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マスター:久保田
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2014/03/18


みんなの思い出



オープニング

●ラーメン屋「たぬ吉」・夕方
 父と看板娘である女子高生の純子が二人で切り盛りするラーメン屋「たぬ吉」の売り上げは、親子二人でやっていくには十分なものだ。
 久遠ヶ原学園商店街にあり、授業を終え撃退士達が腹を空かせ集まってくる。
 だが、今日の客の中に、撃退士は一人もいなかった。

「はい、今日も始まりました!五百人の芸人達による食べ歩き、生放送、アポ無し突撃!この無茶で無謀な企画も好評につき、第十回を迎える事が出来ました」

「父ちゃん、なにこれ!?」

「……テレビ局の人だそうだ」

 二十人も入れば満席になる狭い店内にはみっしりと芸人達(純子的には、見た事あるような気がする……?レベル)が座り、外にも芸人達(誰?レベル)がずらーっと並んでいる。

「さて、今日ご紹介するのは久遠ヶ原学園で評判のラーメン屋たぬ吉です。学園の側ということで、もりもりに盛った野菜が売りだそうですね」

「……はい」

 真っ青な顔でリポーターに答える父の気持ちが、痛いほどにわかった。
 五百人分の材料なんて、用意しているはずがない。
 ピークを迎える土日で百食、平日なんて五十食を用意しているかどうかだ。
 さっき純子がちらりと後ろを見たら、山のように野菜が用意してあった、勿論まだ何の仕込みもしていない。
 アポ無し生放送とはいえ、このくらいの慈悲はあるらしかった。

「とりあえず……父さん頑張るよ」

「う、うん」

「なお、芸人の皆さんに支払われるお給料はこのお店の味噌ラーメン一杯だけでーす!他に頼みたい人は自腹で出してくださいねー」

●死闘編
 たぬ吉の味噌ラーメンには、とにかく山盛りの野菜が入っている。
 キャベツにもやし、にんじん。
 麺が見えないほどに入った野菜と、少しばかりのチャーシューで一杯六百円だ。
 純子の家族は数年前、悪魔に襲われたが撃退士に助けられ、その恩返しとして久遠ヶ原学園で店を始める事になって、お値段はお安めだった。
 しかし、その野菜たっぷりが、父を苦しめている。

「くっ……キャベツが目にしみやがるぜ」

「お父ちゃん、何言ってるの!?」

 企画開始から三時間、山のような野菜を切り、重いフライパンを振り回し、熱い湯で麺を茹で――ついに父が限界を迎えつつあった。
 純子とてラーメン屋の娘だ。
 野菜くらいは切れるのだが、

「すいませーん、注文いいですかー」

「はい、ただいまー!」

「えっとー……何にしようかなあ」

(決めてから呼べよ!)

 芸人達は注目されるチャンスがあれば、少しでも目立とうとする。
 注文の時が狙い目だと思っているのか、いちいち小ネタがねじ込まれて、純子の堪忍袋もそろそろ限界を迎えつつあった。

「えっとー、この味噌ラーメンをミッソー」

「はい、かしこまりました!」

 三つをミッソーと言い換えるギャグも、これで五十人目だ。



●夜
「くっ……静まれ、俺の右腕よ……!」

「本気でヤバそうな色してるよ、父ちゃん!?」

 何とか五百人分の味噌ラーメンを作り切った純子の父の腕が、どす黒く染まっていた。
 あまりの重労働に、本気でえらい事になったのだ。

「これじゃあ明日のお店は無理だね……」

「馬鹿野郎!俺はこの腕でも味噌ラーメンを作ってやるぜ!」

「無理に決まってるじゃない!?というか病院行こうよ!」

「馬鹿野郎、注射とか怖いじゃねえか!」

「それが理由なんでしょ、父ちゃん!?」

「ちーっす、まだ開いてる?」

「あ、今日はもう……」

「馬鹿野郎、まだ一食くらい作れるぜ!」

「父ちゃん、ハイになりすぎだよ!?」

 入ってきたのは、発泡スチロールを担いだ常連のお姉さんだった。
 スーツの似合う、見た目は美人なお姉さんだが、三日に一度のペースで夜にラーメンを食べに来るのは純子的にどうかと思う、それも必ず独りで。
 しかも、大きな発泡スチロールを山賊抱きにしている姿はなかなかあれだ。

「あれ、店長なんかあったの?凄い疲れた顔してるよね」

「馬鹿野郎!疲れてなんかねえよ!」

「父ちゃん、お客様だよ!?……すみません、テレビ局が来て大変過ぎて父ちゃんおかしくなってまして……」

「あー、あれ?何かあれだよね?」

「また飲んでるんですか……」

 お姉さんはフレームの無い眼鏡と紺色のスーツがよく似合い、スタイルも抜群だ。
 ぺったんぺったんな純子としては、見た目だけは彼女のようになりたい、と思う。
 見た目だけで、店に来るたびぐでんぐでんに酔っぱらっている所まで彼女のようにはなりたくないが。
 というか駄目な見本だ。

「ぶー、純子ちゃんが冷たいー。とりあえず生ね」

「まだ飲むんですか」

「飲まずにやってられますかー!それに可愛い子にお酌されるのはたまんないよねえ」

「はいはい、少し大人しくしててくださいね」

「あ、店長ー!店長ー!お土産があるんだよ!」

「おっ、なんですかね?またこの前みたきに、納豆三キロとかやめてくださいよ」

「違いますー今度はホストクラブに持って行って受け取ってもらえなかった納豆じゃありませんー」

「嫌がらせですか」

「違いますー本気で良かれと思ったんですーどん引きされたけど……」

 お姉さんは水戸生まれなんだろうか、と純子は疲れ切った頭で考えた。

「そ、それより今日は何持ってきてくれたんですかね!?」

「ふふふ、今日はこれ!」

 落ち込んだお客さんをそのままにしておけない、という接客業の性なのか、落ち込むお姉さんが面倒くさいとわかっているからなのか、父が盛り上げるようにして声をかける。

「じゃーん、蛤十キロだよ!国産国産!」

「おお、普通に凄い」

「こりゃいいですな、明日は塩ラーメンに蛤入れてみやしょうか」

 確かに面倒くさくて、チョイスもおかしいが、お姉さんには何となく憎めない所がある。
 まぁ他に残念な所が満載みたいだけれど。

「それは美味しそうだねえ。明日も来なきゃだねえ」

「じゃあ、ちょいと先に塩焼きにでも」

 お姉さんの持っていた発泡スチロールを父が受け取ろうとした、その時だった。

「う、うわああああ!?」

「と、父ちゃーん!」

 ぶちり、と太いゴム紐が切れるような音と共に崩れ落ちる父。

「え、ええー!?なにごと!?」

「腕があ!腕があ!?」

「と、父ちゃんー!」

「えっ、これ私のせい!?」

 限界以上に酷使された右腕の筋肉が、ついに蛤の重さに耐えきれず断裂してしまったのだ!

「父ちゃんがいないと駄目だよ、明日は久遠ヶ原町内会主催の食品展じゃない!」

「忘れてた……な、なんてこった!」

「そ、そうだ!お姉さん久遠ヶ原学園で斡旋所に勤めてるんですよね!お願いです、助けてください!」

「え、ええー……まぁ依頼出してくれる分には、受け付けますけど」

「ありがとうございます、責任を感じて依頼料半分出してくれるだなんて!」

「言ってないよ、そんな事!?」


リプレイ本文

●市場・早朝
 まだ夜も明けきらぬ早朝の市場で、一際異彩を放つ三人の姿があった。

「あれもーこれもーそれもーあっ、美味しそうな林檎!」

「待て」

 露出度が高めななんちゃって戦国武将風味のコスプレをした花一匁(jb7995)。
 左に右に動くたび、背中に指した『旨い!早い!安い!の「たぬ吉ラーメン」』と書かれた旗が、ふらふらと揺れ、その度に新しい品物が増えていく。

「これで美味しい夕飯を作れば、お兄ちゃん喜んでくれるかしら……」

「待て」

 大振りの大根を握り、幸せそうに微笑む美森 あやか(jb1451)。大根を握る新婚である。
 そんな彼女達は、たぬ吉より借り出したクーラーボックスにあれもこれもと、ぽんぽん放り込んでいく。

「だから、待てというに……!」

「えー、どうしたの?」

「どうしたもこうしたもない!何故、林檎やら大根がいるんだ!?」

 そして、そのクーラーボックスを担ぐのは鳳 静矢(ja3856)だ。
 背中と両脇、更に両肩。計五つのクーラーボックスはぎちぎちに野菜が詰め込まれ、蓋が閉まりきらないほどで、その総重量は優に百キロを超えているだろう。
 確かに素人でもパンチングマシーンで一tを超える衝撃を出す者はいるだろうが、常にのしかかり続ける百キロの重量を不自然な態勢で支え続けるのは、如何に撃退士といえど厳しい以外に言葉はない。

「林檎は必要だよ、匁さんスペシャル(仮)とかのために!」

「そうです、大根だって!」

「必要あるか、そんなもん!」

●会場・たぬ吉の屋台・早朝
「ふう……完成しました」

 額の汗を拭うゲルダ グリューニング(jb7318)の顔には、爽やかな物が浮かんでいた。

「……なんだ、それは」

 仕込みの手を止め、ゲルダの作った物に目をやった水竹 水簾(jb3042)が見た物は、

「はい、これはたぬ吉の新マスコットキャラ、ヒリュウ君です」

 年季の入った、荒々しい筆体で書かれたたぬ吉の看板には、可愛らしくデフォルメされたヒリュウの絵が描かれていて、何ともアンバランスな風情を醸し出している。

「しかし、勝手にやっていいのか……?」

「良い食べ物屋さんは助けなさい。次に食べる機会を 無くさない様に、と母も言ってましたし、問題はありません!」

「むう、しかし……」

「困難があれば、知恵と勇気で立ち向かうのが人間です!つまり、これはお客様寄せ!普通の事です!」

 普通、という言葉を聞いて、水簾は少し考えた。

「(今日はヘルシーにアサリのお味噌汁にしよう)」

 やっちゃったもんは仕方ないんじゃないかな、という前向きな気持ちで、再び仕込みに戻る水簾であった。


 久遠ヶ原学園という土地は、いやらしい話であるが非常に金回りがいい。
 本来ならば、ただの学生である年代が大人並みに稼ぐのだ。財布の紐もゆるゆるである。
 開始五分前だというのに腹を空かせた撃退士達が、彼らの財布を狙う店主達がギラギラとした目で互いを見つめる。
 そんな中、葛葉アキラ(jb7705)は腕を組む。
 裾の短いチャイナドレスだが、威風堂々とした姿は何やら妙な風格すら感じるほど。

「たぬ吉、一世一代の危機ってヤツやな……。ここは一肌脱がな、料理人の血が泣くワ!さあ、みんないこか!」

 ラーメン屋たぬ吉withヒリュウ君、開店である。

●二時間後
「おにーさん、男前やねェ。ラーメン食べる男の人て様になるよねェ」

 会場を歩くアキラの背後には、黒山の人だかりが出来ていた。
 華やかでありながら、陰性の物を感じさせないアキラの客引きは、男性だけでなく女性にもウケがよかった。
 
「みなさーん、こちらがたぬ吉で……って、ありゃ、満席かいな?すんません、ちょいと待ってやってください!」

 屋台の前に並べられた仮設のテーブルと椅子は、きっちりと満席になっており、アキラの連れてきた客が入る余地はない。

「あわわ、アキラさんお手伝いしてください!」

「わかったけど、何があったんや!?」

 店番を担当するゲルダが涙目で飛び付いてくるのを受け止めつつ、アキラは考えた。
 朝の時点ではたぬ吉の常連らしい客がちらほらと入る程度で、まだまだ客席には余裕があったはずだ。
 会計時の効率化や、番号札を用意し誤配を防ぐシステムなど問題はなかったはずなのだが、現実はマスコットのはずのヒリュウ君が慌ただしくラーメンを運ぶほどの忙しさだ。

「す、すげえ……なんだ、あれは」

「まるで踊っているようだ……!」

 その答えはすぐに出た。
 どれだけキャベツを切ろうと、切った端から消えていく。
 その犀のかわらのような状況で、調理の補助をしていた静矢は一つの答えを得た。
 
――速度が足りない。

 自らの生命力を削り、魔装を全面開放。
 更に速度を増すスキルの大盤振る舞いによる全力移動。
 結果は音すら置き去りにするような仕込みの極地。
 山のようなキャベツは一瞬にして切断され、短冊切りにされたニンジンが適度にちりばめられ、宙を舞うもやしは輝くようですらあった。
 そんな静矢の仕込みも、十全に生かすパートナー達がいなければ意味はない。
 あやかが器を用意し、出汁とスープを注ぐ。
 そして、

「美女ラーメン上がる……!」

 沸騰したお湯から麺を引き上げるタイミングは、塩と味噌では僅かばかり違う。
 そのタイミングを見出だすのは、水簾の冷俐な視線だ。

 スパァン!

 完璧なタイミングで引き揚げられた麺を水切りする動きは、まるで熟練のラーメン屋そのものだろう。

「す、すげえ……」

「揺れたぜ……!」

 そして、スパァン!スパァン!スパァン!と水切りするたび、ぶるんぶるんと水簾の胸が揺れ、たぬ吉に並ぶ男性陣は生理的な都合上、前屈みにならざるをえない。

「そんなにエロが好きか、お前ら!?」

「ガハハハハ、男とは幾つになってもエロが好きなものよ!」

「誰や、お前!?」

 アキラの声に応えたのは、一人の男だった。
 恰幅のいい腹に、仕立てのいい和服の姿は騒々しい食品展の中でも一際異彩を放っている。

「あ、あれは……!」
 
「知っとるんか、ゲルダ!」

「いえ、知らないおじさんです」

「誰やねん!?」

「くくく、ワシの名を知らぬとはな。ならば名乗ってやろう、ワシの名は山腹川岸よ」

「なにもんや」

「くっ、来ましたね、何かグルメっぽい人が……!」

「なんや、この展開」

 ゲルダが茶番を始めた分の負担が、ヒリュウ君に一身にのしかかっているのに気付いた静矢が、無言のうちに接客を始める。
 更に速度を上げ、仕込みと接客で分身でもしそうなくらいに八面六臂の大活躍である。

「どれ、この山腹川岸が貴様らのラーメンを食ってやろう」

「食堂の良し悪しを決めるのは一部のグルメじゃないわ。店主の真心よ!ラーメン一丁!」

「はーい!」

 ゲルダに応えて、ラーメンを運んできたのは匁だ。

「お待たせしました、匁さんスペシャルです!」

「……なんだ、これは」

「はい、匁さんスペシャルです!」

 湯気が立ち上る味噌ラーメンの上には、丼と同じくらいのサイズの野菜が山盛りになっている。
 それは腹を空かせた学生をメインターゲットにしたたぬ吉自慢の一品――それだけならば。

「何故、林檎が」

「匁さんスペシャルだからです!」

 胸を張って応える匁の顔に、暗い部分は一切なかった。
 炒められた野菜の上に、どかんと乗るのは六ピースにカットされた林檎丸々一個だ。
 きちんとうさぎにカットされた林檎は可愛らしい。
 それが、味噌ラーメンの上に乗っていなければ、だが。

「くくく、食通っぽい人……臆しましたか?」

「何ィ!?だが、こんな物食えるはずがないではないか!」

 ゲルダの言葉に、川岸は叫び返す。
 味噌ラーメン、美味い。
 林檎、美味い。
 だが、その美味い物同士が混ざり合った時、完成したのは到底食欲の湧かない何かだ。
 味噌ラーメンの熱が伝わっているのか、徐々に立ち上り始める林檎の甘い香りと、今すぐにでも口に運びたくなる味噌の香りが混ざり合ったその日には、吐き気すら催す何かが完成する。

「その程度で食通っぽい格好をするなど、食に対する冒涜です!」

「いや、そのオッサン誰やねん。食通っぽい格好ってだけとちゃうんか」

「匁さんスペシャル……食べてくれないんですか?」

「鬼か、あんた」

 何故か執拗に食通っぽいおっさんを挑発するゲルダと、涙目の上目使いである種、挑発する匁。ひたすら突っ込み続けるアキラに、食通っぽいおっさんは唸った。

「ええい、ワシも男だ!」

 さっさと林檎だけを食べればいいものを、わざわざスープに林檎を潜らせた食通っぽいおっさんは、そのまま一気に口に運ぶ。
 その味は、

「林檎の爽やかな酸味と、味噌の香ばしさが絶妙に噛み合わず、口の中で広がる気持ち悪さが……!これは蛤の出汁か!」

「そんな無理せんでええんとちゃうか」

 試しに林檎に味噌をかけて食べてみた所、普通に不味かったので真似するのはやめましょう。

●たぬ吉・二時
「あら、もう終わりですか?」

「あっ、斡旋所のお姉さん!」

 斡旋所のお姉さんがやって来た時には、たぬ吉の屋台は撤収を始めつつあった。
 内気そうな少女であるあやかが健気に、分身しそうな勢いで静矢が動き、ぶるんぶるん揺れる水簾がラーメンを作り、清楚な雰囲気を醸し出す匁が、笑顔輝くゲルダが、明るさを振り撒くアキラが、涙目になりながらヒリュウ君がラーメンを運ぶ。
 そんな撃退士達のやるラーメン屋は物珍しかったのか、客足が途絶える事はなかった。
 野菜や肉はともかく、スープを作り直せるはずもなく完売御礼だ。

「いやぁ、大したものですね。これは依頼成功間違いなしでしょう!」

 死にそうな顔をしながら屋台をバラす静矢、ヒリュウ君の描かれた看板を前に「……まぁいいか」と呟く水簾、
「結局、誰やったんや、あのオッサン」と口と一緒に手を動かし続けるアキラ、せっせと働くあやか。

「ところでお姉さん、今回の売り上げ一位はどこなんでしょうか?」

 匁の質問にお姉さんは言いにくそうに、言葉を作る。

「あー、まだちゃんとした結果が出ていませんが、前回と同じように猫カフェみたいですね」

「えー、あんなに頑張ったのに!?」

「向こうは原価率が違いますからねえ……」

 メイン商品である猫にご飯を食べさせられる猫まんま二千円の原価など、ほんの僅かな物だろう。
 更に人間用の飲み物代やらなんやらで、凄まじい勢いで利益率が跳ね上がる。

「食品展としてはどうなんだ、それは……」

「だから、次回からは出入り禁止みたいですよ」

 さすがにこんなのに二連覇された日には、真面目に料理を作っている人達がキレる。
 水簾の言葉に、お姉さんは苦笑いを浮かべながら答えた。

「でも、しっかりとした結果はまだですが、たぬ吉もトップスリーには入りそうな勢いです!潰れるどころか、明日からは沢山のお客さんで嬉しい悲鳴ですね!」

「そりゃよかったなあ、ウチら頑張った甲斐があったわ」

「そうですね、ヒリュウ君も頑張りました!」

「匁さんスペシャルも売れたよ!」

「打ち上げですね!」

 ハイタッチをするアキラ、ゲルダ、匁、あやか。
 やりきったという喜びが少女達から溢れていた。

「打ち上げなら、肉だな」

「肉か」

 静矢の言葉に、水簾はヘルシーは明日からにしようと思った。

「よーし、じゃあ片付け終わったら打ち上げやー!」

「打ち上げです!あ、お姉さんもどうですか?」

「え、私なにもしてませんけど、参加していいんですか?」

「たぬ吉を愛する繋がりや、ええんとちゃう?」

「そういう事なら参加させてもらいますよー!」

「わーい、お姉さんの奢りだー!」

「えっ?」

「駄目なの……?」

 ハイテンションで騒ぐアキラとゲルダに紛れ込むように呟かれた匁の一言に、お姉さんは動きを止めた。
 上目使いで指先を口元に持って行く姿は、

「あ、あざとい……!」

「お姉さん……お腹空いたよぅ……」

「わ、わかりました!私もお腹空いたなー、アハハハハ……」

 負けるとわかっている勝負でも、前に進む。
 人、これを駄目人間と呼ぶ。

「ゴチになります!」

「うわあ、今まで静かだった静矢くんがいきなりマジで頭下げてきましたよ!?」

「ゴチになります」

「水簾さんはクールビューティキャラじゃなかったんですか!?はらぺこきゃらでギャップ萌えですか!?」

「よーし、じゃあ行くで!他人の金で食う飯ほど美味いもんはないわ!」

 アキラの号令で意気揚々と歩き出す六人。

「せ、せめて、食べ放題で!せめて、食べ放題でお願いします!」

 お姉さんの給料日は、まだ先だった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:2人

撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
腕利き料理人・
美森 あやか(jb1451)

大学部2年6組 女 アストラルヴァンガード
山芋ハンター・
水竹 水簾(jb3042)

卒業 女 鬼道忍軍
マインスロワー・
ゲルダ グリューニング(jb7318)

中等部3年2組 女 バハムートテイマー
鬼!妖怪!料理人!・
葛葉アキラ(jb7705)

高等部3年14組 女 陰陽師
一期一会・
若松 匁(jb7995)

大学部6年7組 女 ダアト