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マスター:久遠 由純
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/10/04


みんなの思い出



オープニング

 千葉県のとある小学校には、結構広いグラウンドがある。昔は子供が多かったのでこれでちょうどいいくらいだったが、児童数の減った今の時代では少し持て余す広さだ。
 広いのはいいが、この小学校が創立される前は辺り一帯田んぼだったためか、雨が降るとすぐにぬかるんでしまうのが難点だ。
 今日も前日に降った大雨のため、ぬかるみの場所があちこちにできてしまっているのだった。

 低学年のクラスの子供達が、体操服でわらわらとグラウンドに出て来る。体育の授業なのだろう。
 まだ若い女性教師が彼らの後に続いて昇降口を出ようとすると、事務員のおじさんに声をかけられた。
「あ、先生にお電話らしいですよ。職員室へお願いします」
「え? 何だろう? 分かりました、ありがとうございます」
 女教師は自分を待っている児童達へ
「先生ちょっと呼ばれちゃったから、少し待ってて! ぬかるみには近づかないようにね!」
 一言注意してから、職員室へと向かった。

 子供は、やるなと言ったことに興味を示す生き物である。

 元気のいい男子児童の何人かは、先生がいなくなったのをいいことにさっそくぬかるんだ場所で遊び始めていた。
「あはは、お前かかったなー!」
「きったねー!」
 何が楽しいのかは大人になるとさっぱり理解できなくなるが、子供のうちは泥んこ遊びが楽しいものである。そして誰かが楽しそうにしていると自分も混ざりたくなってくる不思議。
 そんな心理が働き、男子児童のほとんどはびちゃびちゃと泥を跳ねさせながら駆けずり回っていた。
「やめなよ男子ー」
「先生がぬかるみに近づいちゃダメって言ってたでしょー」
 女子は男子を遠巻きにしながら、友達同士に何となく分かれておしゃべりしている。
 一人の男子児童が、案の定ぬかるみで滑って転んだ。
「いてっ!」
「ギャハハハ!」
「だっせえ〜!」
「ほら、だから言ったじゃない」
「先生に怒られても知らないからねー!」
「ちくしょー」
 転んだ男子児童が起き上がろうとした時、彼の背後の泥が盛り上がった。
「え?」
 泥は人の形になり、彼らを見下ろしているようだった。
「きゃあーっ!!」
「なんだ!?」
 泥の人形(ひとがた)は目の前の男子児童に大量の泥を流し掛けた。トラックが荷台に積んだ土砂を落とすように。
「うわあっ!」
 少年は泥に覆われ、泥から顔をかばおうとしたそのポーズのまま固まってしまった。
「天魔だ!」
「逃げろー!!」
「キャアアア!!」
 児童達はパニックになって、叫びながら校舎へと逃げ出す。
 泥人は手近な児童達に次々と泥をぶっかけ始めた。

 女教師は早く児童達の所に戻らないと、と早足で廊下を歩いていた。
 電話は母親からだったが、何も今じゃなくてもいいのに、という内容だった。大事でないのは良かったものの、だったら融通を聞かせて欲しかったと思ったりする。
 まあ仕方ない。親というものはそういうものなのだ。
 彼女は気持ちを切り替えグラウンドに出る。児童達の姿を探すと、何やら騒いで、慌ててこちらに走って来るではないか。
 何かあったのだろうか?
 彼女の全身から一瞬血の気が引いた。自分が目を離した隙に児童に何かあったなら、自分の責任だ。
「どうしたの!? 何かあったの!?」
 自分も児童達の方へ走りながら、彼らを落ち着かせようとする。
「先生、天魔だよ!」
「逃げて!」
 足の速い児童が真っ先にたどり着いてそう言った。
「なんですって!?」
 先を見ると、全身泥まみれの人のようなものが、その手からドバドバと児童に泥を浴びせかけている。泥をかけられた児童は、たとえ走っている途中だろうとその格好のまま固まってしまうのだった。
 そういう児童の土像とでもいうものが、何体も天魔の周りにできていた。
「なんてこと……!」
 女教師は児童達に早く校舎に入るよう指示した。
「皆、早く! 早く中に入って! 誰か職員室へ行って、誰でもいいからそこにいる先生に知らせて!」
 指示が伝わったかは分からない。
 児童の中には泣き出す子もおり、何とか校舎の中へ向かわせるので精一杯だった。
「先生、井上さんが!」
「え?」
 女子児童の指差す先を見ると、一人の少女が逃げ遅れ、その後ろに泥の化物が迫っていた。
「井上さん!」
「先生ー!」
 女教師は少女の下へと駆け出した。
 女子児童目掛けて、泥人は泥を放出する。
「ああっ!」
 片足に泥が掛かり、固まってしまった。急に地面につなぎ止められたため、前につんのめり倒れ込む。これ以上走れない。
「先生助けて!」
 泥人がゆっくり体を左右に揺らしながら寄って来る。
「井上さん――!」
 女教師は必死に自分の児童を守ろうと、少女の上に覆いかぶさった。

●久遠ヶ原依頼斡旋所
「緊急の要請です! 小学校に天魔が出現! 泥でできた人型のディアボロと思われます。現在逃げ遅れた女子児童がおり、危険だそうです。すぐに出られますか!?」
 ただならぬ緊張感で受付の女子生徒の声が響いた。



リプレイ本文

●危機一髪 ヒーロー登場!
 女性教師は自分のクラスの女子児童の上に覆いかぶさった。
 天魔は確かに恐ろしかったが、少女を助けなければという思いしかなく、考える前に体が動いた。
 人の形をした泥の怪物が彼女達を見下ろし、土の像にするべく腕を伸ばす――。

 犬乃 さんぽ(ja1272)が駆けつけたのは、まさにその場面だった。
「ニンジャ参上、まて、お前の相手はボクだっ!」
 高らかに響く声。どこからか流れてくる勇ましいリズムの主題歌。
 泥人の動きが止まった。
 身を縮めていた女教師も恐る恐る目を開けて声の方を見ると、そこにはなぜかスポットライトを浴びた犬乃がアイドルさながらに、赤いマフラーをなびかせて指を泥人に突き付けている。
 犬乃はさらに児童達に撃退士の到着をアピールするために言い放った。
「父様の国の平和はボクが護る!」
 『英雄燦然ニンジャ☆アイドル!』の効果なのかローラースケートが光り、彼が動くたびに彼の歌って踊る姿が重なっている。テレビで見る特殊効果を生で再現しているかのようだ。
 効果はあったようで、校舎の中に逃げていた児童達も自分の登場に驚いている。
 犬乃のスキルの成功で泥人の注意がこちらへ向いたところへ、
「久々ですし、気を引き締めていきますか……。こっちですよー」
 鳥海 月花(ja1538)のシルバーマグWEが火を噴く。藍色のアウルを纏った銃弾が泥人の頭部に当たった。
 それと同時に藤堂 猛流(jb7225)がランタンシールドを掲げて全力で突進する。
 彼は激しい怒りを感じていた。学校、しかも小学校に天魔が現れるなど、絶対に許さない。
 怒りを込めて、泥人に強烈なタックルをお見舞いする。自分の今までの経験はそれをするのにうってつけだ。
 激しい体当たりを喰らった泥人はよろめいた。
 女教師らを守るように、藤堂は仁王立ちになった。
 大きく目を見開いた先生と目が合う。
「死んでも助け出してやる……必ずだ」
 押し殺した声で藤堂が言うと彼女はさらに驚いたようだったが、恐怖と信頼の混じった顔で藤堂を見つめていた。
「学校に怪物、かぁ……ホント、まともじゃないよねこの世の中。……っつっても、俺もそのまともじゃない連中と戦うまともじゃない仕事をしようってんだから大概か」
 小さくつぶやきながら、クラウス レッドテール(jb5258)は皮肉っぽく笑う。
「っと、頭切り替えて仕事仕事……っと!」
 泥人の回りに点在する児童の土像に気を付けながら、ショットガンSAW8を泥人目掛けてぶっ放した。
 ディザイア・シーカー(jb5989)も土像達と敵の間に位置を取る。
「ギリギリだが、何とか間に合ったか」
 まだ土像に変わっていない女教師と少女を確認して、ディザイアは息を吐いた。
「全く、面倒なとこに出てきやがって」
 やれやれと目を細めディアボロをにらみつける。土像になってしまった児童達に攻撃が行かないよう、壁になるつもりだった。
「すぐ助けてやっからな、ちっと待ってろよー?」
 像の子供達にも聞こえていることを願いながら、ディザイアは安心させるように言った。
 ゲルダ グリューニング(jb7318)の召喚したヒリュウが、泥人の頭の上をかすめながら飛ぶ。

 彼らの到着で、校舎内の児童達は歓声を上げた。
 

 皆が泥人の注意を引いている間に、蓮城 真緋呂(jb6120)が女教師の下へ全力移動した。
 プレートシールドを活性化させ、泥を被らないよう構える。
「大丈夫ですか!?」
 先生の顔を見ると、彼女は今ようやくどういう人間が来たのか理解したかのように、呆然とした一瞬の間の後ハッと我に返った。
「は、はい、私は大丈夫です。でもこの子が……!」
 少女は泣きべそをかいて先生にしがみついている。
「足が動かないの」
 固まった泥が彼女の足を地面につなぎ止めているのだった。
「少し痛いかもしれないけど、我慢してね」
 蓮城は少女の足の泥を拳で叩き、壊し始めた。
「もう少しよ、井上さん。撃退士が来てくれたからね」
 先生が少女を励まし落ち着かせてくれているので、作業はやりやすかった。
 泥から解放されると女教師が女子児童に肩を貸して立ち上がる。どうにか動けそうだ。
「もう大丈夫よ。皆が引きつけてくれているうちに、ここから逃げるわ。他の子も、あれを倒して助けるから安心して?」
 蓮城の頼もしい言葉に二人はうなずいた。
 背後を見ると、皆の作戦は上手くいっているようで、天魔はこちらを気にもしていない。
「さ、走って!」
 蓮城は彼女らを盾で庇いながら、校舎まで避難させた。
「ありがとうございました」
 少女を保健室へ連れて行くように指示した先生が、さっきよりは教師という立場を思い出した様子で言った。
「いいえ。できれば校内放送で私達の到着と、絶対に校舎の外へ出ないように言ってもらえますか?」
「分かりました」
「すげー、撃退士だって!」
「ホンモノ?」
「決まってんだろ?」
 先生の後ろで、さっきまでのパニックはどこへやら、今度は撃退士に興味を示し、遠巻きに蓮城を見ている児童達。
 そんな彼らを少し微笑ましく見やりながら、蓮城は校庭へと引き返した。

●悪者 対 正義の味方!
 皆でディアボロを取り囲んだ。
 ヒリュウが力を溜め、泥人の頭上から『ブレス』を繰り出した。
 顔面に命中したが、あまりダメージになっていない。ゲルダ自身は校舎の出入り口が見える所に移動して、児童が出てこないように気を付けていた。
 犬乃は八岐大蛇を抜き放った。
 ディアボロが再び先生や土像の子供達に向かっていかないよう、なるべく彼らから引き離さなければ。
 危険にさらされている人がいるのを、正義のニンジャとしては放っておける訳がない。
「風の速さで一点を穿ち、破壊の力を爆発的に、これがニンジャ秘孔の神髄だ……くらえ必殺、くびはねる☆ひっと!」
 犬乃の刀は疾風より早く敵を切り裂く『風遁・韋駄天斬り』の一撃を放つ。
 首と言えるほど細くないが、頭と肩が繋がってる部分を斬った。だが体が泥なだけあって致命傷にはならず、切ったはずの所はすぐにふさがってしまう。
 泥人は腕から泥を放出した。
「なんのっ」
 犬乃はひらりと跳んでかわす。
 挑発するようにクラウスと鳥海が銃を連射した。
 藤堂が再び泥人を抑え込みに行こうとすると、泥人は瞬間的に拳を固くしてパンチを打ってきた。
「ぐっ……!」
 藤堂は一発をまともに肩に喰らってしまったが、構わずこれ以上後退するつもりがないことを示す。
 彼は自分自身のダメージは省みなかった。それが、今まで生きてきての『いつものこと』だから。今は自分よりも天魔を校舎や土像から引き離すことが優先される。
 ディザイアも天魔が進む方向を限定するためにアサルトライフルAL54で牽制していた。
 ディアボロは撃退士達の思惑通り、徐々に土像から離れた所へ移動していた。
 ヒリュウが降下しては爪で天魔の頭を引っ掻く。
「ヒリュウ、もう一度よ!」
 ゲルダが命じると、ヒリュウは再び急降下した。しかし、単調な攻撃は敵にも予測されやすい。ヒリュウを待ち構えていたのは泥人の泥。
「ヒリュウ!」
 召喚獣は片方の翼の半分ほどに泥をかけられてしまった。
 飛行バランスを崩したヒリュウは偶然、泥人の顔に掴まった。目鼻が見えないのでどちらが前か判別しにくいが。
 突然のしがみつきにディアボロはうろたえた。
「チャンスだ!」
 藤堂は『サンダーブレード』で攻撃した。雷の剣が泥人の胴に食い込み、『麻痺』を与えた。
「皆、今のうちだ!」
「光の矢、くらいなさい」
 藤堂の合図に応え、戦線に復帰した蓮城がシェキナーの弓で炎の矢を放った。泥の巨体に命中する。
 シャインセイバーに装備を変えたディザイアが両足に雷、体に風のアウルを纏い、素早い動きで天魔に接近し片腕を斬り落とした。
 しかし泥人は悠然と腕を拾い、切り口を合わせると元通りになってしまった。
「ふむ、やはりくっつくか……切った部分は投げ捨てちまえばいいか?」
 敵が拾うより早くやれれば……。ディザイアはその考えは悪くないように思えた。
(ヤツを引き寄せたい所に投げ集めてもいいかもしれん)
 ゲルダは一旦ヒリュウの召喚を解除する。
「試してみるか?」
 クラウスが腕を狙ってショットガンを撃った。
「えーい!」
 削られた腕を犬乃が斬り飛ばす。
 泥人がまたくっつけようとするよりも先に、ディザイアはその腕を引っ掴み校舎と反対側へ投げた。
 あわあわした様子で腕を追おうとする泥人。
「もう一本もらうよっ!」
 続けて犬乃は残った腕に斬り付けようとした。が、泥人は腕を上げてその攻撃を腹で受けた。
「あッ」
 と思った時は遅かった。硬化された腕が振り下ろされる。そこへ鳥海が『回避射撃』を撃ち込む。
 ディアボロはすかさず軌道がずれた腕を返し、反応が遅れた犬乃に当てた。
「いったーい!」
 犬乃はギリギリで力と同じ方向に跳んでダメージを最小にしたものの、受けた腕がしばらく痺れるのは仕方なさそうだ。
「生意気ですね」
 鳥海の中のスイッチが入った、いや何かのストッパーが外れたかのように銃を連射しだした。
 狙いは切られた腕や頭だ。
「ふふふふふふふふふふ。とりあえず不死身でもなさそうですし、滅ぶまで何百発でもお見舞いしますよ」
 冷笑が彼女の顔に広がる。幼女を襲ったことで、この天魔がほんの少しでも無事で済む選択肢はないのだ。
 泥人は残った腕から泥を撒き散らした。
 皆が一旦距離を取る。

「なかなかしぶといみたいだなぁ」
 ディザイアが様子を見ていると、泥人はまた校舎の方へ向かおうとする。
「行かせるか!」
「ここから先は通行止めだぜー?」
 多少泥がかかっても頓着せず、藤堂とディザイアが泥人の前に出た。
 藤堂は『氷結晶』で氷の塊を作り出し、それをディアボロの足へ突っ込む。冷たい異物が入ったことで、歩きにくくなったようだ。
 ブリアレオスに持ち替えたディザイアが、その足へ『サンダーブレード』を叩き込んだ。ぐらりと体勢を崩す泥人。
「さっさとこっちに来なさいな」
 鳥海も絶え間なく撃ち続けている。泥人の放出する泥の勢いが弱くなってきた。それでもよろよろと藤堂達に泥をかけようとしている。
「戻らせはしないよ……忍影シャドウ☆バインド! GOシャドー!」
 犬乃の掛け声と共に、彼の影が不自然に伸びた。その影が天魔の影に絡みつく。鬼道忍軍の彼らしい、ニンジャっぽさ優先の技だった。
 泥人は『束縛』された。
「よーし、今だよ!」
 犬乃が一斉攻撃を促す。
 ゲルダが再び召喚したヒリュウを手の上に乗せた。そして思いっきり後ろに腕を引き――、
「行って、ヒリュウ!」
 カタパルトのようにヒリュウを前方に飛び出させた!
 ヒリュウは通常より速い速度で飛んで行き、泥人に頭突き!
 ぐらりとディアボロが仰け反る。結構な衝撃だったようだ。
 クラウスがショットガンで残りの腕を撃つ。鳥海と共にちぎれるまで撃ち込み続ける。一歩一歩、泥人は後退し始めた。
 『磁場形成』で移動力を上げた蓮城が天魔の近くまで移動した。
 槍状の炎を現し、泥人に突き刺す。
「炎の味は如何かしら?」
 『炎焼』の炎が天魔の体を包み燃やしていくと、泥の水分が少しずつだが乾いてきたみたいだ。
「今なら攻撃効くんじゃない!?」
 ディアボロの背後から犬乃が袈裟懸けに斬る。泥人の体から乾いた土がボロボロと剥がれ落ちた。
「くらえ!」
 藤堂とディザイアが『サンダーブレード』で腕を斬り足を折ると、泥人は横ざまに倒れた。
 また手足をくっつけられてはかなわない。泥人の体をもっと細かくするためディザイアが戦鎚を振るった。すると、皆もそれに加わり始めた。
 だんだん泥人の形が人でなくなってゆく。
 泥の塊が粉々になるまで射撃を止めず、なぜか清々しいまでの笑顔の鳥海は若干近寄りがたいものがあったが、天魔はもはや人に害をなすことはできなくなったのだった。

●校庭で撃退士と握手!
 しばらくすると、土像になった児童達が元に戻りだす。
 鳥海がタオルで泥を拭い、蓮城もそれを手伝いつつ彼らの具合を診る。児童は少しぼんやりしているものの怪我などはなく、しばらく休めば大丈夫そうだった。
 とりあえず彼らを校舎内へ連れてゆき、先生に託した。
 天魔が倒されたことを知ると、児童達が校庭へと駆け出してきた。
 口々に叫びながら撃退士達を取り囲む。
「すっげー! ホントに倒したの!?」
「撃退士チョーカッケー!」
「おう、もう大丈夫だ。だけど何があるか分からんから、残骸の泥には近づくな。いいな?」
 ディザイアが保護者のように言うと、子供達は皆元気よく返事する。
 どうやら天魔をやっつけたことが校内放送で告げられたらしく、各教室が騒がしくなった。彼らを見ようと窓に殺到したり、新たに外に出てくる児童もいる。
 当然、もう授業どころではない。
 先生も何人か出て来ていた。先程の女教師と校長先生らしき人もいる。
「我が校の児童達を救っていただき、本当にありがとうございました」
 深々と校長先生方に頭を下げられ、撃退士達は少し照れくさい気分だ。
 そんな空気を茶化すように、誰かが犬乃のスカートをめくった。
「わあッ、誰!? ボクのスカートめくったの!?」
「えー、女なのにボクって言ってるー」
「違うよ、ぼっ、ボク男だからっ」
 犬乃は真っ赤になりながら必死に否定するも、
「うそだよー、だってスカートはいてるじゃん!」
「これは戦闘服だしっ」
 余計子供にからかわれるだけだった。

「ねー肩車してー!」
「あたしもー!」
「よし、順番だからなー」
 ディザイアは意外と子供に好かれるらしく、いいお兄さんしていた。
 先生を避難させた蓮城も同じ小学生のゲルダもたちまち人気者だ。
「んー、微笑ましいねぇ」
 そんな彼らのやりとりを、クラウスはデジカメに収めていた。
「私にもそれ、プリントして下さい」
 可愛いものが好きな鳥海にとって、無邪気な子供は目の保養だ。
「オッケー。おっ、あっちもいいカンジじゃない?」
 ニヤリと笑ったクラウスはデジカメを藤堂に向ける。
 彼は助けた女教師と話していた。
「あ、あの、先程は助けていただいて、ありがとうございました」
 改めて頬を染めながら礼を言う先生に、藤堂は
「いや、貴女こそ自分の身を挺して少女を守ろうとしていた。教師といえど、誰にでもできることではない」
「そんな、ただ必死だっただけで……」
 彼女はますます頬を赤らめた。まさに彼はピンチに現れた『王子様』であり、落ち着いた雰囲気で歳も近そうだし、外見だって頼れるナイスガイ。
 だが……、藤堂が鈍いのかタイミングが悪いのか。
「そろそろ帰るそうですよ」
 というゲルダの一言で、それ以上に発展することはなかった。
「それじゃあお元気で」
「は、はい……」

 そして悪を打ち破った撃退士達は颯爽と去って行くのだった。



依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

ヨーヨー美少女(♂)・
犬乃 さんぽ(ja1272)

大学部4年5組 男 鬼道忍軍
怨拳一撃・
鳥海 月花 (ja1538)

大学部5年324組 女 インフィルトレイター
青の悪意を阻みし者・
クラウス レッドテール(jb5258)

大学部4年143組 男 インフィルトレイター
護黒連翼・
ディザイア・シーカー(jb5989)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプA
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
最高のタフガイ・
藤堂 猛流(jb7225)

大学部6年247組 男 バハムートテイマー
マインスロワー・
ゲルダ グリューニング(jb7318)

中等部3年2組 女 バハムートテイマー