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マスター:久遠 由純
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/01/06


みんなの思い出



オープニング

●大掃除
 小学校ももう冬休みになるので、今日は全校で大掃除をする日だった。
 各学年2クラスずつしかない小さな小学校だったが、ワックスがけもするため今日は大掛かりな掃除となっている。
 いつもは掃除の時間中にクラシック音楽が流れているけれども、今日はスピーカーからは何の音も流れていない。時々先生の指示する声や生徒達の雑談などが聞こえてきたりして、今のところは何の問題もなく掃除は進んでいた。

 4年生の女子生徒は一所懸命廊下を水ぶきしている時、それは発生した。
 一往復して雑巾をバケツの水ですすぎ、さて次の列へ、と振り向いて仰天した。
 さっき拭いたはずの廊下に、誰かの足跡がついていたからだ。裸足の泥の足跡が点々と、向こうの階段のあたりからこっちに向かって誰かが通ったように。
「ちょっと、誰よせっかく掃除したのに汚したの!」
 すぐそばで窓掃除をしている男子に目をやった。
 男子はすぐに掃除をサボりたがる。きっとこれも自分が見ていない隙にふざけてやったに違いない。
 彼はすました顔で窓を拭いていて、女子生徒は憤慨して彼に近寄った。
「ちょっと、あんたでしょ、これ! あたしが拭いたばっかりの所にこんなことするなんてひどいじゃない! 自分できれいにしなさいよね!」
「はあ? 何のことだよ。おれは真面目に窓掃除してただろ? そんな足跡なんて付けてねーよ」
 男子生徒も自分のせいにされちゃたまらないと思ったのか、その足跡を見てみた。
「泥だらけじゃん。それに裸足だし。おれはちゃんと上履きはいてるし、泥なんかついてないぜ!」
 言われてみれば、と女子生徒も思う。
 それに足跡はここを通っているのに、彼女は誰の姿も見なかった。
「おかしいなぁ……。誰も通ってないのに足跡だけ残ってるなんて……」

 クスクスクス……!!

 子供の笑い声が聞こえた。
 二人がハッと振り向くと、隣の教室の先に5、6歳くらいの子供が一人、立っていた。
 昔の着物を着ていて、髪は短く切り揃えられたおかっぱ頭。子供らしい可愛い顔で、クスクス笑っている。足元と手が泥にまみれていた。
 明らかに生徒ではない。だけどこの女子生徒は勝気で、行動的な少女だった。
「あんたね、こんなことしたのは! 勝手に学校に入ってきて何なのよ!」
 つかつかと歩み寄り子供の肩をドン、と押す。
 すると子供は女子生徒の腕をがしっとつかんだかと思うと、子供とは思えない力で彼女の腕を肩口からねじ切った!!
「うっ、うわあああーーーーっ!!」
 絶叫したのは男子生徒だ。
 腕を切られた女子生徒は驚きのあまり声も出せず、落ちた自分の腕を見下ろす。そして肩から大量に血を流しながら倒れた。
 絶叫を聞きつけて他の生徒達や男性教師が駆けつけてくる。
「キャアアア!」
「どうしたの?」
「なっ、なんだこれは!」
「あいつが、あいつが……!!」
 事の一部始終を見てしまった男子生徒は腰を抜かしてしまい、震える手でまだクスクス笑っている子供を指差した。
 倒れている女子生徒は動かない。
 子供はふっと姿を消した。パタパタと泥の足跡が廊下の先にいくつか続く。そちらに走っていったのだ、と教師が思うと、足跡が途切れた。
 男性教師はすぐにこれは自分達の手に負えることではない、と直感した。見た目は子供でもあれは天魔だ、と。
 生徒達にすぐに逃げるように指示を出そうとした時、他の教室や別の階からも悲鳴が聞こえてきた。

「手形が勝手に付いてくぞ!」
「なにコレ、変だよ!」
 あちこちの教室で、廊下や床には子供サイズの泥だらけの足跡が、壁や窓には小さな泥の手形が、ベタベタと付けられていく。
 でもそれをしている本人の姿は見えないのだ。誰もそこにはいないのに、手形や足跡だけが付けられる。まさに透明人間がやっているかのようだ。
 掲示板も黒板も、壁に貼ってあった習字も絵も、みんな手形で汚されていった。
「皆、これは天魔の仕業だ! 早く校舎から出て!」

「わああぁ!」
「きゃああぁ!」
「押さないで! 避難訓練と同じようにするんだ!」
 生徒達も教師も、皆一斉に校舎の外へ逃げ出した。
 校庭の隅へ皆で集まると、各クラスの担任の先生が生徒数の確認をする。
「校長、久遠ヶ原学園に連絡を」
 先程の男性教師がうろたえ気味の校長に小さく進言した。
「あ、ああそうだな。もちろんそうだ」
 校長は狼狽を隠せず、スーツのポケットをいくつか探って携帯電話を取り出した。まさかこんなことになろうとは夢にも思っていなかったのだろう。だが、それを言うならここにいる全員がそうだ。
 校長が学園と話している間、一人の女性教師が男性教師の所にやって来る。
「うちのクラスの女子が一人足りないんです……!」
「……それはきっと廊下で倒れていた子だろう……」
 男性教師はちらりとそれを見ていたであろう男子生徒の様子をうかがう。けれども彼は座り込み、いまだショックが強すぎて何もしゃべれない状態のようだった。
「残念です、先生」
 その意味を悟り女性教師の顔が歪むが、今自分が取り乱したり恐怖をさらけ出してはいけないと思ったのだろう。ぐっとそれらを飲み込み、目を伏せると他の生徒を安心させるために戻って行った。

 見る間に学校は泥にまみれていき、教師や生徒達は自分達の校舎を不安と恐怖の目で見ているしかできなかった。

●久遠ヶ原学園依頼斡旋所
 依頼を受けて内容の詳細を知るために、彼らは集まった。
「この天魔はサーバント、『泥童子』だと思われます。移動している時は姿が見えません」
 男子用の制服をアレンジして着用している中学三年女子、九月沙那(くつきさな)が資料を見ながら説明を始める。知らない人の顔を見ていてはとても話せない。
 恥ずかしがりなのを克服しようと始めた斡旋所の事務バイトだったが、克服にはまだ時間がかかりそうだ。
「『移動している時』は? じゃあそれ以外の時は姿が見える?」
 一人が質問すると、沙那は顔が熱くなるのを自覚しながら
「は、はい、足を止めている時は見えるみたいです。あと、こちらの攻撃が当たると10秒間程見えるようになるとか」
「なるほどね。突破口はある訳だ」
「今は小学校を足跡や手形を付けて泥だらけにしているみたいです。何体いるのか、正確な数は分かっていません。見た目は小さな子供の姿ですが凶暴で、被害者が一人出ています。充分に気をつけてください」
「了解!」

 撃退士達は出動し、無事自分の役目を終えた沙那はやっと緊張から解放されたのだった。


リプレイ本文

●泥まみれの学校
 被害者が一人校内に取り残されていると聞き、撃退士達は出来るだけ急いで現場へ到着した。
 校庭の隅では全校生徒が寄り固まっており、不安気な様子を隠しきれず暗い雰囲気に包まれている。
「来ていただきありがとうございます」
 校長と副校長、それから教師代表らしき男性教師が撃退士達を迎えた。
「早速ですみませんが、被害者の女の子がいる場所を教えてもらえますか」
 長身の青年浪風 悠人(ja3452)が切り出すと、
「あ、あの子は4年生の教室の前で倒れていましたから……、左棟の二階です」
 男性教師がその方を指差し、浪風他仲間達も場所を確認する。
「その子を最優先で救助しますので、できれば校庭の真ん中辺りまで救急車を呼んでおいてください」
「は、はい、分かりました」

「ふん……相変わらず趣味の悪いことを……。まぁ何にせよやることは変わらん。彼女がアウルに覚醒して生き延びるとか都合のいい展開がある訳もないが、運が良ければまだ生きている可能性もある。急ぐとしよう」
 泥汚れの付きまくった校舎を睨むように見て、ルナリティス・P・アルコーン(jb2890)が言った。
「安心して、お兄さん達が解決してみせるから」
 浪風が生徒達を元気づけるため、優しげに微笑む。
「俺達に任せろ!」
 唐突に千葉 真一(ja0070)が叫んだ。赤いマフラーをなびかせ、腰に手を当て堂々と立っている。その隣には同じように表情を引き締め腕を組んでいる雪ノ下・正太郎(ja0343)もいた。
 生徒達の目が一斉に千葉と雪ノ下に集まった。
「変身っ! 天・拳・絶・闘、ゴウライガぁっ!!」
 派手にポーズをつけながら光纏すると同時に魔装を出現させ、『ゴウライガ』に変身する千葉。
 雪ノ下の体からもアウルの光が放たれた。
「我龍転成、リュウセイガー!!」
 青龍をモチーフとしたヒーロースーツを纏い、『リュウセイガー』に変身する。
 二人でシャキーン! とポーズを決めると、まさにテレビのヒーロー番組から抜け出てきたかのようだ。
 皆のあっけにとられた静寂がたっぷり3秒ほど流れた。
「本物のヒーローだ!」
 誰かが静寂を破った。すると何かが一気に生徒達に伝播する。
「がんばれゴウライガ!!」
「すげえかっけぇ!」
「リュウセイガー負けるな!!」
 千葉はくるりと背を向け、皆の声援に応えるようにビッと親指を立てた。
「行くぞ!」
 さらに高まる声援を受け千葉は全力で走り出し、雪ノ下は『陰影の翼』で翼を顕現させ飛んだ。
 仲間達もそれに続く。被害者は二階にいるということなので、千葉と浪風、東雲みゅう(jb7012)以外は皆それぞれ翼を出し飛び上がる。
「みゅうも頑張る!」
 ペンギンの着ぐるみを着込んだ東雲もトコトコと走り出した。見た目はここの小学校に通っている子供達となんら変わりない幼さの少女でも、天魔を倒すために精一杯戦いたいという気持ちはもう一人前だ。
「クラクラクラ。何か面白いことあるかなぁ〜?」
 無畏(jc0931)は一風変わった笑い方をしながら、リュウセイガーの後ろを飛行していた。
 そんな無畏の言葉を聞き、只野黒子(ja0049)は無畏の性格を推し量る。己自身も前髪で目を隠しあまり表情を悟られないようにしているが、無畏はまた別の意味で何を考えているのか解りづらい。
 校舎に近づくと、千葉が足を止めずに雪ノ下を見上げて呼びかけた。
「リュウセイガー、俺を窓に投げてくれ!」
「O.K!」
 雪ノ下はジャンプした千葉の腕を掴み二階の高さまで上がる。二人の目に廊下に倒れている少女が見えた。
「リュウセイスウィング!」
 フルスイングで雪ノ下は千葉を窓に向かって投げた!
「間に合ってくれよ!」
 千葉は窓を蹴破って中に入り、転がって受身を取る。校舎内は廊下も壁も泥の手形や足跡で埋め尽くされていた。
 急いで千葉は被害者の下へ駆け寄った。女子生徒は血だまりの上に倒れ伏していて、ピクリとも動かない。
 慎重に仰向けにし呼吸を確認すると、意識は失っているがかすかに息があった。
「救える可能性があるなら諦めるのはまだ早い」
 千葉は救急箱から包帯を取り出し、素早く少女の肩口を縛り応急処置を試みる。その間に只野が到着した。
「代わりましょう」
 只野が『ライトヒール』で傷を癒し始める。乱暴に腕を引きちぎられたその傷口は痛ましい。
 飛行していた仲間は全員到着し、ルナリティスが少女の側に落ちていた腕を拾い上げた。
「これは……スキルでは繋げられないが、一応病院に持って行った方がいいだろう」
 ルナリティスも少女に『魂癒』を使い回復を手伝った。
「これで何とか運んで行けるでしょう」
 出血を止め、只野は女子生徒を抱き上げた。腕も一緒に持つ。
「救急車来たよぉ〜。俺が護衛するねぇ〜」
 無畏が校舎の外で浮かびつつ左手首のブレスレットに触れ、ヒリュウを召喚した。
 只野が窓から飛び立つ。なるべく振動を与えないように運ばなければならない。只野が行ってから浪風が阻霊符を発動した。
「ちゃんと護衛してねぇ〜」
 クラクラクラ、と無畏は召喚獣に指示を与え、自身はもう少し上空から只野の周辺を警戒しつつ飛ぶ。
 見ていると、グラウンドの乾いた土の上に泥の小さな足跡が付いて行くではないか。
 泥童子だ。
「クラクラクラ〜っとねぇ〜!」
 無畏はフラーメンを開く。ページの上に風の球が出現し、それを足跡の先目掛けて発射した。
 風球が何かに当たったように弾けて消滅した直後、着物姿の子供が姿を現した。不意打ちにやられ転んだらしい。
 ヒリュウがサーバントに気付いて飛び掛かる。
 が、泥童子はヒリュウの尻尾を掴んで地面に叩きつけた!
『キイィ!』
「いってぇ〜」
 ヒリュウが痛みに呻いている隙に、泥童子は校舎へと逃げ戻る。走っている最中に姿が消えた。
 無畏は携帯を取り出し、あらかじめ番号を聞いていたルナリティスに連絡した。
「今一匹正面入口から中に入ってったからヨロシクゥ〜」
『了解した』

「出血は止めましたが危険な状態です。後はよろしく頼みます」
「解りました」
 只野は無事少女と腕を救急車まで運び、救急隊員に託した。後は病院と彼女次第。
「私達も急ぎ皆と合流しましょう」
「クラクラクラ。楽しい楽しいかくれんぼの時間だよぉ〜」
 只野と無畏は校舎へと振り返った。

●見えない敵との戦い
 女子生徒を運び出してから、仲間達は一階で泥童子探索を開始していた。
「敵が一体こっちに来るかもしれない!」
 ルナリティスが無畏の報告を皆に告げると、
「よし、こっちの準備も終わりだ!」
 千葉は消火栓のホースを脇に放った。それで廊下の泥を洗い流していたのだ。
「さぁて、手癖足癖の酷い悪ガキども。覚悟はいいか」
 皆散開し、側にいる相手をお互いにフォローするため、足跡や音を逃すまいと身構える。

 ――パシャパシャ

「そこかっ、ゴウライソード、ビュートモード!」
 ゴウライガが水を跳ね上げる足跡に向かい、鞭化させた蛇腹剣を振るった。
 しかし鞭が触れる前に水音と足跡が途切れる。
「!?」
 突然千葉は真横から突き飛ばされ、教室側の壁に激突した。泥童子が瞬間移動したのだ。
「貴様っ!」。
 雪ノ下がダッシュで間合いを詰め泰極剣で斬り付ける。立ち止まって姿が見えている今がチャンスだ。
 剣は泥童子の頬を切り裂き、これで泥童子は移動しても10秒間は姿を消せない。
「一気に倒す」
 見えている時間が切れないうちに速攻をかけようと、ルナリティスはレゾネイトOW48を連射した。
 銃弾を体に受けむう〜っとふくれっ面になる泥童子。再び瞬間移動し、ルナリティスの目の前に現れた。
「まずい!」
 泥童子が目を見開き腕を伸ばすも、その動きが途中で止まった。
 千葉が泥童子の腕を蛇腹剣で絡め取っていたのだ。そのままぐいっと自分の方に思い切り引き寄せる。そしてドロップキックを繰り出した。
「ゴウライキック!」
 引き寄せる力も相まって、泥童子は数メートル吹っ飛んだ。
「今だリュウセイガー!」
「おう!」
 雪ノ下は『闘気解放』し武器にアウルを集中させると、紫焔のアウルが5本の爪のようになった。
「ドラゴンスラッシュ!!」
 リュウセイガーが気合一閃!
 泥童子は『ドラゴンスラッシュ』でざっくり切り裂かれ、骸となったのだった。

 千葉が壁に突き飛ばされた時、廊下の反対側からも泥童子が近づいて来ていた。
 それにいち早く気づいたのは浪風だ。
「東雲さん、後ろ!」
「はいなの! えーい!」
 浪風の警告に素早く反応して、東雲は『炎焼』を放つ。
 炎の槍は何かをかすっただけだったが、泥童子の姿を出現させるには充分だった。『炎焼』の炎も燃え移っている。
 浪風もラストラスLA7を撃つ。
 銃弾を瞬間移動で避け、泥童子は浪風に体当たりした。
「うわっ!」
「だめっ!」
 東雲は『サンダーブレード』で攻撃、泥童子の背中にダメージを負わせた。さらに『麻痺』に成功する。
「姿が見えていれば何てことないですね」
 浪風は眼鏡を押し上げた。移動できなくなった泥童子に何発も光の弾丸を撃ち込む。
 東雲も集中攻撃に加わり、泥童子は倒れた。

 只野と無畏も合流し、皆はそのまま教室をのぞきながら廊下の端まで移動してみる。
 一階はもう敵の気配はないようだった。

 二階に上がり、また消火栓で千葉が廊下に水を撒く作業をする。雪ノ下も放置されているバケツで水を撒き、ルナリティスはモップで泥を落としていた。
「クラクラクラ。もぉ〜い〜かぁ〜い?」
 楽しげに無畏が言いながら教室をのぞいていると、前側の扉がそっと開き、誰かが走り出た。
 足跡が点々と付いて行く。
「こっちです!」
 只野が声を上げる。
 泥童子はこちらではなく階段の方へ向かっているようだ。
「あっれぇ〜、逃げる気ぃ〜?」
 無畏の背後に、氷の尾と氷の結晶のような翼が現れた。
 無畏が軽くジャンプし身を捻る。『アイステール』が見えない人影に叩きつけられた。
 うつ伏せに倒れたサーバントの姿が露わになる。
「瞬間移動に気をつけてください!」
 只野は蒼風迅霊符から風の刃を飛ばし、泥童子を牽制する。無畏の戦い方を見ていて、自分はフォローに徹する方がお互い上手く戦えるだろうと判断していた。
 起き上がった泥童子は、只野らを無視して階段を駆け上がって行く。
「もしかしたら仲間と合流する気かもしれません!」
「何っ、させるか!」
 千葉が真っ先に後を追った。5段飛ばしで階段を上った時、上から何かがぶつかって来た。
「ぐはっ!」
 下まで転がり落ちる千葉。泥童子の仕業に違いない。
「大丈夫かゴウライガ!」
「平気だ、逃がすな!」
「上に行ったみたいです!」
 浪風の報告に皆は急いで三階に上がり、廊下に散らばった。
「うあっ」
「くっ!?」
「なに!」
 浪風と只野とルナリティスが攻撃を食らったらしい。その数からして敵は三体いるようだ。
 無畏がすぐさま只野の周囲を大鎌で薙ぎ、ルナリティスと波風は銃で反撃する。
 一体は姿を現したが、あとの二体はまたどこかに姿をくらました。
「こっちは俺がやるよぉ〜」
 無畏が楽しそうに姿を見せた一体の相手を買って出る。
「こちらが水を撒く前に叩き潰そうという腹か」
 千葉が苦々しくつぶやく。
 音や泥跡に集中していた浪風が、足音を捉えた。
「千葉さんの方にいます!」
「任せろ!」
 千葉は鞭化した蛇腹剣を大きく振り回した。一体が巻き込まれ、姿が見えた。もう一体は剣を避けようとして失敗したのか、扉にぶつかる音を響かせる。
「リュウセイキック!」
 すかさずリュウセイガーがジャンプからのキックをお見舞いする。見事ヒットし、泥童子は姿を見せた。着地した雪ノ下に、別の泥童子が肩車のように乗っかってきた。
「うっ!」
 足で首を締め付けられる。両手が雪ノ下の頭を掴み、首を折ろうとしているのだ。
「ゴウライパンチ!」
「喰らえ!」
 千葉がパンチを放ちルナリティスが射撃して、泥童子は雪ノ下を離して落ちる。
『IMPALE!』
 突然どこからかイイ発音のイイ声が聞こえた。瞬間、渦巻くアウルに包まれるゴウライガ。
「これで終わりだぁっ! ゴウライ、ハウルストライクっ!!」
 己の全力を込めて拳を突き出す! 『インペイル』の衝撃は、泥童子の身体を貫き打ち砕いたのだった。

「姿を消す前に仕留めます」
 リュウセイキックで倒れた泥童子に、浪風が銃を撃つ。
 東雲も『サンダーブレード』で斬りかかって行くが、避けた泥童子に腕を掴まれてしまった。
「きゃあ!」
「危ない!」
 浪風が銃弾を撃ちまくる。
 何発目かでようやく東雲の腕を離し、泥童子は蜂の巣のようになって崩折れた。

 只野は霊符で攻撃する。風刃が泥童子の足を切り裂き、動きを止めた。
 無畏が相変わらず独特に笑って『サンダーブレード』をその体に食い込ませる。
 『麻痺』になり廊下に両手を付いた泥童子は、すでに瀕死だった。
 無畏は楽しくて堪らないという顔で泥童子を見下ろした。
「クラクラクラ。うんうん、分かるよぉ〜。君達も面白いことして遊びたいんだよねぇ〜、俺もだよぉ〜。でもねぇ〜、そんな程度じゃ、つまんないねぇ〜」
 そして無慈悲に大鎌を振り下ろし、終わりにした。

 皆は三階をゆっくり移動しつつ、耳を澄まし床を凝視し、敵の気配を探る。
「もういないみたいですね……」
 浪風の意見に全員概ね同意だったが、念のためもう一度校内を全部見回って泥童子がいないか確認した。それから怪我をした者は只野やルナリティス、浪風に回復してもらったのだった。

●大掃除
「皆ぁー、もう大丈夫だ、天魔は全部退治したぞ!」
 千葉が大声で知らせながら仲間と一緒に校舎から出て来ると、大歓声が沸き起こった。
「やったー!」
「カッコイイ!!」
「こら、静かにしなさい! ほら、皆!」
 先生達にたしなめられ、一旦静かになる生徒達。
 教師陣も生徒達と一緒に整列し、
「撃退士の皆さん、ありがとうございました!」
「「ありがとうございました!!」」
 一斉に一礼するのだった。
「さ、ちょっと遅くなったが、皆でもう一回大掃除だ!」
 男性教師が言うと、『え〜』という抗議の声が上がったが覆るはずもなく、掃除再開という流れになる。
「クラクラクラ。このままでも面白そうだけどねぇ〜。俺も掃除手伝っちゃうよぉ〜」
「このリュウセイガーも手伝うぞ! だから皆で頑張ろう!」
「えっ、本当!?」
「ラッキー!」
 無畏と雪ノ下も掃除を手伝ってくれるということで、生徒達のヤル気も上がったようだ。

 こうして小学校はようやく大掃除を終えることができ、冬休みを迎えられたのだった。

 後日ルナリティスは、被害者少女の命は助かったものの、結局腕を失ってしまったと聞いた。
 彼女の境遇に特に何を感じた訳ではない。でも、
(見舞いに行ってみるか……)
 ルナリティスはそう思った。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

新世界への扉・
只野黒子(ja0049)

高等部1年1組 女 ルインズブレイド
天拳絶闘ゴウライガ・
千葉 真一(ja0070)

大学部4年3組 男 阿修羅
蒼き覇者リュウセイガー・
雪ノ下・正太郎(ja0343)

大学部2年1組 男 阿修羅
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
理系女子・
ルナリティス・P・アルコーン(jb2890)

卒業 女 ルインズブレイド
撃退士・
東雲みゅう(jb7012)

小等部6年5組 女 アカシックレコーダー:タイプA
送る懐いに夜火の馳せよと・
無畏(jc0931)

大学部1年153組 男 アカシックレコーダー:タイプA