●変態達の挽歌
変態は一日にして成らず。
彼らは日々、変態で在る事に努力を重ねてきた。
其れは、全校生徒のプロフィールを全て暗記し尽くす程の無駄な記憶力であり、どんな困難な場所に存在する秘密の花園へも侵入する為の無駄な体力であり。
幾多の嗜好に対応するだけの幅広い無駄な知識であり、急なベストショットチャンスをも逃さぬ無駄な技術力であり。
過酷な環境下にあろうとも黒タイツのみで健康に過ごせるだけの無駄な免疫力であり、如何ほどの罵詈雑言を浴びようとも挫けぬ無駄な精神力であり。
そうして、あらゆる分野に置いて無駄に優秀な変態力を示した果てに、漸く彼らは至る。
エリート変態中のエリート変態、結社『這い寄る変態』のメンバーと言う栄光へと。
故に、彼らには並々ならぬ変態に対する誇りと矜恃が存在した。
何者にも縛られる事無く、思うままに、感じるままに、自由に行動できる。
其れは人として、一番幸せな事なのだ、と。
それが唯一無二の誇りであった。
しかし、その誇りは無惨に踏みにじられる事となった。
忘れもしない、倉庫での屈辱。
閉じ込められ、袋叩きにされ、毛を毟られ、ありとあらゆるご褒美もとい辱めを受け、男の娘萌えへと覚醒したあの日を。
あれ以来、彼らは雪辱を果たす為に己を磨き続けてきたのだ。
閉じ込められた場合の窮地を脱す為にロボを作り、男の娘萌えに対応する為だけに新たなメンバーを加え、失ったギャランドゥを育毛剤で養い。
涙ぐましい努力を経て、今の四馬鹿へと進化した彼らが在る。
知られざる変態秘話である。
そして今日、彼らは其の噂を耳にした。
曰く、『男の娘の隠れパーティ』が催されるらしい、と。
されど、開催場所が余りにも不吉すぎた。
何故か人気の少ない廃倉庫で開催されると言うのだ。
妙に懐かしい既視感を感じなくもない。
彼らとて学習しない阿呆ではない。
しかし、エリート変態としての矜恃が告げるのだ。
ここで行かねば負け犬である、と。
何のために己を磨き、ロボを作り、メンバーを増やし、事に備えてきたのだと。
全ては思う存分セクハラする為である。
躊躇っては意味が無いのだ。
故に、彼らは来てしまった。
約束されし酒池肉林の宴、この世の桃源郷へと。
そっと、扉の隙間から中を窺う。
ほのかに香る匂いから察するに、女性が七名、男性が一名居るようだ。
変態の研ぎ澄まされた嗅覚を舐めてはいけない。
やはり、どう考えても罠である。
が、しかし、ここで立ち去るにはあまりにも勿体無いと感じる程に、中は天国であった。
「あ、あれはっ! ぺったんこなお胸が愛らしいエルレーン・バルハザード(
ja0889)たん! ブレザーにミニスカ、更に伊達眼鏡だとぉ!?」
普段はロボアニメばかり見ていて内気な彼女が、今日はまさかの眼鏡っ娘で攻めてくるとは嬉しい誤算である。
文学少女然としたその姿は、貧乳属性も相まって委員長キャラを継承しつつ、しかし大胆なまでの少女の成長を垣間見る。
ミニスカから覗く細く白い足が、素足フェチである四馬鹿には溜まらなくそそるものがあった。
「くぁっ!? 幼女だ、鏡極 芽衣(
ja1524)たんが居るぞ! しかも甘ロリだぁぁぁぁっ!」
ゴシックロリータ風に改造された儀礼服ばかり来ている芽衣が、白いロリィタ服を着ている姿はとてもレアである。
大量の白いフリルで装飾されたその姿は、まるでお誕生日に食べられる苺のショートケーキ。
変態達に与えられたご褒美の象徴であった。
穢れを知らない綺麗なもの程、自分の色に染め上げ、汚したくなるものなのだ。
「氷雨 静(
ja4221)ちゃんもいるでござる!? 前回のご褒美の続きが来ると言うのでござるか……。ケツが熱くなるでござる」
帽子を目深に被っているものの、その可憐な容姿を忘れるはずが無い。
脱いだら凄いらしい静が、今日はパッツンパッツンのショートパンツにニーソックスの魅惑の絶対領域を形成し、変態達を誘惑しているのだ。
前回のお仕置きを思い出し、震えながらも期待せずには居られない。
秘匿されたままの凄いらしい部分に!
「おぉ! 十八 九十七(
ja4233)ちゃんまでいるYO! ぺったんこSA……! 見事なまでにつるぺたのまな板SA!」
貧乳、ツリ目、三白眼、隈、身長、数多のコンプレックスを抱え悩む乙女、九十七は変態達の中でも有名である。
普段の言動も有り、踏まれて罵られたい女の子ランキングにも堂々のランクインを果たし、絶賛爆走中なのだ。
これまたミニスカに網タイツ、厚底のブーツと、ドM心擽る服装であり、唾液が止まらない四馬鹿であった。
「うおぉぉぉ! 阿見門 悠(
ja5542)たんの、あの恥じらいを見るのだぁぁぁぁっ! これぞ今の大 和撫子に足りないモノぞ!」
変態達が無性にハッスルするのは、悠の普段絶対に見る事の無いゴスロリ姿である。
男の娘は女性特有の身体の線が無い為、其れを誤魔化す意味でもフリルで曖昧になるロリィタ服を着る者が多い。
其れをまさしく体現し、男の娘である自分、と言う役割に徹しようとする悠の真摯な姿勢。
しかし似合わないと思い込み、らしくない自分に赤面せずにいられない悠の其の表情、滾る、滾る、滾るっ!
そう言った恥じらいすらも、初々しく愛おしい。
テンションがうなぎ登りである。
「あの特徴的アホ毛……! 天音 みらい(
ja6376)ちゃんでござる! 今日はニーソ装備でござる! 大人しい文系少女、マニアックにござるよ!」
絵に描いた様な文学少女たるみらいが、今日はどういう訳かこんな場に居る。
これが罠であると仮定するならば、自らを餌に四馬鹿をおびき寄せようと言うその大胆さは希有な行動であり、いじらしくもある。
今すぐ駆け寄って抱きしめて、くんかくんかぺろぺろもふもふしたい!
そう思わずにはいられない少女の決意に、変態、ただただ感涙である。
「俺ッ娘だ……! 俺ッ娘の黒葛 純(
ja6601)様もいらっしゃるぞ! このパーティー凄いよぉおおお!」
そうして、場違いがまた一人。
単純で騙されやすいと評判の俺ッ娘、純もまた、本来こういう場には来ないであろう一人である。
もし、本人の意思で此処に来たのだとすれば、其れは紛れもなく騙されてついてきたのではないかと疑わずにはいられない。
そうだとすれば、何と言う愛すべきお馬鹿キャラであろうか。
こう言う純粋無垢な生き物こそ、天然記念物指定し、未来永劫其の幼さを護り続けるべきなのだ、と変態は思う。
「お、おい、見ろ……、あいつは……、あのアフロは……! 間違いない、奴だ!」
そうして、最大級の場違いは紛れもなくこの人、田中 匡弘(
ja6801)である。
こんもりと生い茂ったアフロもそのままに、ウィッグすら被らぬ徒手空拳。
漢の中の漢、と敢えて呼ぶべきであろう其の潔さは、精一杯女装らしい服装としての八十年代スケ番風セーラー服を身に纏い、胸にテニスボールを仕込むと言う謎仕様。
そんな明らかな異物が、きゃっきゃうふふと笑顔でガールズトークに興じているのだ。
変態達の間に戦慄が走った。
どうしても伝えなければ、この胸に灯した熱き想いを。
例えこの中が罠であったとしても、ここで引き返すような負け犬だけにはなりたくないのだ。
こうして、楽園の扉は開かれたのだった。
●変態達の戦場
ガシャン、と背後で扉が閉まり、鍵が掛けられた。
足元を見やれば、虎ばさみが食いついている。
やはり、罠だったのだ!
汚いなさすが撃退士きたない!
されど甘い、甘い、甘すぎるっ!
銃弾すらも弾き返す撃退士の肉体に、虎ばさみなぞ意味があろうはずがないっ!
「子猫ちゃん達、これは何の甘噛みだぁ〜い?」
余裕の表情でトラップを外し、黒タイツを誇らしげに示しながら、四馬鹿はポーズを決めた。
「またお会いしましたね。今度こそ再起不能にして差し上げます」
静が開口一番、投網とボーラによる先制攻撃を仕掛けてきた、が、
「散開ッ! その後ジェットトリプルアタック!」
「「「応ッ!」」」
鬼道忍軍の機動力を舐めてはいけない。
即時に反応し、四方に散らばる。
四人に増えてもトリプルなアタックを敢行すべく、戦場を駆け抜けるのだった。
標的はショタ風衣装の静たん!
ちんまいおかっぱ少女を思うさま蹂躙し、前回の雪辱を果たすと共に、『這い寄る変態』復活の狼煙を上げるのだ!
視界いっぱいに広がるギャランドゥ幻想。
絡み合う縮れ毛が紡ぐ友情と勝利の物語。
今、全てを賭けて太郎冠者の右手が疼く!
「黙れ変態」
静も黙って突っ立っている訳では無い。
足を止めようと必死に魔法を撃つが、当たらないのだ。
そんな隙だらけの太郎冠者が飛び込んだ。
「πニングッ! フィンガァァァーッ!」
高速微振動の右手が静の小さな胸へと繰り出される、が、固い何かに阻まれる。
「残念ですけど、鉄板を仕込んでいます。大人しくしてくださいね?」
したり顔の静、されどぬるい。
撃退士のッ、変態のッ、滾る熱き想いはたかが鉄板一枚如きでは阻めないのだ!
「ならば、その鉄板ごと揉みしだくッ!」
薄い鉄板が指の動きに合わせ、まるで飴細工の様に形を変えて蠢く。
そうして、そのまま強引に技を撃ち抜くのだった。
がくり、と膝を折る静を、残りの変態達が蹂躙する。
白いふとももをぺろぺろし、柔らかな黒髪もくんかくんかし、細い首筋の写真を撮る。
やりたい放題である。
「戦慄と恐怖の拷■尋■で、二度と再犯出来ない体にして差し上げますの、このファ■キンビ■チ共ッ!」
群がる変態に九十七の銃による乱射が降り注ぐが、時既に時間切れとか言うアレである。
そうして、目の前を踊るムダ毛。
気がつけば乳を揉まれていた。
銃を撃っていたら乳を揉まれていたのだ。
何を言っているのか解らないと思うが、九十七自身も何をされたのか解らなかった。
されど駆け抜け際の、余計な一言で悟る。
「もっと成長してから逢いに来いッ! 乳的な意味で」
ああ、女だッ……、自分は女だったのだ、と!
ガクリ、と膝をつきながら歓喜するのだった。
そんな九十七ちゃんは既に餌です。
網タイツぺろぺろされ、スカートの中を盗撮され、追い打ちの如く耳元で囁かれるまな板という単語。
とりあえずコイツら、■殺刑ですの、と(小さな)胸に誓いながら倒れていった。
「俺の念願のために、さっさと捕まれ変態!」
お金が足りなくて武器を買えなかった極貧少女、純の悲痛な叫びが木霊する。
何と言う事でしょう。
彼女は変態を捕まえれば、銃を買う資金が貰える程度の軽い気持ちで来ていたのです!
しかし、其れは既に騙されていると同義である。
「武器を持っていない、だと……? 天使や!」
変態、歓喜!
即ち、安全にセクハラし放題である。
攻撃に怯えなくてもいい、こんな軽い気持ちでセクハラするのはハジメテ!
こうして、ハジメテの依頼で恐ろしいトラウマを植え付けられていく純であった。
しかし、純が攻撃出来なくても、流石に仲間が放置したりはしない。
「エル姉様に対するセクハラ、万死に値します」
エレオノーレ(jz0046)の妹的存在、芽衣は復讐に燃えていた。
殺意の籠もったエナジーアローが戦場を駆け、変態を射貫く。
「ぬぐぉ!?」
変態が一人、直撃を食らいもんどりを打ちながら吹っ飛んだ。
しかし、足りない、まだ足りない。
エレオノーレの胸を揉んだのはどいつだ、と言わんばかりに変態共を睥睨し、照準をつける。
その一方でスカートの裾を持ち上げ、可愛らしいフリルの靴下で覆われた足を晒し、誘惑を敢行。
自らを餌にしてまで仇を討とうとする小学生女児、健気である。
だが、その行動はあまりにも変態ホイホイすぎたのだ。
オサワリマン、こちらです!
「もう食後のデザートかぁい? イ・ケ・ナ・イ・子猫ちゃんめぇ♪」
コーホー、と荒い息を吐き出しながら、いつの間にか背後を取った変態の魔手が芽衣の胸を鷲掴む。
成長期の女児の胸は徐々に脂肪を蓄え、大人の階段を登ろうとしていた。
「おやおやぁ〜? そろそろブラが必要ですなぁ? 今後の成長に期待せざ……ふぬごぉ!?」
女児の胸にハッスルしすぎた変態は、みらいの鉄拳制裁を受ける事となった。
「胸は……胸は、好きでもない人に触らせてどうする! そんなこともわかんないのかぃよ! 変態!!」
と、言う事は好きな人なら揉み放題であろうか?
逆説的に受け取った変態が、プロポーズしながら特攻を仕掛ける。
「ぼきゅ達と契約して彼女になってよぉ!」
みらいはどちらかと言えば、至って普通の女子である。
それ故に、ムダに長いムダ毛を靡かせながらムダに怪しい黒タイツの変質者に、追いかけられつつ告白されるという経験は初めての事であった。
しかし平常運転の四馬鹿にそんな事は関係無い。
容赦無く襲う! 揉む! 舐める! 撮影する!
「……どこ触ってるの?」
精一杯の抵抗として、ドス黒い微笑みを浮かべながら怒りを押しとどめるも、変質者の手にかかれば恋人同士の甘い睦言のようにも聞こえなくもない。
「言ってほしいのかい、ハニー?」
得意顔でこれである。
そんなしたり顔の変態も、冷静に観察していた悠の槍を受け、横っ飛びに吹っ飛んでいった。
ナイスホームランである。
当初こそ、
「オ、オレ、絶対似合わないよ、こんな格好!」
と言いつつ、恥じらっていた悠も、戦闘となれば常時の平静さが出てくると言うものだ。
しかし、残念。
悠の唯一の弱点は、他のメンバーよりも胸が大きい事にあった。
故に、真下に死角があったのだ。
高速ヘッドスライディングした変態、決死の盗撮を敢行。
悠の返す刃の一撃を華麗に躱し、生還に成功。
「悠たん、意外と大胆〜♪」
ご満悦である。
こんな背の高い自分が、まさかそんなセクハラを受けるとは、と動揺する悠。
次の瞬間には、更に驚愕する事となる。
「むはぁ〜、これが悠たんのニーソ〜♪」
いつの間にか履いていたはずのニーソックスが脱がされ、変態の手に握られていたのだ。
あまつさえ、愉悦の笑みで匂いを嗅いでらっしゃる。
「な、な、な、何をしてるんですかっ!」
悠のクールが崩壊した。
「I LOVE 悠!」
変態、まさかの模範的解答である。
「……ふふ、ふふふふふ」
静かに震える笑い声が、悠の口の端から漏れ出る。
そうして、瞳に危険な光を宿した狂戦士が爆誕したのだった。
「あなた方の命の灯、今日で吹き消して差し上げます」
全力のアウルを込めたスマッシュの炸裂音が、廃倉庫内に響き渡った。
しかし遅い、あまりにも遅すぎた。
思い立ったが即実行。
スマッシュよりも先に行動した変態の手が、僅かに速く乳に到達し、揉みしだいた後だったのだ。
悔しさに顔を歪めながら、がくりと膝をつく。
気がつけば、撃退士達でまともに立っているのはエルレーンと匡弘だけである。
四馬鹿は手傷こそ負ってはいるものの、未だ健在。
残りの二人も殲滅し、一大ハーレム完成目前と言った所だ。
だが、しかし、女の子は護るものだとアフロが立ちふさがる。
今、一大決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。
●貧乳戦隊チチナインジャー
「しかし気持ちのいい位の変態さんですね……。これは後腐れなく弄ることができそうです」
孤高のアフロマン、匡弘がスカートの中からトンファーを抜き出し、構えた。
その際、セクスィーな御御足が露わになり、色々と見えてはイケナイものが見えた気がするが、気にしては負けである。
「さぁ、萌えなさいあなた方が好きな……漢の娘ですよ!」
アフロマンの背後で何かデデーン、と効果音が鳴ったかのような、幻聴すら聞こえる圧倒的存在感。
不自然に揺れる偽胸が、変態達の視線を釘付けにしてやまない。
得物を構え、臨戦態勢に入る匡弘を、しかし四馬鹿は襲撃する事はなかった。
怖じ気づいたのだろうか?
答えは否、である。
胸に抱きし感情は、愛。
其の瞳に宿る色は、同属を哀れむ憐憫の憂い。
「誰が汝に刃を向けると言うのか……! 解る、解るぞ、ソウルブラザーッ!」
大仰に腕を広げ、アフロを指し示す。
「その圧倒的もっさり感……、汝も苦労してきたのだろう? 解ってる、解ってるからみなまで言うな! 我らとて、ムダ毛の使者。偏見の目には慣れている!」
どうやらアフロマンを自分達の同属だと、親しみを感じているらしい。
「汝には並々ならぬ才気を感じる。そのアフロに、その発禁寸前女装ッ! まさしく汝は我ら『這い寄る変態』の新メンバーに相応しい!」
這い寄る変態は仲間にしたそうにアフロマンを見ている。
仲間になりますか?
「さぁ、共に来るのだ、五郎冠者よ! 我らと共に、ギャランドゥの新世界を創造しようぞ!」
しかし其れは匡弘の性格的に無理であり、尚且つ、背後の女性陣の殺気が痛い。
「……いえ、流石にお断りします」
アフロマンはいいえを選択した。
シュール。
黒タイツの変質者と、スケバン風アフロの交渉は決裂したのだった。
意気消沈の四馬鹿に、更なる追い打ちがかかる。
「貴方達には弱点があります。いくら素早くてもムダ毛のせいで表面積が広い!」
いつの間にか回復した静が、背後からにじりより、変態ご自慢のムダに長いムダ毛を掴み取ったのだ。
交渉に時間をかけすぎたんだ!
そうして、悪魔が微笑む。
撃退士の全力を以てブチッと嫌な音を立てながら、ムダ毛が引っこ抜かれた。
「ノォォォォウ!? またしてもミーのビーチクの毛、略してチク毛ガッデェェェイムッ!?」
三郎冠者、人生二度目の黒船来航である。
これがセカンドヴァージンと呼ばれるものなのだろうか。
無理矢理っていうのも嫌いじゃないな、そんな事を思いながら、喪失の痛みに三郎冠者の意識は墜ちていくのだった。
「「「さ、三郎冠者ーッ!」」」
駆け寄り、助け起こそうとする変態を、しかし報復に燃える者が阻む。
怒れる貧乳、九十七が残虐な笑みを浮かべながら四郎冠者の腹毛を勢いに任せぶち抜いた。
「キィィィィィッ! このビチ■サノバ■ィィィィィッチ! 九十七ちゃんズ聖域に触れるとはいい度胸ですの! 粛清ッ! 粛清ッ! 粛清ィィィッ!」
其れだけでは許さず、ハジメテの脱毛に悶える四郎冠者に、至近距離から銃弾をぶち込む鬼畜っぷり。
良い子は真似しないでください。
悪い子も真似しないでください。
「「し、四郎冠者ーッ!」」
完全にぐったりとして動かない四郎冠者を、それでも助けようとする変態の前に、憤怒を身に宿した者が立ちはだかる。
ツルペタ眼鏡幼女、芽衣が無表情で臑毛を掴む。
そのまま、体格差を活かして無慈悲に引きちぎるのだった。
そればかりか、膝を抱え転げ回る次郎冠者の顔面を、ぐりぐりと踏みつけ、見下す容赦の無さだ。
しかし、其れは彼らの業界ではご褒美である。
眼前に広がる小学生女児のアレでソレな光景を網膜に焼き付けながら、次郎冠者は息絶えた。
「じ、次郎冠者ーッ! 己ッ、己ッ、オ・ノーレッ! 許さんぞ、この貧乳戦隊チチナインジャー! 軒並みツルペタの癖に自己主張の激しい奴らめ!」
あまりにも残酷な仕打ちに、太郎冠者が号泣する。
「貧乳は貧乳らしく、その乳の如き慎ましさを持たねばならぬ。そんな事も解らぬ愚か者共め、成敗してくれるわ! ……こぉぉぉい、ハニワァァァァルッ!」
そうして遂に、最終決戦ロボ『ハニワール』を召還するのだった。
義憤に駆られる『這い寄る変態』と鬼畜撃退士『貧乳戦隊チチナインジャー』の戦いは、巨大ロボによる対決へと移行しようとしていた。
●お約束はお約束だからこそお約束
二大ロボ、『ハニワール』と『リアジュール』が屹立し、斜陽の影に赤く染まる。
「はぅはぅ……こここ、このロボット、思った以上によくできてるの」
そんな光景を、ロボアニメヲタクなエルレーンが、鼻血を垂らす勢いで鼻息も荒く様々な角度から鑑賞するのだった。
しかし、どうやら敵はあまり時間を与えてはくれないようだ。
渋々、エルレーンと純はリアジュールに乗り込み、起動に向けて行動を起こすのだった。
即ち、イチャコラである。
リアジュール、其れは哀しき愛のロボ。
リア充の放つ愛のオーラを糧に動く、究極のロボなのだ。
要するに、イチャイチャする事を強いられているんだ!
しかし待たれよ、エルレーンと純は女の子同士である。
「いちゃこら? で動くのかぁ」
などと暢気なエルレーンであるが、まさか人生初のイチャコラが百合とはどういう事か。
「(こないだ読んだ同人誌どおりにしてみるの)」
しかし、変な所で真面目なエルレーンは、予習もばっちりである。
「これは演技なの……コスプレしてる時と同じで、なりきるキモチが大切なのっ」
そう言って、熱っぽい視線を純へと送るのだった。
「きゃっ、エ、エルっ? なりきる気持ち?」
対して純、普段の強気は何処へやら。
すっかりエルレーンに翻弄され気味である。
「(ひゃっ、わ、リア充ってこ、こういうこと?! 俺も、なんとか、しないと……っ)」
それでも、やられっぱなしは何か悔しいものがあるらしい。
必死になってエルレーンの攻めを受けながらも反撃を開始する。
どうしてこうなった。
だが、エルレーンは容赦が無い。
腰に腕を回し、抱き寄せ、頬を撫でる。
首筋に指を這わせ、耳たぶを甘噛みし、耳元で愛を囁く。
これ以上は危険よ!
まさかのヲタク娘の猛攻に、しかし純もついていく。
真っ赤になってしがみつきながら、堪えるような嬌声を漏らしつつも、名前を呼ぶのだ。
「エル……、あんな変態なんてほおっておいて、私だけ……」
演技といいつつ、本気になっちゃぁいませんか、お二人さん!
太郎冠者、完全に外野である。
されど、其処はエリート変態。
きっちりとハニワールの操縦席からカメラを突き出し、堂々のRECを実行中。
変態の鏡とは彼の事を言う。
そんなぼっち変態を気遣うエルレーン、
「ねえ、へんたいさん……よかったら、仲間に入れたげよぉか?」
まさかのお誘いに変態、頬をつねる。
痛い、夢じゃない!?
「一人可愛がるのも二人可愛がるのも一緒なの……」
危ない視線を投げかけ、ちらりと太ももを露出すれば、これで掛からない変態は変態では無い。
据え膳食わぬは何とやら、である。
某世界的怪盗よろしく、決死のダイブを敢行するのだった。
「かかったなアホが、なの!」
しかし、悲しいけど、これって罠なのよね。
ホイホイついてきちまった太郎冠者は、狭い操縦席で敢えなく捕縛されてしまった。
だが、悔いは無いだろう。
美少女二人に挟まれ、本望である。
「えい、えいっ! 悪い子はおしおきなの!」
太郎冠者、まさかのヘブンタイムイベントへ突入。
エルレーン嬢による恥辱のお尻ぺんぺんタイムが始まった。
我々の業界ではご褒美です!
されどそこは女王様としての心得を何故か体得しているエルレーン。
飴と鞭である。
「ちぇすとーーーーーッ!」
気合の咆哮と共に、太郎冠者の尻へと影手手裏剣を零距離から撃ち放つのだった。
「アッー!」
はらり、と今日も薔薇の花弁が散った。
それにしても、ロボット決戦どこいった。
「とりあえず…貴方達そこに正座☆」
静先生、ご満悦の表情である。
「貴方達は確か素足がお好きなんですよね? でも女だって無駄毛を剃ったり抜いたり永久脱毛したり、時間と労力とお金を費やしているんですよ? ……まあいいです。実体験して頂きましょう♪」
そう言って、嬉々とした表情で脱毛テープを巻いていく。
変態が泣けど喚けど許しはしない。
「ふふふ。まだまだありますよ〜? 嬉しいですか? そうですか」
新たな女王様が覚醒した瞬間である。
「命の洗濯は終わりましたか? 懺悔は済んでいますか? 世界の果てで高らかに命乞いを叫ぶ準備はオーケー?」
と、こちらは悠。
槍を突きつけ、死刑宣告である。
ああ、こうも無慈悲な女性ばかりか!
変態の運命や如何に!
みらいですら、変態の口にデスソース入りケーキをぶち込み、無理矢理青汁をごっくんさせる鬼畜ぶり。
「いやー見事な直毛ですね。さぁちりっちりにして差し上げますからね」
唯一の男性であるアフロマン匡弘も、容赦無く変態の毛をライターで焼いていく。
世の中、無情である。
しかし、『這い寄る変態』メンバーはドMでもあるので、これはこれで幸せなのだった。
狂ってやがる!
だが、この中で一番狂っているのは、間違いなくコイツであった。
「ピピピ……、リアジュウノオーラケンシュツ。イチャコラチ、オーバーシマシタ。サイシュウオウギ、『リアジュウファイナルラブラブソード』ハツドウシマス……ピーッ」
リアジュールから、眩いピンクのオーラが溢れ出す。
其れは全てを無に帰すリア充の愛のオーラ。
このお仕置きすらもイチャコラと判断したロボによる最終必滅兵器である。
「「「「アッー!」」」」
全てを屠るリア充のはた迷惑な愛は、撃退士、変態、ハニワール、リアジュールすらをも巻き込み、大爆散するのだった。
そうして、後には荒れ野だけが残されるのみである。
ぼっちがいちばんだよ。