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マスター:九三壱八
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
形態:
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2014/01/14


みんなの思い出



オープニング


 命とはどこからきて どこへいくのか
 思いとはどこから生まれ どこへ消えるのか
 心とはなにから構成され どこへ至るのか

 命ある限り死は免れず
 生きる限り時は進み
 全てのものがやがて無へと消えていく


 では

 『生きる』とは

 何か。





 空の光を見つめていた。
 居待月。
 欠けたるその月を見るのは何度目か。
 ヒゲをそよがせ、レックスはただ月を見上げる。
 時は、待たない。
 同じものは二度と生まれない。
 例えどれほど似た光景を見たとしても、それは決して同じではない。

「……」

 レックスはただ月を見上げる。
 問わず。
 語らず。

 ただ、全てをあるがままに、受け止めて。


●宵闇の彼方


 仄暗く淀んだ冥界の景色。
 フェーレース・レックスのふかふかとしたお腹にうずもれながら、クラウンはただじっと視線を馳せている。
「クラウンーまた考え事であるか?」
 友の言葉に、おやと言った様子で。
「ふふ…貴方に隠し事はできませんね。レックス」
「我輩、クラウンのことは何でも知っているである」
 むふーっと鼻から息を吐く猫悪魔にくすくすと笑いながら。
「ええ、そうですね。知っていて、貴方は何も言わないでいてくれるのですから」
 互いのことは誰よりもわかる。
 だから、言わない。
 それは言わなくても分かりあえるなんて、感傷的なものではなくて。
「我輩は、クラウンが大好きであるからな」
「ええ、知っていますよ。レックス」。
 知っているから、共に過ごしてきた。

 クラウンは手にした金色の羽根を目前に掲げる。
 闇の中で浮かぶそれは、明らかにここでは異質な輝きを纏っていて。
「ふむん?それは何であるかー?」
「ふふ…これは寄り道するための『チケット』なのですよ」
 サーカスという幻想の中で拾った、もう一つの興味。
「近いうちに、貴方にもわかるでしょう」
 そして微笑みながら、猫悪魔へと告げるのだった。
「さあ、レックス。私たちはフィナーレに向けての準備を始めましょう」


●黒猫のお手紙


 フェーレース・レックスの名において汝に問う。

 生きるとは 何ぞや。

 死とは 何ぞや。

 想いを言の葉にて告げることが出来るのであれば、今この時に。
 問いに答えられし者が扉を開き、
 その先へと至れるであろう。

 汝らの答えを待つ。

                  (にくきゅー)





「……何か、違うな。いつもと」
 その手紙に鎹 雅 (jz0140) は眉を潜めた。
 デカイ肉球ハンコは相変わらず。やたらと達筆な字も同じく。
 けれど、
「……今回は、人質も無し……か」
 生と死。
 それを悪魔が人に問う。
 マッド・ザ・クラウン (jz0145)からの手紙には、これが最後であるらしき言葉も記されていたという。
「舞台の終幕に、何かを告げるつもりなのか……」
 フィナーレに、挨拶に赴く演者のように……?
「……フェーレース・レックス、か」
 子供が戯れるように――否、それこそ本当に、子猫が戯れているかのように、無邪気に遊んでいた猫悪魔。
 その相方である道化師の想いをあの悪魔はどんな風に受け取っているのだろうか。
「……もしかしたら、最初で最後の機会なのかもしれないな」
 まるで幼い子供のような、けれど老獪な智者のような、あの猫悪魔の心の内を暴くための。
(だが、あの悪魔の心の内を……暴けれるのか…?)
 ふと過ぎったその考えを雅は首を横に振って消した。
 不可能ではないか、と言われたものを可能にしてきた、そんな生徒達を自分は知っている。
 傷だらけになりながら、ひたすら前を進む姿をずっと見てきたのだ。
「あの子達なら……」


●終幕は常に夢の終わり


 サーカステントの中は静まり返っていた。
 ひやりとした空気が肌を撫でる。聞こえるのは自分達の足音と、わずかな呼吸音。
 煌々と灯された灯りの下、広い空間を満たすのは冷えた空気と、ひりひりとした緊張感。
 サーカスの魔夜が始まる。

「ようこそ、悪魔のサーカスに」
「待っていたであるぞ!」

 突如聞こえた声に、一同は勢いよく振り仰いだ。
 道化師姿の子供と大きな猫悪魔。集う撃退士達にどこか嬉しげに目を細めて。
「ふふ…今回あなた方をお呼びしたのは他でもありません。この舞台を彩っていただいたあなた方に、以前お約束した『御代』をお支払いしようと思いましてね」
 舞台の始まりにつきつけたきつけた『挑戦状』。いずれかならず御代をいただくと言ったことを、彼らは決して忘れなかった。
 まるで初めてもらった恋文を抱くように。
 全員を見渡し、クラウンは袖を一振りした。
「このサーカスは今回でフィナーレを迎えます。ですが、全ての舞台はまだ終わってはいません」
 そう、サーカスはあくまで次のステージへの『幕間』にすぎず。
 悪魔の涼やかな声が、テント内に響く。

「此度の御代は、最終ステージへの『チケット』」

 その瞬間、轟音が地を揺るがした。
 身構え、警戒する撃退士の足下から巨大な門が勢いよくせり上がってくる。
「うわっ」
 両側に避けた撃退士の間を、門はどんどんと上昇し。
 上がりきった所で、突然周囲が結界で覆われてしまう。
「これは……!?」
「『門』である」
 レックスが喋った。
 振り返り、気づく。
 広いサーカステントにいたはずなのに。いつのまにか周囲が小部屋のように区切られていた。
「我輩達が作り出したこの『門』によって、おぬしらは分断され、それぞれ別の結界に閉じこめられたである」
 表情を険しくする一同を見やり、レックスは髭をそよがせる。
「こちら側は我輩のエリア。ここから出る方法はただ一つ、我輩が持つ『鍵』を手にし使用すること。そうすればこの門は開くである」
 門の反対側の様子は結界の壁が邪魔して全くわからない。先程までいたクラウンや仲間の姿も見えず、呼びかけてみても声すら聞こえてこなかった。
「あちら側も同様に、クラウンの持つ鍵で開くである。あとはもう分かると思うであるが、我輩からこの鍵を奪うのが、今回のゲームである」
 こちらを見る撃退士達の目を静かに見つめ、レックスは言葉を続けた。

「我輩の問いの答えは、出ているであるか?」

 招待状に書かれた、言葉。
 問いに答えられし者が扉を開く、という。
 ならば。

「我輩は幕引き」
 声と同時、凄まじい量の玉が上空から降ってきた。それは瞬く間に周囲を埋める。
 玉の上にちょこなんと乗って、レックスは告げた。
「移動は全て玉に乗った状態で来たれ。扉に出る問いに答えられれば我輩の元にたどり着くである。答えられなければ玉が割れる故、気をつけるといいであるぞ」
 今、捕まえれば。
 そう思って走ろうとしたその視界からレックスは消える。

「全ての答えの先にて、我輩は待つである」

 後に残るのは大きな玉と、目の前の大きな扉。
 そして背後の巨大な門。
 扉に刻まれているのは、一つの問い。

『死とは 何ぞや』

 悪魔との問答が始まった。




リプレイ本文




 その扉は余りにも大きく、けれど臆することは無く。
「はっ。演者冥利に尽きるじゃねえか」
 誘いに応え、そして、こちらの誘いに応えられた。
 共に奏者であり、演者。
 赤坂白秋(ja7030)は仲間を振り返る。

「さあ、飾りに行こうか――デビルズサーカスのフィナーレを」


 最後の幕が、上がった。


○夢の終わりを見据えて


 フェーレース・レックス (jz0146)は集まった人々を見つめてこう思った。

 ハジマリは何だっただろうか、と。

 突然の寸断で仲間達と離されてしまった八人。その目にある驚きと警戒。けれど決して消えない強い意志の光。
 眩しいほどの力。
 ああ…だから分かった。分かってしまった。

 クラウンが求めていたものは――もう、見つかってしまったのだと。

 その先に、来たるオワリを感じながら。


●問:死とは何ぞや


 死は身近にあった。
 ルドルフ・ストゥルルソン(ja0051)は壁走りの能力を使い、玉の上に立つ。その身を蝕む痛みを押し殺して。飄々とした態度と薄い笑みを浮かべて。
 その前に聳える巨大な扉。
(最初の問か。…求知の悪魔を満足させられるように本心を言うだけ、なんだけど)
 掌に汗を感じた。深呼吸を一つ。拳を握って、開いて。
(覚悟は完了。さあ、始めようか)
 いつもより大きく感じる鼓動。――生きている音。
(ここで答えられなきゃ、俺は死ぬまで後悔する)
 真っ直ぐに扉を見つめ、ルドルフは口を開いた。

「生き物は、いつか、死ぬ。遠い近いに関わらず、いつかは死ぬ」

 扉が光った。眩しさに一瞬目を瞑り、次に開いた時、大きく瞠る。
 レックスが少し離れた場所で座っていた。
「…それは人も家畜も天魔もすべて一緒だ。俺もあんたもいつかは死ぬ。今ここに生きている事が夢でない限り、ね?」
 驚きを押し殺し、ルドルフは真っ直ぐに相手を見つめて告げる。
「死ってのは、「この世に唯一存在する『平等』」じゃないかと、俺は思ってる」
『平等であるか』
「ほら、生きてるもの全てにいずれ訪れる物だろう?」
 レックスの目が細まる。その目を見て(ああ)と思う。
 あれは、死を見つめる目だ。自分と同じ。決して抗えないものを見据えて生きる者の――
「そしてそれに逆らう事は叶わない。一時的に先送りに出来ても、決して不死にはなることは叶わない。それを絶対と、平等と言わずに何と呼べと言うんだい?」
 レックスの巨体が近づいてくる。それを見ながらルドルフは動かず待った。
 大きな顔が近づいて、すん、と小さく匂いを嗅ぐ。
『…長く、無いのであるな』
 間近の温もりにルドルフは手を伸ばした。大きな顔を抱きしめてみると、思った以上に手が毛皮に沈んだ。――暖かい。
「死は、決して絶望じゃない」
 持って生まれた虚弱さに身を蝕まれ、苦痛故に心身ともに常に摩耗していた。どれほど隠していても、この痛みと消耗が消えるわけではなく。
 彼にとって死は「救済」 。
 苦痛でしかない生の終わりであるからこそ、それは何よりも優しいものだと知る。けれどそれは「諦め」では無い。
 解き放たれるのだ。永遠に続けば狂気に落ちるかもしれない、この痛みから。
「この鼓動が止まる瞬間まで、余さず辛苦を味わおう。それが、いずれ来る救済へ充てる代金だ」
 レックスの頭が動く。温もりが離れると思った瞬間、もふっと頬毛に体が埋まった。レックスからの頬ずりだ。

『覚えよう』

 優しい声と同時、目の前の黒い毛が消えた。





「うむ。今、来たのだ」
 Unknown(jb7615)の声に、ルドルフはきょとんとなった。
「? レックスは?」
「最初に消えたきりだが」
 鬼無里 鴉鳥(ja7179)の声にルドルフは瞬きした。では――あれは、幻惑か何か…?
(でも、あの温もりは)
 自身の両手を見つめるルドルフを見て、リンド=エル・ベルンフォーヘン(jb4728)が思案げに言う。
「ストゥルルソン殿が答えてすぐ、扉が光って開いた。先に中に入ったのだと思ったが…」
「興味深いわね。慌てて追った私達よりも『後に』現れるだなんて」
 暮居 凪(ja0503)は口の端に知的な笑みを浮かべる。
「回答者だけが通る通路がある、というところかしら?」
「なんにしても、無事で良かったんだぞー。心配したんだぞー!」
 彪姫 千代(jb0742)がにこっと笑った。うんうん、と藤咲千尋(ja8564)も大きく頭を振っている。
「無事で良かったんだよ!!」
 安堵と心配が滲む声にルドルフは微笑む。痛みは常に。けれど優しいこの世界だからこそ、その痛みを受け入れて生きていける。
「ありがとう」


「さて、次は私ね」
 凪はすぐに次の扉へと玉を転がした。
「私の解はあまり一般的ではないけれど。答えさせてもらうわ」


●問:知るということは何ぞや


「知る事は、知らないことを増やすという事ね」
 扉が光った。
(この先が、回答者のみの場所)
 予想を胸に凪は薄く目を開く。果たして、視線の先にレックスが座っていた。
(問答の間、という所かしら)
 凪の視線を受け、レックスが髭をそよがせる。ふと凪の口元に笑みが浮かんだ。
 愛嬌のある猫の形をした悪魔。自分の飼っている猫を思い出す。まぁ、あの子の方が可愛いけれど。
「知らないことは、それを知っていないことすら、人は知らないものよ。故に、一つのことを知った時、人は新しくいくつかの知らないことを得るわ」
 其れを『知る』時、そこから他方に広がる無数の其れが新たに聳え立つ。そして――
「知り続ける道は終わることはなく」
 ――その全てに果てはない。
「足を止めることは新たな知を得る事をあきらめるという事、よ」
 人はどこまで進めるだろうか。
 人ならざる者は、どこまで――?
 終わり無き道を行くには命の時は限られすぎ、人々は己の限界まで歩を進め、その先を次の代へと託す。その先にまた、無限に道が続いていることを知りながら。
『歩き続けることが即ち、知り続けること』
「ええ。貴方も、未知の知を求めているのでしょう?」
 その先に果てが無いことを知って尚。
 伸ばした手で、歩いて来たレックスの頭を撫でてみた。柔らかく、艶やかで、暖かい。
「私達が鍵を手に入れようとしたら、貴方も逃げたり妨害してりするのかしら…?」
 レックスは答えない。ただ、間近にある大きは目が悪戯っ子のように細まる。
 凪は笑う。手を伸ばし抱きしめると、圧倒的な暖かさが身を包んだ。
「…そうね。貴方達は、そういう人ではなかった、わね」
 思い出す。両手を見つめていたルドルフを。つまり、こういうことなのだろう。そして――
(あなたは、最初から…)
「いい機会ね。あなたの名前、ウチの子に上げてもいいかしら?」
 声に、レックスのヒゲがにゅっと動いたのを感じた。
『いいであるぞ』
 聞こえた『声』はどこか笑い含み。
 けれど、

『…おぬしに託すである』

 その言葉は、もっと重い何かを託すかのようだった。





「おう。来たな」
 白秋の声に、凪は瞬きした。仲間達がこちらを見ている。
「ええ、無事に済んだようね」
 答え、凪はルドルフを見た。ルドルフは頷く。
 回答者だけが知る問答。虚か、実か。それすらも不明。
(でも、あの中での問答は、真実)
 言葉も、思いも、温もりも。
「次は藤咲殿か」
 リンドの声に千尋は大きく頷く。
 思い出す。夏の遊園地。交わした会話。
(あのねレックス)
 覚えている。頭を撫でてくれた尻尾の優しい動き。
(わたしはそれでも)
 扉へと向かい、手を伸ばす。
 その先にいる、レックスに向けて――


●問:自己の命とは何ぞや


「わたしの命はわたしのもの。だけどわたし一人でここまで来れたわけじゃない、」
 ひとつひとつ。その人を、出来事を思い出すように確かめるように答えを紡ぐ。
 光る扉。光が収まった先に、レックス。
「大好きな人。信頼している人。待っててくれる人。もう会えない人や会いたくない人。救えなかった・傷つけた・傷つけられた人」
 次々に浮かぶ面影。その全てが愛おしいものというわけでは、決して無く、
「悲しかった・許せなかった・嬉しかった・幸せだった・つらかった」
 その全てが優しいものというわけでは、無いけれど。
「全部全部あったから、わたしの命は今ここにあって、これからもわたしの命は 、わたしと、周りにあるすべてによって生かされるんじゃないかな…」

 繋がって、いるのだ。

 全てのものが。
 一は、孤に非ず、個。その集まりによって全を成すもの。
「自己の命とは、己だけのものではなく己だけで成り立っているものでもない。出会う全てのものによって織り上げられるもの、かな 」
 あたかも様々な色が降り合わさって、一枚の巨大なタペストリーを作るかのように。
 もふっと体が柔らかな毛に埋まる。
『我輩は、千尋が心配である』
「!?」
 千尋は条件反射で抱きしめていたレックスを見つめた。
「名前!!」
『レディの名を覚えるのは紳士の勤めであーる』
「レックス……」
 千尋は小さく声をかけた。
「あのね」
 柔らかな温もり。きっと幻では無い。
「わたしは人間。あなたは悪魔。それでも――人間同士や撃退士同士でも分かり合えないことも、『わたし』と『あなた』で仲良くなれないかな」
『千尋はおかしなことを言うであるな?』
 レックスのヒゲがピンッと張るのがわかった。言葉と共に体が離れる。ハッとなって見るその先で、レックスが不思議そうに首を傾げている。
『とっくに仲良しであるぞ?』
 目を大きく瞠った。
『我輩は我輩。千尋は千尋。違っているからこそ、我輩は世界とそこに住まう者が好きである』
 分かり合えないことは、拒絶でも諦めでも無い。ただ、そうであるものとして、認め合うということ。
『我輩は我輩という個であり、千尋の一部である。千尋は千尋という個であり、我輩の一部である』
「レックスの中にわたしの一部がいるのかな!!」
『うむー!』
「じゃあ、クラウンは?」
 千尋は問いかけた。恐らく、全ての回答がそこにある、その問いに、レックスは真実をもって答えた。
 一言。

『全て』





 息を呑むのと同時、ぽかり、という感じで視界が開けた。
「来たである」
「おかえり、なんだぞー!」
 Unknownの横で千代がブンブン手を振っている。
「少し、分かってきたな」
「ああ」
 白秋の声に、鴉鳥は俯くようにして頷く。
「成程。確かに、未知の知を求める悪魔」
「興味深いな」
 リンドが静かに呟く。
 千尋はルドルフと凪を見た。二人とも頷く。
「さて、次は俺だな」
 白秋は扉へと向かう。千尋は他の者の元へ。
「語らせてもらうぜ!」


●問:他者の命とは何ぞや


「例えば、おっぱいをふにゅんふにゅんする事が自分の生きる道なのだと豪語する奴がいたとする」

 仲間の目が点になった。

「それがそいつの生命の根幹であるのなら、そいつは命続く限り存分におっぱいをふにゅんふにゅんするべきだと思うし、俺もそいつのおっぱいをふにゅんふにゅんする姿を応援したいと思う」
 扉が光りやがった。
『おぬしもおっぱい至高者であるか』
 眩しさに白秋が目を細めた後、何故か目の前にレックス。髭がビンビンにこっちを向いている。
「無論だ」
『同志であるな』
 両者、距離零でがっしりと握手。突然のおっぱい同盟。わけがわからないよ。
『して、続きは』
「おう。そいつがある日事故で両手を失ってしまった。もう、おっぱいをふにゅんふにゅんする事が出来なくなってしまった」
『悲劇であるな』
 真剣に頷くレックス。現場は喜劇に近い。
「絶望の底に沈むそいつに対して、俺はきっとこう言うさ」
 レックスの目を見据え、白秋はきっぱりと言った。

「『馬鹿言ってんじゃねえ。お前、まだ生きてるじゃねえか』ってな」

 緑の瞳が鏡のように白秋の姿を映している。
「あんたの問い掛けに答えるならこうなる」
『……』
「他者の命とは、夢。そいつと自分が生きる限り決して尽きる事のない、この、何処までも続く夢の事だ」
 レックスが目を細めた。
『我が同志よ』
「おう」
『我輩もおっぱいが大好きである。故に告げる。――例えば、である』
 白秋、レックスに支えられて玉の上で正座。
『我輩達の愛するおっぱいがここにあるとする。我輩達の大切なそのおっぱいは、もうそのおっぱいのままではいられないのである』
「なん…だと」
『もしここで、我輩がそのおっぱいに頼むからそのままでいてくれと伝えたとする。そうすれば、我輩の大好きなそのおっぱいは、全く別のもの』
 レックス、そこで言葉を切り厳かに告げる。

『そう――雄っぱいになってしまうのである』

「悲劇だ」
 現場は相変わらず喜劇だが。
『それでも伝えることができようか?』
 おっぱいをとるべきか、それとも雄っぱいにして残すべきか。
 究極だった。いろんな意味で。
「…よく分かったぜ。だがな、レックス」
 深い息を吐き、白秋は真っ直ぐにレックスを見上げる。
「今のお前じゃなく…小っさいお前は、なんでずっと泣いてるんだ?」
 白秋は指さした。レックスの傍らを。そこには何もない。けれど、白秋はそこに見た。
 泣いている小さなレックスを。
「泣いて泣いてした結果が今のお前か?それならそれでもいい。だがな――そこで泣いている小さいお前は、置き去りのままか?」
 レックスはただ白秋に頬ずりした。
 独りで悩み、泣き、封印した過去の思い。年経た今ならば、悩んだ日もあったなと思える。けれどその、たった独りきりでいたあの日の『自分』に始めて気づいてもらえた。
「?」
 白秋はふと顔を上げる。冷たいものがぴしゃんっとかかった。

『…ありがとう』

 涙だった。





「おかえり、だ」
 リンドの声に、白秋ははたと顔を上げた。
「不思議な体験だよね」
 ルドルフの声に白秋は頷く。
「ああ」
「水被ったのであるか?」
 Unknownの声に白秋は「いや」と首を横に振る。
(レックス…お前)
 その反対側で、かっぱんかっぱん両腕を開閉して千代が次の扉へと向かう。
「ウシシシー俺サーカス初めてなんだぞー!」
 非常に器用に玉を操り、扉の前へと立った。


●問:心とは何ぞや


「おー?心はうれしーとかかなしーって思う気持ちなんだぞー!」
 声に扉が光る。
「心があるからうれしー時はすごくすごくうれしーではパァー!って笑顔になれるんだぞー!」
 光が収まった先、見つけたレックスに顔を輝かせた。
「おー!ネコー!」
 千代をレックスはもっふと受け止める。
『今も、パァー!てなっておるであるな!』
「おー!そうなんだぞー!でもって、かなしー時は心がえーんえーんって泣いてるから涙がでちゃうんだぞー!」
 レックスと抱き合う形で千代は嬉しげに答える。
「心がプンプンしてたら怒るんだぞー!それになそれにな……好きな人には好きー!!!!って気持ちをいっぱいいっぱい出すんだぞー!!」
 千代の言葉は飾り一つ無く、真っ直ぐで、力強い。
「笑ったり泣いたり怒ったり……あと誰かを好きになったり、心はな俺たちの気持ちをいーっぱい外に出してくれるんだぞー!!」
 まるで、彼そのものが、心というものの体現であるかのように。
『おぬしは、おぬしの心そのものであるな』
「そうなんだぞー!」
『おぬしも暖かいであるな』
 もふっと頬ずりされて、千代はその体を抱きしめ直した。
「ネコもあったかいんだぞー!」
 ふかふかで、日向に干した毛布のような匂いがする。
「なー…ネコにとって『友達』ってなんだー?」
『友達は、我輩にとっての『世界』であるぞー』
 千代の問いにレックスは答える。千代は微笑った。
「ネコも『世界』なんだぞー!」
 その言葉にレックスは目を細める。
 ああ、嗚呼。どうしてこんなに、これほどまでに。
『うむ。我輩も、確かに世界なのであるな』

 彼等は愛おしい存在なのだろうか。

 幸福なる生を永遠に留めおきたいと願ってしまう程に。
「ネコー。泣きそうな顔してるんだぞー…?」
『それもまた心である』
「ネコ、かなしーのか?かなしーのはダメなんだぞー!」
『悲しい、とは少し違うのであるぞ』
 真っ直ぐな千代にレックスは微笑む。暖かいものが伝わるようにと願いながら。
「ネコ、かなしー、は、ないんだなー?」
 よしよし、と撫でてくれる手に頭を擦りつけて、レックスは微笑った。
『うむー!』

 心が満たされたから、もう――泣かない。





「ネコ、日向の匂いがしたんだぞー!」
 合流しつつ千代は元気に告げる。ルドルフ達が迎える横で、Unknownは目を輝かせる。
「いよいよ我輩の出番なのだ」
「落ちないように気をつけて」
 凪に見送られ、Unknownはキリッとした顔で言い放った。
「安心しろ、我輩は玉乗り大好きだ」


●問:目覚めのときは常に夢の崩壊を意味し、夢は夢の中でしか確かたり得ず、世界そのものの時を止める術は誰も有しない。ならば、世界を止める方法とは何ぞや


「うぬ」
 長い問いに怪訝そうに頬を掻く。小難しげな言い回しに考えることしばし。何故か上半身は微動だにしないのに腰以下がぐるんぐるん玉と一緒に円を描いている。確かにすばらしいバランス感覚。
「無いなら創れば良いじゃない」
 扉が光った。
 目を眇めた先にレックス。Unknownはその体をガン見した。
 もふもふでつやつや。ふっくらしてそうな腹。

 結論:お腹もふもふしたい

 レックスがビクッとなった。
「あー、とりあえず世界を止める方法が知りたいのか」
 Unknownの声にレックスはただ眼差しを向ける。Unknownは告げた。
「ならば、こうなのだ。目を閉じ耳を塞げばホラ簡単!自分の鼓動(音)で満たされ世界は止まる」
 ビシィッ! と言われた言葉に、レックスの目がまん丸になった。
 次の瞬間、その目が笑いの形に細まる。
『生きている音で全てを塞ぐであるか』
「?」
 Unknownは首を傾げる。
『我輩が知りし結論とは真逆なのであるな』
「我輩、間違ったであるか?」
『間違い等、無いであるぞ』
 レックスは四足のままほてほてと歩き、Unknownの前で二つ足で立ち上がった。
『我輩は』
「とう!」
 Unknown、レックスの腹にわっしと抱きついた。

『……』

 Unknownの足はしっかりと玉を挟んでいる。見よ。この玉乗り上手いってレベルじゃ無い技術。
「やはり、よい腹である」
 もっふもふ。
「回答者が戻るまでの間に残った皆で情報交換してたのだ」
 腹に顔を埋めたままUnknownは告げる。
「扉は、我輩達の答えの全てを聞く前に開いていた。つまり『正答』を求めてはいない。ただ我輩達の『答え』を求めていた――と、仲間が言っていたのだ。そうなのだ?」
 絶妙なバランスでレックスの腹とデカ玉で橋になってるUnknown。
 レックスは頷いた。
『その通りであるー』


 レックスに手を借り、Unknownは玉の上に座り直す。
「我輩は夢と世界は共存出来ると思う。目覚めても崩壊しない夢は在る。夢も夢をみるし世界も夢をみるだろう」
『夢を見る者がそこに永遠を見やれれば可能かもしれぬな』
「?」
 Unknownは首を傾げる。レックスは微笑った。
『我輩が知りし結論とは、死であった』
 自分の世界を止める方法。
 Unknownは首を傾げる。
 誰かが言っていた言葉を思い出した。このサーカスは猫悪魔の片割れそのものだと。
「命は、きっと生と死の傍らにずっと在る。失っても。意味はなくとも。知られずとも」
『で、あるか』
 もふ、っと黒い毛が頬ずりしてきた。
「なのだ」
 Unknownはその毛触りを確かめるように頭を抱きしめる。
 なんとなく、そうしてやりたい気持ちだった。





「堪能してきたのだ!」
「帰還の言葉として、色々おかしいな…?」
 満足した顔で現れたUnknownに、リンドは反応に困った顔。鴉鳥と顔を見合わせるのは、すでに回答を終えた者は納得顔だからだ。
「行ってきたら分かるぞー!」
 千代の声にリンドは頷く。次は、自分の番。
(悪魔が人に何を問うかと思えば…)
 鴉鳥と頷き合い、リンドは扉に向き直る。
(フェーレース卿の求めるもの、我らから与え得るのだろうか)


●問:『自らの希望を押し付けること』と『あるがままを受け止めること』。良しとするべきは、どちらか


「俺は希望を押し付ける事を是と答えよう」
 声に呼応するかのように扉が光る。
「人は希望無くば、欲無くば人であれぬ。思うままに希望をぶつけ合えれば良いのだ」
 リンドは目を細める。何もない空間にぽつんと座るレックス。これが、今まで仲間が見てきた光景。
「その過程で争いが起きるかもしれぬ、傷つけ合うこともあるだろう」

 寂しい光景だと思った。

「だが人はそれを拒む優しさも持っている。それを解決する術も知っている」
『何故にそう断言できるであるか?』
「そう信じているからだ」
 ふと、レックスの体が消える。
 と思ったら目の前に突然黒い壁と巨大な目が現れて塞がれた。ふわふわとした黒毛。艶のある鼻。あまりにも突然に近づかれたから思わずバランスを崩しそうになったが、逆に相手の前脚に助けられた。
(本当に、危害を加える気が…無い)
 仲間が言う通りだった。不思議だ。曲がりなりにも敵として立っているのに。
 レックスの鼻がひくひく動く。何故かちょろっと出ている舌が気になる。
「俺は人間に触れてそう考えるようになった」
 言葉に、レックスの目が細まった。
「御主は……」
 言いかけ、リンドは一度言葉を区切る。そうして、ため息をつくようにして言いかけた言葉を飲み込んだ。
「…いや、何でもない。これが俺の得た答えだ」
『人を信じるが故に、人に自らの希望を押し殺すなかれと解くのであるか』
 レックスが呟くように答える。舌はやっぱりちょろ出のまま。
『では、おぬし自身の身としては、他者に己の希望を押し付けるか否か』
 リンドはその声に軽く目を瞠る。
『それもまた、こちらの希望に振り回されぬであろうと他を信じるが故に、告げるを是とするか』
 相手の微笑を察して手を伸ばす。

 チョロ出のままの舌の先っちょを突っついた。
 ベロンッと体の左半分を舐められた。

「!?」
『裏切られることもあろう。それにより嘆くことも。それを経て尚乗り越える限り、おぬしは強くなろう』
 ぎょっとした体にふわふわの毛を摺り寄せられる。頬ずりされたのだと分かった。落ちないように思わずかきつくと、思った以上に体が毛に埋もれた。
「…御主は信じないのか」
『我輩は「知って」いるのであるよ』
 声にレックスは微笑む。あまりにも優しく、澄み切った、深い色の瞳で。
『弱さも、悲しさも、その虚無も』
「…そうか」
 リンドは目を伏せる。黒毛に顔を埋めると、確かに日向の匂いがした。





「おう。おかえり」
 白秋の声にリンドは瞬きした。
「ああ」
 視線を上げた先では、鴉鳥がこちらを見ている。
「会ったようだな」
「ああ」
「では、行くか」
 頷きに、鴉鳥は凛とした視線を別所に向ける。
 最後の扉。
 鴉鳥は手を伸ばす。
 最後の問へと向けて。


●問:生きるとは何ぞや


「生きるとは即ち、刹那の疾走に他ならない」
 光る扉。その中へと鴉鳥は無造作に進む。
「生は刹那の如く短い」
 現れた猫悪魔はただそこに座ってこちらを見ている。
 何故、問うのか。
 それについては仲間達が話し合い、Unknownが答えを得た。
 何故、知りたいと思ったのか。
 それはおそらく、猫悪魔側にのみ意味のあることなのだろう。
 知りたいという欲求。興味。
 では、この『問い』そのものの意味は――『何』か。
「故に輝ける燃焼を。その刹那を駆け抜ける疾走を」
 鴉鳥は玉に乗ったままレックスの傍まで移動する。
「惰性に溺れる暇などない。そうした者は――悉く、塵だろう」
 止まる。
 至近距離。
 されど互いにそれ以上の動きは無い。
「故に私は、生きる事を疾走と説く」
 眼前にいる悪魔。己に刻印を刻みし者とは異なるものの、同じ悪魔という種族。 されど別の者。
「ただ歩くだけなら、それは「生きている」だけだ」
 手を伸ばしてみる。
 動きは無い。
「確立した意志を以てこそ「生きる」と言えるのだ」
 触れた相手の眉間。穿てば大打撃となるだろう。けれど微動だにしない。ただ、深い瞳でこちらを見ている。
 まるで全てを心に刻むかのように。
「…不思議な悪魔だな」
 手を動かしてみると、向こうから額を擦りつけてきた。すべすべした毛が気持ちいい。
『短くとも、全力で生きられれば幸せである』
「悪魔でもそう思うのか」
『そういう相手を知っているである』
 瞳を細めていたレックスが微笑む。深い愛情と、寂しさを伴う悲しい色。
『無理に生かそうとすれば、心は朽ちる』
「場合によりけり、だな」
『然り。故に心をとる』
 その魂を。
「それもまた、一つの結論だな」
 声にレックスは微笑んだ。
『おぬしらと会えて、よかった』
 レックスは呟く。今回の全てを思い返して。
『おぬしらに託す。もし、我輩が――』





「どういう…」
 意味だ、と告げかけ、気づいた。目の前にいた猫悪魔が消えている。
「おかえりー!!」
 千尋の声が聞こえた。自分が乗っていた玉も消えている。
「全員揃ったであるな」
「!」
 振り返った先にレックス。なぜか四人ほどその腹に張り付いている。その体の前に、箱。
「向こうも箱を取ったようである。丁度良いであるな」
 千代が走り、箱を取る。色は、赤。
 始まるカウントを聞きながら、白秋はレックスに向き直った。その手が紙を差し出す。
「なんぞ?」
「舞台はまだ終わってない。スタッフロールが流れてないだろ?」
 声にレックスは瞳を笑ませた。
「おぬし悪戯好きであるな」


●―End Credits of Devil Curcus―


 髭をそよがせ、レックスは去る人々の後ろ姿を見送る。
 白秋が残した暗号は二種。一つは名前。サーカスを演じた悪魔達の。
「楽しかったであるな」
 目を閉じれば思い出す。光の洪水と描かれた文字。
 レックスの呟きにクラウンは微笑んだ。
「ええ、楽しかったですね」

              ア□  アキ
             リ□ウ  リョウ
      ミズ○キ○□○ケ  壬図池鏡介
   フ□ーレ○○レ○○ス  フェーレース・レックス
             ア□ズ  アンズ
          げ○○い□  撃退士
       か○が○○□び  鎹 雅
        □し○○た○と  西橋旅人
         マ○カ○□ブ  マレカ・ゼブブ
             ア○□  アキラ
            ○ー□ェ  レーヴェ
         □フ○ーク○  オフュークス
   ド○□レ○○ミ○○ュ○  ドューレイル・ミーシュラ
            ひ□○ち  人質
   □ッ○ザ○ラウ○ +3  マッド・ザ・クラウン
       デ○○ボ□ −2  ディアボロ
          □バ○ +1  サバク
          ク○○デ□ア  クラウディア
ワ○○ル○○ワッ□ン +4  ワッフル・クロワッサン
    ○○ンデ○ラ○□ル○  ヴァンデュラム・シルバ
          □リ○○+3  タリーウ

 けれどその文字にレックスは足りないと思った。なぜなら大切な名前が欠けている。
 即ち、

―&ブレイカーズ―

 去る八人の耳に風が声を運んできた。
「吾輩、クラウンとご飯のこと以外はあまり覚えぬ質である」
 振り返る視線。遠くから見つめ、レックスは思い返す。暗号メモの裏に書かれていた言葉や、交わした言葉。
「…したが、撃退士達よ」

―ルドルフ・ストゥルルソン―

 身を蝕む痛みに屈することなく歩き続ける者。
 その気高き強さと優しい魂に、安寧よあれ、と願う。

―暮居 凪―

 名をもらってくれた少女。彼女もまた、知を求め本を紐解くのだろうか。
 継ぐ者のいる喜びを与えてくれた。

―藤咲千尋―

 柔らかくて暖かい少女。だから心配。
『あのねレックス。わたしはそれでもあなたと仲良くなりたいって思っちゃったんだよ』
 どうか、心を痛ませないでと願う。
 大切な友達だから。

―彪姫 千代―

 ひたむきで真っ直ぐな少年。どこか太陽のような。
『そしてまたなー!なんだぞー!!』
 その優しさと強さが永遠であってくれるようにと心から願う。

―リンド=エル・ベルンフォーヘン―

『噂には聞いたが、中々面白い催し物を開かれるのだな。願わくばまたこのような場にて、御主らと巡り会いたいものだ』
 誇り高き龍人の言葉は伸びやかで、自由。
『…人間を人質になど取らずとも、誘えば命懸けのゲームに乗るような物好きはごまんといるぞ。思い当たる節もあろう。俺も一人の悪魔として、御主にも興味はあるからな』
 きっと楽しいだろうと思う。
 もっと早く会ってみたかった。

―Unknown―

 黒き夢。前を見据えたるが故に、決して足元の昏き穴に落ちることなき者。
『そして、世界は夢をみる』
 その文字もまた彼の魂のままに。

―鬼無里 鴉鳥―

 おそらく最も心近き者。
 振り返る視線が問うている。アレはどういう意味だと。
 あの時相手へと告げた言葉は彼らを見ての思い。

 ―おぬしらの手で終わりを。

 託すに足りると心から思ったから。

―赤坂白秋―

 最高の共演者。続きを示唆してくれた人間。
『なあレックス
 お前、本当に、夢を終わらせちまって良いのか?』
 沢山見抜かれたと思う。
『もしお前がたった一度の我が儘を友に押し付けるのなら、約束するぜ――その夢を、後悔させはしないと』
 嬉しかった。
 言葉で返せばきっとありふれたものしか出てこないだろう程に。
『そして
 夢は終わらない
 その命尽きるまで
 果てなく続いて行く』
 そうあってくれればと心から願う程に。
 だから――

「そなたらの語った言葉の一つ一つ、込められた思い、その呼吸一つに至るまで、我輩は決して忘れぬであろう」
 魂を込めて。彼がくれた二つ目の暗号に答えて。



 ――共演者に、心からの賞賛と感謝を。



 永遠に。













 ――ありがとう。










依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 時代を動かす男・赤坂白秋(ja7030)
重体: −
面白かった!:18人

銀閃・
ルドルフ・ストゥルルソン(ja0051)

大学部6年145組 男 鬼道忍軍
Wizard・
暮居 凪(ja0503)

大学部7年72組 女 ルインズブレイド
時代を動かす男・
赤坂白秋(ja7030)

大学部9年146組 男 インフィルトレイター
斬天の剣士・
鬼無里 鴉鳥(ja7179)

大学部2年4組 女 ルインズブレイド
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
撃退士・
彪姫 千代(jb0742)

高等部3年26組 男 ナイトウォーカー
誇りの龍魔・
リンド=エル・ベルンフォーヘン(jb4728)

大学部5年292組 男 ルインズブレイド
久遠ヶ原学園初代大食い王・
Unknown(jb7615)

卒業 男 ナイトウォーカー