●独身女性がペットと戯れている(いろんな意味で)微笑ましい映像がこちらになります。
「いいか、貴様ら! 音楽が流れだしたら、こうやるんだぞ。こうだ、こう!」
七種 戒(
ja1267)が展示品のガラステーブルの上に仁王立ちして、拍手の実演をしていた。
誰に向けてかと言えば、床でぷるぷるしてる手ディアボロ5匹に向けてで、彼らは多分一切何も理解出来てないだろうけれど、とりあえず戒の方を向いてじーっとしていた。
横にマイルドにぐしゃーって潰されてる仲間の姿があったので、「もしかして……こいつに向かって行ったら……やられるっ!!」っていう防衛本能の結果だったかも知れない。っていうか、多分そうだった。
戒は持てる能力を駆使し、アイテムも駆使し、売り物も駆使して、この手ディアボロ達に名前をつけたり、芸を仕込んだり、らじばんだりして、楽しいショータイムを演出しようとしていたのである。わりと真剣に。むしろ真剣に。
戒姉さんたらほんとお茶目。
あとどうでもいいけど5匹の中の一匹が明らかにしっわしわに枯れていた。孫娘の無茶を無茶とは気付かずふごふご見守ってるお爺ちゃんみたいだった。
「よし! それじゃあこれから音楽を流すからな! テンション上げていこー」
どこから取り出したか、あるいは売り物だったのか、戒はラジカセ的な物の再生ボタンをぽちっとな。
すると彼女の周りに透き通った銀色の結晶のもような物が幾つも出現した。スターさいぐさ、ご自慢のオーラドレストである。
結晶は、彼女の周りを螺旋状に上昇しながら、きらきら煌く細かい粒子へと変化していく。
スター渾身の事故演出(あえて表記を調整しております)、所要時間約30秒。その美しさ、プライスレス。
脳内で流れるテロップ。
『きゃー。戒お姉様カッコいーッ!!』
ラジカセから颯爽と流れ出すミュージt……。
『もうお前以外見えないんだって』
『ちょ、待てって……ちょ、ちょっと……やめろよ、やめっ……っ!』
「ぐわあああ!! 間違えたーーー!!」
姉さんは、何らかの手違いでボイスドラマ的な濡れ場的な秘蔵的なアレ、が流れだした羅痔加施(あえて表記を調整しております)を床に叩きつけ粉砕し、何事もなかったかのようにきりっ顔を決めた。
「ものども。ここで拍手だ」
「うん姉さんちょっと疲れてるんだよ、きっとそうなんだよ」
一切微動だにしない無感情ペット(手)どもを押しのけ、姉さん保護に乗りだす佐倉 火冬(
jb1346)。
「あ、サインは事務所までお願いしますゥふふふ……」
「お姉様、目のハイライトが消えてます、良い子の皆が見たら泣き出します」
うわ言を呟く戒の腕を引き、火冬と共に、風紀ぶち壊し残念美人保護を手伝う、風紀委員風味百瀬 莉凛(
jb6004)。
「ちっくそんてやんでぃ。私は負けないぞ。躾が足りないんだ。こいつらはまだまだやれる! そうだろう! 共にブロードウェイの舞台に立とうと誓い合ったではないか! さあものどもっ! 私についてこーい!」
バシバシバシーィッ。
なんつってナインテイルで地面ぶっ叩きつつ、ショッピングセンターの廊下を走りだす戒の背中を、お姉様そんなお戯れを……みたいな生温かい目で見送る火冬。
そこで油断しちゃった一瞬の無防備状態がまずかった。
狙いどきーっみたいに、細っこい首目掛けて手首ディアボロどーーーーーーん。
いきなり横からどーーーーーーーーーんっ。
「?!?!!?!?!?!」
ごっつごつのオッサンぽい手に喉仏の下辺りをぐッていかれて、悶絶する火冬。
目がなんか、すごい漫画みたいに白黒してた。っていうか本気で瞳孔開きかけてた。
「いやあ先輩かっこいーっすねー」
そんな勇姿をライトに笑いつつ激写だけして通り過ぎて行く莉凛。
『こらあああ写メってないでたすけろようおおおおい』
なんて光景をちょっと離れた場所から眺めつつ、意思疎通スキル発動してみる百夜(
jb5409)。「って言ってるわよ彼」
「見れば分かるしぃぃぃぎょふっ?!?」
自らの首を締めてくる手を無理矢理引き離し、地面へ叩きつけ、絶叫したと思ったら、また別の手に顎下辺りをガッて掴まれ、足を取られ、二の腕掴まれ、もみもみされる火冬。
「ちょっ手がリアルにオッサン過ぎるんですけどぉぉぉ?!!?」
「あれ助けないとまずくないか! まずくないか! 蔵倫に引っ掛からないか!」
反復横飛びで全体的に豊満な肉体をだよんだよんさせながら、緊迫感なく言う咲・ギネヴィア・マックスウェル(
jb2817)。
「はい先輩なら一人で大丈夫だって私信じてますし!」
スマホ画面操作しながら、「セクハラ系も美味しいですけど、こういう苦悶の表情系も逆にエロスが感じられて意外と需要が」とかなんかぶつぶつ言いつつ、完全に今撮った写真チェック状態の莉凛。
「あっ……太股は……太股はらめぇぇぇっ!!」
「わー佐倉先輩めっちゃイケメーン!! 動画タイトルはイケメンガチムチパンツファイティングで、と。はい、こっち! こっち向いて下さ〜い!」
「じゃあ私、ナレーションするわね」
『何でこんなのばっか寄ってくんだよーーー!! 俺のどきどきハーレムらっきーすけべはどーなったんだよーーー』
『グヒェヒェヒェヒェ。この赤髪の兄ちゃん、いやがる顔がたまらんぜよ〜。肌もむっちむちじゃき〜。もっみもみやで〜もっみもみやで〜』
「いややめて百夜さんやめて、意思疎通スキルで読みとった内容オリジナル脚色してお伝えするのやめてほんとマジでやめて」
「先輩顔が真顔になってますから! もっと素敵に嫌がるイケメンの顔して下さいよ〜。はい、きりっして。むしろ、キッて反抗的な目ぇする刃向かう系子猫ちゃんの顔してこっち見て下さ〜い」
「きりっ。って出来るかあああああ!!」
「どうしよう。助けた方がいいのかな。あれ」
棒立ち状態のマネキンを前に、一人チューチュートレインなどをしつつ呟いてみる咲。
食べ物が近しい場所に見当たらないからか、今日はいまいちいつもの勢いがない彼女である。
「助けてくれって言うまで放っておいた方がいいのかな、いいのよね」
自己完結したりして、チューチュートレインしたり、らじばんだり。
するとそんな彼女の目の前を、突然、真っ青な物体が高速で駆け抜けて行ったのだった。
「助けてくれぇぇぇぇい!!」
「………………」
っていうのが一瞬何なのか分からなくて、顔だけで追いかけ見送る咲。
しかし良く見るとそれは、2匹の手ディアボロに思いっきり引っ張られていくミカエルマス=アスター(
jb5930)の姿だったのだ。
「あーびっくりした。リアルタケ○プター浮遊見ちゃったんかと思った」
「一体何と見間違えた!?」
「よしきた! ノーブラーズがそう言うなら健全なブラあり悪魔として張り切って助けちゃうわよ!」
「誰がノーブラーズか?!」
ハンドクリームのCMとかに出てきそーな美しい手(明らかに♀仕様の)ディアボロに引っ張られつつ、目ん玉ひんむくアスター。
隣を並走しながら咲は、彼女のほぼ膨らみない部屋とワイシャツと私の方をチラ見した。
「あたしは……ぎりぎりサイズある系だから!」
「ん? 嫌味? 嫌味じゃろうか? 嫌味じゃろうか?!?!?」
「ちょ、ごめんなさい、顔、顔近へぶしっ」
なんてやってたら突然手の奴が動きを止めて来たので、うっかりアスター頭突きをくらいちょっと飛ぶ、咲。
「す、すまぬ……手の奴がいきなり止まりおったものじゃから……いったいな……なにィ?! し、紳士服……売り場……じゃとォォォ?!」
自らの頭を撫で撫でしている体制で、茫然と固まるアスター。
からちょっと離れた場所では、また別の意味で目を見張っている咲。
視線の先には、タマネギとフライパンで野球ごっこをしているディアボロの姿が。
「フライパン野球……だとぅおぉぉぉぉたまねぎーーーーーー!!!」
さすが体内に胃袋が複数存在しているという悪魔ちゃん。
食べてはいけないものにだって果敢にチャレンジするんだから、食材が飛んで来たならそれが生のたまねぎだろうと硬かろうとまずかろうと辛かろうと皮のままだろうと彼女は本能が命じるまま飛びつくのである。
キランと目を輝かせたかと思うと、フライパンに飛ばされ、空を舞って行くタマネギ目掛けジャーンプ。
アンド、キャーーーッチ。まさかの……前歯で!!
「うっほほうほうほ、ぱこぱこぱこぱこだおーん!!」(@咲の着メロTHEゴリラのドラミング)
そして華麗に着地した彼女はタマネギで口ん中しゃっきしゃきさせながら、敵に威嚇のドラミング。
「おひゃひゃひゃはやひゃ!! ひゃはやはははひゃほ!! はへほのをほまふにひたひゃ、あひゃひゃはひゃ」
「ちょ、言えてない一切何も言えてないから! 落ち着け! まずは飲み込むのじゃ!」
「おま……うっウプッ……ぐっ……ふう〜……よし。お前たち!! いたずらはそこまでよッ! 食べ物を粗末にする奴はあたしが許さないんだからね! 必殺のギネヴィァーンナッコウで倒してやるわよ!」
とーう!!
むっちりボディの悪魔は走りだす。
投げつけられたフライパンを弾き飛ばし、レモンを丸飲みし、トマトを前歯で受け止め噛みつぶし、ビジュアル的に顔面を物凄い事にしながら、次々と向かってくる手ディアボロどもにギネヴィ、ギネヴィ、ギネヴィァーーンナッコウッッッ!!!
傍らで、アスターは思いっきり男物の三つボタンスーツなどを「これどうかしら☆」みたいにあてがわれたりしていた。デートか。
「ええいやめんか! 試着などせんわー! こら、持ってこんでいい! 持ってこんでいいと言うとろーに!!」
戦う本能は何処へ行ったのか、むしろ元々薄目だったのか、いわゆる草食系ディアボロだったのか、すっかりアスターの服選びに夢中になっている手ディアボロだったが、それはそれで確実に別の意味でアスターを追い詰めていたのである。
だってなんか……手どもが女芸人かってくらいの動きで逆セクハラしてたし。
「逆とか言うなー! わしは……わしは女じゃー! 見目麗しき女性なのじゃーー!! 見て分かるじゃろうが、この節穴ハンドどもめがあぁぁぅ、う、うぇぇぇん」
あーあ泣いちゃいました。
手ディアボロどもは、ちょっとシーンとしてぷるぷる。
そんな仲間達をかき分けるようにして一匹のディアボロがふわふわと近づいていき、泣き崩れる彼女の肩をポン、と叩いた。
「……な、なんじゃ……まさか……まさかおぬしわしを慰めてくれるのか?」
手は頷くようにぴょこんと指を曲げると、ふわふわとどっかに飛んで行き、何かを持って帰って来た。
ポスンと彼女の手元に投げる。
「こ。これは……ほ……豊胸ブ、ラ……?」
タグを見て、茫然とするアスターに向け、手はビッとサムズアップを。
「バストアップグッズかこるらあああああ!!」
鬼の形相でくわああと立ち上がったかと思うと、長い髪を振り乱し、首根っ子ならぬ手首根っ子をひっつかみバッシバシその辺の物へと叩きつけた。
「全部じゃ! 全部捻り潰してやるからの! 覚悟しろ! こんな……こんな人間どころか悪魔にも有害なこんなものはこの世から一匹残らず駆除してくれる!! わしの……わしの純情を散々弄繰り回した報いはその命を持って償って貰うぞこの糞ディアブロどもがーーーー!!」
どっがらがっしゃーんぐっしゃんめにょんめにょん。
なんつって。
二人が手ディアボロと楽しく(?)お戯れになっているちょうどその頃。
火冬達のお戯れもまた、クライマックスを迎えようとしていたっていうか、火冬の服が下着状態だった。いろんなもんがエキサイティンッしかけていた。
「俺初めてなんだから!! いろんな意味で(ショート依頼的にも)初めてなんだから!! もっと優しく接してくれても……」
「いえ大丈夫です! 数が多くとも、所詮は低級ディアボロ! 先輩は悪戯なんかに負けたりしないですよ!」
しっかりと携帯カメラを向けながら、鼻息荒く微笑んでいる妖艶かつIカップ豊満の美……え、誰?
「莉凛です☆」
カメラ目線(?)でそれだけ言って、また携帯カメラをうふうふ言いながら見つめる莉凛。
そう。つい先程まで三つ編みおさげに丸眼鏡の地味ィな風紀委員風味だったこの彼女。
実は、泣く子もすっかり骨抜きになっちゃうっていうアレで有名な、超ド級の淫魔型悪魔だったのである。
普段はそれを隠すために地味ィにやってる彼女だが、攻撃的なまでのナイースバディもオーラドレストっちゃうと出現しちゃうって事で、つまりこれは、光纏後に現れちゃった莉凛の真の姿。
火冬のあまりにあまりなやられっぷりにテンション上がっちゃって思わず光纏しちゃった莉凛の真の姿だったのだ。
「っていやもう負けてんだって既に! これ以上やったらもう負けるとか負けないとかの問題じゃなくなるくらいには負けてんだってほんとにーーー!」
『もっみもみのぺっろぺろやで〜〜』
「ちょ、白夜さんやめて! 妙に色気のある声でナレーションすんのやめて見ないで撮らないで! 恥ずかしぬぅアーーーーーッッ!」
ピー。
(映像に不具合が映り込みかけたため、現在自己テラーエリアを発動し映像を調整をしております。皆様にはご不便をおかけ致しますが、何卒ご理解の程お願いを申しあげます)
ピー。
……10分後。
やたら血生臭いビジュアルの戒姉さんがアサルトライフル片手に微笑んでいた。
「まあ……それなりに面白い仕事ではあった」
そしてピッとサムズアップを。
「一匹もモノに出来なかったけどな!」
「駄目じゃん!」
「ビシビシしごいてたら、最終的には誰もいなくなっていたよ……ははは」
「うん姉さん、目のハイライト消えてるから怖いから」
食材コーナーからぶんどって来たらしい林檎をもしゃもしゃやりながら言う咲。
「バァァァァアアストアップゥゥゥぅゥゥゥ」
傍らでちょっと壊れちゃってんのか、意味不明な叫び声を上げているアスター。
って所からちょっと離れた冷蔵棚の影で、しくしくしつつズボンはいてる火冬。
「災難だったわねぇ。男だけってのが何ともマニアックなディアボロだったわよねぇ……それとも女性相手じゃ悪戯で済まなくなるからっていう大人の事情だったのかしら………ねえ?」
そんな彼に向かい、意味深に微笑みかける白夜。
「今日頑張ったご褒美に、慰めてあげても、いいのよ?」
そして着物の襟をチラリズム。
「あーそれいいかもですね! そういう事なら私もご一緒しますよ、先輩!」
これ見よがしに携帯の画面を翳して見せる、莉凛。
「りーりーんーー!! お前ほんっとマジでいい加減にしろよなあああ!! それ絶対消せよ! 絶対に!!」
●こうして。
傍迷惑なディアボロは、撃退士達の様々な激闘(笑)によりしっかりと殲滅されたのだった。
おしまい☆