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マスター:栗山 飛鳥
シナリオ形態:ショート
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2017/08/15


みんなの思い出



オープニング

(マズイナ……)
 それは人に比肩しうる知能で、ひとり考えた。
 彼は『リボルバー』の名で撃退士に恐れられるサーバントである。獅子の体、老人の頭、天使の翼、蠍の尾を持ち、シルエットはマンティコアという怪物に酷似しているが、特徴的なのは尾の部分。その名の由来となったのであろう回転式拳銃を思わせる弾倉が、針と尾の付け根に装着されていた。
 それが彼の思考をなぞるようにカチ カチと規則的なリズムで回転している。
 事の発端はこうだ……


 リボルバーは遊軍的な役割を与えられたサーバントである。
 日本上空を飛びまわり、撃退士との戦いで苦戦している同胞を見つけては、それに乱入。あべこべに撃退士を返り討ちにしてしまう。
 今日もサーバントの叫びを聞きつけ、彼はそれと戦闘している撃退士達の眼前へと降り立った。
「わああ!? リボルバーだ!」
「ほ、本当に存在していたのか!?」
 浮足立つ撃退士達目掛けて、リボルバーは尾の先端から無数の針を発射した。それに合わせて、弾倉もガチガチガチと凄まじい勢いで回転し続ける。
「ぐっ! あっ、ああああああ!!」
 針を受けた撃退士の一人が、顔を真っ赤にして、全身から汗を吹きだしながら倒れた。
「うっ、ううん……」
 かと思うと、別の針が刺さった撃退士は、一瞬で昏睡状態に陥り
「がっ! うがああああ!!」
 また別の撃退士は、錯乱して味方へと剣を振るい始めた。
 一瞬で地獄絵図を作り上げたリボルバーは、その光景を見て、下卑た笑みを浮かべていた。
 彼の弾倉に込められているのは弾丸ではない。毒――正確には毒の原料である。彼は弾倉を回転させながら、尾の先端で毒を調合し、それを針として発射することができた。
 適当に弾倉を回転させながら撃てば、自分にもどのような毒が出来上がるか分からないが、それを受けて踊り狂う人間の無様な姿を見るのが、彼にとって最高の娯楽であった。
「く……天魔との戦いは終わったっていうのに……こんなところで、死ね、るか……」
 が、息も絶え絶えな呟きが耳に入り、楽しい気持ちも吹き飛んだ。
(ドウイウコトダ?)
 獅子の前脚で呟きを発した撃退士を押さえつけ、テレパシーを送り込む。一瞬驚いた顔をした撃退士だったが、ヘッと鼻で笑うと、リボルバーにとって驚愕の事実を口にした。
「もう天界とは休戦の段階なんだよ。このまま人間と戦いを続けていたら、てめえは処分されるぜ……」
 それからの事はよく覚えていない。撃退士にトドメを刺すことも忘れて、上空へと昇るのがやっとだった。


(マズイナ……)
 時は冒頭へと戻る。主は自分に似ず穏健派だ。戦いが終わった事を知れば、きっと喜んで戦闘行為を止めるに違いない。
 だが、それでは困るのだ。
 自分はもっと戦いたい。もっともっと人を毒で侵したい。もっともっともっとだ。
 暴走した思考は、その翼を主の待つ居城へと向けさせた。
 白亜の塔。
 日本のどこかにあると噂されているその真白き塔は、リボルバーの主が建造した前線基地である。目立つ外観でありながら、主の魔力によって巧妙に隠蔽されているため、その場所を知るのは主の配下であるサーバントと、親しい者数名である。
 最上階の窓から白亜の塔に入り込んだリボルバーは、主の後ろ姿を見た。それがそのまま羽毛布団になりそうな、大きくフワフワした翼を携えた女性の天使だ。
「あら、おかえりなさい。今日は早かったわね……」
 優雅な所作で振り返った天使の細い首筋に、リボルバーは一切の躊躇無く、尾の先端を突き刺した。
「あ……」
 天使が事を理解する前に毒を流し込む。今度は自分の意志で調合した、とっておきの睡眠毒を。
(コレデイイ……)
 フワリと床に横たわった天使を見下ろして、リボルバーは醜悪な笑みを浮かべた。

 白い内装に紛れていた、白い侵入者に気付くことはなく……。


 こうして依頼をさせてもらうのは久しぶりだね。
 アルビオン(jz0230)だよ。
 今まで黙っていたんだけど、日本侵攻を任されていた友人がいてね。彼女の名は『眠り姫』。本名じゃないらしいが、古くからそのあだ名で呼ばれていて、本当の名前は誰も知らない。
 天界との戦争もひと段落して、もう戦わなくていいことを白亜の塔、彼女の住居まで伝えに行ったんだけど、ボクがそこで見たのは、サーバントに眠らされる彼女の姿だった。
 あのサーバントは好戦的なヤツでね。彼女を生かさず殺さず眠らせておくことで、彼女の意思に関係無く戦いを続けるつもりらしい。
 どうか彼女を助けてほしい。
 日本に多大な被害を与え続けてきた仇敵だったことは事実だが、彼女は魔界とも人界とも戦いを望んではいなかったんだ。
 ボクもできる限りの協力はする。眠り姫の説得なら任せてほしい。けど、ボクの力では彼女のサーバントに太刀打ちできない。役に立たないと判断するなら、ボクを白亜の塔の前に置いていってくれてもいい。
 彼女は天界と人界が上手くやっていくためにも必要な人だと考えている。
 2つの世界の未来の為に。
 お願いだ。どうか彼女を救いだしてくれ!


リプレイ本文

 ベッドに横たわる眠り姫の傍らで、リボルバーは彼女の守護獣であるかのように寝そべっていた。だが、ある時、その身をゆっくり起こすと、尾針を唯一の出入り口へと向ける。
『デテコイ……』
 テレパシーを発しながら、針を射出する。腐敗毒が付与された針は、床に突き刺さると、大理石を溶かして異臭をあげた。
「バレちゃしょーがねえ」
 そう言って飛び出したのは、ラファル A ユーティライネン(jb4620)。義肢を飛行形態に変形させた彼女は、鋼の翼を広げてリボルバーへと左手を突き出した。
「往生せいやあっ!」
 だが、リボルバーも軽やかな身のこなしでそれをかわすと、狙いすました針の一撃をラファルの首筋に撃ち込んだ。
「ぐっ」
 ラファルがくぐもった声をあげて、膝をつくようにして地面に落ちる。
「くくく……きかねーなぁ」
 しかし、彼女は笑いながら首に刺さった針を引き抜いた。
 彼女の全身には特殊な血清が流れており、あらゆる毒も瞬時に完治することができた。
「ははは、てめーと俺様は似た物同士だよなぁ」
 再び空中から攻撃を仕掛けるラファル。
「戦いを生き甲斐としてるやつにとっちゃ、平和は参るよなぁ」
 針の弾幕を縫うようにして、ラファルは少しずつリボルバーへと距離を縮めていく。
「だから、今日は俺と踊ってくれよな。そして……」
 電磁を纏い、加速したラファルの抜き手が、再びリボルバーの尾へと襲いかかる。
「今日、お前だけでも楽にしてやるよ」
 ラファルの左手がリボルバーの尾を握りしめていた。だが、リボルバーの尾は凄まじい力で抗うと、尾針をラファルの顔面へと向ける。
「ぐあっ!」
 左目に針を撃ちこまれたラファルが吹き飛んだ。
 リボルバーがラファルを仕留めたと確信した瞬間、その呼吸の隙をつくかのように、新たな影が部屋へと飛び込んだ。
 紫苑のアウルをたなびかせ、鳳 静矢(ja3856)が斬りかかったのだ。
「今度は私が相手をしてやろう」
 振り下ろされた太刀を、リボルバーは跳んでかわした。静矢は手首を返して追撃を放つ。だが、リボルバーは翼を広げると、空中で身を翻して、それすら避けてみせた。
 フワリと着地するリボルバー。その瞬間を逃さず、魔力の渦がそれを直撃した。
「私たち、の間違いですよぅ」
 魔法攻撃を放った体勢のまま、静矢の妻である鳳 蒼姫(ja3762)が頬を膨らませていた。
「そうだな、すまない。では、改めて……」
「アキと静矢さんの連携を見るが良いのですよぅ☆」
 太刀を構えた静矢と、刀を構えた蒼姫が同時に跳んだ。
 静矢の太刀が一振りごとに突風を巻き起こし、蒼姫の刀は流水となって荒れ狂う。
 一切の隙を見せない連刃を避けきれず、リボルバーの全身にひとつ、またひとつと傷が刻まれていく。しかし、1対多こそ、このサーバントの真骨頂。
「ガアッ!」
 連携に割り込むようにして、リボルバーが広範囲に針をばら撒いた。それは、鳳夫妻はもとより、柱にもたれこんでいるラファルにすら襲いかかった。
「あぶなーい!」
 一際明るい声と共に飛び出した春都(jb2291)が、ラファルを抱き抱えながら、転がって別の柱の影に退避する。
「だ、大丈夫ですか?」
「悪ぃ悪ぃ。で、さらに悪いんだが、急いで左目を修理してくれよ」
「修理って……」
 春都が汗を垂らしている間に、ラファルは左目に刺さった針を乱暴に抜いて放り捨てる。
 傷口を確認しようと、春都がラファルの顔に手を伸ばしかけた時、彼女の背でピシピシと堅いものが砕ける音がした。
「おろ?」
 振り返った春都の目の前で、大理石の柱が砂のように崩れていく。その先でリボルバーが尾針を構えていた。
(あんな針でどうやって!?)
 心の中で疑問をあげつつも、無防備になった春都は、ラファルを庇うように立ち、符を構える。
「やらせませんよ〜」
 彼女が術を放とうとした寸前、あさっての方向から飛来した銃弾が、リボルバーのこめかみにめり込んだ。
 弾が飛んできた方向をギロリと見やるリボルバー。その先には太い柱が佇んでおり、その裏でSpica=Virgia=Azlight(ja8786)が隠れているのが、春都の位置からはっきりと見えた。
「ロックオン……穿て……!」
 淡々と狙撃銃を操作して、柱の影からSpicaが狙い撃つ。だが、彼女の存在を認識したリボルバーには当たらない。
 リボルバーもSpicaが隠れる柱へと、針を数発撃ち込んだ。すると、春都の時と同じように、ザラザラと太い柱が崩れていった。
「腐敗。これなら太い柱も……破壊できる……けど」
 Spicaはリボルバーを牽制しながら駆け、別の柱の影へと隠れた。
「一度だけなら盾になる……それで、十分」
 Spicaの隠れた柱をリボルバーが破壊して、Spicaはまた別の柱に移動しながら、時に銃弾を放つ。そうしてリボルバーの注意を引きながら、彼女は春都に視線を向けた。
「今のうち……彼女を、治療して……」
「……はい、まかせてください!」
 春都は力強く頷いた。鳳凰を召喚し仲間の支援を命じると、ラファルの治療に専念する。
 リボルバーは自分に背を向けた春都に襲いかかろうとするが、足下にSpicaの弾が着弾する。
「余所見なんて、してる暇……ある……?」
 リボルバーは苛立たしげに舌打ちすると……その姿が一瞬で消えた。
「!?」
 それは単純に横へと跳躍しただけだったが、撃退士の動体視力をもってすら捉えることは困難な速さだった。
 リボルバーは柱を蹴り、Spicaの背後へと着地する。Spicaも銀槍を顕現させ振り返りざま突き出すが、それよりも早く、リボルバーの前脚がSpicaの華奢な体を床へと押さえつけた。
『キサマナド……イツデモコロセル』
 赤い舌を伸ばしながら、リボルバーがテレパシーを発する。舌から垂れた涎が、Spicaの顔を醜く汚した。
「じゃあ……殺せば?」
 どうでもよさそうに、Spicaがふいっと顔を背ける。
 リボルバーは尾針をSpicaの心臓に向けた。
「そうは……させるもんですかあっ!」
 有り余る元気を覇気に変えているかのような、そんな声が聞こえた。そして、リボルバーにとって驚愕の出来事が起こった。
 彼の目の前で柱が両断され、それごと大剣に薙ぎ払われたのだ。
「ふーっ、間一髪ね!」
 吹き飛んだリボルバーが見たのは、氷の大剣を振り抜いた姿勢のまま息をつく雪室 チルル(ja0220)の姿。
「ありえない、と言いたげな顔ですねえ」
 着地したリボルバーの耳元に、今度は囁き声。誰何する代わりに尾を振るうが、それは虚しく空を切る。
「柱を回りこむより、柱ごと攻撃した方が早い。理屈ではそうですが、思いつくのも、実行できるのも彼女だけでしょうねえ」
 くつくつと笑いながら、エイルズレトラ マステリオ(ja2224)が、相棒のヒリュウと共にリボルバーの周囲を飛びまわっていた。
「最近、強い敵と戦う機会は激減しております。少しは楽しませていただきたい」
 慇懃に礼をするエイルズレトラの眉間に、針が突き刺さった。が、それは残像。
「当たりませんよ。この程度ですか?」
 リボルバーは衝動のまま、エイルズレトラに攻撃を集中させる。しかし、エイルズレトラはその悉くを回避して見せた。
「……!!」
 リボルバーの怒りは頂点に達した。尾をピンと垂直に伸ばし、毛を逆立てるようにして尾針を増殖させていく。ガチン、ガチンと、それに呼応して弾倉が高鳴る。
「これは失礼。挑発が過ぎましたか」
 飄々としながらもエイルズレトラが、どこかすまなそうに全員に声をかける。
「皆さん、どうかご無事で」
 そう言って、彼は持ち前のスピードで部屋の外まで退避した。
「ガアッ!」
 リボルバーが吠え、その尾が弾けた。360度、全方位への針射出。
「ちょっとお!」
 チルルは大剣を盾代わりに
「蒼姫!」
「静矢さん!」
 鳳夫妻は互いを庇い合い
「……」
 Spicaは柱の影に隠れて。
 それぞれがそれぞれのやり方で、猛威が過ぎるのを待った。
「うわあっ!?」
 悲鳴が聞こえ、その聞き覚えのある声に、リボルバーは冷静さを取り戻した。
 針の射出を止め、悲鳴がした方へと顔を向ける。柱だったものの瓦礫と、立ち込める煙の中で、浪風 悠人(ja3452)が銃を構えて立っていた。
「くっ、気付かれましたか」
 彼ではない。
 リボルバーは目を凝らして、彼の背後を注視した。
 巧妙にカモフラージュされているが、よく見ると人のシルエットがあり、その脚にあたる部分には針が突き刺さって血が流れ出している。
 顔にあたる部分をさらに凝視する。
『アルビオン!?』
 リボルバーから無意識のうちにテレパシーが流れた。
「バレた! 急いでください、アルビオン!」
 悠人がアルビオンを庇うように立ち、彼の背を押すが
「う、うん……」
 脚を怪我したアルビオンはヨタヨタと頼りない。
「くっ!」
 悠人はアルビオンを抱えると、跳躍して一気に眠り姫まで距離を詰めるが、まだ届かない。それどころか、彼に追いついたリボルバーが立ちはだかった。
「行ってください、アルビオン!」
 悠人はアルビオンの盾となる。リボルバーは針を放った。それは悠人の胸に突き刺さる。
「行って……くだ……さ……」
 針を受けた悠人の様子が、みるみるうちにおかしくなる。傷口から一切の血は流れず、そこから石化が始まっていた。
「悠人君……」
 アルビオンの足が止まる。
「行けっ! アルビオン!」
 悠人が最後の力を振り絞って叫んだ。
「うっ、うわああああ!」
 アルビオンが再び駆けだした時には、悠人は物言わぬ石像と化していた。
 リボルバーはそれを押しのけ、アルビオンを追おうとする。
「おっと、お前の相手はこの私だ」
 今度は静矢がアルビオンとリボルバーの間に立ち塞がった。リボルバーは煩わしそうに尾を振るうと、1発の針を発射する。
「むっ」
 それは静矢の肩に突き刺さるが、これまでのような痛みは無かった。むしろとろけるように甘美で……
 そこまで考えたところで、静矢が片膝をついた。
「静矢さん!?」
「来るなっ!」
 駆け寄ろうとする蒼姫を、静矢は片手を挙げて制した。
「私は……このサーバントに逆らえない!」
 静矢はそう叫んで立ちあがると、蒼姫に刃を向けた。
 誘惑毒。人の心を意のままに操る、最悪の毒。
「逃げ……ろ……」
 この男の精神力ならば、1分ともつまいが、むしろそれでいい。愛する者を自らの奥義で葬った後、正気に戻り絶望するがいい。
 リボルバーは下衆の極みと言える笑みを浮かべると、この場は静矢に任せて今度こそアルビオンを追った。
「静矢さん、目を覚ましてくださぁい!」
 蒼姫が必死に説得を試みるが、虚ろな目をした静矢に効果は無かった。その左腕に陽、右腕に陰の気を纏い、粛々と奥義の構えを取る。
「ごめん、ここはあたいに任せて」
 いつになく真剣な表情でチルルがその前に立つ。
「な、何をするんですぅ?」
「この人の奥義に、あたいの奥義をぶつけて相殺する!」
 大真面目にムチャを宣言した。
 そして、チルルの持つ氷剣に初霜が降りるかのように、氷のオーラが幾重にも重なりあい、その姿を変えていく。
 彼女の眼前では、紫苑の鳳凰が飛び立とうとしていた。
「正気に、戻りなさあああい!!」
 チルルの氷輝剣と、静矢の必殺剣が重なりあった。
 爆光。
 砕け散った氷粒と、舞い散る羽根が視界を埋め尽くした。
 恐る恐る目を開けた蒼姫が見たものは……
「すまない。迷惑を、かけた」
「ふふん。どうってこと、ないわよ」
 理性を取り戻した静矢と、傷だらけのチルルの姿だった。
 同時に気を失って倒れる2人を、蒼姫は慌てて支えた。
「よかったぁ、静矢さぁん。ありがとぅ、チルルさぁん」
 思わず零れた涙が、宝石のように彼女の頬を転がった。

 一方、アルビオンは眠り姫の下へと辿りついていた。
「おはよう、眠り姫」
 アルビオンが優しく眠り姫の髪をかきあげると、天使はうっすらと目を開いた。
「あら……アルビオン? お久しぶりね……」
「落ちついて聞いてほしい。今、大変なことになっている」
 説明を始めたアルビオンに忍び寄る影。リボルバーである。彼はテレパシーを眠り姫に向けた。まだ弁解の余地はあるはずだ。
『我ガ主、アルビオンニ騙サレ……』
 ブチッ
 そんな音と共に、テレパシーが断絶された。
 リボルバーが驚いて背後を見る。そこには春都に肩を借りたラファルがおり、彼女は血に濡れた左目を見開いていた。
 何をされたかは分からない。だが、何らかの手段でテレパシーを妨害されたのは理解できた。
「リボルバー……」
 眠り姫から冷たい声が発せられ、顔面を蒼白にしたリボルバーが向き直る。
「アルビオンから全て聞きました」
「ア……ア……アアアアアッ!!」
 リボルバーがとった行動は特攻だった。主めがけて飛びかかり、爪を向ける。
「させませんよっ!」
 混沌のオーラを纏った布槍を携えた悠人がそこに割り込み、リボルバーの眉間を貫いた。
「!?」
 お前は石化したはずではと言いたげなリボルバーの傍らに、エイルズレトラも現れた。治癒力を高める聖印を片手で弄びながら。
「ま、そういうことです」
「さようなら、リボルバー……ごめんなさい」
 眠り姫が、爪が食い込むほど拳を握りしめると、リボルバーは心臓を握りつぶされたような悲鳴をあげて消去された。


 戦いが終わった後、眠り姫は深く頭を下げた。
「私がしてきたことは許されないことです。私はどうなっても構いません。ですが……」
 放っておけば、延々と続きそうな眠り姫の謝罪を、チルルが「あー、もう!」と叫んで止めた。
「あたい達は、あんたを助けて欲しいって依頼を受けて来たの。ここにいるのは、全員、あんたの味方! わかった?」
「は、はい……」
 目を丸くしてコクコク頷く眠り姫。
「今度、学園に遊びに来てみてはどうかな?」
 静矢が提案すると、
「その時はボクが案内するよ。白船に乗ったつもりで任せてくれたまえ」
 アルビオンが謎の慣用句を持ちだして、胸を叩いた。
「アルビオンさんは相変わらずみたいで安心したのですよぅ。アキはあの時託されたロッドを胸に今まで戦ってきたのです」
 蒼姫が言うと、アルビオンは照れ臭そうに頬をかいた。
「眠り姫さん。学園では一緒にお昼寝でもしませんか?」
 春都の提案に、眠り姫も「いいですわね、ぜひ」と賛同した。
「わざわざ学園に来てする事がそれですか?」
 悠人が指摘し、場は笑いに包まれた。

 一方、そこから少し離れたところで、エイルズレトラはリボルバーが消えた跡を無感情に眺めていた。
「時代に馴染めぬサーバントは、哀れですね」
「俺の末路も似たもんかも知れねーけどな」
「戦闘に高揚している自分は確実にいた……」
 ラファルとSpicaが口々に言う。
「いずれ俺もそっちに行くからよ、地獄で待ってろ」
 ラファルは落ちていたリボルバーの羽根をつまみ、フッと息で吹いて飛ばした。それは宙を舞うことなく、すぐ床に落ちると、溶けて消えていった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: おかん・浪風 悠人(ja3452)
重体: −
面白かった!:5人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
蒼の絶対防壁・
鳳 蒼姫(ja3762)

卒業 女 ダアト
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
さよなら、またいつか・
Spica=Virgia=Azlight(ja8786)

大学部3年5組 女 阿修羅
久遠ヶ原から愛をこめて・
春都(jb2291)

卒業 女 陰陽師
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍