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マスター:加山 彰
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/12/08


みんなの思い出



オープニング

●鱶である土の竜
 幼いころは両親に連れられて、あるいは小学校の遠足などで訪れたことが誰しもあるのではないだろうか。親になれば子供を連れてピックニックにやってくることもあるかもしれない、ゆったりとした時間が流れる市民の憩いの広場。
 暖かな日差しが降り注ぐ休日の自然公園。
 ライブ会場などにも使用されるこの場所は、資材搬入などに使われるコンクリートで舗装された道もあるが殆どが芝生。
 転んでも痛くない芝生の上を歩き出したばかりの幼子がヒラリヒラリと舞う蝶をトテトテと追いかける姿は微笑ましく、公園でくつろぐ人たちの笑顔をさそっていた。
 芝に足を取られた幼子が尻もちをつくように転ぶと、視線の先に三角の形をした鈍色の物体が地面を滑るように動いていた。
 いままでに見たこともない物体に興味を示しハイハイで近づいていくと、地面に付いた手が沈み込み小さい体は完全に地下へと吸い込まれてしまった。その現場を見ていた父親が驚きの声をあげ子供が消えた場所へと駆け出す。
 足をもつれさせ膝を芝にこすり付けるようにたどり着くと子供が消えた場所には穴があいていた。
 幸いにも穴は深くなく消えたと思われた子供は穴の中で何が起きたのかわからないと目を見開いていたが、ケガらしいケガは無いようだった。
 安堵の息をついた父親が子供を助けだすと、周囲の地面が異様にやわらかいことに気がつく、少しの力を入れるだけでも崩れる落とし穴のようになっていた。しかもそれは横に長くトンネルになっていて、子供が落ちたのは場所は長いトンネルの一部でしかなかった。形状はモグラの巣に似ているが大きさが信じられないほど巨大であった。
 父親がトンネルが続くと思われる先へ視線を向けると、先ほど子供が見つけた三角形の物体がトンネルを辿り芝をかき分け急速に接近してきていた。
 幼子は知識が無くそれが何か理解できなかったが、父親はそれが何か瞬時に理解できてしまった。モンスターパニック系の映画で数多くモデルとして使われる生物、そしてこんな陸地に決しているはずの無い存在。
 早く離れなければと本能が訴えるが、恐怖に支配されてしまった体が足の動かし方さえも忘れさってしまった。
 ただ一つできたことは。
「サ、サメだ!!」
 海にも川にも面していない自然公園で、子供を抱えた父親の悲鳴が響きわたった。

●斡旋所
「某県の自然公園にてディアボロと思われる固体が発見されました。形状はサメのような頭部と背びれ、そしてモグラのような体を持っているため、サメモグラと呼称」
 斡旋所のオペレーターが依頼書を読み上げる。
 本来なら憩いの場となるはずの公園が、人を食らう化け物の巣となってしまったのだ。
「現在、公園の中心から円状にサメモグラの巣が外へと伸びており、このまま進むと公園の外の地下に埋められているガス管などに噛り付く恐れがあります」
 よって依頼はサメモグラがガス管に到達する前に討伐が最低条件となる。
 オペレーターはパソコンのディスプレーをカウンター側へ向けると、ガス管を齧られた場合の予測データを表示した。
 映しだされた画面は公園周辺の地図で、赤い円がものすごい速さで広がっていった。
 最終的には破裂したガス管を中心に連鎖的に爆発がおこり半径数キロメートルにわたって火災が起きている。このデータは最悪を想定しての物であるが、これが現実に起きてしまう可能性は十分にある。
「地中での速度は海中のサメ同様、倒すには地上に引きずり出すのがベスト、そこでトラックミキサと足場となる鉄板を用意しました。有効に活用してください」
 並べられるトラックミキサの操作解説書と鉄板の写真。
「中心部に向かうには大よそ、二つのルートがあります」
 カウンターに向いたままのディスプレーの画面が公園内部の地図と切り替わる。
「一つ目は入り口から真っ直ぐ直進して中心部を目指すルート」
 地図には入り口から中心部へまっすぐ伸びた矢印が表示される。
「二つ目は資材運搬用の舗装された道を使い迂回するルート」
 矢印が切り替わり、遠回りする蛇行した矢印になる。
「どちらのルートにメリット、デメリットはありますが、それはみなさんの現場の判断にまかせます」
 オペレーターはディスプレーを元に戻して依頼書を差しだしてきた。


リプレイ本文

●フェイズ1
 都心の中、隔離された無人の公園。
 その正面入り口にゼロ=シュバイツァー(jb7501)の運転するトラックミキサがつけられた。はじめての運転とは思えないほどのスムーズで無駄のない駐車をする。
「おまっとうさん、注文のセメントもってきたで代引きや」
「ごくろうさまシュバイツァー」
 鉄板運搬を担当する南條侑(jb9620)、用意されていた鉄板の横から労いの声をかける。
「ツッコミを入れてほしかったんだが」
「それはすまなかった」
「素直にあやまられるのも、キツイで」
 とりあえず気を持ち直したシュバイツァーが見当たらない他のメンバーに付いて尋ねようとすると、公園を囲っている塀の上を走って花菱彪臥(ja4610)が戻ってきた。
「ミキサー車はぐるぐるしてるとこ面白い!」
 塀の上から飛び降りてきた花菱が、ぐるぐると稼働しているミキサーを見て元気いっぱいにはしゃぐ。
「確認ごくろうさま」
「公園周辺見回ったけど、情報通り誰もいなかった」
 ミキサー車を待っている間、花菱の意見で周囲に人影がないか作戦開始前にもう一度確認を行っていた。
 多方面を見回りやルートの確認に行っていた残りのメンバーも帰ってきて情報に誤りがない事を確認すると作戦通り、最短ルートの使用となった。後は公園内に入って対象のサメモグラの殲滅。
 ミキサー車が動き出す。狭い公園、目的の場所はすぐそこなのだが、地中には動く障害。
「たのみますよ護衛のみなさん」
 ミキサー車の前に、足場用の鉄板を持った花菱と南條、そしてそのさらに前方にミキサーの護衛を務める雪室チルル(ja0220)、雫(ja1894)、ラファル A ユーティライネン(jb4620)の三人がいた。
「まかせてよね! 鮫の一匹や二匹、あたいの敵じゃないことを証明してやるわ!」
 サメが泳ぐ公園に臆することなく真っ先に踏み入れたのは小柄な元気娘の雪室。
 地中を泳ぐサメモグラ、すでに被害者が出ている。微かな風でも揺れる背の低い芝はどこから襲ってくるかを隠す蓑になっていた。
「この作戦、目的位置まで確りと護衛出来るかが重要ですね」
 雫も恐怖など一切見せず雪室の横に並ぶ。
 一歩を間違えば、その瞬間に足を食い千切られるかもしれないサバイバルすぎる公園。一般人なら大金を積まれても拒否するだろう。それを彼女らは自身が持つ能力への自信と撃退士の誇りが足の震えさえ起こさせない。
 芝生を一歩踏み込み、二歩目を進み三歩目の場所で進路を横切る最初の巣穴を見つけた。
「ラファル」
「ラファルさん」
 巣穴発見を三人目の護衛担当のラファルに伝える。
「まかせろ」
 ラファルが気合を入れて進み出る。
「俺達に迎撃の用意ありだぜ」
 早速発見した一つ目のトンネルを飛び越えて、機械化してサイレンを響かせた。響く爆音に公園の芝が揺れ鮫の背ビレが姿を現した。数は三、確認されている数と一致する。とすると今はトラックの前にはいないとラファルが合図を送る。
 南條が空中に五芒星書き敵意ある者を拒むドーマンセーマン発動させ、鉄板運搬の花菱と鉄板を運び出す。
 雪室と雫はラファルに中央正面を任せて、左右警戒ために散開した。
「お、重っ…く、なぃ! 楽勝、だぜ」
 んぎぎ、と気合を入れて運ぶ花菱、共に運んでいる南條との慎重さがあるため花菱の方に負担が傾いている。
 ラファルが敷いた鉄板に繋がる巣穴を発見し、サイレンの音と唸り声にひかれたサメモグラが一匹近づいてくるのを確認すると、機械化した肩がポップアップし三門の砲門が姿を現しワザと踏み崩した巣穴にめがけ煙幕(ナイトアンセム)を撃ち込んだ。
「奢りだぜ、遠慮なくくらいな!」
 本来ならサメモグラを守る盾となるはずに巣穴であったが煙などの気体を流されては逆に逃げ場のない袋小路、認識阻害の効果がある煙に突っ込んだ対象は、サイレンの音も認識できなくなりパニック起こしたようだ。
 ブレーキが壊れた急行列車のように、巣穴をなぞって爆走する。
 しかし不運にも暴走で載ったルートが鉄板へと続くトンネルであった。鉄板にむけて一枚の背ビレが突き進む。
「why?」
 ラファルがパニック系映画で真っ先にやられる三下雑魚のようなセリフをこぼした。
 敵意ではなく錯乱での接近だったため南條が使ったドーマンセーマンの効果が薄かった。芝をかきわけ、鉄板を置こうと丁度、巣穴を跨いでいた花菱の背後に迫る。このままサメモグラが飛び上がりその牙で噛り付いていたら負傷は免れなかっただろう。
 だが、サメモグラは錯乱していた。
 背ビレ以外を地上に出すことはなく、花菱の股下を通過した。
 そのさい、背ビレの先端がわずかだが花菱のズボンにかすっていったのである。
「アウッチ!」
 アクション映画の絶対に死なない主人公のような悲鳴をあげた花菱、全身に鳥肌が走り耳のテッペンまでもが震えていた。きっとジェットコースターの急降下した時のようなスーっとする嫌な爽快感に襲われたのだろう。
 かすっただけなのでダメージは一切ない、が微かにだが布の焦げたような臭いがした。あと二センチ身長が低ければ、男の急所がピンチだったかもしれない。
 一方の南條は190近い日本人平均身長を大きく上回るタッパがあったため、股下を通過した背ビレは一切の無害であった。
「……とりあえず、巣をどうにかしないといけないな」
 複雑にうねっている巣を暴走しさっていく背ビレを見ながら南條は苦言を呈す。
「鮫のくせにアリの巣状に巣を作るとか迷惑以外の何物でもないが……。作った悪魔が一番の迷惑だな」
「さらりとクールにきめないでほしいじゃん、あと二年で絶対に身長でおいついてやるぜ!」
 どこか強がっているように見えた南條が花菱に訪ねる。
「怖いのか?」
「な、何言っての南條にーちゃん、こ、怖いわけないじゃん、モグラなんて弱そうだし!」
 最短距離を選んだ影響で、発見から接近までの時間が非常に短い。護衛の一人が突破されれば他のメンバーがフォローに入るより先にミキサー車までたどり着いてしまう。
 雪室は一人、トラックより先行して意図的に巣の上を通り相手に自分の居場所を知らせ、挑発を使用した。
「こっちに注目なのよね」
 挑発にかかった二匹が進路を変えて雪室に向かう。一対二という不利な状況を自分から作りだす。無茶とも思える雪室の行動だが連携が取れる仲間がいるならそれは作戦行動へと昇華される。
 雪室に向かう二匹の背後を冷静にチャンスと判断した雫が足音一つ立てることなく追走していた。
 無茶と冷静、この二つが高次元で噛み合えばそれは戦いに勝利するための術となる、人はそれを戦術と呼ぶ。
「これで、倒れてくれれば後が楽になるのですが」
 雫の烈風突きが背ビレに炸裂。
 背ビレを傷つけることには成功したが、本体までは地面が邪魔でたいしたダメージはあたらなかった。だがこれも計算の内、雫自身もこれで倒し切れるとは思っていない。
「雫、後ろだ」
 雫のハンズフリーになっているスマホからシュバイツァーの声が聞えた。
 雪室の挑発圏外にいた最後の一匹が雫の背後の迫っていたのだ。
「了解」
 雫はその短い連絡に素早く反応、フワリと浮かぶように飛び上がった体は風に舞う木の葉のように背後から襲いかかってきていたサメモグラを交わす。先ほどまで雫のいた地点に鋭くギザギザな牙が通過していった。
 着地と同時に雫は束縛しようと忍法「髪芝居」を使用したがすでに敵は地中に戻り効果は届かなかった。だがこれでいい、第一目標はあくまでもミキサー車の護衛である。殲滅は巣を壊滅させた後で十分なのだ。
 ラファルが今度は進攻方向を確認して煙幕を撃ち込む。今度こそサメモグラはミキサー車の進路から遠のいた。同じミスを二度はしない、三下雑魚風キャラは好きでも自分がなるつもりは毛頭無いのだ。
「今のうちだ」
 花菱と南條、わずかに間にコツを掴み鉄板運搬をテンポよくスムーズに行うと、狭い公園の入り口を華麗なハンドル捌きで通過してきたシュバイツァーが幅ギリギリの鉄板の上を、必要以上にエンジンを噴かせることなく見事なアクセルワークでクリアさせる。
「よし、この調子や、次の設置ポイントもたのむで」

●フェイズ2
 トラックミキサを公園中央まで運ぶ作業は迎撃担当の雪室、雫、ラファルの活躍で車体には損傷なく、コツを掴んだ鉄板運搬の花菱、南條の素早い行動により無事成功した。
「いくで」
 そしてミキサー車をとめたシュバイツァーがセメント投入作業を開始する。
「おらぁ、ヒナちゃん(相棒兼恋人)のためならえんやらぁこらぁ〜♪」
 ミキサー車右後方に移動したラファルが煙幕をばら撒きながらトンネルを耕して空気抜きをして速やかに充填するように補助をした。
 その音に引かれ襲ってきたサメモグラを南條がさらに大瑠璃翔扇で巣穴を崩してワザと自分の所におびき寄せ、八卦石縛風を使い迎え撃つ、まだ体の殆どが地中なため直撃こそできなかったが、ミキサーからの接近ルートからは外れた。その感にもセメントは流れ続けている。
「別の個体か」
 一匹を退けたらさらに別のサメモグラが迫ってきた。今度は大瑠璃翔扇で迎え撃ち、痛みで顔を出した所をラファルがブリアレオスでぶっ叩いた。
「リアルモグラ叩きだぜ!」
 ラフェルに打ちのめされたルートを逆走して逃げるサメモグラ。
 進路を変え、今度は正面に回りこんできた。ここは人数の都合上雫一人が担当していた。
「誰か、雫の援護を」
「一人で大丈夫」
 セメントの投入作業していたシュバイツァーが気がつき声を上げるが、それを雫自身が拒否した。
「それより、この場所のフォローをお願い」
 雫の前方には二匹、守っては防げないと判断した雫は自分から打って出た。泳ぐ背ビレ目掛け一騎駆けを放つ、宙返りから放たれる華美な技は自身へと注目させには十分だった。
「巣に入ってさらにおびき寄せる」
「了解」
 投入作業の操作があらかた終わったシュバイツァーが雫の向けた地点をケアしながら闇の翼を使い飛翔し全体を見渡し襲撃状況を確認する。場面次第では護衛の配置の変更指示を出すのがシュバイツァーの役目でもあったから。
 フォローを確認した雫はナイトビジョンを装備して巣の中に飛び込んだ。体格の大きい大人にはできない自身の身体を把握しての戦術である。
 雫の活躍により一匹は完全に釣りだされた。
「雪室、花菱、残りがそっちに行ったで」
 流し込まれるセメントと各々の誘導がうまくはまり、サメモグラの達の活動範囲は大きく制限されていっている。ミキサー車まで向かうルートはもう雪室と花菱が担当している左後方を残すのみだ。
「あたいたちにまかせてなのよね」
「びっしり歯が生えてるのがスゲー、強そう」
 もう残ったルートがここしかないのは知能が低くとも本能的に感じたようで、今まで殆ど背ビレしか見せていなかったサメモグラが地中から顔を出し鋭き牙を見せ、自分たちの邪魔をする雪室と花菱を威嚇してきた。
「でも通る道がわかってるなら、怖くないぜ!!」
 花菱は剥き出しになっている鼻っ面にフォースを撃ち込み、サメモグラを後ろへと後退させた。そこに全力跳躍でジャンプした雪室がサメモグラの真横に大きな音を立て着地して挑発する。
「あんた鈍すぎなの」
 挑発に乗ったサメモグラが雪室に噛みつこうとしたが。
「残念、時間切れなのよね」
 残っていたこのルートにもセメントが流れ込んでサメモグラを飲み込み押し流した。
 セメントに飲まれる前に巣から飛び出した雫。
「さあ、反攻の開始です」
 自身にそして仲間につぶやくように、しかし力強く宣言した。

●ファイズ3
 上空で状況を観察していたシュバイツァーがセメントの流し込みが殆ど完了したことを確認する。流されたサメモグラたちはもう公園入口付近に集まらざるおえなくなっていた。もうじき地上に押しだされるだろう。
「みんな、トラック護衛はもええで、もうじきあそこに顔を出す」
 セメントの流れを追いかけていた雪室が一番近く、一度巣穴に潜っていた雫が一番遠かったが小さい公園、たいした距離ではない撃退士の身体能力ならば、わずか数秒で駆けつけることができる。
「さて、そろそろ俺も暴れさしてもらうで!」
 闇の翼を展開しシュバイツァーは漆黒のアウルを纏い前線へと飛翔する。
 シュバイツァーの情報分析通り、セメントに追い詰められたサメモグラは地上へと追い出され、芝の上のその半分サメで半分モグラの体を現した。
 打ち上げられたサメモグラはその短い足に付いている長い爪で新たな穴を掘ろうと地面に突きたてる。向かう先は公園の外、ガス管などが地下に埋められている一般道だ。
「逃走される前に仕留めるのよね」
 真っ先に追いついたのは、雪室と花菱。
「地上にでればこっちのものだぜ」
 一番はじめに地面に潜ろうとした一匹に花菱が審判の鎖を巻きつける行動を封じ込める。
「雪室さん!」
「了解なのよね!!」
 神速のコンビネーション。
 相手に逃げるどころか、反撃のする間も与えず雪室は封砲を叩きこんだ。
 そして上空から追い抜いたシュバイツァーがランカーを撃ち込み公園内へと押し戻す。地を這うサメモグラが反撃できない距離からのヒット&アウェイ、ランカーの攻撃はサメモグラの爪重く抱き地中への退避も塞ぐ。
 押し戻されたサメモグラを待ち受けていた南條が蠱毒、アウルで生みだされた蛇の幻影
を使い噛みつかせた。これは留めを刺す攻撃ではなく、自分よりも攻撃力の強いラファルへの支援だ。
「ユーティライネルさん、出番ですよ」
「まとめて袋にしてやるぜ!!」
 ラファルは南條の信頼に応え、期待通りの攻撃力をサメモグラへとぶちかます。
 最後に神威を使った雫が全身にアウルを全身に循環させ、自分自身が砲弾のなったかのような勢いで一か所に追い詰められたサメモグラに向かい時雨を撃ち込んだ。
 この後はもう一方的な戦いであった。
 地の利を失ったサメモグラたちは反撃らしい反撃もできずに有利になっても油断せず互いに支援やフォローを欠かさない連携をとる撃退士たちにより殲滅されていった。
 セメントの投入を防げなかった時点で奴らの敗北はすでに決まっていたのだ。
 撃退士たちはケガもなく、用意していた救急箱の出番もなく無事に依頼を完了させた。

●穴埋め始末
 撃退後、サメモグラの体に興味をもった花菱が近くで観察をする。
「頭はサメで体はモグラ、やっぱり怖いよりもキモイなー」
「ヒレがなくモグラの足なのですね、フカヒレがなくて残念です」
「え!?」
 同じく観察していた雫のつぶやきにギョとする花菱。
「なんでもありません、それよりお願いがあります」
 雫はサメモグラから視線を外し戦場になった小さな自然公園を見る。
「流石に穴ぼこだらけでは、此処で遊ぶことが出来ませんからね」
 撤収する前に巣の埋め立てを仲間に呼びかけた。


依頼結果