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マスター:小鳥遊美空
シナリオ形態:イベント
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:25人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/09/21


みんなの思い出



オープニング

●憂いの果てに
「ねぇ、クロ……、良かったの?」
 アリスが心配そうに覗きこんでくる。
 ボクがした事は、確かに重大な裏切り行為だ。
 アルトゥールにばれた場合は処分を免れられないだろう。
「いや、いいさ。其れに、バレなきゃどうって事はないしね。彼らにアルトゥールの策略を見破れるとは思ってないし、信用すらしてないよ」
 ボクは撃退士達が約束を守るとは思っていない。
 きっと、彼らは悪魔との約束なんて無かった事にしてアリスに襲いかかるだろう。
 だけど、其れでいい。
 ボクにとっては、彼らが大挙して西宮ゲートに攻め込んできた、その事実さえあれば充分なのだから。
 そうすれば、ボクはゲートを守護しきれずに最重要ゲートである『神戸』に撤退するという選択肢を執る事ができる。
 アルトゥールへの体面を保ったまま、アリスを護る事が出来るという訳だ。
 難しい綱渡り、ではあるけどね。
「そう? アリスは、あの子達の事、信じているわ。きっと、悪いようにはしない、そう思うの」
 そう言って微笑むアリスの無邪気な表情が、ボクには少し眩しい。
「……そうかい? そうなると、いいね」
 希望的観測は、時に終焉を齎す。
 常に想定すべきは、最悪の事態だ。
 ボクは、ボクに出来る全力で、アリスを護る、それだけだ。

 思えば、随分と回り道をしたものだ、とアルトゥールはひとりごちた。
 当初、『ラインの乙女』はもっと早くに成就される予定だった。
 だが、全てはエレオノーレ(jz0046)の裏切りによる仲間の殺害によって計画は延期を余儀なくされた。
 原因は、仲間内の不和である。
 アルトゥールはエルを侮っていた。
 異端ながらも、口だけの小悪魔、そう思っていた。
 だからこそ、エルが部下達の間でどのような扱いを受けていようとも、気にも留めようとしていなかった。
 その鈍感さこそが、致命的なミスだったのだ。
 其れからのアルトゥールは、以前にも増して神経質に管理するようになった。
 新たに加わったクローディアが、一人の少女に通い詰めている事を知っても、やる気を削ぐ事を否とし、容認してきた。
 仮に、其の少女がヴァニタスとなり、計画を担う将になるならば、プラスになるからだ。
 だが、帰還したクローディアは其れを良しとはしなかった。
 ヴァニタスを参加させる事自体を拒否したのだ。
 そればかりか、今まで従順と思っていたリルティですら、裏切り者のエルの為に悪魔にあるまじき行動を起こす始末である。
 即座に頭に浮かんだのは、前回の計画の破綻時の事であった。
 これ以上、遠回りする訳にはいかない。
 アルトゥールは考えた末、保険をかける事にした。
 表向きは、各悪魔・ヴァニタスの戦力配置の均衡化として、アリスをクローディアから奪った。
 所謂、人質だ。
 そうして、リルティには――、
「……お呼びですか、マスター」
「おう、来たか、アンネリーゼ」
 自身のヴァニタスを監視につける事で、其の行動を制限する事にしたのだ。
 肩口で切り揃えられた銀髪が、ツーサイドアップに纏められ揺れている。
 右が緋色、左が翠の珍しいオッドアイだ。
「お前には、リルティの補佐として『芦屋』に行ってもらうぜ。……何か怪しい動きをしたら、俺様に報告しろ、いいな?」
「……Ja(了解)」
 憂いが無い訳ではない。
 だが、このまま燻っている訳にもいかないのだ。
 全ては、今は遠き彼の地の、御方の隣に立つ為に。

●戦火の咆哮
「まさか、クローディアの言う『ラインの乙女』が真実じゃったとはな……」
 人々が眠りから覚め動き始める早朝、神戸、芦屋、西宮の三箇所でゲートの生成が確認された。
 先ごろ、悪魔クローディアと遭遇した撃退士達によってもたらされた情報の通りに。
 当初、その情報の信憑性について疑問視されつつも撃退士により秘密裏に調査された結果、そのような痕跡は見つからなかったのに、だ。
 敵は何らかの方法を用いて、巧妙に秘匿して準備していたと言う事だろう。
「戦況は芳しくないのじゃ。有事に備え、戦力だけは整えていたのが幸いしたがの……」
 西宮に設置されたゲートは、西宮市役所近隣施設を中心に、半径5kmの規模にわたって展開されている。
 しかしながら、周辺には建物が多く、正確に此処にある、とゲートの中心を特定できていない状況だ。
「現在、それぞれのゲートに戦力を割り当て、攻略戦が始まっているのじゃがね。アルトゥールの用意周到さに劣勢を強いられておるのじゃ」
 ゲートがあると思わしき方面から溢れ出すように増え続けるディアボロはもちろんの事、厄介なのは挟み撃つかの如く用意された陸路での補給路だ。
 神戸から西宮間を繋ぐ阪神電車と言う私鉄がある。
 敵は、あろう事かこの車両を不定形のディアボロで乗っ取り、その力に拠って駆動するデモニックトレインと化させたのだ。
 中に居た乗客を人質に取り、空き車両には増援のディアボロを乗せ、ゲートと陸路から挟み撃つ。
 区間を行き来し、円滑な兵力分散を行っているのだ。
 また昏睡した人々を救う為に、海路による救出作戦が提起されたが、アルトゥール側はこれを予知していたのか、沿岸部と港に戦力を配置。
 輸送の為の船が乗り入れるのを防いでいる。
 劣勢を強いられながらもどうにか戦線を維持しているが、長くは保たないかもしれない。
 それほどに、戦力の差が圧倒的なまでに違うのだ。
「クローディアの約束、其れが守られるとするならば、ゲートコアへの入り口を見つけ、侵入できた時点で西宮は何とかなるじゃろう。だが、本当に信用していいものか、の……」
 アリスの身の安全を保障する代わりに、西宮ゲートのコアを差し出す。
 其れがクローディアとの約束だ。
 だが、其れはあくまでも彼女とこちらの非公式な口約束だ。
 他の天魔、ディアボロには関係なく、何事もなかったかのように襲ってくるだろう。
 また、約束自体が何かしらの罠である可能性も否定はできないのだ。
「じゃが、其れでもエル達には守らねばならぬモノがあるのじゃ。どうか、君達の力を貸して欲しいのじゃ」
 エルは神戸ゲートの攻略に行くと言う。
 西宮に行く撃退士達には、クローディアの真意を突き止め、コアを破壊してほしい、と。
「言うなれば、此度の戦局の鍵は君達にかかっていると言っても過言ではないのじゃ。頼んだのじゃよ」
 人々の希望を繋ぐ為に、暗い未来を払う為に。
 どんなに辛い悲しみや怒りや絶望も、何もかもを消し飛ばす為に。
 人類の守護者たる撃退士達は死地とも言うべき苦境へと旅立っていった。


リプレイ本文

●開戦の狼煙
 天に掛けられた緋色のカーテンを降ろしたかのように、紅い地平が続く。
 灰色の無機質な世界は、現在やこの世の終焉を具現化したかの如く、荒廃の一途を辿っている。
 道路の脇で車が家屋にぶつかり、炎を噴き上げる赤。
 無造作に引き裂かれ、溢れ出す生命の水の赤。
 有象無象の全てに破壊を齎す象徴たる緋色に支配された町、其れが今の西宮の現実だ。
 西宮ゲート支配領域に東側から侵入した撃退士達は国道2号線を西進し、酒蔵通りの工場地帯近辺にて本陣を設営した。
 そうして目にしたのが、この地獄のような光景である。
 周囲に充満する苛烈なまでの死の気配に、言葉すら失い押し黙る。
 本陣の隅にひっそりと安置された人であった者達の慣れの果てを目にした御堂・玲獅(ja0388)は、静かに黙祷を捧げた。
「(医療に携わる者として、あなた方を助けられなかった事を悔やみます。せめてあなた方の無念、大切だった人達の事は救済してみせましょう。ですから、どうか安らかに)」
 ゆっくりと開かれた玲獅のアメジストの瞳には、強い意志の光が輝いている。
「まるで京都の再来ね。……さぁ、呆けっとしている暇はないわよ! ほら、あんた達もいつまでも突っ立ってないで準備なさい! 敵は待ってなんてくれないわよ」
 場の空気に飲まれる後輩に叱咤しながら、東雲 桃華(ja0319)は装備の確認に余念がない。
 不安が無いと言えば嘘になる。
 憂う心も勿論在る。
 しかし己が身に出来る事など、そう多くはないという事実を桃華は知っている。
 だからこそ、動くのだ。
 全ての立ち塞がるモノを薙ぎ払う為に。
 其れは他の撃退士達にも言える事である。
 前に踏み出さなければ何事も進まない。
 一刻も早くこの悪夢に終止符を。
 魔が吼え大地が震える死の街へ、各々の想いを胸に、撃退士達は飛び散っていった。
 混迷の夜明けが、いつか訪れる事を信じて。

「背中は任せたよ。頼りにしてるからね」
 空の赤よりも尚、紅く。
 地の赤よりも尚、紅く。
 迸る緋色の燐光は、熱き血潮の如き焔の脈動。
 燃ゆる赤髪を靡かせ、剣鬼たる少女、神喰 茜(ja0200)は切っ先を水平に風を斬り、戦いの口火を切る。
「あらあら、誤射に注意よォ……」
 先を征く友の背に、冗談混じりに言葉を投げかけ、、黒百合(ja0422)はライフルを構えた。
 茜の横合いから飛び出したアルラウネに照準、躊躇なく撃つ。
 ぱっくりと肉片を飛び散らせ、魔の花は頽れていった。
「いい腕ね、期待した通りだよ」
 その様を横目で捉えながら、茜は腰を一段低く落とすと前方の敵の攻撃を受け流し、懐へと潜り込んだ。
 下段から上段に向けて鋭い剣閃が走る。
 円を描くように廻った軌跡は立ちはだかる障害を薙ぎ、その首を刈り落とす。
「手応えの無い敵だね、頭数ばかりの」
 地に落ちた首を、つまらなそうに蹴り上げた。
 ゴム毬よろしく跳ね飛ぶ首を避け、物陰からラミアが飛び出す。
 地に落ち行かんとする仲間の身体を盾に一気に間合いを詰め、茜の身体に毒牙を立てんとする蛇女を、
「油断してるとオイタする悪い娘が出てくるわよォ……」
 その背後をとった黒百合の大鎌が捉え、軽々と尾を刎ね飛ばした。
 蛇女の悍ましい絶叫が響く。
「油断なんてしてないよ。黒百合さんの動きも予想の範疇って事」
 黒百合の注意に爽やかな笑顔で応えながら、茜が敵に止めを刺す。
「まったく、調子良すぎよォ……」
 茜の軽口に黒百合も軽く応えながら、振り向きざまに背後に迫った蛇女の胴を豪快に切り飛ばした。
 血の雨が降り注ぎ、黒百合の服が緋色に染まる。
 鮮血を浴びながら、恍惚の表情で打ち震えた。
「おいでェ……、たっぷり可愛がってあげるからねェ♪」
 その相貌、愉悦。
「やれやれ、まだまだたくさん居るんだから配分には注意してよね。まぁ、私もそれなりに愉しませてもらうけどね」
 朱に染まる剣鬼が二匹。
 血に塗れて、煌々と濡れるその様は紅蓮に燃ゆる炎の如き鮮烈さを持つ。
 携えた双刃は止まるところを知らず、敵を求め彷徨い踊る。
 市街地掃討戦――、もとい殺戮の宴はまだまだ始まったばかりだ。

 都市部の隙間を縫うように、黒い影が空を駆ける。
 正確には空ではない。
 ビルの壁を直角で走っているのだ。
「こちらリョウ、これより敵を陽動する。手はず通り頼むぞ」
 光信機越しに味方に状況を報告したリョウ(ja0563)は、真下に群がる敵の群れの前へと降り立ち、慣れない魔法を撃つ。
「(やはり大したダメージにはならんか)」
 渾身の力で解き放ったはずの炎弾は、しかし僅かに手傷を負わせた程度で相手を逆上させるのみでしかなかった。
 だが、その方が都合がいい。
 リョウの存在に気が付いた敵が、わらわらと迫ってくる。
 それらの追撃を躱しつつ、リョウはとある地点を目指して走り出した。
「(それにしてもぞっとする光景だな)」
 後方の凄まじい形相の蛇女を見やりながら、リョウは嘆息する。 
 男として、異性に追いかけられるというシチュエーションはある種の浪漫といってもいいだろうが、流石にこれはお断りしたいところである。
 そんな事を考えながら、最後のコーナーを曲がる。
 そうしてリョウは立ち止まった。
「さて、悪いな。此処が貴様らの墓場だ」
 横一線に並んだ後衛陣が、火線を集中させリョウを追ってきた敵の先陣を一網打尽にする。
 続いて、剣と盾を携えた前衛陣が猛然と迫り、撃ち漏らした敵に追撃をかけた。
 巧妙に配置された伏兵にうまくおびき寄せられた敵の戦列は大きく崩れ、徐々に後退していく。
 それらを逃がすまいと、リョウ率いる鬼道忍軍達が退路を断ち、殲滅にかかった。
「さて……、死に急ぎたい奴からかかってこい。なに、一瞬で終わるさ。呆気ない程に、な」
 黒衣の死神の周囲に、無数の炎槍が形成されていく。
 燃え猛る業火が、全てを食むべく空を裂き、地を疾る。
 解き放たれた焔は敵に絡みつき、何もかもを灰塵へと帰していった。
「ふぅ……、こんなものか。救助作業に入る」
 殲滅を終えたリョウ達は、昏睡した一般人達の救出活動を再開するのだった。

「こちらはまだ悪魔もヴァニタスも姿は確認できてないですね〜。ゲートの位置も特定はまだですよ〜。ああ、トレインは今、芦屋方面ですか? わかりました、ありがとうございます〜」
 他戦域との情報交換を終えたカーディス=キャットフィールド(ja7927)は、本陣にある大型の光信機での通信を切ると、忙しなく自軍の各部隊へと戦況を落としていく。
 当初は前線にて行う予定だった情報網の構築だが、思いのほか入ってくる情報量が多く、その対応に追われていた。
 個人で持てる小型の光信機では半径1km程度の範囲でしか通信ができない事もあり、やはり各方面と連絡を取るのであれば本陣にある大型のものを使わなければならないからだ。
 得られた情報を地図に書き込み、最新のものへと更新していく。
 人手が足りない、そう感じるものの根をあげる訳にもいかない。
 情報網の維持は重要な役割だ。
 下手に扱えば勝敗に関わる。
「この作戦、失敗する訳にはいきませんからね……」
 悪魔との密約があるとは言え、其れもあやふやなものだ。
 万が一、という事がある。
 西宮の敗北は即ち、芦屋にいる仲間の命を危険に曝す事にもなる。
 多くの人命が危難に直面しているこの状況下で、負ける訳にはいかない。
 憂い顔のカーディスの隣では、玲獅が次々と運ばれてくる負傷者を相手に駆けまわっていた。
「ラミアの毒用の血清をこちらにください。……急いで! あら、あなたは今、手が空いてます? ならトリアージを手伝ってくださいますか?」
 負傷者を、怪我の度合によって3色のテープで選別していく。
 災害時などに用いられる『一人でも多くを助ける為の手法』だ。
 しかし、玲獅の所持するテープには、通常あるはずの色が一色欠けていた。
 手遅れな者につけるべき黒のテープが。
 其処に彼女の並々ならぬ決意が見てとれた。
「駅前南東部、負傷により歩行困難者が数名出たようです〜。申し訳ないですが、どなたか迎えにいっていただけませんか?」
 カーディスの呼びかけが本陣内に響く。
「私が直接、治療に赴きます。正確な位置をくださいますか?」
 玲獅は素早く挙手すると、返答を待たずに鞄へありったけの資材を詰め、準備する。
 今し方、団体の治療を終えたばかりだと言うのに疲れを見せず、精力的なものだ。
「お願いします〜、場所は此処です」
 カーディスから地図を受け取った玲獅は、激動の戦場へと飛び出していった。

●悪魔来たりて
「華々しい脚光は在りませんが、脱出路の確保は重要です。皆さん! 人々の為に勇往邁進していきましょう!」
 沿岸部の工場地帯を抜け港へと出た、雫(ja1894)が味方を扇動する。
 解らない事だらけの戦場に於いては、自分の手で勝ち取ったものこそが唯一にして絶対の事実だからだ。
 沿岸部を制圧し、味方の船を乗り入れさせる事が出来れば、多少なりとも昏睡した人々を救出する事が可能となる。
 仮に敗北した場合は、重要な退路の一つとなろう。
 特に東西をゲート、北を山、南を海に囲まれた芦屋へと赴いた仲間達にとっては、西宮沿岸ルートは一番現実的な退路だ。
 多くの人々の命綱を握る重要な地点である。
 それだけに、沿岸に配備された敵の数も相当数であった。
「ああ、こんなことで負けらんないよな!」
 普段はどこか締まらない高樹 朔也(ja4881)も、今回ばかりは務めて明るく振舞っている。
「(弱音なんて吐いてる場合じゃない。ボクはボクに出来る事を……っ)」
 だが、本当は不安で仕方ない自分が在るのも解ってはいる。
 無理にでも前向きに鼓舞しなければ、負の感情に陥ってしまいそうで。
 だからこそ、より一層がむしゃらに前に進む。
 不安を忘れ去るかのように。
 己の心に打ち勝つ為に。
「(エル姉様……、私はこの地で頑張ります。ですから、どうかご無事で……)」
 鏡極 芽衣(ja1524)は、神戸ゲートの激戦区で戦っているであろう義理の姉と慕うエレオノーレ(jz0046)へ想いを馳せながら戦う。
 エルを意識して誂えたと言う新しい衣装につけられた悪魔の翼の飾りが、風に揺れる。
 それと同じように自らの心も揺れる。
 本当なら、彼女の傍で共に戦いたかった。
 しかし、自分の力量は心得ているつもりだし、西宮の地が戦略的にも重要である事も充分に解っている。
 エルにお願いされたのだ、力を貸してくれ、と。
 クローディアの真意を突き止め、西宮の地を解放してほしい、と。
 義姉の安否を心配する心は確かに在るが、だからこそ其の信頼に報いたい。
「この道は何がなんでも死守します。未来を閉ざさせたりなんてさせません」
 悲壮なる決意を胸に秘めた少女の魔法が、敵を貫いていった。
「そこ、左から回って、取り囲んで! はーい、いいですよー、一気に畳み掛けて!」
 雫、朔也、芽衣達が真正面から敵とやりあっている内に、水上歩行を使用して敵陣の側面に出た高虎 寧(ja0416)率いる鬼道忍軍の部隊が奇襲をかける。
 外側からじわじわと人数差に物を言わせ、各個撃破されていく敵の群れは、元より統率などあろうはずもなく、容易に崩れていった。
「あ、あのっ、皆さん、お疲れ様、です……。……えっと、これで東側の港はだいたい確保できたと思います。後は、西側の方……ですよね?」
 地図とにらめっこしながら、三神 美佳(ja1395)が恥ずかしそうに現状の確認をする。
 本来、内気な美佳は初対面の者ばかりの前に出てあれやこれやと言うタイプでは無い。
 だが、状況が状況だけに自分に出来る事をやらねば、皆が危機に陥るのが解っている。
 必死に恥ずかしい、と思う心を押しこめ頑張る健気さが愛らしい。
 それでも、友達の雫の傍からは離れられないようだが。
「お疲れ様です、あともう少しで完全制圧ですね。此処が終わったら、私は遊撃隊の方とデモニックトレイン対応の支援に向かいます。お任せしても大丈夫でしょうか?」
 本来、沿岸部制圧班は三十と数名の部隊であったが、神月 熾弦(ja0358)が声をかけて連れてきた十数名の遊撃隊の支援もあり、想定よりも早く作戦が進んでいた。
 先に退路の確保と一般人の救出の手はずを整えておいた方が効率が良いという判断である。
 カーディスから流される戦況は何処も順調であり、このまま行けば近いうちに海路からの救出作戦も始まるだろう。
 そう、思われていた。


 ――ドォォォォンッ!


 熾弦達が居る場所から比較的近い位置で、轟音が響く。
 其の方角に目をやれば、尋常ではない量の粉塵が舞い、建物が一棟、音を立てて崩れていくところだった。
「皆さん、大丈夫ですか? 何がありました?」
 普段はおっとりとしている熾弦が、若干慌てたように西側の部隊とコンタクトを取ろうとする。
 が、聞こえてくるのはノイズのみで、一向に返事は来ない。
 ひしひしと、嫌な予感が胸につのる。
 確認しなくては。
 それよりも、今すぐ逃げなければ。
「やれやれ、こっちもか。あんまり感心しないな、余計な所に気を回すって行動はね」
 だが、遅い。
 あまりにも遅い。
 長い黒髪を浜風に遊ばせながら、黒いドレスを着た緋色の瞳の少女がゆっくりと歩いてくる。
 手にした黒の戦斧は血に濡れ、不気味な滑りを帯びている。
 少女は立ち止まると、唐突に手にした何かを放り投げてきた。
 雫達の足元まで転がり、足に当たって漸く動きを止めた其れは、恐怖の断末魔に凍りついたナニカ。
 先ほどまで生きていた仲間達の残骸、抜け殻、慣れの果て。
 ぺろり、と少女の姿をしたモノは、斧についた血を舐めとると、漆黒の翼を広げた。
「此処に居られると邪魔なんでね。処分させて貰うよ」
 その翼は、紛れもない悪魔の象徴、絶望の権化。
「……悪魔、クローディア」
 朔也の口から圧し潰したかのような声が吐き出される。
「ご明察。初めまして、そしてさようなら」
 クローディアは優雅に挨拶すると、斧に魔力を籠めはじめた。
 このままでは拙い。
 誰もが打開策を探る中、一番最初に動いたのは芽衣である。
「待ってください。確か貴女との約束では無血開城、という事だったはずですが?」
 少しでも時間を稼ぎ、情報を残そうと光信機のチャンネルを開いたまま質問を投げかける。
 半ば、乗ってくれる事に賭けるような形で天運に身を任せるかのようなギャンブルではあるが、今は考える時間が欲しい。
 祈るように仲間が見守る中、悪魔は魔力の注入を止め、口を開いた。
「君達がゲートの内部に侵入したら、ね。それに、ボクだって多少は働いておかないと、割に合わないからね。別に契約違反ではないはずだよ?」
 乗ってくれた。
 僅かに安堵が漏れる。
 芽衣に続けとばかりに、美佳も矢継ぎ早に質問を投げた。
「あ、あのっ……、私達の邪魔……するんでしたら、どうしてあんな約束したんです?」
 威圧感のある雰囲気に飲まれまいと、必死に言葉を押し出す。
「これも一つの童話さ。ボクの脚本上、整合性は必要になってくるからね。それに、ボクは君達を信用なんてしちゃいないよ。お互いの利害に於いてのみ一致してるだけだろ?」
 そういうと、悪魔は魔力の注入を再開した。
 これ以上、無駄な時間を過ごすつもりはないらしい。
 こうなっては、覚悟を決めるしかない。
 撃退士達は武器を握りなおすと、生き残る為の戦いに挑んでいった。

 光信機からカーディスの悪魔到来を告げる緊迫した声が響く。
「クローディアが港に……。私、行きます。終わらせる為に……」
 連絡を受けたソリテア(ja4139)は、手紙を握りしめ、一人で港へと向かう。
 視界の端に、憎きラミアの姿が映った。
 蘇る苦い記憶を振り払うように、全力で駆けだす。
 もしかしたら、この手紙で何かが変わるかもしれない。
 そう信じて。

●悪魔列車の脅威
 カーディスから電車が芦屋を通過した、との報を受けたトレイン対応班は、敵増援を警戒すべく駅前へと戦力を結集させた。
 件の車両は芦屋の対応班の攻撃を振り切り、増援を降ろす事無くこの地に向かっているようだ。
 増援の必要性を、芦屋よりも西宮に対して感じたのだろう。
 ゲート入口の発見こそ未だだが、現状、市街地戦も概ね優勢に運び、駅前の敵もある程度は掃討されている。
 憂いがあるとすれば悪魔と遭遇し、壊滅的な被害を受けているらしい沿岸部だが、態勢を立て直してから挑めば戦線の維持程度は出来るだろう。
 それに、あちらの目的はどうやら偽装にあるようだ。
 さっさとゲートさえ見つけてしまえば、戦闘を止めて撤退する可能性もある。
 姿を見せていないヴァニタスの存在に不安があると言えばあるが、この増援さえ凌ぎきれば活路は開ける。
 そういった思惑が新田原 護(ja0410)にはあった。
 愛用の銃を手に、物陰に身を潜めて敵の到着を待つ。
 彼の近くには、同じ対応班のグラルス・ガリアクルーズ(ja0505)と滅炎 雷(ja4615)、天空寺 闘牙(ja7475)の姿も見える。
 都市部にある特急車両が止まる駅と言う事もあり、西宮駅のホームは広く、見回せばそこかしこの死角に仲間が隠れていた。
 チャンスは一度きり。
 トレインから敵の増援が出たところを範囲攻撃で一気に叩き、中に乗り込む。
 一番厄介な車両の中の人質さえ救出できれば、後は気にする事なく車両本体に攻撃を加えられる、という算段だ。
「今、香櫨園の駅を素通りした、と連絡が入りました。そろそろ来ますかね」
 グラルスは万が一に備えて、西宮の前後にある香櫨園駅と今津駅にもトレイン対応班の撃退士を派遣していた。
 その分、西宮駅の人員が若干手薄にはなるが、保険として配置しておくに越した事はない。
 香櫨園で止まらなかったという事は、市役所の間近に存在するこの西宮の駅舎で増援を降ろしていく可能性が高まったという事だ。
 撃退士達の間で緊張が高まる。
 そうして、連絡を受けてから一分と経たずに其れはやってきた。
 激しい金属音が響き、駅舎が揺れる。
 ディアボロの能力を以て走る鉄の棺桶はゆっくりと速度を落とすと、やがて完全に停車した。
「こんな変わったのも居るんだね〜、ビックリしたよ」
 其の余りにも風変りな姿形に、雷は感嘆の声をあげた。
「まだだ、まだ飛び出すな。充分に引き付けてから撃て」
 逸る心を落ち着かせるように、護が手で仲間を制しながら機を窺う。
 火葬場の扉を開くような不気味なドアの開閉音が鳴り、次いで魔の眷属の生々しいまでの息遣いが大気を震わせた。
「今だ、火線を集中させろ! より多くを巻き込むんだ!」
 護の合図で、撃退士達が物陰から飛び出す。
「派手にいくよ〜!」
 護のナパームショットと、雷のフレイムシュートが絡み合うように螺旋を描き、我先にと敵へ食らいつく。
「こんなに狭いなら避けられないよね!」
 狭い入口から出たばかりのディアボロの群れは反応する事すら適わず、盛大に炎を噴き上げながら朽ちていった。
「飛んで火に入る夏の虫、と言うがまさしくお前達のような状態の事を言うのだろうな」
 入口で渋滞を作り、出る端から滅されていくディアボロに冷ややかな視線を送りながら、闘牙は己が身を纏う金色の鎧を呼び出した。
 雷光の煌めきを彷彿とさせるその光沢は、獅子を模した外観もあり、宛ら百獣の王といった風貌だ。
「貫け、雷光!」
 放たれる裁きの雷が闘牙の意思を汲み、立ちはだかる敵を討つ剣となる。
「よし! 内部を制圧し、人質を解放する!」
 ホームに出てきた増援が大方殲滅されたところで、護は車両への突入を促した。
 対応班数名と護、雷が内部に侵入し、其れを闘牙が外から援護する。
 その頃、グラルスはトレインの前方に移動し線路へ降り立っていた。
「さぁ、足を止めさせてもらいますよ。穿て、琥珀の重槍、アンバー・グレイブ!」
 車両の前輪、操縦席を巻き込むように、グラルスの範囲魔法が放たれる。
 地面より突出した琥珀色の結晶柱は、剣山の如く車両前方を刺し穿ち、破壊を齎した。
「これである程度、足を潰せ……えっ」
 しかし、彼は知らない。
 人質が乗せられている車両を。
 神戸から出発した電車の前方には、勿論の事ながら運転士が搭乗していた。
 そして、電車の前後の一両目にはそれぞれ人質が押しこめられていた。

 グチャグチャ。

 真っ赤に染まった車両の中身が垣間見える。

 グチャグチャ。

 琥珀の重槍が血に染まっている。

 グチャグチャ。

 よく確認もせず先走るから。

 グチャグチャ。

 オマエガオレタチヲコロシタンダ――。

「そ、そんな……僕は、何を」
 グラルスは膝から力が抜け、その場に跪いた。
 許しを乞う咎人のように。
 贖罪をせんとする罪人のように。
 そうして、其れに審判を下すかのように、ゆっくりと車両は動き出した。
 跪くグラルスに向かって。
 死が近づいてくる。
 グラルスが犯した罪が迫ってくる。
 ゆっくりと、確実に、徐々にスピードを上げて。
 デモニックトレインが、身体を再形成していく。
 真実を覆い隠すヴェールが纏われていく。
 其れがより一層、グラルスを後ろめたい気持ちへと駆り立てた。
「ごめん、なさい……、僕は……、僕は……」
 無慈悲な悪夢に謝罪は届かない。
 許しもありはしない。
 ただ、その巨大さを以て、目の前の蟻を轢き殺すのみだ。
 次の瞬間、グラルスは跳ね飛ばされ、大きく空を飛んでいた。
 最後まで贖罪を求めた少年の意識は、其処で途絶えた。

「まだこんなに戦力を隠し持っていたとは……。後退だ、下がれ!」
 悪魔列車の本来の役割は、素早く円滑な戦力輸送である。
 其れは、開戦前に護が提唱していたトレインの戦術論と合致する。
 と、いう事は、何も戦力を降ろすのは西宮だけでは無いと言う事だ。
 当然、芦屋や神戸に降ろす為の予備戦力も残されている。
 ただ、西宮に降ろされる予定だった戦力を滅したからといって、其れで終わりという訳ではないのだ。
 そうして、そんな魔が犇めく車両内に撃退士達は突入してしまった。
 自ら包囲される形になるように。
 狭い車両に逃げ場は無く、先ほど自分達が敵に対して行った事を、そのままの形で返される皮肉な結末。
 花粉で麻痺し、身体が動かない。
 動けない者から、次々と毒牙にかかり倒れていく。
 戦術のミス。
 判断のミス。
 全てが裏目に出てしまった。
 焦りが何処かにあったのだ。
「お前達だけでも先に逃げ……ぎゃあああああ!」
 まだ学生の護や雷を守ろうと、大人の撃退士達が盾になるが、そう長く保つものではない。
 一人、また一人と血の海に沈み、物言わぬ人形と化す。
 加えて車両が動き出してしまった。
 状況はほぼ絶望的に近い。
「打ち砕く、止めてみろ!」
 仲間を引っ張り出そうと闘牙が救援に来るが、最早焼け石に水だ。
 金色の鎧が激しい攻撃で欠け、崩れていく。
 それでも、なんとか掴んだ護と雷の手は離さない。
「諦めるな、俺を信じろ!」
 加速する車両は遂に駅舎を飛び出し、今津に向かって走り出す。
「くぅ……、魔法を撃ちます、衝撃に備えて〜!」
 雷が一縷の望みに賭けて、足元をフレイムシュートで撃ちぬいた。
 間近で起こった爆発は、敵と自分達を吹き飛ばすには充分な威力があった。
「あっ……」
 そうして、その勢いを利用して手を引いた闘牙に誘われるように、三人は車両の外へと出た。
 走り出した車両の外は、既に高架の上である。
 視線の下は、遠い灰色のアスファルト。
 満身創痍の三人に余力無し。
 そのまま力無く落下すると、灰の大地を血の赤に染め、動かなくなってしまった。

●ケダモノノススメ
 平山 尚幸(ja8488)は絶好の狙撃ポジションを確保すると、腹這いになり、愛用のスナイパーライフルを構えた。
 慣れた仕草でスコープ越しに照準を合わせ、一発でヘッドショットを決める。
 目標が倒れる様を確認し、次の標的へ。
 既に軽く二桁は撃ち殺していた。
「んー、楽しくなってきた」
 興が乗ってきたのか、徐々にテンションが上がってくる。
 が、どうやら時間切れのようだ。
「お前か、うちの兵隊いじめてるんわ。あかんな、わいの嫌いな雄やないか。死刑やで、死刑」
 本来、戦場の狙撃手というものは、一発撃ったら場所を特定されるのを防ぐ為に移動するものである。
 相手を知能の無い個体ばかりと侮ったのか、一ヵ所に留まりすぎたのだ。
 尚幸にとっては最悪とも言っていい敵を呼び寄せてしまった。
「巨乳のねーちゃんやったら許したったけどな。まぁ、そういう訳で往生しぃや」
 この敵、見た目は巨大アライグマ、頭脳はエロ親父。
 その名はヴァニタス・ポチである。
「そう簡単にやられはしないよ。さあ、食い殺せ、魔弾」
 即座に反応した尚幸は、振り向き様に切り札たる一発を撃つ。
 赤黒い軌跡が空間を裂いてヴァニタスへと迫り、肩の肉を僅かに削いだ。
 しかし、其れだけだ。
 大したダメージではない。
「オイタはあかんでぇ。ほな、さいならや」
 弾を撃った次の瞬間には、尚幸は壁に叩きつけられていた。
 ポチの赤黒い焔を帯びたベアクローの打撃が、尚幸のボディを強烈に打ち抜いたのだ。
 口腔から、強制的に息が漏れる。
 薄れいく意識の中で、最後に見たのはゆっくりと近づいてくる死の恐怖。
「(自分はこのまま死ぬ……のか?)」
 だが、其れにすら答えを出す間もなく、意識は完全に堕ちていった。
「さて、トドメいっとこ……おぉ! なんやあのボインちゃん! なかなかええもんもっとるで。こらあかん、今いくで!」
 しかしポチはトドメを刺す事なく、いずこかへと立ち去る。
 節操無しとはこの事である。

「ちょっと、そこキビキビ動く! 前衛がちゃんとしないと後衛が安心できないでしょ。ほら、そっち、ちゃんと死角をカバーして!」
 桃華の所属する遊撃隊某班は、鬼軍曹と化した桃華のダメ出しを受け鋭意前線の立て直し中である。
 トレイン対応班の壊滅を受け、溢れ出した敵の増援が市街地に大量流入し、またしても混戦と化してきたからだ。
「違うわ、優先順位はそいつじゃない! 火力集中させて、そう、やれば出来るじゃない。ああ、もう、私の班から死人なんて出たら、絶対許さないわよ!」
 皆が自分の事で手一杯になる中、桃華だけは周囲の連携が気になって仕方ない。
 少しでも全員の生存率を上げる為に、ちょっとした凡ミスも見逃しはしない。
 他人が怪我をしたからと言って自分の身が痛む訳ではないのだが、生来の世話焼き性分な所為か、どうしても口を出さずにはいられないのだ。
 本人は否定するだろうが。
 そんな桃華だからこそ、周囲の仲間も言う事を受け入れ、極力実践していく。
 徐々に脱落していく撃退士も多い中、桃華の班は驚異の脱落者0でここまでやってきていた。
 しかし、其れも此処までのようだ。
 轟音と共に、巨大な物体が空から降ってくる。
 桃華達の前に着陸し堂々と立ち上がった其の雄姿は、まさしくケダモノ。
 灰色毛並みの我らがアライグマ、ポチ降臨である。
「ボインちゃん、みーっけ♪」
 桃華の背筋にぞわりとした悪寒が走った。
「全員、今すぐ防御を固めて! 前方に火線絶やさないで! 近づけさせちゃダメよ、絶対に!」
 しかし対応が遅い。
 致命的に遅すぎる。
 いや、ポチが速過ぎるのだ。
 ほんの数歩。
 戦列を再構成しようとする桃華達の陣形の穴を縫い、懐まで入り込んでしまった。
 これでは、味方を誤射しかねない。
 撃てないのだ。
 ならば、と反応できた前衛が、剣を縦に振り下ろす。
 だが、当たらなければ意味がない。
 するりと半歩横にずれて躱したポチは、前衛を踏み台にすると、王手とばかりに桃華の眼前に降り立つ。
「なら、薙ぎ払うのみよ!」
 巨大な戦斧を横薙ぎに振るう。
 唸りを上げて振り抜かれた刃は、しかし当たらない。
 視線は下に。
 態勢を低く保ち、力を溜めるポチの姿が見える。
「(……やられたわ!)」
 桃華は来るべき衝撃に備え、歯を食いしばり、ぐっと丹田に力を込めた。
 だが、襲ってきたのは別な意味での衝撃であった。
「ふにふに、思ったとおり、ナイスおっぱいやで。形よし、張りよし、やわこさよし、文句なしや!」
 空気が凍りついた。
「ちっ……」
 桃華の顔が、みるみる内に赤くなっていく。
「ちっ?」
 だが、そんなのはお構いなしと言わんばかりにポチのセクハラは続く。
「ちっ!」
「わかったで、ちくびーむやな!?」
 ダメだこいつ、早く何とかしないと。
「違うわよ、この痴漢っ! 馬鹿っ! エロタヌキーっ!」
 桃華渾身の一撃。
 ポチにクリティカルヒット。
「ふぐぉ!? き、効いたで、今のは。せやけど、やわこかったわぁ、おねーちゃんのおっぱい♪」
 あれ、こいつ今、思いっきり攻撃食らってなかったっけ?
 むしろさっきより元気なんですけど。
「そ、そそそそ其処に直りなさいよ! 今すぐあんたの口、塞いでやるんだからっ!」
「だが断るで! わいの事を待っとるおっぱいが……まだまだ何処かにあるんやっ!」
 ポチは用は終わった、とばかりに転身すると、明後日の方角へと駆けだした。
「ま、待ちなさいよ! 揉み逃げってなんなのよ、いったい!?」
「うふふ〜、捕まえてごらんなさぁい♪」
 怒れる桃華と呆然と眺める撃退士を背後に、灰色の町の何処かへと完全に姿を消すのだった。
 乙女の純情は犠牲になったのだ。

「やっと逢えましたね」
「お逢いしたかったです、ポチさん」
 ポチ発見の報を受け、敵ディアボロ群を殲滅しやって来たるは二人の少女。
 その身体は薄いマントで覆われ、中を覗く事はできない。
 だが、ポチには解る。
 視えている!
「この気配、神乳の予感や……!」
 その発言を待っていた、とばかりに少女達はマントを脱ぎ捨てた。
 レイラ(ja0365)の、黒いレースの下着に覆われた豊満な身体が露わになる。
 長い黒髪が白い肢体に纏わりつき、清楚な大和撫子はまた一つ、大人への階段を登るのだ。
「こ、これはランクA−級の乳!? しかもなんや、この少女と大人の羞恥と妖艶が入り混じって奏でるハーモニーは! あかん、これはあかんでぇ!?」
 だが、上には上がいる。
 アーレイ・バーグ(ja0276)の所持武装は神の領域へと達していた。
 レイラとは対照的に、純白のレースで清楚さをアピールした下着が納める其れは、しかし御淑やかとは程遠き我儘バディ。
 圧倒的存在感を誇る神のおっぱいは、全ての乳を従え君臨せんとする脅威のキング、Kカップである。
「な、なんやこれは!? こんなおっぱい、見たことあらへんで! こ、これは測定不可や! 幻のランクEX級や! 最早言葉は必要あらへん、ひれ伏すのみやでぇ!」
 いちいち熱い解説の漢、ポチである。
 と、言うか考えてみたまえ。
 必死こいて他の撃退士が生死の境を彷徨う中、町のど真ん中で下着姿を披露もとい露出する少女達。
 どうみても痴女です、本当にありがとうございました!
 しかし、我々の業界ではご褒美です。
「あの……私のおっぱいどうですか?」
 アーレイが普段の言動からは想像できない程の猫を被り、ポチに詰め寄る。
 勿論、腕に胸を押し付けるあざとさは忘れていない。
「あ、ずるいです……。ポチさん、私のはどうでしょう?」
 レイラもアーレイとは反対側の腕に抱きつき、胸を押し付け、耳を甘噛みする。
 なんと、思いのほかあっさりとおっぱいホールドが完成してしまった。
 ポチ、不動。
 どうしてこうなった。
「わ、わいは死んだんやろか? なんやこのヘブン!? お嬢ちゃん達、なんていうん? ほぅ、アーレイちゃんに、レイラちゃんな? ええで、ええで、二人ともめっちゃええで!」
 ポチ接待プレイはまだまだ続く。
「や……♪ おっぱいそんなに弄っちゃ駄目ですぅ……♪ あーれいむねよわいんですっ」
 と、アーレイが凄まじいぶりっ娘っぷりを発動したかと思えば、
「ささ、ポチさん、飲んでください。ラインの乙女なんて忘れて一緒に楽しみませんか?」
 などとレイラがポチに酒を勧めつつ、情報を探り出そうと機会を窺う。
「あかん、わいの中の野生が目を覚ましそうや……」
 そうしてポチも満更ではない。
 おい、仕事しろ、おい。
「今日は……朝までおっぱい可愛がってくれますよね? お仕事なんて行っちゃやーですよ?」
 アーレイは完全にどこぞのクラブのねーちゃん化していた。
 あれ、何しに来たんだっけ?
 レイラはレイラでセクハラはアーレイの方に振りつつどうにか情報を得るべく頑張るが、このヴァニタス、頭の中身が空である。
 中々期待しているような情報は出てこない。
 焦れはするが、足止め出来ている、と思えばまだ何とか耐えられるレベルだ。
 そんな彼女の苦労を見守る影が一つ。
 虎綱・ガーフィールド(ja3547)である。
「(……ふぅ、どうやら此処は援護は要らぬようで御座るな。杞憂でござったか。ならば拙者は沿岸部の支援に向かうで御座るよ)」
 存分に堪能した後の撤退。
 これが役得ですか?
 汚いなさすが忍者きたない(※褒め言葉です)

●嘆きの海
 膨大な魔力の奔流が全てを爆砕していく。
 濛々と立ち込める砂埃が晴れた時には、真新しい惨劇が出来上がっていた。
 子供達を護ろうとした熟練の撃退士は、皆、血の海に沈んでいる。
 その中には芽衣、美佳、朔也、熾弦の姿もあった。
 悪魔と対極のカオスレートにある者、また後衛職は耐えきれなかったのだ。
 立っているのは運よく射線から外れた雫、寧、他数名の撃退士のみである。
 あっと言う間もなく半数近くがもっていかれた。
 戦おうと言う意思が萎えていく。
 準備も戦術も何もない遭遇戦で、そもそも分が悪すぎたのだ。
 こんな事は想定外だ。
「うちらがあれ引き付けてから逃げるから、負傷者を連れて後退して」
 覚悟を決めた寧は、雫に二手に別れて撤退するよう提言する。
 返事は聞かない、聞く暇もない。
 仲間の鬼道忍軍と共にクローディアへと肉薄する。
 一撃離脱の迅雷を以て、その首を獲らんと刃を立てて。
「遅いよ、そんなのじゃ当たらないな」
 だが、周囲に展開された分厚い絵本によって阻まれ、決死の攻撃は届かない。
「(なら、このまま海上に出て、船を盾にして逃げる……!)」
 弾けるように、悪魔から距離を取り、そのまま海へ逃れる。
 水面を駆けながら、船を盾にすると雫とは反対の方角へ向かう。
 しかし甘い。
 悪魔は翼を広げると、水面ぎりぎりを滑空するように追撃してくる。
 そうして、船の手前で海の中へと潜ると最小の動作で障害物を超えてきた。
「そんな……、まさか!?」
 慌てて槍で防御態勢を取るが、時既に遅し。
 摩耗した身体で防ぎきれる程、生易しい代物ではない。
 血しぶきが舞い、意識が飛んでいく。
 力なく倒れた寧は、そのまま海の中へと沈んでいった。
 悪魔は生死確認もせず転身し、雫達の元へと戻る。
 大した時間稼ぎにはならなかった。
 負傷者を担いだ者から順次離脱している最中に、再び降り立つ。
「足しにならないかもしれませんが、私が時間を稼ぎます。皆さんは、どうか負傷者の救助を」
 雫は武器を構え、静かに進み出た。
 ゆらり、と闘気の波が周囲に揺蕩う。
 刹那、雫の足元が爆ぜた。
 アウルの力を行使する事によって得られる驚異の加速で、防御ごと貫く一振りの剣と化した雫は、小細工なしに真正面から切りかかる。
 今ある全ての力を注いだ全力の一撃が、悪魔の展開する本を模した防御壁とぶつかり、せめぎ合う。
「とお……れ……!」
 雫の想いを乗せた刃が、僅かの均衡の後、本を引き裂いた。
 そのままの勢いで、悪魔の左腕を浅く切り裂く。
「中々やるね。だけど、此処までさ」
 次の瞬間、カウンターで放たれた斬撃が、雫を貫いていた。
 どさり、と小さな少女の身体が頽れていく。
 沿岸部制圧班は一部を残して完全に壊滅してしまった。

「クローディアさん、初めまして。神戸に向かった仲間より手紙です。確認お願いします」
 ソリテアが手紙を持って現れたのは、雫が倒れて直ぐの事である。
 武器を持たず、敵意を見せず、ただの使者である事を示して。
 悪魔は手紙を受け取ると、即座に燃やして捨てるのだった。
「『契約に従い、アリスに攻撃しない』、ね。で? だからどうしたっていうんだい? 君達は時々、全く無駄に思える行動をするよね」
 本来ならば、此処でアリスや神戸に居る仲間と会話してもらうはずだった。
 しかし、アリスは未だ発見されておらず、そもそもの会話が携帯用光信機しか持たぬソリテアでは、神戸まで繋がるはずもない。
 そればかりか、念を押すような形となり、悪魔の不興を買っただけである。
 絶句するソリテアの前に、悪魔が斧を振り上げ立ちはだかる。
「君達の仲間が此処のゲートに侵入した時点でボクは撤退する。契約は変わらないよ。それじゃあね、ばいばい」
 振り下ろされた先に、しかしソリテアは居なかった。
「ふははは! 邪魔するで御座るよ」
 寸での所で虎綱がソリテアを抱え、飛び退ったのだ。
「また面倒なのが増えたね……。で、君はなんなんだい? まさか君も馬鹿げた事を言うんじゃないだろうね?」
 しかし、虎綱は双剣を構えると否定し、戦いの姿勢を見せた。
「なぁに、命を見捨てられないだけで御座る」
 そう言って、不意打ち気味に影縛りの術を使用する。
 束縛した後、ソリテアを抱えて逃げる為に。
 だが、当たらない。
 そう簡単に当たる程、クローディアは慢心してはいない。
「偽善者の類かい? なら、共に死んであげなよ。反吐が出るね、そういうのはさ!」
 悪魔の戦斧が咆哮を上げ、再び魔力の渦を作り上げる。
 練り上げた力を、そのまま躊躇する事なく振り抜いた。
 広範囲の力の奔流が二人に迫る。
「くっ……Stardust Shine Vail!」
 ソリテアが虎綱を庇って前に出て、障壁を構築する。
 それでも、防ぎきれるようなモノではない。
 白い閃光に飲まれて、二人は吹き飛び、そのまま再び動き出す事はなかった。

●陥落
「茜ちゃん、危ないわァ……!」
 茜を庇った黒百合が、空蝉を使ってどうにか凌ぐ。
 市街地に戻ったクローディアの強襲に遭った二人は、悪魔と幾度目かの剣戟を交わした。
「やれやれ、また其れか。厄介な術だね」
 虎の子の空蝉は今ので打ち止め。
 期待できる援軍も周辺にはいない。
 加えて二人の所属する隊全体の消耗も激しく、継戦能力は最早無いに等しい。
 やっと出逢えた骨のある敵を前にしてこの体たらく。
 茜と黒百合は唇を噛む。
「折角、悪魔を斬れると思ったのに、これかぁ……」
 精一杯強がってはみるものの、息が荒い。
 常に闘争の中心に居たのだから仕方ないのだろうが、この状況下では致命的とも言える。
 悪魔がじりじりと間合いを詰めてくる。
 いよいよ覚悟を決めようとしたその時、悪魔は唐突に転身すると、不敵な笑みを残して去っていった。
 その場に居た全員が顔を見合わせ、呆けた。
 いったい、なんだったのだろうか?
 しかし、その答えを出すよりも早く光信機から通信が入った。
 カーディスからだ。
 どうやら沿岸部とトレイン対応班の壊滅の影響で、かなりの数の敵増援が本陣に来襲し、劣勢に立たされているらしい。
 このままでは堕ちるのも時間の問題である、と。
「はぁ……、また雑魚なのォ……? もう飽きてきたわよォ……」
「はいはい、文句言わないの。コアを破壊する前に本陣堕ちるとか洒落にならないでしょ」
 不可解な現象よりも、明かな事実を。
 黒百合達は疑問を感じつつも、本陣救援へと向かうのだった。

「やっときたか。結構時間がかかるもんだな」
 小田切ルビィ(ja0841)が西宮の地に赴く前に、学園経由で法務局に問い合わせた西宮市役所近隣の登記記録が届いたのだ。
 ゲートが作成される前に秘密裏に行われた調査では、其れらしい痕跡が一切見つからなかった。
 にも関わらず、こうして巨大なゲートが展開された裏に、ルビィは協力者の存在を疑った。
 記録を閲覧し、其れらしい建物を探しているルビィの隣で、大澤 秀虎(ja0206)は抜身の刀を肩に置き、静かに見守る。
 今は制圧しているとは言え、敵地のど真ん中だ。
 いつ、敵の奇襲を受けるとも知れない。
 如何なる場合に於いても即応できるよう、臨戦態勢を崩さない。
 久方ぶりに吸う戦場の空気に、どこかしら懐かしいものを感じながら。
 その隣では、御暁 零斗(ja0548)が手紙を手に、戦況を眺めていた。
 気が付けば対悪魔戦で各部隊にかなりの被害が出ている。
 行動可能な残存戦力は、既に約半数といった所か。
 悪魔との約束の行方がどうなるにせよ、出来るだけ速く決着をつけなくてはならないようだ。
 と言う建前もあるが、零斗はクローディアに興味を持っていた。
 愛する者の為に、悪魔の理を踏み外し、人と取引をした其の心境、其の行動に。
 逢ってみたい、そんな感情が胸中に渦を巻く。
 だが、逆に東城 夜刀彦(ja6047)は憎しみを抱いていた。
 彼に多くを遺した元教師の仇、其れがクローディアである。
 其の名を聞くだけで、夜刀彦の心はどうしようもなくざわつくのだ。
 きっと、復讐など望まないであろうという事も、自分の感情が筋違いである事も自覚して尚、制御できない想いの奔流がどうしようもなく溢れ、こんな所まで来てしまった。
 優先すべきは、危機に陥っている人々の救出である、と必死に言い聞かせてはいても、身体は今にも走り出してしまいそうな程に。
「っと、此処が一番怪しいな。該当箇所と今までの捜索範囲を見るに、ちょっと駅前の一等地から離れちゃいるが、条件的にはぴったりだ」
 ルビィが、場所を絞り込んだようだ。
「じゃあ、いっちょ行ってみるか」
 零斗が、鋭い犬歯を見せ愉しそうな笑顔を見せる。
 仲間に突入箇所の連絡を入れたルビィ達は、現場へと向かい移動を開始した。

「当たりのようだな。敵が今までの奴と違うようだ」
 突入したビル内部には、外にいる個体とはまた違った容姿の敵が控えていた。
 まるでアリスに出てくるような、トランプを模した兵隊が。
 それらをなぎ倒しながら進む。
 トランプ兵は階段や部屋の一定箇所に点々と存在し、まるで何処かへ誘うかのように続いている。
 そうして、全てのトランプを斬り倒した果てに其れはあった。
 紅い輝きを放つ魔法陣と、その傍らに立つ少女。
「やぁ、お前がクローディアで間違いないか?」
「いかにも、ボクがクローディアさ。思いのほか、時間がかかったじゃないか。さぁ、約束を果たすといい」
 零斗が問い、悪魔は肯定を返す。
「(……この悪魔が、先生の仇)」
 傲慢な其の態度に、夜刀彦は睨みつけた。
 其の姿を、目に焼き付けるように。
「まぁ、待てって。ほら、挑戦状だ」
 しかし零斗は其れを制すると、悪魔に手紙を投げてよこした。
「またかい? 君達は本当に無意味な事をするね。君達に心配されるような事は何もないよ」
 中身を確認した悪魔は、不愉快そうに手紙を破り捨てると、用件は終わったとばかりにゲート内部へ消えようとする。
 だが、其れを逃がしはしないとばかりに零斗は襲いかかった。
「さて、それじゃぁ喧嘩を始めようか」
 悪魔はこのまま神戸に行くつもりだろう。
 そうなれば、あちらが苦戦することに繋がる。
 少しでも時間稼ぎするつもりなのだ。
 先制の一撃を、悪魔にたたき込む。
 が、当たらない。
「そんなに死にたいのかい? なら、望み通りにしてあげるよ」
 カウンターで鋭い斧の斬撃が飛ぶ。
 あらや零斗に当たる、と思われた所で夜刀彦が割って入り、空蝉をもって凌ぎきった。
 其れをチャンスと見た秀虎が、サイドから肉薄する。
「悪魔相手に人間相手の殺人術が通じるかは分からんが」
 高速の斬撃に渾身のアウルを籠めた必殺の太刀は、しかし本の防御壁に阻まれ届かない。
 幾度か切り結んだ後、ルビィは悪魔との戦闘を回避すると、ゲートへと突入した。
 コアの破壊を優先したのだ。
 其れを見た悪魔が焦る。
「しつこいな、君達は!」
 自分をすら巻き込む事を厭わず、魔力の渦を足元で解放する。
 零斗達は後方へと吹き飛ばされた。
 その隙に、手負いの悪魔はゲート内部に戻ると、そのまま何処かへと姿を消したのだった。

「西宮ゲートが陥落やって? あかんな、遊び過ぎたようや。此処までやな、わいはご主人とこ戻るわ」
 ゲート内部撃退士侵入の報を受けたポチは、アーレイ達との戯れをやめると、そのまま電車に飛び乗り芦屋へと撤退していく。
 其れを見送った数分後、ルビィ達の活躍もあり、ついぞ西宮ゲートはその機能を停止したのだった。
 かくして、多くの犠牲を払いながらも約束は果たされた。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 血花繚乱・神喰 茜(ja0200)
 己が魂を貫く者・アーレイ・バーグ(ja0276)
 202号室のお嬢様・レイラ(ja0365)
 サンドイッチ神・御堂・玲獅(ja0388)
 赫華Noir・黒百合(ja0422)
 約束を刻む者・リョウ(ja0563)
 戦場ジャーナリスト・小田切ルビィ(ja0841)
 災禍祓いし常闇の明星・東城 夜刀彦(ja6047)
 二月といえば海・カーディス=キャットフィールド(ja7927)
重体: −
面白かった!:28人

血花繚乱・
神喰 茜(ja0200)

大学部2年45組 女 阿修羅
剣鬼・
大澤 秀虎(ja0206)

大学部6年143組 男 阿修羅
己が魂を貫く者・
アーレイ・バーグ(ja0276)

大学部4年168組 女 ダアト
黒の桜火・
東雲 桃華(ja0319)

大学部5年68組 女 阿修羅
撃退士・
神月 熾弦(ja0358)

大学部4年134組 女 アストラルヴァンガード
202号室のお嬢様・
レイラ(ja0365)

大学部5年135組 女 阿修羅
サンドイッチ神・
御堂・玲獅(ja0388)

卒業 女 アストラルヴァンガード
Drill Instructor・
新田原 護(ja0410)

大学部4年7組 男 インフィルトレイター
先駆けるモノ・
高虎 寧(ja0416)

大学部4年72組 女 鬼道忍軍
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
雷よりも速い風・
グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)

大学部5年101組 男 ダアト
疾風迅雷・
御暁 零斗(ja0548)

大学部5年279組 男 鬼道忍軍
約束を刻む者・
リョウ(ja0563)

大学部8年175組 男 鬼道忍軍
戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
名参謀・
三神 美佳(ja1395)

高等部1年23組 女 ダアト
撃退士・
鏡極 芽衣(ja1524)

高等部2年29組 女 ダアト
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
世紀末愚か者伝説・
虎綱・ガーフィールド(ja3547)

大学部4年193組 男 鬼道忍軍
撃退士・
星乃 滴(ja4139)

卒業 女 ダアト
泥んこ☆ばれりぃな・
滅炎 雷(ja4615)

大学部4年7組 男 ダアト
撃退士・
高樹 朔也(ja4881)

大学部4年114組 男 アストラルヴァンガード
災禍祓いし常闇の明星・
東城 夜刀彦(ja6047)

大学部4年73組 男 鬼道忍軍
撃退士・
レオ(ja7475)

大学部4年73組 男 阿修羅
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
猛る魔弾・
平山 尚幸(ja8488)

大学部8年17組 男 インフィルトレイター