.


マスター:久保カズヤ
シナリオ形態:シリーズ
難易度:やや易
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/08/27


みんなの思い出



オープニング

「なぁに言ってるんですかせんぱぁいっ。そんな立派なものぶら下げてながらねー、贅沢なこと言うんじゃないれすよっ!」
「あー、あー、みんな揃ってそんな口ききやがってぇ。らいたいねぇ、36(さぶろく)にもなる女のおっぱいなんてねぇ、何の意味も無いのよぉ!邪魔なんらよ、これが小さければ今の倍は働けるっていうのになー!」

 何杯目になろうかというジョッキに注がれた黄金の水をグビグビと飲み干し、串に刺さった肉を乱暴に食い荒らす女性二人。
 彼女らは久遠ヶ原学園の事務員で、胸の小さい方の女性は現在26歳の「板場 千秋(いたば ちあき)」、胸の大きい女性は現在36歳の「大谷 舞花(おおたに まいか)」といった。
 久遠ヶ原の生徒というのは、何かと幸せな恋愛を育んでいる様な人間が多く在籍している。しかし、そういった縁に全くと言っていいほど恵まれない二人は最近、ついつい悪酔いするまで飲んでしまうことが多くなっていた。
 そんな彼女達は周りの反応を全く意に介さず、呂律の回らない口調で自分の胸の近況を大声で語り合っている。
「だったらせんぱいの胸を私に下さいよぉ、その胸さえあれば私だってモテモテになれるんすからぁ」
「あんたねぇ、胸だけあっても駄目に決まってるれしょっ。あんたの目の前にいるあたしの現状を見ても同じことが言えるのかしら?」
「ふっふっふ、それはせんぱいが努力をしなかったかられすよ。男なんてねぇ、おっぱいさえデカければいいなんて考えてる生き物なんですからぁ!せんぱいのおっぱいさえあれば、もうそりゃ大漁っすよぉ!」
「貴様ぁ、あたしの傷口に塩を塗り込むような口をききやがってぇ。こんなもん、いくらでもくれてやるわぁ!」
「にゃ、にゃにしゅるんでしゅかぁ!ぐぬぬぬぅ!」
 カウンターで隣りに座っている二人。大谷は板場のほっぺをつまんで引き伸ばし、それに負けじと板場は大谷の胸を鷲掴んで自らのもとに引っ張った。
 流石にもうそろそろ他の客の邪魔になると思ったのだろう。店の大将がやれやれといった表情で二人の顔に、キンキンに冷やした押しぼりをぶつける。

「お客さん、喧嘩ならよそでやってくれないかね?」
 ねじり鉢巻きの良く似合う大将の苦笑いを目の前にし、いくらか酔いの冷めた二人は「すいませんでした」と頭を下げた。
 冷たいおしぼりに顔をうずめて、自らの行いを思い出して猛省しているのか、二人は全く口を開かない。そんな二人の女性のあまりの熱量差に少し驚いている様子なのは、喧嘩を諌めた本人である焼き鳥屋の大将であった。
 短く白い髪を掻きながら溜め息を一つ。大将は顔をうずめて動かなくなってしまっている二人の女性の耳に自身の顔を少しだけ近づけて、聞こえるかどうかという小さな声で呟く。
『お客さん………あんた達、見たところ久遠ヶ原の関係者か何かだろ?ほんとはこういった噂話を本職の人間に話すのは失礼ってもんだが、まぁ、気晴らしに聞いてってくれや。これは「天魔」の噂話さ、といってもただの天魔じゃねぇ───』

『───なんでも、男女構わず自由自在に胸を操るという悪魔の話さ。大きくしたり小さくしたり、さらには腹の肉まで胸に収めてくれたりもするとか………』

 おしぼりから顔を離したと同時に、大将の腕を二人の手がガッチリと掴んだ。それはそれは万力の如き力であったという。
「「詳しく聞かせて下さい」」
 目が本気だった。大将は後に誰に言うでもなくそう呟いたらしい。





 これは、ここの店に訪れる客達から聞いた「噂」の域を越えない話さ。

 まるで天使の様な悪魔。女性客は皆口を揃えて、まだ見ぬその噂の正体の事をそう称してる。

 この町から少し離れた田舎町。そこにある山岳には、昔から「子宝」に恵まれるっていう隠れた秘湯があるそうだ。もちろん道のりは険しくて、そこに好き好んで行こうとするやつはほとんど居ねぇ。

 まるで女性の胸を模しているかのような岩の先から、白く温かな湯がこんこんと湧き出ている。きっと昔の昔に誰かが手入れしたんだろう、そこはきちんと温泉の姿をしているよ。

 そこの付近さ、例の悪魔が現れるというのは。その天魔が事件にならずにあくまで噂に留まっている理由は、人間に害をなさない存在だからだ。害どころか、人によってはありがたい存在だしな、そうそう口外も出来ないらしい。

 まぁ、信じるか信じないかは自分次第ってやつさ。
 でもな、やっぱり人の魅力っていうのは一か所だけでは無くて、総合的にだな………って、ありゃ。


 大将は困った溜め息をもう一つ。
 カウンターにはきちんとお代分のお金が置いてあり、先ほどまでそこに居たはずの板場と大谷の姿は無かった。

「大将さん、先ほどの噂話、実に興味深いですね。自分にも聞かせてもらえないでしょうか?」
「ん?あぁ、まぁただの噂話だから良いけどな」
 実に柔和な笑顔が素敵な、スーツを身に着けた紳士的なおじさんが大将の近くのカウンターに腰かける。
 大将は手元で焼いている串に刺さった鶏肉達にたっぷりと芳ばしいタレをつけ、再び口を開いた。


リプレイ本文


「らっしゃい!!」
 お昼の食事時のピークを過ぎ、焼き鳥屋には老年の客がぽつぽつと居るだけ。大将の威勢のいい掛け声がやけに大きく響いた。
 そんな場所におおよそ似つかわしくない様な若い女性が、ガラガラとドアを開けて入店する。
「おっ、エラいべっぴんさんだ!そこのカウンターに座りなっ」
「………ふぇっ、わ、あわわ」
 真正面から飛んでくる勢いのついた褒め言葉を受けたのは、撃退士の月乃宮 恋音(jb1221)だ。
 顔を赤くしながら、月乃宮はふるふると否定の意を込めて首を振った。

 氷の入ったお冷が心地よく喉元へと染み渡る。
「………えっと、そんなわけで、大将さんにお話をお伺いに」
「あー、あん時のやけに酔ってた女性客の………撃退士ってのも大変だなぁ」
 大将はサービスだと言って、キャベツに乗ったホルモン焼きを差し出した。
「些細なことでもいいから……ねぇ」
 月乃宮は頷き、大将は遠くを見つめる。

「噂だからあんま真に受けられても困るが………女性客から聞いた話で一貫してるのが、そこに出没する悪魔は小さな女の子だということくらいか」
「………女の子、ですか」
「んー、あんまり力になれなくてすまねぇな。さて、冷めないうちに食べてくれ」



 今年の夏は一層熱く、遠くを見つめると空気がユラユラと揺れている。
「確かに、この岩山を上るのは一般人じゃキツイわね」
 地堂 灯(jb5198)は額に滲む汗を拭いて、溜め息交じりにそう呟いた。
 山を登っていくにつれ木陰はみるみるうちになくなっていき、じりじりと焼かれた岩肌が下からも熱を反射している。

 登り道はそこまで急な斜面では無く、そこそこ整備されたものではあったが、やはり剥き出しになった大岩が道の所々に点在していて、そこを乗り越えたり避けたりする度に地味な疲労度が重なっていく。
「先輩〜、先に温泉入らない?」
「そんなの月乃宮さん達に悪いだろ、あと少しで目的地に着くから」
「でも、これだったら、多少五月蠅くても、木陰のある森の方が良かった、かも」
 うだるような暑さでヘロヘロと歩く来崎 麻夜(jb0905)とヒビキ・ユーヤ(jb9420)を支える様に時折肩を貸しながら、麻生 遊夜(ja1838)は地図を片手にその岩肌を進む。
 地堂はそんな彼女たちの様子を少し後方から眺めながら「あんなに引っ付いていたら余計に暑いんじゃ」と思ったが、来崎とヒビキのどこか嬉しそうな顔を見て、あえて何も言わないことにした。
「それじゃあ、山小屋に着いたら昼食の休憩に入ろう。地堂さんは弁当とか持ってきてるかい?」
「大丈夫よ、気を利かせてくれた月乃宮さんから頂いているから」

 今回、彼ら彼女らの受けた依頼の内容は「このあたりに悪魔が出没しているという噂があるから、それの調査を行ってほしい」との事であった。
 そして今、撃退士達は班を二つに分けて、その悪魔を捜索している最中である。

「ねぇ、先輩っ。あれが山小屋じゃないっ?」
 来崎が遠くを指しながら明るく笑う。近くには小川が流れ出しており、いくらか涼しげな風も吹いていた。
「ここに悪魔が居てくれると良いが」
「………無害なことが、前提だけどね」
 麻生の一言にヒビキが返し、全員の緊張感がピシリと高まる。

 木造で古くなっている山小屋。長い間手入れされていないことが目に見えて分かった。
「水は飲んだか?昼食をとるのは捜索が終わってからだからな」
 麻生を先頭に、撃退士らはどんなことがあってもすぐに対応できるような態勢をとる。そして、扉がギシギシと錆びついた音を上げながら開かれた。

「んー、ハズレのようだな」
「でも、ここに居たっていう形跡は確かにあるねぇ♪」
 来崎の述べた通り、確かにこの山小屋には生活感があった。木の実や山菜などが自家製加工されたものが置いてあり、どうやって作ったのか、美味しそうなパンまである。
 古びた外見とは違い、意外にも中は綺麗に整っていた。
「………じゃあ、外の方を探す?」
「ちょっと待って」
 ヒビキの提案に割って入ったのは地堂だ。
 彼女は一人で中へと入り、不可解に眉をひそめながら、少しだけ開いていた戸棚を開く。

「───きゃっ!!」
「地堂さん!?………………って、なんだこれは?」

 戸棚からいきなり何かが飛び出し、地堂はその場に腰をついてしまう。
 急いで駆け寄った麻生が目にしたもの
 それは、手のひらサイズの柔らかな球体………「おっぱい」に黒い羽の生えた生き物、いや「ディアボロ」だった。
 その羽根つきおっぱいは攻撃を仕掛けてくることなく、ただただその場でぽよぽよと羽ばたくばかり。
 どうゆう事?
 誰かがそんな気の抜けた呟きを漏らした。



「耳が、頭がおかしくなりそうだよぅ………」
 四方八方から馬鹿みたいに聞こえて来る蝉の声に、猫野・宮子(ja0024)はうんざりとした呟きを漏らした。
 木陰は十分にあるのでそこまで直射日光に体力を奪われることは無いが、この嫌になるほどの蝉の声と、ジトジトとする蒸し暑さが撃退士達を襲う。
 そこで、猫野の呟きに鴉乃宮 歌音(ja0427)が「これなら、多少暑かったとしても、声を張らずに会話が出来る山道の方が良かったかもね」と答えた。

 月乃宮、猫野、鴉乃宮の三人は、地図に書かれた目的地から少し反れる様に森を進んでいる。
 鴉乃宮が自身のスキルを使い、悪魔が居そうな場所におおよその目途を立て、そして月乃宮の方位術により、その目途の立っている地へと迷うことなくを足を進めた。

「………あの、猫野さん、少し良いですか?」
「どうしたんですか?」
 月乃宮のもじもじとした様子に猫野は首を傾げるが、鴉乃宮は何かに気づいたらしく、気を利かせて一人少し先を進む。
「………あの、汗を拭きたいから、少し、皆さんから離れても良いですか?」
「ふぇ?」
「………汗を小まめに拭かないと、胸の下なんかにっ、あ、汗疹ができやすくてですねっ」
 猫野が首を傾げたままなのを見て、月乃宮は慌てながらいらぬ説明までを話しだす。
 そろそろ収拾がつかなくなりそうだと思ったのか、鴉乃宮が二人に助け舟を出して、ようやく場は収まった。

「さてと、このあたりで間違いないかな」
 鴉乃宮が割り出した場所。そこは木の実の成る木が多く生えている場所で、大樹のすぐ近くである。


『───はにゅわぁぁっ!?』


 ガサガサと木々が揺れ、素っ頓狂な可愛らしい悲鳴が辺りに響いた。
 あまりに急な出来事に三人はお互いの顔を見合わせて、その声のした方へと急ぐ。

『たっ、助けて下さいぃっ。チッチ、助けてぇ!』
 小さな黒い翼を持った少女の悪魔が泣きべそをかきながら高い位置で木の枝に引っかかっており、「チッチ」と呼ばれたおっぱいから羽の生えたようなディアボロがどうにかしてその少女を助けようとしているが、ぽよぽよと枝にぶつかってばかりで何の役にも立っていない。
 プルルル。
 不意に猫野の携帯が揺れる、どうやら別行動中の地堂からかかってきたようだ。
「もしもし」
『えっと、山小屋の方で極めて無害なディアボロを一匹発見したんだけど、そっちはどう?』
「奇遇、だね。こっちは、木の枝一本に泣かされている悪魔の女の子を発見したよ。例の温泉の場所で、合流とゆーことで」



「助けていただいてありがとうございます、お姉さん達っていい人なんですねぇ」
 喜んでいるように悪魔少女の周りをぷるぷるんと飛ぶ二つのおっぱい。そして、純粋無垢でぽわぽわと微笑む悪魔少女。

 彼女の名前は「パストラル」。外見は小学生程度で、翼はあるけど飛ぶのが苦手なんだとか。
 自身があまりにも非力なせいか、いつも泣いて逃げ回ってばかり。彼女はそんな自分を律するべく、現在自分のペット「チッチ」「チュッチュ」と共に方々を旅して回っているとの事。
 そして今時極めて珍しい、悪魔や天使、人間の関係性をいまいちよく分かっていない、世間知らずの女の子でもあった。
 先ほどは木の上の実を取ろうとして、誤って枝に引っ掛かり、宙ぶらり状態になっていたらしい。

「いつもは失敗ばかりですけど、将来ケーキ屋さんになる為に、頑張らないとと思ってるんですっ」
 何この可愛らしい生き物。
 曇り一つないキラキラとしたその瞳を真っ直ぐに向けられた月乃宮は顔を赤らめ、思わず「はぅっ」っと目を逸らした。
「それじゃあ、難しい話は後にして温泉に入ろうよ!パストラルちゃんも入る?」
「じ、じゃあ、はいっ」
 目の前に広がる秘湯を前に、猫野は全員を見渡して興奮気味にそう告げる。
 汗で服が体に張りつき気分が悪くなっていた頃だ、撃退士達は早速持って来た入浴セットと水着を取り出し、男性女性で別々の岩陰へと入っていった。


「あれ、鴉乃宮さん。こっちは男子更衣場所なんだが………」
「うん、そうだね。どうしたの?」
「いや、だからこっちは男子………あ、あぁ、すまん。そういえば鴉乃宮さんは男だったな」
「ふふっ、大丈夫だよ。公俗に配慮して一応はタオルで隠すようにするから」
「………すまない」

 何かと、男子更衣の方は複雑な様である。



 一方、女子更衣の方はというと。
「胸………胸かぁ」
「地堂さん、落ち込まないでほしいよぅ。ボクが惨めになるにゃあ」
 競泳水着を着る地堂と、白スクを着る猫野は、少し離れた位置から他の女性人達の水着姿を眺めていた。

 手足が細く長く、魅惑的な黒のビキニが非常によく似合う来崎は、女性から見てもうっとりしてしまうようなスタイルをしている。
 そして、小柄ながらもグラマーなヒビキは、黒色のチューブトップビキニを着用していた。
 誰から見ても魅力的である二人。
 しかし、そんな二人も、この目の前の光景に目が釘付けになっていた。
「ほわぁ………お姉さん、本当に凄いです」
「………そんなに、ジッと見つめないで下さいぃ」
 沸騰寸前まで顔を真っ赤に染めて、ふるふると顔を振る月乃宮。そんな彼女の様子は露知らず、パストラルは無垢な子供心ながらにその彼女の体を食い入るように眺めていた。
 まるで帽子の様なサイズをした桜色のビキニを着用している月乃宮。それでもなお胸がキツキツだというのだから、ますます驚きを隠せない。

 これ以上ここに居ると、自分の心の何かが灰色に荒んでしまうと感じ、地堂と猫野は裸足でぺたぺたと温泉の方に向かった。


「これは………極楽だぜ」
「少し熱いくらいがまた何とも堪らない感じだね」
 一足先に温泉に入っている男性二人。じわじわと温泉の熱が体中に染み渡り、疲労を心地よく溶かしていっているのが感じ取れる。

 温泉はドーナツ状の形をしていて、中心から盛り上がった「乳房」のように見える岩の頂点からこんこんと湯が沸き出ている。
 普段からパストラルもここを使っていて偶に掃除なんかもやってるらしいので、極めて清潔な状態でこの温泉に浸かることが出来た。
 そして、中央のその「おっぱい型」の岩の向こう側。二人の耳には、コソコソとした女の子達の声が聞こえてくる。

『ねぇ、胸の大きさを先輩好みの大きさに変えられるって本当?』『胸と、それからお尻にも、そしたらユーヤも』『………わ、私はせめて市販のサイズでも入るくらいまで小さく、してほしいです』『私も、本当に胸が大きく出来るなら少しくらい、なんて』『ボ、ボクもっ』

『お、お姉さん達はアウルを持ってるんですよね?………うーん、それなら出来なくもないですけど、一晩経てば元通りになってしまうです。それでもいいなら───』
『『『───是非っ!』』』
『お姉さん達、怖いですぅ………』
 そんな、コソコソとした会話が。


「………ユーヤ」
「ん?あぁ、いつの間にかうとうとしていた………って、なっ、お前ら!?」
 解けていく疲労に身を任せてうとうととしていた麻生。ヒビキに呼ばれて目を開くとそこには、息をするのも忘れてしまいそうな光景が広がっていた。
 直視するのが恥ずかしくなるくらい、水着からはみ出さんばかりの胸の来崎とヒビキ。思わずその場から逃げ出そうとする麻生だが、二人にたちまち腕を取られてしまう。
「ねぇ、どうかな先輩♪」
「ユーヤの、好みだったら嬉しいな………」
「くっ、ぐぅ」
 両腕や肩に広がる柔らかな感触、耳元で囁かれる度に麻生はくぐもった声を漏らす。ヤバい、このままでは色々とあちこちがヤバい。
 とにかく助けを求めないと、そう思い辺りを見渡してみた。

(鴉乃宮さんは………どこだっ。そうだ、地堂さんはっ)
 右方向に首を動かしてみる、するとそこには温泉の中心ではなく外側に向かって、並んで体育座りをしている猫野と地堂の姿が。
「おっ、おい!助けて───」
『これが、おっぱい………』『ボクに、おっぱいが………』
 まるで聞こえてないようだ。何だか二人ともとても幸せそうな表情をしている。

 あの様子じゃとても助けてはくれないだろう。麻生は左側に顔を振り向けた。
『………んっ、あ……ふぅ、くっ!』
 恥ずかしさを堪えながら「チッチ」「チュッチュ」に胸をむにゅむにゅと、色々な形に押されてる月乃宮の姿が。
『………この子達が、私の胸を一時的にですが、ひゃっ……小さくなれるのなら、このくらいっ』
 麻生はすぐさま目を背ける、あの光景は余りにも刺激的すぎた。

「ちくしょぅ………頼れるのは自分だけってかぁっ!」
「あっ、先輩っ!?」
 麻生は意を決して、二人の拘束からするりと抜けると温泉の外へと逃げ出した。
「………あの格好で、ユーヤはどこに逃げるんだろ?」

 この後すぐにまた麻生が当然ここに戻ってきてしまうが、それはまた別の話。



「気持ちいいねぇ」
「はふぅ………この場所は山でいろいろ取れるし、お風呂もあるしで、とても良い場所ですぅ」
 みんながみんな、個々に楽しんでいる間、鴉乃宮はパストラルと一緒に麻生の向かい側の箇所で温泉にゆっくりと浸かっていた。
 頬を赤く染めて、涎が垂れてきそうなだらしない笑顔を浮かべるパストラル。とてもじゃないがこの少女が何かを企んでいるとは思えない。
「どうしてここに住んでるの?」
「旅を続けてたんですけど、ここが思いのほか住み良くて」
「あと、恋音が言ってたんだけど、この秘湯は昔から子宝に恵まれるっていう話があるんだけど、知ってる?」
「ほぇ〜………温泉って凄いんですねぇ」
 何だか複雑な探りを入れてるのが馬鹿らしくなってきた鴉乃宮。
 パストラルの頭にポンと手を置き、その小さな頭を撫でる。少女は幸せそうに微笑んだ。

「私達と一緒に久遠ヶ原に来る気は無いかい?まぁ、君のその胸を操る能力を頼りにしてる厄介な人がいるんだけど………でも、面白い場所だよ」
「ケーキ屋さんは、ありますか?」
「もちろん」
「だったらついて行きますっ♪」

 明るく笑うパストラルの頭を再び撫でる。
 この子を守っていかないといけないな。誰に聞かせるでもなく、撃退士達はそれぞれそう決意したのだった。


<つづく>


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 夜闇の眷属・麻生 遊夜(ja1838)
 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
重体: −
面白かった!:7人

無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
ドクタークロウ・
鴉乃宮 歌音(ja0427)

卒業 男 インフィルトレイター
夜闇の眷属・
麻生 遊夜(ja1838)

大学部6年5組 男 インフィルトレイター
夜闇の眷属・
来崎 麻夜(jb0905)

大学部2年42組 女 ナイトウォーカー
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
海のもずく・
地堂 灯(jb5198)

大学部4年1組 女 ダアト
夜闇の眷属・
ヒビキ・ユーヤ(jb9420)

高等部1年30組 女 阿修羅