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マスター:小鳥遊美空
シナリオ形態:ショート
難易度:非常に難しい
参加人数:8人
サポート:6人
リプレイ完成日時:2012/02/22


みんなの思い出



オープニング

●Side:A
「やぁ、ボクのアリス。今日も楽しいお話をしようか」
「やぁ、アリスのクロ。今日はどんなお話なのかしら」
 穏やかな昼下がりの窓辺。
 少女と少女が交わすいつもの挨拶。
 白い猫足のテーブルの上には、暖かな湯気が薫るお気に入りの紅茶。
 そして、山のように積まれた焼きたての甘いお菓子。
 そんな、ささやかなお茶会に華を添えるのは、少女の語る未知なる世界の物語。
「ボクのアリス、『ヘンゼルとグレーテル』って知ってるかい?」
 楽しげに少女が問う。
「いいえ、知らないわ。どんなお話なの? 聞かせてちょうだい」
 楽しげに少女が促す。
「この世界には情愛が満ちているのさ」
 少女が微笑いながら囁く。
「どういう意味なの? わからないわ」
 少女が微笑いながら聞く。
「じゃあ、語ろう。其れはとても優しい世界の話さ」

 これは、少女と悪魔が紡ぐ絶望の物語――。

●魔女の住む森
「ごめんなさい」
 パパがいなくなってからママは変わってしまった。
 でも、其れは僕が悪いからだ。
 僕がママの言うことを守れないからだ。
「ごめんなさい」
 だからママが怒って、僕を殴ったり蹴ったりするんだ。
 僕にご飯を食べさせてくれないんだ。
 僕を家にいれてくれないんだ。
「ごめんなさい」
 僕に出来るのは、ママが許してくれるまで謝る事だけだ。
 ママの言う通りに出来ないデキソコナイの僕が悪いんだ。
 僕がちゃんとしてれば優しいママになるはずなんだ。
「ごめんなさい」
 だからママ、僕の事を嫌いにならないで。
 僕の事を産まなきゃよかったなんて言わないで。
 大好きだよ、ママ。

「この森にはね、魔女が住んでるのさ」
 黒いドレスを着た、紅い瞳のお姉ちゃんが教えてくれた。
「その魔女はね、君の願いを叶えてくれるのさ」
 そのお姉ちゃんは自分の事を悪魔だと言った。
「君はママに嫌われたくないんだろう?」
 その魔女は、僕をママが望む『僕』にしてくれるのだろうか。
「だったら行っておいで、ボクの『ヘンゼル』。君の願いはそこで叶うからさ」
 でも、それが皆で幸せになる為に必要なら。
 どんなに怖くても僕は行くよ。

●騙られた愛の歪さ
「忙しいじゃろうに、呼び出して悪かったのじゃ」
 エレオノーレ(jz0046)が謝りながら、集まった撃退士達に地図を配る。
「先ずはその地図に記された赤い点を見て欲しいのじゃ。それが何かわかるかの?」
 地図には赤い点が二十箇所ほど記されており、それらが円を描くように点在していた。
「其れはじゃな、ここ数週間の内に起きた児童の失踪件数を表しておるのじゃよ」
 その町では、最近何の前触れも無く児童が失踪しているのだと言う。
 当初は家出であると処理していた警察も、件数が増える事に何者かが組織的に関与しているのではないかと疑いを持ち出したらしい。
 そうして、捜査を進める内に、ある共通点に気がついたのだ。
「どうやら、失踪した子供達は皆、虐待されていた、或いはその疑いがあるようなのじゃよ」
 ならば彼らは虐待から逃れる為に示し合わせて逃げたのだろうか?
 しかし、そうでも無いらしい。
「どうもじゃな、失踪前に親しい友人に話していた内容を聞くとの? 『森に住む魔女』に願いを叶えて貰う、などと言っておったそうじゃ」
 友人が其れに対してありえない、と反論すると、続けて『黒いドレスを着た紅い瞳の少女』と『ヘンゼル』或いは『グレーテル』というキーワードが出てきたそうだ。
「もしかしたら、じゃがね。『狂った童話作家』の異名を持つ悪魔、クローディアが関与しているかもしれんのじゃ」
 クローディアは、自分の手で人の作りし童話を自己解釈で再構築し、絶望に満ちあふれた陰惨な結末を観劇して愉悦を感じる悪魔だ。
 もし関与しているならば、放置すればとんでもない事態になりかねない。
「そして、じゃな。その赤い点の中心辺りにじゃね、ちょうど森があるのじゃよ」
 その森が事件になんらかの関与をしているのかもしれない、と警察が捜索隊を組み、派遣したと言う。
 しかし、出発前の連絡を最後に、消息を絶ってしまったそうだ。
「どうやらその場所に何らかの秘密が隠されているのは間違いなさそうなのじゃよ。すまんがね、調査に向かってはくれんじゃろうか」
 憂鬱な表情のまま、エレオノーレは撃退士達を送り出した。


リプレイ本文


●その森は悪意を内包する
 同じような建物が並ぶ住宅街、その中程に突如として冬枯れの森が姿を現す。
 何故その場所だけが区画整理されず、自然のまま残されているのか、その謂われを知る者はいない。
 唯一つ解っている事は、その森の中央に何かが隠されていると言う事実。
 ここ最近多発している児童失踪事件の因果律が交わる場所であるという事。
 其処に一体何があるのか、消えた子供達の行方は、連絡を絶った捜索隊の安否は。
 それら全ての問いに答えを出すために、撃退士達が集ったのだ。
 しかし、彼らの表情は重い。
 其れは天魔の関与が疑われる事だけが原因ではない。
 この場所に自らの足で赴いたであろう子供達の心境に思うところがあるからだ。
 虐待、言葉にしてしまえばたったこれだけの事だが、まだ小さな子供達の、小さな世界に及ぼす影響は計り知れない。
 本来なら愛されて然るべき保護者たる両親から、決して得られる事の無い騙られた愛情。
 自分ではどうしようもなくて、でも、どうにかしたくて。
 ほんの少しの可能性を信じて、悪魔のまやかしを信じて、奇跡を信じて。
「子供たちの安否が心配です……急ぎましょう」
 堂々巡りする思考を振り払うように、妃宮 千早(ja1526)は仲間を促した。
 考えた所で何も始まりはしない。
 今、こうしている間にも命の危機に晒されている子供達がいるかもしれないのだから。
 暗い面持ちのまま森へ入ろうとする撃退士達を素っ頓狂な声が引き留めた。
 風鳥 暦(ja1672)である。
「いたいのです……」
 初めての依頼に緊張しすぎて転んだようだ。
 そんな事で大丈夫なのか、撃退士。
 だが、その一生懸命さが空回りする所は、同じように緊張していた仲間の気負った部分を和らげたようだ。
 くすくすと、笑い声が漏れ聞こえる。
「そうですね、わたくし達まで怖い表情をしてしまっていては、子供達が怯えてしまいますね」
 内心、燻り続ける子供達への憐憫を押し隠すように、近衛 薫(ja0420)が微笑んでみせた。
 今にも捨てられた子供達の悲痛な叫びが聞こえてきそうで、締め付けられる胸が苦しくて。
 だからこそ、笑顔で彼らを迎えてあげなくては、と。
 そうして今度こそ、撃退士達は森へと足を踏み入れた。
 其処に潜む秘密を暴く為に。

 捜索班の痕跡は入って直ぐに見つける事ができた。
 捜索した箇所が解るように、点々と其れと知れる印が描かれていたのだ。
 難航するかに思われていた彼らの足取りを追う作業は、比較的楽に片がついた。
 後は順当にこの印を辿れば、捜索隊が最後に向かった場所が掴めるだろう。
 印を手繰りながら、撃退士達は今回の事件における各々の所感を述べた。
 其れは即ち、考え得る限り一番最悪の事態、『狂った童話作家』クローディアが関与していた場合を想定して、である。
「『ヘンゼル』、『グレーテル』、このキーワード、関与しているなら間違いなく『ヘンゼルとグレーテル』でしょうね」
 千早は過去のクローディアの事例から、童話再現が行われているのだとすれば、敵に魔女を模倣したものがあるのではないかと予想を立てる。
「……ヘンゼルとグレーテルって、確か口減らしのお話だよね? 元々救いなんてなかった気がするけど……、気に入らないな」
 そんなものは絶対に認める訳にはいかない、神喰 朔桜(ja2099)は目に見えて不機嫌そうに答える。
 生きていてこそ感じられる幸せがある、死して得られる幸福など、どこにも無いのだ、と。
「結構童話は好き……、だから童話作家は好きなんだけどさ。ハッピーエンド以外はいらないな」
 周囲を警戒しながら、ミルヤ・ラヤヤルヴィ(ja0901)は率直な感想を述べた。
 簡潔な一言の中にも、本質的な所で滲み出た言葉は、ずしりと心に響く。
 バッドエンドを求めている者なんて、いないのだ。
 人は誰しも幸せを求め、其れを享受する権利を有しているはずなのだ。
 だからこそ、
「例えそこに虐待という問題があるにせよ、ハッピーエンドに繋がる道があるかもしれないものを、悪意でバッドエンドに導くことなど許せません」
 神月 熾弦(ja0358)は願うのだ。
 童話は、子供達を笑顔にする優しい世界であって欲しいと。
「……全ては親のために、か。一途な事だな。だがまあ、嫌いではないな」
 ぽつり、と古賀直樹(ja4726)が呟いた。
 其れが今回の事件の根源であるのは、間違いないのだろう。
「……ああ。だからこそ子供達がまだ無事なら、絶対に助け出さないとな……」
 双眼鏡で周囲を斥候しながら、カラードの団長リョウ(ja0563)が言葉を継いだ。
「子供たちには希望が必要なんです。私たちが希望になってあげないと……」
 千早の言葉が、撃退士それぞの胸に染みる。
 感慨に耽る撃退士達を、リョウの鋭い声が現実に引き戻した。
「止まれ、……敵だ」
 唐突に開けた森の中。
 大きなかまどに、白き魔女。
 その前にはずらりと整列した騎士の隊列。
 そこは魔女の領域。
 来る者拒まず、去る者許さず。
 死と言う『慈悲』を与える無慈悲な処刑場。
 魔女が高らかに詠唱を開始し、十を越える黒き騎士が燦然と戦場を駆ける。
 死闘の幕が切って落とされようとしていた。

●魔女の騎士団
「散れっ!」
 即座に戦況を読み取ったリョウの叫びと共に、撃退士達は散開する。
 これほどの数の騎士団、と称しても過言では無いほどの騎士の隊列は、数で下回る撃退士側が囲まれれば不利になりかねない。
 横一線に、剣を引っさげた魔女の騎士達が猛然と迫ってくる。
 その奥に座す魔女と思わしき影が一つ、その背後には巨大なかまど。
 どこに視線をやっても子供達の姿も、捜索隊の影も見当たらない。
「魔女の後ろのかまど……これ見よがし、ですね」
 熾弦の言う通り、怪しいとすれば、あのかまどの中だろうか。
 いずれにせよ、この騎士の隊列を突破せねばたどり着けるような場所では無い。
「……いくよ」
 左右の手に抜き身の刃を煌めかせ、暦が戦闘用人格にシフトする。
 本能が告げる、彼の魔女の魔法は危険である、と。
 故に、駆けた。
「邪魔を……するな!」
 鮮やかな剣舞が、進路を阻む騎士を切り裂く。
 唯の一撃。
 たったそれだけで崩れ墜ちていった。
「見た目ほど堅い訳ではなさそうですね」
 薫の魔弾が矢となり、敵を射貫く。
「援護する、魔女を止めてきな」
 ミルヤの正確な射撃が、進路上の騎士の頭を撃ち抜く。
「背中は任せろ。何が何でも守り抜いてやる。」
 直樹は先頭を駆ける暦の後を追いながら、道を塞ぐ騎士を攻撃していった。
 その度に、悉く鎧が崩れ去っていく。
 しかし、何かがおかしい。
「本当に見かけ倒しなだけか?」
 リョウの投げた苦無が、また一体鎧を破壊する。
 されど、かなりの個体を破壊しても、黒騎士の数は中々に減らない。
 そして不可解な事はまだある。
 撃退士へと迫った騎士は、その進路を塞ぐのみで、攻撃を仕掛けようとしてこない。
 目的は侵入者の排除では無いのだとしたら、其れは――。
「魔女の護衛……、時間稼ぎですか?」
 注意深く敵を観察していた千早の洞察は、全員の納得がいくものであった。
 だとすれば、この数が多い騎士は幻影、或いは其れに類似する能力なのではないか、と。
 だが、其れが魔女自身の固有能力なのか、どこかに騎士の本体があるのか、其れが解らない。
 得体の知れない恐怖が撃退士に蔓延する。
 このままでは危険だ、と言う警鐘のみが鳴り響き続ける。
「護られているのが気に入らない」
 朔桜も、中々殲滅する事の出来ない鎧の隊列に苛立ちを隠せない。
「騎士、騎士かぁ――うん。邪魔だね、君達」
 黒色の魔弾を解き放ち、一体、また一体と確実に数を減らしてはいるのだが。
 そうこうしている内に、不意に放った魔法に耐える騎士が現れた。
 明らかに他とは違う耐久力を持ったその個体は、よくよく観察すれば自分の分身のようなものを産み出していた。
 リョウが試しとばかりに、今し方現れた分身に苦無を投げる。
 すると直撃と共にあっさりと砕け、無に帰していった。
「つまりは、あれが本体か」
 要するにこの騎士の隊列の殆どは幻影だったのだ。
 産み出された分身に攻撃能力は無く、見かけだけの数合わせ。
 そうと解れば本体の騎士の動きにのみ注意を向け、隊列を突破し、奥に控える魔女を討ち取るのみである。
 明らかに火力砲台として存在しているであろう魔女さえ討ってしまえば、後は御す事も楽であろう。
 そう思われた矢先、地面に火線が走った。
 描き出された魔方陣は紅蓮に輝く魔の紋章。
 魔女の謳う呪詛が完成した瞬間であった。

●魔女のかまど
 炎の雨が降り注ぐ。
 炉に火をくべるように。
 天から降る浄化の炎は、撃退士だけではなく、魔女を護る騎士すらも焼いていった。
 集団で撃退士を威嚇していた幻影が、焼き払われ、消滅していく。
 それと対峙していた撃退士達も身を焼かれ、体力を削り取られていく。
 身体を覆う炎を消そうと、地を転がり、足掻きまわる。
 広範囲に及ぶ炎の雨は、一定の範囲に居た敵味方全てに災厄をまき散らした。
 そして、被害は其れだけでは止まらない。
 冬枯れの乾燥した森は、地に敷き詰められた枯れ葉を燃料に業火を巻き起こす。
 魔炎が勢いよく燃え広がり、魔女と撃退士の周囲を炎の森と化させた。
 其れはまるで、童話『ヘンゼルとグレーテル』に出てくる魔女のかまどのように。
「味方ごとって、私達を蒸し焼きにする気か」
 ミルヤが傷を庇いながら吐き出すように呟いた。
 ぐずぐずしていては、遠からずそうなるのは目に見えていた。
 早期決着、その言葉が撃退士の脳裏を駆け抜ける。
 幸い、彼の炎は騎士一体を残し全てを焼き尽くしていた。
 攻め込むなら今しかない。
 魔女を討たんと、暦が駆けた。
 これ以上、唱えさせる訳にはいかない。
 黒い火花を散らしながら、滅魔の二刀が魔女を切り裂く――、が全く微動だにしない。
「高威力な上に、本体はタフなのか? 厄介だな」
 銃弾を撃ち込みながら、直樹が舌打ちする。
「だとしても子供の夢を弄ぶだなんて……許せません!」
 千早の魔法剣が魔女の動きを捕らえ切り裂く、が、やはり致命打とはならない。
 見た目と違い、物理力、魔法力、そのどちらを使っても魔女に有効打を与える事が出来ない。
 が、異変は魔女よりも、むしろ騎士の方に起きていた。
 魔女に攻撃を加える度に、騎士の鎧が欠けてゆく。
 動きが鈍くなってゆく。
 何かしらの能力を使って、ダメージを身代わりしているのでは無いかという因果関係を疑うには充分であった。
「要するに、貴様を先に堕とせと言う事か」
 槍の穂先に黒焔が燃ゆる。
 リョウが短めに構えた槍を、堅い鎧の隙間を縫うように突きを繰り出した。
 槍と剣が交差し、刃が砕けた。
 砕いた勢いを保ったまま騎士の右腕を捕らえると、そのまま強引に抉り抜く。
 吹っ飛んだ右腕を庇うように、構えられた盾を、薫の魔法が撃ち貫く。
「朔桜さん、今です!」
 両腕をもがれた騎士に、断罪者が迫る。
 見下した笑顔は傲慢そのもの。
 金色に煌めく焔が導く終焉の慈悲。
「万死に砕けよ。これが我が慈悲と知れ――」
 黒色の光球が解放され、騎士の頭部を吹き飛ばす。
 そして、其れが騎士の最後となった。
 守護者の居なくなった魔女は儚く、脆い。
「じゃあな、魔女、此処がお前の墓場だ」
 直樹の銃弾が全てに終わりを告げた。
 それと共に、閉じられていたかまどが蓋を開け、子供達が次々と吐き出された。
 その数二十四名。
 だがしかし――。
「子供達の意識が無いです……。そしてこの炎の海では此処もその内……」
 薫がゆさゆさと子供を揺するが、一向に目覚める気配が無い。
 呼吸はしているので生きてはいるようだが、問題は燃えさかる周囲の森であった。
 ぐずぐずしていては全員焼け死んでしまう。
 しかし子供達の意識は無い為、撃退士が抱えて避難するしかない。
 だが、撃退士の数は八名しかおらず、対して子供達はその三倍である。
 非情な選択を強いられていた。

 救助された子供達は、一時、久遠ヶ原にある医療施設へと搬送され治療を受ける事となった。
 体力を消耗していたものの、一命を取り留めた子供達は、それぞれの家庭へと帰っていった。
 撃退士達は今回の依頼で得られた情報を関係各所に連絡し、子供達の保護及び改善を訴えかけた。
 出来る限りの事をしたが、行政の対応は遅々として進まず、また子供達もそのような事実は無いと述べる。
 それでも、施設に保護され、若干の改善を見た家庭もあるにはあった。
 全てでは無かったが、撃退士達の努力は多少報われる事となる。
 焼失した森からは、捜索隊のものと思わしき死体が見つかった。
 そして、救えなかった子供達のものも。
 やり切れない想いを抱えたまま、撃退士達の任務は終わりを告げた。

●Side:B
「こうして『ヘンゼル』と『グレーテル』は『魔女』の待つ家に帰ったのさ。おしまい」
 少女が愉しそうに語り終える。
「ねぇ、クロ。どうして子供達は『魔女』のいる家に帰ったのかしら?」
 少女が不思議そうに問いかける。
「彼らは貪欲なのさ。万が一の有りもしない幻想を追い、騙られたまがい物に飛びつく。飢えているのさ愛に」
 少女が可笑しそうに答える。
「きっと家族を信じているのね」
 少女が面白そうに答える。
「家族? 違うね。血さえ繋がっていれば家族と言えるのかい? 産みだしたから親だと、それで絆は成り立つのかい?」
 少女、クローディアが続ける。
「騙られたまがい物しか知らない子供達は、やがて『魔女』を継承し、新たな『魔女』となる。果たしてどちらが慈悲深かったのか、其れを判断するのはボクや君、彼らではないのさ」
 クローディアの嘲笑が響く。
 少女、アリスはその様子を静かに、静かに聞いていた。
「暖かい『家族』の絆。其の本当の意味を知る事が出来るならば、私も――」
 アリスの呟きは夕闇に溶け消えていった。

「お嬢様、そろそろお食事のお時間です」
 ノックの音が響き、給仕が催促する。
 気がつけばもうそんな時間だったらしい。
「ありがとう、アリスのクロ。今日も楽しかったわ。またお話聞かせてね」
 そう言ってアリスは食堂へと降りていった。
 残されたクローディアが、寂しげに呟く。
「ボクのアリス。君も『グレーテル』なのさ。行く行くは君も『魔女』になる、絶対にね。君が望むならボクは――」
 紅い瞳が、ゆらゆらと輝く。
その奥に秘められた決意は固く、決して変わる事は無いだろう。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

撃退士・
神月 熾弦(ja0358)

大学部4年134組 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
近衛 薫(ja0420)

大学部6年194組 女 ダアト
約束を刻む者・
リョウ(ja0563)

大学部8年175組 男 鬼道忍軍
撃退士・
ミルヤ・ラヤヤルヴィ(ja0901)

大学部7年23組 女 インフィルトレイター
絆繋ぐ慈愛・
テレジア・ホルシュタイン(ja1526)

大学部4年144組 女 ルインズブレイド
撃退士・
風鳥 暦(ja1672)

大学部6年317組 女 阿修羅
愛すべからざる光・
神喰 朔桜(ja2099)

卒業 女 ダアト
Gun&Sword・
古賀直樹(ja4726)

大学部5年106組 男 インフィルトレイター