●Rescue Mission
森の中の開けた砂地。
ここに、天使側の、捕獲した人間を一時的に保管する施設は建っていた。星型に配置された仮設小屋の中にはそれぞれ5人ずつの人質が拘束されている。
普段ならば発見されなかっただろうこの場所を偶然発見した学園側は、撃退士たちに人質の救出を願う事となったのだ。
「人質は無傷で還したい所だな」
誰とも無く、放った言葉は恐らくは撃退士たちの総意。
彼らは事前に立てたプランに従い、ガードたちの連携殺戮を防ぐために5隊に別れ、5つの仮設小屋へ同時に進軍した。
●Team 1〜Preparation〜
「ずっと変な鎧に監禁されたままとか、恐怖だよな。出来るだけ早く助けたいわ」
餐場 海斗(
ja5782)が、ポケットに入れた携帯に手を当てながら、じっと、機を待つ。
一刻も早く、人質を助けたい。だが、この作戦に於いて、失敗はそのまま人質の死亡を意味する。
故に一寸の油断も許されず、彼は今、時を待つしかなかった。
緊張している、と言う意味では、鈴木 紗矢子(
ja6949) も同じ。
彼女もまた、アラームによる合図を待っていた。
「こ、こんな所で躓いてたら、ダメ‥‥ですよね。足を、引っ張らないように、頑張らなきゃ‥‥」
神経を張り巡らせていた所へ、一斉に携帯が震えだし、彼女はびっくんと少し飛び上がる。 事前にセットしておいた、突入開始のタイミングを知らせる震動アラーム。
これを班の全員が感じ取り‥‥お互いの顔を見合わせ、頷く。
盾を構えたRehni Nam(
ja5283)が、ドアを蹴り破ると同時に叫ぶ。
「何でもない日常を、取り戻してみせるのです」
●Team 1〜Fight〜
突入と同時に、紗矢子、海斗、ソフィア・ヴァレッティ(
ja1133)、レフニーの4人が、一斉に人質とガードの間に割り込む。
侵入者を認めたガードは、強引に裏拳でソフィアを押し退け、人質の一人に槍を突き出すが、滑り込んだ海斗によって受け止められてしまう。
「斬らせる訳にはいかないからねぇ」
押し込むようにして打刀で槍を上に逸らし、そのまま掌で刀を横に拭く様にして触ると、その刀が白い炎を纏う。スキル「聖火」だ。
そのまま薙ぎ払うようにして、ガードの腹部を薙ぐ様にして少し弾く。
同時に背後から、神喰 茜(
ja0200)が飛び込み、抜刀するように攻撃をしようとするが‥‥寸前で、ガードが構えたのを目の当たりにし、急遽刀を納め部屋の中へと滑り込む。
「寸前で読まれちゃったかな?」
一方、人質をその背に守る紗矢子。
恐れて、部屋の一角に引っ込むようにして震えている人質を宥めるようにして、話しかける。
「だ、大丈夫です。きっと、助け出します。そういう、お仕事、ですから‥‥!」
これが初めての戦闘依頼となる彼女。全く怖くないと言えば、恐らく嘘となるだろう。
だが、僅かに震える腕を押さえつけ、ロングボウを構えなおす。
一瞬のチャンス、それのみを狙うために。
全ての人を守り、無事に家に帰すために。
‥‥侵入した撃退士たちの動きは、やや消極的であった。
人質を守る、と言う意味合いもあったのだが、彼らは待っていたのだ。
必勝に繋がる、その一撃を。
中々動かない撃退士たちに痺れを切らし、再度槍を一番近くに居たレフニーに突き出すガード。
盾を構え、全神経を防御のみに注いでいたレフニーは、難なくその槍を弾く事に成功した。
「来ると思ってましたよ〜」
そして、これこそが全員が待ち構えていた「隙」。‘
ずっと刀の柄に手を掛けていた茜は、神速の踏み込みを以ってして接近。
抜刀からのスキル「薙ぎ払い」で、ガードの胴を弾く!
この一撃は見事にガードに衝撃を与え、動きを止める事に成功する。
「ちょっとあっちまで付き合ってもらうのよ!」
連携して同時に海斗の全力の蹴りが直撃。屋外へとガードを弾き出す。
「人質の皆様は安全ですね‥‥よしっ!」
人質の安全を守るため、行動を防御一点に絞っていた紗矢子が、初めて攻勢に転じる。
ロングボウから放たれた「ストライクショット」の矢が、倒れたガードの肩を貫通、地に縫い付ける。
同時に、ソフィアが詠唱に入り、光弾を放とうと構えるが、ガードのスタンが解け、動き出したのを確認し急遽攻撃を中断する。構えられ、トゲ散弾を放たれる可能性があったからだ。
然し、ガードがとった行動は防御ではなく、接近した茜に斬りかかる事。恐らく、急いで元のポジションに戻ろうとしたのだろう。
「させないのです!」
レフニーが間に割り込み、盾で槍を横に流すようにして逸らすと、そのまま――
「痛いの痛いの飛んでいけー!」
‥‥気が抜けるような台詞だが、これは確かに効果を発揮し、茜を少し回復させる。
と同時に、海斗が今一度手で刀を触り、「聖火」を発動させ‥‥そのままガードに馬乗りになる。
「面倒くさいから、さっさと倒れてもらいたい物よ!」
そしてそのまま‥‥首に向かい、上から両手で刀を逆手に持ち、突き刺した。
●Team 2 〜Preparation〜
同時刻。眠そうな目をしながら、アラームの振動を待っていたのは、天沢 紗莉奈(
ja0912)。
「‥‥人質は無傷で還したい所だな。いい結果で終わって気持ちよく寝たいところだ」
初陣ながら、およそ緊張感等と言う物とは無縁であるような彼女は、寝具まで準備している。依頼が終わればこの場で寝るつもりなのだろうか。
一方。
「もしもし、聞き取れる?」
通信役を買って出た紫ノ宮 莉音(
ja6473)。慎重に、携帯での通信状態のチェックを行っている。各班の連携は、いざと言う際に非常に重要になる。いざと言う時に通じなかった、と言うのでは、話にならないのだ。
(「はてさて、天魔が人質を取るってどうなんだろう?珍しくないか?」)
仮設小屋の前で、一瞬考え込んだのは飯島 カイリ(
ja3746)。
だが、アラームが鳴ると共に、彼女は熟考を放棄する。
「ま、いいか! 折角だし、楽しませてもらうよ!」
そして、鳳月 威織(
ja0339)が皆に目線で合図すると共に、撃退士たちは一斉に仮説小屋内部へと、突入した。
●Team 2 〜Fight〜
「早く助けないとね‥‥あんな状況にいたら精神的に良くないです‥‥」
逸る気持ちを押さえ、三神 美佳(
ja1395)が「トワイライト」を発動させ、周囲が一瞬光球により照らし出される。
実は、これを行わずとも、門が開いた事により外の光が漏れ、交戦には十分な光源が確保できていたのだが‥‥トワイライトの光は、闇に目が慣れていたガードと、人質の目を眩ますことには十分だった。
屋内の全ての者の目が眩んだこの間に、紗莉奈が「サイドステップ」で、トンファーでガードの後頭部を殴りつけると共に人質の前へ滑り込み、両手を合わせガードの構えを取り、盾となる。眠そうに見える彼女だが、やる時はやるようだ。
直後、人質の方へと振り向いたガードに更に、少しだけ狂気の笑みを浮かべた威織が打刀に力を込め、「スマッシュ」を放つ。
特化した技ではないこれだけではガードを門外へ弾き出す事はできなかったが‥‥そこへ更にカイリの銃弾が頭部を狙って放たれ、ガードをよろめかせる。
「あっちゃー。やっぱり弱点も人とは違うのかなぁ?」
弱点だと思った頭部を狙った銃弾。然し、サーバントの体の構造は、必ずしも人と同様とは限らない。故に、弱点がどこにあるかは‥‥一見しただけでは、判断できないのだ。
だが、それでもガードが体勢を崩したのは確か。
「出て行ってもらう!」
ショートスピアを半円を描くようにして振り回し、 莉音はバットのようにそれを薙ぎ、屋外へとガードへ弾き飛ばす事に成功する。そのまま仲間たちも屋外へ出たのを確認すると、ドアを閉めると共に片手で阻霊陣を展開、壁に叩き付ける様にして効果を拡散させる。
(「これでそう簡単には中に入れないはず‥‥! だけど‥‥」)
彼の脳裏を、ガードのもう一つの攻撃、トゲ乱射が過ぎる。
あれを撃たれてしまえば、トゲは壁を貫通、中に居る人質たちに突き刺さる可能性もある。
(「そうはさせるか‥‥ぜったい、みんな助ける!」)
決意を込め、彼はガードを睨みつけた。
前方では、敵が体勢を立て直す前に決着をつけるべく、美佳の雷球による援護射撃を受けながら威織と紗莉奈が、それぞれ両サイドの斜め前方から急速にガードに迫っていた。
だが、ガードが武器を構え、動けなくなったのを目の当たりにし、両者共に急停止。
「‥‥‥凄いタイミング」
だるそうに言い放ちながらも、走った勢いでそのまま滑り込むようにしてガードの背後に滑り込んだ紗莉奈。前方で打刀を構える威織と、丁度挟み撃ちになる形だ。
両サイド共に動かず。じっと、時間だけが過ぎていく。
ポケットの中の携帯に、莉音が手を伸ばす。
場合によっては味方に援護を要請する必要もある。そう考えた彼の、頬を一筋の汗が伝う。
だが、その必要はなかった。痺れを切らしたガードが構えを解き、威織に斬りかかったからだ。
「チャーンス♪」
ずっと狙いを胸部に定めていたカイリが、「ストライクショット」を放つ。
白銀の弾丸は、ガードの槍が威織に届く前に、その胸部装甲を貫通。これが威織に先手のチャンスを与える形になり‥‥彼は狂気の表情を浮かべ、身を省みずに飛び込み、拳打を叩き込む。それにあわせる様にして、最小限の動きで背後から下へ潜りこんだ紗莉奈がトンファーで「石火」を発動。一瞬だけ急激な加速を見せるアッパーを放ち、僅かにガードを浮かせる。
そこへ美佳の雷球が直撃すると‥‥ガードは、爆散した。
●Team 3〜Fight〜
アラームの音と共に、ドアを蹴り破り、ゼロノッド=ジャコランタン(
ja4513)が仮設小屋内へと突入する。と同時に、彼同様三班所属である影野 恭弥(
ja0018)が、ガードの振り上げた槍の下へと滑り込み、ダガーで槍を受け止める。
特に防御力が高い訳ではない恭弥は、ジリジリと押されてしまう事になるが‥‥
「邪魔なガードは‥‥消えてください」
背後からソリテア(
ja4139)の放った光弾がこの均衡を崩し‥‥恭弥は大きく槍を左、人質の居ない側へ弾き、隙を作り出す。
そこへ、「トワイライト」による光源の設置を終わらせた冴島 悠騎(
ja0302)が、人質の状態をチェックする。
その中に子供を一人見つけると、彼女は優しく微笑みかけた。
「もう大丈夫だよ。すぐに帰れるから、あと少しだけ我慢してね」
子供を懐に抱きこみながら、目線で悠騎は合図を送る。
撃退士たちの中で一人だけ、突入しておらず、また現在はガードの死角に立っている者が居る。雫(
ja1894)だ。
彼女が未だ攻撃をしないのは、一重にガードが動かず、槍を前に立てるようにして静止していたから。
今攻撃してしまえば、恐らくトゲを撒き散らかされ、部屋全体に降り注ぐだろう。撃退士たちが庇えば、一般人は死なずにすむかもしれない。だが、それは飽くまでも「可能性」で、確固に成功するとは言えないのだ。
故に雫は、待機を選択していた。
10秒が過ぎる。一旦構えを解いたガードは、再度防御体勢に入ろうとする。
だが、それが成される前に、悠騎の放った「エナジーアロー」が頭部へ直撃、動きを一瞬止められる。そしてそれを待ち構えていた雫が見逃すはずも無く‥‥「痛打」が加えられる。衝撃により完全にガードの動きが止まったこの一瞬。更にゼロの「痛打」も加えられ、そのまま腰にタックルするように、ゼロはガードを部屋の外へと突き出した。
「そろそろジャックにばっかり頼ってられないな‥‥!」
己の中に潜む、「もう一人」を思い浮かべながら、地面で転がって態勢を立て直すゼロ。そのままトンファーで倒れたガードの顔面を一発殴りつけるが、同時に逆に腹部を蹴り付けられ、距離を取られてしまう。
だが、彼は一人ではない。
仮設小屋の入り口を塞いでいた恭弥が、精密な狙いで「ストライクショット」をガードの足に放ち、転倒させる。倒れたガードの耳に、詠唱が届く!
「お姉様、力借ります!
――Curus=Undine=Forts
『The Third Fortune/Arctic Blizzard』!」
背中に氷の羽を出現させ、ソリテアが放ったのは、彼女の三番目の姉が使っていたと言われる冷気魔法。
氷の粒子が吹き荒れ、ガードの体を蝕み、力を奪っていく。
何とか起き上がろうとするガードに、
「Er mwyn gofio’r dinistrio!」
悠騎の「エナジーアロー」が更に突き刺さり、反撃を阻む。
兎に角妨害に特化し、敵の攻撃を阻むためだけに放たれる彼女の攻撃は、想像以上の効果をもたらしていた。
そして、態勢を立て直し、背後から飛び掛ったゼロが、首の鎧の隙間からナイフを差し込むと‥‥大量の血を吹き出すと共に、ガードは、その場に倒れ伏した。
●Team 4〜Preparation〜
「閉じ込めてられて、時間が立っているとしたら、やばい気がするが」
人質の体調を心配し、一刻も早く突入したさそうに、神楽坂 紫苑(
ja0526)が呟く。
だが、彼の握り締める携帯は、未だ震えず。
連携を崩して突入してしまえば、ここの人質は助かるかもしれないが、他の箇所の人質は殺害される可能性が高い。
彼同様、ギリッと歯を噛み締めたのは、五十鈴 響(
ja6602)。
(「救える命があるならばそこに全霊を‥‥ひとりとて辛い思いをしたままにはしないわ」)
決意を胸に秘め、自分の役割である光源魔法を、何時でも発動できるよう準備する。
無言で両拳を打ち合わせ、構えるマキナ・ベルヴェルク(
ja0067)の横で、紫苑の携帯が震えだす。
素早く全員に目線で合図を出すと‥‥響がドアを横から開けた瞬間、柊 夜鈴(
ja1014)を先頭とし、撃退したちは部屋の中へと飛び込んだ。
●Team 4〜Fight〜
飛び込んだ夜鈴がまず目の当たりにしたのは、構える白銀の鎧のガードと、その横でおびえるようにして隅で震えている少女たちの姿。
「趣味の悪い事だ‥‥」
嫌悪の表情を僅かながらに浮かべ、人質とガードの間に滑り込むと共に壁を蹴り急激な方向転換。ガードがその槍を振るう前に、アッパーで顎を打ち上げる。同時に響の放った光球が室内を照らし出し、一瞬ガードの目をくらませる。
「‥‥この理不尽、摧滅させてもらいます」
口数の少ないマキナが放った唯一の言葉はその信念の表れか。四肢に炎を纏った彼女の拳は、ガードの背中にめり込む。
紫苑や響が人質を背にして庇った隙に、ガードは体勢を立て直すが、攻撃は行わず。ただ、槍を斜めにするように「構えた」だけであった。
撃退士たちの間に緊張が走る。この状態で衝撃を与えれば、トゲが撒き散らされるのは事前情報通り。故に誰一人として動かず、皆静かに機を待つ。
一分‥‥二分‥‥
このガードは忍耐強かったのか、二分を過ぎても、構えを解く兆候は見られない。夜鈴の頬を、一筋の汗が伝う。まだかまだかと、皆がその機を待っている。
「大丈夫ですか?‥‥すぐ、助け出してあげるね」
後方の少女の緊張をほぐそうと、響が話し掛ける。
これをチャンスと見たのか、ガードは構えを解き、一気に距離を詰め、響ごと少女を串刺しにしようとする!
「‥‥そうはさせないぞ」
「‥‥その様な不条理は、許せません」
夜鈴とマキナの拳がガードの腹部に直撃したのは、ほぼ同時。
マキナの拳はガードの動きを停止させ、夜鈴の拳はそれをドアごと、外部へ吹き飛ばした。
「このチャンス、待っていましたよ。弾けろ、柘榴の炎よ。ガーネット・フレアボム!」
待ち構えていたグラルス・ガリアクルーズ(
ja0505)が、術式を展開する。
放たれた深紅の結晶はガードの鎧の表面に触れると、その言葉通り分裂、小さな粒子となり、ガードを炎で包む。
紫苑が軽くライトヒールで少女の体力を回復させると共に、夜鈴、マキナが仮設小屋内部から飛び出す。それと同時に、仮設小屋を背にするように、グラルスと響が立ちはだかり‥‥入り口を封鎖した。
炎に包まれ、動きが鈍ったガード。それでも構えを取ろうとするが‥‥その鈍さから、夜鈴に先手を取られる形となってしまう。
「これで、終わりだ」
振るわれた鉤爪が、ガードの頭部を切断する。
これにて、第四班も、無事に人質の安全を確保したのだった。
●Team 5〜Fight〜
「ハロー、こいつは自分からの挨拶代わりで御座る」
ドアが開け放たれた瞬間、虎綱・ガーフィールド(
ja3547)の拳がガードに叩き付けられると共に、瞬間的に霧が発生し、ガードの視界を悪化させる。スキル「目隠」だ。
だが、運が悪かったのか、その霧は槍を振り回したガードによって振り払われてしまう。それでもガードの反応に作られた一瞬の隙を突き、朱烙院 奉明(
ja4861)は「トワイライト」を設置しながら、人質とガードの間に滑り込み、その安否を確認する。
「大丈夫か?」
聞かれた人質の男は、慌てて首を縦に振る。
それを確認した奉明は、改めて視線をガードの方へやる。
(「‥‥人命がかかった任務だ。失敗は許されない。‥‥使いたくは無かったが‥‥」)
奥歯をギリッと噛み締め、「エナジーアロー」を放つ。
本来、彼は魔術の運用を嫌っている。だが、それでも人の命には代えられないのだ。
魔術の矢がガードに直撃するのと同時に、周囲の確認を終わらせたイクス・ガーデンクォーツ(
ja5287)が、ジャンプし後方より飛び掛る。狙うは鎧の隙間、放つは敵を行動不能にするべき強烈な一撃――!
「‥‥!」
間一髪でその気配を察知したのか、ガードは僅かに体を逸らし、鎧の球形面でその一突きを受け流す。
「すまねぇ。外しちまったぜ」
空中で一回転し、奉明の隣に着地するイクス。
「大丈夫だ。こちらでフォローする」
銃を構え、慎重に狙いをつける奉明。と同時に、
「へへっ!おせぇよ、鎧のデカブツ!」
低姿勢で突撃した高瀬 颯真(
ja6220)が、両方の剣を構え、突如全身のバネを使って飛び上がり、ガードの首を双剣で挟み込むように薙ぐ!
――ガードが、槍を構えたのにも関わらず。
「まずっ‥‥!」
「ちょっ‥‥!」
イクスとアーレイ・バーグ(
ja0276)が同時にガードへと飛び出す。奉明の銃弾と颯真の双剣がガードに当たるのとほぼ同時に、ガードの全身からトゲの雨が放たれた。
「いってぇな‥‥」
人質を守るため、ガードの至近距離に飛び込み、人質に向かった攻撃の大半をその身に受けたイクス。幸いにも虎綱の二度目の「目隠」が直撃寸前に間に合い、攻撃の大半はあらぬ方向へと向かったため、思ったよりダメージは深刻ではない。
だが、それでも、奉明やアーレイが庇いきれなかった人質の一人の足に、トゲが一本突き刺さっていた。
「やりやがったな‥‥!」
服を流れる血で染めながらも、槍を回転させ、薙ぎ払うような一撃を放つイクス。
この一撃は今度こそ構えを解いたガードに直撃し、その動きを止める。
「全くもって、危ない敵ですわね」
アーレイが放った魔術が敵の体勢を崩すと共に、颯真がタックルするように懐に入り、双剣を交差させて「スマッシュ」を放ち、更に回し蹴りで敵を屋外に吹き飛ばす。
吹き飛ばされ、未だ動けぬガードに、イクスと颯真が歩み寄る。
「人を攫った罰を受ける覚悟は出来てるんだろうなぁ?」
「ったく、所構わずばら撒きやがって‥‥あーいてぇ」
二人の、三本の武器が振るわれる。それは見事に、ガードの息の根を止める。
「っと、手当てをしないと」
救急箱を取り出し、先ほど負傷した人質に駆け寄る颯真であった。
●End Result
かくして、撃退士たちの努力によって、人質は無事救出され、広場の中央に集められた。
レフニーや莉音を初めとしたアストラルヴァンガード陣が人質の治療をしているのと同時に、周囲を警戒、探索している者もいた。
だが、何事も無く、彼らは学園からの回収班が来る時間を迎えることとなる。
これ以上滞在すれば、更なるサーバントの増援が来る可能性もある。そのため彼らは、人質の安全を優先し、調査を切り上げ撤退した。
彼らの努力によって、二十五の命が救われた。
この成果は、決して軽く見るべき事ではないのだ。