.


マスター:九三壱八
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
参加人数:25人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/04/14


みんなの思い出



オープニング


 大気に抱きしめられているかのようだった。
 春。
 先頃までの寒気はどこへいったのか、日差しは暖かく、風は暖かな真綿をそっと当ててくるかのように柔らかい。
 地面を見やれば、路地のあちこちに小さな花。
 視界をふらりふらりと横切るのは、早々と羽化した白い蝶だ。
 田んぼ用の用水路には水が流れ、空気に土と緑の匂いが混じり始める。見上げた空の色は淡く、遠くに見える山の木々は白い雲のような薄紅の層。

 ――春だ。





「こちらが今回皆様に楽しんでいただくことになるお山となります」
 案内人が手で指し示す方を見やって、バスから降りた一同は感嘆の声をあげた。
 まさに一面の桜だった。
 山裾から整備された遊歩道が山頂へと続いているのだが、その道が途中から全く見えないほど花に埋め尽くされている。
「あちらの遊歩道をたどれば緩やかなコースで山頂まで歩いていけます。下りのルートは昇りのとは少しズレていますので、同じ道を下る形にはなりません」
 まだ少女めいた顔立ちの案内人は、柔らかく笑って言葉を紡ぐ。
「また、皆様の足であれば道なき道を歩くことも可能でしょう。あちらの山、全域が阿波座様の所有となり、今回お花見のために広く開放されております。存分にお楽しみください」
 山頂には沢山の桜が植えられた広場もあり、そこでは簡単な調理も可能だという。
「ただし、桜の樹の枝を手折ったりはしないでください。桜の木はちゃんと消毒しないと傷口から腐ってしまうことも多いですから」
 枝が痛んでいたりするのを見つけた場合も、連絡だけして手つかずでいて欲しい旨を告げて、少女、長門由美は自身の時計を指さして言った。
「では、夕刻、四時まで自由時間といたします。帰りの集合場所は今いるここになります。時間まで、ゆっくりと桜を楽しんでくださいね」

 相次ぐ騒乱で疲弊した土地――四国。
 その一角である徳島の南で開かれた、現役撃退士による花見。
 彼等の存在は、不安を覚えてた住民に少なからず安心を与えるだろう。そういったことの積み重ねが必要な時期というのも、確かにあるのだ。
 由美は駆けだす人々を見送る。
 彼らを歓迎するかのように、山はその淡い色の腕を満開に咲かせて広げていた。



リプレイ本文


 風が流れた。
 木々は白い花弁を風に添わせる。
 舞う花は雪のそれに似て、けれど暖かく馨しい。
 場所は四国。
 多くの冥魔が目撃され、ゲートが開かれた島には、どことなく影めいたものが漂っている。
 けれど、歓声をあげてバスから降りる面々を地元の住民たちは暖かい眼差しで迎えていた。
 それは取りも直さず、この地の住民の、彼等久遠ヶ原学園への信頼と親和の証だった。





「きれー……」
 どこを見ても桜で埋まっているその光景に、大和陽子(ja7903)は嘆息をついた。
「おおー、絶景かな絶景かな」
 その隣、軽く手を翳し、そう口にした山背爽斗(ja9943)の顔にも笑みがある。
「山ひとつ全部桜って凄くない?」
「価万両って所だな」
 二人が見やる先、山裾から頂上へは遊歩道が整備されている。
 坂が緩やかで手すりがついているのは車いす等への配慮だろう。その道ですら満開の桜で隠され、バス乗り場からは麓の部分しか見えはしない。
「……圧倒的だな」
 久世玄十郎(ja8241)はぽつりと呟いた。表情こそ変わらないものの、桜を見やる瞳には感嘆の色が濃い。
「だな。すっげー桜道」
 爽斗はただただため息をつく。
 後ろにいたファリス・メイヤー(ja8033)も感嘆のため息をついた。
「……まるで花の雲ですね」
 見守る先で、そよ風に吹かれて花弁がはらりはらりとその身を空の舞踏場へ躍らせていた。
「ふふ。花も舞ぅておるわ」
 狐珀(jb3243)が楽しげに声を笑ませ、その幻想的な光景を見つめて柊悠(jb0830)が目を細める。
「美しいものね……」
 そこに宿る、確かな決意の色。
(この風景、崩させたくないわ……)
 終着の見えない四国の騒乱。同じ島であるからこそ、その影響は多岐に亘る。
 けれど今日この日、訪れた学園の一行を見やる人々の顔には笑顔がある。彼らの先輩達がこの地で築いてきた絆は、新たに訪れた彼らにも受け継がれていた。
 やや俯き加減に桜の下を歩いていたフェリス・マイヤー(ja7872)は、人々の様子に顔を上げる。
「……だよね。気持ちが沈んじゃったら駄目なのよね」
 悪いことばかり考えると、どんどんと悪い考えばかり増えてくるから。
(皆で楽しく盛り上げよう……!)
 そんな彼女の手に握られているのはカメラだ。
「記念用……?」
 気づき、小首をかしげるファリスにフェリスはにこーっと笑った。
「鎹先生にお土産するの!」
 少女達の楽しげな様子を目に留め、周囲を見渡し、雫石恭弥(jb4929)はそっと目元を和ませる。
「こうやって人々が平和なのを見ると四国の作戦に参加してよかったと思うな」
 皆が力を合わせあい、最善を目指して駆け抜けた四国。開いたゲートは今も彼の地に在るものの、人的被害は可能な限り最大限食い止められていた。
 人の世に完璧は無い。
 命を助ける為に戦った彼等の戦いは、ある意味において、確かに正しく人々を救っていたのだ。
 そんな恭弥のすぐ近く、ちょうど一緒になった現地の人に陽気に声をかけたのはカエリー(jb4315)だ。
「久遠ヶ原学園の生徒だよ。暫く騒がしいケド、よろしくね。良かったら、一緒にどう?」
 その手には、なにやら巨大な棒らしき物体を入れた袋がある。どうやらバーベキュー用の具材らしい。
「花見なんて風流だね!」
 山の地図を片手にレイラ・アスカロノフ(ja8389)は花に負けない笑顔を咲かせる。
「遠目には皆綺麗だけど傷んでる木とか無いのかな……?」
 レイラの声にヴェーラ(jb0831)も思案気な顔になった。
「風の強い日もあったからな……」
「探してくるね!」
「行ってらっしゃい」
 微笑んで見送った後、ヴェーラはけぶるように眼差しを細めて花を見やった。
「桜もようやく見慣れたわね……」
 その瞳の奥に、過ぎ去った日々への郷愁を抱きながら。
 物思いにふける女性の傍らをケイン・ヴィルフレート(jb3055)はのんびりと歩く。ほっこりとした笑みを浮かべ、暖かな日差しに目を細めた。
「やぁ、いい陽気だ……」
 視線の先で、花弁の隙間から陽光がきらりと瞬いていた。


 自由時間と解放され、エリス・シュバルツ(jb0682)は空を埋め尽くす花を見上げて首を傾げた。
(自由…?)
 その眼差しの先で桜が枝をそよと揺らせる。
(自由に…お昼寝…)
 それは素敵な考えのように思えた。ふわふわする足取りで歩き、ほとんど無意識にストレイシオンを召喚する。
(春…ぽかぽか陽気で…お昼寝に…良さそう…)
 桜の下には綺麗に刈りそろえされた芝生があった。先に寝転んだストレイシオンにもたれかかる。目を閉じると、ほわほわとした空気が自分を包み込んでいるのを強く感じ取れた。
(ん…お天気…気持ちいい)
 そのまま猫の様に丸くなり、口元を笑ませる。
 柔らかな日差しが例え様もなく暖かかった。


 風に揺れる枝が淡い花弁を風に流し、道の端に咲く野花がお辞儀をするように小さく揺れる。そんな様を見つめながらチャイム・エアフライト(jb4289)はふわりと微笑んだ。
 自然はいつも在るがままの姿を自分達に見せてくれる。嘘の無いその姿の、なんと健気で真摯なことだろうか。
 口元をほころばせ、時折写真を撮りながらチャイムはおっとりと歩み続ける。いつしか甘いハミングで、春の唄を奏でながら。
「ふむ、花見か」
 三々五々散っていく人々の背を見守り、チョコーレ・イトゥ(jb2736)はフッとクールに笑う。
「今回も人間の慣習に慣れるいい機会というわけか」
 その『しゅくめいのらいばる』マーシュ・マロウ(jb2618)が背後で爛々と目を輝かせた。
「オハナミ、知ってますよ。伝説の樹の下で見知らぬ方と陣取り合戦をした後に裸になって頭にネクタイを巻き、お酒をがぶ飲みして大騒ぎする奇祭ですよね」
 すごいな【オハナミ】!
「下調べはバッチリです、がんばりましょうね」
 鼻息もフーッと勇ましいマーシュ。私のMS生命をかけた蔵倫への挑戦が今まさに始まろうして怒られた<非常に残念です>。
「まずは陣取り合戦ですね! 負けません!」
「待て、マーシュ。陣は取り合わなくてもあるらしいぞ」
「あら? では次のターンですね!」
 ずっとマーシュのターン。
「服を脱ぐのは恥ずかしいのですが…あら、脱がないんですか?」
「服を脱ぐのはブレイコーというものだと聞いたぞ」
「そうなのですか?」
 二人して首を傾げている傍らをレイ・フェリウス(jb3036)が通り過ぎる。ふたりの天魔同様、人の風習を学んでいる最中のレイはなるほどと心のメモに書き留めた。
(はなみ、は、脱ぐもの、なのか……)
 とんでもない誤解が伝播していた。


 一方その頃、宴の準備にかかる人々は山のような荷物を抱えていた。
「ふぅ……」
 皆のお金を集めた結果、膨大な量になった食糧は分担してもそれなりに重い。神嶺ルカ(jb2086)は一旦荷物を置くと、目の前にある枝を垂らした桜を見上げる。荷物から取り出すのはカメラだ。
「綺麗だよね……あ、写真、いいかな?」
 景色を撮る傍ら、楽しげな皆の様子もカメラに収めていく。声をかけられて、ツェツィーリア・エデルトルート(ja7717)は笑って頷いた。
「綺麗に撮ってね」
「あっあたしも!」
 そのさまに陽子も飛び込んでくる。笑って、ルカは綺麗に撮れた写真を二人に見せた。
「可愛く映ってる」
「ほんとだ!」
「メアド教えて?」
 ナンパじゃないよ、写真渡すため、とお茶目に言われて二人は笑った。
「わたくしはこの番号ですわ」
「あたしこっち!」
「データがいいかな? よければプリントするよ」
「データで!」
 そんな三人の遥か後方、うんしょうんしょと米を運ぶのは白野小梅(jb4012)だ。頬を林檎の様に赤く染めて行く少女に、気づいた久世玄十郎(ja8241)が後を追う。
「……手伝おう」
「だいじょうぶなのよ?」
「……こちらを」
 代わりに差し出されたのはサラダ用にと用意されたレタスの山だ。嵩張るけれど米よりは重くない。
「……随分と、多い」
「みんなぁくいしんぼさんだもんね」
 重量のある米袋を肩に担いだ玄十郎に、小梅はレタス袋を抱えつつ真顔でこっくりと頷く。
「ごはんはね、カレー用と、あと、おむすびなの!」
「おむすびか……」
 並んで歩きながら、玄十郎はほんの僅か口元に笑みを浮かべる。
「……楽しみだ」


 花に誘われるようにして駆け出す人々は多い。
 真紅の衣装を翻し、リラローズ(jb3861)は舞う花弁とワルツを踊るようにくるりと回った。
「ふふっ」
 頬を撫で肩に降りる花弁を掌で受けて、小さな春の欠片に微笑む。
「『さくら』って、幻想的で儚げで…とっても綺麗ですのね…」
 ほぅ……と零れる吐息は感歎のそれであり、花を見やる眼差しには愛おしむ色が浮かんでいる。
(これほど美しく風情ある光景は久しく見た事がございません…)
 空にかかる花の天蓋。桜並木の遊歩道は、正に花回廊と呼ぶに相応しい。
(……今度はお友達と一緒に来てみたいですわね)
 そんな少女の傍らを頭上に意識をとられているレイが通り過ぎる。
「……綺麗なものなんだね……」
 桜に魅入っているのだろう。整備された遊歩道だからよかったものの、獣道なら足を取られて転びかねない。
 枝を傷つけぬようそっと手を伸ばし、近くに垂れている花を撫でる。
 触れた花弁は柔らかかった。
 一つ一つは小さな花なのに、集い、開き、重ねて、もっと大きな『何か』のようにも見える桜。儚く柔らかなものなのに、圧倒されるのは何故だろう。
「……」
 レイはただそれを見上げる。来てよかったと思った。同時に思うのは、ここには来れなかった人の姿。
(……一緒に見に来たかったな……)
 ただそれだけが、心残りだった。


「じゃ、埋め合わせはまた今度で」
 携帯の向こう、謝罪を口にする恩人に苦笑し、辰川幸輔(ja0318)はそっと通信を終えた。
 軽く上向けば満開の桜。屋根のように覆うそれらのおかげで空すら見えない。
(さて、どうするかね…他に知合いはいねぇしな…)
 誘った恩人は生憎別の用があって一緒には来れなかった。それを少しばかり寂しく思う。
 だが今日は花見。天気も上々。ふと見やれば、何かの準備をしている若者の姿。
「…たまにゃ若い衆に混ざってみるのもいいか」
 空は晴れ渡り、陽光は優しく、人々の顔には笑顔が咲く。


 春の宴が始まろうとしていた。





「さぁ! 宴の準備だよ!」
 勇ましく腕まくりし、陽子は庖丁を握る。
 その斜め後ろで炭火を熾しているのは大路幸仁(ja7861)。
「人数いるからいくつか点けといたほうがいいよな」  
 そう言って焼き肉用だけでなく焼きそば用の鉄板、飯盒用、夜間用と次々に火を熾していく。
「着火剤あるのありがたいな」
「お、鉄板だな。焼きそばの材料もあるな。作るのか?」
「あぁ。鉄板が温まったら焼き始めていいんだが……手が足りなくてな」
「よし。手伝おう」
 笑って参加する恭弥に幸仁は破顔する。
「頼む!」
「お米は飯盒炊爨かなー?」
「いっぱい炊くの!」
 陽子と小梅がせっせと大量の米を磨ぎ始める。なにしろ量が量だ。遊歩道を散策し終わり、山頂に着いたメンバーが次々に米にとりかかった。三つ目の炭火を熾し終えた幸仁がその様子に苦笑する。
「飯盒足りるかな……」


 輝くばかりの春色に香ばしい匂いが加わる頃、命図泣留男(jb4611)は頂上に到達した。と、同時にカッコイイポーズ。
「ふ…春のまぶしさは、俺というブラッカー(黒愛好者)には似合わないが…それでも、サクラ?の咲く様はエレガントだぜ」
 おおメンナク(愛称)よ、何故ハテナをつけたし。
 とこで上下揃った黒革ジャン&パンで熱くないのか。あとサングラス。
「ふ…男は漢気でファッションするもんだぜ」
 そうですか。
 そんな漢気なメンナク(略称)は山頂を見渡す。一面の桜の大広場。そこに建つどこか古風な建物が一つ。
 茶屋である。
「ほう、なかなかいいじゃねえか…俺の伊達ワルアンテナをビンビンに刺激しやがるぜ」
 ワルアンテナは伊達であるらしい。ビンビン(効果音)
「おぅ邪魔するぜ!」
 ばさぁっと暖簾を翻し、メンナク(通称)は颯爽と茶屋に乗り込んだ。返ってきた暖簾が頭を叩く。
「魅せてみろよ、お前たちのパッションで、な!」
 訳:団子とお茶のセットをくれ
 え。言葉違う? 通じない?
 大丈夫だ! ちゃんとお品書きの絵と文字を指で指し示してるから!
 そうして出された三食団子は彼のヲトコゴコロ(漢字は任意)をズギュンッと串刺したらしい。
「ふっ、俺というノワールに染まった男には、パステルカラーがまぶしすぎるぜ」
 訳:三色団子かわいいですね
 そんなメンナクにおじいさんとおばあさんが孫を見るような眼差しでにこにこと微笑んでいた。


 鴉真マトリ(jb4831)の目的は花見にあった。
 なのに何故か山頂の茶屋で手伝いを始めていた。
「あら、いらっしゃいですわ……綺麗なお花ね」
 頭に桜の花をくっつけてやってきたファリスに、マトリは思わず笑いながら席を示す。
「花より団子かしら?」
「抹茶をいただけますでしょうか?」
「あら。飲み物ですのね」
 お嬢様然とした応対はそのままに、それでも懸命に接客をこなす。
「すまんねぇ。お客さんに手伝どぅてもろぅて」
 ひょこひょことおしぼりを手に出てきた老婦人に、マトリは微笑んだ。
「いえ……その……何となく、故郷の祖父母を思い起こしてしまって……」
 だからつい足を向けてしまった。気づけば手伝いはじめてしまっていた。
 その人達の姿に、懐かしい姿を重ね見てしまったから。
「あとでお茶にしよな」
 老爺の穏和な笑みに、マトリは笑って頷いた。
「ごめんください」
 そっと暖簾をくぐって悠が顔を覗かせる。
 丁度出ていた老婦人が穏和な笑みを浮かべた。
「いらっしゃい」
「抹茶をいただけますか?」
 笑んで頷いた老婦人に、悠も嬉しげに笑って席につく。
 そんな中、桜餅を期待してやって来たカエリーは慣れない給仕に奮戦するマトリに目を丸くした。
「早く注文してくださるかしら」
「わぁ接客態度じゃないよそれー」
 むしろそれが楽しいとばかりに笑っている。茶屋を営んでいる老夫婦も楽しげに笑った。
「あれあれ。今日はどうしたことかね。ぎょうさん来てまぁ」
「ばぁさん、材料あるんかね」
「そりゃありますよ。ちゃんと蓄えてるんやから」
 ほのぼのとしたやりとりに、悠は柔らかく笑う。
 見渡す限りの桜に、穏やかな気配の茶屋。
「素敵な場所ですね」
「だよなー」
 一服していた爽斗もまた、抹茶片手にほっこりしながら頷いた。
(あー、幸せ)
「素敵な場所だなー、ここ」
 地元の者にとって、これ以上ない褒め言葉だ。
「なんもない所やけどなぁ」
 和菓子を運んできた老爺が笑う。そんなことはないですよと微笑み、可愛らしい和菓子に爽斗はふと思いついて声をかけた。
「あ、和菓子って包んでもらう事できます?」
 その向こうでは、出てきた桜餅を頂きつつカエリーが老婦人に声をかけていた。
「アリガト。あのさ、何でアーモンドの木が混じってるの?」
「あれなぁ。昔ん人が、苗貰ぅて来た時にな、花だけ見て間違えて植えたらしいわ。確かに花は似とるんやけどなぁ」
 聞けば果樹園の一角には試験的に入れたアーモンドの木々が植わっているという。
 収穫するなら、八月の終わりか九月だろうと老夫婦は笑った。
 桜餅を頬張り、カエリーは「ふぅん」と頷いた。
「収穫かー……さくらんぼだけじゃないんだ、ここ」
 その茶屋を見てヴェーラは思わず立ち止まっていた。
(何かお土産になるようなものは無いかしら……)
「どうかした?」
 しげしげと茶屋を覗くヴェーラに、抹茶を味わっていたファリスが声をかける。
「お土産に……何か包んでもらえないかと思って」
「今日中に渡せそうなら、和菓子がありますね」
「じゃあ、それで」
 頷き、ヴェーラは財布に手を伸ばす。
(鎹先生……柏餅、食べるかしら)
 大好きです。


「よう。何か作るのか? よかったらおっさんも混ぜてくれ。約束すっぽかされてな」
 ビニール袋片手に声をかけられ、小梅は顔を上げた。のっそりと現れたのは幸輔だ。ぎっちり詰まったビールと酎ハイ缶に陽子が嬉しげな声をあげる。
「ビール追加きたー!」
 酒スキーの声に笑いつつ、幸輔は熱で汗だくになっている幸仁に再度言う。
「こう見えてもな。毎朝娘に弁当作ってんだ。料理はそれなりの腕だぜ」
 幸仁は笑った。
「それはありがたいな。設営はあとちょいだから、下拵え手伝ってくれねぇか?」
「任せろ」
 軽く上がった相手の手と太い手がパンッと小気味よい音をたてる。
 その傍らで野菜を切っていたツェツィーリアが微笑った。
「元気ねぇ……」
 ビールを井戸水を入れた桶に放り込み、陽子は小梅と共に再度おむすび制作に戻る。
「おいしくなぁれ♪ おいしくなぁれ♪」
 綺麗な三角おむすびが出来上がった。
「おやつ持ってきたよ。手伝う事ある?」
 茶屋の和菓子を手土産にした爽斗に、ルカが笑いながら声をかける。
「玉葱のスライス、お願い」


 バーベキューの準備に勤しむ人々の向こう、桜の木の下でお弁当を広げる面々がいた。
 シートの上に座り、チョコーレは少しばかり得意げに胸を張る。
「マーシュ、これをみろ。おベントウというヤツだ」
「これ全部チョコーレさんが作ったんですか」
 マーシュの頭に揺れるリボンはネクタイの代わりだろうか。白いふわふわの髪の毛と相まって、どこか印象がマルチーズ。
「甘くはないが、なかなかイケるぞ。食べてみるのだ」
 そんな小型犬っぽいマーシュにチョコーレは自慢の料理を勧める。
「これはカラアゲという。醤油、みりん等で作った汁に一晩つけおき、小麦粉をまぶしたあと、灼熱の業火で煮えたぎる油に投入するのだ」
 綺麗な狐色のからあげがツヤツヤと輝いている。
「オニギリは、昆布とおかかと鮭だ。この三角の形に握るのがなかなかコツがいるのだ」
 大喜びで頬張ったマーシュの背中に翼が広がった。
「ま、また、昇天してし(ry」
「料理はまだあるぞ」
 足を引っ掴んで下ろすチョコーレの動きがやたらとスムーズだった。
 そんな賑やかな二人の奥、木々の間でお弁当を広げ、チャイムは頭上の輝きをうっとりと見つめていた。
(綺麗な桜……さくらもちも食べたいな)
 風にふわりと流れた桜を目で追って――チャイムはビクッとなった。
 桜の根元に少女が丸まっていた。エリスだ。一人だけなところを見るに、どうやらストレイシオンは帰還タイムに突入して向こう側の世界にサラバしたらしい。
「風邪……ひきますよ……?」
(んー…)
 声をかけられ、エリスは生返事をする。いや、したつもりだった。
(ん…もう少し…)
「……仕方ありませんね」
「むにゃ… 」
 すでに二度寝に入っているエリスに、チャイムは自身の上着をそっとかける。熟睡する姿に、心配半分、共感半分といったところだろうか。
(こんなにいいお天気だもの)
 微睡みたい気持ちも分かるのだ。
 無意識に浮かんだ笑みをそのままに、チャイムは桜の天蓋を仰ぎ見る。
(日本には「和歌」ってあるんだっけ)
 この花を愛でる気持ちを、歌に出来れば……
(うーん…)
 チャイムはしばし考え、ぱくりと弁当を一口し、もう一度空を見上げた。

 春の日の
 あたたかな日の
 さくらばな
 風に吹かれて
 ひかりにとける

(こんな感じなのかな?)
 心の中で呟いて、こくりと口の中のものを飲み込む。
 ふと視線を転じれば、皆が楽しげに笑い合い、春の一時を満喫している。
 チャイムは口元をほころばせて思った。
(なんだか素敵な一日だね)


(桜を押し花にしてみましょう……)
 茶屋で一服していたリラローズは、ふと思い立ち、そっと周囲を見渡した。木の下にはいくつもの花が落ちている。
(あの方達は喜んでくださるかしら)
 友人の顔を思い出し、リラローズは微笑みを深くする。
 花を集める少女の遥か西、獣道を駆け廻っていたレイラは見つけた桜の木に困った顔になっていた。
「おおぅ。あそこの木、半分折れてる……」
 手元の地図にチェックポイントを記入しているのだが、さすがに広大すぎてすべてを網羅するには時間がかかっていた。
「向こうの木も枝が割れてたし……こりゃ終わらないかなっ」
 その時、レイラのおなかがキューと鳴いた。
 レイラは自分のお腹を見下ろし、山頂を見上げ、もう一度お腹を見下ろして顔を引き締める。
「よし。バーベキューに参加だー!」





「肉肉しい食事を所望いたします!」
「野菜も食べないと駄目よー」
 肉が網に乗るや否や、目を煌かせて言ったファリスに陽子がはいと渡したのは椎茸だった。
「に、肉肉しい肉を……あ、椎茸、美味しいです……」
 わりと悪くなかったらしい。
「じゃがいもこっちもらうわね」
 綺麗に洗ったジャガイモに切れ目を入れ、ヴェーラはそれをバターと一緒にアルミホイルに包んで火の中に投入する。野外料理の楽しみの一つだ。
「あ。おむすびですか」
「はい、どぉぞ」
「焼きおむすびとかもいいよね♪」
 悠の声に小梅が大きなおむすびを渡し、陽子が笑いかける。その前に置かれているのはカレーだ。
「おにく、おっきいね!」
「ね。おっきいね!」
 興味を惹かれたらしい小梅の口に大きな肉をあーんさせる。美味しそうに頬張る小梅に、陽子は相好を崩した。
(かわいー)
 母性が育ったようだ。
「カレーおいしー! 皆で食べるといいね。美味しいね♪」
 レイラがスプーンを握り締めて叫ぶ。誰よりも運動量の多かった彼女は早くも三皿目のカレーに突入だ。
「こういう時のカレーって、どうしてこんなに美味しいのかな」
「わ、悪くないわね」
 同じくカレーを貰ったルカがその深い味わいに微笑み、老夫婦と一緒に食べに来たマトリが優雅にスプーンを操る。ちなみに茶屋は呑み助達がかわりに店番を買って出てくれていた。
 その、茶屋。
 持参した酒を片手に大学生以上の集まりがほろ酔い気分で花と酒を楽しんでいる。
「一献如何?」
「忝い」
 ツェツィーリアの声に笑って狐珀が受ける。
 その傍らで、教師用の土産を確保した玄十郎が杯を乾す。
 別卓ではビールを片手に幸輔と爽斗が勢いよく乾杯をしていた。
「どれ。私もとっておきを出そうかのう」
 狐珀の持ってきた酒に爽斗が目を輝かせる。
「わ。美味そう!」
「ふふ」
「花見酒かー、これはいい、本当にいいな」
 次々に器に注ぐと、狐珀は杯を軽く掲げた。
「皆との出会いと綺麗な桜に乾杯じゃ」
 応じて一同が杯を掲げる。
「この素晴らしき時に」
「この出会いに」
「この地への歓喜に」

「「「乾杯!」」」


 美味しそうに呑んでいる人々にノンアルコール席でルカは苦笑した。
(…ヨーロッパなら飲めるのになあ)
 けれどお酒がなくたって春の陽気に酔わない手はない。
 トントンとリズムをとっていた手が空き缶のドラムを叩く。だが、その雰囲気は感染する。
 即席のハミングだったはずが何故か久遠ヶ原学園校歌の大合唱になっていた。
 その頃、呑み助ならぬ食べ助な面々の肉争奪戦は最高潮を迎えていた。
「お肉もーらい!」
 サッと伸びてきたカエリーの手が目にもとまらぬ速さで肉を攫っていく。
「あーっお肉っ!」
 悲鳴を上げるのはフェリスだ。
「ふ。光纏すらも辞さない!」
「焦らなくても沢山あるぞ?」
 そんな二人に恭弥が笑って肉を追加した。
「いい天気で良かったねぇ」
「本当に」
 肉を巡る戦場の横、ケインとレイは穏やかにおにぎりを頬張っている。
 日差しは優しく、風は穏やか。何もかもが柔らかなものに包まれているかのようだ。
「ああ、あそこの枝に鳥がとまってるよ。鳥も花見かな」
 笑って見やる方向に小さな鳥。咲き乱れる花を軽く啄み歌声を響かせる。
「花の弁当とは風流だねぇ」
 目の前の肉争奪戦はますますヒートアップしているが、二人にはあまり関係がないようだ。
「うぉ。このシイタケうまいな」
 その横ではようやく食べる余裕が出てきた幸仁が肉厚の椎茸に舌鼓を打っている。
「んふー。お肉美味しいね!」
 どれだけ食べる気なのか。カレーを五回おかわりしたレイラはここで肉争奪戦に参戦。と思いきや、今度は玉蜀黍にタレをつけて焼き始めた。
「これこれ! たまんないー!」
 タレの匂いがまた格別に美味そうだ。
 その膝の上には、地主に渡すための地図が乗っている。赤い印が傷ついた桜の木のポイントだ。
「ピーマンは苦手かなー……」
 フェリスの呟きにルカは首を傾げた。
「ピーマン甘いのに」
「に、苦いよー?」
「ピーマンの糖度って高いよ? 独特の風味があるから、苦いって先入観もたれるみたいだけど」
 フェリスとルカのやり取りに「ふぅん」と呟いて、レイも綺麗な焼き色のついたピーマンを口に入れる。
「……甘いね」
「ね」
「嘘だ―っ」
 フェリスが頬を膨らませた。何かピーマンに思うところがあるらしい。
 隣ではファリスがなにやら悶絶している。
「な、なんていう刺激的な食べ物……」
「わーっ! それ生焼け……!」
 ツンとする生焼け玉葱に涙目だ。
「男とは、そう! 食事もスタイリッシュに……、あ、俺、肉モリモリで」
 シャキーンッと箸を閃かせていたメンナク、焼き肉奉行の陽子にサッと皿を差し出した。
 肉。盛り盛り入りました。
「んー……ごはん……におい」
 途中で拾って来られたエリスが、ヴェーラに寄り掛かる形でうつらうつらしている。口元にそっと持ってこられた肉をぱくっと食べる様は雛鳥のようだ。
「そろそろ皆お腹いっぱいになってきたかしら?」
 周囲を見渡して、ヴェーラは小首を傾げた。
 食べ手の胃袋が落ち着きはじめると、需要と供給が逆転しはじめる。
「食べ頃だよ持って行ってー!」
 はい、とほぼ自動的に手渡された皿の中身に、レイとケインは目をぱちくりさせた。
(これ……どうやって食べるんだろう?)
 只今人間の食生活勉強中。そんな二人の難敵は海老と蟹足である。
「海老と蟹は殻剥いてね。貝は身だけ食べて、貝殻はこっちのごみに入れておいてね」
 こんな感じ、とバリバリーッと殻を剥かれて、なるほどと頷く。撃退士の力マジぱねェ。硬い甲羅が素手でバッキバキである。
「ありがとう」
「……この足、かなり大きいよな」
 恭弥の手でパカーンッと開くのはどこでもタッパー。留守番中の出資者一同用にとテキパキと料理をつめていく。
 桜餅を……つめてくれても、いいんだよ……!(天の声)
「というか、よく蟹なんて手に入ったな……?」
 恭弥の声に、地元で買い求めてきたカエリーは肩を竦めた。手に持っていた棒状の物体こそ、タカアシガニの足だったのだ。
「わりと安かったぜ。なんか水っぽいから蒸すか焼くかしないと駄目らしいけど」
 タカアシガニは元々深海に棲む巨大蟹。春頃に稀に網にひっかかるのは産卵期のためである。
「網にひっかかって揚がっちゃったらしいよ」
「まぁ、なんにしてもご馳走だよな」
「焼き蟹おいしい!」
「これも、カニ、なんだね」
「赤い棒に見えるよね〜」
 カエリーと恭弥の横で、陽子が蟹を頬張り、レイとケインが棒のような蟹(の足)を見よう見真似で食べていく。
 その様子をルカが笑って記念撮影していた。


 宴もたけなわ。食べるよりも話に夢中になる人々が増える傍らで、ツェツィーリアは狐珀と共に酒を味わっていた。
 賑やかさの名残を残す穏やかな空気に、狐珀はほんのりと笑む。
「暫くこれ以上の酒に出会える事は無さそうじゃな」
 言葉に、ツェツィーリアも頷いた。
「こういうのんびりした日が続くといいわね」
 向けた視線の先では、メンバーを交代しながらバーベキューを続けている人々の姿がある。
 気の早い者は食べ終わると同時に率先して後始末に入っていた。分別されたごみがきちんと列になっている。
「どれ。俺も手伝ってくるか」
 最後のビールを一息にあおって、幸輔はのっそりと立ち上がった。
「洗い物もしなければ、ですわ」
 その背を追うような形でマトリも腰を浮かせる。
「おむすびを、焼く、のですね」
「焦げるのが、美味いのか?」
 呼ばれて参加したマーシュとチョコーレがタレ焼きおむすびに不思議そうに首を傾げていた。あつあつをふーふーしながら頬張り、チョコーレは感歎の息をつく。
「うんむ。花見というのは、なかなかにおいしい慣習であるな」
 食後のデザートには茶屋から和菓子が振舞われた。爽斗のお土産だけでは足りなかったらしい。
「桜餅、美味しい」
 誘われたチャイムも顔をほころばせる。その隣で一服ついたリラローズが満足の吐息を零した。
「お茶も美味しい……また、友達と来たいわね」
 ほぅ、とため息をついて、二人は顔を見合わせてくすくす微笑う。遠くでは幸仁と爽斗が一般客を交えて飲み比べをしていた。
「この四国もどないなるんやろな……」
 ふと嘆息を耳にして、ツェツィーリアは老婦人を見る。
 白い手を伸ばして、その小柄な体をそっと抱きしめた。
「完全な平和というのはなかなか成すのは難しいのでしょう。けれど諦めずに最善を尽くせばきっと、より良い未来を引き寄せられると信じています」
 誰しも絵空事のような都合の良い能力を持たない。現実を覆すのに必要な力は、あまりにも大きく、あまりにも多いのだ。
 けれど、だからこそ、
「戦いましょう一緒に。皆様が元気でいらっしゃることが、私達の力になります」
 無責任な「任せておけ」の一言ではなく、共に足を踏みしめて立つ力を。せめて笑って暮らせるよう尽力することを誓うから。
「……ね?」
 微笑みに婦人は顔を上げ――ほろりと微笑んだ。


 穏やかな日々は尊く、立ち向かうべき敵は強い。
 けれど誰かを思って立つ人々がいる限り、穏やかな日々が奪われ尽くされることはないだろう。
 人々の思いを包み込んで、花が咲(わら)う。



 今はまだ先にある、大切な未来を夢見ながら。



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:19人

和の花は春陽に咲う・
辰川 幸輔(ja0318)

大学部7年230組 男 阿修羅
新世界への扉・
ツェツィーリア・エデルトルート(ja7717)

大学部7年149組 女 ダアト
和の花は春陽に咲う・
大路 幸仁(ja7861)

大学部7年77組 男 鬼道忍軍
春を運ぶ風・
フェリス・マイヤー(ja7872)

大学部3年220組 女 アストラルヴァンガード
和の花は春陽に咲う・
大和 陽子(ja7903)

大学部7年326組 女 鬼道忍軍
天眼なりし戦場の守護者・
ファリス・メイヤー(ja8033)

大学部5年123組 女 アストラルヴァンガード
和の花は春陽に咲う・
久世 玄十郎(ja8241)

大学部8年36組 男 鬼道忍軍
和の花は春陽に咲う・
レイラ・アスカロノフ(ja8389)

大学部5年66組 女 阿修羅
和の花は春陽に咲う・
山背 爽斗(ja9943)

卒業 男 ディバインナイト
でかにゃんもともだち・
エリス・シュバルツ(jb0682)

大学部3年126組 女 バハムートテイマー
未来導きし希求の召喚士・
柊 悠(jb0830)

大学部2年266組 女 バハムートテイマー
心に千の輝きを・
ヴェーラ(jb0831)

大学部6年193組 女 ナイトウォーカー
宵を照らす刃・
神嶺ルカ(jb2086)

大学部6年110組 女 ルインズブレイド
メイドの土産に真心こめて・
マーシュ・マロウ(jb2618)

大学部3年154組 女 バハムートテイマー
chevalier de chocolat・
チョコーレ・イトゥ(jb2736)

卒業 男 鬼道忍軍
闇夜を照らせし清福の黒翼・
レイ・フェリウス(jb3036)

大学部5年206組 男 ナイトウォーカー
和の花は春陽に咲う・
ケイン・ヴィルフレート(jb3055)

大学部5年58組 男 アストラルヴァンガード
久遠ヶ原のお洒落白鈴蘭・
狐珀(jb3243)

大学部6年270組 女 陰陽師
砂糖漬けの死と不可能の青・
リラローズ(jb3861)

高等部2年7組 女 ナイトウォーカー
Standingにゃんこますたー・
白野 小梅(jb4012)

小等部6年1組 女 ダアト
信じる者は救われる?・
チャイム・エアフライト(jb4289)

大学部1年255組 女 ダアト
繋がるは概念、存在は認識・
カエリー(jb4315)

大学部2年326組 女 インフィルトレイター
ソウルこそが道標・
命図 泣留男(jb4611)

大学部3年68組 男 アストラルヴァンガード
秘名は仮面と明月の下で・
鴉真 マトリ(jb4831)

大学部2年66組 女 陰陽師
災恐パティシエ・
雫石 恭弥(jb4929)

大学部4年129組 男 ディバインナイト