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マスター:カナモリ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/01/25


みんなの思い出



オープニング



 カウンターの上に投げ出していた左手に、何かが触れた。
 それでちら、と見てみると、パッと見は陶器のように美しい手が、とってもマイルドにさりげなく、しかも指摘しにくい僅かさで、カウンターの上に投げ出された左手に触れていた。
 永野は、かつ丼の中の飯をほじっている最中だった右手の動きを止め、ぼーっと自分の左手を見る。
 骨っぽさとか、何だったら下にある自分の手の方が若干華奢なくらいだとか、その辺りの見た目の現実がなくてもこれが男性の手であることは間違いがない。
 何せそのままその手の先を辿って行くと、今日もやっぱり、一瞬ハッとしてしまうくらいには整った顔立ちの美形の横顔があって、つまりは久遠ヶ原学園の変人研究職員、成瀬の顔があって、だからこれは成瀬の手だ。
 彼はいつもの、何考えてるか全然分かんない、感情の読めない無の表情で、いつものように「明日生徒達に出す依頼」について喋っている。
「今回はあれなんだよね。鳥類型のサーバントの捕獲か死骸の回収をお願いしようと思っててね」
 でも口調が全然楽しくなさそーで、なんだったら嫌々やらされてる義務みたいで、でも別に誰かが言ってくれと頼んだわけでは全然なかった。
 むしろ永野には全く関係のない話であるし、やめるならいつでもやめてくれていいし、でも本人が実の所全くそう見えなくても実は凄い楽しがってるらしいので「楽しくないならやめればいいんじゃあ」とかは言っても通じず、だからなんで依頼とかに全く関係ないただの数学教師でしかない自分にそんな話するかもう全然分からないとか、毎度の如く思うような事を今日もやっぱり思っていたけど、それはついさっきまでの事で、今問題なのは、この手だった。

 さりげなくを装った故意なのか、本当にただうっかり手の位置を間違っちゃっただけなのか、なんだか良く分からないこの僅かさは、指摘しようにもなんかちょっとしにくい。
 しかも「手が当たってますよ」などと普通に指摘するだけのはずが、「いや握ろうとしたんだよ」なんてうっかりエキセントリックな事に巻き込まれちゃう可能性も、この対変人とならばある気もするので益々口にしにくい。
 だから確かに、うっかり手の位置を間違っちゃう事は、稀にでもある気がするし、おしぼりと間違えてるとか、お箸だと思ってたら手だったとか、そういう事情で相手の手に触れちゃってるのに気付いてない、とかいう事も稀にだけどある気がして、だったらここは、とにもかくにも「さりげなく左手を抜き取ること」について考えればいいような気もした。
 いや別に考えなくていー。
 今すぐにさりげなくこの左手は抜き取るべきだ。

「でさ。このサーバントはね、口から小型の雷雲を吐き出す能力を持ってるんだけどね。この雷雲は、吐き出されたとたん空中に漂って、雷をいっぱい落としてくるらしいんだよね。で、その雷に打たれるとね」
 果たして、ぼーっと頬杖なんかつきながら話している成瀬が、話に夢中になっているかどうかは読めずじまいだけど、とにかく今さっと引けば行ける、と踏んだ。
 なので「はー」とか、油断を誘いそうな気の抜けた相槌とか打ちながらも、左の肩に力を込めてさっと引いた。

「自分の好きなものを大声で叫んで暴露しちゃったりするらしいんだよね」

 瞬間その手は掴み直され、状況は悪化した。
 僅かだった重なりが、もっとぎゅっと一体化した感じになった。
 成瀬が、見ようによっては、無情に勝利を宣告してくるようにも見える無表情でこっちを見ていた。
 永野はなんかもー負けた気がした。

「だからあれかな。俺だったら、『永野君の困ってる時の顔』とか『嫌がってるのに嫌って言えなくてとりあえず笑って誤魔化してる時の顔』とか言っちゃうのかなあ。それとも『永野君の首筋から鎖骨のライン』とか『永野君が黙々と飯食ってる時の顔』とか言っ」
「成瀬さん」
「うん何だろう永野君」
「あのー、とりあえず一つだけいいですか」
「うんいいよ」
「いやすごいなんか反射神経があれなんですね、鋭いんですね」
「うんそうなの。意外と反射神経鋭かったみたいなの」
「だって抜こうとした瞬間思いっきり掴みましたもんね」
「うん、あやばいと思ってね」
「うん別に何もやばくないんですけどね」
「だからこう、あやばいっ、ってね、咄嗟に身体は反応しちゃうんだよね。凄いよね人間の身体って」
「びっくりしました」
「うんびっくりしたよね」
「はーじゃーそういうわけでそろそろ手を離して貰ってもいいですか」
「でも折角だし、まだいいじゃない」
「はいでも折角だしの意味が分からないんでそれはお断りしてもいいですかね」
「ねえ永野君」
「はい何ですか成瀬さん」
「それかつ丼食べないの。晩御飯食べ終わらないといつまでも帰れないんじゃない?」
「いやーこの状態で食べるくらいなら晩飯諦めます」
「身体に悪いよ」
「あとなんかすごい成瀬さんに手を握られてるとか、気持ち悪くて胸やけしてきたんで、たぶんもうかつ丼無理です」
「俺も永野君の手を握ってるなんて胸がいっぱいで食欲わかないけど。なんだ一緒だね」
「いえ、一緒ではないです、あと指とか絡めてくるのやめてください」
「じゃあ後十秒だけ待って」
「待ちません」
 言って永野は、さっとまた左手を引いた。
 瞬間、掴まれた。
「いやだから何だろう、反応速度が半端ないんですよねほんとに」
 文句を通り越して若干感心すら浮かべて永野は小首を傾げる。
「うんね、すごいでしょ、ね」
 相変わらず何を考えてるか分からない無の表情で、成瀬は小刻みに頷いた。






リプレイ本文





 いちご食べたい衝動に、目をランランと輝かせる猫宮ミント(jb3060)の目の前を、静馬 源一(jb2368)が通過していく。
 風に良くなびく真っ赤なマフラーをした源一が、真っ赤なマフラーのマフラーたる部分をひらひらっ、とかさせながら、通過していく。

 それはそうと、ミントはさっき、雷に打たれた。
「にゃああ! いちごおおおおっ!!」
 体育館の上空には、今や2匹の鳥サーバントが吐き出した雷雲がうようよしていて、そこから漠然と桃色の稲妻が、バリバリ落ちている。
 その雷をひらりと避けるように見せかけといて、うっかり打たれに行ったミントは、体中を音源にして、体育館の中で叫んだ。
「にゃああああ! いちごおおおおおおっ!!」
 ところで、密閉された体育館は、声がとっても良く響く。
 全く自己主張なんてする気がなくても、実は物凄い自己主張したかった人みたいに、皆の目に映る。
 雷に打たれて、打たれたから「にゃああっ!」ってびっくりして両手を広げちゃっただけなのに、なんだかもうミントは、歌うミュージカルの人みたいだ。
 それで「いちごおお」とか叫んだら、例え歌ってる気なんてさらさらなくても、もう歌ってるようにしか、見えない。
 でも、歌ってよーが叫んでよーが、最悪ミュージカルの人みたいだろーが、彼女の場合は好きな物が「イチゴ」とかいうかわいらしー物で、しかも本人に似合ってるんだから、きっとダメージは少ないはずだ、と、十字手裏剣を手に、クイックショット発動の機会を狙う矢野 古代(jb1679)は、分析した。
 そう彼女は大丈夫なのだ。
 むしろ、「そうかーイチゴ好きとか可愛いー」なんて好感度がアップすらする感じで、ノーダメージだ。
 あの、猫のような目を爛々と輝かせながら、源一の赤いマフラーを見つめている様はちょっと不気味ではあるけれど、それでもまだまだ全然微笑ましい。
 けれど、自分は駄目だ。
 好きな物暴露とかは本気でやめて欲しいのだ。
 何が好きかってそりゃあまあいろいろあるけれど、「あれを言ってしまいそーな気がする」とか、嫌な予感がある。
 だいたい好きなら好きでひっそりと胸の内に秘めて好きでいたらいいんで、それなのに自分もあんなミュージカルの人みたいになって自分も大声で好きな物アピールしちゃうとか、なんだかとっても恥ずかしい。
 だってもー、いい加減、三十路なのだし。
 でも、今、雲を吐き出しながら飛び回ってる鳥サーバントはきっちり捕獲しなければならなくて、それは今回の任務で仕事だ。
 仕事はきっちりこなさなきゃいけない。
 久遠ヶ原学園の学生とはいえ、やっぱりもう、三十路なのだし。
「だからこのやろー鳥サーバントーー! 当たってたまるかぁぁ! お前らごときに暴かれてたまるかぁぁ!」
 どっだーん、ごろごろっ!
 と、落ちてくる稲妻を避けつつ、男・矢野古代34歳は、今日も走る。2匹居る内のパステルピンクのサーバントを追いかけて、転がり走る。

 その同じ頃、鳴海 鏡花(jb2683)もまた、反対の端からパステルピンクのサーバントを追いかけていて、目の当りにしてしまった雷の効果にちょっとビビっていた。
 あれは喰らいたくないでござる。
 真面目なイメージが崩れると困るでござる。
 いやそれより何より、拙者がお笑いに向いていると思われる方が嫌でござる。
 とかなんとか、「炸裂符」発動の機会を窺いながら、真面目に自分のキャラについて悩んでいて、何せあの雷を食らってしまったら、きっともういつでもわりと沈着冷静、真面目でクールな鳴海鏡花、ではいられない。
 でもそうして細心の注意を払ってたって、いつまでも逃げ切れるとは限らないのだ。
 むしろここは下剋上。自分の身を守るためなら、最早手段は選んでいられないかも知れない……。
 と、同じくサーバント捕獲のために頑張る海城 阿野(jb1043)も、好きな物暴露は困ります! スタンスでスキル「ハイドアンドシーク」を駆使して逃げ回っていて、だから実際のところは、捕獲のために頑張ってるようなフリで逃げるのに頑張っている状態で、何だったら近くの人を盾にしてでも避けたいくらい……。
 なんてちょっと黒い事思って隣を見たら、丁度同じタイミングで何故かこっちを見ていた鳴海と目が、合った。
「な、なんでござるか」
「いえ、なんでも……ありません……冗談です」
「な、何がでござるか!」
 だからとにかく必死に逃げるしか手はないのだけれど、密閉された体育館は暑かった。
 密閉されているんで暑かった。
 誰が密閉したかと言えばそれは古代と源一で、でもそれは鳥サーバントが僅かな隙間から逃げてしまわないようにするための措置だったので仕方がないのだけれど、とにかく、この密閉された空間で走っていると、ちょっとした有酸素運動とかエクササイズとかやってるみたいに、疲れる。で、暑い。
 暑さには弱い阿野である。
「え、ちょっと待っ、うわ、いやちょ、危ないですって!」
 体の動きが鈍って来た。
 まずい。
 これはとってもまずい。危険だ。
 でもそんな危機感満載の阿野の斜め前では、蛇蝎神 黒龍(jb3200)が鳥サーバントの捕獲に果敢に挑んでいて、しかも何だかとっても楽しそうだ。
 雷なんてちっともこわないでー感を放出しながら、「さっさとこのサーバント捕獲して白衣のおねーさまがたに渡すでー。研究中に白衣のおねーさまがたがアレコレしちゃうと嬉しいしなあ」とか、何だかもー良く分からないけど、何にせよやる気があるのはいーことだ。
「つまり好きなもん言い合ったら実はお互いに貴女の事が好きでしたーとかうっかり告白し合ったりしてあっはーん、みたいなさー」
 そして黒竜は、雷に打たれたわけでもないのにそんな自らのみだりな想念について、口にして述べた。
 この場で白衣のおねーさまがたがアレコレする想像をするとは、さすがへろへろ一歩手前で反復横飛びな自分とは、なんかきっとバイタリティが違う。
 その活力が眩しいくらいに羨ましい。
 暑い。水。涼しいところ……暑い……駄目……だめっ私、死んじゃうっ!

 バアァッシィぃぃぃィっ!!
「ぎゃああああ!!」

 そしてとうとう、阿野は雷に打たれた。
 けれどその瞬間彼は、口を必死に押さえ、蹲り。
 そう蹲り、蹲り蹲りうずく……プルプルプルプルプル……。
(駄目よ私っ! 喋ったら死ぬっ! 喋ったら私、死んじゃうんだよっ!)
「で、でもあっ、ぐじ……口、が勝手にぃっ……っっ」
 パカっ。
 開っ☆放っ!

「ぬ・い・ぐ・る・みーーーーっっっ」
 ぃぃぃぃぃぃぃぃん…………。

「わーーっ! 阿野ォォーーっっ!」
 続けて崖っぷちで仲間を助けようとしたけど無理だった人みたいな古代の、絶望的な大絶叫が体育館に響く。
 ああ、言ってしまった。ばれてしまった。男の子なのに。男の子なのに可愛い物好きなんて恥ずかしい事をばらしてしまったっ!
 でももー阿野の言葉は止まらない。止めたくたって止まらない。
「ぷにぷに! 柔らかいのが好きっ。柔らかいのが好きなのっ。お目目くるんとしたイルカちゃんとかシャチちゃんとか、堪らないの、好きなのっ。いつも抱っこして眠るの、可愛いの好きなのーーーーうわぁああん!!」
 で、最後には目元を拭って走り出した。真っ赤な顔で、恥ずかしさから逃げるように必死にダッシュ。
 けれどその先には、バスケット部とバレー部が一緒に練習みたいに、体育館の半分を使って「駆除」任務を遂行するフェンリス・ヴォルフ(jb2585)とフェンリア(jb2793)の姿があって。
「んー?」
 と振り返ったフェンリアの口は真っ赤に染まり、その手の中には、すっかりもう駆除とかいう次元ではなく駆除されちゃってるブルーの鳥……。
 だったと思しき、微かに青い肉の塊。
「ほんとブルーとかマジ誘ってるよね……赤く染めたくなるじゃん……」
 ギラリ。
 血だらけのフェンリアが、目を輝かせながらニヤリと笑う。
 わーーー! 遊園地とかのお化け屋敷(和風)で見たやつーーー! 人の内臓食ってる女の幽霊のやつーーーっ!!!
「ぎゃああああっ!」

 好きな物暴露も怖いけど、これはこれでもっと怖い。
 まさか、体育館の反対側がこんな殺伐とした別世界だったなんて。

「んーだからまず、ヴォルフがこいつに衝撃波出して動き止めてさ」
 と、フェンリアが、誰も聞いてないのにその時の戦闘の様子を赤い口でぼーっとか語りだした。
 誰も聞いてない。むしろ、聞きたくない。
 でも、彼女は語る。
 だから阿野の頭にはそのイメージが鮮明に浮かんでしまう。

 狼男のように肉体を変化させたヴォルフが、パタパタと飛ぶかわいー鳥にあり得ない勢いで衝撃波を飛ばし、ひい、と動きを止めた所で、急降下で体当たりしてくるフェンリアが、首根っこひっ捕まえてネックハンティングツリー。
 ぐええ、ってなって、ふよふよふらふら状態の鳥へ、尖った歯を剥き出しにしたヴォルフが飛びかかり、噛みつく。
「俺様が好きな物は肉と血と戦いだあ!!」
 とかいうその勢いで、ずしゃあっと羽っていうか肉っていうかを毟り取り、ぺッと吐き出し、ボトッと落ちた鳥を引っ掴んだフェンリアが、くちばしにちゅ。
「落ちた鳥がぴくぴく悶え苦しんでて凄い可愛かったからね。なんか、我慢できなかったよね」
 で、ちゅーっがそのまま勢い余って、くちばしの中に顔突っ込む勢いになって、舌をがぶっと噛み千切り。
「うんそうあのタンは普通にうまかった」

 ひーーーーーーっっっ。

「い、いい、いいです。いいですもう何も言わなくていいですからっ!」
「あ、そう?」
 ニヤリ。
 なんてゆらーっと笑われたってどうしていいか全然分からない。
 とにかく密閉された体育館に逃げ場なんてないのだ。
 ならばこれはもー立ち向かって戦うしかない。と阿野は決意を新たに立ち上がる。


 とかいうその少し前、好きな物暴露の恐怖と戦う5人は。
「くそうっ! 阿野、大丈夫だ、お前の犠牲は無駄にはしない! いくぞ、源一!」
 捕獲用にと用意していた投網を持った古代が、これまた捕獲用にと用意していたタオルを持った源一と共に、走り出していた。
「はいでござるー! 絶対に捕まえてやるでござる!」
 そして今日もすっかり忍者気取りの源一は、何だか何時もに増してばっちりやる気を漲らせていた。
 何せ今回の敵は、人に好きな物を暴露させるとかいうかなり面白……いや、厄介な能力を持ったサーバントであるからして、そんな迷惑なサーバントは、世のため人のため、そして何より暴露なんてしたくない仲間達のために一刻も早く捕獲するべきなんである。
 勇気を振り絞れば、まだまだ未熟な自分でも大丈夫! 今日はきっと大丈夫!
 もちろん決して、敵が弱っちいから調子に乗ってるとか、そういう事では全然ない。
 全然ないけど、「忍法、壁走りっ!」って、ズダダダと壁を上って行く彼は、やっぱりちょっと油断しちゃってたのかも知れない。
 サーバントに、というよりは、仲間の動きに。
 だから、うっかり雷に打たれて、うっかり大好きなイチゴの事なんて思い出して、もう頭がイチゴでいっぱいで、何だったら他の事なんてもーどーでもいーくらいの勢いでイチゴの事しか考えられないミントに、気付いてなかった。
「いちごが食べたいにゃ……」
 ミントはとにかくイチゴが食べたい。
 源一の赤いマフラーは、それはもう真っ赤で、まるで熟したイチゴみたいだった。
 壁を上り切り、さーこのタオル投げて目隠ししてやるー! って思ってる背後から、
 闇の翼でこっそり接近してたミントがいよいよ、「にゃーーーっ!」とか、飛びかかった。
 マタタビに飛びかかる猫。赤いマフラーに飛びかかるミント。である。
 それで「ヒィィーっ!」って予想外の事にパニくってバランスを崩して、持ってたタオルも放り投げて、落ちていく源一に雷ドーン。
「おじーーちゃーーーん大好きでござるーー」
 両親が共働きだったために、祖父に育てられた根っからのおじいちゃん子らしい一言を叫びながら、源一、撃沈。
「源一ィッ! くそっ! お前らごときに暴かれてたまるかブシッ、こどもたちィィィーーっっっ!」
 その飛んできたタオルで視界を遮られた三十路古代、雷に打たれ、好きな物、暴露。
 しただけではもちろん収まらないので、彼は語りだした。
「いや俺実は義理の娘や息子が何人かいるんだけど、全員がもう可愛くて可愛くて堪らないんだよ。ほんとに。うん本当にもう天使とはあの子達のことで、むしろ天使があの子達なんじゃないかと思うんだ。だから、天使があの子たちで、本当にもう天使、いやだから、天使が、いや天使とは、うん、とにかく天使が」
「う、うん、うん分かった。分かりました。分かりましたからちょ、ちょっと落ち着きましょう矢野さん」
 とか、余りの愛しさ故か、いつもはきっちりオールバックの髪をちょっと乱れさせながら天使を連呼する、そんな変なハマり方をしている三十路の肩を、遅れて駆けつけた阿野は思わず、叩いてあげた。
「だから、あの子たちが天いや、天使があの」
 親ばかにもー余裕なんてない。
 このままだと「鶏が先か卵が先か」みたいな混乱で、彼は死にかねない勢いだ。
 と、これはもう一刻を争う事態である。
 とか思ったらこっちでも、古代が捕獲とかどーでも良くなっちゃって投げた投網に引っ掛かって、一瞬身動きが取れなくなった鳴海に、雷が命中している。
「拙者は可愛いものが大好きでござるーーっ! 仔猫が好きでござる! クマのぬいぐるみが好きでござる! 美術室のやぎが好きでござるーーー!」
 わーもう網取れない絡まるーっ。
「でも好きなものは好きでござるーーってくそおおお」
 拙者はこんなキャラでないでござるのに!
「いやいや自分大丈夫かいなー」
 とそこへ黒龍がやって来て、お姫様だっこで、鳴海を救出。
「大丈夫か姫さん。何やったらこのまま手取り足取り、一緒にあの鳥捕獲するー?」
 甘い声で耳元に囁き。
「ぎゃああああ!」
「嘘や嘘嘘、悲鳴あげんでもええやん。傷つくなあ」
 肩を竦めて見せた黒龍は、すた、と彼女を体育館の隅に降ろすと、
「人の好きなもんなんかを暴露させよーとする奴は、ボクらに蹴られて星になりやー」
 やってきた阿野と共にツープラトンで、ドロップキックを繰り出し、鳥サーバントを気絶させた。




 そんなわけでサーバントは、8人の撃退士達の頑張りにより、しっかり捕獲・駆除された。
 捕獲された分の引き渡しの際には、古代と源一が何やら悪巧みをしていた結果、いろいろ大変な事になったりもしたのだけれど。
「ああなんて事だサーバントが暴れて嘴の拘束が外れてしまったぞー」
「あーでも偶然だから仕方ナイデゴザルー。悪戯をしたかったとかソンナノジャナイデゴザルヨー」
「な、ちょォ、おっ、ぎゃぁ」

 とにかく彼らは、今日も無事に任務を終えた。






依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:8人

手段無用・
海城 阿野(jb1043)

高等部3年27組 男 ナイトウォーカー
撃退士・
矢野 古代(jb1679)

卒業 男 インフィルトレイター
正義の忍者・
静馬 源一(jb2368)

高等部2年30組 男 鬼道忍軍
能力者・
フェンリス・ヴォルフ(jb2585)

大学部7年208組 男 阿修羅
モフモフ王国建国予定・
鳴海 鏡花(jb2683)

大学部8年310組 女 陰陽師
この夜に翼を ・
フェンリア(jb2793)

大学部2年68組 女 ルインズブレイド
猫は半身というより分身・
猫宮ミント(jb3060)

大学部5年67組 女 阿修羅
By Your Side・
蛇蝎神 黒龍(jb3200)

大学部6年4組 男 ナイトウォーカー