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マスター:烏丸優
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/10/23


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。
 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。


●副題 〜ヤンデレのヴァニタスに死ぬほど愛されて眠れない撃退士〜

 十月三十一日、ハロウィンの夜。
 気がついた時、あなたはなぜか、薄暗い夜道の真ん中に立っていた。

 ――ここは……?

 不思議に思ったあなたが周囲を見渡してみると、そこには見慣れた久遠ヶ原の光景が広がっている。どうやらここは学園の中のようだ。しかし、ここに来る前なにをしていたのか、どうやってここに来たのか、どうしても思い出せない。
 混乱するあなたに、さらなる衝撃が襲いかかる。
 あなたの視界の先、薄暗い夜道の奥に、小さな人影。そのシルエットには、なんとなく見覚えがあるような、ないような。

 ――あの人影は……まさか……?

 人影はあなたに近づいてきていた。軽やかな足音が闇に響く。
 月明かりが差し込み、人影の正体はすぐに露になった。
 浮かび上がったのは、青色の髪、青色の瞳。幼い顔立ちに華奢な体つき。
 蒼の少女・レイン(jz0211)は、あなたと視線を合わせると、にこやかに微笑んだ。

「――えへへ、あなたに逢いに来ちゃいました」

 そう言ったレインの頬は、赤く染まっていた。まるで彦星との逢瀬を待ち焦がれていた織姫みたいな、そんな反応だった。
 碧眼を潤ませ、レインがあなたを見つめる。あなたの言葉を待つように。上目遣いで見上げる。
 そんな恋する乙女なレインとは反対に、あなたは戸惑いの表情を浮かべるしかなかった。

 ――なんで、ヴァニタスが学園に? というか、その反応はナニ?

 あなたはそのヴァニタスのことを直に逢って、あるいは報告書を読み、あるいは学園の噂で訊き、よく知っていた。
 ヴァニタス・レイン。
 暴虐の女悪魔ディアナの忠実なしもべで、主人に絶対的服従を誓っている狂愛の少女。愛する主人のためにその身を捧げ、幾人もの撃退士を屠ってきた蒼き魔女。
 そのはずなのだが……。

 もう一度、たしかめるようにあなたはレインを見つめる。やはり、どう見ても本人にしか見えない。
 だが、だとすれば何でこんなところにいるのか。
 そしてどうして、そんな好き好きオーラを纏っているのか?
 まるで、そう。主人である女悪魔に向けるような、異常なまでに盲信的な愛情をあなたに寄せているような、そんな雰囲気なのだ。
 レインは、背景に花畑でも醸し出しそうな明るい気配を漂わせている。
 訳がわからない。状況がさっぱり呑み込めない。
 気がついたらヴァニタスが目の前にいて、なぜだか知らないけれど凄く好かれている。意味不明。ありえない。
 理解がおいつかなかった。夢なら醒めてくれ、とあなたが現実逃避を始めかけた、その時だった。
 黙り続けるあなたを見つめるレインの蒼い瞳から、光が消えた。
 暗転したように、レインの纏う空気が一変する。

「……どうして、何も言ってくれないんですか? あたしはこんなにあなたのことを想ってるのに……どうして応えてくれないんですか? ねえ、どうして……?」

 ごごごごご、と全身から青黒いアウルを立ち昇らせ、レインがうわ言のように呟く。さっきまでの可愛らしい雰囲気は消し飛び、禍々しい殺気やら怒気やらが露になっていた。

 ――まずい。なんかよく分からないけれど、とにかくまずい。

 警告警告警告。
 撃退士としての直感が、生物としての本能が告げている。
 逃げないとまずい、と。このヴァニタスから離れなければヤバイ、と。
 全身にアウルを漲らせ、あなたは全力移動を使用。踵を返し、全速力で爆走した。凄まじい勢いでレインから逃げ出していく。

「…………逃がしませんよ」

 ぞわっ、と。深い井戸の奥から響くような声音で、レインが呟いたのが聴こえた。
 悪寒と共に振り返ろうとしたあなたの身体を衝撃が打つ。レインが放った蒼光の魔弾を喰らったのだと理解して、あなたはその場に倒れこんだ。
 気絶して死体のように転がるあなたにレインが近づく。ぎゅぅ、とあなたを抱き寄せて、少女は笑った。

「あなたはあたしだけのモノ……ずっとずっと、永遠にいっしょです。あははっ、あははははははははは!!」


 ――ここはマジカルハロウィンナイトメア。悪夢の世界。
 このよくわからない悪夢が終わるまで、精一杯逃げてください。もしも、レインに捕まったら……鮮血の結末があなたを待っている……。


リプレイ本文


 とびきり素敵な笑顔と、ひたすら重い愛情をあなたに向ける青髪の少女・レイン(jz0211)。
 突如として目の前に現れたレインに対し、あなたは――。


●高野 晃司(ja2733)の場合

 夜道でばったりレインと遭遇した晃司は、咄嗟に彼女を口説き落とすことに成功しかけていた。棒読みの口説き文句だったが、レインはあっさり誑し込まれていた。
「えへへ。ふたりっきり、ですね」
 幸せそうに笑って、レインが晃司の腕にしがみつく。ふくよかとは言い難い胸が当たり、晃司の手がぴくんと跳ねた。
(このまま好きにしていいならな……いや、駄目だ。ダメダメ。落ち着け俺)
 一瞬忘れそうになったが相手はディアボロである。おまけに病んでいて話が通じない。
(まぁ、可愛いんだけどなー……普通に普通の女の子だったらな。しかも、貧乳ですし? 貧乳ですし?)
 ちょっとくらいなら――なんて、貧乳成分に飢えている晃司が思い始めた、そのときだった。
 凍りついた表情で、レインが晃司を見上げる。

「……女の子の匂いがします……晃司さん、まさか……」

 殺気を滾らせるレインを前に、晃司は慌てて首を振った。
「ち、違う違う! 誤解だって! それ俺が使ってる香水の匂い! ほら、俺女装してるし!」
「……信じてたのに。晃司さんは他の撃退士とは違うって、信じてたのに」
「ちょ、ま。信じてくださいよ?! 嘘はついていませんから!」
「……あたしだけを見てくれない晃司さんなんて要らない……こうなったら……」
「いやいやいやいや。これは冤罪ですよ? おーい? 聞いてますー?」
 晃司の弁明は聴こえてないのか、レインはぶつぶつと何事かを呟き続けていた。
 あ、これアカンやつだ、とバッドエンドを予感した直後。晃司の腹に、どすっ、とレインの放った魔法槍が突き刺さった。ごふっ、と血反吐を吐きながら晃司は突っ込みを入れる。
「ちょ……まじで勘違いだって……」
 返り血を浴びたレインは、恍惚とした表情を浮かべていた。

「最初からこうすればよかったんです……これで晃司さんはあたしだけのもの。他の女になんか渡しません……あはは、あははははははっ!」


●エリーゼ・エインフェリア(jb3364)の場合

「えへへ。逃げても無駄ですよ……? あなたのためだったら、あたし、地獄の底まで追いかけていきます」

 レインの言葉に、エリーゼはきょとんと首を傾げた。
「私を追いかけるって……??? むしろレインちゃんが逃げたくなるほど追いかけますよー、私が」
 満面の笑みを浮かべたままエリーゼがレインに詰め寄る。無言の圧力に、思わずレインのほうが後ずさった。
「えっ? あ、あの……エリーゼさん?」
「私を追いかけようなどと思った事を、後悔すると良いです……!」
「……えっ、えっ?」
 レインが困惑したような声をあげる。しかし、時すでに遅し。

「レインちゃんぺろぺろー!」

 がしぃ! と飛びかかったエリーゼが、レインを思い切り抱きしめる。淑女たる天使は少女に密着すると、細い両手をわきわきと動かし始めた。
「ひゃっ!? ど、どこ触って……っ!!」
「レインちゃん貧乳気にしてるんですか? 貧乳気にしてるんですか? でも私はそんなレインちゃんも大好きです!」
 涙目になるレインを恍惚の表情で眺めながら、エリーゼ(巨乳)がはぁはぁと息を荒げる。ついには辛抱たまらん、といった感じでむしゃぶりついた。
 レインの首筋を、エリーゼの桜色の舌が這う。無論、並行して髪の毛の甘い香りを堪能することも忘れない。そして最中も、その両手はレインを弄り続けている。
 さすがのレインもこれは恥ずかしいのか、顔が真っ赤になっていた。
 レインがふるふると小刻みに震える。
「エリーゼさん……く、くすぐったいです……っ」
「怖がらなくても大丈夫ですよ、レインちゃん。お姉さんが優しく教えてあげますから……はぁはぁ」
 それじゃあ早速ふたりの愛の結晶を――とエリーゼがよだれを垂らした、その時。

 ちゅぃぃぃいん、というチェーンソーの音が、エリーゼの背後で鳴り響いた。

●瀬波 有火(jb5278)の場合

「ねえ、レインちゃん……その人、だれ? お友達?」

 チェーンソーを片手に、有火がレインとエリーゼに近づく。

「もしかして――ううん、そんなはず無いよね。だってレインちゃん、あたしが一番だよって言ってくれたもんね? 二人が出会った瞬間に回り始めた運命の歯車は世界を巻き込みながら摩擦でこの身が焼けるくらい高速回転して邪魔者の肉を引き裂きながらどんな選択肢を選ぼうと未来はトゥルーエンドに一直線だね、って誓ったもんね? そうだよね? 安心してね、レインちゃん。あたしが守ってあげるから。あたしだけが守ってあげれるから。だから、ずっとずっと二人で――ううん、二人だけで、一緒にいようねっ」

 返事を待つことなく、有火はのべつ幕無しに喋り続ける。表情こそ笑顔だが、その瞳は虚ろだ。正直レインの数倍は怖い。
「待っててねレインちゃん。レインちゃんを騙そうとする悪い人は、あたしがすぐに駆除してあげるから」
 有火はレインに微笑みを向け、そのあとエリーゼを睨むと、チェーンソーを大きく振り上げた。
「レインちゃんの純粋さに付け込んで……最低な人。二度とレインちゃんに近づけないようにしてあげる。泣いても喚いても許してなんかあげないよ」
「なに言ってるんですか。レインちゃんは私のお嫁さんです。邪魔するようでしたら、あなたから先におっぱいミサイルの餌食にしますよ?」
「望むところだよ。そっちこそばらばらに刻んであげる!」
 ばっ、と縮地をかけた有火が一気に迫る。薙ぎ払いによるスタンをかけ、動けなくなったエリーゼの体をチェーンソーで一方的に切り刻んでいく。
 だが、ジェイソン有火の手によりR18Gな姿となったエリーゼは、それでもゾンビのように這い上がった。レイン愛のなせる荒業である。
「れ゛い゛んち゛やぁぁっぁぁああん゛」
 叫び声と共に、エリーゼが胸からおっぱいミサイルを発射した。
 飛んできた半球型おっぱいが、有火の両胸へと突き刺さる!


●リンド=エル・ベルンフォーヘン(jb4728)の場合

 轟音に気づいたリンドが、物陰からひょっこりと顔を出す。
「んむ? あの青い……やけに肌寒そうな格好の女子…いつぞやのヴァニタス?」
 真面目なリンドは真剣に観察を開始。もぐもぐしていたあんぱんを急いで食べ終え、恐る恐る様子を窺う。
「酷い……色々と酷すぎる……」
 リンドが見たのは、無数の魔法槍に串刺しにされて地面に転がるエリーゼと有火の凄惨な姿。
 血だまりの中でレインが笑う。
「――あははっ、喧嘩しちゃダメじゃないですかぁ……でも、お二人の気持ちはすっごく嬉しかったです。これからは皆でずーっと、仲良く遊びましょうね……リンドさんも一緒に」
「なっ!?」
「えへへ、匂いですぐに分かりましたよ。リンドさんもあたしを探してきてくれたんですね。ほら、こっちに来てください。一緒に遊びましょうよ」
「いやそのっ、俺はどちらかと言えばもう少し発育の良い女子の方……がぁあっ!?」
 光槍を飛ばしたレインが、にっこり笑顔でリンドに近づく。リンドは膝が笑い出しそうだった。
「……どうしてそんなこと言うんですか? おっぱいミサイル撃てるくらいおっきくないとご不満なんですか? Bじゃダメなんですか?」
「じ、地雷を踏んでしまった……!? こうなっては、戦うしかあるまい!?」
 完全にテンパったリンドが、驚天動地を発射して応戦する。光槍と交わり驚天動地がレインの胸を撃つ。
 そう、胸を。
 レインの青い瞳に涙が滲む。
「……わざとですか、リンドさん? あたしの胸なんてあってもなくても同じだと、そう仰りたいんですか……?」
「そ、そんなつもりでは……がはっ」


●ルルディ(jb4008)の場合

 光槍を受けて気絶したリンドも地面に倒れる。
 レインは三人を地下牢に連れて帰ろうとして――そこで、首筋に触れる冷たいものに気づいた。
 蒼に染まった髪を揺らして、ルルディがレインに鎌を向ける。

「どうしてぼくだけを見てくれない……なんで他の奴を見るの……? なんで? ボクはこんなにも君のことを『アイ』してるのに! ねぇ、なんで? なんで? なんでぇ?!」

 マミにクライムしたルルディが、半狂乱で鎌を振り乱す。なぜだか彼もヤンデレ化していた。
「ぼくを見てくれないなら、見させればいいんだよね? 大丈夫なんだよ……ボクは君のことちゃぁんと『アイ』してるから……ねぇ?」
 言葉と共に振り下ろされたソウルサイスが、レインの頬を掠める。皮膚を裂き溢れた血液を舌で舐め取りながら、レインは嗜虐的な笑みを浮かべた。
「あははっ! 最高に素敵です、ルルディさん! あたしもルルディさんのこと、殺したいほど愛してますよっ!」
 闘争に悦ぶように、レインが光槍を飛ばす。蒼く輝く魔法槍は緋色のロリータドレスを突き破り、ルルディの身体を貫いた。
 紅翼のように鮮やかな赤に塗れながらも、ルルディは魅力的な笑顔を絶やすことはない。
 血で汚れた手でレインの頬を撫で、ルルディが微笑む。まるで、溺愛する弟に想いを吐き出すように。

「――これで……ボクだけを見てくれるね……」


●ルナジョーカー(jb2309)の場合

 異様に甘えてくるレインに戸惑いつつも、ルナは彼女に合わせて何とか乗り切ろうとしていた。

「よしよしよし……可愛い可愛い」
「えへへ。ルナさんの手、あったかいです」
 仔猫のようにすり寄ってくるレインの頭を、ルナが恐々と撫でる。その声は震えていた。
 目の前のヴァニタスもそうだが、恋人も怖い。
 レインの頭を撫でてやりながら、ぼんやりとルナは思う。
 もしも俺がこいつに殺されでもしたら、やっぱりあいつはブチギレるんだろうか……。
 そんな思考を遮るように、頬を膨らませたレインが言う。
「むー、あたしが目の前にいるのに考え事ですかぁ? ひょっとしてルナさん、あたしのこと嫌いなんじゃ……」 
「ん? いや、俺はレインが大好きだぞ?」
 うまい。ルナ、嘘は言っていなかった。この調子ならやりすごせるか?
 少し考え、レインはルナに顔を近づけた。そして、自分の唇を指さす。

「じゃあ……キスしてください。本当に好きなら、できますよね?」

「…………」
 拒絶すればどうなるかは、容易に想像がついた。
 けれど。
「いや、それはできない」
 ルナの答えは、ノーだった。
「自分の気持ちに嘘はつけない。悪いな」
 ルナは優しい笑みを浮かべ、灰燼の書を改造した黒い魔剣を構えた
「勝てる気は正直しないが……ここで死んだらあいつに怒られるだろうしな。来いよ、レイン――殺し合おうぜ」


●日ノ宮 雪斗(jb4907)の場合

「久しぶりですね、雪斗さん。また逢えて嬉しいです……えへへ」

(……あれ? なんかいつもと違くね? てか私達って仲良しだっけ? 一撃で吹き飛ばされた記憶しかないんだけどなあ……いや、でもあれはヤバい目だ! 良く分からんけどこの状況ヤバい!!)
 レインと遭遇した雪斗は瞬時にそこまで思考して、とにかく話を合わせることにした。
 機転をきかせた雪斗が、ぽん、と手を叩く。
「そうだ、学校の食堂で凄く美味しいケーキがあるの! レインさん一緒に食べよう? 美味しいケーキ食べながらお話ししたい!」

 そんなわけで、食堂。
 互いにケーキを食べさせ合いながら、少女二人はキャッキャウフフと睦み合っていた。
「あたし、甘くて美味しいものは好きなんです。もちろん、一番大好きなのは雪斗さんですけど」
 頬にクリームをつけたまま、レインがにこにこと笑う。
「私もレインさん大好き! だ、だって親友だもんね!」
 雪斗も満面の笑み(内心では震えているが)でレインを抱きしめて、頭を撫でた。レインは猫のような声をあげて嬉しそう。
「えへへ」
 親友だと言ってくれた雪斗の胸に顔をすり寄せながら――レインが魔法槍をじゃきん、と呼び起こす。結局そうなるのか。
「――それじゃ、ここにずっと一緒にいましょう。一生、あたしが雪斗さんにケーキを食べさせてあげます。それだけであたしは幸せです。雪斗さんも同じ気持ちですよねそうですよね?」


「……うっはぁ〜……まあいいや。うん、それでもいいよ」
 槍の穂先をつきつけてくるレインに、雪斗は諦観の笑みを浮かべた。この後どうなるのは何となく悟っていた。
 雪斗がたは〜っと笑いながら、レインを見つめる。
 レインは、藻が絡まった溜池のように虚ろな瞳で、雪斗を見つめ返してきた。

「私、ほんとはね。一度レインさんと普通に話してみたかっただけなんだ……今ならきっと、仲良くなれるんじゃないかな、って……」

 最後に柔らかい微笑をヴァニタスに向けて、雪斗は言った。

 ――私、少しでもレインさんの友達になれたかな?


●赤坂白秋(ja7030)の場合

「……ふう」
 自室のベッドの上。白秋はやりきった顔で、読了した小説を閉じた。
 小説のタイトルは『ヤンデレイン』。
 複数の男女がレインに愛されてドタバタラブラブグチョグチョミシベキゴリュッを繰り広げる、そんなお話だった。
「はあ、にしてもレインたん可愛いな……。ちょっとヤンデレなとこが玉に瑕だが、でも、美少女だ。そして、美少女だ。何よりも美少女だ……!」
 女の子大好きで自称イケメンで非モテの白秋が、高らかに叫び上げる。

「――ああ! 俺もこんな風に、美少女に全力で愛されてみてえ!」

「お呼びですか?」

「なっ――」
 後ろから聴こえた声に振り返り、白秋が茫然とした表情に変わる。
 彼女は、小説の中の存在のはず。
「えへへ。白秋さんに逢いたくて、ここまで来ちゃいました」
 何故レインがそこにいるのか。何故顔を赤らめているのか。
 そして何故――レインの全身がべっとりと赤くなっているのか?

 よく見るとレインの背後には無数の肉塊が転がっていた。そのうちの一つ、見知った友人に良く似たそれは、「れ゛い゛んち゛やぁぁっぁぁああん゛」と叫んでいる。それはそれで怖いが、変わらず無邪気に笑っているレインが一番怖かった。
「ひいいいいっ!?」
 後ずさろうとして、白秋の背後から声。
「どこにいくんですか?」
 白秋が振り向くと、『ヤンデレイン』の表紙にレインの顔が浮かび上がっていた。そのレインが、壊れた笑みを白秋に向ける。
 畳み掛けるように、八方からレインの声が響く。
「あははっ」「逃がしませんよ」「えへへ」「大好きです」「あははは」「××していいですか?」「あたしだけを見て」「あはははっ!」
 照明が枕が電話が椅子が壁が床が、ぼこぼことレインの顔に変わっていく。
「ないわー。いくら美少女でも、これはないわー」
 ヤンデレを見縊っていた。レインの哄笑に包まれながら、白秋が放心したように言葉を漏らす。

 絶望と恐怖の中、ヤンデレインは微笑み、そして――。


<了>


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

覚悟せし者・
高野 晃司(ja2733)

大学部3年125組 男 阿修羅
時代を動かす男・
赤坂白秋(ja7030)

大学部9年146組 男 インフィルトレイター
撃退士・
ルナ・ジョーカー・御影(jb2309)

卒業 男 ナイトウォーカー
水華のともだち・
エリーゼ・エインフェリア(jb3364)

大学部3年256組 女 ダアト
黎明の鐘・
逆廻桔梗(jb4008)

中等部3年9組 男 バハムートテイマー
誇りの龍魔・
リンド=エル・ベルンフォーヘン(jb4728)

大学部5年292組 男 ルインズブレイド
温和な召喚士・
日ノ宮 雪斗(jb4907)

大学部4年22組 女 バハムートテイマー
バイオアルカ・
瀬波 有火(jb5278)

大学部2年3組 女 阿修羅