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マスター:川崎コータロー
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/05/25


みんなの思い出



オープニング


 絶望は熱病。人は魘されて魘されて魘された末に頭をやられてぱたりと倒れる。
 病煩は永遠に続き、人を苦しめ続け、あざ笑うように簒奪してゆく。
 特効薬などはなく、治療法もなく。
 殺してしまった仲間達の亡霊にしがみつかれながら、症状はさらに進行する。
 止まらぬ眩暈と頭痛に苛まれ、地獄の痛みに体を貫かれ、それでも動いた末。
「診断、してあげましょうか?」
「――アデレイド」
 かつて愛した女を目の前にしてすら、その実体を掴めずに気を失ってしまう。
「会いたかったわ……ライオネル」
 暗闇の中、ずっと恋焦がれていた声が、谺していた。


 銀の髪に紫の瞳。どこかの学校の制服を着ていてもおかしくはない少女は、黒い軍服を身に纏い、空港を歩いていた。
 覚えはあるがまだ瞬間的に意味が捉えられずに虫食い状態な日本語のアナウンスを聞きながら歩いていると、ある人物が彼女を見つけて駆け寄ってきた。
「……少尉候補生、迎えに上がった。十だ」
「ありがとうございます。それではただ今より任務を開始します。以降の呼称は『小鳥遊』でお願い致します」
「了解した」
 敬礼を交わす黒軍服の少女と青年。
 固く形式ばった挨拶もそれまでに、青年――十は、まだ年端もいかぬ少女――小鳥遊が辺りを見回しているのを見て首を傾げた。
「何か探しているのか」
「少し――」
 しかし目当てのものはないらしく、すぐさま十に視線を戻す。
「あいつは?」
「先輩か……」
 十と小鳥遊、そして『あいつ』こと春夏冬は三人とも互いに旧知の仲だ。
 ふむと頷いた後、十は少々濁しながら咳払いと共に答えた。
「実は先日から……行方不明でな……」
「はあ?!」
 まるで雷に打たれたかのように素っ頓狂な声を上げる小鳥遊に「落ち着け」と宥める。
「ちょっとどういう事よそれ」
「言葉の通りだ。上官の指令である調査に向かったのだが、その最中の定時報告以降、連絡がなく消息も掴めていないそうだ」
「あんたそれで平気なの?!」
「平気な訳ないだろう。君と会う数分前に聞かされたんだ」
 深い溜息を吐く十。その顔色はお世辞にもいいとは言えなかった。
「そして小鳥遊、君に緊急の指令が下った」
 おもむろに取り出した端末を小鳥遊に手渡す十。
「詳細はこちらに入っている。詳しくは、移動中に目を通しておくがいい……自分はこれから任務がある故、同行できないのが苦い所だが――」
 申し訳なさそうな十を尻目に、端末に入っているファイルの最初を見た小鳥遊はすぐに端末をポケットに突っ込み、彼に向き直った。
「いえ、問題はないわ。十はそのまま任務に向かって。私も自分の任務を全うとするわ」
 少尉候補生・小鳥遊。齢十七にして軍人の才覚を目覚めさせた名門軍人一家の養子。悪魔の力と才覚で一足飛びに少尉候補生の位を獲得し、早くも次世代の担い手と目される天才少女。
「大丈夫か?」
「私だって、見習いとは言え軍人よ。ナメて貰ったら困るわ。あの馬鹿は私が連れて帰る」
「気をつけろよ。定時報告は忘れるな」
「了解よ。あんたも気をつけてね」
 互いに頷きあった後、小鳥遊は走り出した。
 そんな彼女の背中を見送って深い溜息を吐いた後、携帯を取り出してどこかへ繋げた。
「もしもし、君か。急ぎでないなら、少し頼みたい事がある。急ぎでな、報酬は弾む……」


 ――嫌な胸騒ぎがする。
 ――他人には任せておけない、嫌な胸騒ぎ。
 ――まるで大きな病の初期症状のように心臓の中で疼き出すこれは、一体。
(せめて生きておきなさいよ……)
 自分達は軍人だ。死ぬ覚悟はいつでも出来ている。
 しかし小鳥遊はわかっていた。
 先に待ち構えているのは、死よりも深刻な病だと。


リプレイ本文


 高速道路の下。空白地帯のように思えるだだっ広いそこでは、少女――小鳥遊が複数のディアボロを相手取っていた。
 物心ついた頃より槍を振り回してきた身分ではあるが、一対多数では明らかに不利である。
(私が甘いと言うの……?)
 特にゾンビのような女型ディアボロを率いる男型ディアボロ。あれに攻撃を行うのは何故か憚られた。いや、理由はわかっている。何故なら、このディアボロは――
「下がっていろ」
 牙撃鉄鳴(jb5667)のスターショットが、いとも容易く女型ディアボロの眉間を射抜いて消し飛ばした。
「!」
 対処しきれなかった敵の突如の消滅と予定外の攻撃に動きを止める小鳥遊。そんな彼女に構わず、牙撃は後の為に射程ギリギリの距離を維持しつつ、膝に侵食弾頭を撃ち込んで動きを阻害する。
 溜息。
「あのバカまた捕まったのか……全く、手のかかる」
 眼下の男型ディアボロの顔立ちから製作者の趣味の悪さを感じつつ、コッキング。
 次の瞬間、再び鋭い弾丸が空を切り裂いた。

「おいおい、また行方不明になったのか。――甘い男にゃ……振り払えん悪夢か。仕方あるまい、迎えに行ってやるとしよう。行くか、白夜」
「ん、任務了解」
 ディザイア・シーカー(jb5989)の肩にちょこんと乗る麻生 白夜(jc1134)はこくりと頷いた。昼は動きたくはないのだが、仕方あるまい。
「さて、それじゃ後ろは頼んだぜ?」
「ん、そっちこそ、気をつけて」
 突撃してゆくシーカーの背中を見送りながら、ヒヒイロカネから楽器を展開する。
 阻霊符を手に巻きつけながら、宙に浮く鍵盤を爪弾く。
「……ん、良い音」
 くすくすと笑いながら、射程ギリギリから援護を行う麻生。
「前には出れない……なら、後ろから撃つのみ」
 葛山・麗奈・水芭の3人の援護を中心に、向かってくる敵を排除していけばいい。
「敵はディアボロと判断……活性化」
 天使の力を顕現させ、さらなるダメージを狙う。
 無論、接近してくるのであれば飛んで回避。
「遠距離での攻撃手段がないのは確認済み、問題ない」
 足元で狼狽している様子の女型ディアボロを確認しつつ――
「〜♪〜♪〜♪」
 歌い、踊る。
「私の音からは逃げられないの。――さぁ、貴女も私の糧になって?」
 再びクスクスと笑った麻生は、奏でる音に深みを持たせた。

「応援にきたよっ! 今から合流するから頑張ってっ!」
 小鳥遊を見かけた葛山 帆乃夏(jb6152)は彼女に呼びかけ、構える。しかし目の前にいるのはゾンビのような看護婦のディアボロ。
「うわぁ、ゾンビ……あ、だめだ、きっと夢にみる……」
 駄目だ駄目だ。こんな事で恐れていてはいけない。
 すぐ後ろの水芭(jc1424)に視線を向ける。彼女が孤立しないように一緒に行動しつつ、コンビネーションを計る。背中を預ける、という面と、自分より小さな子供が側に居る事で、倒れられない理由を作るためだ。
「行こうっ、水芭さんっ。私の側を離れないでっ!」
「了解です。……確実に、倒していきましょう。状況に分からない部分が多いですが、やるべきことは分かり易いですね……あの人の救援と、敵の殲滅です」
 水芭は学園に入ってから初めての依頼と戦闘である。しかし足手まといになるつもりはない。姉に良い報告をするためにも、全力を尽くすまでだ。
 狙うは小鳥遊と交戦中のディアボロ達。一撃で仕留められずとも攻撃を集中し、敵の頭数を減らして数的不利を打開しにかかる。反撃の体勢は速やかに整えたい。
 斧を振るいながら、女型ディアボロを見る。看護婦の服を着ているのであれば、名札のようなものは付いていないか、目立つ特徴がないか……ディアボロ達の製造元が明らかになれば春夏冬の行方の手掛かりにもなると思ったのだが、違うようだ。何もない。
「ナース服かぁ。男の子が喜びそうなもの着てるわねぇ♪ でもちょっと節操がないかな? 遊んでくれるんは嬉しいけど、力ずくってのは感心せんなぁ……まぁ時には強引さも必要やけどね♪」
 翼を展開して柱に隠れていた麗奈=Z=オルフェウス(jc1389)が、姿を現す。
「緊急事態? こっちはいろいろ大変やねぇ」
 不意打ちでくるりと舞うように布槍で女型ディアボロの目を隠し、足を絡め取る。
「ていうかこうゆうのって日の光弱いんやないの? まぁ別にええんやけど……」
 葛山のサンダーブレードとタイミングを合わせ、ひらりとステップを踏んで再び刺突。
 できるだけ突出せず、滑らかに立ち回る。
「邪魔はさせないよ……どう? 私の剣は痺れるでしょ?」
 牙撃の援護射撃の射線を通すため姿勢を低くして最短距離で敵に突っ込む葛山。目の前に立ち塞がる敵はサンダーブレードで動きを止めて、振り返らずに先へ進む。
「私のたった一つの武器なんだから……信じて進むしかないのよっ!」
 馬鹿の一つ覚えが何なのだ。
 これが自分の特技だ。馬鹿にされようなが何されようが、この刃を研ぎ澄まし、進み続けるだけなのだ。ただ愚直に、真っ直ぐに。それだけだ。

「残念だが、エスコート先はあの世しかないぜ?」
 蓮城と連携して道を切り拓くシーカーが、女型のナースの攻撃をシールドで防ぎつつ、斧で足を叩き斬る。勢いそのまま突撃だ。
「避けて」
 蓮城 真緋呂(jb6120)は叫ぶと、小鳥遊にはぶつけないように無数の彗星を男型ディアボロにぶつける。ディアボロが交差し彗星を受け止めた手からは薄い煙が上がっていた。
 つかさず、シーカーが小鳥遊を飛び越えて前に躍り出る。
「よぅ、あんたが小鳥遊か? 助太刀すんぜ!」
「あんた達一体誰なの?!」
「安心してください……私達は久遠ヶ原来た撃退士です……敵ではございません」
 小鳥遊の死角をちょうど襲い掛かった女ディアボロをさっと焼き尽くしたセレス・ダリエ(ja0189)。
「そんな所だ。ま、宜しくな詳しい話は後だ。俺らはちっとあの雷野郎に用があるんでな」
 
「待たせたわね。援護に入るわ……いける?」
「問題ないわ。あれは……あんた達に任せた」
 女型ディアボロへと向かう小鳥遊と入れ替えに、シーカーと蓮城は男型ディアボロと対峙する。僅かに帯電するディアボロの腕を見て、蓮城は刀を構えた。
「雷……。森羅万象を操る私達に、そんな雷が通用すると思っているの?」
 学園で専門知識を叩き込んでいるのだ。舐められるのは非常に心外である。
「……ん? どっかで見た顔だなぁ、おい」
 シーカーはと言うと、男型ディアボロの顔立ちを改めて見て首を傾げた。
 間違いがない。顔立ちが春夏冬にそっくりだ。どういった関係があるかは不明だが――
(早速手がかり発見だな……まったく、世話が焼ける奴だ)
 しかし、最優先すべきは目の前のディアボロ退治だ。早々に黙らせなければ被害が大きくなるだろう。
「とりあえず、……邪魔だ、痺れてろ!」
 
「甘い」
 蓮城は振り下ろされた雷の刃を刀の峰で受け流す。そして受け流された反動でがら開きになった男型ディアボロの脇腹に一撃を叩き込んだ。続き、シーカーが一撃を殴り込む。
「どうしたの? 捌き切れてないわよ」
「別に避けてもいいんだぜ?」
 蓮城の斬撃。そしてシーカーの足元狙いの攻撃に、防御や回復と言った補助。
 息もつかせぬ連撃で、男型ディアボロを確実に追い詰めていっていた。
「 コイツ以外は大したことないな。このままこいつも早めに潰すぜ 」
「了解よ」
 視界に入る女型ディアボロの数も少なくなってきている。後衛のお陰だ。
 このまま畳み掛けるか――そう構え直した瞬間、先程まで好戦的な姿勢だった男型ディアボロが後退する。着地と同時に掲げた腕が、雷を帯びている。
「まさか――!」
 シーカーが咄嗟にシールドを展開したのも束の間、
 雷が、降る。
 時には女型ディアボロにも命中しながら、雷が雨の如く降り注いだ。
「うわっ!」
 雷が降り始めた時に勘付いた葛山は、自分にも当たる事を予測して防御の構えを取った。当たったので正しい判断であったが、ダメージが軽減されたと言っても痛い事に変わりはない。
「自然現象なんて……私の前では無力よっ……!」
 何とか立ってはいるが、完全に葛山のやせ我慢なのは誰の目から見ても明白だ。小鳥遊が葛山に襲い掛かる女型ディアボロを蹴り飛ばした。
「無理しないで、下がってなさい!」
「ごめん、私は倒れるわけには行かないの……! 私がここに居る意味、それがわかるまで戦ってみるよ。ねっ、もう少し、もう少し我慢しよっ」
「……好きにすれば?」
 重傷になどなるべきではない一戦で、何故そこまで踏ん張れるのか――小鳥遊にはわからなかったが、本人の考え方ならば止める必要もなかった。ここは軍ではないのだ。
「数も、減ってきました……そろそろ、かと……」
 最早片手も不要なほど片付いてきた女型ディアボロに雷を落とすダリエは呟く。
 この勢いならば、女型ディアボロはあと数分もしないうちに片付くだろう。しかし男型ディアボロの、あの雷撃はどうにかしなければどうにもならないのだ。
「見当違いの場所、規則性がない……狙って撃てない?」
 演奏しながら麻生は考える。
(範囲は……敵中心……事前兆候……)
 攻撃の種別は? 最大射程は? 
「魔法、かな」
 ならば――
「この距離なら、問題ない」
 思い切って前に出て、それでも射程ギリギリを保ちながら、雷の刃を放つ。
 男型ディアボロもつかさず、雷の刃を放った。
 鍔迫り合いにも似た雷の圧し合い。
「……それじゃ……さようなら?」
 勝った。
 雷を食らった男型ディアボロの体が大きく痙攣し、体の制御を失う。
 今だ。
 頭が単語を弾き出す前に二人は動き出す。
 シーカーが物理。蓮城が魔法。
 それぞれ得意の攻撃手法を以て、さらに雷を叩き込まんとする。
 右の拳に込められた雷の力――が、二発。
 牙撃のブーストショットも加わり、さらに威力を倍増させる。
「そろそろご退場願おうか!」
「これで最期よ。こちらの雷も味わいなさい」
 三位一体。完璧にタイミングを計り合わせた一撃が、男型ディアボロの顔に見事めり込む。
 場に滞留する雷が火花を散らすと共に、男型ディアボロはその姿を消した。


「夢に出てきたら細切れにしてやるんだから……あ、それも気持ちわる……」
 自分で言っておいてえずく葛山は、視界の端に入った小鳥遊に声を掛けた。
「一人で無茶しちゃだめだよ。どんなに強くても、囲まれちゃったら危ないんだからね」
「それやよ。可愛いお嬢ちゃんが、こんな所で一人でどないしたん?」
「余計なお世話よ……確かに、助かったけど……十も余計な事をして……」
 本気で一人で片付けるつもりだったのか、それとも素直になれないだけなのか。
「助けるときは見返りを求めず、助けられたときは礼を忘れず。姉様から、初対面の人から信頼を得るにはそうすれば良いと教わりました。なら私は後はこの斧を振るえる限り、戦い続けるのみですから、お気遣いなく」
「そうかも知れないけど……援軍への感謝は軍人として基本中の基本だし……」
 水芭の言葉にもぶうたれた顔で十への恨み言とまばらな感謝の言葉をぶつくさと呟く小鳥遊に、葛山は訊く。
「さっきのディアボロ……誰かに似てたの?」
「どうしてそんな事を聞くの?」
「いや、何だか……そんな様子に見えたから――」
 小鳥遊の動きには隠し切れない躊躇いや迷いの類があった。
「この方でしょうか……小鳥遊さんや春夏冬さんとは面識がないので、資料のために勝ってながら十さんからお話を頂いた時に貰いました……」
「あ!」
 セレスが懐から取り出したのは、その春夏冬の写真であった。
「男のディアボロ……何だか春夏冬さんに顔が似ている様な気がします……何か、因果関係が……在るのでしょうか……? そうだとしたら……どんな意味が……? アレ……男型ディアボロが春夏冬さん……という事は、流石に無い、ですよね……」
「いや、撃退士は簡単にディアボロにはされないだろうし、春夏冬を模して作られたと考えるのが妥当だろう」
 それでは何の為に春夏冬を模したかはわからない。しかし、わざわざ春夏冬を選んで攫ったのならば、相手はおいそれと春夏冬を殺さない筈だ。
「大丈夫だったみたいね、良かったわ。私は蓮城真緋呂。よろしくね」
「十から聞いてると思う……小鳥遊よ」
 労う蓮城との距離を測りながら無愛想に話す小鳥遊。人見知りの気があるらしい。
「春夏冬さんて前も攫われたことあるのよね? ……ドジっ子?」
「確かにあいつはバカでドジだけど……攫われるようなアホじゃないわ……」
 しかし、春夏冬をよく知っている事は間違いがないようだ。
「教えてほしいの、春夏冬さんの捜索や敵について――闇雲に動いていた訳じゃあないのでしょう? 捜索に出た人が襲われてるって……偶然なのか、それとも攫った相手が邪魔しているのか――どちらにせよ、私達も春夏冬さんを助けなきゃいけないの」
「せやねぇ。こんな可愛い子達に心配されてる男の人ってどんな人なん? ちょっと興味あるわぁ♪」
「……」
 蓮城とオルフェウスの両名にそう言われた小鳥遊は逡巡の後、ばつが悪そうに口を開いた。
「あのディアボロを作った人を……私はよく知ってる」
「どういう事?」
「あいつを攫ったのと同じ人だ」
「……詳しく教えてくれるかしら?」
「うん……」
 恐らくは小鳥遊ですら未だ半信半疑の部分があるのだろう。蓮城の目をまっすぐ見ず、ぶつぶつと呟くように受け答えしている。
「アデレイド・リーベ・ルトロヴァイユ」
 しかし何かを決めたのか、ある人物の名だけははっきりと言った。
「多分、この人が全部やった。私もまだ信じられてないけど……」
 語尾に自信がない。しかし、ある種の確信はあるようだ。
「行方不明になっている、あいつの婚約者で――私の姉さんだ」
 ただし、真実と言う名の病は、深刻なものである。
 喉に刃物が突き刺さったような顔で、小鳥遊はこの真実を吐ききった。
「それなら、多分あいつは生きてる。どうなっているかは知らないけれど……」
 遠い目。
「もっと詳しい事は、学園に帰ってから話す。今、どういう言葉を使って話せばいいかわからないから……」
 過去を知り、空白の期間を想う者独特の視線の遠さ。
(厄介事が尽きないな春夏冬の軍は――)
 心の中で溜息を吐く牙撃。まぁその分稼がせてもらっているので、こちらとしてはありがたい限りなのだが。
 救助対象に似たディアボロ。事情を知る少女。
 剣道場という、様々な気には敏感な場所で育ってきた葛山はふと呟く。
「コレが始まり? 長い戦いになりそうね」
 病はまだ猛威を振るってはいない。
 潜伏したまま、じっと毒を向ける時を待っている。
【続く】


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 護黒連翼・ディザイア・シーカー(jb5989)
 あなたへの絆・蓮城 真緋呂(jb6120)
 梅花を仰ぐ六乙女・葛山 帆乃夏(jb6152)
重体: −
面白かった!:6人

撃退士・
セレス・ダリエ(ja0189)

大学部4年120組 女 ダアト
総てを焼き尽くす、黒・
牙撃鉄鳴(jb5667)

卒業 男 インフィルトレイター
護黒連翼・
ディザイア・シーカー(jb5989)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプA
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
梅花を仰ぐ六乙女・
葛山 帆乃夏(jb6152)

大学部3年38組 女 アカシックレコーダー:タイプA
魂の救い手・
麻生 白夜(jc1134)

小等部5年5組 女 アーティスト
甘く、甘く、愛と共に・
麗奈=Z=オルフェウス(jc1389)

卒業 女 ダアト
撃退士・
水芭(jc1424)

中等部2年12組 女 ルインズブレイド