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マスター:久遠 由純
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/03/19


みんなの思い出



オープニング

●歩く大根?
 夜も明けきらぬ早朝、二本の大根が畑を歩いていた。
 それらは自ら立って歩いているとは言え、たくあんが薄汚れたような色の大根に見えた。
 どことなく人の形をしており、手足っぽく根が枝分かれしている。その短い足でひょいひょいと歩く姿は、まるでクレイアニメでも見ているかのようだった。
 頭にあたる丸い部分には口の裂け目があり、髪の毛のごとく緑色のニラのようなものがもっさり生えている。体は特にくびれなどはなく、寸胴な体に分かれた根っこが手足のように見えるだけだ。
 この二体は一応、悪魔が作ったディアボロだった。
 彼らの気まぐれな主はマンドラゴラを作りたかったようなのだが、実際にできたそれはいかにも不格好としか言い様がない。マンドラゴラとは根が人の形をしているものだが、これはどちらかというとよくテレビ番組などに投稿される、妖しく根分かれした滑稽な形の根菜にしか見えなかった。
 こういうものはもっとリアルな方が不気味だろうに、コレはコミカルとさえ言える。彼らの主はイマイチ不器用というか美的感覚が大雑把というか、そういうところがあるようだった。
 自分で作ったにもかかわらず、造形が上手くいかなかった彼らを主は嫌った。さらに主の不興を買ったのは、彼らがあまり積極的に敵に向かって行こうとしないことだ。
 完全に失敗作とみなされ、ろくな命令も与えられず彼らは放置、いつの間にか主はいなくなっていた。
 そうして彼らは野良ディアボロとなり、ここまで移動してきたのだった。

 畑に来ると、二体のマンドラゴラは白菜の列に興味を示した。
 白菜の隣に立ち、透過能力を使い自らの体を頭が少し出るような形で土に沈ませた。

 この畑は林家とご近所の3家庭が共同で借りている畑で、できたものも皆で平等に分配する。周りはそういう一般家庭が借りている畑ばかりで、近くに一軒その土地を管理している農家がある。畑作りのアドバイスなどもしてくれるいい人だ。
 彼らの家からは車で数分しかかからず、週末の趣味としては家計の助けにもなるし運動にもなるしで大助かりなのだった。
 今日は土曜日で、さっそく林夫妻がやってきた。
「お、今日は白菜がだいぶ収穫できそうだな」
 手早く用意をして林氏が白菜の列の端まで行った時、ふと見覚えのないものが目に留まった。
「なんだこりゃ? 母さん、ニラだか万能ねぎだかなんて植えたっけ?」
 林氏は妻に尋ねる。妻も呼ばれて彼の隣にかがみ、それを見た。
「あら、何かしら? いいえ、一昨日まではそんなのなかったわよ? それにこの二つだけなんて、おかしいわ」
「そうだよなあ。鈴木さんが植えたのかな?」
「それにしたって……」
「まあもう結構育ってるみたいだし、抜いてみるか」
 いくぶん不審な感じはしたものの、取りあえず抜いてみることにした。
 青々とした草の束をつかみ、一気に引き抜く。
『キエエエェェー!!』
 引き抜かれると同時に、それは奇声を発したのだった。
「ぐあ……!」
 林氏は目を見開いたまま昏倒し、その場に倒れる。側にいた妻も白目を向いて倒れ、ピクリとも動かなくなった。
 すると、もう一体のマンドラゴラが自力で土から出、ひょいひょいと林氏に近づき根っこの手をぶすりとその体に突き刺した。そして、植物が土から養分を吸うように、人から生命力を吸うのだった。
「キャアアア!」
「た、大変だ!」
 ちょうどその場面を見てしまった来たばかりの鈴木夫妻が、慌てて逃げ出し通報した。

●失敗作のマンドラゴラ
「最初は撃退庁から二人ばかり派遣されたらしいんだが、一人が昏倒してしまったため、連れ戻された。で、ウチに依頼が回ってきた訳だ」
 と久遠ヶ原学園の男性実技教師が、集まった撃退士達に資料を配りながら言った。
「結果分かったことは、マンドラゴラ型ディアボロ二体。見た目は完全に大根だがな。大きさは50センチから60センチ程度。普段は地面に埋まっていて、引き抜くと奇声を発する。かなりの絶叫らしい。一般人なら半径50メートル内にいた者は皆昏倒、体が麻痺し意識不明になる。積極的に向かってくることはあまりないようだが、一体が絶叫を上げて敵を動けなくさせ、もう一体が手を突き刺し生命力を吸う」
「その絶叫というのは、私達撃退士が聞いても大丈夫なのですか?」
 生徒の一人が手を挙げ質問した。
「それなんだが、奇声を発するのは分かっていたから、撃退庁の二人は耳栓を装着して行ったみたいだな。だが、前衛で戦っていた阿修羅は攻撃直後の絶叫で昏倒してしまった。後衛のダアトが阿修羅の生命力を吸っているマンドラゴラを攻撃して引き離し、阿修羅を運んで撤退したらしい」
 そこで一度皆がちゃんと聞いているか様子を確認し、再び手元にある資料を見ながら説明を続ける。
「どうやら、物理攻撃だろうが魔法攻撃だろうが、何らかの攻撃を受けても絶叫するようだ。後衛のダアトは無事だったから、絶叫時に近くにいると昏倒してしまうのだろう。接近戦は不利だな。でもまあ、あまりサイズもでかくないし、用心さえすれば難しい敵ではないはずだ。どうだ、やってみるか?」


リプレイ本文

●大根を探せ!
 撃退士達は、通報のあった畑を管理している農家へとやって来た。
 そこには畑仕事をするために来たのだろう夫婦が何組かかたまって、彼らの到着を待っていた。天魔の被害にあった夫婦がいると聞かされ、さらに先に派遣された撃退士がやられて帰ったということで、皆不安そうにしている。
「大丈夫です、わたし達が必ず倒します。ですから皆さんは絶対にここから出ないでください」
 緑がかった金の瞳を持つ黛 アイリ(jb1291)が、外見よりも落ち着いた声で告げる。
「……周辺の地図とかありますか?」
 物静かに問いかけたのは、セレス・ダリエ(ja0189)だ。いや、と農家の主人が答える。いかにも農業をやってる感じの、日焼けした小柄なおじさんだ。
「地図もなにも、ここは畑と野っ原で見通しもいいから、誰か来たらすぐに分かりますよ。今の所うちの畑に来る人以外はいないし、その人らにも畑に近寄るなって言って帰らせるかここにいるかです」
「そうですか……分かりました」
「今度こそよろしく頼みます」
 おじさんは頭を下げた。

 屋外では、全身着ぐるみの大谷 知夏(ja0041)がハイテンションで
「ご近所の平和を守る為、そして珍しい形のディアボロを拝む為参上!」
 とヒーローよろしくポーズを付けている。
「無事に退治したら、お礼に畑の野菜とか貰えるっすかね?」
「うーん、私は野菜よりマンドラゴラそのものに興味ありますねぇ……」
 ニマリとしながら言った金髪くせっ毛のセラフィ・トールマン(jb2318)は、さらに怪しげな発言をした。
「マンドラゴラと言えば、アレですよね。叫び声を聞くと死ぬってのが有名ですけど……、確か、魔法薬の材料としてもよく知られてますよね。特にアレなおくすりの方面で……。いや、別にやましい事とか考えてないですよ? ちょっと削ってパパのお茶に入れちゃおうとか、そんな恐ろしいこと……」
 ちらっと仲間を見ると、体は大きいが年齢的にはまだ少年の虎落 九朗(jb0008)が若干冷めた目で彼女を見ており、その隣で長い黒髪に大きな目が愛らしい東風谷映姫(jb4067)は、セラフィの言葉の意味が分かっていないのか、にこにこしていた。
「二人とも、ちょっと不謹慎だぜ? これ以上犠牲者をださねぇためにも、きっちり始末つけねーと」
「はーい」
 虎落のたしなめにいくらか真面目になって、大谷とセラフィが返事をする。
「しかしあれだな、こんなにアスヴァンが揃った依頼なんて奇跡のレベルじゃね? 安心感は半端ねえ。それに攻撃にも参加するとなると、悪魔勢相手なら火力も意外に高いし……」
 そこまで言った虎落は、女性達が意地悪な笑いを浮かべて自分を見ているのに気付いた。アスヴァンに信頼を寄せている彼自身のジョブも、アストラルヴァンガードだからだ。
「いや、自画自賛じゃねえからな!?」
 あわてて付け加えるが、彼女らはうんうんとうなずいた。
「知夏もそう思うっすよ! だから頑張るっす!」
「私のおくすりのためにも!」
 最後の一言がちょっと引っかかったが、四人はよし、と気合を入れる。
 黛とセレスが家から出て来たので、皆でもう一度作戦の流れをおさらいすることにした。
 全員戦闘中はマンドラゴラの絶叫防止に耳栓をしてしまうため、意思伝達はハンドサインで行う。いざという時にまごつかないように、『攻撃開始、援護or回復求む、回復に入る、前に出るor後ろに下がる、待て』等のサインを念入りに確認した。
 それから一応一般人が周囲にいないか、大谷、セレス、東風谷が見回り、その後行動を開始する。
 皆が再確認したところで、見回り班はそれぞれ畑周辺に向かった。

 畑の先は木がまばらにあり、その向こうに住宅地の始まりを示すように一軒家がポツポツと建っている。道を挟んだ反対側は昔は田んぼだったらしい野原が広がっていた。農家のおじさんが言っていた通り見晴らしがいいためか、大谷達はものの数分で帰って来た。一般人は誰もいなかったようだ。
「それじゃあ、皆行くぜ!」
 虎落の号令で皆は耳栓を装備、大谷はさらにヘッドフォンを着けて大音量で音楽を流し、セラフィは耳栓の上にもふもふの耳あてを着けた。
 これでお互いの声は聞こえない。虎落はサインを送り、皆は固まらないよう広がった。
 敵が地中に埋まっていると見つけにくいため、黛は光纏し阻霊符を発動させる。これでマンドラゴラが地中に埋まっているなら外に押し出されただろう。それから、己自身に『聖なる刻印』を刻み込んだ。なるべく畑を踏み荒らしたくないけど、と思いつつ探索を開始する。
 虎落とセラフィは皆より前を行く。虎落も自身に『聖なる刻印』を使用した。
 誰かのサインを見逃さないようにお互いの動向にも気を配りながら、彼らは少しずつ進んだ。
 畑には白菜の他にもネギやじゃがいも、ハーブなどが植えてあり、作業用農具や肥料などがそのまま放置されていた。
 セレスはあまり畑を荒らさないよう、時折背後も気にしながら、ネギの畝を注意深く見てゆく。
 セラフィが畑の真ん中辺りで、『生命探知』のスキルを使うために光纏した。頭上に天使のごとく光の輪と白い翼が現れる。本人はあまり気に入ってない現象だが、こればかりはどうしようもない。
「さーて、何処に隠れてるかなー♪……いた!」
 セラフィはすぐにハンドサインを使い、皆に前方10時の方向に敵がいることを知らせる。ゆっくり歩み寄ると、ハーブの列の端で地中に入れないことが不思議なのか、まごまごしている二体の大根のようなものが見えた。
 10メートルほど手前で、虎落は待ての合図を出す。

●大根退治
 あまり曲がらない文字通りの大根足で、あっちにウロウロ、こっちにウロウロしている二体のディアボロ。
「うわぁ……なんていうか、その、無駄に美脚ですねぇ……」
 じっくり見たセラフィの感想だった。
(……意外と可愛い)
 これは黛の感想。
 虎落とセラフィは視線を交わし、スキルの射程範囲にまでマンドラゴラとの距離を詰める。耳栓をしているとはいえ、近距離の攻撃は絶叫から逃れられるか分からない賭けのようなものだった。
 ピコッとディアボロが撃退士達に気づくが、オタオタしているだけだ。
 光纏のために出現している虎落の背後、太極図の黒い部分が増え、回転しだした。聖なる鎖を出現させる。虎落の『審判の鎖』は蛇のようにくねりながら右のマンドラゴラに襲いかかり、縛り上げた。麻痺してくれれば戦闘が有利になる。
 虎落とほぼ同時にセラフィも『Apocalypse:Restraint』を放つ。白い翼が白銀の鎖に変化し、流れるような動きで左のマンドラゴラを絡め取った。
『キエエエェェェ!!!』
 二体が奇声を発した。
 耳栓のおかげで音自体は聞こえないが、全員の頭の中がビリビリと振動に震えるかのようだった。
「くッ……!」
 虎落は何とか持ちこたえ、マンドラゴラから離れた。
 しかしセラフィが倒れている。
「!」
 すぐさま気付いた黛が回復求むと後ろに下がるのハンドサインをし、セラフィを後衛まで運んで行く。
「大丈夫?」
(……って言っても聞こえないか)
 セラフィは目を見開いたまま昏倒していた。
 はっとマンドラゴラの方を見た虎落は、一体がいなくなってることに気付いた。運良く麻痺にならなかったらしい。セラフィに一瞬気を取られたスキにどこかに隠れたのかもしれない。
 セレスと東風谷の方を見たが、彼女らも少々あせりの表情で分からないと首を振る。
 とにかく、大谷は黛とセラフィの所に駆けつける前に、スキル封じの魔法陣を展開させた。聖なる鎖に巻きつかれ麻痺しているマンドラゴラの絶叫封じに成功、こうなればただの面白おかしい形の大根である。
 目の前の一体を確実に仕留めるために、虎落は攻撃開始の合図を出した。
 その間に大谷は回復に入ると知らせ、セラフィと黛の所へ駆けつけた。

 セレスの手元にエネルギーが集まってゆく。それは薄紫色の矢の形になり、マンドラゴラに発射された。マンドラゴラは避けようとぴょこぴょこと足を踏み変えていたが上手くいかず、片足を矢に持っていかれた。
『キィアアアア!!』
 マンドラゴラは絶叫するも、もう撃退士達の脳を揺らすような感じはない。
「えいッ」
 東風谷もバヨネット・ハンドガンでマンドラゴラを攻撃する。マンドラゴラの頭頂部がえぐられ、髪の毛のような葉っぱが吹き飛んだ。
『キエェエ!!』
 続けて虎落のシルバーマグが火を噴いた。が、鎖が消え麻痺が解け、マンドラゴラは片足でぴょいんと横に移動しそれを避けた。そのままおかしな動きでこちらに近づこうとする。
 近づかせまいともう一度放ったセレスの光の矢がマンドラゴラの腕を射抜き、その動きを中断させた。根っこの腕がちぎれて後ろに飛び、ぽとりと落ちる。
『キヤァアア!!』
 苦痛のために叫んでいるのかそういう性質ゆえに叫んでいるのか、もはや分からなかった。
「よし! これで止めだ!」
 と虎落が叫び(誰にも聞こえていないが)、セレスと東風谷に自分が前に出るサインをする。
 『レイジングアタック』でカオスレートが天界寄りになったシルバーマグWEを構え直した。そして足と手をもがれもたもたさせているマンドラゴラの体に、数個の風穴を空けた。

 虎落達が戦っている後ろでは、大谷の『クリアランス』でセラフィが昏倒から回復していた。
「ううぅぅぅ……! 耳栓しててもここまで効くなんて……っ!」
 声は聞こえないが悔しさだけは黛と大谷にもよく分かった。
 黛が辺りを見回すが、もう一体はちょっと見ただけでは見当たらない。野菜に紛れられたら意外と見分けがつかないのだ。
 大谷が虎落達が相手をしている一体のマンドラゴラを示し、もう一体がいないとジェスチャーした。何となく悟ったセラフィは解った、とうなずいてもう一度『生命探知』を行う。
「……後ろだ!」
 セラフィが指差した方向には、手押し車があった。その後ろに隠れるようにして、もう一体のマンドラゴラが接近していたのだった。
 素早く黛が攻撃開始を指示し、大谷とセラフィは散開する。
 黛はその瞳と同じ色の光を宿した十字手裏剣を、射程ギリギリから投げた。しかしマンドラゴラがヒョッとびっくりした仕草で飛び上がったため、当たらなかった。そのコミカルな動きが笑いを誘い、黛は思わず頬を緩めてしまう。
(ヤバイ、ちょっと可愛い……)
 セラフィの眼前に無数の稲妻の矢が出現した。
「いっけえー!」
 右手をマンドラゴラに向かって突き出すと、稲妻は真っ直ぐ目標目指して飛んでいく。マンドラゴラの胴体が削り取られ、太さが半分ほどになってしまった。
『キエエエェ!!』
 絶叫するが、皆マンドラゴラからは充分に距離を取っているので昏倒には至らない。
「たたみかけるっすよ!」
 大谷が両手を広げると、頭上にいくつもの彗星が現れた。両手を振り下ろす動作と共に、アウルの彗星がマンドラゴラに降り注ぐ。
『キアアァァ!!』
 頭は潰れ葉っぱはちりぢりになり、腕もねじれてしまった。危なっかしく立ってはいるが、もう滑稽というよりは哀れな姿だ。
(ちょっと可愛かったけど、ディアボロはディアボロだからね)
 黛は気を引き締め、『レイジングアタック』を使用した手裏剣を再度勢い込めて放つ。
 マンドラゴラは胴を完全に切断され、ぱたりと倒れた。
 その残骸は、野生の動物に食い散らかされたただの野菜に見えなくもなかった。

「大丈夫か!?」
 先に一体を倒した虎落達が黛達の方へやって来た。敵を倒したらしいのを見ると、耳栓を外した。皆もそれにならって耳栓を外す。全員がほっとした息を吐いた。
「ディアボロにしておくにはもったいない、見事な大根だったっすね!」
 大谷が戦闘の熱気も冷めやらぬまま、感心したように言った。
「さて、私はマンドラゴラをちょっぴりいただいて、おくすりにしましょうかねぇ〜」
 ルンルン♪という擬音が聞こえてきそうな足取りで、セラフィがマンドラゴラの死体に近づく。が、
「薬って、伝説でいう魔法の妙薬のこと? でもそれ悪魔が作ったディアボロだから、そういう効果は期待できないと思う」
 黛の冷静で的確なツッコミがあり、彼女の足ははたと止まった。
「し、しまったあ〜、そこまで考えてなかったぁぁ!」
 がくりとうなだれるセラフィであった。

●修復作業
 畑は結局見て見ぬフリができないくらい荒れてしまったので、黛とセレスが修復する役を買って出た。
 虎落は最初の犠牲者、林夫妻を見舞いたいと言い夫妻が運ばれた病院に向かう。
 他の者は農家にいる人達に報告に行った。

 虎落が病院に着くと、林夫妻のご主人の方は危機は脱したものの絶対安静とのことだった。夫人の方はまだ動けはしないもののそれ以外は大丈夫らしいので、虎落は夫人に面会することにした。そしてディアボロを退治したということと、畑を荒らしてしまったので仲間が修復している旨を伝えた。
 夫人はディアボロ退治に深く感謝し、畑についても責めることなく、むしろ多少傷んでしまっても食べられそうなものは持って行ってもいいと言ってくれた。
「ありがとうございます! それじゃあお大事に!」
 虎落は嬉しそうに一礼し、病室を後にした。
(こりゃ大谷さん喜ぶな)
 などと思いながら。

「ふう……、こんなもんかな」
 黛は軍手をはたきながら立ち上がった。
 戦闘の影響で破損してしまった野菜を抜いて、崩れた畝を直した。じゃがいも以外は三分の一ほど抜くことになってしまったが、仕方ない。
「そっちはどう?」
 隣の畑で作業しているセレスに声をかけると、彼女は終始無言だったが、立ち上がりこくりとうなずく。二人はあまり会話もなく作業していたが、別に居心地が悪いというわけではなかった。
 二人の頑張りで、何とか畑を戦闘前のような元の形に戻すことができた。
 農家から大谷達が手を振りながら出て来る。中にいた夫婦達も、畑の様子を見るために出てきた。
 彼らはディアボロ退治と畑の修復に満足したようで、口々に撃退士達にお礼を言い、握手を求めたりお茶やお菓子を勧めたりした。
 やがて虎落も戻り日も暮れた頃、そんな素朴な人々に見送られ、撃退士達は学園へと帰って行くのだった。
 全員が満足気な顔だったが、大谷だけはそれ以上のホクホク顔で、ダンボール一杯の白菜やらネギやらじゃがいもを抱えていた――。



依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 撃退士・虎落 九朗(jb0008)
 銀狐の見据える先・黛 アイリ(jb1291)
重体: −
面白かった!:4人

癒しのウサたん・
大谷 知夏(ja0041)

大学部1年68組 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
セレス・ダリエ(ja0189)

大学部4年120組 女 ダアト
撃退士・
虎落 九朗(jb0008)

卒業 男 アストラルヴァンガード
銀狐の見据える先・
黛 アイリ(jb1291)

大学部1年43組 女 アストラルヴァンガード
無敵のFinal☆ファザコン・
セラフィ・トールマン(jb2318)

高等部3年10組 女 アストラルヴァンガード
久遠ヶ原のお洒落白鈴蘭・
東風谷映姫(jb4067)

大学部1年5組 女 陰陽師