「デロの気配を察知しあたし参上!」
開幕一秒でジャンル変更の予感。\やってやんょー!/と現れたのは外見美少女なのに中身がエロオッサンなファラ・エルフィリア(
jb3154)だ。
「まずは人質救出だねっ」
煌めく無垢な笑顔が素晴らしい。
「…ったく、随分と季節外れなハロウィンだぜ。本気なのか、ふざけてんのか…マジで分かん無ェのが怖いっちゃ怖いよな」
デカイ肉球の押された招待状を思い出し、小田切ルビィ(
ja0841)は軽く肩を竦める。その前では何故か準備体操している黒いもこふわな当猫が。
「よく来たである!」
どこか冬毛ちっくなモコ1.5倍フェーレース・レックス(jz0146)。撃退士達の姿に嬉しげに両前脚を振っている。
「サーカスは楽しそうだけど、人を捕まえるのは良くないんだよー」
「捕まえないと皆来てくれないであるー」
フェイン・ティアラ(
jb3994)のつっこみにレックスの耳がショボン。いじいじと尻尾をいじっているのに、新崎 ふゆみ(
ja8965)が軽やかな笑顔。
「わはー☆もこもこなんだよっ、でも悪いことしたからお仕置きなんだよっ★ミ」
レックス、お仕置きの一言に尻尾を股に挟んで小さくなった。
「どういう事なん…」
どうにも敵としての存在感に乏しい猫悪魔に宇田川 千鶴(
ja1613)は遠い目。その手がふるふるしているのは、もともと猫が好きなうえに元黒猫の飼い主なせいだ。只今誰も設定していない対抗判定(わな)に全力で抗い中。
(く…っ、ふ、ふわふわめ…っ)
愛と抗う眼差しにレックスがビクッとなった。本能でモフり倒される未来を察知したレックス、慌てて舞台を示す。
「こ、これが今回の舞台であるぞっ!」
トランポリン、ババーン!
「――おいおい。バラエティ番組のチーム対抗戦かよ…ッ!?」
思わず脱力するも、語られたゲーム内容の高い難易度にルビィは眼差しを細める。
「猫、わりと設定容赦ねェな…」
アンネ・ベルセリウス(
ja8216)も遠い目だ。
「では、サーカス開演であるぞ! 皆、よろしく頼むであるっ」
何故かフレンドリーに頼みつつ、くるりと背を向けたレックスの尻尾ピーンに、千鶴とアンネは心で誓った。
((後で絶対説教したる))
二人の手がうずうずしていたのは秘密である。
●
一番手。演者としてトランポリンに乗り込んだのはふゆみとルビィ。
「いっくよーっ☆一番手っ★ミ」
ぽいーんっ
「敵だった場合…頼んだぜ!」
ぽいーんっ
待機するフェインがしっかりと頷く。
「ふゆみ、ルビィ、頑張ってー!敵は任せるんだよーっ」
トランポリンを交互に行き来しつつ、キャンディーボックスの出口を見守るルビィの前、最初のキャンディーが排出される!
「…さて、と。鬼が出るか美女が出るか――南無三…ッ!!」
ミミズ。
「触手はノーサンキューだっつーの…!」
あなたイイ引きしてますね。
素早くふゆみがミミズに掌底を放った!
「ふゆみ必殺★どどーんっ!」
コメディ補正も加わって見事に放物線を描いたミミズ、吹っ飛ばされて何故か待機していたファラに巻き付いた!
「やーん!ぬるぬるー!!」
いきなり藏倫荒ぶる。
「誰も設定してない罠発動させんなーっ!」
「助けるよー…っ」
アンネとフェインがのたうつミミズ(と、ファラ)に遠隔攻撃。なかなかいい音がしてミミズが消滅した。
「弱ッ」
ついでにファラもぐったりしてるが、まぁ大丈夫だろう。たぶん。
「わはー☆次いっくよーっ」
腕をぐるんぐるん回すふゆみ。だがルールである五秒経過直前までキャンディーが出てこない。
「仕方ないんだよっ☆」
飛んだ後、狙ったかのように出てきた。
「俺の番だな…!」
タイミング的にルビィが跳躍する。補助のフェインが舞台上からボールをぶつける!
「ハリネズミの上に落っこちるのはダメなんだよーっ」
ぼふんっ!!
白い粉の塊が現れた。
どぶっ!
勢いのまま盾を構えた姿で塊に突っ込み、全身白くなったルビィが粉を撒き散らしつつトランポリンをぽいーんぽいーんっ。
「ぺっ…これは、小麦!」
白い人型の中、目と口と鼻の穴だけがルビィっぽい風情を残していた。
「…そんな気してた」
「ですねー」
何故かかけてる眼鏡をクィッして、千鶴がそっとマスクを装着する。その隣でフェインもレッツ☆マスク。見守るアンネとファラが防護マスクを――持ってき忘れた☆
「根性で乗り切るよ!」
「うん。これも観客のためなのっ!」
キリッとした顔で言ってるが観客一人もいなかった。ルビィと交互に飛ぶふゆみに、アンネが舞台から声をかける。
「生命反応、現段階で入り口付近に無い!おそらく連続して生きてないモノがくるよ」
「りょうかーい★ミ」
先の生命探知で得た情報に、ふゆみは頷く。おおよそでしかない情報だが心構えは先にできる。
「どんどん行くんだよっ☆」
宣言と共に、ふゆみとルビィが跳躍する!
花粉が現れた!
「だーりん、ふゆみを愛のパワーで守ってっ★ミ」
彼氏の写真がショッギョ・ムッジョ! ふゆみともども黄色くデコられた!
胡椒が現れた!
「くっ…下味つけても、揚げられねぇぜ!」
小麦粉ルビィに胡椒味がついた!
※割愛!※
やたらと連続して現れる粉類を避け、アンネが生命探知を発動し、叫ぶ。
「次!生命反応あり!」
「来な!」
何故か粉物を一身に浴び続けたルビィ、まん丸の粉玉のような体で紙玉を放つ。正直、今の姿だと分身飛ばしてるようにしか見えない。
キャンディの中からスーツ姿の女性が姿を現した!
「きゃっ」
「おっと美女発見!――大丈夫か?お嬢さん」
すれ違う巨大な粉ボール(ルビィ)。こんな時だというのに、女性の目が点。
「わはー☆怖かったですかぁ?でも、もうだいじょぶだよっ★ミ」
そんな女性をふゆみが空中で華麗にキャッチし、そのままトランポリンの外へと降りた。
「やったーっ!一人目成功!」
ファラとフェインが歓声をあげた。
●
「行くよーっ!」
舞台を降りるふゆみにかわり、フェインがトランポリンに乗り込んだ。
「銀樺、頑張るよーっ!」
同時、舞台上に現れたのは召喚獣の銀樺。天の力がフェインに付与される。
「おっ…おーっ」
ぽいんぽいん。
ぽいんぽいん。
その不思議な感覚にフェインは顔を輝かせる。
「ふわんふわんして楽し…んでる場合じゃないやーっ!」
おっと危ない危うくゲームを忘れるところだった!
排出されたキャンディーに慌ててボールを放つ。排出されたのは――鼠!
「…ちょこまかと鬱陶しいぜ。纏めて薙ぎ払う…!」
粉類で玉のようになったままのルビィ、まるまっちぃ体で薙ぎ払った!
飛んでいく先では千鶴とファラが待ちかまえている。
「ハリネズミに向かわれても困るし」
「ちっちゃいかわいーっ!hshs」
ズバァアンッ!
攻撃、わりと容赦ねェ。
「よし、次!」
ルビィがトランポリンに沈む。フェインは次に現れたキャンディーにボールを放った!
「ディアボロか!吹き飛びな!」
現れた白いもちっとした物体、なんとルビィの攻撃を避けた!
も゛っ。
ルビィが真白き至高の柔らかさに包まれた。そのままトランポリンに深く沈み、微妙な方向に跳ね上がる。
「あかん!ハリネズミの上に落ちる!」
ハリネズミへの攻撃は頭上のキャンディーボムの自爆条件だ。落下衝撃も攻撃ととらえられる場合、ボックス内にまだいるだろう人質の命は無い!
千鶴の指摘にファラが走った!
「たいじょー!!」
ズガガッ!
放たれた雷刃が粉ボール(ルビィ)とOっぱい型ディアボロに直撃した! コメディ補正により小麦粉の焼ける香ばしい匂いをさせながら、ルビィがトランポリンの横に落下する。
「…ええ匂いやな」
こんがり美味しく焼けたようだ。
「これは…」
アフロになった照り焼きルビィが身を起こす。外見はともかく、Oっぱいに埋没したのが功を奏してほぼ無傷のようだ。
「こ、攻撃力殺してますしおすしっ」
正直、味方のフォローのほうが危険だった。
●
「参る!」
眼鏡でインテリ率上昇! 続く四番手の千鶴がトランポリンに飛び乗った。
指定なかったからきっと制服つまりスカート! 眩い太腿ごっつぁんです!!
「冥魔寄り判定だよ!」
「ボールいっくよーっ」
先んじて霊視を行使したファラが叫ぶ。フェインがボールを放った刹那、千鶴が刀を振るった!
「敵やと分かってるなら、遠慮いらんな!」
切り飛ばされたミミズがトランポリンに落下して吹っ飛んでいく。
「そか、レート判別したほうが早いか」
アンネの呟きに、ファラと場外のふゆみが頷いた。
「でも天魔以外の粉系は判定できないよー」
「自分より遥かに高位だと効かない、ってゆーのもネックだねっ★ミ」
アフロな照り焼きルビィも場外で頷く。
「回数も限られているし、な」
なんということだろう。シリアスなのに照り焼きボールなせいで様にならない。
「これでラストだ…! しばらく命アリで続くよ!」
最後の生命探知を終えたアンネが告げる。キャンディーと同時、千鶴が飛んだ!
「出でや!」
放たれたボールがキャンディーと接触する。即座に現れたのは女子高生だ。
「助けるんだよー…っ」
飛び込んだフェインが空中で少女を抱きとめた。そのままトランポリンを降りる。
「二人目成功★ミ」
ふゆみがガッツポーズで歓声をあげた。
●
「あと一人なんだよーっ!」
フェインが助けた少女と共に場外で応援する。代わりにトランポリンに乗り込むのはアンネだ。
「ふ。鼠だろうがミミズだろうがディアボロは皆ぶっとばすよ!」
「よろしゅう」
「よろしく!」
どちらも大学三年、しかも一組違いの美女二人。今、まさにへそ出しと太腿の夢の共演が始まった!
「レート冥界寄り! 鼠だ!」
「いてまえ!」
引き締まった腰が動き、躍動感あふれる太ももが空中を舞う!
「次!…なんか液出た!?」
「きゅ…救助者の命優先っ」
おおなんということでしょう!白いデロリッチの洗礼で太腿の肌色成分が増しましたGJGJ!!
「次は猪…どきや!」
肌色面積の増した太腿が動き、捻りを加えられた一撃が猪を吹き飛ばした!翻るボロボロのスカートの中身が見えそうで見えない!
「ファラ!直進やばそうだから先に猪始末頼む!」
連続して出てくる敵を見事なまでの連携で次々叩き落とし、豊かな果実を揺らしながらへそ出しが叫ぶ。しかしそれは難しい相談だ!
「待って!あたしは今二人の乳尻太腿ふくらはぎを書き記すのに忙しい!」
「いらんナレーションおまえかぁああっ!」
アンネ、次に出てきた鼠を引っ掴んでファラに向かってぶん投げた。
「あたしには、この、心躍る光景を後世に伝えるという使命が!」
「いらん!」
「無いわ!」
「殺生な!!」
凄まじいばかりの全力魔法で鼠を一撃殺しつつファラが力説。この場の男性・照り焼きルビィと性別欄二度見してしまったフェインが身の置き所無さそうにちまっと鎮座していた。
「くっ…早く助け出さないと!(あたし等の色んなものがヤバイ!)」
たぶんその敵は味方側。
「焦ったら仕損じる。ここは冷静に対応や」
千鶴の声にアンネは頷いた。
「ああ……ミスは絶対、しない!」
声と同時、放たれたキャンディーに向かってアンネはボールをぶつけた。ブンッ、という羽音が響く!
「虫は平k…って流石にでかいGは無理!来んなぁあ!」
現れた黒くてデカくて硬いヤツに千鶴の全力火遁が炸裂した。半泣きの表情とは裏腹のエグイほど凄まじい本気攻撃。
「!? こいつ、しぶとい!」
先にトランポリンに着地したアンネが表情を変える。フライングGは未だ健在だ!
「宇田川さん気を付k…宇田川さんっ!?」
「白始に体液が…白始に体液が…」
なんということだろう。フライングGの呪いで千鶴のSAN値が直葬間近になっている。だが――
「オラァッ!!」
漢らしすぎる気合と同時、放たれた一撃がフライングGを吹き飛ばした。
「あたしの大事な太腿を震わせるんじゃないよ、ゴキ風情が」
ファラ、渾身の一撃であった。
「ファラ!GJ!」
「お礼は内腿チラリでいいわ!」
「やらん!」
きっぱり言い切りながらアンネは跳躍する。G消滅で復活した千鶴がボールを放つ。
キャンディーがその包みを解いた。
「きゃ!」
小さな女の子が見えた。アンネはその体を抱きとめる。
降りるトランポリン。振り返る。場外で待機している仲間と、救い出した二人の女性。
合計、三人。
「やったー!」
「全員出たぞ!」
フェインとルビィが喝采を叫ぶ。
「ミッション☆コンプリートだよっ★」
ふみゆの声が高らかに勝利を宣言した。
●
――で。
「てことは、残りはレックスその他、ってわけやね」
全員舞台の下に降りて後、千鶴はボックスを親指でクイッと示す。
「まぁ、そういうことだな」
「ボックスの自爆条件って、たぶん変わらないままだよねー?」
「だろうねぇ」
フェインの声にアンネが頷く。ファラがふゆみにウィンクし、一般人を両腕と背中に負って飛んだ。
「避難させとくねー」
「よろしくっ(*^ー゜)b 」
ふゆみがストーンとラメで飾りまくったデコイパーライフルを構えた。
「いっくよーっ必殺★ダイナミック☆ババーンっ!」
アウルの弾丸が放たれる。
それは一直線にボックスを貫き――
凄まじい爆発がボックスを木っ端微塵に吹き飛ばした。
●
「ひどいであるー!」
チリチリの毛玉になったレックスが地面をてしてし叩いた。アンネがその前で仁王立ち。
「何が酷いだ!遊んでほしいからって人間攫ったレックスはソコおすわりな!!」
おすわり。
「レディを投げるとか…壊れ易いんやから優しく!」
デロ液で魔装ボロボロな上、トランポリンに積もってた粉類(誰かの副産物)で大変な事態になっている千鶴も躾とばかりにレックスを叱る。
レックス、涙目ショボン。
「流石にこの時期にハロウィンは無いだろ。一応、教えといてやるが――今の人間界の旬は『クリスマス』だぜ」
「くりすます、ってなんであるかー?」
ルビィの声に、耳を伏せ髭をそよがせてレックスは首を傾げた。
「おっと、情報は無料じゃないぜ。報酬として…そう、ワッフルともどももっふるする権利を要求する!」
「別にいいであるぞ」
レックス、こっくり。
「でも小麦粉だらけになるのは嫌であるー。まず身繕いであるぞ!」
「待てそんなサービスは要求してな― アッ―!?」
ルビィはレックスに全身美味しく舐められた。
「猫×美青年…新しい!」
目の付け所が他と百七十五度違うファラはすでにレックスの背中に張り付いている。
「せっかくの毛皮がちりちりになちゃったねー。ブラッシングしてあげるねー」
「むふー!せっかくだからティーパーティーするであるぞ!」
フェインのグルーミングにレックスの髭が復活した。
そんな一同を背にふゆみは解放した女性達をチェックする。誰も傷ついてないし、元気だ。
「今日は皆の顔と、一般の人が無事だったから見逃してあげるけど、次はこうはいかないからねっ★ミ」