッドでシュートを放つ。

 高所からの一撃に、レナが目を細める。
「ニンジャパワーでディーフェンス!なのだ!」
 土を蹴って横に跳び、ゴールの枠を蹴って正面に跳ぶ。
「忍法!トライアングルジャンプ!」
 宙で迫る剛球とレナの体。その2つが、激突する――が、

 むにゅり。

 ‥‥ボールは、止められた。何というか、ボールで。
 ボール1つより2つ方がきっと強いのだ!とかなんかそんな理屈。とにかく、胸でボールを止めました。
 試合続行! レナが蹴ったボールをアランがマオへ繋ぎ、マオは再び3人の赤MFと対峙する。
「今度はやられないからね!」
 軽く跳躍し、マオが体を捻る。ふっと息を止め、アウルを練り、

 黄金の軌跡を描くシャイニングウィザードを、地面へと叩き込んだ。

「「「っ!」」」
 土煙の中にMF達が隠れる。
 やがて煙を破り、飛び出したのはボールと、マオだ。
 マオのオーバーヘッド・シュートが炸裂する。
 だが英斗はそれも弾く。絶対防御は伊達じゃない。
 跳ね返ったボールを時人が待ち構える。が、トラップしようとした時だ。

 パァンッ!

「!?」
 月彦が、時人の尻を蹴った。
「偶然だ‥‥」
 痛みというか事態そのものに衝撃を受ける時人を余所に、月彦はしれっとボールを攫う。
 ゴール前に躍り出た月彦、鉄壁のGKを崩すべく、とある筋から入手した禁断の切り札を使う。

 英斗に向かい、一言。


「たらこ、め」


 場が凍りつく。
 天気は良いハズなのに、英斗の顔が影で見えない。
 逆鱗を刺激された英斗、さぞ激怒すると思いきや、

 動かない。
 拳を握りしめ、停止中。


【若杉の脳内シュミレーション】

 ぶち切れて襲い掛かります。
 ↓
 女子引きます。
 ↓
 モテなくなります。
 ↓
 でも俺、怒ってます。
 ↓
 モテなくなります。
 ↓
 ‥‥‥‥。
 ↓
 モテたいだろう‥‥?(強大な何かの声



 英斗は耐えきった。カッと目を剥き、白銀に燃える盾を構える。
 足を振る月彦と対峙。胸に響くは、夢の中の彼女の言葉。

 ――1度の失点も許さなかった若杉先輩‥‥格好良かったです!――

「うおおおおっ!!」
 両足を大地に踏みしめ、叫んだ彼の、

 股の間を、月彦の背後から現れたあやめが蹴ったボールが、素通りした。


 ギャラリー達の歓声の中に、非モテ騎士の悲鳴が混ざる。




 その後も、まぁ、いろいろあった。

 人間離れしたスーパープレーの攻防戦が、熱と、歓声と、夏の風、そして字数制限の狭間に巻き起こり()、
 点はなんと、赤:1点 白:1点 (不変
 
 そして迎える、後半戦。


 残り時間は、あと7分――。



「事故だ‥‥」
「偶々だ‥‥」
「悪気はない‥‥」
「不不不不不不不不‥‥!」
 猛威を振るうのは月彦の圧倒的な妨害だ。
 走る選手には足をかけ、スローインで狙うは当然の如くライバルの顔面。
 さぞ嫌われるかと思いきや、学園のギャラリーにはむしろ大人気。
 楽しそうに悪ノリ声援が送られるから、ペースを握ること甚だしい。

「さあ吹き飛べ‥‥!」

 英斗からボールを受け取ったジェラルドの前に出て、月彦はレガースに力を込める。
 『掌底』の代りに『痛打』を活性化。胴体狙って、蹴りを放った。
「わっ!」
 と腕で体を守るジェラルドの仕草は、どこか芝居がかっている。
 瞬間、月彦は目を疑った。

 放つ蹴りの先に、ジェラルドがふわりとボールを蹴り上げたのだ。


『攻撃スキルを用いれば、ボールは簡単に割れる』。

 それは試合開始前、蔵人が質疑応答で答えた内容。質問をしたのはジェラルドだった。

『割ったときのペナルティってあるの?』
『ペナルティは「退場」。自らの能力を自在に操ることも重要ということだ』
『ふぅん、じゃあ‥‥』
 ジェラルドは笑っていた。

『あんまり無理は出来ないね?♪』

 あの時、彼は既に、スキルでボールを蹴ることでは無く、ルールを逆手に取ることを考えて――


 間一髪で月彦は蹴りを止めた。退場を免れる。
 ジェラルドは微笑んで、無傷なボールでドリブルを再開した。
「通さないよっ!」
「やるからには絶対勝ちにいくで!」
 マオとあやめが迫る。が。
「そのコースに‥‥」
 少し遠くでテトがひゅっと足を振った。
「ブチ込むッ!」
 放たれたのは、クリスタルダストの氷塊だ。マオとあやめの進行方向を、巨大な氷が妨げる。

「アリス先生が大好きです〜!」
 想い全開。空中の萌々佳が白組ゴール前に急降下した。
 
 ジェラルドが彼女に視線を送る。空中シュートを決めさせる気に違いない。
 反応するはアランである。ジェラルドがボールを蹴った瞬時に、アウルを脚に込め、
「当てはしねえからよ」
 萌々佳の視界を遮る位置を狙い飛燕を放った。
 成功だ。衝撃派は彼女の前を猛烈に過ぎる。が。

 ジェラルドがパスを出したのは、左コートを駆けるテトだった。

 タウントを纏った萌々佳によるフェイント。
「受けろ、俺様の必殺技!」
 真っ直ぐゴールを見たテトが、思い切り足を振った。
 回転する球がゴールに迫る。アランの割り込みは届かない。

 だが、まだだ。
 アランは手札を残していた。
 
 手を使うことができるGKのレナが、彼から預かったデュエルカードを宙に投げる。

 アランが跳躍し、それを蹴り飛ばして角度を変えた。
 狙いはボール。退場覚悟、起死回生の一撃が――、

 命中。
 ゴール目前で、白と黒の球体が砕かれる。
 ただ一つの問題は、それが、サッカーボールでは無かったことだ。
「!」
 反射でテトに目を向ける。彼女が足に巻いたテーピングが剥がれ、中から「陰陽護符」が覗いた。
 それは、限りなくサッカーボールに近い黒と白の球体を創る武器――。

「貰ったああーー!」
 本物のボールを燈真が蹴り抜く。

「イナズマドライブシュートーーッ!!」

 フェイントに次ぐフェイントが、ついに試合を決める1点を奪った。


●激戦の後
「やったぜ燈真!これで俺達も人気者だぜ!」
 笑顔で片割れに結果報告する燈真の脇で、同じかそれ以上に喜んでいる者がいる。
 英斗である。
 ぐぐぐっ‥‥と身を屈め、歓喜に震える。
 ついに始まる‥‥俺の薔薇色の学園生活!

「ラッキーチャンス‥‥!」

 スタートしましたぁああ!
 と、掲げられんとした希望の拳が、むにゅりと途中で何かにあたった。
「え」
 目を開けりゃそこには御約束通り。レナのボールが並んで2つ。
 英斗の拳がその間に挟まって、そういやこんなシーン試合中にもあったなーなんて思ってる場合じゃねーー。
「ラッキー‥‥チャンス‥‥?」
 ああなんかもうオチが見えてきた。
 あやめ達、女性陣の冷ややかな感情が会場いっぱいに広がる気配あり。諦観の滲む微笑みを浮かべた英斗の目尻に、きらりと光る滴が一つ。

 勝者赤組に24ポイントが加算され、血と汗と誰かの涙が輝く青春のサッカーは、めでたく此処に終結したのだった。

(代筆:水谷文史)


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 仁義なき天使の微笑み・森浦 萌々佳(ja0835)
 ブレイブハート・若杉 英斗(ja4230)
 ゴッド荒石FC会員1号・レナ(ja5022)
 微笑むジョーカー・アラン・カートライト(ja8773)
重体: −
面白かった!:6人

魔に諍う者・
並木坂・マオ(ja0317)

大学部1年286組 女 ナイトウォーカー
闇を裂く御風・
酒々井 時人(ja0501)

大学部7年55組 男 アストラルヴァンガード
仁義なき天使の微笑み・
森浦 萌々佳(ja0835)

卒業 女 ディバインナイト
夜に光もたらす者・
双城 燈真(ja3216)

大学部4年192組 男 アカシックレコーダー:タイプB
ブレイブハート・
若杉 英斗(ja4230)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
ゴッド荒石FC会員1号・
レナ(ja5022)

小等部6年3組 女 鬼道忍軍
人形遣い・
日谷 月彦(ja5877)

大学部7年195組 男 阿修羅
ある意味超越者・
名芝 晴太郎(ja6469)

大学部5年99組 男 阿修羅
微笑むジョーカー・
アラン・カートライト(ja8773)

卒業 男 阿修羅
爆発は芸術だ!・
テト・シュタイナー(ja9202)

大学部5年18組 女 ダアト
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅