.


マスター:由貴 珪花
シナリオ形態:ショート
難易度:非常に難しい
参加人数:8人
サポート:11人
リプレイ完成日時:2012/02/11


みんなの思い出



オープニング

●黄道上のアリア・第2楽章
「お休み、カプリコーン」
 幻想的な青白い焔は、揺らめく景色を内包していた。
 遠い湖で崩れ落ちる山羊女の姿。それを一瞥し、薄く笑う男。かざした掌を払い、遠視の焔をかき消した。
 彼を取り巻いていた12本の蝋燭の1本が、音もなく崩れ、砂となる。

 我らを撃てば、この地は護られ。彼らを滅せば、徐々に魔に陥ちる。
 文字通り、命を賭けたゲームだ。我らと、彼奴ら『人類の刃』の。
 単純にして明快。なればこそ、面白い。

「いっておいで、――Aquarius」

 2本目の焔を指先に燈し、ふぅっと息を吹きかける。
 靡く焔が翼となり、巨きな狗鷲を――そして大きな壺を生み出した。
 嗚呼。麗しの我が君に感謝を。
 しばしゆるりと、遊ばせて貰う事にしようか。


●山麓のディヴェルティメント
 鳥取県のとある寺から、一本の電話が寄せられた。
 曰く、『なにやら巨大な鳥が住み着き、滝行に使っている滝の方から異臭がする』と。

 とある日の事だ。
 滝行を終えた和尚は、滝の周辺を飛び回る巨大な鳥を発見した。
 この山にこんな巨大な鳥が居ただろうか、と怪訝に思いながらも、その巨きさ以外に目立って不審な所もなく
 いつの間にか流れてきたのだろう、と呑気に考えていたのだが。
 その3日後。滝周辺は灰梅色の靄が立ち込めるようになり、既に修行ができる様な状態ではなくなっていた。
 靄は甘く、アルコールに似た匂いを纏い、一息吸うだけで視界が歪む。
 危険を感じた和尚は久遠ヶ原へ連絡をとるべく踵を返した。
 その後姿を見て、ギャア、と鷲がひとつ鳴く。

 まるで、挑発するかの様に。


 ――先遣隊の報告書をまとめながら、紫蝶は先の依頼を思い出していた。
 鳥取。人的被害はなく、ただ場所を占拠し、待ち続ける‥‥。
「湖の次は山、‥‥か?」
 敵に振り回されるのは、なんとも面白くない気分だ。
 湖の魔物は『我が君』の命令であり、『ゲーム』であると、そう言っていたらしい。
 そういえば、魔族の中でもとりわけ享楽に目のない一派がいたはずだ。
 命がチップとは、ぞっとしない。が、いかにも悪魔が好みそうな事ではないか。

 パタン、とノートPCを閉じて職員室の窓の外を眺める。
 面倒なゲームに付き合わされたものだ、と。


リプレイ本文

●帝釈の御元で
 長い長い石階段。見上げる先は天国か地獄か。
 四国三十三観音にも数えられるその寺は、古めかしくも荘厳。
 しかしその背後に構える旧い記憶を伝える山々を、灰梅色の霞はただ静かに漂い、包む。

 長い長い石階段の次は登り参道。‥‥流石の撃退士といえど息が上がる。
「っちょ、た、たんま‥‥! 少し、だけ、休ませてくれ!」
 特に、大城・博志(ja0179)は唯一のダアトだった。決して彼が30歳だからバテている訳ではない。決して。
「‥‥ったく、気合がたんねぇなぁ? しゃーねぇ、ちと休もうや」
 志堂 暁(ja2871)は、本堂から奥の院へ続く参道――既に半分山道だが――の途中で足を止める。
 サンキュー! と、博志は参道に座り込み、一息ついた。
 まだ太陽も空高く快晴。だが辺りはまるで薄暗い。
 音が消えたのではないかと思う程の静寂に、折り重なる天鵞絨の天井。見えない空の何処かでギャアと響く鳥の声。
「早く来いとでも言いたげだな――誘っているのか?」
「誘っ、て――?‥‥そうですね」
 水無月 神奈(ja0914)は怪訝な瞳で空を見つめ、その横で鳳・美空(ja2032)は記憶を手繰っていた。
 ――『それにしても嫌だね、この誘ってる感』――。
 あれは一月前。同じ台詞を、同じ鳥取で、確かに聞いた。
 美空は大太刀の柄を撫で、ざらつく心の内を宥める。まだ、あの悪魔と決まった訳では、ない。
「空の敵と正体不明の壺か‥‥厄介だね」
 ふぅ、とスグリ(ja4848)は溜息をついて阻霊陣を見つめ、練った作戦を反芻する。
 鷲を森に誘い出し、森を天然要塞とする――吉と出るか凶と出るか。
「まぁ、どの様な方が敵であれ‥‥私はただ騙し、倒すだけでございます」
 ゼロノッド=ジャコランタン(ja4513)。二重人格らしき彼は、今は『ジャック』と名乗った。
 赤い瞳の奥では『ゼロノッド』がにやりと嗤う。表裏一体の彼らは、戦う事が存在理由であり、存在証明。
「しかし既に空が見えんとは‥‥想像以上に環境は悪そうだな」
 ――七尾は上手くやっているといいが。
 単独で先に現地に向かった七尾 みつね(ja0616)は何やら森に仕込みをすると言っていた。しかし。
 伊達眼鏡をそっと外し、獅童 絃也 (ja0694)は目を伏せる。
 仲間にも話さぬ仕込み、か‥‥。

 各々が考えに耽っている中、博志は3分休憩を終え歩き出した。
「よっし、お待たせ。んじゃ、迷惑な害獣どもをスクラップにしに行くか!」


●王の酒宴と法界の滝
 博志と暁は、本隊とは遠く離れた位置で山を登っていた。目的地は滝口――いや、壺。
『視界が悪い上に幻覚‥‥先に壷を割る方が懸命か』
 と、絃也の発案で、2人は滝を迂回し壺を狙う役割を担ったのだ。
 悪路に深い森に鬱陶しい靄、と最悪の三拍子。しかし博志が印刷した地図とコンパスを頼りに、順調な足取り。
 だったのだが。
(んだこりゃ‥‥想像以上にキくじゃねぇ、か)
 ぐらりと世界が歪む。暁は定期的に自分の体が覚束なくなる感覚に襲われていた。
 靄は今や体を満たし、嘔吐感と頭痛と眠気を綯い交ぜにした様な嫌悪感が込み上げる。
 まるであらゆる酒を混ぜたような、あれだ。
「俺、酒は好きだけどこれはきついなー‥‥」
 コーヒーマスクを持参した博志は、比較的足取りも確か。しかし、酒が得意な2人でもこの有様。
「これ、嬢ちゃん達、やべぇんじゃね、か‥‥」


 その頃滝口では、酒宴が開かれていた。
 主催者は酒壺、主賓は大鷲。陪賓はまだ見ぬ撃退士達。
「たあぁっ!」
 さてここに主賓に牙を剥く者あり。
 滝壺から放たれたみつねの苦無は、滝口の鷲に届かず霧散した。
 しかし、同時に放たれた殺気。戦う意思。それは確実に距離を超えて鷲の意識を捉える。
 ‥‥なに。ドレスに刃を隠して近づく無法者は何時の時代も居るものさ。

 鷲が誘いに乗って動き出す一方。本隊の迎撃地点では、暁の予想通り倒れる者が続出していた。
 最初に意識を手放したのは美空。次いでゼロノッドが、草地に倒れ安らかな寝息をたてる。
「おお、とり、ゼロノッ、ド――」
 景色が霞み、側に居る筈の2人が遠く見える。膝を折り何とか耐える絃也も、そう長くは持たなそうだ。
「ま、待て、戦闘前なのに寝るなっ」
 絃也の体が傾きかけた所を、足先で小突く神奈。乱暴だが、それで意識を保てるなら。
 しかし、と神奈は苦虫を噛み潰す。多少は聞いていたがこれ程強力だったとは。
(一先ず、余裕がある間は呼吸を絞るか)
 戦いが始まれば、余裕など吹き飛ぶかもしれないが。

 ――来た!
 大鷲が滑空し始めたのを確認し、みつねは滝から離れる様に駆け出した。
 体が酸素を求めて、呼吸が増える。体が重くなり、頭が揺れる。
「きゃぁあっ」
 巨大な鷲の爪は左腕を掠め、また上空へ。想像以上に、疾い。
 意識していたのに、わかっていたのに喰らうなんて――でもお陰で頭はすっきり冴えたよ。
 森に飛び込み、仕込んでおいた赤い糸を頼りに天鵞絨の闇を走り抜け、仲間の元へ。
 悔しい――次は、絶対に避けるんだから。


●声は遠く、刃は近く
 森がざわつく。主賓の舞を感嘆する様に。
 大鷲な羽根が動く度、濁る様に停滞していた靄が動き出す。
 みつねが仲間の姿を捉えるとほぼ同時。上空を旋回する大鷲が彼女らの姿を捉えた。
「七尾君!」
「スグリちゃん――皆、来るよ!」
 クァアアッ
 言うが早いか、遥か蒼穹から放たれる鎌鼬。葉を薙ぎ、枝を薙ぎ、襲いかかる風の暴力。
 鎌鼬はみつねとゼロノッドの頬を切り裂き、飛散していく。
「フフ、私に傷ですか! ああ、私が死への道案内して差し上げましょう。さあ、騙されて下さいな?」
 瞳の中の『彼』が、どくんと脈づく。ぬるりと頬を伝う血を撫であげ。月白に輝く無尽光を迸らせゼロノッドは嗤った。
 逆に、風に逆らわず自ら倒れた美空は刃から逃れ、変化に気づく。
(風で、靄が晴れました‥‥!)
 陽の光も通る今なら、使えるかもしれない。ポケットに忍ばせた手鏡をそっと取り出し、鏡面を空に向けた。
 天か魔かも判らぬこの鷲に、鳥の習性があるならば。

 それは一瞬。まるで槍でも降ったかの様な。
 少女の真っ白なセーラーに、じわりと赫が滲んで、広がる。
「鳳!!」
「‥‥離れろ!」
 大太刀を横薙ぎに走らせる神奈と、スクロールで光弾を撃つ絃也。
 巨体は堪らず身を翻し、木々の枝から撃退士達を見下ろして羽を揺らした。
『‥‥おや? そこのお嬢様は――。再びいらっしゃるとは。僥倖、僥倖』
 不快な、大仰な。天鵞絨の森に響き渡る声。鷲の方から聞こえるが、鷲の口が開く事はなく。
 脇腹を押さえながら美空が立ち上がり、鷲の紫黒の瞳を睨んだ。
「やはり、また貴方ですか」
『御機嫌ようマドモアゼル。我がゲームはお気に召したかな?‥‥おっと』
 退屈な会話に興味はないと言わんばかりに、スグリ目掛けて滑空を始める大鷲。
 咄嗟にトンファーで爪を受け止め、弾き返す。
『アクイラは粗暴でね。ほら、アクアリウスの美酒も回ってきたでしょう。油断すると喉元を抉られますよ?』
 じわじわと。散った靄が空気を、体を、意識を蝕む。
 森は再び灰梅色の結界に閉ざされた。


 強烈な酒気――。
 滝口に辿り着いた博志と暁は滝口に置かれた壺を親指で指し、目を合わせた。
(アレっぽいな)
(間違いねぇ、奴さんだなぁ)
 こくり。一つ頷いて。
 ――この鬱陶しい靄も、あの壺をぶっ壊して終ぇにしてやらぁ!
 暁はショートボウの弦を引き絞り、壺の中心を狙い、撃つ。
「風に乗りて歩むモノが如く――毟り抉り貪り喰らえ!」
 そして暁の矢と息を合わせて博志が光弾を放ち、蒼い風矢が酒壺を覆い尽くした。
 物魔両面の衝撃がアクアリウスを襲う。光は爆ぜ、舞い上がった砂塵が徐々に晴れて跡形もない、はずだった。
「おっし、余裕よゆ‥‥?」
「伏せろ!」
 砂塵の奥から飛来したのは魔法弾。
 酒壷からは赤銅色の液体が立ち上り、少年を模した様な姿で、掌を向けていた。
 ――オウ、ノ セイハイ。マモル。
「おいおい壺の癖に反撃するのかよ!」
 ――無機物に見えてこいつも天魔、って事か。
 再び百科事典にアウルを込める博志。その僅かな時間を稼ぐ為、暁が飛び出した。
 ショートボウは淡い粒子と化し、右足に白焔が絡みつく。
 少年の放った魔弾をその身に受けても。そんなんでビビる程ヤワな魂ぁ持ち合わせてねぇんだよ!
「クカッ、壺は壺らしく! カチ割ってやらぁッ!!」


 その音は、数十m先の森でもはっきり聞き取れる程だった。
 そして靄を押し分ける様に。穏やかに赤銅色の発光体がアクイラを包む。
「今のが、『アクアリウス』の断末魔の様ですね?」
 笑みを浮かべたゼロノッドは木の幹に足を掛けて跳躍し、トンファーを回した。
 ゼロノッドが大鷲の左翼を打ち据えれば、絃也の魔弾が右翼を狙う。
『ええ。貴方達は此処に居るのにアクアリウスが突如消滅した‥‥さて、賢いアクイラはどう動くと思います?』
 クスクスと反響する不愉快な嘲笑。
「貴方は一体何が目的なのです!」
『やれやれ、同じ問いですか。私はただの悪魔。そして我が君にゲーム盤を下賜された。それだけです』
 翼を広げ飛び去ろうとするアクイラ。みつねの頭に、先ほどの言が木霊する。
 ――どう動くと思います?
「まさか、滝に戻ろうと!?」
 壺の消滅で別働隊の存在を察知したアクイラは、まずそちらを潰そうと考えたのだ。
 みつねが急ぎ苦無を撃つが、大鷲はひらりと葉々の海を掻き分けていく。
「させない!」
 パーカーのポケットから阻霊陣を引っ張り出し、地面に当てるスグリ。
 瞬く間にアウルが木々を覆い、森一体を阻霊の檻とする。が。
 バキバキバキッ!
「力ずくで、抜けていっただと」
 絃也は眉すらも動かさず、木々の隙間から鷲の姿を目で追った。
『さぁ、お喋りの時間は終わりですよ』
「忌々しい悪魔め――私達も滝へ!」
 大鷲は体当たりで枝々を叩き折って蒼天へ抜け、舞う様に宙空を一回りして。
 滝へ向けて、滑空を始めた。


●飛来する悪意、落下する正義
「だああぁっ!?」
 まるで弾丸。翼開長3m程の大鷲が勢いよく降下し、その嘴が崖に突き刺さる。
 地面を大きく抉り、滝の形が変わる程の威力。愛酒の壺を割られた恨みか、強烈。
 紙一重で避けた博志は背中が凍る思いだ。
「爆ぜよ! 裂く風よ!」
 しかし怯みはしない。翻り、幾重にも刻まれる風の刃は大鷲の右足をもぎって吹き飛ばす。
 途端、高い声で啼き散らす巨鷲。初めて、痛みに叫び泣く。
 そして崖で仁王立ちした暁は、右手を天に向け指で挑発した。
「おらよ、チキン野郎。しっかり俺を狙って来な!」
 挑発に乗り滑空するその姿を見据える。目を離すな。離すな。離すな、跳べ。跳べ!
 逃げも隠れもしねぇよ――避けるけどなぁ!
 地を蹴り、前方宙返りで大鷲の爪を避けた暁は、そのまま全体重をレガースに載せて。
「はっ焼き鳥にしてもまずそうだ、とりあえず落ちとけや!」
 グギャアアァ!
 渾身の踵落とし――しかも25mの落差付き。
 丁度森を抜け、滝壺へ駆けつけた本隊はその轟音に唖然とした。
「ご、豪快だな‥‥」
「楽しそうですね――私達も混ぜて貰いましょう、ねぇ『ゼロ』?」
 頭を振って、少し力無く羽ばたくアクイラ。この隙を見逃す手はない。

「さぁ、ここからが正念場、かな」
 絃也はスクロールを広げて魔力弾を2発3発と撃ち放ち、それを目眩ましにスグリが苦無で尾の付け根を狙う。
 だが巨体といえど、一点に易々と当たる物ではなく。苦無はアウルを失い溶け消えた。
 アクイラの羽根が激しく揺れ沸き起こる鎌鼬。
「風だ!」
 横飛びするも範囲内に残った神奈の脚とスグリの上半身を切り裂き、赤い血を風に乗せる。
 羽根の震えから予測した絃也のみ、鷲の真下に逃げ込む事でやり過ごした。
「――鳳流、鳳・美空。いざ参ります!」
 ふわ、と跳び上がる美空。
 鎌鼬の残滓すらも彼女には空を舞う足場なのか――いや、博志が崖上から放った風に乗ったのか。
 靭やかな動作から繰り出される大太刀の一撃は重く、そして喰い込んだ刃先から博志の魔法が爆ぜる。
 高い鳴き声。ああ、主賓に刃を突き立てるなど。万死に値する。
 アクイラの腹部は今や黎く濡れ、空を旋回する度黒鳶色の雨が撃退士達に降り注ぎ。彼を、呼び起こした。
「アはハハ。血ダ!‥‥ボクも切り刻ンであげルヨ」
 月白の光纏が失せ、ゼロノッド――『ゼロ』という名の彼――は狂った瞳で空を見上げる。
 目の前の生物を斬りたい。その衝動で、彼は走った。
「光纏もしないなんてそんな、無謀です!」
 美空の声も届かず。ゼロノッドは大鷲に向かい、跳びかかる。
 光纏とはアウルを全身に巡らせ、撃退士たる力と成す事。それを放棄するという事は。
 ――ぞぶり。
 防御能力を失った体は、総ての攻撃を容易に受け入れる。
「南瓜男!!」
「ゼロノッドさんを離しなさい!」
 腹部に喰い込む嘴が、貫通する前に。みつねはありったけの苦無を投擲した。
 同時に絃也が、博志が、暁が、スグリが――可能な限りの弾幕を胴体にぶち込む。
 既に右足がもげ落ちている上、嘴も塞がっているのだ。ピンチには違いないが、又と無いチャンスでもある。
「リスキーだがなぁ、激しくていいんじゃねぇの!」
 胴体に集中攻撃を受けた大鷲はゼロノッドを開放し、力を絞って上空を目指した。
 主賓には従者が付物だ。もう一人くらい、道連れにしてみせよう。
「大城君、崖から降りるんだ! 孤立すると狙われる!」
 危険を察知したスグリが叫び、大城も滝壺に降りて。全員が地上で迎え撃つ。

 どれにしようかな、かみさまのいうとおり。


「予想通り、だな。俺の所、に来ると、思って、た」
 喰い込む爪。絃也の腹部を裂き、赤い飛沫が咲いた。

 そして喰い込む、絃也の鉤爪。

 終始後衛として距離を取り、不慣れな魔法まで使用して。総てはこの一瞬を騙す為の、長い長い伏線。
「残念だが、俺の本命、は、こっちなんで‥‥な」
 アクイラの羽根を貫通した爪を回し抜くと、黒血が吹き出し、辺りを染めた。
 既に機能を失った羽根。飛べない鳥は、ただの的。

「終わりだ、鳥。貴様の狂った主人でも呪う事だな」


●追悼のラメンタービレ
「先月、似た様な依頼を受けたんです」
 救急箱で負傷者の手当をしながら、美空はぽつりと話し出した。
「前回はカプリコーン。姿から、山羊座の化身でしょう」
「今回は水瓶座のアクアリウスに‥‥アクイラって何だろうね?」
 首を捻るスグリ。それにみつねが笑顔で答えた。
「あ、水瓶座の隣って鷲座だから、それかも〜?」
「一応メインは壺だったのか‥‥!?」

「ふふっ、何やら見事に騙されましたね」
「お前はその問題児を何とかしろ、南瓜男」
「何とかなったが、次はないかもしれんな」

「くかかっ! ま。いーんじゃねーの? 中々いい激しさだったぜ」


 また、束の間の休息が訪れる。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: 厳山のごとく・獅童 絃也 (ja0694)
 撃退士・鳳・美空(ja2032)
重体: −
面白かった!:6人

たぎるエロス・
大城・博志(ja0179)

大学部2年112組 男 ダアト
飛燕のくノ一・
七尾 みつね(ja0616)

大学部5年53組 女 鬼道忍軍
厳山のごとく・
獅童 絃也 (ja0694)

大学部9年152組 男 阿修羅
郷の守り人・
水無月 神奈(ja0914)

大学部6年4組 女 ルインズブレイド
撃退士・
鳳・美空(ja2032)

大学部4年306組 女 ルインズブレイド
撃退士・
志堂 暁(ja2871)

大学部8年316組 男 阿修羅
夢の中で死にましょう・
ゼロノッド=ジャコランタン(ja4513)

大学部4年49組 女 阿修羅
『封都』参加撃退士・
スグリ(ja4848)

大学部3年314組 女 阿修羅