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マスター:久遠 由純
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2016/06/20


みんなの思い出



オープニング

●おっさん
 学校帰りの中学生達が通学路を歩いている。夏が始まり、夕方になってもまだ明るい。
 制服を着た少年少女達は友達同士で笑い合って、楽しそうだ。
 学校近くでは集団だった彼らも、分かれ道になるたびに人数が減っていく。

「じゃあメールするから」
「またね〜」
 さっきまで4人で歩いていた彼女らも、十字路で右に行く二人と真っ直ぐ行く二人とに分かれた。
 直進した二人のうち、ポニーテールの少女が急に思いついたように言う。
「あ、ちょっとコンビニ寄ってから帰ろうかな」
 本来ならこのまま真っ直ぐ行くのが自宅への道だが、消しゴムを買おうと思っていたのを思い出したのだ。
 コンビニへはさっきの十字路を、別れた二人とは反対方向へ行かなければならない。
「それならあたしも付き合うよ」
 ボブカットの少女もそう言って立ち止まる。
 この年頃の少女というのはとかく気の合う友達と一緒にいたがるものだ。
「え、いいの? じゃあ行こっか」
 ポニテの少女も友人の申し出を断るはずもなく、二人一緒にコンビニへ行くことになった。
 そして十字路をコンビニの方へと曲がった時。

 道の先に人が立っているのに気づいた。
 二人の少女は思わず足を止める。
 その人の姿が嫌悪をもよおすものだったからだ。

 その人物は中年のおっさんで、だいぶぽっちゃり体型。頭髪は薄く、いわゆるバーコードというやつで、ほぼ0:10分けの毛を撫で付けている。
 黒縁のメガネをし、三日間くらい放置したヒゲが口の周りに生えまくっていた。はあはあと荒い息遣いをし、顔中に吹き出物ができている。
 服も最悪で、白いランニングシャツに白いステテコとビーサンという外に出るのは完全にアウトな格好だ。しかもシャツからは収まりきらない腹がはみ出している。
 思春期真っ盛りの女子にとって、こんなおっさんはモンスター同様だった。

 キモすぎる。
 変質者。変態。異常者。
 絶対何かやる気満々じゃん。

 それが少女達の素直な感想だ。
「ねえ、違う道から行こうか?」
「そうだね……」
 そのおっさんが微動だにもせずじっとこちらを見ているのが怖くて、彼女らは引き返そうとした。
 と、おっさんの口が笑うようににいっと持ち上がって、タバコのヤニで茶色くなった歯がのぞく。
 寒気が二人の少女の全身を駆け巡る。
「早く行こう!」
 早足で二人がそこを離れようとすると、ついにおっさんが動いた!

 どすどすと少女達目指して突進してきたのだ。
「きゃあああ!!」
 ポニーテールの少女が捕まる。というか、おっさんに後ろから抱きすくめられた。
「いやーーっ!!!」
 少女の絶叫。
「離してぇ!!」
 逃れようと身をよじってもおっさんは離そうとしない。嫌がられてることさえ喜ぶかのようにニヤケたまま、もっと力を込めて少女の華奢な体を締め上げる。
「く、苦しい……!!」
 おっさんはさらにあばただらけのいやらしい顔を少女の顔に摺り寄せる。父親が子供を可愛がる時によくやるように、ヒゲをその柔肌に擦りつけているのだ。
 こんなおっさんに触られるだけでも吐き気がするのに、こんなことまでされるなんて、犯されているも同然だ。
「やめてよ!! キモいんだよ、離せよ!!」
 ボブの少女は友人を助けようと、乱暴な言葉で叫びながらカバンを思い切りおっさんにぶつけたつもりだった。
 が、おっさんにカバンは当たらなかった。カバンがおっさんの体をすり抜けたのだ。
「こいつ、天魔――!?」
 それに気づき友人の少女を見ると、髭面を擦られた友人の顔は傷つき血まみれになっていた。ものすごい力で締め付けられたせいか、口からヨダレを垂らしぐったりしている。
「きゃあああ!! 助けて!!」
 ボブ少女は全速力で逃げた。

 おっさんが追って来ないのを確かめて、少女は走りながら久遠ヶ原学園に通報する。
「助けて! 変なおっさんの天魔がいるんです! 友達が、襲われて……!」
 そう言って、さっきの動かなくなった友人の姿を思い出し涙を溢れさせた。

●またおっさん
 少女二人が襲われたのと同時刻。
 その中年の女性は、犬の散歩をしていた。
 散歩中、道の角にランニングシャツにステテコという、言っちゃなんだがみっともない格好をしたおっさんが立っているのを見かける。
 こんな人が町内にいるなんて、と思いつつも下手に刺激しない方がいいと思い、女性は目を合わせないように通り過ぎようとした。
 けれども、彼女の犬はおっさんを見過ごしにはできなかったようである。
 小型犬のわりにギャンギャンと大声でおっさんに吠え立てたのだ。
「マロンちゃん、ダメよ! す、すみません」
 リードを引っ張っておっさんから犬を遠ざけようとしたが、マロンちゃんは噛み付かんばかりの勢いだ。
 おっさんはそんな犬に対して怒ったふうでもなく、ニヤニヤした顔のまま飼い主の女性に近付き、いきなり抱きついた。
「な、ぐるじぃ――! はな、離して……!」
 犬が離せとばかりに体当たりしても、おっさんの体を通り抜けてしまい手応えがない。それが示す意味が理解できないながらも、犬は主の危機に周りを走り回りながら吠え続ける。
 おっさんは犬を無視して彼女の顔に汚いヒゲを押し付けてきた。
 ぐりぐりぐり。
「痛い痛い! 止めてぇ!」
 金属のように硬いヒゲは彼女の頬の肉をこそげ取る。
 おっさんの腕にさらに力が入り。

 ぼきっ。

 どこかの骨が折れる音がし、女性の意識は途絶えた。


 また同じ頃公園では。
 サラリーマンの男性が公園に寄って一服していると、太ってハゲていてメガネのおっさんが目に入った。いかにも無職でホームレスっぽい。
 おっさんは何故かこっちをじっと見ており、何だか落ち着かない。
 男性はまだいくらか残ったタバコを早々に諦め、携帯灰皿に入れて消す。
 襲われて強盗でもされたらたまらない。サラリーマンがこの場を立ち去ろうとした直後。

 別の意味で襲われたのだった。

●三体いる!
 通報のすぐ後、道で泣いている女子中学生を見つけたのは、町内パトロールのおじさんだった。
 この町内では、定年退職した人を中心に、何人かの有志が子供達の登下校の安全のためにパトロールしているのだ。
「どうしたの、こんな所で。何かあったのかい?」
 声の主が普通のおじさんだと分かった少女は、さっきの出来事を説明する。
 すると、おじさんの携帯に他のパトロール員からの電話が入った。しかも二人から。
 二人共ひどい怪我で倒れている人を発見し救急車を呼んだというのだ。
 一方は犬を連れた中年女性、もう一方はサラリーマン。そのケガはこのボブカット少女の説明にあった、おっさん天魔に襲われた状況と同じだ。
 場所的に、女子中学生を襲ったおっさんがほんの数分のうちに別の場所の女性と公園のサラリーマンを襲うのには無理がある。
「もしかしたら、同じおっさんが少なくても三体いるのかもしれないな」
 パトロールのおじさんは念のため、久遠ヶ原学園に情報提供の連絡をした。



リプレイ本文

●おっさんを探せ!
 通報を受けて現場へと到着した撃退士達は、まずはどうやっておっさんディアボロを探すか話し合った。
 銀髪で青い瞳、好青年ふうの柊 和晴(jc0916)が自分のスマホに町の地図を表示して、皆に見せる。
「有志パトロールの人に聞いたところによると、被害者が襲われたのはコンビニ付近のこの辺りと、公園、さらにこっちの通りらしい」
 一つ一つ位置を確認しながら指し示した。
「ちょうど三方向にバラけてますね。私と柊さんはコンビニ方面から行きましょう」
 小宮 雅春(jc2177)は一緒に行動する柊に小さく頷く。腰まである長髪に銀縁眼鏡という小宮は、奇術師でもある。
 それじゃあ、と顔の両サイドの髪の毛が長い特徴的な髪型をした鳳 蒼姫(ja3762)が身を乗り出して地図を見た。
「アキ達はコンビニとは反対方面の通りから攻めますねぃ。グレンさん、よろしくなのですよぅ☆」
 まだ幼いグレン(jc2277)に笑いかける。グレンは赤いマフラーを常に身に着けており、本人はそれをフェニックスの象徴にしているらしい。
「うん、蒼姫姉ちゃん! よーし、頑張るぞ!」
 元気よく右手を突き上げた。
「では、私達の班は公園方面から行かせていただきますね!」
 ダリア・ヴァルバート(jc1811)が自分の班メンバーに張り切った顔を向ける。その可愛らしい顔の右頬には、蝶のタトゥーがあった。
「正直ミーはおっさん嫌いですけどにゃー。でもおっさん撲滅に協力しますにゃ」
 と言ったのは『にゃ』という語尾の通り、見た目も猫耳に二本の尻尾という猫男の星野 木天蓼(jc1828)。星野自身女の子のような顔に華奢な体つきだが、かなりの女好きである。
「ふん、キモいおっさんが相手とはな。ま、よろしゅうにな」
 こちらは星野とは対照的に女子でもかなりワイルドでたくましい肉体を持つ神無月茜(jc2230)が、ダリア、星野に挨拶をする。

 全員が地図を頭に叩き込んだ後、
「それでは、目指せ、きもっさん撃破!!!」
 ダリアの気合いの入った掛け声で、皆は動き出した。

●柊&小宮
 柊と小宮はコンビニの近くへとやって来た。当然店は閉まっており、普段は学生達がいるであろう通学路にも人影はない。
「どの辺りに潜んでいるのかな?」
 念のため阻霊符を発動し警戒しながら柊が言うと、小宮も周囲に用心して答える。
「きっと人を探してうろついているでしょうね」
「もしかして、俺達は格好の標的なんじゃないか?」
「――そのようですよ」
 『演者』へと自分の中のスイッチを切り替え雰囲気が変わった小宮の視線の先には、ディアボロというには妙に人間くさいおっさんがいた。
 コンビニの陰から、ぬっとその姿を現す。みっともなくシャツからはみ出た腹、汚いニキビだらけの髭面、何を考えているのか分からないニヤケた笑いに柊と小宮は不快感を覚える。
 すぐに光纏しアサルトライフルNB9を構えた柊に、小宮は『墨化粧』を使った。
 アウルの墨で、柊の肌に加護の文字を描く。
「さあ来い」
 柊の声に応えるように、おっさんがどすどすとこちらに向かって走って来る。
 何の意図も思惑も感じられないただの突進だが、その顔だけは、標的を抱き潰す瞬間を妄想しているのか、はあはあと荒い息で嬉しそうに笑っていた。
「何も考えてないのか?」
 柊はおっさんの額、胸、下半身に弾を撃ち込んでやった。
 おっさんは柊にたどり着く前に、ばったりと倒れ伏す。
「小宮さん、後ろ」
 柊の声に小宮が振り向くと、女子中学生が襲われた十字路を走って来るおっさんが。そのおっさんの口周りは血にまみれていて、被害者の一人を襲ったヤツに違いないと容易に分かった。
「斎藤さーん、お願いします」
 小宮は『斉藤さん』と呼んでいる『パペット・マッスル』を具現化した。
 名前通りマッスルな人形は、拳の形をしたアウルを打ち出しておっさんを迎え撃つ。
『無抵抗の一般人を襲うとは不届き千万、成敗してくれるわっ!』
 おっさんは避けようともせず真っ直ぐ拳のアウルにぶつかって顎を強打、仰向けに倒れる。
 起き上がろうとしてくるので、斉藤さんがさらにボコボコと二発拳をお見舞いすると、動かなくなった。
『俺の名前は引導代わりだ!』
「鉄拳制裁はほどほどにしてくださいよ?」
 というやり取りは全部小宮の一人芝居。
 戦闘と言えどもパフォーマンスに見えるような戦い方をするのが小宮の流儀なのである。
「何も考えずに突っ込んで来るだけだけど、逆に嫌なモノがあるな」
 柊がちょっと顔をしかめた。
 小宮も倒れたおっさんを見下ろしながら思う。
(……明日は我が身か。つくづく歳は取りたくないね)
 自分も油断すればこうなってしまうかもしれない三十路手前。何となく他人事に思えない小宮であった。

●鳳&グレン
 鳳とグレンは、仲良しな姉弟のような体でおっさんを探していた。
 グレンのパサランも地面からちょっと上をふわふわ浮かびつつ二人の先を進む。
「僕知ってる! こういうのをおやじ狩りって言うんだよね!」
 グレンは得意げに言った。
 見事な勘違いに鳳はうーん、と苦笑いを漏らす。
「そうですね〜、この場合はそう言えなくもないですが。良い子は天魔以外のおやじ狩りをしちゃダメですよぅ☆」
「そうなの? うん分かった!」
 とかやってると、パサランがこちらを向いて手足をパタパタさせている。
 道の先に二体のおっさんがいた。どちらも全く同じ体型、同じ格好で、キモさが二乗だ。
「おっさん発見……見るだけで精神的なダメージが来そうなのですよぅ☆」
 鳳が若干辟易していると、つんつん、とグレンが鳳の袖を引っ張る。
「……ねえ、あれって流行ってるの? かっこいいものなの?」
「そんな訳ないですよぅ。絶対に真似しちゃいけません!」
「わっ、こっちに来るよっ」
 鳳が同じフォームで走り迫るおっさんに、『マジックスクリュー』の激しい風の渦をぶつけた。
 おっさん一体が『朦朧』でフラフラになる。
 もう一体はそのままパサランへと突っ込んで来て、両手を広げた。
「パサラン、足を狙って!」
 グレンが指示を出すと、パサランは身を屈めて角でおっさんの足元をすくう。
「グレンさん、まずは朦朧中のおっさんの方を頼みます!」
 鳳がパサランに無様に倒されたおっさんに相対しながら促す。
「分かったよ! パサラン、あいつに『ブレス』だ!」
 意識が朦朧としているおっさんに、パサランが力を溜めたエネルギーの塊を口から放った。グレンは続けざまにセイントサイスで切り付ける。
 おっさんの意識が回復しないうちにパサランがもう一度『ブレス』を命中させ、おっさんをやっつけた。
「蒼姫姉ちゃん!」
 グレンが鳳の方を見ると、鳳は蒼海布槍でおっさんの肩口を突き刺していた。
 それでも距離を縮めようとしてくるおっさんの体に布槍を巻き付け、自由を奪う。
「今です、グレンさん!」
「やあっ!」
 鳳の合図でグレンは飛び掛り、思い切り大鎌を振り下ろした。

●ダリア&星野&神無月
 ダリアは持参した菓子パンをもしゃもしゃしながらおっさん探しに専念していた。
「腹が減っては戦が出来ませんからね!!!!」
「なるべくなら遭遇したくないですけどにゃ」
 星野はヒリュウを召喚して別の道を探させていた。『視覚共有』をしているので、ヒリュウがおっさんを発見したら星野にもすぐに分かる。
 神無月は黙々と鋭い目で周辺に視線を走らせ移動。
 三人がサラリーマンの襲われた公園を過ぎ、丁字路に差し掛かった時。
 ヒリュウの見たものが星野にも認識できた。おっさん嫌いの星野にとって気色悪いことこの上ないおっさんだ。
「うわぁ、これはあんまりなディアボロですにゃ……美女のディアボロならよかったのに」
 おっさんはヒリュウを見ると、抱きつこうと走り出す。ヒリュウは星野の方へと逃げ出した! おっさんもそれを追う!
「皆さん、おっさんがこっちに来ますにゃー」
「おや、こちらからもいらっしゃいましたよ……!!!」
 ダリアが星野とは反対の方向を見ている。そちらからもおっさんが走って来ていた。
「む、こっちもキモいおっさん見つけたで」
 丁字路の縦棒にあたる道からも来るおっさんを、神無月が認める。
 おっさん三人が集まってしまってはやっかいだ。一人一体相手するしかない。

「いきますよぅ!!!」
 ダリアは果敢にも自らおっさんに接近した。
 嬉しそうにおっさんが両手をわきわきさせる。
「そう簡単にはいかないのですよ!!」
 ダリアはおっさんに触れられる寸前に、グラビティゼロを突き出した。鋼鉄の杭が一瞬のうちに5発発射される。
 みぞおちに全弾命中し、おっさんは大穴を空けて崩れたのだった。
「この世界も私も、それほど優しくはありませんからね」
 一方、神無月はおっさんが近づいて来るのを、正面に構えて待つ。
 おっさんが『飛燕』の射程に入った瞬間、高速の衝撃波を飛ばした。
 『飛燕』は避けられたが足を止めたおっさんに、神無月は素早く接敵し鉤爪で容赦なく股間を攻撃。
「急所を狙うのはセオリーじゃん。ふっ」
 しかしダメージは与えたものの、人間の男のように特別な痛みや衝撃があった訳ではなさそうだ。おっさんはニヤついたまま神無月に抱きついた。
「くっ!?」
 おっさんの強力な腕力に神無月も対抗するが振り解けない。
 荒い息と共におっさんのヒゲが神無月のむき出しの肌に近づく。
「残念でしたッ!!」
 ダリアがエルヴンボウに装備変更して、おっさんの肩目掛けて矢を放った。
 おっさんの力が緩むと神無月は全力で両腕を開いて逃れ、そのまま背後に回った。
 『破山』の重い一撃を尻にブチ込む。抉るように鉤爪を引き抜くと、おっさんはぐったりと事切れた。
「またつまらんものを抉ったぜ」
 つまらない物中のつまらない物だったが、神無月はニヤリと笑うのだった。

 星野はもっぱら召喚獣に戦わせており、
「ヒリュウ、『ブレス』にゃ!」
 『ブレス』をかわされたヒリュウは、おっさんに抱きつかれてしまった。
 身動きが取れないヒリュウ。ざりざりとヒゲを擦られ、嫌そうな鳴き声を上げる。
「に゛ゃーーーッ!!」
 星野も悲鳴を上げた。
 ヒリュウのダメージを自分も受けてしまうことはともかく、ヒリュウ越しでもおっさんの感触が伝わってくるようなカンジがおぞましい。
 そこへ、星野の後ろからダリアが駆け込んで来た。
「そのコを離しなさい!!!」
 バンカーを背骨に打ち出す。おっさんはその強烈な衝撃でガクガクと体を揺らし、突然力尽きた。
「うぅ〜、最悪だったにゃ……」
 星野はがくりと膝を付く。実際のダメージ以上に精神的ダメージが大きい星野であった。

●三匹以上のおっさん
『こちら柊、おっさんを2体倒し、現在町の中心部に向かっている』
『アキ達も2体倒しまして、同じく中心の方へ移動中ですよぅ☆』
 ハンズフリーにしているダリア達の携帯から、仲間の声が聞こえる。
「了解です! こちらは3体撃破、中心へと探索を続けます!!」
 ダリアも状況を伝えてから、星野、神無月と共におっさん探しを再開した。

 三班がちょうど出会う頃、おっさんも町の中心にある公園に集合していた。全部で5体いるようだ。
「三体以上集まってるな」
 柊がつぶやくと、おっさんは撃退士達に気付きお互いの腕を組み横に連なる。
「ねえ、あれはかっこいい戦闘隊形なの?」
 グレンが変な興味を示す。
「いやいや、格好良くはないですねえ」
 と答えた小宮の方に、おっさん連隊が突撃して来た。
 小宮はすぐさまその場で人形型のアウルを練り上げる。
 おっさん隊をギリギリまで引き付け、顔のない道化師人形『ジョニー君』をけしかけた。
「他のお客様のご迷惑となる行為は固くお断りしておりまーす!」
 ジョニー君がおっさんの一人に抱きつくと、全員を巻き込む大爆発を起こす。
 だがおっさんは止まらない。おっさんの壁がぐんぐん近づいて来る。
「演者に触れるのは禁止で――ぐはっ!!」
 小宮はおっさんの突き出た腹にばいーん!! と突き飛ばされた!
「これはピンチですよぅ☆」
 鳳が巨大な火の球を出現させ、おっさんに投げ付ける。炸裂した『ファイヤーブレイク』によって、両端のおっさんの腕が解かれた。
 離れたおっさんがまた仲間と腕を組もうとする。
「あっ、パサラン飲み込んで!」
 グレンがパサランに命じ、パサランは口を大きく開けておっさんを一体飲み込んだ。
 が、パサランのつぶらな瞳が何だか嫌そうに細められている。
「ごめんね、パサランごめんね!」
 どうやら召喚獣もおっさんを飲み込むのは嫌らしい。パサランはブルブルと震え、べっと吐き出した。
「パサラン、挟み撃ちだよ!」
 グレンは正面から大鎌で、パサランは背後から『ブレス』で、ベトベト状態になったおっさんを倒した。
「おっさんにも困ったものだ」
 もう一体のはぐれたおっさんは、柊が銃で蜂の巣にして止めを刺す。

 残りの三体は腕を組んだまま星野達の方へ突っ込んで行く。
「これは目が潰れるレベルですにゃ! ヒリュウ、任せたにゃ!」
 星野は召喚獣に戦闘を丸投げし、近くの遊具に身を隠す。
 ヒリュウが健気に『ブレス』をぶつけるも、あっさりおっさんの腹にボイーン! と弾き飛ばされてしまった。
「ああヒリュウ、可哀想だけどこれは代わってやれないのにゃ……」
 物陰でヒリュウと同じダメージを受けながらも、星野はそっと涙を押さえるのだった。
 ダリアが真ん中のおっさんに針山のようになるまで矢を撃ち込み倒すと、おっさん達は腕を離し一体ずつ分かれる。
「あたいを舐めるなよ」
 神無月はすかさず一方のおっさんとの間合いを詰めて足払いを掛けて転ばし、うなじに鉤爪を突き刺して息の根を止めた。
「おっさんとのハグは遠慮するのです!!!」
 ダリアはグラビティゼロを装備し、弱りながらも『さあ僕の胸に飛び込んでおいで♪』と言わんばかりに両腕を広げてニヤついているおっさんの胸に、鋭い杭をプレゼントしてやるのだった。

●撲滅されたおっさん
 他におっさんがいないのを確認した後、不運にもおっさん被害に遭った小宮と星野、神無月は小宮とダリアの『ライトヒール』で治療してもらった。
 小宮は自分で治療しながら、
(僕もいつまで『このまま』でいられるだろうね? アンチエイジング考えようかなぁ……)
 現実は渋く厳しいのだ。
 なんて考えていると。
「おじさんたちだって、今はかっこよくないかもしれないけど、きっとかっこよかった時があるはずだよね。みんながずっと、かっこいいままでいられたらいいのになあ」
 まさに邪念のないグレンの言葉が胸に沁みた。
「グレンさんは良い子ですねぇ」
「そうかな? えへへ〜」
「皆さん頑張りましたですよぅ☆ 胸を張って学園に帰りましょう!」

 鳳が皆の労をねぎらい、おっさん退治の依頼は無事成功に終わったのだった。



依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

蒼の絶対防壁・
鳳 蒼姫(ja3762)

卒業 女 ダアト
V兵器探究者・
柊 和晴(jc0916)

大学部3年52組 男 陰陽師
勇者(RPG的な)・
ダリア・ヴァルバート(jc1811)

大学部2年249組 女 アストラルヴァンガード
女好きの招き猫・
星野 木天蓼(jc1828)

高等部3年1組 男 バハムートテイマー
愛しのジェニー・
小宮 雅春(jc2177)

卒業 男 アーティスト
魔法(物理)少女★あかね・
神無月茜(jc2230)

高等部3年29組 女 阿修羅
聖獣使い・
グレン(jc2277)

小等部3年1組 男 バハムートテイマー