●慌ててテレビつけたけどもう映画が始まっちゃってた時の雰囲気でどん。
「宝もいいが罠がどんなもんか楽しみで仕方ないぜー!!」
海城 恵神(
jb2536)が物凄い勢いでバビューンッって風切って飛んでいた。
狭い洞窟の内部を高速で、だ。
視界の隅を圧迫してくるごつごつとした壁! スリル満点。かと思えば一気に抜ける視界!
「さあ! 罠でもなんでもどんとこい! 私が宝に一番乗りしてやけくそぉっ?!」
って思ったらいきなり、ぶううううん、とかその場で何かの反動受けたみたいに右手軸にして回転し出す恵神。凄まじい勢いで飛行してた分の遠心力を受け、そのまま、目の前の壁へ激突ッッッ!!
があああんんんっ!!!
ありえないくらいの音と共に、ギャグ漫画みたいに「きゅー」言いながらその場へ崩れ落ちた。目がバッテンになってるのもさることながら、思いっきり流血してますけど大丈夫ですか。まだのっけなのに。
「な、何が起こった」
えーそれでは洞窟内に設置された隠しカメラ(見物用)を巻き戻してみましょう。
高速で飛んでくる恵神。飛行中に何か叫ぶ恵神。の手を壁に設置されたトラバサミがバシッ!
ああ壁ぎりっぎり飛んでたんですね丁度。車の運転で物凄いなんかセンターラインぐいぐい寄ってっちゃう人みたいなもんでしょうか。
というわけでどうやらトラバサミに腕掴まれてたみたいですってだいたい洞窟内にカメラ設置されてる時点でこのお仕事がもう胡散臭いわけですけども。
「そんな、馬鹿な」
ですよね。でも。トラバサミ床にあるって誰も言ってなかったんですよね残念なことに。
「く、クショォ……ま、負けない! 負けないもぉぉぉぉ!!!」
「えなになに何の音!?」
っていうその頃、少し離れた別の場所からスタートしていた紅葉 虎葵(
ja0059)はおろおろと携帯電話を取り出していた。
今日はくじで出発地点が決まったり同行者が決まったりするということだったので、何かあった時は携帯電話で連絡を取り合おうと皆で打ち合わせしていたからで、こんな凄い音が鳴ったということは、誰かに何かがあった可能性が高く、今連絡を取らなければいつ取るんだ、ぶっちゃけもう連絡取り合うタイミングなんてないんじゃないか、くらいの勢いでもあったのだけど、では実際誰に連絡を取ればいいのかってところではたと止まった。
えーっと。とか思いながら仲間を振り返る。
ルーガ・スレイアー(
jb2600)がなんかスマホ画面をシャッシャシャッシャしていた。
ルーガ『今洞窟なう! 地震なう!! ちょー怖いなう! (((( ;゜д゜))) みんな、大丈夫か?!』
フォロアー『こっちは大丈夫だよー』
フォロアー『えー地震なんてあったのー』
ルーガ『でもお仕事だから頑張るぞ。落とし穴だって全力で飛んで回避しちゃうぜ! (*・∀-)☆』
ルーガ『なう( ´∀`)』
えーっと。と虎葵は小首を傾げ、呟いたのだった。
「でも多分、落とし穴はなかったような……」
「えっ、そうなのか!」
「でも大丈夫っすよ!! 全然大丈夫っすよ!!
一方こちらは、今日もすっかりウサたんな大谷 知夏(
ja0041)が、もっこもこの手ェ突き出して、ぷるぷるしながら小石とか投げてるエナ(
ja3058)を励ましたりしていた。
どうやらエナは、小石を投げて前方の罠などを確認したりしているらしいけれど、それはまあそれとして、ポケットが凄い勢いで膨らんでいた。小石で。
まあ投げて大丈夫だった分の小石は拾うとしても、いちいち進む前に投げるとしたら小石けっこういりますよね、って感じでいっぱい持ってきたせいなのだけれど、膨らんだポケットのせいで身動きがだいぶ取り辛そうだった。
「も、もう全部捨てちゃうっていうのは……!」
思わず、そんな事を口走っちゃう大胆不敵ポジティブガールうさたん。
「きっと大丈夫っすよ! だいたい大丈夫っすよ! どんどん行くしかないっすよ! 大胆に行くしかないっすよ!! むしろ知夏はお宝を入手した報酬で夏に向け『涼しい構造』の全身着ぐるみを購入するんっすよ! だから負けてらんないっすーーー!!」
思わずそんな本音もチラリズムしたけどもまー動機が何であれ頑張ってくれるのはいいことだ多分。
ただ、涼しい構造ってどんなんなんだろー……まさかシースルうさた……。
「あ、いえ……そうですね……では私のことはお気になさらず……どうぞ先に進んで下さい」
とそんなわけで今回は、(いろんな意味で)不慮の事故が重なり、エナはこんな所で脱落フラグを立ててしまうんである残念である。
なんて頃。
現在、その抜きん出た素早さで一番手を行く黒猫・忍者(fm7927)は、進もうと思えば進めるけどなんかって感じで立ち止まっちゃったりなんかしていた。
思いっきり見える位置に天井からぶら下がったタライが見えちゃったからである。
あんな見るからにタライ! 思いっきりタライ! 完全に安っぽい金色のタライ!
(この明らか過ぎる人工臭……胡散臭い。胡散臭過ぎる)
黒猫フェアーから一瞬我に返っちゃってなんか、黒猫の着ぐるみの中で思わずきりっと真顔になるカーディス=キャットフィールド(
ja7927)。
いくら移動力が他の参加者達を圧倒していてもあんな完全に見えてるタライに一人で当たりに行く自分どうなの、そんな自分許せるのってそういう問題なんであって最早移動力の問題じゃなかったっていうかだいたい黒猫の着ぐるみ状態でんーな早いってどういうことなのって時点でなんかもう移動力の問題でもなかった。
だっていや分かりますやん、と。
あれ明らかに落ちてきますやん、と。絶対落ちてきますやんと。
(いやでも……ここは思い切り楽しむのが勝利への鍵……つまり私はあのタライに当たりに行くのです!)ぐっ。
なんて黒猫soulを取り戻し決意新たに拳を握るカーディス。
の横を物凄いふつーの「無」状態の顔でさわーって歩いていく人影→セレス・ダリエ(
ja0189)である。
今日もお人形さんのような抑揚のない表情でめっちゃ姿勢良く歩いていく彼女は、もちろんタライを思いっきり頭に受け一瞬ガクッてなりはしたものの、物凄い普通に五歩くらい、歩いた。
(っていうガン、ガクッスルーの映像が瞬間最高視聴率を獲得したためDVD化の際には、二倍速リプレイが三回程挿入されます)
そして。
何事もなかったかのように振り返った彼女はまだガロンガロンって地面叩いてるタライを無表情に見下ろし、カーディスを見て言った。
「成る程。伝説のお宝というわけですか。そうは言っても好奇心とか無いですし、別に一目見てみたいと思わなくもないですし、見てあげても良いかな。程度です。ええ」
タライ受けた後一発目に言う台詞にしては完全におかしい事もさることながら、意志的なものがマイルドにぶれぶれだった。
打ちどころが悪かったのかも知れない。
しかも何だろうこのチワワの物言わぬ訴えみたいなガン見。大きな目でガン見。等身大黒猫ガン見。
「……………………」
(あれっ何この変な空気! 何この変な空気!)
って二回思っちゃうくらい変な空気で等身大黒猫と等身大人形は見詰め合った。一分くらい。
「あばばばばばっばばばばばばっばばばっ!!」
(っていう一分で撃退士は一体どれくらい動けるのか、っていうのをお届けするため、ここで神恵さんが「何食わぬ顔で他の石像に紛れつつも触った途端びりびり感電しちゃう石像」に触って感電しつつも、「腹いせに額に肉書いてやるぜ!」って爪先立ちでマジックの先だけを何とかかんとか石像の額に当て、プルプルしながら肉と書く健気な様子をお届け致します。チャンネルはそのまま!)
●っていうその頃、ルーガさんは思いっきり顔面強打してました。
え、こんなギャグ漫画みたいに思いっきり顔面打つ人いるのってくらいに思いっきり。ガツッて。しかもその後平になった階段でしゅるーって。
そうつまり、踏みこんだ途端、階段が平になったからこうなったのだけれど、だいたいどうしてそんな階段踏みこんじゃったのかと言えば、スマホに夢中ってたからで『これでお宝ゲットしたら来月のソシャゲ課金はよゆーだぞーv(o´∀`o)v』とかソーシャル的なあれに書いてたからで、例え光源対策ばっちりしよーが足元見てなきゃ前方不注意でこれはもうスマホガン見し過ぎて電柱にぶつかる人くらいしょうがない。
「ハッスマホッ、大丈夫か!」
自分は鼻血垂らそうと、真っ先に心配するのはスマホなんてもうスマホ協会から表彰されてもいいくらいですよね。あるかどうか知らないですけどスマホ協会。
とかルーガが思いっきり引っ掛かってくれたおかげでこちらは被害を免れた葵虎は、階段下で卒業生ダアトと遭遇していたのだけど、相手がわりと覇気ない感じでぼーっと歩いてきたのも相俟ってか、
「あ! もしかして先輩の方ですか!? こんにちはこんにちは!!!」
なんてまるで、廊下ですれ違ってる雰囲気で挨拶していた。
のを一瞥し、無言で、クリスタルダストってくるダアト。
「ぎゃあああああ!!!」
なんて思わず頭を抱えた葵虎の前に立ちはだかる、ルーガ。リブラシールドを緊急展開して振りかかってくる氷の錐をしっかりガード。
「せっかく挨拶したのにぃ……ひどおおおおい!!!」
の背後から、フレイムクレイモアを振りかぶり飛び出して行く葵虎。怒りなのか何なのか白いオーラを放ちながら、炎のような色の分厚い刃を振り回す、振り回す、振り回す!!
辛うじて避けていたものの、最終的には独楽の如く回転する葵虎の勢いに吹っ飛ばされ尻餅つくダアト。
「……はい。ごめんなさい」
謝る気全く感じられない様子でっていう前にそもそもやる気すら全く感じられない感じで呟いて、すごすごと去って。
行ってるその時、一方の知夏は鬼道忍軍との戦いに勤しんでいる。
現在敵は、生命探知でばっちり対策済みだった知夏に奇襲をかけることが出来ず、むしろ先にシールゾーン発動されてもうすっかりスキル使えない状態。
「覚悟するっすよ〜!」
そんなお間抜けな卒業生へ狙いを定めミルファクの弦を引く知夏。手を離した途端アウルで出来た光の矢がしゅるしゅると勢い良く飛び出して行った。
のを、辛うじて避ける鬼道忍軍。「照準が甘いんじゃないのか」って言おうとしたその矢先、地面に引かれたワイヤー罠に引っ掛かるお間抜けっぷり。
「それも見越してのことっす!」
伊達にレベル高いわけじゃないぜ知夏だぜ。
「さあお宝には一番乗りするっすよ〜!」
続けてミルファクから矢を放つと、頭上にあったタライや網の罠を正確に打ち抜いた。
後のことは書かずしても分かるだろうが、あえて書くと、タライでへろってなった後網に引っ掛かってなんかもうぐだぐだになった。
「逆にこう考えるっよ! 罠に掛かって、ソレはソレでオイシイと! それじゃお先っす! ぷぷぷぷ」
っていうその頃、恵神はただの石像に手書きのプレートをかけたりしていた。
『←この先 秘境温泉天使の湯』
で、なんか物陰に隠れてこそこそ辺りの気配を窺ったりしていた。
ちなみにあのプレートの矢印の先には、元は泥の沼で、今はドライアイスめっちゃ入れられて温泉もどきになったでもやっぱり泥の沼があるのだけれど、いやんーなのに引っ掛かる人なんて……。
とそこに現れたアスヴァンさん。「え? 秘境温泉天使の湯?」ってプレートの文字、思わず二度見。
っていう背後からすかさず放たれる恵神のソニックブーム!
バシーッ! って思いっきり押されて、最終的に沼にどぼーん。
「ぬあああんだああこれぁああ」
「ふっ。さすが程良く間抜けだったな! だがしかしこれも、完璧過ぎる私の罠があってこそ! 自分が怖いぜ! あばばあばよ!」
で、言うだけ言い倒して恵神さん、光の翼で必死の逃亡。
しているその頃カーディスは、目から石像いや目から光線石像と対峙していた。
と思ったら、唐突に烈光丸を構え出した。洞窟の中、烈しく光り輝く美しい刀身。
「さあ、来い……!」
ってまさか。打ち返すつもりなのかカーディス選手。それはいくらなんでも無茶……っていうかなんで今このタイミングでそんな無謀な事にチャレンジしようと思い立ったのか、目から出た光線見てなんでそんな事思い付いちゃったのか、その精神状態の方が心配なのだけれどとにかく。
物凄い「(・ω・´)キリッ」顔でホームラーン予告。
そして振りかぶ、出たーーーーー!!! 光線出たーーー!!
「あばばばばばばっばばば」
まあ打ち返せるわけなかった。なんか、物理的に。いくら何でも。無理だった。それは。
っていうくだりを物凄い冷静に眺めてるセレス。
っていうか今追いついてきたセレス。
を追ってきたナイトウォーカー。
「…………」
ちなみにこの卒業生と遭遇した際のセレスは、魔法書広げてささささささって。物凄い無の表情でさささささって全力で後方へ行った結果、OBの人見失ったりしていませんよ。ええ。敵前逃亡とかではないですよ。ええ。偶然の戦略的撤退です。だからセレスさんはもう一回魔法書広げるわけです。とりあえず広げるわけです。
「今だ! \トラップカード発動!/」
とかやってる背後から、壁走りで近づいてきたカーディスどーん。ナイトウォーカーの背中どーん。石像にどーん。光線出てどーん!
「あばばばばばばばば」
「さあ今の内です! 行きますよ〜!」
なんて間にも、知夏が宝箱の元へと到着していた。
「やったー! 知夏が一番乗りっす〜!」
ガッツポーズ! と思ったらそこへ飛び込んでくる恵神。凄い勢いで背後からうさたん羽交い絞めっしてます。
「待って! 待ってお願い! 三分待って! 私の天使汁を入れた小瓶と宝の中身を入れ替えるから待って!」
待つわけないですし。
言ってる間に皆到着しちゃいましたし。
●そうしてやっとこさ見つけた宝箱の中に撃退士達は光り輝く宝石を見つけたのです。
ただどっからどう見てもわりと普通の宝石でした。
あと手紙的な物が一緒に入ってました。
「皆さん、お疲れ様でした。今日の皆さんの奮闘は楽しく拝見させて頂きました。お察しの通り、実はこれは本物のエンジェルのナミダではありません。本物が何処にあるかは未だ誰も知らないのです。見つかる気配すらありませんが、近頃は、嘘噂でも僕達(俗に言う大金持ちっていう素敵人種ですが)はこうして楽しめるのでもういいんじゃないかなって思い出している次第です。ありがとうございました」
薄々そんな予感はしていたのです。ただ、お礼言われても全然嬉しくありませんでした。
「騙しちゃってごめんなさい。でも今回も本当にとっても楽しかったですよ! グッジョブ! シーユーアゲイン!」
いやもう二度とごめんです。
そんな顔で撃退士達は手紙をびりびりに破ったのだった。
おしまい