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マスター:久遠 由純
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/11/04


みんなの思い出



オープニング

●キモヲタ撲滅団
 狭い部室で、7人が寄り集まっていた。大部分は男だが女も二人いる。学年はまちまちで、全員久遠ヶ原学園の生徒だった。
 一人の男が一枚の紙を皆に見せるように差し出した。
「諸君、これを見たか?」
 紙は『5つの漫研合同の同人誌即売会』の告知チラシだった。この時期様々なイベントや出店のチラシが学園中に張り出されており、その中の一枚だ。
「明日開催だな。今度はこれをやるのか?」
「そうだ。我々『キモヲタ撲滅団』としては、オタクが楽しげに即売会などするのを放っておくわけにはいかない」
「オタクマジキモ!」
「オタクはオタクらしく引きこもってればいいのよ! あたしらより楽しそうにしてるなんて許せない!」
「そうだそうだ! 二次元に萌える変態のくせに!」
 熱くなり始めた彼ら団員を、リーダーらしき男が鎮めた。
「まあ落ち着け。それじゃあさっそく今夜決行ってことでいいな?」
 全員がうなずき、ただの布袋に目の穴が空いただけの覆面を被った。

 夜の部室棟、同人誌即売会が行われる部室兼会場に、撲滅団はこっそりやって来た。当然鍵が掛かっているが、団員の一人が壁をすり抜け中に入る。
 しばらくすると、ダンボールを三つ持って出て来た。他の者がそのダンボールを持ってどこかに行く。
 それを何度か繰り返し、最後に一枚の紙を部室内に残してから去って行った。

●即売会への脅迫
「たッ、大変だよ沙那ちゃん!」
 久遠ヶ原学園高等部二年生の山野由梨香は、依頼斡旋所で受付バイト中の少女に声をかけた。
 いつも元気と明るさが取り柄のような山野が、今日は珍しく緊迫した様子だ。
「あ、や、山野さん。どうしたんですか?」
 山野に呼ばれた少女はドキリとして顔を上げた。
 彼女の名前は九月沙那(くつきさな)。年齢的には少女なのだが、外見は全然少女っぽくなかったりする。
 中等部3年生で身長が170cm。髪型は外ハネのショートボブで、美人というよりはイケメンてカンジの中性的な顔立ち。
 淡いブルーの髪は彼女をクールビューティに見せていたが、実はものすごい恥ずかしがり屋で、それを克服するために受付でバイトをしているのだった。
 スカートから自分の足が見えてしまうのが恥ずかしいので、男子の制服をアレンジして着用。人見知りで時々毒舌なシャイガール。
 山野は依頼で何度か受付を担当してもらい、会えば会話を交わすくらいの顔見知りだった。でもまだ沙那の方は完全に緊張がなくなる訳ではないようで……。
「もーそろそろ慣れてくれてもいいのにー」
 頬を染めながら少しうつむいている沙那をからかうように山野が言う。
「あぅ、ごめんなさい、山野さんが苦手っていう訳じゃないんです〜」
 沙那は慌てて両手で熱くなった頬を覆う。そして話を戻そうとチラッと山野を見た。
「あの、大変だって言ってましたよね?」
 山野もそれで自分の目的を思い出し、慌てた様子になった。
「あ、そーだよ! ウチの漫研ね、知り合いの漫研と一緒に文化祭で同人誌即売会を開催することになってるんだけど、今日脅迫状が届いたんだよー!」
「ええッ、脅迫状?」
 それは確かに穏やかじゃない。
 山野はその脅迫状を沙那に見せた。
 そこには、

 『おまえらキモヲタのイベントなんか台無しにしてやる! キモヲタ撲滅団』

 と筆で乱暴になぐり書きした脅迫文が記されていた。
「随分と一方的ですね……何なんですか、キモヲタ撲滅団って?」
 沙那はちょっと怯える。こういう自分の主張だけを押し付けてくる人は苦手だ。
「何だか最近現れたグループで、撃退士なのは間違いないね。とにかくオタクが嫌いみたい。漫画描いてる人を皆オタクと見なすのはどうかと思うけど。まあそれで、島内の同人誌即売会のイベントに出没しては、嫌がらせをしてるの」
「撃退士なのにそんなことするんですか?」
「そうなんだよ! しかもサークル数が50以下の、小規模のイベントばっかり狙ってるんだって!」
「はあ……」
「そいつらが今回、ウチらの即売会を狙ってるんだよ! 実はもう被害が出てて、搬入した同人誌のダンボールが全部どっかに行っちゃったの! 今皆で探してて、見つかった分で何とか準備してるんだけど、奴らはまだ何かしてくるはずだよ」
 山野は焦りと不安の表情を浮かべた。
「危険なグループなんですか?」
「最終的には危険かも……。聞いた話だと、最初はこうやってダンボールを隠したり、スキルでちょっとした火事に見せかけたり、わざわざ大声で作品をけなしたり、スタッフのフリして爆弾が仕掛けられたとかって入場者に嘘ついたりっていう陰湿な嫌がらせをするんだって」
「何か……撲滅とか言ってる割にはやってることがセコいような……」
 沙那の鋭いツッコミ。それでも山野は小さく首を振る。
「だけど、それでもイベントを中止にしない時には、実力行使に出るんだよ!」
「まさか」
 にわかに沙那の顔に恐れが走る。殺傷事件などになっているのだろうか。
「覆面して武器持って乗り込んで来るらしいよ。ってもその武器は木刀だったり子供用のプラスチックの野球バットだったりするみたいだけど」
 沙那はどう考えればいいのか一瞬返答に詰まった。
 撃退士なら木刀や野球バットで攻撃されても大したことではないが……、迷惑なのは確かかもしれない。
 迷惑はかけたいが本気で事件にする気はないということだろうか?
「その程度の武器なら、全員で取り押さえられるんじゃ?」
「いやそれが、こういうイベントに来る参加者は皆本の方が大事だから、本が犠牲になることを恐れて積極的に戦えないんだよね〜」
 沙那の絶句その2。
 なるほど、奥が深い……。オタクの特性を生かした巧妙なやり口という訳か。
 ちなみに同人誌を買うオタクとは、たとえ自分が水に落ちて溺れようとも本は頭の上! 地震で同人誌に潰されて死ぬのなら本望! という生き物である。
「それでもその武器を持った一団に追い回された参加者もいるし、暴れられたらスペースもめちゃくちゃになるでしょ。それに、奴らは逃げ足が早いんだって。生徒達の中に紛れちゃえば判らないしね」
「うわー、イヤな人達ですね……」
 沙那は山野がここに来た理由を理解した。
「つまり、山野さん達の同人誌即売会を撲滅団から守ればいいんですね?」
「そうなの! あたし達だけじゃもう手が回らなくって! せっかく皆頑張って本も作ったんだし、あたし同人誌作ったのもサークル参加も初めてだから、成功させたいじゃない?」
 はにかんで笑う山野。彼女のはにかみにつられて沙那も恥ずかしさがぶり返してきた。また赤くなりながらも精一杯微笑む。
「そうですね。無事に本が売れるといいですね」

 そして急遽依頼が張り出された。


リプレイ本文

「ゆるせない……ゆるさないっ、キモヲタ撲滅団……悪い天魔じゃないけど、ころすころすころすッ!」
 エルレーン・バルハザード(ja0889)は語気も荒く憤慨していた。自らも『エルえもん』としてサークル活動している彼女にとっては、即売会を潰そうとしている輩は悪!
「全くよね、表現の自由を妨害するなんて言語道断! 返り討ちにしてあげるわ」
 メフィス・ロットハール(ja7041)も過去同人活動をしていた経験から、我が事のように撲滅団の妨害を許し難く感じていた。
「いつだって争いの種は、相互理解をしないことから、だな……。もっとも、おかげで仕事には困らんが、ね」
 前髪で片目を隠したアスハ・ロットハール(ja8432)が言う。口調はクールだが、彼なりに心の内では撲滅団への怒りに燃えていた。
「皆さん、今日はよろしくお願いします!」
「「お願いします!」」
 依頼をした山野に倣い、他部員の全員が声を揃え、礼をする。
「山野さん、私達に任せておいて!」
 神埼 晶(ja8085)の頼もしい言葉。
「その手の輩はつきものとはいえ、過激すぎるの。ちょっと黙っておくわけにはいかないの」
 和装の似合う人形のような可愛らしさの神埼 律(ja8118)も静かに憤りを露わにしていた。
「本の入ったダンボールが盗まれたということですが、昨日はどこに保管していたんですか?」
 播磨 壱彦(jb7493)が山野に尋ねる。
「えっと、この部室の真ん中に全部置いてあったよ。鍵は私達が来るまでちゃんと掛かってたし、窓も全部閉まってた」
「ということは……、天魔が少なくとも一人は撲滅団の中にいるということか。まだ見つかっていないダンボールはどれくらいです?」
「あと35箱……」
「本がないんじゃダメじゃない!! 急いで見つけないと!」
 メフィスが叫ぶと、パートナーのアスハもうなずいた。
「そうだな、開場まで時間がない。ダンボール回収班と会場防衛班に別れよう」

 という訳で、ロットハール夫妻と播磨が回収に、エルレーンと神埼姉妹が防衛になった。

●事前準備
 仲間達と各漫研の代表者との携帯番号を交換し、未発見のダンボールをリストにした物のコピーをもらうと、メフィスとアスハはコスプレをすることに。
 校内を回るついでに宣伝も兼ねる。さらに撲滅団が釣れれば言うことない。
 メフィスは今流行りの魔法少女、アスハはSFロボアニメの軍服。
「その、なんだ……必要なら、仕方ない、な」
 女子達に『似合う〜!』などと黄色い声を送られ、若干の照れと戸惑いを感じながらもアスハはこれも仕事だから、と自分に言い聞かせた。
「それじゃ行くわよアスハ!」
 山野からチラシを受け取り、メフィス達はダンボール探しへと出て行った。

「まずは、本は全部スペース内に持ち込んで! これは絶対なのっ。まんがいちのときは……からだをはって、まもるのっ!」
 経験豊富なエルレーンが熱血指導。
「あと、会場の入口を一つにして、受付をつくるの。長い物とか武器を持ってる人は入れないように。せかいいいち有名な即売会もそうしてるんだよっ」
「分かりました!」
 部員達は即座に動いた。
「じゃあ私はその受付で見張ってるの。荒事は晶ちゃんがやるだろうし、私は嫌がらせの対応に回るの」
 ね? と妹に顔を向けると、晶も異論などあるはずもなく、
「オッケー、私は見回りに徹するわ」
 それから律は各サークルに挨拶して回り、今ある発行物を見せてもらい、大きめのビー玉を一つずつ配っていった。そして軽い打ち合わせと共に、もし撲滅団が嫌がらせをしてきても焦らず自分に合わせて欲しいとお願いしておいた。

 開場までに10箱のダンボールが回収、大急ぎでサークルの準備が整えられ、時間通りに即売会は開催された。

●回収班
 メフィス達は手分けして、校舎の屋上や空き教室、用具室、トイレ等、あらゆる所からダンボールを発見した。発見する度に即売会会場まで運ぶため、結構大変である。
 三人は常に連絡を取り合い、自分が探した場所と見つけたダンボールの報告をしていたので、効率よく捜索は進んだ。
 宣伝も怠らない。
「同人誌即売会やってまーす! ぜひいらしてくださーい♪」
 可愛くポーズを付けてメフィスがアピール。
「会場は部室棟です、よろしく」
 その隣でチラシを配るアスハ。受け取る人の大半は女性だ。
「さて……妨害、というなら宣伝役にも食いついて来そうなものだが、な」
 宣伝しながらも周りに気を配る。即売会を止めさせたいなら自分らにも邪魔をしに来るはず、という思惑だった。
 そして案の定、撲滅団と思われる一人が食いついて来た!
「チラシください」
「はいどうそ〜」
 メフィスがにこやかに渡すと、その男は見もせずビリビリに破いてしまった。
(こいつか!)
 心中で叫ぶアスハとメフィス。外見は普通の久遠ヶ原の男子生徒だが、その目からは二人に対する嫌悪感がありありと見て取れた。
「オタクの本とかマジキモイし、そのコスプレなに? いい歳して恥ずかしくないわけ?」
 ピキッとメフィスのこめかみに青筋が浮かんだ。
「えーい、ミラクルプリティレーイ♪」
 笑顔で魔法少女の技名を言いつつ、腹に一発叩き込んだ。
「ぐはッ」
「技名と行動がまるで違うぞ」
 アスハも『大蛇抱擁』を使う。紅い大蛇が男に巻き付き、『スタン』にした。
「同じ撃退士、だ……死にはしない、だろう? じゃあちょっと向こうに行こうか」
 彼らは男を校舎裏(お約束)に連れて行き、尋問。
「……貴様は撲滅団の一員だな? 隠したダンボールの在りか、仲間の所在を言ってもらえばいいだけ、だ」
「わ、我々はキモヲタの言いなりになどならないッ」
 強気に男は言い返しているが、ビビっているのが見え見えだ。
 ニコニコ顔のメフィスがずい、と男の前に顔を寄せる。
「妨害目的の生ぬるい相手じゃ、本気の私達に敵う訳ないじゃない? そういえばさっき、私のコスプレについて何か言ったわね?」
 くわっと彼女の顔つきが変わった。
「私のどこがキモイって言うのよ! 言ってみなさい!!」
 オタク=キモイと一括りにされたことが腹立たしい。まぁ大概のオタクは腐ってるから否定はできないが、とにかく腹立つ。
「いい歳してアニメの女の子の格好とかイタすぎるn」
「何だとーーーッ!!」
 メフィスのアッパーが炸裂! しかも男のセリフにカブり気味で。
 奴はこのメフィスを前に言いやがった! 勇者だ!
 しかし、我が妻ながら恐ろしい、とアスハは思わずにはいられなかった……。
「撃退士だったらこれぐらい大丈夫よねー♪?」

 で、情報を聞き出すことは聞き出せたが、ダンボールの隠し場所は自分が担当した分以外は知らず、仲間とは携帯で連絡を取り合い、各自行動しているとのことだった。
 取りあえず分かった場所を播磨に告げ、自分達も捜索に戻ることにした。
 男は簡単には逃げられないよう後ろ手に三個の手錠をかけ放置した。

●防衛班
 開場と同時に晶が阻霊符を発動し、天魔の撲滅団員が忍び込めないようにした。それからエルレーンと状況を確認しながら見回り。
 開場から2時間ほど経った今、ダンボールも続々と発見され即売会らしくなってきた。しかしまだ撲滅団は現れておらず、油断できない。
「簡単な荷物チェックを行っております。ご協力ありがとうございます」
「イベントへようこそなの」
 受付では律と部員の一人が入場者をチェックしていた。今の所武器のような物を持っている者はいない。
 だが――。
「うわ、何この絵! ヘッタクソー! こんなんで人から金取ろうって言うの!?」
 わざわざ大声での作品の批判。撲滅団の仕業に違いない。
 律はささっとそこのサークルへ行った。
「……言われてみればそうなの! じゃあ貴方ならもっと上手く描けるの? 貴方の作品はどのくらいの値段がつくの? 有名な作家さんなの?」
「う、うるさいわね! オタクみたいに漫画なんて描くわけないでしょ! こんな下手でつまらない本、誰も買わないんだから!」
 とか言ったところでまるで説得力がない。
 作品にいちゃもんを付けた女は律にやり込められ、そそくさと逃げるように出口に向かった。
「エルレーン、そっちに行った!」
「まかせてっ」
 晶の声に応えてエルレーンが女の前に出る。女は強行突破する構えだったので、エルレーンはヒョイっと足を出し女を転ばせた。
 晶が『マーキング』を撃ち込む。
「逃げても無駄よ。マーキングでどこに逃げてもすぐ分かるわ」
「うう〜っ……」
「それじゃ、別室で話そうか?」
 女を立たせて両腕を後ろに締め上げた。

 エルレーンを防衛に残し、晶は女と空いている部室へ入った。
「隠したダンボールの場所、吐いてもらうわ」
 晶は見回りながら、本が一冊売れるたびに嬉しそうにしている山野達を見ていた。
 その同人誌を一冊作るのに山野達がどれだけ頑張ったか、同人誌が刷り上がった時どれだけ彼女達が嬉しかったか。そういう気持ちも分からずに、人の楽しみを壊す連中は絶対に許さない。
 こいつらは私が全員ぶちのめす!
「言わないなら、指を一本ずつ折っていこうか?」
 晶の気迫が伝わったのか、女はペラペラと自分が隠したダンボールの在り処を白状する。
 それを回収班に伝えると、女の手足に手錠をかけてその場に転がし、自分は会場へ戻った。

 しばらくすると、会場ではまたも事件が。
 どうやら『会場に爆弾が仕掛けられている』と誰かが広めたらしい。騒然となる会場に、律の声が響いた。
「大変なの! リザーゴンの野望を阻止するには皆の力が必要なの!」
 皆が律に注目する。しめた、と律は先を続けた。
「見事見つけてくれた人にはゴブガリアンさんのスケブ最優先なの!」
 にわかに事件がイベント企画に変わった。ホッとした空気の後、来場者が会場内を探し始める。
「晶ちゃん、という訳なので、どこかにそれっぽいもの隠しといて欲しいの」
「……分かったわ」

●潜入捜査
 播磨はまた二箱ダンボールをサークルに届けた。
 始めは不安そうにしていた部員達もだんだん活気を取り戻してきたようで、良かった、と思う。
(偏見のみで人を判断するばかりか全否定、あまつさえ楽しい時間を台無しにしていくとは……主張や想いがあるとしてもまず実力行使なんて言語道断だし、是非捕まえてお灸を据えてやらないと!)
 会場を出ると、木の陰からイベントをうかがっている男が目に入った。その睨むような目つきに明らかな敵意を感じる。
(まさか……)
 直感した播磨は、その男に接触することにした。
「あなた、もしかしてキモヲタ撲滅団の人?」
「……なんのことだ」
「しらばっくれなくてもいいですよ。僕もオタクが大嫌いで、最近噂の撲滅団に是非協力させてもらいたいと思ってるんです」
 男は播磨を値踏みするようにじっくり見てから、打ち明けた。
「実は、俺がその撲滅団のリーダーだ。君がその気なら歓迎しよう」
「ありがとうございます!」
 潜入成功だ。案外チョロい。
「あ、それじゃこれ知ってます? 即売会の主催がイベントを守ってくれっていう依頼を出してたんです」
「なに!?」
 リーダーは一瞬驚いたが、すぐに納得顔になった。
「どうりで、予想以上に本があるし、トラブルも今回は上手く切り抜けていた」
「でも今は皆ダンボール探しに夢中みたいです。ダンボール移動させた方が良くないですか? 隠し場所教えてくれれば僕がやります」
 播磨の提案にふむ、と考えるリーダー。
「いや、会場が手薄な今がチャンスだ! 一気に乗り込む!」
 リーダーは携帯でメンバーに連絡する。
「繋がらない奴がいるがまあいい。お前は覆面がないから、今回は見張りだ」
「分かりました」
 リーダーが覆面を被り用意している間に、播磨はこっそり防衛班に警告の電話を入れた。

●襲撃
「キモヲタ爆発しろー!!」
 受付を強引に通過して覆面姿の輩が5人、会場に入って来た。手には子供用のバットや木刀が握られている。だが既に播磨から警告を受けていたので、律達には心の準備が出来ていた。
「ああっ、リザーゴンの手下がこんな所にも! 皆、聖なる石は無事!?」
 律が言うと、サークルの部員達が配られたビー玉を出した。
「皆の力で石を守って! 秘めたる力を開放してくださいなの!」
「皆さん石の周りに集まってください!」
 来場者はこれも企画なのだろうと思いサークル側に集まり、会場に空間ができる。撲滅団はいつの間にかエルレーン、晶、律、播磨に包囲されていた。
「きさまらだけは……絶対に、ゆ゛る゛ざん゛!!」
 エルレーンはいきなり一人の影を縫い止めた。
「うわあ!」
 いつもと違う様子に驚いた団員が逃げようとする。
「逃がさへんで! ヲタクの怒り、思い知れッ!」
 壁を走って回り込み、強烈な萌えを乗せた『雷遁・腐女子蹴』をお見舞いした。あっさり昏倒する団員。
「ひとの喜びを潰そうとする奴は……私が攻め受けつけて、冬の新刊(18禁)にしてやるッ!」
「やめろおッ、俺達にヲタ用語を適用するのはやめろおッ!」
 一人が木刀を振りかざしてエルレーンに向かって行く。
「暴れるんじゃないわよ!」
 晶のリボルバーが火を噴いた。容赦なく足を撃ち抜く。
 さらに逃げようとしたリーダーの前に播磨が立ちはだかる。
「上手な嘘には少しの真実を混ぜておくもの、ですよ」
「貴様……!」
 騙された、と思っても後の祭りだ。
 播磨はリーダーを捕まえ、後ろ手に縛り上げた。
 結局拍子抜けするほど簡単に撲滅団は捕まり、全員覆面を剥ぎ取られる。
「メンもわれたし、今度撲滅団の噂を聞いたらもっとひどいおしおきするからねっ!」
 エルレーンがずびしっと指を突きつけて宣言すると、撲滅団は観念した。
「ちくしょう、覚えてろ〜!」
 お決まりのセリフで逃げてゆく。
 一旦会場がシーンとしてから、一斉に拍手が沸き起こった。皆一連のことをショーとして見てくれたようだ。
 晶達は安堵の微笑みを交わす。
 その後ダンボールも全部回収され、イベントは無事に終了したのだった。

「皆さん、本当にありがとうございました!」
「「ありがとうございました!」」
 山野を筆頭に、全員が頭を下げる。
「律さんの機転のおかげで評判も良かったみたいですし、私達も楽しかったです! それであの、良かったらこれ、受け取ってください!」
 山野が自分の作品を差し出した。
「じゃあ私のと交換しよう☆うふっ、おりじなるだよ……ほのぼのだけど、ちょっとだけえっちぃ描写もがんばったよ!」
 エルレーンもうすい本を渡す。
「わー、ありがとう!」
「私もいただくの」
「嬉しいです!」
 律も丁寧に申し出て、皆の前でありがたく頂戴した。

 オタクの平和は守れたし、悪者もやっつけた。
 今日のことはいい思い出として心に残るだろう。
「楽しかった♪」
 エルレーンはにっこり笑って、大事そうに本を胸に抱きしめた。



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 京想う、紅葉舞う・神埼 律(ja8118)
重体: −
面白かった!:2人

┌(┌ ^o^)┐<背徳王・
エルレーン・バルハザード(ja0889)

大学部5年242組 女 鬼道忍軍
押すなよ?絶対押すなよ?・
メフィス・ロットハール(ja7041)

大学部7年107組 女 ルインズブレイド
STRAIGHT BULLET・
神埼 晶(ja8085)

卒業 女 インフィルトレイター
京想う、紅葉舞う・
神埼 律(ja8118)

大学部4年284組 女 鬼道忍軍
蒼を継ぐ魔術師・
アスハ・A・R(ja8432)

卒業 男 ダアト
撃退士・
播磨 壱彦(jb7493)

大学部1年259組 男 鬼道忍軍