お菓子の砦を抜けた先に、その城はあった。
「あれが猫王の城」
ミハイル・エッカート(
jb0544)の声に、ディアドラ(
jb7283)はおっとりと頷く。
「ええ。うふふ。あの方の半裸像だなんて、あらあらvうふふ」
何に思い至ったのか、乙女のように頬染め嬉しそうに微笑む。
「えーっとなんだかよくわかりませんが『金ピカおっぱい』を奪還すればいいのですよね?」
そんなディアドラに首を傾げ、カーディス=キャットフィールド(
ja7927)は自慢の髭をぴくぴくさせた。その頭をカイ手がわっしわっし。
「おう。こういう隠密はおぬしらの得意とするところであろう。――期待しておるぞ」
「毛が乱れるのですよ〜」
ゴライアスのデカイ手で頭をかき混ぜられ、カーディスはせっせと毛繕いしながら「ふむ〜」と息を吐く。
「任務とあらば仕方がありませんね〜。わかりました。おっぱい探しに行ってきます〜」
猫族きっての猫忍者(ぬこんじゃ)カーディスは姿を消す。遁甲の術だ。
「猫王の兵士は二種、か」
攻略を思案するミハイルの背後で、その時、ゆらりと影が揺れた。
「兵士が好きなものが小動物に小さな丸いもの…?だったら好みに合わせて気を引いてやろうじゃねーか!」
振り返ったミハイルは見た。
巨大な丸。色は緑。マリモ着ぐるみに罠踏破用ツルハシを敷き詰めた、見よ!これが世界初公開マルチプルツルハシマリモ・伊藤 辺木(
ja9371)!!
「デカイわぁーッ!」
「痛い!?」
ミハイルのツッコミチョップに吹っ飛ばされ、辺木はコロンコロン転がった。
「『小』動物!『小さな』丸いものーッ!」
「ま、まるいよ…!」
「動物と丸しかあっとらんッ!」
コロンコロン転がる辺木と追いかけるミハイル。眺めていたディアドラが微笑った。
「我が身を賭して惹きつけを買って出ようという心意気――ですわね♪」
その声に、ミハイルはハッとした顔で辺木を見つめた。
「そうか…そんな、深い考えが」
「ああ…俺の屍を超えてくれるなら…本望だ」
マリモな辺木、つぶらな瞳。
「すまない…!それを俺は…!」
「いいんだ…!」
がしぃっ!と抱きしめあう辺木とミハイル。熱い男の友情、爆誕!
「ならば共に行こう!俺達の戦場は、あそこだ!」
「おお!」
意気揚々としたマリモ(辺木)を転がしつつ、ミハイル、巨大な球体肉盾を前に颯爽と出発した。
「猫王は兎も角…あの用意周到な道化王のこった。 きっと城中に罠が張り巡らされてる筈。どうするよ?おっさん」
目にかかる前髪をかきあげ、小田切ルビィ(
ja0841)は城を見上げた。かつて山賊であった彼にとって情報は命。道化王の噂は通常の騎士団員よりも遥かに詳しい。
「なァに、奴が用意周到だろうがなんだろうが、うちの連中にゃあ関係無い」
ゴライアスは背後を振り返った。
「だろう?おまえさんら」
おお! と応えるのは爛々と目を輝かせる熱きタマシイの持ち主達!
「そう…俺達はおっぱい(像)の為に存在する」
崇高なる使命を胸に、矢野 古代(
jb1679)はゴライアスを見つめ、告げた。
「ゴライアス隊長、貴方が生きておっぱい像を持ち帰れば勝利です――その為ならばこの命幾らでもお使いください」
古代の決意に、ゴライアス、ぐっと口を引き締める。
「古代よ…おまえさんの心意気、確かに受け取った!だが、よいか!儂より若いおまえさんが儂より先に逝くなぞ、断じて許さんぞ!」
「隊長!」
「古代!」
おっさん二人でガシィッ!と熱い抱擁。そんな光景を見てハッスル(古すぎて新しい)する女性がコチラ!
「おっさん×おっさん!好物!!」
ちっぱいからきょっぱいから雄っぱいまで幅広く網羅!走るエロス!誰が呼んだかゴライアス隊おっぱい突撃情報兵!その名もおっぱいハンター!ファラ・エルフィリア(
jb3154)!
「あたし的にはお風呂場とかお風呂場とかに秘宝がありそうな気がするよ!」
いきなりベストフィールドを検出した!
その隣、ここに到る道中でおっぱいを連呼され、鬱憤を溜めていた少女が一人。
「ぬぁーにがおっぱいだよ、ふんっ!」
ぷっくりと頬を膨らませ、宗方 露姫(
jb3641)は輝く仲間の瞳をギリリと睨みつける。
「おっぱいなんかな!おっぱいなんか無くても気にしてねぇんだしな!」
「大丈夫!平たくても胸の部分はおっぱいだよ!」
「お前ェええッ!」
ファラ。ものすごい勢いで傷を抉りおった。
「なにをかくそう!あたしも昔は大平原のさくらんぼ!」
「なに!?」
「それが今やこの盛り上がり!つまり!おっぱいは!無限の可能性!!」
抉ってるのか鼓舞しているのか。いや、おっぱいハンター、ファラの思いはただ一つ。
おっぱいは、おっぱいであるだけで、至高なんだよ!!(心の声)
「今の俺は…俺は……!!ちくしょう!黄金のおっぱい像なんかつるぺたにしてやるーっ!!みぎゅー!!」
仲間のSAN値が削れるのを眺めていた雫石 恭弥(
jb4929)は、やれやれ、と首を横に振る。
「気にすることはない。そうだろう?そんなにチャイナドレスが似合ってるのに」
「ちょっと待ていつのまに俺の服がチャイナに!?」
恭弥、色とりどりのチャイナドレスをシャランラ〜。
「み゛ゃああああ勝手に着せたーっ!?」
「「似合ってるよ!」」
「うるさいうるさいっ!チャイナだって…チャイナだってなぁ…!ちくしょう!見栄えするのはデカイやつだんだよ!!」
「「チャイナは、脚!!」」
「うっさいわぁ!」
ファラと恭弥が両手握り拳で力説するのに、露姫はこめかみに青筋。ちょっと頬が赤いのは秘密である!
「それにしても、そちらも素敵なお召し物ですな」
敵の本拠地前とは思えない賑やかな一同に、厳かなほど重厚な声がかけられた。
年輪刻む小麦色の肌。思慮深き大人の風情。若かりし頃の美貌や如何に、そんなトキメキすら周囲に与える老紳士はヘルマン・S・ウォルター(
jb5517)。人は彼をおっぱい老紳士と呼ぶ。
その前にいる恭弥の衣装は確かに際立っていた。
ウォーリアーマスクに棘付き肩パッド。武器はショットガンに火炎放射器。黒い上着はぱつんぱつんを通り越し、全開ババーンな胸の傷がよく目立つ。
「何故かは知らんが胸に傷が付いてから狙ったかのように譲られてだな…」
「ああ、あのキャラですね」
「あのキャラだな」
「あのキャラか」
ヘルマン、古代、露姫の声に「あのキャラ言うなし!」と言いつつ、恭弥はヘルマンを見た。
「じーさんも出るのか」
「なに。おっぱい、と聞いては参上しないわけにもいきますまい」
流石おっぱい老紳士。言う事が変態だ。
「それにしても、ゴライアス様には感服いたしますな。黄金のおっぱい像とはまた素晴らしい秘宝を…」
シャランラ〜
そこまで口ずさんだヘルマンを謎の光が包み込む。そして現れる誰おま的黒眼帯の美青年!
「おや若返っているようですな。流石おっぱいの効果は素晴らしい」
「おっぱいすごいな!?」
恭弥、おっぱいの奇跡に顎ガックン。しかし、こんなことで動じていてはいけない!
「当然だぜ。この世の奇跡はすべておっぱいで出来てるんだからな」
静かな声がきっぱり断言。恭弥の後ろから現れたのは、白銀の髪に赤い瞳の青年、赤坂白秋(
ja7030)!
またの名を――
「おっぱい――それ以外に言葉はいらねえ」
おっぱいマイスターTO・U・FU!
――TO・U・FU、とは――
ひんがしの国に伝わる伝説の「ビニール袋に入れてもんだらもしかしたらおっぱいみたいな感触かもしれない」的な白い食べ物である【えるちおん嘘辞典より】
そんな白秋の後ろから一人の女性が現れる。
「そう…全ては至高なるおっぱいの為に」
ビシィッ!と鋭い鞭の音が響いた。
カッ!と地面を抉るピンヒール。唸るご褒美。蔵倫正座。デザインを重視し人間こそ服に合わせろと言わんばかりの軍隊服。現れたのは、誰あろう、ゴライアス隊おっぱい鬼騎兵長ヴェーラ(
jb0831)!
「我等がおっぱい同志よ!良いか!返事はすべておっぱいと言え!」
「「おっぱい!」」
「美女に臆するなむしろ突撃せよ!」
「「おっぱい!」」
「我等が聖なるおっぱい像を取り戻す為!」
ビシィッ!と鞭が唸った。
「あの谷間に向かって突き進むのだ突撃ィーッ!」
「「いえぇえすおっぱいぃいいいいッッ!!」」
「慎めェえええッ!」
大合唱と共に突撃する精鋭おっぱい兵の雄叫びと、絶叫する露姫の声が城前に響き渡った。
「相変わらずですね。彼女等は…」
嵐のような一行に嘆息をつき、マキナ・ベルヴェルク(
ja0067)は己の武器を取り出す。
「ですが、ああなった時の彼女達の実力は折り紙つきです」
月の糸を紡いだかのような銀髪を風に靡かせ、ファティナ・V・アイゼンブルク(
ja0454)は静かに微笑む。その傍ら、名のとおり月の如き玲瓏とした美貌の主、神月 熾弦(
ja0358)はふわりと微笑って頷く。
「美女兵はあちらが対応してくれるようですね」
「不死王が出てきたらどうする気なのかしら」
あまりの勢いに唖然としていたイシュタル(
jb2619)は、長い銀髪を後ろに払いつつ嘆息をついた。
(まぁ、向こうで対応してくれるのなら、それはそれで。像なんてどうでもいいわ…私の目的はレックスだけ)
もともと争い事は嫌いな彼女。ただ戦うだけであれば援護に徹しようと思っていたが、レックスが出ると聞けば話は別だ。
(あのもふもふを!伝説のもふもふを!!心ゆくまで堪能するチャンス!!)
常のクールはどこへいったのか。目を爛々と輝かせ、両手をわきわきさせている様はおっぱい兵とあまり変わりない。
「猫王はイルさんが頑張ってくれそうですね」
そんな可愛いイシュタルの様子にファティナは微笑む。同じくそっと微笑んで後、熾弦は胸の前で小さく拳を握った。
「あのレックスの迷宮に挑まざるを得ないとは…」
一度入れば出ることは不可能――それ故についた名前が【死迷宮】。百戦錬磨を謳われるゴライアス隊とはいえ、犠牲なく目的を達せられるとは思えない。
だがすぐに首を横に振り、決意を新たにする。
「いえ、ゴライアス様、最後までお供いたします!」
「無理はするでないぞ」
わし、と子のように頭を撫でられ、熾弦は頷いた。
その隣へと歩を進める男がいた。
「・・・いかにも、という罠もあるだろう、な」
太陽がその姿を照らし出す。鋼のような筋肉。刻まれしトライバル的紋章。そんな上半身を惜しみなく晒しながら、アスハ・ロットハール(
ja8432)は悠然と歩く。
余分な肉の欠片もない、絶妙に引き締まった筋肉は強靱さと瞬発力を感じさせる見事なもの。だが魔法使いだ。最近のジョブはどうなっている。
「雄っぱいの気配ーッ!!」
ああほら、いい胸筋大公開してるからおっぱいハンター(ファラ)が舞い戻って来ちゃったよ!
「あっ、入って右左前前右前前前上左で美女兵の詰め合わせあるから気を付けてね!あと二分で巡回始まるからそれも気を付けて!あと美女兵のおっぱいはAから始まってEまで確認したよ!」
じろじろじろじろと丹念に雄っぱいを眺めてから「じゃっ!」と充電完了したような顔で走っていく。オサワリが無いのはたぶんきっと妻帯者だから。
「・・・なるほど」
嵐のようなおっぱいハンターが去って後、アスハは変わらぬくーるさで歩を進める。
「…あの短時間で巡回と詰め所と胸のサイズをチェックしてきたんですね」
その後ろ、ファティナの乾いた呟きがひゅるりらと風に流れていった。
「さて、色々出遅れた気がせんでもないが、行くとするか」
パァンッと膝を打ち、ゴライアスは立ち上がる。
「美女兵、猫兵、猫王へは対応者がいそうだな。ふむ。ちィと骨だが不死王を相手どるか」
「おっさん。目的のブツを探すのが先決だろ」
「おお、そうだったそうだった。いかんな。武人の血が騒ぎおるわい」
「ったく…」
ルビィの声に笑い、ゴライアスはわっしわっしとその頭を撫でる。ルビィが眉を怒らせた。
「だああ!ガキ扱いはいい加減にしろよ!」
「なぁにを言うか。儂が拾ってきた以上、おまえさんは儂の子だろうが」
「なぁ!?」
「ゴライアス様…またですか」
目を白黒させるルビィを同情含みに見て後、ルビィ以外の従士三名は嘆息をつく。拾い癖のある主に拾われたが最後、犬でも猫でも人間でも全部「儂の子」扱いなのに彼女達はもう慣れていた。
「さて。おまえさんはどうする?」
ひとしきりルビィで遊んだゴライアスに問われ、マキナは一度だけ目を瞑り、静かな眼差しで城を見やった。
「生ける伝説に興味がない訳ではありませんが、今は目的が第一」
短く呟き、チラリとゴライアスを見上げる。
「獅子公は目を離すとすぐ酒蔵に飛んで行ってしまいますからね」
「う゛っ…いやなに、流石に今日は自重しておるぞ」
「だといいのですが」
二人のやりとりにファティナはくすくす笑う。
「では、参りましょう、ゴライアス様」
「おお」
わいのわいのと隊長組が歩いていく。
「…。」
そんな一同の後ろ。決意を胸にエルレーン・バルハザード(
ja0889)は歩む。
きゅっと引き締められた唇。強い意志を宿す瞳。並々ならぬ意欲を滾らせる彼女の目的は唯一つ。
黄金像を見つけること。
(必ず…必ず…!)
迎え撃つかのように聳える城。隠密のはずなのになぜか響いてくる阿鼻叫喚。それらをまるっと無視してただひたすら無言で進む。
彼女の真意を知る者は――いない。
●
城の尖塔の上から眼下を覗く男がいた。
(真面目になっちゃダメだ。その方が上手くいくんだ)
無駄に風を浴びながらフレイヤ(
ja0715)は銜え葉巻チョコをぷかり。
タレ目、団子鼻、肉☆肉バディ。どこかとぼけた印象のその男はニヒルに城を見やる。
あっ。性別欄は見ないお約束。初夢なので!
(皆はおっぱい像を取り返すのが使命のようだが……小さいぜ。狙うべきものは、そう――おっぱい!)
\ヒューッ/
団子鼻を親指で弾くように擦り、フレイヤは駆けだした。
準備:エロスを滾らせる――完了!
同行者:果てなき性欲――OK!
「いくぜッ!」
左腕の内蔵型フェアリーガンを撫で、フレイヤは颯爽と尖塔から飛び降り、城壁を疾走する!
すでに蔵倫が大変なことになりそうな予感がしたがいつものことだ。しかもフレイヤが侵入した先、城には見た目からすでに蔵倫にアウトくらいかけた傑物がいた。
「さぁ、最初に出会うのは、どの兵かしらね」
華奢な首筋、儚気な肩。たゆんと揺れるのはむきだしのおっぱい。荒ぶる蔵倫。魅惑の果実の中、禁断のぽっちだけを肉球型カットバンで隠した月臣 朔羅(
ja0820)は、噂の黄金像と同じ格好で堂々と城を闊歩する。
「思ったよりも、罠が少ないわね…」
おそらく、ダルドフ隊が頑張ってくれた結果だろう。
幾重にも薄布が重なるスカートを翻し、朔羅は優雅に歩を進める。彼女がエンカウントゼロで歩けるのも、先行したおっぱい兵が情報を発信してくれているからと、もう一つ――
「さて、任務遂行のためにしっかり頑張らないとですねー?」
視線の遥か先、あほ毛レーダーを駆使して進む櫟 諏訪(
ja1215)達がいるおかげだった。
「黄金像を手に入れるんだよー!!」
諏訪の後ろ、アヒルの着ぐるみを着た藤咲千尋(
ja8564)はふんすと鼻から息を吐く。
「罠?サーチトラップで見つけ出してやるわー!!鍵?開錠してやるわー!!」
ふんすふんす!
それにしてもなんという圧倒的マジ☆カル怪盗スキルの数々。ゼロで始まる数字の人にだってなれそうだ!
しかし、手早く家探ししながら千尋は心の片隅で憤慨していた。
(それにしても、おっきければいいんじゃないんだよ!!)
噂の黄金像はそれはそれは見事な美巨乳であるとか。そんな話を道中わいわい言われては、ささやかで慎ましい胸がチクチクしちゃう。だって女の子なんだもん!!
(ちっぱいをバカにしたらゆるさーん!!「貧相」じゃなくて「上品」なのだよ!!)
「千尋ちゃんは千尋ちゃんであるだけで可愛いですよー?」
「ふぁあっ!?」
ココロヨマレマシタカ的タイミングで諏訪がさらり。シュガーフラワーまき散らしながら進む二人はある意味無敵な感じだった。
「…格好つけても、おっぱいなのよね(」
はぁ〜、と蓮城 真緋呂(
jb6120)は長い長いため息一つ。共に駆ける米田 一機(
jb7387)はいやに輝く瞳で反論した。
「例えおっぱいでも、いや、おっぱいだからこそ、男にはやらなければならない時があるんだ!」
「私、女の子だけど」
「うん!」
一機、真顔でこっくり!
「まぁ、いいけど…それにしても、」
嘆息一つ。それできりあげ、真緋呂は軽く周囲を見渡した。鬼騎兵長の号令と同時、思わず一機と一緒に走ったものの――
「案の定迷ったわね」
「案の定!?」
チロ、と見上げる真緋呂に一機はハンマーで頭を殴られたようなショック。えっこれ僕のせい!?
「いや、僕の第六感がこっちのほうだと…!」
慌てて声をあげた時、頭の中に声が聞こえた。
…カズちゃん…カズちゃん…聞こえていますか…今、あなたの心に直接話しかけています…(意思疎通夢仕様)
「この声、ファラさん!?」
…左側の道に突撃していたようなので忠告です…猫兵が巡回に来ます…猫兵です…ちなみに意思疎通は一方通行通話なのであなたの声は聞こえません…(※実話)
「猫兵!?ちょ、どこから…」
…気を付けてください…猫兵の到着時間は…
「いつ!?」
…五秒後です…
「早いわぁああ!!」
思わずツッコミ入れる一機に、真緋呂が(ヤダこの子電波もらってる?)的目線。
「真緋呂!真緋呂!猫兵がすぐそこにい・るーっ!?」
慌てて真緋呂の手をとった一機、きょとんとした真緋呂の後ろの猫兵と目があって飛び上がった。
「後ろーっ!」
「えっ。い、いつの間に!?」
慌てて身構えるも、猫兵達の動きは素早い。スパーンッと二人して足払いをかけられ、見事に廊下に転がった。OH!翻るスカート!むきだしの太腿!GJ!!
(輝く…白!)
一機の心のメモに新たな項目が増える中、猫兵達が槍を向けてくる。
「か、一機」
「真緋呂は僕の後ろへ!」
絶体絶命、白いぱんつを守る為、一機は男らしく床をシャカシャカ這って真緋呂の前へと滑り込んだ!
その瞬間、
「ネコーッ!」
後ろから声が聞こえてきた。
猫兵に身構えていた一機は振り返る。そして見た。
「おー!!ネコー!ネコいる聞いたんだぞー!!」
全力で走る、半裸の尻尾付き少年・彪姫 千代(
jb0742)を!
なんということだろうか。どこで捕まえて来たのかぐてっとなった別の猫兵を小脇に抱えている。千代の後ろでプロペラのように動いているのは高速で動く虎尻尾だ。
「ネコー!!」
「にゃーっ!?」
思わず一機と真緋呂はサッと道を開けた。千代は素晴らしい勢いで猫兵に飛びかかる。
「茶トラなんだぞ!ふわふわなんだぞー!」
「にゃーっ!」
「ブチなんだぞ!鼻のとこがかわいいんだぞー!」
「にゃにゃーっ!」
モフる。全力でモフる。虎の如く勢いでモフる。モフるったらモフる。だからモフるんだってば!!
がっぷりモフられる新しい猫兵が、慌てて抜け出そうともがく!
「猫は虎には勝てないんだぞー!ガオー!!」
「「に゛ゃああッ!!」」
猫兵、見事なまでの気迫負け。
その勢いに思わず観客していた真緋呂、ハッとなってロープを取り出し、気絶した猫兵から順にぐるぐる巻きにしていった。
●
一方、こちらは城の中庭。
「おのれ侵入者め!」
美女兵が繰り出した槍をするりとかわし、朔羅は裏縫を放つ。
「ああっ!」
拘束され、もがく相手の髪にさらりと触れた。
「あら、少し痛んでいるわね」
「えっ!?」
「張りが消えてるし、縮れてるわ」
「そ、そんな…!傷んだ髪では、レックス様をもふりにいけないわ…!」
愕然とした美女兵に、朔羅はそっと用意していた高級シャンプーを渡す。
「これなんかお勧めよ?今すぐお風呂に入ってトリートメントすれば、すぐに……ね」
「本当!?」
パッと顔を輝かせる美女兵の目には最早シャンプーしか映っていない。確認し、朔羅は裏縫を解いて訪ねた。
「ところで、猫王はどこかしら?もふもふの毛皮を見たいのだけど」
「わかるわ!レックス様なら、玉座の間よ」
シャンプーを抱え、「じゃあ!」と駆け出す美女兵を見送って、朔羅は艶然と微笑んだ。
「ふふ…楽しみね」
「黄金のおっぱいはどこでしょうかね〜? やはり王様が持っているのしょうかね?」
首を傾げつつ、カーディスは抜き足差し足、壁走りも多様しながら城をひた走る。
「玉座の間を目指して慎重かつ迅速に行きますよ〜」
だが困ったことに罠を回避し敵兵から身をかわしても、迷宮の大きさと複雑さは想像以上だった。
「そろそろたどり着きそうなのですがー」
それらしき扉をこそこそと開け、中に入って数歩、
ぱこっ
「んっ?」
カーディスの体が落っこちた。
「しまったのですー。落とし穴とはー」
しかしそんなに深くは無い。おまけに針山があるわけでもない。スタン、と着地したカーディスは見た。
穴底にKOTATUがあった。
――KOTATUとは――
フィールドに設置された据え置き型侵入者ホイホイ。布団に包まれたテーブルの中は温もりに満ち、一度入ると二度と出られないという【えるちおん嘘辞典より】
「これは、伝説のKOTATU……みかんとお茶とTVまでありますねー」
カーディス、見事にホイホイされた。
「駄目ですー早く脱出しなければ(ぬくぬく」
暖かなKOTATUに捉えられ、カーディス、リタイアとなった。
「俺は猫の誘惑には乗らない主義でね」
ブラストレイでコゲコゲになった猫兵達が走り去った後、フレイヤは丁寧に壁を調べ、隠し通路へと侵入する。
「何者だ!」
途端、誰何の声が飛んできた。美女兵だ。
「オレは夢の国の騎士さ。もっとも獲物はおっぱい専門だがね」
「なッ!?」
驚愕による一瞬の隙に、フレイヤは異界の呼び手を行使した。束縛され、美女兵が呻く。
「ノックをすべきだったかな?」
「このっ」
移動できないながらも身構える美女に、フレイヤは陽気に笑って手を差し伸べた。
「外の世界に行ってみねえか?迷宮の中じゃカワイ子ちゃんとデートも出来やしねぇ。連れて行ってやるぜ」
美女兵の頬にポッと赤みがさしていた。
「あちこち騒がしいですねー?」
「皆頑張ってるんだね!!」
レーダーを駆使して進み、直一番冒険者しているすわちひコンビは、なんとエンカウントゼロで深部にまで到達していた。しかし、異常事態に新たに兵力が投入されると、否応なく見つかってしまう。
「猫兵ですねー。毛糸玉どうぞー!」
「かわいいー!!」
「美女兵さんには手乗り飛龍ぬいぐるみですよー!」
次々に好物を投げ与え突破するが、品数には限りがある。新たな一団に身構え、回避用アイテムを投げようとして諏訪は動きを止めた。
「しまったですねー。アイテムが無くなりましたよー」
その瞬間、千尋の目がカッ!と光った。
\すわくん!!ここはわたしに任せて先に進んでー/
♪trtrpkpkみんなだいすき♪
♪hshsprpr明日もぴっかぴかー♪
音楽と同時にビッグアヒル(千尋)がお尻ふりふりころんころん。
しかし諏訪、愛する彼女を置いていけるはずもない、というかもの凄い勢いで「#千尋ちゃん可愛い」
「ん、千尋ちゃんを置いていくわけにはいかないですよー?ここで食い止めましょー!」
「す、す、すわくん…!!うん!!がんばるんだよ!!」
ぷゎゎーっと頬を染め、千尋は何故か一緒に踊りだした猫兵ともふもふしながら輪になって踊る。
♪もふもふふかふか明日も会えるかな♪
猫兵ホイホイになりつつ、二人は後に迷宮が吹き飛ぶ瞬間までずっと踊り続けていたという。
「そちら側、得た情報は回せましたかな?」
「んー。だといいかなー…?」
ヘルマンの声にファラは困り顔で答えた。使える伝達手段が意思疎通(一方通行)しか無いため、ちょっとしょんぼり気味だ。
「向こうは今、ミハイルさんと辺木さんが罠吹き飛ばしてくれてだいぶ進んでるみたい。じーちゃ、どーする?」
ヘルマンは「ふむ」と呟いて周囲を見渡した。
「この辺りの探索と罠排除は終わりましたし…次の所に向かいましょうか」
だが数歩も行かないうちにその足が止まった。
「おやこんなところから湯煙が(」
誰が空けた穴だろうか。いい感じに覗けそうな穴が二つ三つ空いていた。そこからほわほわと湯気が漏れている。
「これは覗けということだね!」
すでに覗いているファラに習ってヘルマンも身をかがめる。白い湯気の向こうに淡く色ついた象牙色の果実。すばらしい情景だ。どうやらシャワー室らしい。
「…おや?一部下に見慣れたものがついているような気がしますが」
「あら、本当。美女兵の中に生まれつき女性ではない方もいる、という噂は本当でしたのね」
いつの間にか現れ、ちゃっかり一緒に覗いていたディアドラがうんうんと頷きながら言う。
「誰だ!?」
流石に視線を感じたのかシャワー室から声があがった。凄まじい音がして目の前の壁が破壊され、槍を構えた美女兵が三人、殺意の瞳で現れる。
むき出しのおっぱいは実に見事だが、下半身にだけタオルを巻いているところを見るにつまり※お察しください※
だがしかし、それでどうにかなるおっぱい老紳士ではない。
「おじいちゃま、無問題ですわよね♪」
ディアドラはヘルマンに微笑んだ。ヘルマンは優雅に微笑みを返す。
「ええ。心が乙女なら全員乙女ですよ異論は不要です」
「「「えっ!?」」」
美女兵三人がドキーンッと後退った。ヘルマンはあくまでも紳士に微笑む。
「情報はそこに住む方に聞くのが一番ですね」
\アッー!/
●
「ほう。やりおるわい」
「何かあったのか?」
ふいに低く笑ったゴライアスに、罠を撤去していたミハイルはが声をかけた。ゴライアスは布にペンを走らせながら笑う。
「ヘルマンが迷宮の地理を把握したようだ。地図を入手したのか、誰ぞから聞いたのか」
「じーさん。やるじゃねえか」
ざくざく描かれる地図を横から写し、白秋は確認する。
「この『×』の所が罠だな?」
「そのようだ。しかしこいつぁとんでもない迷路だわい」
出来上がった地図の大きさにゴライアスはため息をついた。
「どれ。おまえさん等も入用だろう」
描き終わった地図を渡され、ファティナは視線で問う。ゴライアスは笑った。
「猫王は玉座の間だそうだ」
イシュタルがパッと顔を輝かせる。察し、ファティナは地図を押し頂いた。
「例え像に執着ありし時も、我らの手で解いてご覧にいれましょう」
「任す」
「はい!」
笑顔で出発する三人を見送るゴライアスに、白秋も告げる。
「俺も行ってくるぜ。宝探しは手分けしねえとな」
「無理はするなよ」
ごつ、とデカイ拳に拳を軽くぶつけ、白秋もまた地図を手に走った。
「普通に宝物庫辺りに放り込んであったりしてなー」
写し終わった地図を見ながらルビィはぼやく。
「ダルドフ隊が猛攻を繰り広げてくれたおかげで、だいぶ罠も減っておるようだな」
「・・・だが、ここが問題、だな」
アスハが指さすのは大きな×ば記された一角。階段を上る為には通らなければならない場所。
「にゃにゃー!」
「っと、猫兵か!」
曲がり角を曲がった途端、巡回する猫兵と目があい、ルビィは舌打ちしてまたたびボールを投げた。
「こいつでもくらいな!」
「にゃにゃ〜んっ」
猫兵達がめろんめろんになって廊下に転がる。
「もう玉切れだぜ」
「とりあえず上に行こう。デカイ宝物庫に辿り着く為には、避けては通れないようだからな」
古代の声に一同は頷く。だがそうやすやすと行かせてくれるはずもなく。
「来たな…!」
夥しい足音と共に現われた兵に一同は身構えた。そこで乗り出す男二人。
「皆は先へ行け。ここは俺達が食い止める」
「ヘイ、そこのにゃんこ&おねーさん!見ての通り小さくて丸い小動物のマリモでございます。捕まえてごらんなさ〜い♪捕まえた暁には愛でるなり煮るなり焼くなり好きにするがいい!」
ミハイルと、辺木だ。
「後で必ず追いついて来い…!」
すれ違いざまにパンッと手を叩き合い、ゴライアス達はミハイル達と別れる。ころんころん転がって兵士達を引きつけた辺木に、ミハイルはダッシュで走った。
極限まで丸まっていた辺木が態勢:気を付け!
ガッ!とミハイルが足を掴む。
\合体!/
「だがジャイアントスイングマリモのツルハシや拳銃乱射を甘く見るなよー!」
周囲の兵士をなぎ払い、ミハイルは脳内にインプットした地図上、×があった通路に向かって辺木マリモをナイッシュー!
「いっけ――、辺木――、皆のために犠牲になれ――!」
簡単に倒れるな。
しぶとく生き残って皆の役に立つがいい。
ついでに俺の盾となれ。
銃撃戦が楽になる。
「ぐわぁ罠!死ぬまでに一個でもぉぉ!!」
もの凄い勢いで罠が発動。バウンバウン吹っ飛ぶマリモが緑色からどんどん茶色に変わっていく。罠に巻き込まれ、ばたばたと倒れる美女兵も哀れ。
無論、ミハイルとて友を罠に突っ込んで平然としているわけではない!
「この量を相手どるとなると…罠を利用するしかないからな」
団体を見つめ、ミハイルは一歩を踏み出した!
(俺も自らの体を張り、漢らしく罠を踏み抜く!)
バゴーンッ!
「ごふっ、これしきのことで倒れてたまるか!」
床一面から飛び出した巨大柱に吹っ飛ばされ、ミハイルと猫兵が宙を舞う。しかしこれだけで収まらない!
「…マジか」
ミハイルは見てしまった。柱にみっちり詰まった、魔法爆弾を。
――爆発五秒前――
「…ふ、ここまでか、お前が俺の死か。黄金のおっぱい見たかったぜ」
――零秒――
ちゅどーんっ!!
豪快な音をたて、大きな花火が地上で炸裂した。
「今のは!?」
次の間へと飛び込み、古代は後ろを振り返る。
「馬鹿者が…後で追いついて来いと、言ったであろうが…!」
「…おっさん」
ゴライアスが目頭を押さえて呻く。背を撫でてやるルビィの横、古代は気を引き締めるように自身の頬を叩いた。
「あいつらの犠牲…無駄にはしない!」
決意を新たにする一同の中、アスハは冷静に地図と部屋の様子を確かめていた。
「・・・向こうに、階段を出す為の鍵があるようだ、な」
階段があるはずの部屋には何もなく、かわりに小部屋の入口がある。何かしかの予感を感じながら、アスハはその部屋へと入った。
ガコーンッ!
部屋に踏み入れると同時、扉無き部屋の入口が熱い岩板で塞がれる。ついで、ゴゴゴ、と重い音が響き天井が降りてきた。
「罠・・・か」
「アスハ…!」
分厚い石の向こう側から声がした。
「・・・階段は、現れた、か?」
「!? ああ! 現れた!だが…!」
「・・・ならば、行け」
降りてくる天井の音が声をかき消していく。罠に嵌ったが、結果として道を切り拓けた。ならば、それでいい。
「・・・抗いはするが、な」
身の内に貯めるのは強大な魔力。自分の身を犠牲にした禁忌魔法。例え放っても無事ではいられないが、ただ受動的に死を待つなど承服できるはずもなく。
「フ・・・僕が出来るのは、ここまで、だ・・・」
脳裏に愛しい人の姿を思い浮かべ、アスハは禁呪を解き放つ。
地上に二つ目の巨大な花火が炸裂した。
●
その大扉を見た時、真緋呂は確信した!
「この大きな扉は王の部屋かも!」
「なんか違和感あるけど…」
しかし、大き部屋、すなわち、ボスの部屋!
一機は心を決め、勢いよく扉を開け放つ!
圧倒的湯煙が襲いかかってきた!
――大浴場でした。
「くっ、とりあえず美女兵は倒さなきゃ…って、え?」
「わっ、なんだこれ、前が見えな・」
踏み出した一機の足が何故か足元に転がっていた石鹸に乗る。
「うわぁ!?」
「きゃあ!?」
とぅるっと滑る足!体制を整えようとするも勢いよすぎてむしろ変な風に突進した!ダイブした先は真緋呂の胸!
(この感触……E!)
顔面のおっぱいセンサーがミラクル発動!しかしラキスケはこれで終わらない!一機の突進を受け止めきれず、真緋呂は勢いよく後ろへとたたらを踏み、ひっくりかえった!
一機ごと。←
どぼーんっ!
派手な湯柱が立った。
「ふ…ふぇ…きゃー!?」
慌てて身を起こした真緋呂、濡れて透けた服がぺったりと肌に張り付いている!
(レース!!)
一機、胸元を彩るヌレスケな下着を思わずガン見!
「み、見ちゃダメ!」
声に一機はハッとなった。そうだ。こんなことしている場合ではない!
「ここは一体…!?」
立ち上がり、即、理解した。
目の前に、生まれたままの姿の美女兵が。わんさか。
「覚悟は、いいわね?」
壮絶な殺意に、一機、ゴクリ。濡れ透けな真緋呂が素早く武器を取り出した。
「ただでやられたりはしないわ…!」
大剣を構え、窮地から抜け出そう剣を振るい――かけた所で意識が切り替わった。
「何してるのっ!」
なんと一機、CQCで迎撃しようとした結果、曇った眼鏡のせいか伸ばした手で美女兵のナマチチを鷲掴み!
唸る真緋呂の大剣。吹き飛ぶ一機。
(果たして俺は生き延びることができるか…!?)
おっぱいの感触を心に刻みつつ、男・ヨネダカズキ、大浴場に散った。
●
宝物庫を探す一同と、宝物庫を見に行くレックスがバッタリ出会ったのは、たぶんきっと運命だろう。
「猫王!?」
唐突な遭遇に身構えるルビィの前、古代はサッと猫王の前に立ちはだかった。
「むう!?侵入者であるな!?」
「いかにも!ゴライアス銃兵隊、矢野古代――いざ!」
ミハイル、辺木、アスハ。三人の犠牲でここまで来たのだ。ここは何としても食い止める!
「かねてからの疑問だったんだが――『巨大な黒い子猫』ってそれもう親猫じゃないのか?」
ガビンッ
突然の指摘にレックスが頭を鈍器で殴られたような顔。
(チャンス!)
古代は走った。駆け寄り抱きつき、そして
「猫だましっ!(自爆!)」
ちゅどーんっ!
辞世の句:
たにのまの
つゆになりたい
わがみかな
こがねのちちに
はさまれるゆめ
――後は、任せたぜ、皆そして――隊長――!
「古代ーッ!」
自慢の毛を一部ちりちりにされ、泣きながらレックスが走り去る傍ら、星になった古代にゴライアスは膝をついた。
「儂より早く逝くなと…言っただろうがっ」
涙混じりの声だった。
脇目も振らず像を求め続け、ひたすら探し続けた者にこそ運命は微笑むのだろう。
「見つけた」
エルレーンは掠れた声で呟く。
宝物庫の一角、金剛石の器に入った布の中にそれはあった。
「ついに…見つけた、これが…」
女性の美という概念をつきつめたような美貌に、あまりにも完璧な肢体。そして問題の――おっぱい。
「はんっ…」
直後、エルレーンの全てが豹変した。
「なぁにが、『黄金のおっぱい像』だあああッ!」
漲る殺意!瞳に宿る狂気!なんと、彼女の真の目的は…おっぱい像の破壊!
なぜなら!彼女はちちましい世界に生きる住人だから!!
――ちちましい、とは――
大は小に勝つる、という過激的多数派(巨乳教)により、精神的圧迫を与えられた一派(虚胸教)の崇拝対象――慎ましい乳、のことである【えるちおん嘘辞典より】
「像のくせにボインとか!なまいき!しんぢゃえッ!」
今、その、ちちましいエルレーンの憎悪が、無垢なる黄金像へと放たれた!
抉るようにピンポインとで放たれる┌(┌ ^o^)┐すとらっしゅ!
憎悪と根性が結びつき、放たれた二回攻撃が見事に二度とも豊満な黄金のおっぱいを強打する!
「ざまあーみろ、きゃは、きゃははははははは!!」
黄金像 無傷です。
「どーしてよぉおおおお!!!」
その時、豪快に orz の姿になったエルレーンの肩を優しい手がそっと叩いた。
「泣くことはない…泣くことなんて、ないんだ!」
「あ、あなたは!?」
「俺はちっぱいの使者、露姫!仲間達には悪いがこんな像…こうしてやるーっ!!」
ゴシゴシゴシゴシ…!
光速で胸部を擦る研磨剤とヤスリ!
何を隠そうこの露姫、豊満なおっぱいを崇める風潮を乱すため、黄金のおっぱい像を奪い取りつるぺたにしに来た刺客だったのだ!
「ちっぱい女の子によるちっぱい女の子のためのちっぱい女の子の会の一員として!この像を存在させておくことは出来ない!」
黄金像 無傷です。
「なんでだぁああああ!!!」
磨かれて胸の部分だけテカリが増した黄金像に、二体目の orz が誕生。テカテカ光る黄金像がテラ憎い。
「おや。すでに入り込んでいるとは。なかなかやりますね」
ふと聞こえた声に、エルレーンと露姫はバッと振り返った。
「この像はレックスのお気に入り。盗もうというのでしたら、容赦はしません」
「あっ…像を!」
いつの間に奪われたのか、黄金像を手に微笑む小さな道化師が、一瞬で黒い大釜を持つ青年に変化する。
「構えなさい。死にたくないのなら…ね」
不死王クラウンの魔刃が閃いた。
●
ひたすら城中を駆け巡ったイシュタルはついに念願の猫王と対面した!
「いたわね、レックス!」
「なっ。なんであるか!?」
飛び上がるつやつやの黒毛。イシュタルの目がカッ!と見開かれた!
「レックス、私と(もふり)勝負しなさい!」
「もふるぐらい、別にかまわぬであるぞ?」
()内のココロノコエを綺麗に読み取り、レックス、ほわっほわの体で「さぁこい!」のポーズ。
「か、覚悟ーっ!!」
「ごふぅ!?」
イシュタル、ものすごい勢いでレックスの腹に吹っ飛んでいった。
「ああこのもふもふよ。そうこのもふもふよ。もふもふもふもふ」
もふもふもふ。
「…もふもふ、やっぱりいいわよね…」
うっとりと至福の表情をするイシュタルに、邪魔が入らないよう周囲を警戒していた熾弦とファティナはそっと微笑みをかわしあう。
「イルさんのあんな姿は、貴重ですね」
「ええ。本当に」
お姉さんの顔でくすくす。微笑うファティナの手に握られているのは念写機だ。
「願わくば今の間に宝を頂きたいところですが…しかし、やはり一筋縄ではいきませんね。目的はおっぱい像、あまり時間はかけられません」
熾弦は覚悟を決める。
(ここは、我が身を捨ててでも…!)
パキンッと軽い金属音をたて、熾弦の鎧が外れた。武器すら捨て、熾弦はきゃっきゃうふふ状態の猫王とイシュタルの元に走る!
「もふもふを堪能…いえ!私も、ご一緒させていただきます!」
ええ、楽しんでいるなんてことはないのです。これはお仕事。お仕事なんですから!
もっふりとした首に顔を埋め、熾弦は思いきり頬ずりをする。すべすべでふわふわ。なんていう極上の毛触り!
「ふふふ。…はっ!…た、楽しんでるなんてことはありませんからねっ」
自己暗示をかけるもふわふわの頬毛に顔が埋まれば表情蕩ける。
「これは…来たかいがありましたね」
デカイ猫と戯れる二人に、ファティナは高速でシャッターをきり続ける。ついでに身を乗り出し、レックスの大きな耳をこしょこしょしながら囁いてみた。
「お城に放り込まれたという黄金の半裸像…さるお方の持ち物なのです。返してはいただけませんでしょうか?」
もふもふもふもふ。
「むー。あの像は我輩もお気に入りであるー」
「あら。そんな象よりも素敵なものがあるんじゃないかしら?」
子猫のようにごろごろする猫王に、新たな声がかけられた。視線を向ければ、戸口に豊かな肢体を晒した朔羅が立っている。
「ふふ。この体、堪能してみない?」
鮮やかに蠱惑的な微笑。しゃなりしゃなりと歩み寄る姿すら妖艶。そして圧倒的質量のおっぱい。
「硬い金属の像なんかより、余程イイと思うけれど?」
\美女三人目入りました/
「可愛い子ね。ここはどうかしら?」
喉をこしょこしょされ、レックス、ゴロゴロ。なんという圧倒的ハーレム。男共に殺されそうな勢いだった。
●
一方、不死王との戦いは佳境に差し掛かっていた。
最後の空蝉で攻撃を避けきり、エルレーンは【胡蝶】を放つ。それを避ける不死王に、駆けつけたマキナが【諧謔】を放った。
「生半な防御など、私の前では意味がありませんよ」
「そのようですね」
防御を崩す一撃を避け、不死王は笑む。マキナはすっと身構えた。
「王国騎士団が一人、『偽神(いつわりがみ)』のマキナ。参る!」
その戦いそのものを楽しむように不死王が舞う。振るわれる強大な力。壁が吹き飛び、そして――
「何が起こるか分からない、ってのは楽しいねぇ」
声と同時、吹き飛んだ壁の向こうから金色の風は不死王の傍らに吹き込んだ。ニヒルな笑みを浮かべ、フレイヤはその技を解き放つ。
禁呪【炸裂掌】!
「へへ。こんな手で悪かったな」
大爆発の中、自身もくらっただろう術者の声が響く。
「切り札ってのは最後まで見せないもんだぜ」
前のめりに倒れるフレイヤを見やり、不死王は笑みを零す。
「成程。楽しませてくれますね」
さぁ、次は。まるで何かの演目に興じるかのように誘う不死王に、マキナは身構える。だが一歩を踏み出すより早く、別方向から一頭の虎が走り込んできた。
「服は、服は駄目なんだぞー!」
千代である。虎柄のチャイナドレスを着た千代である。思わず千代が走り込んできた廊下を見ると、邪気的な何かを纏った恭弥が走り込んできた!
「これが貴様のJIGOKU行きの旅の始まりだー!!」
ハーハハハハッ!!と攻撃する相手は――マキナ!
「!? 裏切り」
ですか、と呟こうとした声が消える。
服がチャイナになっていた。
同じく一瞬でチャイナを着せられてしまっていた千代がようやく脱ぎ終える。ふと、崩れた壁の向こうにいたレックスにパッと顔を輝かせた。
「ネコー!!おっきーネコー!!モフモフもふもふMOFUMOFUー!!」
「むふー!」
レックス、無垢な好意にご機嫌顔。
「何故、チャイナドレスを着せているのでしょう?」
熾弦の声に、恭弥は一言。
「着せてる理由か?俺の趣味だ」
シャキーンッ!
不死王もチャイナドレスになった。
「…。」
不死王。思わず黄金像落っことす。
「あっ。クラウン!クラウンが綺麗な格好になっているである!」
「…。」
近くに転がってきた黄金像にも気づかず、顔を輝かせるレックスにクラウンの目から光が消えた。
かわりに像を手にしたのは白秋だ。
「ああ、これは…俺が追い求めていた…伝説の…おっぱい…」
黄金像、キラキラ。
「おっぱい…?」
キラキラ。
しかしそれを見つめ、白秋は呟いた。
「…否」
「否、であるか!?」
「違う、違うだろ…俺の騎士道の原点たるおっぱい。それはこんなもんじゃねえ!こんなもんおっぱいの名を冠する資格すらねえよ…何故なら…ッ!」
「何故なら…?」
彼の騎士道に何か感じるものでもあったのか、レックスも白秋をガン見。
白秋は厳かに告げた。
「やわらかく、ない」
ああ、うん。
「おっぱいはな、柔らかいからおっぱいなんだよ…ッ。揉めないおっぱいはおっぱいじゃねえんだよ…ッ!こんなおっぱいの名を騙る偽物のために戦争かよ…みんな目を覚ましやがれ…ッ!見ろ、これこそが―!」
白秋、ちょうど傍らにいたヴェーラを厳かに掲げる!
「真のおっぱいだ」
「F…であるな」
白秋、レックスと熱い握手。何かが通じ合ったようだ。
「…黄金像、たいして必要では無い気がしませんか?」
その間に、ファティナはそっと不死王に告げる。
「うん、レックス、あっちで幸せそうだからもういいんじゃね?」
艶のない瞳でレックスを見やる不死王に、ヴェーラも言葉を添える。
「クラウンーっ!」
レックス、目があった瞬間にもう一度飛んで来た。
「クラウン、どうしたであるか!?何かものすごく物言いたげであるぞ!あっ!わかったである!我輩、クラウンのことは全部わかっているであるぞ!」
「…。ええ。あなたの持っている黄金のことです」
「やはりである!」
レックスは目を輝かた。そしてどこからともなく黄金のソレを取り出す。
「クラウンが求めているのは、コレであるな!」
お○。
「……。」
「そんな顔をしていると思ったである!」
ようやく合流したゴライアス麾下全員が猛烈な勢いで離脱。
取り残される笑顔のクラウンと、レックス。
「さ。」
「……。」
クラウンは笑顔を保ったまま、
一撃で、迷宮の半分を吹き飛ばした。
●
黄金像は無事戻されることとなった。
半分吹っ飛んだ迷宮の手前。壁も天井も消えた大浴場ではアスハが悠然と寛いでいる。
「ああ・・・いや、何か気づいたら、そこの美女兵に助けられてて、な。折角来たわけだし、大浴場でも堪能していこうかな、と?」
その傍ら、ザバァッと出現するのは古代、ミハイル、マリモ(辺木)、のちんでしまっただトリオ。
「死んだような気がしたんだがな…?」
どうやら温泉成分で生き返ったようだ。温泉パネェ。
「ま。任務は無事完了」
ぷかり、とチョコ葉巻を口にくわえ、フレイヤはのんびりと空を見上げる。
「すべて世は事もなし、ってね」