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マスター:剣崎宗二
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2012/04/29


みんなの思い出



オープニング

 天界側が京都で大掛かりな事件を起こしている現状。
 だが、敵がその都合を考えてくれる、なんて事はない。
 京都で激戦が繰り広げられているその間も、魔界側が起こす事件は‥‥止まる事はないのだ。


「くうっ‥‥」
 撃退士の一人が起き上がる。
 天魔が起こしたと思われる事件の調査のため、目的地へと移動していた所までは覚えている。然し、その後何が起こったのか‥‥?
 確か急に大地が揺れだし、その後地面が崩れ‥‥

「っ!」
 思考は、目の前の光景に阻まれる。
 そこに居たのは、確かに調査を依頼されたディアボロ‥‥黒光りした金属質の、異形の腕を持つ、グールの様な物。
 考えている暇はない。これが討伐対象ならば、倒すしかない。
 飛び掛る敵に対し、撃退士は武器を構えた。


 崖の上。一人の老人が下の林を見下ろし、笑みを浮かべる。
「実験場に侵入者が来たのは予想外じゃったが‥‥まぁ、これはこれでよいかも知れぬな」
 その隣に、うっすらと人影が。
「轟天斎。遊ぶのもいいですが、適度な所で引き上げてください。三崩様がお呼びです」
「やれやれ、老いぼれの楽しみを邪魔しおって。まぁよい。この結果を見届ければ行くと、伝えとってくれい」


リプレイ本文

●――鳳の場合

「‥‥ってっ‥‥罠にでもはまったかな? 他の皆は無事だと良いけど」
 痛む頭を抑えながら、周囲を確認する鳳 覚羅(ja0562)。
 がけの直下の森のようだ。周囲に木々が立ち並ぶ物の、それほど密度は高くない。
「‥‥とりあえず、合流しないと話にならない、か」
 そう言って、歩き出そうとした彼だが‥‥突如、前方につんのめるようにして転がる。
 ‥‥その後ろで、鋼鉄の腕によって、地面が抉られていた。

「‥‥味方を探す前に、まずはこの状況を何とかしないといけないか‥‥」
 敵の物質透過能力を阻止すべく、阻霊陣の力を展開するため地面にそれを押し付ける覚羅。
 ‥‥だが、旧式であるこの陣符は、「手で何かに押し付けられないと発動しない」と言う欠点を抱えており、それが本来機敏であるはずの覚羅の動きを制限していた。

「くうっ!?」
 展開した直後、ハンマーのような腕に殴り飛ばされ、地を転がる。
 殆ど本能のまま腕を振るう敵を見て、覚羅は、敵には上手く透過能力を使う知能はない‥‥そう判断した。

「‥‥知性がないと最初から知っていたら、楽だったんだけどな」
 僅かに苦笑いを浮かべ、大太刀を抜刀し、ディアボロ‥‥グールの叩き付けを横に流す。
 最小限の動きで相手の攻撃をいなす彼の技に高い錬度がある事は、見る者が見れば分かるのだろう。
 だが、知能の低いディアボロにそれが分かるはずはなく、ただひたすらに猛攻を仕掛ける!

「‥‥甘い。攻撃の後が隙だらけだ」
 黒炎を纏ったその体が、回避のためように横に動いたかと思うと、即座に足払いを仕掛け転ばし、そのまま流れるような斬撃で足を斬ろうとする。
 だが、ディアボロの右腕が蠢いたかと思うと、そのまま液状に展開、盾と化し、覚羅の斬撃を受け止める。即座に後ろへ跳ぶ覚羅の元居た場所を、金属の鞭の様な物が引き裂いた。
「状況に応じて形態を変える腕か‥‥けど、これくらいなら、まだ何とかなるかな」
 後ろへの慣性を強引に体のバネで押し留め、そのままギリギリで逆に推進力に変え、一気に肉薄する!
「我身既鋼‥‥我心既刃‥‥天を斬り魔を断つ‥‥我天魔屠る剣也!」
 振り下ろされた袈裟斬りの一撃。攻撃直後のディアボロは、腕の盾への変化が間に合わず‥‥そのまま、引き裂かれた。

「‥‥さて、と。みんなを探すか」
 鞘へ太刀を収納し、改めて周囲の探索を開始した覚羅であった。



●――サー・アーノルドの場合

 目の前の動き出した異形を見て、頭を掻き、わざとらしく笑う。
「参ったな‥‥私は未熟故個人で敵と対峙した経験はないのだが‥‥」
 サー・アーノルド(ja7315)は、その経験のなさを微塵とも感じさせない、落ち着いた動きで剣を抜き払う。
「これも試練の一つ‥‥名も知らぬディアボロ殿よ、騎士としてお相手願おうか!」

 それに応じるかのように、緩慢な動きでディアボロが接近する。
 3mくらい接近が成されたかと思うと‥‥突如にしてその腕を振り上げ、地面に叩きつける。
 それと同時に金属質の棘はその腕から生え、弾丸のように飛来した!
 咄嗟に横跳びでそれを回避しようとするアーノルド。だが、彼の動きとてそれ程速いわけではない。何発かの棘を足に受けてしまう。

「‥‥どうやら、背中を見せて逃亡する、という選択肢はなさそうだ。とすると‥‥」
 足に刺さった棘を抜き、僅かに体を揺らしながら立ち上がる。
 それを弱ったと見たのか、ディアボロはゆっくりと接近し‥‥その金属の腕を振り上げる!
「‥‥肉薄して、斬り付ける‥‥!」
 交差するように、ショートソードを横に薙ぐアーノルド。咄嗟に危険を感じたディアボロは腕を下ろし、盾状に変形させその一撃を受け止める。そして直後、鞭型に変形させ薙ぎ払う。
「間合いは近中遠と隙がない‥‥参ったね」
 バックステップで、ギリギリ鞭の一撃かわす。すぐさま接近し、剣を構えた彼のその剣には、銀色の炎が灯っていた。
「グォォォォ!?」
 「聖火」の灯った剣に貫かれたディアボロが、苦悶のうめきを漏らす。だが、ここで終わりではない。終わるわけがない。
 振るわれた鉄槌のような腕に防御が間に合わず、横に吹き飛ばされるアーノルド。即座に銀の炎が灯った剣で切り上げ、反撃するが、間一髪で防御されてしまう。そのまま振るわれる鉄槌のような腕。

 ――予想通り。
 既にその手を予測していたアーノルドは、素早く間合いを離すと共にショートスピアに武器を持ち変える。再び銀の炎を灯らせ、槍が一直線に突き出される!

「狙い通りに行ったな。幸運な事だ」
 砂煙をあげ倒れこむディアボロ。槍についた血を振り払い、再びヒヒイロガネに収納する。
「‥‥嫌な予感がするな。急ごう」



●――高城の場合

「やれやれ、だ。団体行動とは聞いていたけど、まさか一対一を強いられるとはな」
 目の前のディアボロを見据える高城 カエデ(ja0438)。
 常に停止しないように、ディアボロの周りを回りながら‥‥慎重に様子を伺っていく。
 イラついたのか、ディアボロが腕を変化させ、金属の棘をカエデに向かって放つ。
「ちっ‥‥!?」
 舌打ちしながら大太刀で棘を弾き、逸らす。
 しかし、完全に‥‥とは行かず、脇腹に何発か受けてしまう事となる。
(「遠距離は一方的に攻撃を受けて不利‥‥近づくしかないな」)
 大太刀を構え敵の視線を遮りながら、ジグザグの動きで接近する。中距離まで接近した所で振り下ろされた鞭型攻撃を横に回避し、そのまま空いた腕と体のつなぎ目に向かい、大上段から一閃!

 カン、と鈍い音を立て、その一刀は金属パーツ部分に当たり、弾かれる。
 幾ら相手の動きが遅いとは言え、パーツとパーツのつなぎ目と言う僅かな隙間を狙うには、相当の集中力か‥‥或いは、相手の動きを止める何かの方法が必要だろう。返される鉄槌を踏みつけるようにジャンプし、更に頭部を狙って横に一閃するが、これもシールド化した腕に防がれてしまう。

「押し切るには力が足りないし‥‥手数で勝負するか」
 急激に動きを大きくし、ディアボロの周囲を周り、隙を突いての突き、斬りをすれ違いざまに仕掛ける。ディアボロは鉄槌の様な腕を振り回すが、リーチの短いそれで速度重視の動きになったカエデを捉える事は出来ず、空振りする。即座に腕を変形させ鞭のように振り回すが、その時には既に、カエデは鞭の射程外に立っていた。

「さて、削るのはこのくらいにして‥‥決めるとするか」
 腕を遠距離モードに変形させ始めたディアボロを、しかとその目で捉える。
 あまりの集中に、周囲が遅く見え始める。狙うは一撃、必殺の一撃――!

 ――一瞬、カエデの姿が掻き消える。
 そして、全てが停止したその後‥‥ゆっくりと、ディアボロの上半身がずり落ちていく。

「――絶影。影すら絶つ神速の一撃だ」

 鞘に大太刀が収められると共に、勝負は決した。



●――彩の場合

 音すら聞こえぬ森の一角。この静かさは、平和を意味するものか?
 ――否。静かなこの一角でも、激戦は繰り広げられていたのだ。

 木の根を蹴り、木の幹を蹴り、枝の上に乗り‥‥彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)が走る。
 速さだけで見れば、まだ実戦経験が浅い彼女はそれ程突出している訳ではない。
 だが、地形を120%に利用した彼女の行動は、鈍重なディアボロの唯一の弱点を突き、捕捉をほぼ不可能としていた。

「‥‥ッ!」
 木の陰から放たれた影手裏剣。死角から撃たれたそれは、感知されずにディアボロの背後に突き刺さる。即座に反撃の棘の雨が放たれるが、その棘が木に突き刺さった時。既に彩の姿はそこにはなかったのだ。

(「‥‥ふむ」)
 四肢に青い「ランブルホーク」‥‥魔具を変形させたパーツを装着した彩が、再度機を伺うため走りながら思案する。
(捉えられる危険性はないけど‥‥このままじゃ何時までも終わらん」)
 そこで、彼女は一計を講じた。

 ディアボロは、木の陰からの影手裏剣を喰らい、即座にそちらへと振り向く。
 そこに手裏剣を放ったままのポーズで静止している彩の姿が見える。
 知能が高い者であったならば、この状態に不審さを感じるだろうが‥‥このディアボロには、その知能はなかった。
 放たれた棘が、彩の設置した幻影を貫くと共に‥‥彩自身は、ディアボロの背後へと滑り込んでいた。

 振り返ると共に鉄槌状に腕を変化させ、振り回すディアボロ。それをしゃがむ事で回避し、突き出されたその腕を掴む。再度腕が変形されたのにかまわず、投げ飛ばすが‥‥直後、至近距離から、その腕から大量の棘が全方位にばら撒かれた。

「ッ!」
 急所のみを四肢でガード、致命傷を防ぐ。
 直後振るわれた鉄槌を、痛む足を押してジャンプで回避。そのまま突き出された拳は、ディアボロが鉄槌のような腕で受け止めるが‥‥これはあくまでもフェイント。本命は、下段へのローキック。
 体勢を崩すディアボロに、更に分身を発生させ撹乱しながら、乱打を加える彩。
 が、動きがない分身はこの近距離戦に於いては効果が薄く‥‥強引に鉄槌のような腕を振り回され、距離をとることを余儀なくされる。そのまま接近するディアボロに‥‥彩は、うっすらと笑みを浮かべた。
「遅かったなッ」
「一応間に合ったつもりなんだけどね」
 ディアボロの背後に滑り込んだ覚羅の斬撃にあわせ、ディアボロの頭部に強打が加えられる。
「TAKE A BREAK, NEIGHBOR!」



●――天城の場合

「へっ、丁度いい――」
 両手を前に構えると共に、天城 空牙(ja5961)が光纏を展開する。その背中に光の翼が、その片手には、白く輝く大剣型のオーラが。
「今までのオレなら無理だったかもしれない・・・だけどやれる・・・この聖天神極式なら・・・!!」
 撃退士の極めて高い身体能力を利用し、ワイヤーを上に投げつけ、飛び掛るディアボロを回避する。
 そのまま、空中からワイヤーを投擲し‥‥ディアボロに巻き付けその動きを制限しようとするが。

 ――それは、ディアボロの体を、するりとすり抜けていく。
 それもそのはず。V兵器でない物理攻撃は、天魔にはダメージを与えられないだけではなく、透過能力でで抜けられる可能性もあるのだ。
 反撃で放たれる棘をスイングで回避し、次の枝にワイヤーを巻き付け、移動する空牙。立体的な回避方法としては、考えられた物であろう。だが――
「うわっ!?」
 鞭状態での中距離の薙ぎ払い。それ自体を空牙はかわしたのだが‥‥薙ぎ払われた鞭は、彼が掴んでいたワイヤーを切断。空牙は地面に落下する事となってしまう。
「‥‥やってくれたな‥‥」
 動けない状態で薙ぎ払いをもう一撃受けてしまった彼は、口元の血を拭う。
 打刀を構えなおし、体勢を立て直す。
「なら、小細工はなしだ‥‥!」
 振るわれた鞭を片手で掴み、引っ張る勢いで一気に接近する。
 振り下ろされた刀は盾型に変形した腕に防がれてしまうが、続けざまの回し蹴りが腰部分にヒット。ダメージこそ天魔には与えられなかったものの、姿勢を崩し、防御に使っていた盾が揺らぐ。
「まだまだぁ!」
 そのまま畳み掛けるような斬撃。狙った急所‥‥腕の接着部等には当てられなかったものの、少しずつ、ディアボロの体には傷が増えていく。
「これで‥‥!」
 体内でアウルを燃焼させ、必殺の一撃を放とうとしたその瞬間。変形したディアボロの右腕が、
彼の腹部にめり込み‥‥吹き飛ばす。そのまま追撃を放とうとするディアボロだが、その背中には、一輪の薔薇が突き刺さっていた。

「どうせなら可愛い女の子のが良かったんだがな」
 やれやれ、と言った感じでそこに立つカエデ。

「助かったぜ‥‥」
 動きが止まったディアボロに、空牙は今度こそ、全力を解放し――その首を断った。



●――相川の場合

「‥‥っ、一人で‥‥果たして、できるのかな‥‥」
 初の依頼。まさか一人でディアボロと交戦する事になるとは、彼女は想像していなかった。
「ううっ、とてもじゃないけど、無理そうだよ‥‥っ!?」
 身を翻し、逃げ出す相川北斗(ja7774)。
 それを、緩慢な動きでゆっくりと追うディアボロ。

「はぁ‥‥はぁ‥‥」
 速度の差で追いつかれないとは言え、常に追跡してきているのだから、ゆっくりと落とし穴を掘っている時間もない。地面に草を結び、足を引っ掛けるために設置した罠も‥‥効いていない。強度が違いすぎるのだ。ディアボロは、強引にその罠を「踏み潰して」いっている。
 足を取られた隙に一撃必殺の技を仕掛けるつもりだった。だが、その前提条件たる罠に相手が引っかからないのでは、攻撃する隙も見当たらない。

「っ!」
 木を使い、何とか放たれた棘の雨をやり過ごす。
 遠距離の打ち合いも、その類の技を持たない彼女には不利。結局は近接戦闘に、持ち込むしかないが――
「今っ!」
 じっと息を潜め、ディアボロの視線が逸れるのを待っていた北斗。
 待ち構えていたそのチャンスが現れた時、彼女は躊躇しなかった。
 一気に接近し、背後から刃を突き刺す。

 ――だが、浅い。
 このディアボロは、生命力にも優れている。背後からの奇襲とは言え、一撃でトドメを刺されるほど、弱くはない。
 深々と突き刺さった刀を抜く暇もなく、振り上げられるディアボロの鉄槌のような腕。
 一撃を覚悟し、北斗は目を瞑るが――

「淑女に手を出されるのは、騎士として見過ごすわけには行かないな」
 鉄槌を、滑り込んだアーノルドの剣が弾き‥‥そのまま逆手の槍を、一直線に突き出す。
 連撃でよろめいたディアボロを、更に北斗の刀が襲う。
 二人による交互の襲撃に耐え切れず‥‥ディアボロは終に、倒れ伏した。



●無事に‥‥

「どうやらみんな、無事みたいだな」
 覚羅が周囲を見渡し、一息つく。
「先ほど学園に確認してきたのだが、私たちが討伐した物が、今回の依頼目標で間違いなかったみたいだ」
「偶然とはいえ、倒せてよかったよ‥‥」
 携帯を閉じたアーノルドに、北斗がほっと一息つく。
「それじゃ、帰るか」

 迎えの車に乗る直前、振り返るアーノルド。
(「あのがけ崩れはタイミングが良すぎた。‥‥まさか‥‥な」)



●崖上
「轟天斎。満足しましたか?」
「実験体のパフォーマンスは中々の物じゃが、もう少し改良の余地があるのう」
「‥‥全く、貴方の実験好きにも困った物です」
「そう言うな、ロイ坊。あんたも、ゲームをするのが好きなのじゃろう?」
「‥‥まぁ、そうですがね‥」


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 撃退士・彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)
 遥かな高みを目指す者・鳳 覚羅(ja0562)
重体: −
面白かった!:5人

撃退士・
彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)

大学部6年319組 女 鬼道忍軍
神速一刀・
高城 カエデ(ja0438)

大学部4年180組 男 ナイトウォーカー
遥かな高みを目指す者・
鳳 覚羅(ja0562)

大学部4年168組 男 ルインズブレイド
幻想童話黙示録・
天城 空牙(ja5961)

大学部4年213組 男 阿修羅
Shield of prayer・
サー・アーノルド(ja7315)

大学部7年261組 男 ディバインナイト
レジャー大好き・
相川北斗(ja7774)

大学部5年238組 女 阿修羅