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マスター:久遠 由純
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2015/06/15


みんなの思い出



オープニング

●親バカ天使再び
 その母天使は、自分の息子を超カワイイ天才だと思っており、溺愛していた。
 息子はまだ4歳。金髪の巻き毛とパッチリした大きな青い瞳が母の自慢だ。
 絵の才能もある。(と母天使だけが思っている)
 息子が紙以外の場所に落書きしても咎めず、むしろ描かれた絵を褒め称える。褒めて伸ばすと言うより、息子に対して躾るとか怒るといった感情が全く湧かないのだ。彼女にとって、息子のすることはとにかく全て褒めるべきことなのだった。

 以前息子の描いた羊のイラストを元にサーバントを造り、その活躍の様をビデオに撮って息子に見せたら、とても喜んでくれた。飽きもせずその映像を何度も見ていたくらいだ。
 よっぽどそれが気に入ったのか、最近、違う動物もビデオに撮ってくれと頼まれた。
 愛する息子の頼みなら、断るわけがない。
「よーし、お母さんに任せて!」
 と自信満々に言って出来上がったのが、今回のサーバント『馬鹿』だった。

 『馬鹿』とは、まずずんぐりした体にぼうぼうのたてがみのある馬らしきものの首がついている。ぐわっと開いた口にはデカイ歯が並んでいて、すでに口があるのに、目の下には線状の鼻とにっこりした口があった。
 その隣に二股に分かれた首が伸び、角の生えた鹿の顔がある。角といっても鹿っぽくはなく、どちらかというと鬼の角のように真っ直ぐでとんがっているだけで、やけに長い。こちらの顔には眉毛まであった。
 さらに胴体と比べると細すぎで長さもまちまちな足が5本生えており、絶妙なバランスで立っている。尻尾だけは馬のそれと変わらないようだ。
 全体的に青色で、胴体の半分が茶色とのしましま、塗りの荒い部分は白いまま。
 そして今回一番意味不明な部分が、そのサーバント馬鹿の上に『馬鹿』という文字が常に浮かんでいる所だった。

 母天使は忠実すぎるほど忠実に、息子の絵を再現していた。
「それにしても知らなかったわあ〜、『バカ』って動物がいたのね!」
 初めて息子の『馬鹿』の絵を見た時、母天使は驚愕した。
 母は人間界のことをよく知らないのだが、我が息子は難しい漢字とやらも書けるし、こんな動物のことまで知っている。
 息子は単に『馬鹿』という字から連想した想像図を描いたに過ぎない。子供ならではの想像力を働かせただけだ。けれども、息子を天才と崇める母天使はそんなこと思いもしなかった。
「さすがあの子の天才ぶりは天界を駆け巡るわね!」
 訳の分からん賛辞で我が子の天才ぶりを再確認した母天使は、このサーバントをまた町に放ちに行くつもりだ。
「でも、撃退士が厄介なのよねえー。どうすればいいかしら……」
 撃退士に邪魔されないで撮影をするには。頭をひねった結果、
「そうだわ、人間のフリをしましょう!」
 翼を見えなくして、『馬鹿』が珍しいから撮影してます、とかいうことにすればいい。誰も自分を天魔だとは思わないだろう。
 人間のフリをすれば、撃退士が来たとしても邪険に扱われることもなく、上手く撮影できるのではないか。
 そんな訳で、母天使は人間界へ出発するために服も地味めに着替え、ビデオカメラのようなものを忘れずに持った。充電もちゃんとしてある。
「がんばってとってきてね、おかあしゃん!」
「あなたと少しでも離れたくないけど、待っててね!」
 息子に激励され、母は感動しながら息子を強く抱きしめる。
「それじゃあ行ってくるわね!」
 馬鹿を連れて人の街へ出発した。

●馬鹿の活躍
 馬鹿は『あんぎゃあぁ』とかいう鳴き声を発しながら、市営の公園にいる人々を襲っている。
 その公園はスポーツできる環境があり、動物ふれあい広場やちょっとした植物園もあったりして、子供にも大人にも利用者が多い場所だった。
 馬鹿の馬の方がでかい口に人をくわえ込む。動物広場の職員のようだ。
「うわああーっ、助けてーっ!!」
「まあー、すごい!」
 母天使は人間を装いながらビデオカメラ的なものを回す。
 周りでは他の人間がわーきゃー騒ぎながら逃げ惑い、馬鹿の上に浮かんでいる馬の字が勝手に飛んでその中の人間を一人押しつぶした。
 鹿の方も角を振り回し、人を突き刺そうとしていた。
「あなた何やってるの、早く避難してください!」
 女性職員だろうか、ビデオ撮影している母天使に気付き、腕を掴んだ。
「私は大丈夫よ。これ撮りたいから」
「そんなことしてる場合じゃないでしょ!?」
「だって珍しいわよね、バカって!」
 彼女が何を言っているのか分からず、女性職員は怪訝な顔をする。
「? とにかく避難を……!」
「いいって言ってるの! これ以上やるならバカに襲わせるわよ?」
 強く引こうとする女性職員の手を振りほどいて、母天使はじろりと彼女を睨みつけた。
「い、行きますからね!? 何かあっても私のせいじゃないから!」
 女性職員は母天使にただならぬものを感じて、そのまま逃げていった。
「全く、人間てバカね」
 さて、と母天使はカメラを回し続けた。

●久遠ヶ原学園依頼斡旋所
 斡旋所の受付でバイトをしている九月沙那(くつきさな)はデジャヴを感じていた。
「なんか、前にもこんなような通報があったよね」
 以前は『落書きの羊?』だったが、今回は『落書きみたいな馬鹿って書いてある変な動物の天魔が人を襲っている』という。
 何だか前回よりよく分からなさが増したが、とにかく天魔出現ということだけは確実なようだ。落書きだろうが天魔は天魔。危険なことに変わりはない。現に人が襲われ、負傷者が出ているらしいのだ。
「急いで人を集めなきゃ」
 沙那は即座に人員を募集した。


リプレイ本文

●落書き天魔再び
 今回の事件の内容を聞いて、沙那同様にデジャヴを覚えていた鐘田将太郎(ja0114)とゼロ=シュバイツァー(jb7501)は、現場に到着して確信した。
 ソレは普通の形態をしていなかった。
 マヌケな馬面で大口をガチガチさせている馬の首と、じれったそうに角をぐいぐい押し出している鹿のような首の付いた5本足の落書きな動物? が、本来なら普通の動物と触れ合えるはずの広場を闊歩していた。
 『馬鹿』という文字が浮かんでいるのは、このサーバントの名前でも表しているのか。確かに馬鹿馬鹿しいビジュアルではある。
「えっと……なんですか、アレ?」
 キアラ・アリギエーリ(jc1131)が、あからさまに落書きな敵にどう反応すればいいのやら、皆に振り返った。
「落書きな馬と鹿っぽいサーバント……あのバカ親天使が作ったモンか?」
 もはや呆れる気すら失せた鐘田が言うと、ゼロも盛大にため息をつく。
「こら間違いないで。またか……またあのアホの仕業か……」
「落書き度増してるなあ……。何かも分からんメチャクチャな落書きだが、漢字は書けてるようで」
「アホ天使、どっかでカメラ構えてるんやろか」
「その確率は限りなく高いな」
 ゼロと鐘田は辺りを見回してみるが、取りあえず目に付く所には見当たらない。
「何と言えばいいか、色々とすごいサーバントですね。以前にも似たようなサーバントが出現したようですが、見た目に騙されてはいけませんね。今は被害が広がらないようにしましょう」
 ユウ(jb5639)はその落ち着いた雰囲気同様、生真面目に馬鹿を観察している。
「バカ親? バカ? ナニソレネー。あんなの駄作ネー。キョンの方が100倍上手い絵がかけるヨー」
 馬鹿を見て不敵にドヤ顔するキョン・シー(jc1472)。死体のような青白い顔に御札が貼ってあるゾンビな少女だ。
「馬鹿だか何だか知らないけど〜、やっつければまりかの知名度が上がるかも☆」
 小さな体に大きなリボンがトレードマークの大間戸まりか(jc1445)は、『有名になる』という目標のために『バカでも何でも倒します☆』という姿勢だ。
 ユウが皆に向き直り、
「それじゃあ、打ち合わせ通りに始めましょう」
「植物園の先が運動場になっとる。そこまであの馬鹿を俺らが誘導する」
「その間に私達が逃げ遅れた人達を助けますね」
 ゼロが出入り口の所でもらったパンフレットを見ながら誘導場所を確認し、キアラも救助の役割を再確認する。

 そして行動開始となった。

●暴れる馬鹿と撮るバカ
 ユウとゼロは己の翼を出し、飛翔した。
「なんでや……こんな生き物どないしたら生まれるんや……」
 ゼロは前回以上に無節操なサーバントにドン引きしながらも、上空から状況を把握する。
「動物小屋の陰に怪我人がいます。あっ、小屋の中にも二人避難しているようです!」
 ユウが救助のタイミングを待っているキアラと大間戸、キョンに知らせた。
「馬鹿は死んでも治らないっつーけど、こいつらもそうなのかね?」
 鐘田は皮肉っぽく独りごち、『闘気解放』した。
 獲物を求め今にも動物小屋に突貫しそうな勢いの馬鹿に向かって軽快な助走をつけ、ハイジャンプ宙返り!
 からの急降下キック!
 『雷打蹴』は馬鹿の頭上に浮かんだ鹿の字に当たったが、馬鹿自身は鐘田に見向きもしない。
「くそ、あれは本体の防御の役割も兼ねてるのか」
 それでも馬鹿は攻撃されたのを分かったらしく、鐘田の方に向きを変えた。
「そのまま進まんかい!」
 ゼロが後ろから馬鹿の尻を蹴飛ばす。
『あんぎゃあぁ』
 馬鹿は頭を上げていななき、走り出した。
「いいぞ!」
 鐘田は自分を囮にして馬鹿を運動場へと誘導して行く。

「今です!」
 キアラらは一斉にユウの指示のあった小屋に駆けつける。
「撃退士です! 無事ですか!?」
 キアラは怪我人がいる小屋の裏に行くと、馬鹿に噛まれたらしい男性職員が傷から血を流して倒れていた。どうやらやっとここまで這って来たようで、気を失っている。
「大変です! とにかく、落ち着いて救助です!」
 キアラは職員を背負い、警察が包囲している地点まで運ぶ。
 人命を救うこと。それは彼女が撃退士になろうと思ったきっかけでもある。
 頑張れ自分! 保安官なのだから!

 大間戸とキョンも小屋の中にいる一般人を外へ連れ出し、二人は無傷だったのでどこへ逃げればいいのか教えた。さらに子供が怪我をして動けない親子を発見、二人に付き添い避難させた。

 鐘田達はあと一息で運動場エリアに入る所まで、馬鹿をおびき寄せていた。
 鹿が角で鐘田を突いてくる。鐘田はマリシャスシールドでそれを受けた。すると脇から馬の口が迫り、腕に噛み付かれた。
「ぐぁっ!」
「大丈夫ですか!」
 エクレールCC9を連射してユウが馬鹿の気を引く。
「お前は絶対ボコる! 活躍なんかさせへんからな!」
 ゼロも歯を噛み鳴らしている馬首にデビルブリンガーをとにかく振り下ろした。
 一旦馬鹿と距離を取る鐘田。腕の傷は思ったより出血しており、放っておくのはまずい。
 救急箱で応急処置をする鐘田の側に、誰かが立った。
「きゃー、バカって強いのね〜、すごいわ〜」
 女だ。キャッキャとはしゃぎながらビデオカメラのようなものを懸命に回している。
 鐘田はこの女に見覚えがありすぎるほどあった。
「おい、ちょっとあんた」
「あらっ、私何も知らない一般人ですけど何か?」
 女はカメラから目を離さずに、しれっと言ってのけた。

 絶対違う。一般人な訳が無い。

「あんた一般人に化けてもバレバレだぜ?」
 母天使は一瞬ぎくりとして鐘田をよく見、ハッと思い出したようだが平静を取り繕った。
「な、何のことかしらあ? 私はバカを撮りたいだけの一般人よ」
 あくまでもシラを切り通すつもりらしい。
 めんどくさい。
「一般人だろうが別の場所で撮影しろ! 行かねぇなら腕づくで追い出すぞ!」
「きゃーっ!! ひどいわ、普通の人間にも冷たいのね、撃退士って!!」
 母天使は文句を言いながらダッシュで逃げていった。
 でも、鐘田がこちらを見なくなるとまた戦闘の方へ近寄り、草陰に隠れながら撮影を続行する。
「息子のためだもの。あれぐらいじゃめげないんだから!」
 と撮影画面を見ていると、
「バァッ!」
 突然画面がキョンの顔で一杯になった。
「きゃあ! なに!?」
「ここは危ないネー。一般の人は早く避難するヨー」
「えッ、ああ、一般の人ね」
「これ以上は近づかないでください。戦闘に巻き込まれるかもしれません」
「向こうまで案内しましょうか?」
 大間戸とキアラも母天使を一般人と同様の対応をする。
「でも私あのバカを撮ってるの。大丈夫だからほっといてちょうだい」
「それは無理です。戦ってる彼らの邪魔にもなります」
「邪魔にならないようにするわよ」
「ダメです!」
 キアラと母天使の押し問答。
 聞き分けのない母天使に大間戸がブチギレた。
「だから駄目だっつってんだろこのクソ女!」
 垣間見えた大間戸の本性。
「ひぃッ!」
 母天使がビビっている隙に、大間戸はカメラを奪い取った。
「あっ! ちょっと、返して!」
 伸ばされた母天使の腕よりも早く、カメラは大間戸からキアラの手に投げ渡されてしまった。
「はーい、二人共こっち向いて〜」
 キアラがカメラを向け、大間戸とキョンはふりふりとポーズを取る。
「あんなデタラメな怪物より可愛いまりかちゃんをお楽しみください♪」
「キョンのセクシーな姿を納めるヨロシー」
「やめてよ、それはバカを撮るんだから!」
 どうしても母天使は馬鹿を撮りたいらしい。
 ならば、とキアラは場を制するように声を発した。
「そんなに撮りたいなら、私が代わりに撮影します!!」
「えぇ!?」
 抗議する間も与えずに、ガムテープでカメラを帽子に固定するキアラ。
「では行って来ます!」
「まりかも映りたいので一緒に行くのです!」
「な、待ちなさいよ、あんたが撮るんじゃ変な映像になっちゃうでしょ!」
 馬鹿へと駆け出すキアラと大間戸を追おうとする母天使の前に、キョンが通せんぼする。
「ダメヨー。カメラ欲しかったらまずキョンを捕まえてみるネー」
「くっ、いいわ、あんたを捕まえてカメラと交換よ!」
「捕まえられるモンなら捕まえてみるヨロシー」
 お尻ペンペンしてキョンは戦闘とは逆方向に走り出し、母天使もそれを追い掛けて行った。

 ゼロは浮かんでいる馬鹿の文字に無性に腹が立っていた。
「なんやねんその緊張感のなさは!」
 怒りのまま『闇撫』を馬文字に叩き込む。馬の点々部分が内側から弾け飛んだ。
 鐘田も自分に飛んできた鹿文字にフルカスサイスで斬りかかるが、文字は刃をかすめて通り過ぎる。
「なにっ!?」
 そしてブーメランのようにカーブして戻って来る際、鐘田の後頭部に直撃した。
「あっ!?」
 いつも鋭い鐘田の目がうすぼんやりし、全体的に緩みきった間抜けヅラになってしまった。
「………トッピロキー! モッチョレーのメガロッパ!!」
 とか叫びながらカッコ悪いポーズ!
「ブフォッ!!」
 普段の鐘田からは想像もつかないようなイミフのセリフとポーズに、堪らずゼロは吹き出した。
「しっかりしてください! そんな効果があるとは、うましかの文字は危険ですね」
 ユウは文字を先に破壊した方がいいと判断、黒い霧を纏わせた弾丸を放つ。
 『ダークショット』は見事馬文字を粉々に破壊した。
「――はっ! 俺は今何を!?」
 鐘田が正気に戻る。
「思っきり馬鹿みたいやったで」
 ゼロが笑いを噛み殺しながら教えると、鐘田の顔は怒りと羞恥で真っ赤になる。
 そこへ、
「『緑豊かな公園に、サーバントが出現した!』」
 事件の生中継のようなナレーションを入れながら、キアラと大間戸が合流した。
「『おおっと、鹿という文字がこちらに飛んできます!』」
 キアラがショットガンAT5を撃ち、文字の勢いを削ぐ。
「俺は馬鹿キャラじゃねぇ!」
 鐘田はさっき以上に右腕のアウルを燃え上がらせ、高くジャンプ。大鎌を振りかぶり、鹿文字を真っ二つにした。

 文字を二つとも破壊された馬鹿は地団駄を踏んだ。
 鹿は精一杯首を伸ばし、周囲を飛び回っているユウやゼロに角を突き上げる。
「私が角の攻撃を抑えます!」
 ユウは一定の距離を保ちながら牽制射撃した。
「頼むで!」
 何故か解らないが、ゼロはこの敵にストレスを感じていた。見てるだけでイライラしてくる。溜まりに溜まったそれを、今爆発させた。
「せめて存在する生き物で! 出直してこんかい! いっちゃん馬鹿なん! おどれらやろがい!!」
 言葉を強調しながらデビルブリンガーを何度も振り下ろす。
「『撃退士の猛攻に、鹿はタジタジです!』」
 キアラはちゃっかり実況中。
 最後にゼロは『闇撫』を鹿の角と角の間の脳天にぶち込んだ。
 弾けた闇のエネルギーが頭部を吹き飛ばし、鹿首はだらりと垂れ下がる。
「『技が決まりました! 鹿を撃破です!』」

 馬はガバっと口を開けて鐘田の頭から襲いかかる。
「なんの!」
 鐘田は鎌を口の中に押し込むようにして、馬の噛み付きを防御した。
「『あぁっ、今! ご覧いただけるでしょうか? 馬が撃退士に噛み付こうとしています!』」
 キアラの実況も絶好調だ。
「離しなさいー!」
 大間戸が『エナジーアロー』の光の矢を飛ばす。
 馬の額に当たり仰け反った。
 ここぞとばかりに鐘田は大鎌を思い切り引く。
「馬鹿は馬鹿っぽく倒されな!」
 大きく薙ぎ払い、馬の首を切り裂いた。
「『渾身の一撃! 馬の首は取れそうです!』」
 キアラの言うように、馬首のパックリ開いた傷口からは大量の血と生命力が流れ出していく。やがて馬鹿はばたりと倒れて動かなくなった。
「『見事、サーバントを倒しました! 撃退士の勝利です〜!!』」
 キアラが拍手をしていると、キョンと母天使がこっちにやって来た。
 母天使はもう人間のフリをするのをやめたのか、翼を見せて飛び、すばしこいキョンを捕まえようとしている。
「このヒト正体現したヨー!」
「やっぱりな」
 今更鐘田にとってはどうでも良かったが。
「ああっ、もう戦闘終わってるじゃないの! 何よー、全部クチャクチャだわー!」
 母天使が倒れている馬鹿に気付き、ショックのあまり地面に突っ伏した。
「はい、カメラ返しますね。バッチリ撮れましたから」
「本当でしょうね?」
 カメラを返すキアラに疑わしげな目を向ける母天使。
 怖い顔をしたゼロがつかつかと歩み寄り、母天使に指を突き付けた。
「そこの阿呆! 毎回毎回どういうつもりじゃ! センスの欠片もないもん持って来くさりよって! デザインしたやつもっかいちゃんと教育しとけ! でもいっちゃんアホなんはお前やからな!」
「何言ってるのよ、センスの塊じゃないの! あんたの目が腐ってんでしょ!」
「あー、一応聞くけど、この落書き描いたのあんたじゃねぇよなあ?」
 鐘田がふとした疑問を投げかけると、母天使は得意気に答えた。
「こんな天才的なもの、描けるのは私の息子しかいないわ。私より絵が上手なんだから!」
 つまり、こいつはこの落書きより下手だということか。
 と鐘田は認識した。
 ゼロの目つきが急速に冷めてゆく。全身から殺意が立ち上っていた。視線で射殺せるなら、確実にそうしていただろう。
「あ? 何ほざいとんねんボケが。俺なぁ、お前みたいな自己中マジ嫌いやねん」
「私だってあんた達みたいな撃退士大嫌いよ!」
 ゼロの口の端が歪につり上がった。
 おもむろにハミンギャLG7を構え、母天使にぶっぱなす!
「きゃーっ!! 何よなによ、撃退士のバーカバーカ!」
 母天使は捨て台詞を吐いてまさに飛ぶように去って行く。
「やかましわ!! カメラなんか壊れてまえ!!」
 ゼロは母天使が見えなくなるまで銃を撃ち続けていた。

●そして平和が訪れた?
「ネズミはキライヨー、ハゲチャビンッ!」
 再開したふれあい広場で、キョンがハムスターから逃げていた。
「ネズミ達噛み付いてくるから嫌ヨー! あっ、ウサギは大好きネー!」
 ウサギを見つけたキョンが存分に触っている様を、皆は一息つきながら見ている。
 馬鹿の相手がよっぽど疲れたのか、今の状況がとても平和に思えるのだった。

「ああああーーーっ!! なにコレーーーっ!!」
 住処に帰り映像を確認していた母天使の絶叫が響く。
 自分が撮っていた前半部分は良かったものの、撃退士にカメラを取られた後は案の定、変な実況が入って撃退士中心の全く納得いかない映像になっていた。
「こんなの息子に見せられない! きいぃーーーっ!!」
 母天使がハンカチを噛んで悔しがっている頃。

「うぅ〜……」
 鐘田は馬と鹿の首がある競走馬に追いかけられる夢を見ていた。しかも何故か障害物コースを自分も跳んでいるという悪夢だったとさ。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:4人

いつか道標に・
鐘田将太郎(ja0114)

大学部6年4組 男 阿修羅
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅
堕天使保安官・
キアラ・アリギエーリ(jc1131)

大学部1年289組 女 アストラルヴァンガード
羊を数えて・
大間戸まりか(jc1445)

高等部1年18組 女 ダアト
明るすぎるゾンビ・
キョン・シー(jc1472)

大学部1年14組 女 陰陽師