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マスター:黒井ネロ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/11/12


みんなの思い出



オープニング


 愛しのエリカ。
 どうしてお前は死んでしまったのか。死ななければならなかったのか。
 私はずっと考え続けて生きて、生きて、生き続けてきたけれど。
 どうやらそれも、そろそろ幕引きのようだ。
 ただ一つ、心残りがあるとするならば。
 お前に似せて作った、このドールの手入れが出来なくなることくらいか。
 愛しの娘よ。待っていておくれ。
 すぐに私も、そちらへ旅立つと思うから。
 妻にもよろしくと伝えておいてくれ。
 我が愛しの娘、エリカよ――。

 人形師 紫楼淵瑞


「これは遺書、だよな」
 狭い部屋にテーブルが一つ。いくつかの棚が設置された作業場のような場所に一人、男が立っていた。
 そこは壁から床から人形のパーツに埋め尽くされていて、ほとんど足の踏み場もない。
 現に、男は数々のパーツを踏み荒らして机までやってきた。残骸となった胴や手足らしき物体が、その道程を示している。
 ここは住宅地の郊外に居を構える人形師、紫楼淵瑞の屋敷。その作業場だ。
 彼は十数年前に亡くなり、いまや空き家となっている。
 妻は彼よりも先に亡くなり、一人娘は幼くして逝去しているということが、日記に綴られていたため知ることが出来た。
 極度の人間嫌いだった淵瑞は、誰にもこの屋敷の管理を頼んでいない。
 そのせいで廃墟と化し、人形目当ての彼のファンや金品狙いの物取りの侵入をずっと許してきたのだ。
 この男も淵瑞のファンで、無事な人形を探してコレクションとするためにやってきていた。傑作と噂に聞く、最後の人形を……。
「それにしてもこのドールって、どのドールだ?」
 辺りを見回すが、人形らしきものが見当たらない。
 ここにあるのはそのパーツ。無事なものもあるにはあるが、ほとんどが割れたりして壊れている。
 お宝を期待して侵入したはいいものの、いまだ成果がない。
 ほかに何か手がかりはないものか、そう思い男は再び淵瑞の手記に目を落とす。
 その時――
 背後の空気の流れが変わった、気がした。
 背筋を冷たい気配がなぞっていく。ぞわりと全身の毛が逆立ち、びっしりと鳥肌が這う。
(…………振り返れな、い)
 男は後ろを向こうにも、全身が強張りまるで金縛りにでもあったかのように動けないでいた。
 不気味な気配は徐々に近づいてくる。音もなく、近づいて。
 すぐ後ろ。人間であるなら息遣いが聞こえてきそうなほど近くに、ソレはいる。
 静かに、けれど確実に、ソレは迫ってくる。
 恐怖に男の呼吸は荒くなる。心臓は破れるほど早鐘を打ち、生唾を飲み込んだ瞬間、
 顔の真横からぬっと何かが現れた。
 ガチガチと歯を鳴らしながら、男は壊れたブリキみたいにぎこちなく首を回して振り向いた。
 刹那。
 まるでタイミングを合わせるよう、ぐりんと首を捻ったソレは人形だ。
 眼窩は闇く両目がない。しかし確実に男を見ていた。
 息を詰まらせ悲鳴を上げることの出来ない男を嘲るように、人形は嗤う。奇怪な声で、奇妙な笑みで。
 そして――パクパクと口を動かし、ソレは言った。
「……アナタの眼、チョウダイ」
 小さな両手が伸びてくる。真っ直ぐに、両目に。
 ――そして、廃墟となった洋館に、男の悲鳴が響いた…………。

●斡旋所
「人形師の廃洋館、か。これはまた時期外れのホラーね」
 依頼書に目を通していた女性職員はぽつと呟く。
 書類の依頼主は近隣住民。
 洋館から夜な夜な悲鳴が聞こえるたび恐怖に慄き、現場へ警察が入るたびに事件の報道がされている。
 どうやら普通の事象ではないということで、学園へ依頼をしてきたというわけだ。

 近隣住民たちは口を揃えて言う。「これはエリカの呪いだ」と。


リプレイ本文

●昼・住宅地
 お天道様が燦燦と地上を照らす真昼時。
 一足早く現地入りした小田切ルビィ(ja0841)は、近隣住民への聞き込みに当たっていた。
 しかし、わざわざチャイムを鳴らし訪ねているにもかかわらず、ほぼ門前払い。「セールスはお断りです」と拒否されているところから、どうやら怪しい勧誘かなにかと勘違いされているようだ。
 その容姿に釣られたまに応じてくれる奥様なんかに尋ねようとすると、『エリカの呪い』と口にしただけで「ごめんなさい」ときた。呪いという不確かな現象を信じ、恐怖しているのだろう。
 誰しもが災禍に見舞われることに怯え暮らしている。元凶の排除が急がれるところだ。
「収穫は見込めそうもねぇな」
 溜息混じりに呟きながら、ルビィは聞き込みを諦め、目的地へ向けて閑静な住宅地を歩き出した。

●昼・淵瑞邸庭
「――おっ、来たか」
 ルビィは複数の足音に振り返る。
 彼に少し遅れる形で、他の撃退士たちも続々と屋敷の庭へ集結した。
「煩わしい陽光ですの」
 不愉快極まりないと太陽を睨め付けるのは、紅 鬼姫(ja0444)だ。刺さるほど痛い日光にうんざりしながらも、任務だから仕方がないと自身を納得させる。
「洋館ってくらいだからデカいのかと思ったけど、そうでもねぇんだな」
 想像していたものとは差異があったのか、天王寺千里(jc0392)はそんなことを洩らす。
 庭は邸らしく確かに広いが、二階建ての館自体はさほど大きくはない。それでも一般的な家に比べれば十分大きい方ではあるが。
「廃洋館で惨禍をもたらす『エリカの呪い』。 ――なかなか面白い記事のネタになりそうだよな?」
「こういう現象、イギリス辺りだとすぐに食い付きそうですよね」
 ルビィの言に、不知火あけび(jc1857)は確かにと頷く。
「楽しければなんだっていいわ。呪いだろうとね」
 瑞朔 琴葉(jb9336)は、妖艶に笑う。敵と対峙したその時に楽しみを見出して。
「ともあれ、先ずは下調べじゃな」
 右に左に視線をやりながらアヴニール(jb8821)。
 集まって早々ではあるが、昼のうちに洋館内を調べ終えるため、そうして撃退士たちは行動を開始した。

●昼・淵瑞邸内部
 管理者がいないというのは本当らしく、洋館の玄関に施錠はされていなかった。
 撃退士たちはエントランスへ足を踏み入れる。そこは円型のホールになっており、上階へと続く大階段が中心から伸びていた。
「戦える広さはある。しかしこれじゃあな……」
 ルビィは周辺を見渡し、唖然とした。天井から落ちたシャンデリアが散乱し、壷や絵画がそこかしこで倒れ、なぜかこんなところにも人形の一部が散らばっている。どれもが人間の子供サイズだ。
「さすがにこれを片付けるのは面倒ね」
 嘆息し腕を組む琴葉。肌蹴た着物から覗く胸元が艶かしい。
「戦闘時は外へ出した方がよさそうですね」
 あけびは同じ誘導役であるルビィに目を向けた。「ああ」と短く返事し、ルビィは首肯する。
「んじゃあ、分かれてしらみつぶしと行くか!」
 威勢のいい千里の声と共に、撃退士たちは散開した――。

 事前に番号、アドレスを交換していたスマホを用い、撃退士らは連絡を取り合いながら洋館内を探索する。
 土足で踏み荒らされているためか、様々な足跡が散見された。それを辿ってルビィは、一番目当てにされそうな淵瑞や家族の部屋、作業場を重点的に調査する。
 あらかじめ調べていた情報によると、紫楼淵瑞(本名:瑞端燕司)は妻であるイザベラと娘、絵理華の三人家族だ。人形師になってから死ぬまでの四十年間で製作した人形は、大半が傑作選になっている。
 しかしWEB上で確認できた人形の中に『エリカ』という人形は見当らなかった。恐らく淵瑞最後の作なのだろう。世に出すのを躊躇うくらい、溺愛していたに違いない。
「…この机にあるのは……?」
 ガシャガシャとパーツを踏み鳴らしながらルビィが作業場へ入ると、そこにはすでに先客がいた。アヴニールだ。机上に広げられた手記らしきものに目を落としている。ルビィは静かに少女の隣へ並び立った。
「エリカドール…自分の娘を模した人形なのじゃな…」
 アヴニールは日記に書かれていた幸せを目にし、先に逝ってしまった両親に想いを馳せる。もし自分が先に逝っていたのなら、両親はどうしただろうと。しかしそこで頭を振った。例えどんな精巧な人形であっても、自分の代わりはいないのだと。
「…エリカドールは如何思うておるのじゃろう」
 エリカにはエリカの。エリカドールには、エリカドールの、魂は…。
「天魔化してるからなんとも言えねぇな。それに所詮は人形だ。エリカの魂がこいつに宿るなんてことはねぇと思うぜ。宿るとするなら作者の魂くらいだろ」
 製作者が真心を込めたものなら、その魂が物に宿るとはよく聞く話だが。丹精込めて作った人形が天魔になることなど、淵瑞は夢にも思いはしなかったろうし微塵も望んではいないだろう。
 今となっては死人にくちなしだが。
 物悲しげに部屋を見つめるアヴニール。ルビィは黙したまま、静かに日記をめくるのだった。

 一人、館を歩き回っていた鬼姫は、部屋数、物の配置から天井迄の距離をもれなく把握することに努めていた。
 形状の綺麗な人形を見つけると、その配置と状態を記憶する。
 そうして一階の作業場へとやってきた鬼姫は、アヴニールとルビィに合流する形となった。
 二人の視線の先には、今まで館で見てきたどの人形よりも綺麗な少女のドールが、パーツに埋もれる形で覗いている。
「ここにいましたの?」
「ああ、どうやらこいつがそうらしいな」
 散乱するパーツを踏み割ることも厭わずに、鬼姫はそれに近づいていく。
 見た目は完全に西洋人形そのものだ。髪は金色、瞳も綺麗な碧眼だった。
「ふふふ、鬼姫の瞳、気に入って下さると嬉しいですの――」

 皆の協力により館の簡潔な間取りと、作業場からエントランスまでの詳細な距離が判明した。
 誘導班のルビィ、あけびは誘引時のルートを選定。廊下にもさまざまなものが散乱していたため、琴葉とあけびは障害になりそうなものの除去作業に移行する。

●夜・淵瑞邸内部
 夜の帳が下り、すっかり世界は闇色に染まる。
 エントランスに集まる撃退士たちはそれぞれ光源を手に、いよいよの作戦開始を前にしていた。昂揚する者、憂う者、悦楽を期待する者と様々な思いを胸に抱く。
「可愛いお人形ちゃんの残酷解体ショーだ、派手に行くぜ!」
 千里は円錐型の槍を肩に担ぎ声をあげた。戦意高揚。気合十分だ。
「私も夜だから調子良いよ!」
「不知火、頼りにしてるぜ!」
「はい! 背中は任せてくださいルビィさん」
 誘導役のルビィ、不知火はエントランスから東の廊下へ入り、エリカのいる作業場を目指す。
 ナイトビジョンを装着後、鬼姫は二人に続く形で【陰影の翼】を広げて飛翔。地上四メートルの天井付近を飛行し、【明鏡止水】にて潜行しながら二人に付いていく。
 あらかじめエントランスで隠れられそうな場所を見つけていた琴葉は、階段の西側の物陰に身を隠した。
 アヴニールはすぐに外へ出られるよう玄関の扉を開放し、外寄りで待機。
 千里は人形が外へ出た際、瞬間的に叩けるよう外でその時を待つ。

 先行の二人はペンライトで廊下を照らしながら静かに歩いていた。
「夜は不気味さが増すぜ…。長居は遠慮してぇ所だな」
「お昼は面白いネタになりそうって言ってたのに、ルビィさんもしかして怖いんですか?」
「怖くはねぇけど、嫌な感じだろ。廃洋館だの呪いだのってのは。薄ら寒い感じだ――っと、ここだな」
 廊下の突き当りを左に折れ、三つ目の右の部屋の扉へとやってきた。
 作業場の扉は一応閉めて置いたが、夜改めて開けるとなるといささか緊張するものだ。
「不知火、準備はいいか」
 小声で尋ねるルビィに、不知火は息を殺して首肯する。
「行くぞ!」
 勢いよく扉を蹴破り、ペンライトで照らす先に、その人形はいた。しかし昼間の綺麗な姿ではない。
 ゆらりゆらりと、くすんだ白いドレスを揺らしながら浮遊するエリカ。体は継ぎ接ぎだらけで頬が裂けて肉らしきものが露出していた。かくりと首を起こし、血で汚れたその黒い両目で撃退士を凝視する。
「ウフフ、また遊びに来てくれたのね」
 すかさずルビィはジュノンの紋章をかざして【挑発】する。
「このまま引く!」
 そしてエリカに背を向けて駆け出した。
「逃げちゃダメ、ウフフフフ――遊びましょ」
 腕を後ろへ向けて指から糸を繰り出すと、エリカは落ちている人形のパーツを計十個括りつけた。部屋を出ると同時に腕を前方へ振り、ルビィ目掛けて放つ。
 魔力を帯びて飛来する十個の凶器。構わず走り続けるルビィの背に、横から割り込む影があった。不知火だ。
 盾を構え、その全てのパーツを防ぎきる。
「ルビィさんには指一本触れさせない! ……あ、私今すごく武士っぽい!」
 ぎょろりと目を剥くと、エリカは邪魔くさそうに腕を振るった。複雑に動く五指に追随する繰り糸の五つのパーツ。変則的に動き、不知火の背に振り注ぐ。
「しまっ!?」
 油断した、と見開かれた不知火の瞳は、次の瞬間驚きへと色を変えた。
 霰のように降ってきた人形のパーツが、何故かその全てが軌道を逸れたのだ。
 潜行する鬼姫が小太刀の二刀の背を以って、糸をさりげなく動かしたことにより直撃を免れる。
 エントランスまでの間、鬼姫はことごとく攻撃を逸らさせた。その間、攻撃方法、行動時の癖等をつぶさに観察。
 そうしてエリカをエントランスへと誘い出した誘導班。
 エリカはようやく撃退士らと遊べることに嬉々として、カタカタと奇怪な音を響かせながら笑う。
「ワタシと一緒に、遊びましょ」
 エリカが両手を広げ、散乱する残骸に糸を伸ばそうとした瞬間――
 アヴニールは糸で括られる前にそれらを狙撃し破壊する。
 と同時、風を切って弧を描く物体がエリカの右腕を直撃し、そのまま回転しながら階段の物陰に戻っていった。宙でそれをキャッチしたのは琴葉だ。パチンと扇子を畳み、口元に当てては愉しげな笑みを浮かべる。
 ドレスの袖が切られ、覗いたエリカの腕からは血が滲んでいた。
「イタイ、イタイワ、凄くイタイ」
 肩を震わせるエリカの背後で、ルビィは大剣に換装し構える。
「散らばってる残骸を操られるのは厄介だぜ。――庭に押し出す!!」
 大きく振り抜き痛烈な一撃を人形の背面に食らわせた。エリカは吹っ飛ばされ、庭を転げて石柱に顔面から突っ込む。
「ウフフ、イタイ……イタイわよ」
 ゆるりと上体を起こし油断しているところ――
「悪ぃがオモチャになってもらうぜ、可愛い子ちゃんよぉ!」
 エリカの背中を石柱ごと大槍で貫いた千里。柱はその衝撃から粉砕され、エリカの人間で補った胴部からは血が噴出した。
「アナタたち、ヒドイことするのね」
 口から吐血しながら呟き、エリカはふわりと宙へ舞い上がる。そこへ不知火の影手裏剣が急襲した。
 左目に直撃を受けたエリカは、身を震わせながら左目を抉り抜く。
「……目、また探さなくちゃ」
 眼下を見下ろし、適当なモノを見繕うため撃退士らを順に見ていく。そこで、エリカは背後からの視線があることに気づいた。ゆっくりと振り返る。
 美しい真紅の瞳を右目で捉えたエリカは、不気味なほどに口角を吊り上げた。
 鬼姫はくすりと鼻を鳴らす。
「鬼姫の瞳、気に入りましたの? 差し上げる前に、貴女の首をいただきますの」
 それは刹那的だった。鬼姫が小太刀を振るった瞬間にエリカの首が飛ぶ。流れるように逆手に持ち替え、鬼姫は舞うように人形の頭を斬り苛んだ。
 木っ端となった頭部と共に、エリカの体が地に落ちる。
「もう終わったのか?」
 あまりにも呆気ない最期に、撃退士の誰もが拍子抜けしていると……。
 頭部を失ったエリカが、おもむろに上体を起こして立ち上がる。
 それに嬉々とした笑みを浮かべた琴葉は、すかさず【アイスウィップ】で打ち付けた。
「もっと、楽しめるのかな?」
 まるで玩具としか見ていない容赦のない苛烈な攻め。腹部の無数の鞭打ちと裂傷によって、白いドレスはすっかり真っ赤に染められた。
 よろけながらもしっかりと足を踏ん張って立つエリカ。
 先ほど千里が壊した石柱の残骸へ両手を向けると、それらに繰り糸を伸ばす。
 アヴニールと千里は、ショットガンとクロスボウを用いてそれぞれ別の標的へ向けて狙撃。割と大きな石柱の破片は見事破壊され、エリカの機先を制した。
 手持ち無沙汰に狼狽える物言わぬただの人形と化したエリカへ、撃退士たちは総攻撃を仕掛ける。
「父が亡き娘を想って造った人形を汚した罪は重いぜ…?」
 ルビィはこれ以上攻撃されぬようFEで繰り糸を断ち切り、エリカへ肉薄し擦れ違いざまに斬り抜ける。人形の右腕が肩から滑り落ちた。
「良い子はお休みの時間だよ!」
 不知火も続き、忍刀で追撃。今度は左腕を切り落とす。
 琴葉もアイスウィップでさらに腹部への攻撃を加え、アヴニールは散弾をばら撒いた。
 蜂の巣にした後――
「地獄で会おうぜ、可愛い子ちゃん!」
 千里が再び豪快に槍を突き出す。螺旋を纏う槍は上半身を派手に吹き飛ばし、
「――これで終わりですの」
 鬼姫の剣舞によってエリカは千々に刻まれ、完全に沈黙した。

●月夜の淵瑞邸庭
 静寂の訪れた庭で、撃退士たちはそれぞれの想いを胸に立ち尽くしていた。
「…全て終わったこの洋館は…どうなるのじゃろうな…。家が無くなる。居住者も居ない。何とも淋しいの……」
 アヴニールの呟きにルビィは頷き、
「そうだな。でも、もう眠りを妨げるものは何もないぜ。どうか安らかに…」
 亡くなった家族の魂の冥福を祈った。
「……もっと、楽しみたかったなぁ」
 少し離れたところで心底退屈そうに呟き、琴葉は妖しく微笑を浮かべる。
 それを横目に、千里は煙草を一服し、溜息のように夜空へ向けて紫煙を吐いた。
 不知火はわずかに残された残骸を集め、作業場の机の手記の隣に並べに行く。
 静かに翼を広げ、鬼姫は空へと舞い上がる。
「狂気の悲鳴は絶え、静寂の帳…それでは皆様、今宵も良い月夜を…」
 そう言い残し、月の輝く闇い夜空へ一人、彼女は飛び去った――。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 暗殺の姫・紅 鬼姫(ja0444)
 戦場ジャーナリスト・小田切ルビィ(ja0841)
重体: −
面白かった!:6人

暗殺の姫・
紅 鬼姫(ja0444)

大学部4年3組 女 鬼道忍軍
戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
家族と共に在る命・
アヴニール(jb8821)

中等部3年9組 女 インフィルトレイター
自由を求めてやってきた・
瑞朔 琴葉(jb9336)

大学部7年22組 女 アカシックレコーダー:タイプB
焔潰えぬ番長魂・
天王寺千里(jc0392)

大学部7年319組 女 阿修羅
明ける陽の花・
不知火あけび(jc1857)

大学部1年1組 女 鬼道忍軍