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マスター:栗山 飛鳥
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/07/25


みんなの思い出



オープニング

 照りつける太陽。それを浴びてエメラルド色に生い茂る熱帯植物達。そこは日本の気候を利用して建設された、ジャングルを模したサファリパークであった。夏休み前で客は少なく、走っているバスも一台限り。
 ズン と地の底から持ちあげられるような地響きが起き、バスの乗客達がざわめいた。地震だろうか。
 メキメキと木々がへし折れる音。ギャアギャアと極彩色の鳥達が飛び立っていく。

 グオオオオオオオオオオオオッ

 現実のものとは思えぬ咆哮が、サファリパーク中に響き渡った。
 木々を薙ぎ倒すようにしてジャングルから頭を覗かせたのは、巨大な爬虫類の顔だった。顔面を横へ割るように大きく裂けた口には、1匹のワニが咥えられている。
「ティラノサウルスだ……」
 バスに乗っていた子供が、抱えていた恐竜の人形をギュッと抱きしめながらその名を呟くと同時に、それはワニを噛み砕き、飲み干した。
 ティラノサウルス。その名は暴君を意味する、白亜紀の覇者。最強の肉食恐竜との呼び声が高く、その名を知らない者はほとんどいない。
 ティラノサウルスらしきソレは再び吠えると、バスへと顔を向けた。巨大な顔に埋め込まれた瞳は意外なほどつぶらだったが、それを可愛いと思う者など一人もいなかった。
 バスが逃げ出すように走り去る。ティラノサウルスは本能的にそれを追う。
 映画さながらの光景に、バス内はパニックに陥っていた。
 ティラノサウルスの牙がバスに届く寸前、ティラノサウルスの横腹に巨大な『何か』が激突し、その巨体を吹き飛ばした。
 素早く起きあがったティラノサウルスがそれに向き合う。それは、三本の巨大なツノを携えた、戦車と見紛うばかりの恐竜だった。
「トリケラトプス……」
 バスの中の少年が、また呟いた。
 トリケラトプス。三本のツノが特徴的な恐竜で草食動物だったとされるが、その攻撃的な外観から人気が高い。
 トリケラトプスらしきソレは、ここが自分の縄張りであると集中するかのように雄々しいツノを高々と掲げてティラノサウルスを威嚇した。
 脇腹から血を流したティラノサウルスは不利を悟ったのか、後じさるように後退し、やがてジャングルの奥へと消えていった。
 バスの中が安堵で満たされていくが、まだ早かった。トリケラトプスは高速で移動する金属の塊も、縄張りを侵す敵と認めたのである。
 バスの横腹に、トリケラトプスの猛烈な突進が加えられる。
 横倒しになりかけたバスは、ギリギリで体勢を立て直し、トリケラトプスから逃げだした。
 トリケラトプスはバスを追おうとはしなかった。
 ようやく危機を脱したバスの中で、運転手はパニック状態になりながら無線で状況を喋り倒し、客達は怯えきって身を寄せ合っていた。
 唯一、本物の恐竜に出会えた感動で興奮しきっていた少年が、上機嫌で窓から顔を覗かせる。そこで彼は、バスと並走している小型恐竜達に気付いた。
「ヴェロキラプトルまで……」
 ヴェロキラプトル。細い外見の小型恐竜で、集団で狩りをしていたと考えられている。
 10匹近いヴェロキラプトルらしきソレらの群れに、いつの間にかバスは囲まれていた。
 その中で、一際大きな体格を持つヴェロキラプトルが、バスへと跳び付いた。鋭い爪で易々とバスの車体に張りつき、その長い首を窓の中へと突っ込む。
 半狂乱になったバスの乗客達は、手にしていたあらゆる物をヴェロキラプトルに投げつける。
 1眼レフのカメラを目に受けたヴェロキラプトルは、たまらずバスから落下した。
 その隙に、小型のヴェロキラプトル達を跳ね飛ばしながら、バスはようやくサファリパークから脱出した。
 その情報がやがて学園に届き、恐竜達はそれらを模したサーバントであると断定され、撃退士達が討伐に向かうことになった。
 太古より、弱肉強食の理が現代に蘇る。生き残るのは人か、天魔か。


リプレイ本文


 ガアアアアッ!!
 絶対的な強者である暴君に威嚇など必要無い。では何故、ティラノサウルスは吠えるのか。
 それは単なる死刑宣告である。
 咆哮をあげながら近づいてくるティラノサウルスから距離を取りながら、偵察のために孤立していたエイドリアン(jc0273)は銃を撃ち続けた。
 だがティラノサウルスは一切怯まず、彼を追い詰めていく。
 そして――


「くっ、まさかこれほどとは……」
 翼を広げ宙に浮いたミズカ・カゲツ(jb5543)が、口惜しさをにじませながら呻いた。彼女の眼前には、ティラノサウルスの巨大な顔があり、そこには随所に弾痕が刻まれていたが、衰えは全く見られない。
 ティラノサウルスが咆哮をあげ、ミズカが怯んだ隙に尻尾を振り下ろす。その直撃を受けたミズカは木の幹に叩きつけられた。
(無念です……こうも簡単に突破を許すとは)
 意識を失ったミズカを一瞥したティラノサウルスは、彼女にトドメを刺さず、首を巡らせてジャングルの奥へと視線を向けた。
 彼を捕食者たらしめる、前を向いた二つの相貌は、より多くの獲物をすでに捉えていた。前かがみになって、その巨体が走りだす。その足が地面を蹴るたびに地響きが鳴り、彼と接触した木々は木端の如く薙ぎ倒されていった。

 その音は、落とし穴を掘っていた撃退士達の本隊にも当然聞こえていた。
「敵が向かってきているようです」
 周囲を警戒していた雫(ja1894)が淡々と報告した。
「囮役のカゲツさん達が突破されたの?」
 シャベルを両手で握りしめながら、蓮城 真緋呂(jb6120)が言った。
 彼女達は穴を掘っている真っ最中だった。ティラノサウルスの巨体を止めるための落とし穴だ。
「そのようね」
 新井司(ja6034)はすでにシャベルを放り出し、戦闘態勢をとっていた。
 こうしている間にも巨大な足音が心臓の鼓動のように、速く、大きくなっていく。

 ガアアアアッ!!

 緑の帳を引き裂いて、咆哮をあげながらティラノサウルスが姿を現した。
 作りかけの落とし穴は、それ以上に巨大な恐竜の足跡に蹂躙され跡形もなくなった。


「よくもみんにゃの落とし穴をー!」
 髪の毛を逆立てて激昂した狗猫 魅依(jb6919)が宙を蹴り、ティラノサウルスの周囲を跳び回ってかく乱する。
「まるで映画の世界だね!」
 続けてふさふさの翼を広げて飛行した桜 椛(jb7999)が、ヒヒイロカネからサックスを顕現させ
「BGMはボクに任せて!」
 そう言って、楽しそうにサックスを吹き鳴らした。壮大な音色が衝撃波となってティラノサウルスを牽制する。
 だが、それらを全く意に介さず、ティラノサウルスは血のように赤い舌をべロリと出して牙を撫でた。いわゆる舌なめずりというやつである。
「余裕というわけね。それがいつまでもつかしら」
 ティラノサウルスの意識が上空の魅依と椛に向いた隙に、蒼い光を燃え上がらせた司の拳がティラノサウルスの脚を打った。
「集灯瞬華、ねじ伏せる…!」
 一撃目の反動を生かして放たれた二撃目の裏拳が、もう片方の脚も打ちすえた。遅れて蒼い燐光が華となって散る。
 だが、彼女の連撃をもってしても、ティラノサウルスに怯んだ様子はなく、いよいよ攻撃のために動きだそうとしていた。
「やらせないよ!」
 椛が盾を構えて仲間達を守る体勢を取り、
「こちらです」
 樹上でアウルの糸を張り巡らせた雫が囮になろうとした。
 各々も守りを固める。
 ティラノサウルスが、その牙を剥いた。
 まずはめいっぱいに大口を広げて、椛にシールドごと食らいつく。それだけではない。彼女がその背に庇っていた真緋呂も巻き添えにして、まとめて噛み砕いた。
 血塗れになった二人を吐き捨て、今度はジャングルに生えたあらゆる木の幹よりも太い尻尾を振り回す。まともに薙ぎ払われた司の体が冗談のように彼方へと吹き飛び、
「にゃああ!?」
 魅依も風圧で墜落。足場となっていた樹を粉々に破壊され、雫も地面に叩きつけられた。
 たったの二撃で、撃退士達は半壊した。
 暴君の名を持つ古代最強の攻撃は、現代の常識を遥かに凌駕していたのだ。
「みんなーっ! 遅れてすまんかったべ……って、何が起きたべ!?」
 偵察にでていた泥だらけの御供 瞳(jb6018)が、合流するなり驚きの声をあげた。
 むせかえるような湿気は吐き気をもよおす血臭へと変じ、仲間のほとんどは倒れており、ミズカと司に至っては姿が見えない。唯一無事だった魅依は、あわあわと皆を助け起こそうとしている。
「……あんたのせいだべか?」
 牙を真っ赤に染めたティラノサウルスを見て、すぐに状況を把握した瞳は
「ゆ る さ んっ!」
 雄叫びをあげ、振り上げた大剣を尻尾に叩きつけた。
 だが、強靭な尻尾は瞳の剣を容易く跳ね返すと、反撃とばかりに瞳の体を弾き飛ばす。転倒はしなかったものの、バランスを崩した彼女の頭上を黒い影が覆った。
 ティラノサウルスが、巨大な足を瞳の頭上に振り上げていたのだ。
 瞳が死をも覚悟した、その時――
 駆け付けた剣閃が、ティラノサウルスの指を切断した。

 ゴオオオオッ!

 ティラノサウルスがはじめて苦悶の声をあげ、たたらを踏む。そのおかげで、瞳は踏みつぶされずにすんだ。
「遅く……なりました……」
 剣戟の主、ミズカ・カゲツが肩で息をしながら言った。
 銀色に輝いていた狐耳や尾は自らの血で真っ赤に染まり、刀を手にしていない左腕はあらぬ方向へと曲がっている。一言で言って凄惨な姿だった。
 一度はティラノサウルスの攻撃を受け気絶し、正気を取り戻すやいなや、回復も待たずにここまで駆け付けたのである。
 さらに別方面からも傷だらけ堕天使が合流し、銃弾を雨と降らせた。
「これで全員揃ったわね」
 足を引きずりながら、司もジャングルの奥から姿を現した。
「もう、さっきのようにはいかないよ!」
 言うが早いが、司が連打をティラノサウルスの傷口、切断された足指に叩きこむ。
 ティラノサウルスがバランスを崩し、その姿勢を低くした。
「桜さん、お願い」
「うん、まっかせて!」
 満身創痍の真緋呂が、同じくズタボロの椛に目配せし、椛は彼女を引っ張って空を飛ぶ。傷だらけの翼をはばたかせ、ティラノサウルスに並んだ椛は……
「えーいっ!」
 全身全霊の力を込めて、真緋呂を投げつける。
 ティラノサウルスに正面衝突する寸前、真緋呂は剣を鱗と鱗の隙間に引っ掛け体勢を立て直すと、鱗でゴツゴツした背に着地した。
「ここまできたら……」
 呟き、真緋呂はティラノサウルスの背に剣を突き立てた。魔力の込められた剣は、しかし肉厚の鱗と、筋肉の鎧に阻まれ、うまく刺さらない。
「わあーっ! 何かいっぱいきたべーっ!」
 地上から瞳の悲鳴が聞こえた。ティラノサウルスの視点からだとよく分かる。いつの間にか、撃退士達は10匹のヴェロキラプトルに取り囲まれていた。まだ誰かに襲いかかると決めたわけでもないようで、遠巻きに撃退士達を観察している。そんな彼等を、ミズカが太刀を派手に振るうことで牽制していた。
「早く、早くしないと……」
 いつヴェロキラプトル達が動きだすかも分からない。焦りに押され、真緋呂は何度も何度もティラノサウルスに剣を突き立てた。だが、焦れば焦るほど、彼女の剣は滑り、突き刺さりはしない。
 そうこうしている間にも、ティラノサウルスは暴れ回り、地上の被害が拡大していく。
 華奢な影がティラノサウルスに弾き飛ばされ、地面にぶつかり粉々に砕けた時には息が詰まったが、よく見るとそれは撃退士達の誰でもなく、ティラノサウルスに近づきすぎた哀れなヴェロキラプトルだった。
「早く、お願い……」
 もう何度目になるのか、それでも真緋呂は剣を振り上げる。
「手伝います」
 しびれて感覚の無くなった手に温もりが戻ってきた。樹を伝って飛び乗ったのだろう雫が、いつのまにか真緋呂の手に触れていた。
「「はあああっ」」
 二人で剣を握り、渾身の力を込めてティラノサウルスの背に突き立てる。
 ドスッ と生々しい音がして、ついに真緋呂の剣がティラノサウルスに突き刺さった!
「やりましたね」
 にこりともせず言うと、雫は自らの剣も、その傷口に突き刺した。後は互いが互いの剣を取り、滑るように奔らせる。
 ティラノサウルスの背がバカッと開き、そこから盛大に血が噴き出した。
 グオオオッ と唸るティラノサウルスは、指の無くなった足を滑らせ、ついに転倒する。それより数瞬早く、真緋呂と雫は地面に飛び降りていた。
「今よ、総攻撃! 叩きこめええぇっ!」
 司が全員を、そして何より自分を鼓舞するかの如く叫んだ。彼女に応えるかのように、全員が全身全霊の大技を、ティラノサウルスにぶつけていく。
 それらが止んだ時には、もうもうと土煙が立ち込めており、その奥には虫の息となったティラノサウルスが横たわっていた。
「ど、どうにかにゃったー」
 へにゃへにゃと、魅依が崩れ落ちる。
「まだですよ。とどめを……いえ、介錯をして差し上げましょう」
 そう言ってミズカが刀を振りかざす。だが、そんな彼女に無数の影が割りこんだ。
 9匹のヴェロキラプトルが、動けなくなったティラノサウルスへ我先にと群がったのだ。
 ヴェロキラプトルの鋭い爪が、ティラノサウルスの目や、口腔、傷口といった柔らかい部分に次々と食いこみ、やがて、バリボリと鱗を剥ぎ、肉を貪り、骨を齧る音がジャングルに響き渡る。
 ミズカは何も言わずに刀を鞘に納め、ティラノサウルスに背を向けた。
「うわー、なんて言うか、グロテスクだねー」
 椛が感心したように言い、
「これが自然の摂理ってやつだべ」
 瞳がうんうんと頷きながら答えた。
「あれはもう放っておいて大丈夫だと思います。次へ行きましょう」
 そう言って、雫はスタスタと歩きだした。
「後はトリケラトプスだっけ? こっちは楽に倒せればいいんだけどね」
 ぼやきながら、司も彼女の後を追う。
「ああ、待って皆、移動しながらでも回復を……」
 掌から暖かなアウルの輝きを発しながら、真緋がさらにその後を追っていった。


 勇壮な3本のツノとは裏腹に、トリケラトプスは草食動物である。その性は大人しく、そして警戒心が強い。
 むしゃむしゃと地面に生えた草を食んでいたトリケラトプスは、不意に危険を察知したように顔を上げ、神経質に周囲を見渡した。
 そんなトリケラトプスの真正面から抜き身の刀を携えたミズカが歩いてきた。
 トリケラトプスが警告するようにツノを高々と掲げる。それ以上近寄ると命が無いぞ、と。
 ミズカはそれに構わずさらに一歩を踏み出す。

 ブオーッ!

 トリケラトプスが牛のような雄叫びをあげ、ミズカ目掛けて突進を仕掛けた。
「甘い!」
 だがミズカは体を翻してそれを紙一重でかわすと、刀のみねで、トリケラトプスの脇腹を薙ぎ払った。
 トリケラトプスが苦悶に呻いて、動きを止める。
「さすがね」
 ミズカの後ろに隠れていた真緋呂も、雷の剣を集中に生み出しトリケラトプスに斬りかかる。雷光の如く鋭い一撃がトリケラトプスの眉間で炸裂し、3本のツノの中心で電流が激しいスパークを巻き起こす。
 さらにトリケラトプスの背後からも撃退士達が続々と現れた。
「でりゃーっ! 狩りの時間だべ!」
 電磁の檻に捕らわれ動けなくなったトリケラトプスの尻に、瞳が何度も大剣を叩きつける。
「穿て、一槍雷貫…!」
 司の放った拳圧が蒼い電光の如く奔り、トリケラトプスの巨体を貫通する。
 撃退士達の猛攻は前後からだけに終わらなかった。
 トリケラトプスの頭上からは大空を舞うように跳ねる魅依が、トリケラトプスの足下からは透過能力を発動した椛が、それぞれ襲いかかったのだ。
「ぶっとべぇ!」
「そーれ!」
 上からは極彩色の火炎が、下からは魔弾がトリケラトプスを焼き尽くす。
 前後と上下からの挟撃にトリケラトプスは混乱し、ろくな抵抗もできないまま撃退士達の攻撃を受け続け……
「これで終わりです」
 最後は雫がトリケラトプスの首筋に剣を突き立て、トドメを刺した。
「こっちは楽勝だったねー」
 ゆっくりと横倒しになっていくトリケラトプスを見ながら、椛が笑顔で言った。
「では、帰りましょ…………」
 武器をしまいながら雫が全員に呼びかけようとしたその時、彼女の感慨の無い声を

 ズン!

 という重低音が遮った。
「まさか……」
 真緋呂が悪寒に青ざめる。
 その足音には、誰もが聞き覚えがあった。
 心臓にまで伝わる地響きが、ゆっくりと、されど確実に近くなってゆく。血臭が世界を覆い尽くしていくような感覚。動物の本能に訴えかける危険信号。
 ジャングルを裂き分け、巨体が姿を現す。
 無頼の暴君。
 ティラノサウルスが。
「あの状況を生き延びたというの……?」
 誰ともなく発せられた司の問いに、ティラノサウルスは牙の隙間に挟まった何かをブッと吐きだすことで答えた。それは、ヴェロキラプトルの首だった。
 されどティラノサウルスも無傷というわけでは無い。先に撃退士達が与えた傷はもちろん塞がってはおらず、ヴェロキラプトル達との戦いも相当の死闘だったのだろう。顔面の右半分は頭蓋骨が露出しており、右目も完全に潰れていた。いずれにせよ、もう長くは無い。
 それでもティラノサウルスは戦いをやめない。
 次の獲物を狩るために獲物を狩る原始からの狩人は、命尽きる瞬間まで狩りを続けるのみ。
「いいでしょう、受けて立ちます」
 ティラノサウルスに負けず劣らず満身創痍のミズカが刀を抜いた。次に攻撃を受ければ命は無いとは分かっていたが、本能的にとは言え闘うことをやめない敵に対して背を向けることだけは考えられなかった。
「いいわよ、最期まで付き合ってあげる」
 拳を打ち合わせて蒼い火の粉を散らしながら、司がティラノサウルスの真正面に立った。
「まぁそれが仕事ですしね」
 あくまでクレバーに雫が言い放ち、剣を構える。
「村の成人の儀式を思い出すべ……」
 瞳も剣を構えながら、大ボラを吹いた。
「もう回復はできないわ。皆、これ以上の怪我は厳禁よ」
 無茶とは分かっていながらも、真緋呂が祈るように呼び掛ける。
「うーっ! こうにゃりゃ、ヤケだぁ!」
 追い詰められた小動物のように、全身の毛を逆立てて魅依が叫んだ。
「みんな頑張れ! ボクも頑張る!」
 仲間達を鼓舞するように、椛がサックスを吹き鳴らす。勇壮な曲が皆の闘士に火をつけた。
 それはティラノサウルスも同じだったのだろう。一際大きく吠えたける。

 そして、死闘が始まった。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:1人

歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
撃退士・
新井司(ja6034)

大学部4年282組 女 アカシックレコーダー:タイプA
銀狐の絆【瑞】・
ミズカ・カゲツ(jb5543)

大学部3年304組 女 阿修羅
モーレツ大旋風・
御供 瞳(jb6018)

高等部3年25組 女 アカシックレコーダー:タイプA
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
諸刃の邪槍使い・
狗猫 魅依(jb6919)

中等部2年9組 女 ナイトウォーカー
この音色、天まで響け・
桜 椛(jb7999)

大学部3年187組 女 ルインズブレイド
撃退士・
エイドリアン(jc0273)

大学部3年294組 男 ディバインナイト