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マスター:小鳥遊美空
シナリオ形態:イベント
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:25人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/06/09


みんなの思い出



オープニング

●???
「帰りが遅いわよ、クローディア! あんたが居なかった所為で、あたしがどれだけ雑用させられたと思ってんのよ!」
「あはは、ごめんね、リルティ。でもお陰で、ボクは得がたいパートナーと出会えたよ、ありがとう」
 某県某所、悪魔の支配領域も近く廃棄された山深い集落。
 悪魔リルティと、悪魔クローディアは久しぶりの邂逅を果たした。
 その傍らには、物珍しそうに周囲を窺う無邪気なヴァニタスの少女、アリスの姿。
 そんなアリスを哀れむような視線で見ながら、リルティは告げる。
「あんたの大切な其れ、アルトゥールが『大命』の将に盛り込むって言ってたわよ」
 その知らせは、クローディアに取っては不快なものであった。
「……ボクがいない所で勝手に決めないで欲しいな。アリスの分までボクが働くっていうのは駄目なのかい?」
 されど、回り始めた歯車は止めようが無い。
「無理でしょうね。どうしてもっていうなら、直接アイツに言ってみなさいよ。そもそも『ラインの乙女』の将の枠が一つ足りないから、あんたの放蕩も許されてたんでしょ?」
 つまり、クローディアがアリスを外す為には、どうしても最低一枠分の将を見つけ用意しなければならないと言う事だ。
「やれやれ、難儀だね。まぁ、お土産もある事だし、アルトゥールに意見してみるよ」
「お土産?」
「ほら、君の妹分さ」
 そう言ってクローディアが解いた荷物の中には、厳重に手足を縛られ、全身ずたぼろになったエレオノーレ(jz0046)の姿があった。
「え、エルッ!? ちょ、殺したの!?」
「いや? まだ生きてるよ。アルトゥールなら、自分の手で息の根を止めたいだろうと思ってね」
 リルティにとってエルは、妹のような存在だった。
 エルは要領が悪く、悪魔のくせに人間贔屓であった為に周囲から煙たがられ、粗雑な扱いを受けていた。
 リルティにはそんな馬鹿な生き方をする妹分が、心配でもあり、可愛くもあったのだ。
「ね、ねぇ、クロ。お願い、エルをあたしに譲って! あんたがいない分、あたし頑張ったんだから!」
 其れは離反した今でも続いており、折に触れては気にかけ、仲間達から報告を聞く度にやきもきしていたのだ。
「……うーん、確かに君には迷惑をかけたし、借りもあるしね。解ったよ、譲ろう。だけど、リル。君、引き取ってどうするつもりだい?」
「ありがとう、感謝するわ! どうもこうも無いわ、説得よ! アルトゥールには人間側の動きを偵察してきたとかなんとか、色々理由をでっちあげてでもこっちに引きずり戻してやるんだから!」

「って事で、あたしは一旦アルトゥールの所へ戻るから、あんたはしっかりエルの事、見張ってなさいよ?」
 リルティの傍らには拘束され、横たわるエル。
 久しぶりに触れる妹分の頭を撫でながら、自身のヴァニタスに護衛を任じた。
「なぁ、ご主人。……その娘のおっぱい、ちょろっとだけ触ってみてもええ? なんちゅーか、忘れかけてたわいの中のケダモノちゅーか、本能ちゅーか、色々覚醒めそうやねん」
 そんなリルティに対し、ヴァニタスは素っ頓狂な事を言い始めた。
 このヴァニタス、見た目は巨大アライグマ、頭脳はエロ親父、その名はポチである。
「……ねぇ、あんた一回あたしの●●で●●からぶっ●●て●●から●●までの直通●●作って●●顔させてやろうか?」
「うぉぉぉぉお!? ご、ご主人たんま、たんまや! せやけど、わいかて立派な雄やで!? たまにはご主人みたいなツルペタやのーて、たゆんたゆんをゴフォ!?」
 アライグマは散った。
 何故だ!?
 セクハラしすぎたのさ。
「はぁ……、不安だわ。とりあえず、アルラウネも置いてくから、何かあったら直ぐにあたしに知らせる事。いいわね? はぁ……、不安だわ」
 レイプ目で倒れ伏すヴァニタスを置いてリルティは去って行った。
 しかし、いなくなった途端に復活する程度には元気である。
 煩悩の力、万歳!
 そうして、縛られて強調されたエルの胸に、アライグマハンドを乗せると、存分にふにふにするのであった。
「ほわ〜、やわこ〜! ええな〜、至福のひとときや〜。めっちゃ癒やされるわ〜」
 ふにふに、ふにふに。
 それにしてもこのアライグマが護衛で大丈夫か?
 あんまり大丈夫じゃない、倫理的に問題だ。

 そんなアライグマのセクハラ劇場を離れた死角から見守る影が一つ。
 奪取を不可能と判断すると、何処かへと消えていった。


●悪魔討伐戦
「これは極秘の依頼である。秘密は厳守だ。それを誓約できる者だけがついてこい。誓約できないのなら去れ」
 誓約できない者達は去り、そして誓約する事を承認した者達だけが学園にある一室に通された。
 そこには杠 虎鉄(jz0072)が居た。
 彼は彼は軽く挨拶すると、先の事件とはぐれ悪魔エレオノーレの事について話始めた。彼は撃退士達に資料を配り概要を説明する。
「以上の報告から、はぐれ悪魔エレオノーレは学園を裏切り悪魔側に戻ったと判断する。元より、最初から偵察としてこちら側に寝返った振りをしていただけの可能性も高い」
 虎鉄は言う。
「悪魔は現在怪我を負い療養中であると思われる。その傍らには奴のヴァニタスと思わしき存在も確認されている」
 先頃行われたクローディアとの決戦は、撃退士側の実質的敗北で幕を閉じた。
 戦闘後、死亡したと思われるエルの遺骸を回収しようとしたが反応が離れた場所で確認された為、当初、浚われたものであると判断された。
 しかし状況確認の為、虎鉄が偵察を派遣したところ、不審な点が多い。
 普通、寝返った天魔は同属にとっては嫌悪の対象であり、生かす価値はどこにも無い。
 だが、エルは生かされている上に、まるで彼女を護るようにヴァニタスが傍らについている。
 また、療養している場所が悪魔の支配領域に近く、裏切り者である彼女にとっては比較的危険な場所であるはずなのだ。
 本来ならばあの館で死体となっていなければ合理的ではない。
 と、すれば最初から裏切っていたと考えるのが妥当な筋だろうと虎鉄は答えに至る。
 もっとも、この状況下で裏切ったと判断するのはあまりに早計ではないかという意見も強い。
 学園はもっとよく調査してから判断をくだすべきだと虎鉄に通達しており、人員の派遣も金銭的バックアップも討伐許可も与えられていない。
 しかし、遅れては大事に至ると判断した虎鉄は独自に動いて密かに周囲に呼びかけた。
 そして、元より裏切り者の天魔達を信用していない者達は存在する。
 彼等は直ぐさま虎鉄の主張に同調し我先にと馳せ参じたのだ。
 虎鉄は彼等を組織して即席の討伐隊を作り上げていた。
 だが、それだけでは戦力が足りない為、こうして虎鉄は密かに個人で依頼を出し、人員を集められているのである。
 男は言う、
「世界を人の手に戻すために、お前達は俺と共に悪魔エレオノーレを討ち、学園の威信と尊厳を護れ!」
 と。


リプレイ本文

●疑念
 足掻けば足掻く程、深みへと墜ちていく底の無い暗闇。
 絡みつく熱さは否応無く自由を縛り、冷たい深海の奥へと引きずり込もうと鎌首をもたげる。
 良く言えば扇動、悪く言えば洗脳。
 一方的に突きつけられる情報の奔流は、その全てが一つの視点を以てのみでしか語られていない。
 明らかな視点漏れを感じずには居られないが、何を基準に其の善悪を問うべきか。
 結局のところ、明確な判断を下すのは個々人の信念に拠るところが大きい。
 絶対的な正義など、存在しないのだから。
「先生! ……あのっ……報酬はいりません。依頼でなく個人として参加したいのですが……」
 そんな異様な空気の中、泳ぐように氷月 はくあ(ja0811)が進み出た。
 彼女は、どうしても納得できなかったのだ。
 エレオノーレ(jz0046)が行方不明となった作戦に参加していた事に対する責任を感じていたのだろうか。
 無事ではすまないかもしれない、そう感じながらも杠 虎鉄(jz0072)に意見せずには居られなかった。
 このまま流されてずるずると進み、後悔する未来しか視えないのならば。
「氷月、そいつはどう言う意味だ?」
 教師のどこか威圧的な視線が注がれる。
 気がつけば、周りをベテランの撃退士達に囲まれていた。
 だが、此処で気圧されたら駄目だ。
 はくあは自身を必死に奮い立たせながら、言葉を紡いでいく。
「解らないんです……、だから今はただのわたしとして……」
 が、上手く言い表す事が出来ない。
 それでも伝えたい何かがあるのだ。
 しかし、精一杯の想いを込めて絞り出した言葉は、呆気なく切り捨てられた。
「そうか。だったらここから先、お前を連れていく訳にはいかないな。そんな中途半端じゃ足手纏いだ。悪いが、余計な事が出来ないように作戦終了まで拘束させて貰うぜ」
 断るならば力尽くででも、と言う勢いで撃退士達が迫る。
 たった一人の少女に、だ。
 それだけ繊細さが要求される作戦とも言え、個人の勝手な行動でひっくり返りかねない脆さがあるのだ。
 だとしても、其れを許容できるかどうかは、別問題である。
 そうして、容認出来ない者は他にもいた。
「先生、やめてや! 仲間やんか! なんでそんな事するんや?」
 亀山 淳紅(ja2261)である。
 小さな身体ではくあと教師達の間に割り込み、懸命に腕を広げてその背に少女を庇う。
「お前も作戦に異議があるんだな? なら置いていくぜ。仲間の足を引っ張るような奴は要らないんでな」
 しかし、淳紅の声は届かない。
 覚悟を決めた者に対し、言葉は無力だ。
「もしこの依頼が成功してしもたら、エルちゃんも、……先生達までいなくなるかもしれん。それだけは、絶対に、嫌!!」
 淳紅の絶叫が室内に木霊する。
 彼とはくあが教師達によって無力化されていく様を、友人達は歯を食いしばって見守る事しか出来なかった。
 特に、二人の共通の友人である虎綱・ガーフィールド(ja3547)の心情は複雑だった。
 今、此処で出て行けば、同じ末路を辿るのは目に見えている。
 そうなったら、それこそ自分達の望む未来は絶たれてしまう。
 力を温存せねばならないのだ。
 それこそ、戦場に立つ事すら出来なくなってしまった二人の為にも。
 その気持ちはルーネ(ja3012)も同じだ。
 心の中で謝罪を重ねながら、喉元まで出そうになる制止の言葉を必死に飲み込む。
 今はその時では無い、そう自分に言い聞かせながら。
 そうした大人達の蛮行に冷ややかな一瞥を投げながら、アイリス・ルナクルス(ja1078)は嫌悪する。
「(……この男達……自分は正義で……悪即斬と……? ……反吐が出ますね)」
 その上で、心にエルの救助を固く誓うのだった。
 本来ならば依頼に参加した以上は、全体としての成功を目指すのが常道である。
 しかし、どうしても今回の作戦に関しては議論の余地が残されているように感じられ、そのまま飲み込む事ができなかったのだ。
 学園自体は追加調査の必要性を虎鉄達に通達しており、討伐許可を与えてはいない。
 それを無視しての、独断専行である。
 エルを知る者として、彼女の友として、護ってやらねばならない。
 そして、その想いは一度でもエルと触れた事のある者達にとって共通するものでもあった。
 エル救助派の中には、彼女を助ける為ならば討伐を強行する者達に対して刃を向ける事すら辞さない、という覚悟を決めた者すらも存在した。
 表面上でも、水面下でも、場の空気は蟠っていた。
 虎鉄達が頑なであればある程に、反発する者達も強行になる。
 内紛の種が、撃退士達の間に燻っていた。
 憤怒の紅に瞳を染める恋人を見つめながら、アトリアーナ(ja1403)は静かにリボンを結び直す。
 恋人とは対照的に感情を押し殺して、冷静であるように。
 そうして、今にも爆発しそうなアイリスの頭をそっと撫でた。
 アイリスが刃ならば、アトリアーナはその鞘なのだろう。
 愛する者に触れられながら僅かに落ち着きを取り戻したアイリスは、自分達の戦いに集中すべく作戦を考えるのだった。
 張り詰めた空気の中、意識を失い拘束された二人の横をすり抜けるように、丁嵐 桜(ja6549)も前に出た。
 彼女も無駄かもしれないと思いつつも、行動に移さずには居られない一人だ。
「えへへ……、えっと、杠先生。ヴァニタス戦の資料と、悪魔討伐の記録のために戦闘を録画してもいいですか?」
 少し、後ろめたいものを感じさせるような笑顔と口調で、撮影の許可を取る。
 其の提案は、彼女にとって別な意味を持つ。
 撮影した資料を学園側に提出し、エルの嫌疑を晴らす為の証拠として必要なモノとして位置づけていた。
 桜もまた、エレオノーレを救助しようとする側に立っていた。
 だが、少女のはっきりと表情に表れやすい態度は、教師として生徒と接する事が多い虎鉄にとって、不穏と感じさせるには充分過ぎた。
 只でさえ作戦前に妙な提案がなされ、ぴりぴりとした空気なのだ。
 本来、生死を賭けて討伐に当たる戦場に於いて、撮影を行う等と言う行動は不必要なものだ。
 しかもヴァニタスと悪魔が確認されているような現状で、敢えて其れを行うと言う事は、何かしらの裏があると勘ぐられるには充分だ。
「そうか、お前もそっち側なんだな。おい、こいつも拘束だ。他にも言いたい事がある奴が居るなら、今の内に前に出ろ!」
 虎鉄の怒号が室内に響く。
 その隣では、桜が弁明する間も無く叩き伏せられていた。
「俺だって本当はこんな事をやりたかぁねぇ。だがな、戦場での不和は死に繋がる。俺はお前らを死なせるつもりは無い! それだけは頭の隅に叩き込んでおけ」
 教師の叱責を、撃退士達はただ黙って受け入れた。
 桜が縛られる様を見ながら、ユイ・J・オルフェウス(ja5137)は、そっと上着の袖口に小型のカメラを仕込んだ。
 まるで、桜の意思を継ぐかのように。
「……守ってくれたと思ってるです。そんな優しい人、見捨てられない、です」
 以前の依頼で、ユイはエルに助けられた、そう思っていた。
 だからこそ、今度は自分が頑張る番なのだ、と。
 エルを助ける為に、内気な少女は行動に出るのだった。

 出発間際でごたつく室内で、ユウ(ja0591)はその人物を見つけた。
 茶房アネモネの店主、森野百合である。
「……はろー、ユリ。久しぶり」
 そう言って、ユウは懐から見覚えのあるリボンを取り出す。
 其れは、二人に共通する友人――はぐれ悪魔が肌身離さず愛用していた大切な物であった。
 エルが失踪した戦場に残されていたこのリボンを、ユウが拾ったのだ。
 信用出来る人間が少ないこのメンバーの中で、もしかしたらこの人物ならば協力してくれるかもしれない。
 ユウは一縷の望みを賭けて、拘束された三人と同じ道を辿る事も厭わず、エル救助への協力要請を打診したのだ。
「あら……、確か、バナオレティーの……。そうか、貴女もなのね? いいわ、協力しましょ。愛する二人のハジメテの共同作業ね!」
 しかして、ユウの覚悟もなんのその、思いの外あっさりと許可が出る。
 こうして二人は、密かに共同戦線を立てたのだった。

「……おい、ちょっといいか? もしかしたら、裏切りが出るかもしれねぇ。ダアトはシンパシーを使ってそれとなく内情を探ってくれ。他の奴もしっかりと見張りを頼むぜ」
 出立前のごたごたに、虎鉄は不信感を抱いた。
 今更、全メンバーを一人一人吟味してから出立するような時間は無い。
 かと言って、このまま疑念を残したまま戦地で戦い続けるのも危険だ。
 苦肉の策として最初期に賛同を示した熟練撃退士達に、後から集まったメンバーの調査を指示する。
「全ては、この世界を人の手に取り戻す為に。……よし、行くか」
 己の信じる正義を貫き人の世に平和の灯を点すべく、虎鉄達は戦場への途についた。

●粛清
「正面から6、右から3、左から4来ているぞ。俺は右のからやる。ぬかるなよ?」
 斥候を買ってでたリョウ(ja0563)が高所から敵の進軍をカーディス=キャットフィールド(ja7927)に伝える。
 受け取った敵位置をカーディスが地上に待機している仲間達と共有化し、効率よく人数配置を行っていく。
 物量差で負けているであろう敵に対抗する為、過去にアルラウネと戦闘経験を持つ影野 恭弥(ja0018)達の情報提供の元、非常に効率のいい陣形が敷かれ戦闘が進んでいた。
 大城・博志(ja0179)、鈴蘭(ja5235)、アスハ=タツヒラ(ja8432)達インフィルトレイターとダアトの編成による遠距離弾幕陣が三方向に分かれ、接近する敵に手傷を与える。
 銃弾と魔法の弾幕を乗り越えてきたアルラウネ達を、リョウが背後から攪乱し、更に其処へ雪室 チルル(ja0220)、東城 夜刀彦(ja6047)ら前衛陣が突撃し、トドメを刺していく。
「雑魚を薙ぎ払うぞ! 巻き込まれるなよ?」
 月詠 神削(ja5265)の合図と共に避けた仲間達が居た場所を、黒い衝撃波が駆け抜け、進路上に群がるアルラウネを薙ぎ払う。
 戦場を吹き抜ける一陣の旋風となった撃退士達の一行は、敵が少数の内に狩り倒す事で人数差による優勢を維持し、比較的短時間で初期侵入位置を制圧する事に成功したのだった。
 連携や経験が生きた、というのも勿論あるが、撃退士一人一人の技術的な成長も一つの要因としてあるのだろう。
 そんな生徒達の成長を頼もしく思う反面、虎鉄は憂えていた。
 今回の作戦は、参加した撃退士達それぞれにこの戦場に託す願いがあり、またそれ故にスタンスが異なる勢力が拮抗している。
 最大勢力は虎鉄等、熟練撃退士を擁する討伐派の二十三名だが、この作戦に参加している二十四名の新入生達のうち、十九名はエレオノーレの討伐に懐疑的であり、それを救出せんと企むか、企む者達に対して協力的であった。
 淡々と任務をこなしているリョウだったが、
「(瀕死の少女を殺して良しとする。ソレこそ『悪魔』の所業では無いのか?)」
 との念を抱いている。いざという時には教師達に対して一計を案じようとしていた。
「(エレオノーレさんが選んだのなら僕は敵対しかできないけれど……囚われているなら助けたい。杠先生は本当に彼女が裏切ったと思っているのかな? ただ悪魔を許せない?)」
 紫ノ宮莉音(ja6473)は疑問に思う。
「(誰一人死なせはしない。エルもほかの仲間も絶対に)」
 柊 夜鈴(ja1014)は思いを固める。
 一方、神楽坂 紫苑(ja0526)、アスハ=タツヒラ(ja8432)は中立的な立場だ。
「幾重にも重なる思惑……生憎と興味はないがな」
 場の様子を見つつアスハはそう呟いた。彼自信にとっては関わりないことだった。故に、邪魔はしないが、干渉もしない。
「(激戦だと言うのに、内輪もめは厄介だ)」
 紫苑はというと仲間同士で争う事に危機感を覚えている。だからこそ中立であった。
 そんな中、初動で上々の戦果を得、沸き立つ撃退士達の間を縫って、熟練の撃退士達が虎鉄の元に駆け寄る。
 出立前に指示された調査の結果が纏まったのだ。
 告げられた現実に、虎鉄は愕然とした。
 あまりにも多数のエル救助派が紛れ込んでいたからだ。
 虎鉄達には時間が残されていなかった。
 戦地に降り立った以上、このまま連れて行くしかない。
 かといって裏を掻かれて悪魔をかっ攫われてしまえば、それこそ命を賭して戦う事の意味すら喪失してしまう。
「森野は……逃げたか。まぁいい、一人では何も出来ねぇだろう。残りの救助派を此処に集めろ。……粛清だ」
 故に、虎鉄は非情な決断を下さざるを得なかった。
 エル救助急進派とも言えるべき、主要な人物達を呼び集める。
 集められたユウ、アイリス、アトリアーナ、ひなこ、ユイを見せしめのように並ばせ、周囲を熟練撃退士達で囲み、叱責する。
「天魔はどこまで行こうが俺達の敵だ。裏切ったと判断される以上、討つしかねぇ。お前らは何だ? ……人間だろうが! 撃退士だろうが! 人を護らず悪魔を護ってどうする!」
 虎鉄は言う。撃退士は人類最後の希望、現代を生きる英雄である。
 天魔は人の世の平和を乱し、死と終焉のみを振りまく災禍である。
 その守護者たる撃退士が天魔を討たねば、待っているのは約束された滅びでしかない。
 だが、虎鉄の怒号に対し、ひなこ達は抗議する。
 エルはそれでも、天魔を裏切り人類に味方した希有な存在なのだ。
 一緒に過ごし、戦ったからこそ、彼女が裏切り、悪魔側についた等とは信じがたい、と。
 しかし、虎鉄はそれを非理論的だと断じ、どこまでも感情論としてしか受け取らなかった。
 学園からの通達すら無視する男である。
 互いの主張はどこまでも平行線を行くばかりだ。
 どう足掻こうとも今回の作戦の指揮者は討伐派である虎鉄であり、うち二十名は虎鉄に同調し決起した熟練撃退士で固められ、さらに新入生二名が討伐に賛同している事から討伐派が過半数近くを占めているのだ。
 しかし、虎鉄としても潜伏的に討伐に反対する者が多数いる中では、実際的な問題としてあまり無茶をする訳にもいかなかった。
 と、すればスケープゴートを立て、救助派を捨て駒戦力として扱うのが一番合理的であると彼は判断した。
 アイリス、アトリアーナは前衛として壁にできる。
 ひなこは回復役として残してもいい。
 消去法で行けば、ダアトのユウかユイを生贄とするのが安定するのであろう。
 見せしめの羊は決まった。
「お前らは先頭に立って雑魚の相手をしろ。他の奴らはこいつらに対する一切の支援を禁止する。側面と背後の敵に集中しろ、いいな?」
 その発言に対して莉音や紫苑が前線維持の観点から拒絶を示し、あくまでも戦線の維持に努める、と意見を表明するがそれらを一喝。
 ユウの腕を引っ張ると、その場に跪かせ、刀を抜いて力の限り叫ぶ。
「いいか、こいつらは俺達を裏切って仲間の命の危機に立たせようとしている! 戦場で味方の足を引っ張るって事はそういう事だ。でもな、こんな奴らでも俺の生徒だ。見捨てたりはしねぇ」
 だが、と付け加え、刀を大上段に振りかぶる。
「裏切りの授業料だけはきっちり払ってもらうぜ!」
 ユウは覚悟した。
 この人数差ではどうする事もできない。
 後は、奇跡を信じて仲間達に想いを託すことしかできないのだ。
 しかし、刀の切っ先が振り下ろされるより速く、ユウの身体が忽然とその場から消えた。
「えっ?」
 きょとん、としたユウが状況を確認するよりも早く耳元で声高に犯行宣言が響くのだった。
「うはははは、この美少女はあたしが頂いた! さぁ、いざ征かん、一夏のアバンチュール! 禁じられた二人の愛の逃避行へ! 諸君、さらばだ、さらだばー!」
 同盟を組む百合がユウの危急に駆けつけ、かっ攫ったのだ。
 あまりにも場違いな姦しさと大胆さに、暫し呆然とする虎鉄達討伐派の面々。
 だが、所詮はたかが二人である。
 何か大それた事が出来るような戦力でも無し、気に病むこともないだろう、と判断を下し騒然とする戦列を整える。
 そうして、救助派を矢面に立たせると、ゆっくりと進軍を再開するのだった。

●不和
「皆、頑張って。此処であたし達が倒れたら、本当にエルちゃんが殺されちゃう……。最後まで、諦めないで」
 ひなこのヒールが、アイリスとアトリアーナの傷を塞いでいく。
 しかし両者とも疲労が濃く、顔色にも表れていた。
 狩っても、狩っても、狩っても、湯水の如く湧き出てくるアルラウネの攻勢を、たった4名で受けているのだ。
 教師陣が黙認している事もあり、莉音と紫苑が回復支援をしてはくれているが、精神的にきついものがある。
 他の仲間達は討伐派の睨みによって表だった支援をする事も出来ず、側面と背後の敵に相対しながら、たまに誤射に見せかけた銃弾や魔法を敵へと撃つ程度で、当てにはできない。
「……リアさん、……大丈夫……ですか?」
「ん、ボクは大丈夫なの。……ルナは?」
「……リアさんが……、背中にいるから……」
 アイリスとアトリアーナは互いに背中を合わせ、かばい合いながら戦うが、到底凌ぎきれる量ではない。
 既に二人の足元には、かなりの数のアルラウネの残骸が山を築いているが、それでも尽きる気配が無い。
 結局、先に尽きたのは回復手段であった。
 其れが切欠となり、二人は敵の波へと飲まれていく。
「……リア、さん」
「ルナ……」
 そっと寄り添うように、血に濡れた戦場で二輪の花が散っていった。
「よし、今だ! 囲んで殲滅しろ!」
 二人が倒れたのを合図に、いつの間にか鶴翼の陣を敷いていたベテラン撃退士達が囮に食らいついたアルラウネを包囲し、殲滅していく。
 まるで今までの劣勢が嘘のように、戦況を盛り返す。
 撃退士達総員による一斉攻勢は呆気ない程に周辺の敵を飲み込み、駆逐したのだった。
 救助派が囮となって一箇所に敵を固めていた事が大きいと言えるだろう。
 ぐったりとしたアイリスとアトリアーナを回収し、安全な場所へと運ばせる。
「……割と頑張ったじゃねぇか。起きたら褒めてやんねぇとな。これで精神的に成長したらいい撃退士に育つぜ、あいつら」
 褒めるべき箇所は褒めつつも、それでも救助派を許そうとはしない。
 回復手段を失ったひなこを、尚も前線に立たせ、ユイと共に進軍させる。
 そうして、程なくしてひなこもユイも、物量差の前に沈んでいくのだった。

「……ユリ、私いつまでこのまま?」
 真横に流れる風景を眺めながら、百合の小脇に抱えられたままのユウが尋ねた。
「いや、ほら、そこはかとなく二の腕に当たる柔らかいものがあたしのやる気をだな……、いや、なんでもない」
 百合はユウの問いにびくりと反応しながらも、決して放そうとしないのである。
 結局ユウは、ダアトの自分が並んで走るよりも、道を知っているらしい鬼道忍軍の百合が抱えて走った方が早く現場に着くのだろう、と納得する事にした。
 今、何よりも優先すべきなのは虎鉄達を出し抜き、エルを奪取する事にあるのだから。

「皆さんに無理を承知でお願いがあります!」
 いよいよヴァニタスと悪魔が居ると思われる建物付近までの制圧を完了し、突入を慣行しようかという時、ルーネが両腕を広げて進軍を遮り切り出した。
 その様子を、虎鉄達はまたか、といった様子で見やりながら言葉を促す。
「エレオノーレ嬢を即時討伐ではなく、捕縛にしては貰えませんか?」
 ルーネもまた、エル失踪時の作戦に参加していた一人だ。
 彼女の担当した戦域は、結局敵を討ちきれず、何人かの味方が倒れていた。
「それでも私は、私達は生きて帰ってきました。いくらひよっこでも敵対した以上、相手は殺すはずです」
 故に、ルーネは思う。
「もしも彼女が敵のスパイだったとして、その上で見逃してくれたと言うのなら、私はその真意が知りたいんです。憶測ではなく、彼女自身の言葉で」
 だが、其れは論点のすり替えに過ぎない、と虎鉄は判断した。
 彼の作戦時、敵軍を指揮していたと思われるのはクローディアという悪魔だ。
 仮に見逃されたとするならば、その時のディアボロの創造主たるクローディアの意思に他ならない。
 また、其れがエルの意思であった場合、尚更話はおかしな事になる。
 ましてや其れを確認する為だけに、敵対している可能性のあるエルを捕縛する等という考えは、自殺するに等しい危険極まりない選択だと。
 虎鉄達討伐派には容認出来るような話ではない。
「此処まで来て、これか。敵将目前だってぇのにな。おい、拘束しろ。後、他にも言いたい事がある奴は今のうちに言え。ここから先は取り返しがつかねぇぜ?」
 やはりルーネの言葉も届かず、手練れ達の手によって意識を奪われていく。
 その様子に、思う所のあった面々が堪え切れぬように口を開いた。
「あいつらを見て何も感じないのか。あんたらと違って大した力も無いのに命をかけて仲間を救おうとしている」
 恭弥は問いかけた。
「仲間? 違うな。俺達が討ちに行くのは人類の敵、悪魔だ。前提をはき違えるなよ」
 冷たく突き放す虎鉄に、それでも尚、恭弥は食い下がった。
「大人なら教師なら、たまにはガキ共のことを信じてやれよ、願いを聞いてやれよ」
 しかし、聞き入れようとはしない。
「お前こそ冷静になるんだな、影野。いつものお前なら、もっと適切な判断が出来ているはずだ。情に流されるなよ」
 それ以上の発言を許さぬ迫力で虎鉄は押さえつけた。
 それに博志が疑問に思っていた事を告げた。
「疑念が確定になる前の状況で、天魔でも一応は学園の一員という態の娘をこうするのは、相手が人間の場合とかに適用されかねん類似案件に対する前例になるが、その辺の覚悟は出来ているのか?」
 だが、その問いも虎鉄は切り捨てた。
「事は一刻を争う。日和った結果、取り返しのつかねぇ事態になる可能性もある。逆に問うが、様子見をした挙げ句、俺の言う通りだった場合に責任を取れるのか?」
 疑わしきは罰せず、という理念はないようだ。まったく揺るぎがない。
 この男には何を言っても無駄だ、と判断せざるを得ない。博志の言葉も届かなかった。
 そうして最後に、くノ一姿の夜刀彦がおずおずと前に出る。
「私は故郷も家族も天魔に滅ぼされた……、その事は一生忘れません。けれど、先生。保護された時、幼い私も一時敵ではないかと疑われて殺されかけました」
 一呼吸置き、教師を真っ直ぐ見つめながら問いかける。
「先生……、疑われた者は殺されなくてはいけないの……?」
 夜刀彦の過去は、多分特殊な例なのだろう、と虎鉄は判断した。
 通常の精神状態と判断能力を持つ人間ならば、そんな事を考えつく筈が無いと。
 ましてや、夜刀彦は人間である。
 今回の事例とは、また違った前提だと虎鉄は言う。
「東城、お前はまだ若い。だからこそ、情に流されて全てを綯い交ぜにして考えちまう事もあるんだろう。だがな、俺達がブレるって事はそれだけ危険な目に遭う誰かが増えるって事だ。強くなれ、精神的に、な」
 諭そうとする虎鉄に夜刀彦は次の問いを投げかけた。
「なら先生、何故『遅れては大事に至る』と思うんですか?」
 教師の過去に、自分と似たものを感じたのだろうか。
 夜刀彦は別方面から攻めた。
「まぁ、歳食ってる分、お前らよりはいろんな事を経験してっからな。無事に帰れたら、ゆっくり話してやるよ」
 代わりに虎鉄は言った。制圧しているとは言え、敵地のど真ん中だ。長々と世間話をするような時間的余裕はないと。
 諸々のごたごたで、既に作戦開始から三時間以上経過していたのも事実ではある。
 虎鉄は会話はここまでだ、と言わんばかりに打ち切ると、作戦の再開を促す。
 夜刀彦もそれ以上は質問できず、隊列に戻っていった。
 空は鮮やかな緋から、徐々に柔らかな紫へと其の表情を変えつつある。
 完全に暗くなる前に決着をつけねば、地の利の無い撃退士達は不利だ。
 いよいよ本陣への突入が始まろうとしていた。

「……ユリ、私達はいつまで此処で待機?」
 エルが居ると思われる建物を見晴らせる位置にある茂みに潜みながら、ユウは背後で怪しい動きを見せる百合に対し、問いかけた。
「ユウちゃんとなら、何時までも! と、言うのは半分冗談で、教師達がヴァニタスと接触してから、かな? 壁ぶっ壊してエルちゃん攫ってさようなら、ね」
 どうやら、漁夫の利を得る作戦らしい。
 エルだけに。
「……私は何をすればいい?」
 たった二人しかいないのだ。
 僅かに作戦に対する不安を示すユウに、百合は押し倒したい衝動を堪えつつ、概要を話す。
「かっ攫う事自体は、足が速いあたしがやるわ。ユウちゃんは此処で待機して、撤退を援護して。もしかしたらエルちゃん抱えたまま学園まで戻る事になるから、戦闘は任せるわ。あ、バナオレ飲む?」
「……飲む!」
 何故か所持していたバナナオレを取り出した途端、食いつくユウを至福の表情で眺めながら、百合は柔らかな少女の髪の匂いを堪能するのだった。
 なんだかんだで仲の良い即席凸凹コンビである。

●崩壊
「虎鉄、虎鉄、リリーに素敵な提案があるのだ♪」
 今、まさに突入せんとする撃退士達を、鈴蘭が考えがあると呼び止める。
「ヴァニタスに対してリリーが色仕掛けを敢行して、屋敷外まで誘引するのだ。その後で他の皆が奇襲を仕掛けるといいのだよー♪」
 鈴蘭の提唱する其れを、しかし虎鉄は否定した。
 第一の前提条件として、ヴァニタスが色仕掛けに引っかかるという保証がない。
 本来、天魔は人間を家畜のように見なしている者が多いと言う。
 そんな輩が、色仕掛けなどという不確かなものに引っかかるとは、到底思えなかったのだ。
 また、仮に引っかかる事を前提として考えたとしても、たった一人で囮として臨むと言う事は其れだけ命の危険も伴う。曲がりなりにも教師としては承認できるようなものではなかった。
 鈴蘭の案は作戦としては破綻しているとされ、採用される事はなく、却下される。
 従来通り包囲後、総力を以てヴァニタスに当たり、隙を見て悪魔を強襲。
 討伐後、順次撤退する作戦が行われる事となった。
 だが、敵も馬鹿ではない。
 撃退士達が攻めてきている事は既に把握されており、尚且つ30名を超す大人数で本陣へと迫っているのだ。
 感付かれない方が無理というものである。
 エルにつけられている発信器の示す位置が動かなかった、という事もあり油断していたのもある。
 撃退士達の内紛で時間をかけすぎた、それも理由として挙げられる。
 此処まで順調な戦果を上げており、且つ仲間の数も多いという傲慢もあったかもしれない。
 其れらを差し引いたとしても、敵に奇襲を許したのは、撃退士達にとって大きな痛手となった。
 側面から突如現れた其れは、ただの一撃でリョウを沈めた。
 消耗していた、というのもあるが其れを鑑みても彼我の力量差は歴然である。
 驚くべき箇所は其れだけでは無い。
 話としては聞いてはいたが、彼のヴァニタスは本当に巨大なアライグマの如き姿だった。
 極限までデフォルメ化された愛くるしい容姿は、どこまでもお子様・女性受けしそうなファンシーさであった。
 チルルが呟いた。
「でっかいタヌk……アライグマ?」
 しかしあくまでも外見だけの話であり、中身はその限りではない。
「……わいのぱふぱふタイムを邪魔すんなやぁあああああ!」
 謎の咆哮。
 固まる撃退士達。
 荒ぶるアライグマ。
 気がつけば、身の丈に合わぬ俊敏さで莉音への間合いを詰めていた。
「危ない、莉音君!」
 咄嗟に庇った夜鈴が強烈なベアナックルを食らい、遥か後方へと吹っ飛んで動かなくなった。
 近くにいたカーディスが偃月刀を手に莉音の救援に当るが、思いの外堅い毛皮に阻まれ、大した傷をつける事もできない。
「我々だけでは歯が立たん! 隙を作らねば近づくことすら危ういぞ!」
 孤立する仲間に虎綱が注意を促すが、遅い。
「……雄は去ねや!」
 撃退士達の集中砲火を受けつつも何の其の。
 愛くるしい表情からは想像も出来ない程の凶悪なクマパンチがカーディスに炸裂。
 瞬く間にKOだ。
 戦列を整える間も無く、完全に主導権を握られてしまった形である。

「よっし、ヴァニタスが本隊に食いついたわ! じゃあお姉さん、ちょっくら拉致ってくるから、支援よろしくなり〜」
 ヴァニタスと撃退士本隊との開戦を確認した百合は、茂みから飛び出し建物の裏手を目指す。
「……ん、いってらっしゃい」
 いよいよ巡ってきた千載一遇のチャンスに、与えられたバナナオレ成分を補給しながら、ゆる〜くユウが応えた。
 その声援を受けた百合は、数分と経たずにエルの奪取に成功し、茂みへと帰還する。

 だが、エルはいくら揺すっても起きる様子は無く、見たところ消耗も激しい為、一刻も早い治療を要する事が解る。
「ねぇ、ユウちゃん。こんなチャンス、滅多に無いわ。……ちょっとだけイタズラしてっていい? 先っぽだけ、先っぽだけだから!」
 何の先っぽであろうか。
「……ダメ。早く学園に戻るべき」
 即答に百合は泣いた。
「仕方無い。ならば、せめてこの腕に柔らかな感触を!」
 そう叫ぶと、右脇にユウを、左脇にエルを抱え立ち上がる。
「……えっ」
 まさかの事態に戸惑うユウに、百合は一言。
「いや、ほら、左右の重量バランス的に! じゃ、戦闘は任せたぜ! ムテキ要塞百合おねーさん、出航ー!」
 そんなこんなで、ユウ達は学園へと向かって帰還の途につくのだった。

「(僕は誰も護れなかったのかな……)」
「(某の力、及ばなかったで御座るか……)」
 莉音、虎綱が倒れ、撃退士達はますます戦況不利となる。
「悪魔の眷属……、災禍をもたらす存在。赦すわけにはいかないですね」
 あからさまな憎悪を表し、殺意を込めた一撃を見舞う機嶋 結(ja0725)に、アライグマが肉薄する。
 予測される衝撃に耐えようと結は身構えたが、そんなものは来なかった。
 代わりに、小さな胸がふにふにと揉まれる。
「……馬鹿にしているのですか?」
 余りの暴挙に別の意味で震えながら、結が反撃する。
 しかし、当ること無く易々と躱される。
「あかんな、おっぱいランクEやで。あと10年、いや、5年後に期待やな」
 当のアライグマは飄々とそんな事を宣う始末だ。
「さあ、あたいが相手よ! 覚悟しろ!」
 ならば、と隙だらけのように見えるアライグマに、チルルが背後から特攻を仕掛ける。
 だが、渾身の一撃は、ぷにぷにとした肉球によって阻まれた。
 思いの外、俊敏だ。
「なんや、惜しいな。このおっぱいはD−や。今後に期待やで」
 そうして、お約束の如くすれ違った瞬間に腕を掴み、ふにふにとチルルの胸を堪能するのだった。
「こらー! はーなーせー!」
 放せと言われて放す痴漢などいない。
 そこで放してしまうようなら、最初からセクハラなんてしないのだ。
 チルルの貞操的な意味でのピンチに、革帯 暴食(ja7850)が天魔と勘違いしそうな程に不気味な光纏を顕現させながら、ヴァニタスに迫る。
「よぉ坊や、うちに喰われる気はないかいッ?」
 しかし、既に噛みついていた。
 せめて噛む前に言ってほしいものである。
 間髪入れず、顔に似合わずたわわに育った胸を揺らしながら、鈴蘭も抱きついた。
「これならどうなのだー? リリーがいい子いい子してあげるのだよー♪」
 あざとい。
「おお、これは見事なぼいんちゃん! って、何や君、わいのお仲間かいな!? い、いや、せやけどおっぱいに食わず嫌いはあかんな。わいの名が廃る。このぽちの名にかけてぱふぱふや!」
 そうして、唐突に始まるヴァニタスによるハーレムタイム。
 がじがじと尾っぽを囓る暴食を気に留める様子も無く、両腕を広げて、鈴蘭、暴食のたわわに実ったおっぱいをぽふぽふと堪能。
 何と言う緊張感の無さだろうか。
 しかし、当人達以外は気が気では無い。
 現有戦力でヴァニタスに歯が立たないのは解った。
 制圧したこの場所に、アルラウネ達が結集しつつあるのも解っている。
 今はこの好機を活かして、如何に早期に目標を達成し、撤退するかが重要であった。
 だが、発信器の位置を確認して虎鉄達は驚愕する。
 移動しているのだ、学園へと帰還する為の方面へと。
「やられた、あいつらに裏を掻かれた! おい、鈴蘭、革帯、此処は任せた! 折を見て撤退しろ! 俺達は悪魔を追うぞ!」
 虎鉄は負傷した仲間達を集めて、悪魔追撃隊を編成し直す。
 その様子を横目に見ながら、アスハは作戦の失敗を悟った。
 空は既に月が昇り始めようかという頃合い。
「……雲行きが怪しいな。僕は此処で離脱させて頂こうか」
 誰にとも無く呟くと一人隊列を離脱し、撤退を開始。
 宵闇の中へと溶け消えていった。

●壊走
 闇の色が濃く迫る放棄集落を、矢となって駆け抜ける撃退士一行。
 確保していたはずの退路には、ちらほらと新手のアルラウネの姿が確認できる。
 それらを轢き殺すように薙ぎ払いながら、結達は先を急いだ。
 最初から、信用なんてしていなかった。
「(同行者を裏切り、害悪を振り撒く。赦し難い方々ですね……)」
 同じ人間でありながら、そう言った行動に出る者達の心理を理解する事は、結には出来ない。
 軋む手足が悪魔への憎悪を、憤怒を忘れるなと心に響き続けるのだ。
 其れは自分自身をも殺し、ただ討つ為だけの道具――、即ち絶魔の剣で在れと少女の身にはあまりにも過酷な運命を強いる。
 だが、結には悲壮なまでの血濡れた道を歩む以外の選択肢を知る術はない。
 己の中に息づく正義と信ずるモノに全てを捧げ、まさしく秋霜烈日の如き苛烈さを良しとする。
 其の先に待つものを、考えようともせず、只がむしゃらに。
 そんな大多数を占める討伐派に囲まれながら、神削は複雑な心境だ。
 今、出来る事は何も無い。
 たった数名でこの人数差を覆してしてやれる事など、百合達が学園まで逃げ切る為に少しでも足止めして時間を作ってやる事くらいだろう。
 討伐派の心情も理解できるし、救助派の想いも共感できる。
 しかし、人殺しである自分には、それぞれに対して何か意見を出来るような資格は存在しないのだ、と諦めていた。
 神削には、不可抗力とは言え、シュトラッサーに嵌められその手で少女を殺めてしまった過去がある。
 その時の感触が今だ彼を苛み、何時終わるとも知れぬ贖罪を求めていた。
 彼自身には責められるべき点は、ないのだ。
 どれほど人を救おうとも、どれほど天魔を討とうとも、それでも救われる事の無い心の痛みが、強迫観念の様に責め立て続ける。
 彼が、何時の日か解放される時が来るとすれば、其れは――、
「伏せろぉぉぉぉぉぉ!」
 誰かの絶叫が響いた次の瞬間、赤黒い魔力の奔流が撃退士達を飲み込み、爆散していた。
 静寂を破る轟音と閃光。
 何が起きたのか理解する間も無く、散らされていく儚さ。
 濛々と舞い上がる砂埃が、風によって払われる。
 澄み渡った視界の先には、掛け値無しの絶望と惨状が待ち構えていた。
 倒れ伏す壁となった熟練撃退士数名と、博志、紫苑、神削。
 それらを踏みにじりながら立ち塞がる二人の少女の姿。
「……悪魔、か」
 想定しうる状況の中でも、最悪のもの、と言っていい。
 撃退士達の侵攻を感知した時点で、ヴァニタスが呼んだであろう増援。
 悪魔クローディアと、リルティの姿が其処に在った。
「やぁ、よく来たね。折角来たんだ、そんなに焦って帰る事もないだろ? ボクもお持て成しさせて貰うよ」
「あんた達、良くもやってくれたわね。……全員、ぶっ殺す。生きて帰れるなんて思わない事ね」
 武器を構え、戦闘態勢に入る悪魔二体を前に、最早激突は避けられない。
 ヴァニタス一体にすら歯が立たなかったのだ。
 其れは詰まるところ、死を意味するに等しい。
 圧倒的なまでの戦力差である。
 撃退士達の殲滅は時間の問題であると言えた。

「右舷弾幕薄いよ、何やってんのぉ!」
 縦横無尽にぬめぬめと動き回りながら、百合が叫ぶ。
 小脇に抱えられたままのユウが、何とか魔法を撃ちながら、答えた。
「……ユリ、ちょっとこの態勢キモチワルイ」
 流石にずっと横倒しは辛い。
 と、言うか色々無理がある。
 仕方無い、とユウのおっぱいを泣く泣く諦め、百合は下ろした。
 此処までくれば、逃げ切ったも同然であると判断したのだ。
 百合はエルをおんぶすると、ユウと並んで歩き出した。
 しかし、そう簡単にいくほど甘い世界ではなかったのだ。
「こんばんわ、いい夜ね」
 進み行く道の先に、大鎌を携えた少女が一人、待ち構えていた。
 ユウはその少女に見覚えがあった。
 先頃参加した作戦の資料に載せられていた写真で見たその姿。
 クローディアとの愛を取り、人の身を捨て、ヴァニタスとなった少女。
「……アリス」
 どう足掻いても二人だけで勝てる相手ではない。
 しかし、彼女を乗り越えないと学園へは戻れない。
 背後からは追ってきているであろう討伐派。
 側面には今だ潜んでいるかもしれないアルラウネの群れ。
 どうしようも無い四面楚歌が、其処には在った。

「このもっちりとして、わいの肉球に吸い付くような触感、リリーちゃんのおっぱいランクはB やな!」
「ぽちちゃん、くすぐったいのだー♪」
 所変わってハーレム会場。
「マニアックな中にも、しっかりと存在を主張する魅惑の下乳に、程よい弾力と張り……、お口お化けのねーちゃんのおっぱいランクはB−やで!」
「ふがふが」
 おっぱい品評会と即席で題された謎の触れ合いアライグマコーナーは、死地に立つ他戦場とは比べものにならない程に和気藹々としていた。
「あ、あかんて、お口お化けのねーちゃん! そんな甘噛みされたら、わいの中のケダモノが覚醒めてしまうで?」
 どうしてこうなった。
 仕様です、ご理解頂きますようよろしくお願い致します。
 それにしてもこのアライグマ、ノリノリである。
 が、其れも此処までだ。
「うげぇ! ご主人来てしもた……。あかんわ、怒っとるで……。ぼいんのねーちゃん達、ここらでさよならや。惜しいおっぱいやし、見逃したるさか、逃げやー」
 すっかり打ち解けたリリーが、理由を問う。
「わいのご主人な、りるちー言うんやけど、これがごっついドSのちっぱいやねん。クロちゃん言うお友達連れて君ら殺しにきとるんよ。やばいで。わい、呼ばれたから行かなあかんねん……」
 そう言うと、鈴蘭と暴食を残し、何処かへと去って行った。
 物言いから察するに、撃退士本隊を討つ為に向かったのだろう。
 と、言う事は、既にこの戦場には悪魔が3体、ヴァニタスが1体存在する事になる。
 最早、作戦の成功は望めない状況であると判断できた。
「ブッ喰い殺しに行こうぜッ!」
 暴食が鈴蘭に後を追うことを提案するが、客観的に見て、死にに行くようなものだ。
「虎鉄達は、『折を見て撤退しろ』と言ったのだよー。今、行っても足手纏いになるだけなのだー。大人しく逃げるのだよー」
 渋る暴食を引きずるように、鈴蘭は戦線を離脱するのだった。

●別離
「なぁ、東城。学園に戻ったら、俺の代わりに謝っといてくれねぇか、あいつらにさ。悪かった、ってよ」
 虎鉄は覚悟した。
 それでも、巻き込んだ生徒達だけは無事に学園に還してやりたいと、数名の熟練撃退士達に抱えて離脱する事を指示する。
「俺はよ、不器用だからこんな生き方しかできなかった。過去に囚われ過ぎて、未来が視えてなかったんだろうな」
 だが、夜刀彦にはとても許せるような事ではない。
「いやです、帰るなら先生達も一緒に!」
 駄々をこねる生徒の頭を、不器用ながらも優しく撫でて言葉を託す。
「俺達の未来は、まぁ、大体もう決まっちまったもんだ。だが、お前達は違う。まだ、いろんな自分になれる未来が待ってる。俺達は、その未来を護る為に、戦うんだ」
 生きて、自分達の未来を創れ、と。
「若い内は迷ってもいい。だけどな、一度決めたなら、最後まで貫き通せ。ブレるなよ。どんな不格好でもいい、自分の信じるものを信じろ。お前達なら、もしかしたら共存なんて未来も作れるのかも知れんな」
 嫌だ、と叫ぶ優しい夜刀彦を、鬼道忍軍が抱えて離脱していった。
 同時に、戦闘不能となった者達も連れて遠ざかっていく。
 其の時間を稼ぐべく、他の撃退士達が無謀と知りつつも悪魔への戦いを挑んでいた。
 皆、天魔に憎悪を持ち、その存在を殲滅する事でしか報われないと言う考え方しか出来なかった者達だ。
 其れは即ち、結にも当て嵌まる。
 虎鉄は最後に、自分と同じ匂いを纏う少女に声をかけた。
「なぁ、機嶋。これが、過去に囚われた俺達の最後だ。だが、何も其れが悪いって事じゃねぇ。死ぬ時、最後に心の中で何が残るかって話さ。俺の中には……、後悔がある」
 生徒達の面倒を最後まで見られなかった事。
 志半ばで散っていく事。
 何も残してやれなかった事。
 挙げて行けば、まだまだたくさんある。
「お前は、後悔するな。どんな選択を採ろうとも、悔いの無い人生を歩め。まだ変わる事もできるし、そのままブレる事無く突き進む事も出来る。望む未来を手に入れろ」
 そう言い残すと、そっと背を押し、学園への道を示した。
「お前達の未来、俺が必ず残してやる。だから、行け!」
 虎鉄は愛用の刀の鯉口を切り、死に征く戦いへと身を投じるのだった。

 しかしアリスは、すっと道を開けると先を急ぐよう促した。
 ユウが怪訝そうに問う。
「……どう言うつもり?」
 そうすると、アリスは一冊の分厚い本と、柔らかそうなぬいぐるみを取りだし、大事そうに抱えながら満面の笑みで答えた。
「アリスは貴女達に想いを貰ったわ。お返しがしたいの。その娘、大切なお友達なんでしょ? アリスにも、大切な人、居るから。だから、おいきなさい」
 物別れに終わった、そう思っていた。
 だが、そう思っていたのは撃退士達だけだったようだ。
 言葉は届いていた。
 それでも、譲れない想いがあった。
 だから、ああ言う形で終わってしまったのだろう。
 ふわり、ふわりと小さな光が舞う。
 初夏の風物詩だ。
「あら……、これは何かしら?」
「……蛍ね」
 幻想的な地上の星が宵闇を切り裂き、乱舞する。
 気がつけば、そこかしこに蛍火が踊っていた。
「綺麗ね……。アリスはヴァニタスになる前までは、こんな素敵なものを知る事もなく過ごしてきたわ。今だから、解る事もあるの。貴女達の事も、ね」
 そう言って、茶目っ気たっぷりにウインクしてみせた。
 この少女は、資料で見た時とは随分印象が変わったようだ。
 今の方が、生き生きしているように感じる。
 蛍火に誘われるように、ユウ達は歩き出した。
 その背に、アリスの声が響く。
「でも、気をつけて。クロが言ってたわ、『ラインの乙女』が近いって。アリスには何の事だか解らないけど……」
 その声に軽く手を振って答え、ユウ達は進む。
 蛍火は、死者の魂を誘う牽引役であるとも考えられている。
 ディアボロ達は、元は死体だ。
 ならば、この蛍は彼らの魂とも言えるのだろうか。
 今もこの世界のどこかで失われ行く命の灯に、哀悼の祈りを捧げながら。
 煌々と輝き溢れるこの夜を、大切なモノを胸に抱いて。
 撃退士達はそれぞれの未来が待つ久遠ヶ原学園へと帰還していった。

 後日、学園は救出隊を組織し、彼の地へ部隊を送った。
 生存者はなく、教師だった虎鉄を含む十数名の撃退士の遺体を回収したのみであった。
 また、様々な証言と状況証拠から、エルの嫌疑は早々に晴れ、何の問題もなく学園へと復帰する事となった。
 虎鉄は死した後も査問委員会で裁かれる事となった。裏切っていると断定するには情報が足りない故にもっとよく調査をするように、と学園より通達され討伐は認められていなかったにも関わらず、教職の身にありながら妄信によって独断で討伐を強行して無実の者を殺害せんとし、あまつさえ多くの生徒を危険に巻き込んだとされた。虎鉄は書類送検され教員資格は剥奪、徹底した厳罰が下された。
 この戦いに何の意味があったのだろうか。
 其れは、個々の胸の内にのみ、そっと仕舞われた。


依頼結果

依頼成功度:大失敗
MVP: God of Snipe・影野 恭弥(ja0018)
 約束を刻む者・リョウ(ja0563)
 秋霜烈日・機嶋 結(ja0725)
 幻の星と花に舞う・柊 夜鈴(ja1014)
 其れは楽しき日々・鈴蘭(ja5235)
 災禍祓いし常闇の明星・東城 夜刀彦(ja6047)
 夜の帳をほどく先・紫ノ宮莉音(ja6473)
 グラトニー・革帯 暴食(ja7850)
 二月といえば海・カーディス=キャットフィールド(ja7927)
重体: −
面白かった!:43人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
たぎるエロス・
大城・博志(ja0179)

大学部2年112組 男 ダアト
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
命繋ぐ者・
神楽坂 紫苑(ja0526)

大学部9年41組 男 アストラルヴァンガード
約束を刻む者・
リョウ(ja0563)

大学部8年175組 男 鬼道忍軍
ちょっと太陽倒してくる・
水枷ユウ(ja0591)

大学部5年4組 女 ダアト
秋霜烈日・
機嶋 結(ja0725)

高等部2年17組 女 ディバインナイト
ヴァニタスも三舎を避ける・
氷月 はくあ(ja0811)

大学部2年2組 女 インフィルトレイター
幻の星と花に舞う・
柊 夜鈴(ja1014)

大学部5年270組 男 阿修羅
踏みしめ征くは修羅の道・
橋場 アイリス(ja1078)

大学部3年304組 女 阿修羅
無傷のドラゴンスレイヤー・
橋場・R・アトリアーナ(ja1403)

大学部4年163組 女 阿修羅
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
水神の加護・
珠真 緑(ja2428)

大学部6年40組 女 ダアト
懐かしい未来の夢を見た・
栗原 ひなこ(ja3001)

大学部5年255組 女 アストラルヴァンガード
誠士郎の花嫁・
青戸ルーネ(ja3012)

大学部4年21組 女 ルインズブレイド
世紀末愚か者伝説・
虎綱・ガーフィールド(ja3547)

大学部4年193組 男 鬼道忍軍
Le premier ami d'Alice・
ユイ・J・オルフェウス(ja5137)

高等部3年31組 女 ダアト
其れは楽しき日々・
鈴蘭(ja5235)

中等部1年2組 女 アカシックレコーダー:タイプA
釣りキチ・
月詠 神削(ja5265)

大学部4年55組 男 ルインズブレイド
災禍祓いし常闇の明星・
東城 夜刀彦(ja6047)

大学部4年73組 男 鬼道忍軍
夜の帳をほどく先・
紫ノ宮莉音(ja6473)

大学部1年1組 男 アストラルヴァンガード
序二段・
丁嵐 桜(ja6549)

大学部1年7組 女 阿修羅
グラトニー・
革帯 暴食(ja7850)

大学部9年323組 女 阿修羅
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
蒼を継ぐ魔術師・
アスハ・A・R(ja8432)

卒業 男 ダアト