.


マスター:剣崎宗二
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:11人
リプレイ完成日時:2012/02/18


みんなの思い出



オープニング

 光とは、この世界を構成する重要な要素の一つである。
 それはエネルギーの伝達の重要な方式の一つであり、また人間が物を「観る」ための必需要素でもある。
 だが、どんな物も、過度に与えれば危害を及ぼすと言う事を、忘れてはならない。
 光とて、その規則を外れる事はないのだ。

●天使支配地域付近

「幾ら我らが領地拡大には積極的ではないとはいえ‥‥敵性勢力をそのままにしておくわけにもいかない」

 ガシャン、ガシャン。
 
 3人の白い騎士が前進する。その鎧は白銀に輝き、一片の曇りも見えない。
 
 ガシャン、ガシャン。
 
 その手には白銀に輝く武器。剣、槍、鎌。武器を掲げて騎士たちは前進する。

 ガシャン。
 
 立ち止まったその前方に見えるは、小さな村。
 騎士たちは、事前に己の主、白銀の輝く天使から下された命令に従い、この村を消滅させるために、前進を始めた。


●天使支配地域境の村
 小さな村とはいえ、ここは天使支配地域の直ぐ近く。
 天使勢力の侵攻を防ぐため、撃退士による守りはある程度置かれていた。
 尤も、今日は交代の日。
 所用で一度村を離れる元の撃退士たちに代わり、一時的に新しい撃退士が来る事になっていたのだ。
 
 突如、村の一角から、丸で太陽がそこに降り立ったかのような光がほどばしる。その光から現れるは、3人の白騎士。
 彼らは周囲を見渡してから、全身から光を放つと、直ぐ横にあった家が燃え上がった。
 抵抗もなく、彼らの進軍が続くと思われたその瞬間。彼らの前に立ちふさがる者が居た。

「勝手にされちゃ、困るな」
「留守を守ってほしいと言われたからな。やらせるわけにはいかねぇ」

 間に合ったのだ。
 ‥‥学園から派遣された撃退士たちが、騎士たちの前に立ちはだかる。

 かくして、この名も無き小さな村にを守るための、戦争が始まったのだ。


リプレイ本文

●立ち塞がる英雄たち

 サーバントの前に立ち塞がった二人の撃退士‥‥千葉 真一(ja0070)と笹鳴 十一(ja0101)の後ろから、ゆっくりと女性が歩み出る。
「さて‥‥作戦が死守命令となれば‥‥戦略的自由度は皆無ですね。戦術的自由度もさして無さそうではありますが」
 バストを強調するように腕を組み、品定めするようにサーバントを見回すその女性――アーレイ・バーグ(ja0276)。
「先頭艦に砲撃が集中させるのは原則‥‥大昔の海戦のようですね」
「なら、村を守るためにも‥‥先手を取らせてもらうよ! どっちみちあたしにはこのツーハンドソードで叩き壊すくらいしかできないからネ!」
 飛び出した砥上 ゆいか(ja0230)が体を回転させるようにしてツーハンデッドソードをぶん回し、勢いをつける。そしてそれをそのまま縦振りに一番手近な敵‥‥剣を持った騎士サーバントに叩きつける!
 剣騎士はそれを剣を用いてギリギリで逸らし、直撃だけは避けるが‥‥巻き起こった砂煙で一瞬戦場の視界が悪化する。

 ――それが、開戦の合図だった。


●ヒーローズ
「天・拳・絶・闘、ゴウライガっ! 行くぞ!!」
 砂煙のなか、光纏を起動し‥‥「ゴウライガ」と名乗った真一が、飛び蹴りで槍騎士を弾き飛ばす。味方と合流しようとする槍騎士だが、その前に、更に2本の矢が突き刺さる!

「援護します。行きますよー」
 弓を構え、真一改めゴウライガを援護した澄野・絣(ja1044)が、的確な射撃で敵の進路を遮る。
「感謝するぜ!澄野さん!!」
 更に低姿勢からのタックルを仕掛け、槍騎士を引き離すゴウライガ。


 一方、鎌騎士は‥‥十一と対峙していた。
「合流させるわけにはいかねぇからなぁ」
 不敵な笑みを浮かべ、構える十一。
 痺れを切らしたのか、鎌騎士が袈裟斬りに切り込んでくるが‥‥それを斧で横に流し、ステップを取って後退する。
(「そうそう、いい子だからこのままついてくるんだぜぇ」)
 少しずつ後退する十一。彼の目的は、騎士たちを引き離すことであった。
 ちらりと騎士の背後を覗き見ると、鈴原 水香(ja4694)が、ぺたりと座り込んだ女の子を抱きかかえて、母親らしき者の元へと向かっている。
「留守を狙うような泥棒退治は撃退士にお任せってねぇ♪ 先に避難しておいてくださいな」

 遠くから撃退士たちの背中を見守る村人たちの目は、疑いに満ちている。この新しい救援者たちが、果たして頼りになるのか。彼らは、見定めようとしていた。


●激戦〜Sword〜
 最初に剣騎士に仕掛けたゆいかは、攻撃に徹し、果敢に攻撃を仕掛けていた。
「小細工無用!正面から叩き潰して見せる!」
 薙ぎ、突き、振り下ろす。彼女の攻撃は大振りで、また得物の重量もあってかやや鈍く‥‥受け流されやすかったが、それを補ったのが彼女とコンビを組む頭崎 妖(ja4096)。
「足元、がら空きですよ」
 ファルシオンでの地面ギリギリの薙ぎ払いが、カキンと音を立て、鎧の脚部に食い込む。
 大振りの上段攻撃を主とするゆいかと、小回りの効く妖の下段狙いの攻撃。
 これだけでも回避は困難だったが、加えて更に後方からは、援護射撃が飛来していた。

「前の人、注意してね!」
 妖の攻撃直後に聞こえたその声に、ゆいかが地面すれすれまで身を屈める。
 直後、その頭上をソフィア・ヴァレッティ(ja1133)の放った光弾が通過、剣騎士のフェイスプレートに直撃、大きくのけぞらせる。
「良い攻撃です、ソフィア様」
 妖の後ろから、今度はアーレイが姿を現し‥‥相手にロッドを向け、前方に小さな光球を生み出し炸裂させる。

 流石にこの連続攻撃に身の危険を感じたのか‥‥剣騎士の体から、強烈な光が放たれる!
「「くっ‥‥」」
 全く前兆が見られなかった光の放射に、追撃しようとした妖、ゆいかの攻撃は空を切る。
 視界が悪いこの中、無闇に撃てば味方に直撃する可能性もあるためソフィアは攻撃できず‥‥アーレイは音を頼りに振り向き様に魔術弾を叩き付けようとするが、視界が悪い状態では精確な位置はつかめず、外してしまう。
 そして後衛ながら、射程の関係で近づいていたアーレイに向かい‥‥凶刃が振り下ろされる!
 ‥‥忘れてはいけない。この騎士たちは、武器をも装備している。
 必然として近接攻撃を行ってくる可能性はあり、物理攻撃に対する耐性が余りないアーレイには、致命的であった。
 背後を切り裂かれたアーレイに、視界が回復した妖がカバーに入り、ファルシオンを剣にあて更なる追撃を阻止する。
 その顔には、「念のため」と、所持していたサングラスが掛けられていた。

「目潰しとは、やってくれるじゃないのよ!」
 こちらも視界が回復したゆいか。少しも怯む様子を見せず、大きく遠心力をつけての薙ぎ払いを連続で放つ。その内の一発が鎧に食い込み、大きく歪ませる。
「結構なタフさだけど、そろそろ終わりだよ!」
 と同時に、ソフィアが光弾を歪んだ場所に放ち、鎧にヒビを入れる。
 勝機が見えたこの瞬間‥‥鎧騎士は周囲に、熱を伴った光を放った。

 誤算があったとすれば、村が思いの他小さく‥‥その被害を考えると、十一とゴウライガの誘導を以ってしても、10m以上に引き離すのが不可能だった事だろうか。
 鎧たちの間で増幅、反射された光は、範囲内に居た四人全てを焼いた。
「これでも魔法に対する耐性はある方なのですよ」
 魔法防御に優れるアーレイ、ソフィアは何れも微々たるダメージを受けただけであったが、妖、ゆいかの二人は手痛い被害を受ける事となる。

 だが然し、撃退士たちは立っていた。
「あたしは‥‥負けない! 絶対絶対、この村を‥‥‥守ってみせる!」
 汗を浮かべながらも、光の中からゆいかが突出して来る。その大剣ごと剣騎士の肩に猛烈な体当たりを行い、体勢を大きく崩す。

 よろめく剣騎士を横目に見て、アーレイは呟く。
「撃退士にはチームワークという最大の武器があるのですよ?」
 ソフィアが放った光弾に、アーレイは自分のロッドを重ねる。まるでビリヤードの球のように、光弾を剣騎士の脇腹‥‥先ほどヒビを入れられた箇所に、突き込む!
 
 眩い光と共に、爆発。
 剣の騎士は四散し‥‥物言わぬ鉄片と化した。

 その直後、四人の撃退士たちはお互いの顔を見てうなづき
‥‥それぞれ、別々のグループへと増援するため、向かった。


●謀戦〜Scythe〜

「避難、終わったかねぇ?」
「ええ、大丈夫よん」
「そりゃいいぜ。さーて、こいつをスクラップにしてやる時間かねぇ」

 剣騎士と四人の撃退士たちが交戦しているのと同時刻。十一と、避難を終了させた水香は槍の騎士と対峙していた。
 お互いの性格のお陰か、軽口を叩き合う等、気分は軽い。
 だが、それは決して油断している、と言うわけではない。

「っと、危ねぇなぁ‥‥!」

 足元を狙って薙がれた鎌を、軽くジャンプして回避する十一。そのまま文字通り兜割りを仕掛けるが、しゃがんで回避されたため背後に着地する。そのまま斧を横に振るうが、これも鎌の柄で防御されてしまう。
 だが、これこそが彼の狙いだった。

「背中がお留守よ?」
 水香がロングボウで放った矢が、鎧の肘部分に突き刺さる。
 十一は兎に角水香に攻撃を任せ、支援に徹するつもりだったのだ。それ故に、背後に回りこみ、水香が逆側から攻撃できるようにしたのである。
 だが、これには1つ、問題もあった。
 水香が騎士の横側や後ろ側に射線を通せるようにするには、注意が向いている十一は水香とは別の側に立つ必要があった。

 ――つまり、騎士が水香へ奇襲を仕掛けることが可能だったのである。
 鎌騎士の動きは素早くはなかったが、彼には、それを補う技があった。

「うわわっ!?」
 慎重に鎌騎士の動きを観察しながら攻撃していた水香は、突如視界を強光に遮られる。
 十一は攻撃を警戒して横に転がってから体勢を立て直し、回避行動を取るが、目標はそもそも彼ではなかった。

 ザシュ。

 鎌騎士の武器が、水香の肩に突き刺さる。
 ダメージは軽くはなく、痛みも並大抵ではないはずだが‥‥水香は、一歩も下がらない。
「こんな痛み、きみ達に対する憎しみに比べれば‥‥」
 僅かに怒りの表情を浮かべる水香。だが、その直後、直ぐに元の調子に戻る。そして、強引に弓を引き、鎧の脚部に向かって矢を放つ。
 至近距離と言える状態で放たれた矢は、鎧を貫通。鎌騎士の脚部を地面に縫い付けた。
 幾ら部位破損しても動ける、鎧だけのサーバントとはいえ、鎧の一部が地面に縫い付けられたのならば動けない。
 この機に乗じて、鎌騎士の背後から猛然と十一が襲い掛かる!
「ここだ!」
 振るわれた斧は見事に鎧の首に当たる隙間に直撃。ヘルメット部分を弾き飛ばす。
 だが、この鎧たちには「中身」は存在せず、鎧が本体なのだ。それ故にたとえ頭が吹き飛ぼうが胸に大穴が開こうが、問題なく動き続ける事はできる。
 反撃の、鎌の柄で突き飛ばされた十一。それを背後から受け止めたのは、剣騎士を撃破した妖とソフィアであった。

「大丈夫ですか?」
「ああ、すまん、ちっと油断したぜぇ」

 既に頭が吹き飛び、右腕の間接に矢が刺さった鎌騎士。対して撃退士たちは4人。
 だが、直後に、状況を不利と見たのか‥‥鎧騎士は再度熱光を放射する。
「くうぅっ!?」
 今回は既に1体の騎士が消滅しているため、その威力はやや弱まっている。
 だが、それでも、魔法防御の弱い者はそれなりのダメージを受けた。特に先ほど鎌での直撃を受けていた水香は、危険な状態だ。
 光による攻撃なら、血を振りかけて表面を覆えば威力は弱まる。そう考えた十一のアイデアは悪くなかったが‥‥惜しむらくは、熱光の高熱で、既に血は乾いた、と言う事か。

「うぇ‥‥張り付いてやがる。気味わりぃな」
 先ほど突かれた場所――腹に張り付いたシャツを引き剥がす十一。
「ま、後ろの村守らなきゃいけねぇしな。もうちっと張り切ってみるか」
 再度、斧で斬りかかる。斜めに振られた斧が狙うは、縫い付けられていない方の足!
 片足が動かせない鎌騎士にそれが回避できるはずもなく、あっけなく足は切断される。
 そこに水香が放った矢が突き刺さり後ろへバランスを崩した所で‥‥
「この程度の熱では、怯みませんよ」
 妖の斜め上への切り上げにより、鎌騎士の上半身が分断され‥‥地に倒れ伏した。


●勇戦〜Lance〜

「うぉぉぉぉ!」
 同時刻。
 真一改めゴウライガは、トンファーで槍騎士の突きを上に逸らし、そのままカウンターのストレートパンチを叩き込む。
「今だ、澄野さん!」
「あら、了解ですわ」
 パンチが叩き込まれた場所へ、更に追撃の矢が放たれる。だが、槍騎士は上手く槍を旋回させ、その矢を弾いた。
 そして、その勢いで、柄でゴウライガの顎を打ち上げる。
「ぐっ!」
 トンファーでこれを受けるゴウライガだが、衝撃は殺しきれていない。が、ゴウライガに気をとられた槍騎士の隙を、絣が見逃すはずもなく‥‥
「やらせませんよ?」
 飛来する矢が鎧のプレートの間に突き刺さり動きを阻害し、追撃を阻止する。
「これで‥‥貫けぇぇ!」
 体勢を立て直したゴウライガ。叩き込まれた拳が刺さった矢の後ろに直撃し‥‥それを更に鎧の奥に押し込んで行く。

 ――そして矢は、鎧の表面を貫通し、カランと言う音を立てて鎧の中に落ちた。

「空洞か!?」
 中身がないのなら、幾ら押し込んでもダメージは増加しない。
 この一撃の隙を突かれ、横薙ぎに振られた槍で弾き飛ばされるゴウライガ。
 そのまま突進する槍騎士。狙うのは後衛にいた絣。
 これを回避するのはそれ程難しくはないが‥‥避けてしまえば後ろの家に騎士が突っ込むのは免れない。そしてそのまま最初の熱光を放たれたなら――

「私の後ろには通しませんよ?」
 絣は、回避せず、強引に一撃を受ける事を選択する。持ち替えたショートソードで横に軌道を逸らし串刺しになるのを回避するが、脇腹を槍に抉られる事を避けることはできなかった。
 喉まで上がってきた血液を強引に飲み込み、ショートソードを鎧に当て押し返そうとする。
 腕力は拮抗しており、押し返す事はままならなかったが‥‥

 ――脇下からロッドが突き出され、爆発を起こし、槍騎士を吹き飛ばす。
「油断大敵、ですよ」
 不敵に笑うソフィアが、後ろから絣を支えていた。
 そして、大剣を引きずりながら走り寄るゆいかが、更に地すりでの切り上げを仕掛ける!
 この一撃は槍で防がれてしまうが、重い大剣での切り上げだ。槍騎士は、軽く空中に浮く事になってしまう。
「さーて、今度こそ‥‥終わりにさせてもらうぜ」
 大きくジャンプしたゴウライガが、ポーズを取る。
 最後の足掻きとばかりに空中で熱光を放つ槍騎士だが、反射増幅が出来ない以上、その威力は微々たる物でしかなかった。
「予想以上に効いたぜ。けど、皆の笑顔を護る正義のヒーローゴウライガが、この程度で負けるかよ!」
 熱光によるダメージを強引に耐え、空中から猛烈な飛び蹴りをで突撃する!
「ゴウライ、キィィィック!!」
 爆発と共に、槍騎士は四散した。


●光の嵐の後に
 パチパチと、周りで拍手が巻き起こる。
 その中から歩み出るのは、二人の撃退士らしき男たち。
「いやはや、後輩のお手並み拝見、と思ってたら、中々やるじゃねぇか」
「帰ってきたのですかー?」
 僅かに驚く絣。
「丁度今な。まだ荒いが、中々の戦いぶりだったぞ」

 戦の後、村の各所では、この戦いの爪跡を消すための作業が行われていた。
 光纏を解除した真一は、片付けを手伝おうとしていたが、先ほどの戦いぶりをみた子供たちに絡まれてしまい、苦笑いしながら対応している。十一は撃退士の男たちと共に最初の一撃で焼かれた家の再建を手伝っており‥‥絣、水香は、泣いている子供たちを宥めていた。

 人の安全確認を含め、各所を見回っていたゆいかが、ポツリと一言を漏らす。
「‥‥あたしたち、この村を‥‥守ったんだね」


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: 天拳絶闘ゴウライガ・千葉 真一(ja0070)
 ありがとう‥‥・笹鳴 十一(ja0101)
重体: −
面白かった!:12人

天拳絶闘ゴウライガ・
千葉 真一(ja0070)

大学部4年3組 男 阿修羅
ありがとう‥‥・
笹鳴 十一(ja0101)

卒業 男 阿修羅
Unstoppable Rush・
砥上 ゆいか(ja0230)

大学部3年80組 女 阿修羅
己が魂を貫く者・
アーレイ・バーグ(ja0276)

大学部4年168組 女 ダアト
日月双弓・
澄野・絣(ja1044)

大学部9年199組 女 インフィルトレイター
太陽の魔女・
ソフィア・ヴァレッティ(ja1133)

大学部4年230組 女 ダアト
雪華の守護・
頭崎 妖(ja4096)

大学部4年208組 男 鬼道忍軍
緑の狙撃手・
鈴原 水香(ja4694)

大学部8年232組 女 インフィルトレイター