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マスター:カナモリ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/04/19


みんなの思い出



オープニング



「ぼよんぼよんしてる地面か」

 小テストの採点をしてる金子の向かいで、今日も、覇気という覇気が蒸発してしまったかのようなアンニュイな風情の長髪の美形は、まるで明日の天気について独り言でも述べるかのように呟いた。

「ぼよんぼよんしてる地面か」

「西島君」
 金子は、小テストの採点作業からは目を上げず、手を動かしたまま向かいの男の名を呼んだ。
 赤いサインペンが、しゃわ、しゃわ、と軽やかな音をたてながら、紙の上を滑っていく。
「うん何だろう金子君」
 返事をした西島の方も、パソコン画面を見つめたままだ。
「あのさ」
「うん」
「いい歳した大人が真顔でぼよんぼよんしてる地面とかいきなり口走るのやめて」
「なんで」
「間抜けさがじわじわ来て仕事に集中出来ない」
「っていうかごめん口走ってた自覚が既にないんだけど」
「だったら尚更気をつけた方がいいよ、そんな事外で口走ってたら絶対ひょうきんな人だし」
「でも金子君」
「ええ何でしょー西島君」
「意外と笑いごとではないと思うんだけどこれ」
「いやむしろぼよんぼよんしてる地面とか、笑いごと以外でどう処理すればいいの」
「地面っていうか畑だけどね、朝起きたら畑全面がぼよんぼよんになっちゃってたってゆー」
「言われなくても知ってる。僕も見たから」
 解答用紙から目を上げて、テーブルを挟んだ向こう側の西島を見る。
 それから、椅子の背もたれに踏ん反りかえった。
「実際、畑の持ち主の人も笑ってたしねあの時」
 そう言った傍から脳裏に浮かぶ、畑の持ち主のオジサンの顔。

 いやー朝起きたらいきなり畑全面ぼよんぼよんでしたからね。
 あとなんか良く分かんないサーバントに浸食されてましたしねあはははは。

 朴訥とした、農業一筋で生きてきましたみたいな帽子の赤ら顔のオジサンは、精魂込めて耕し続けた畑が朝起きたら豹変していた事実を目の前にして、なんか壊れたみたいに笑ってた。
 今朝、現場の偵察に赴いた西島に同行した際、見た光景だ。

「言われてみれば笑ってたね」
 笑いごとではないよと人に注意してきたわりには、どうでも良さそうな無表情で冷たく言った西島は、もうパソコンのキーボードを叩いている。
「朝起きていきなり自分ちの畑全面そんな事になってたらもう笑うしかないんだろうね」
「確かにちょっと面白いしね。いやぼよんぼよんてみたいな」
「人んちの畑をぼよんぼよんにした天使のビジョンは一切分からないけどね」
「しかもぼよんぼよんだけじゃないから、むしろぼよんぼよんはおまけだからこの仕事」
 西島は、無言でくるん、とパソコンを金子に向けた。
 ポン、とエンターキーを押し込むと映像が流れ出す。



●そんなわけで今回のお仕事はぼよんぼよんした広大な畑でのサーバント退治になります。

 流れ出すポップなバックミュージック。
 そして、映し出される畑の映像。と、CGで作られたちっちゃい博士っぽいビジュアルの西島。
 そのCGが画面上を右往左往しながら喋り始める。


 今回は、とある山奥の中にある小さな村の畑が現場となっています。
 風光明媚です。っていうか田舎です。
 で、問題の畑はこれです。
 そう、今みなさんの目の前に広がってるこの畑なわけです。っていうか畑だったもの、なわけです。
 御覧の通り現在は、畑は最早畑なんて言える状態ではなくて、ピンクと紫の間みたいな色に変色しちゃったりしています。
 この地面、踏み心地はまるでトランポリン。
 けれど問題はこの、トランポリンみたいな踏み心地のこのぼよんぼよんした地面、ではなくてそこから伸びてくる蔓みたいな根っ子みたいな、地中に埋まった敵の身体の一部にあるのです。

 敵はこの畑の向こう側に居ます。
 あれです。デカイです。三メートルはあろうかという、山みたいな形のもっこりぷるんぷるんとしたえー……何かです。
 数は一体。畑からにょっきり生えてる感じでそこに生息していますね。
 この山みたいな形の本体自体は動きません。代わりに畑の中を縦横無尽に走り回っている敵の、手っていうか足っていうか蔓っていうか根っ子っていうか、とにかくそんなようなものが畑の中からにょきにょき伸びてきて、侵入者を攻撃してくるわけです。
 つまり、畑全体が敵、と言っても過言ではい状態なわけですね。
 じゃあこの畑の中に入らなきゃいいのかっていうとそうでもなくて、畑に入らなくたって敵だって頑張ってきますし、側道通ったりしても、埋まった体の一部にょっきー伸ばして捕まえてきますし、だいたい地中に手足を埋めているサーバントの事を想うと、なんとなくそれはやってあげてはいけない気がするんです、大人として。
 正義の味方の変身シーンでは、敵も襲ってこなかったりしますし。
 しかもこの、蔓みたいな体の一部を引きちぎったりして弱体化させておけば、本体と戦っている最中も有利だと思いますので、みなさんにはやっぱりあえて、ぼよんぼよんの地面を突き進んで行って貰いたいと思います。

 ただ、面倒臭いのはこの蔓っていうか根っ子っていうかが、ただ手足を取って進行を妨害してくるだけではない、ということにあります。
 そこは腐ってもサーバント。
 絡めたその蔓みたいな根っ子みたいな部分から、あなたの何かをちゅっと吸収してくるわけです。
 で、花を咲かせちゃいます。
 咲く花は、その人の個性により様々らしいです。みなさんはどんな花を咲かせるのでしょうね。楽しみですよね。でも最悪楽しみじゃなくても花は勝手に咲いてきますし、あと、どんな花が咲こうが今回の花は無駄に喋ってきます大丈夫です間違えではありません喋ります無駄に。
 面倒臭いです。
 花咲くだけでも鬱陶しいのに、その上喋ってきますから。
 仕事するって大変ですね。大変ですけど仕事ですから皆さんには頑張って貰いたいと思うわけです。
 で、この喋る花ですが、咲いた途端にねだったりせがんだりしてきたりします。みなさんの内側に秘めた願望とか欲望を暴露して、更にその場にいる「誰か」にねだったりせがんだりしちゃうわけです。
 この「誰か」は、地中に埋まった蔓で繋がった先に居る誰かになるらしいです。
 あの人にねだりたいなんて祈りが通じるのかどうかは神のみぞ知るという奴ですが、まあ地中で繋がってるもんは見えませんし、基本的にはランダムです。
 初対面でも、旧知の仲でも、甘酸っぱい仲でも、敵を倒すためここは協力し合って頑張るしかないですし、それで一体どうなるのか、何を思われてしまうのか、どんな残念な事になってしまうのか、あるいは素敵な事になってしまうのか、誰が得をするのか、どんな自分が露呈してしまうのか、そんな些細なことは立派な撃退士で大人の階段を昇ってる最中の皆さんなら、きっと気にせず立ち向かってくれると思います。

 と、今回はこんな感じのお仕事です。
 それではみなさん今日も頑張って下さいね。


 現地映像をバックに解説を喋っていたCG西島が、覇気のない笑みを浮かべ手を振っている。
 そにまま画面はフェイドアウト。
 金子はパソコン画面から目を上げた。
 取りたてて言うべきリアクションも見つからなかったので、無言で採点の作業に戻ると、西島もまた無言でパソコンをひっくり返し作業に戻った。
 かたかた、しゃわしゃわ。
 二人の出す音が、マンションの部屋の中に暫くの間、響いた。






リプレイ本文





●撃退士がトランポリン的な物でぼよんぼよんする時に大事なのは勢い余って地面を踏み抜いてしまわないことなんじゃないかな。って。
 そんな事を一条 ケイ(jb4753)は考えていた。
 めっちゃ渋いクールな顔でいやさ冷酷な気合い十分な顔で。
 ところにぼよーーーーんとフレームインしてくる、派手なドレスの人。
「弾む大地か。新しいな!」
 カッカッカッ!!!
 と、黄門様的な笑い声で笑うアレクシア・フランツィスカ(ja7716)さんである。
 笑い声は完全に黄門様だったけれど、その容姿は全然黄門様ではなくてむちむちナイスバデーの妖艶な美貌の女性で、どちらかと言えば純洋風のぱたりろとかばんこらん的なあれだった。
 そんな美貌の女性が、フリルとかフリルとかレースとかフリルとかシルクとかとにかくもうゴテゴテした感じの青いドレスのあちらこちらをぶわっさぶわっささせながら畑のトランポリンをぼよんぼよんしているのである。
 いや、ぼよんぼよんなんて言葉は失礼だ。
 本気だ。全力だ。力強くトランポリンを踏みこみ、背筋を美しく伸ばし、空に跳躍する。っていうかトランポリンじゃなくて畑なんだけど。
 さすが、子供の頃兵舎の天幕をトランポリンにして遊び倒し部隊長にどやされたという経歴を持つだけのことはある。ぼよんぼよんにかける情熱がもうそんじょそこらの撃退士とは違うのだ。
「そして見ろ! これが必殺の!」
 アクロバt×△……◇pお○……×モrc……ォース!!
 ブレイクするにも程がある何らかの必殺技を叫んだ彼女は、次の瞬間思いっきりトランポリン(っていうかだから畑なんだけど)を踏み込み、上空高く高く、飛んだ。そしてくるんと宙返りすると、高速で回転しながらしゅるしゅるしゅるーーーーーって落ちて来た。
「まずいっ!! あんな全力で地面をきりもみしたら……!」
 めっちゃ渋いクールないやさ気合い十分な顔と声で戦慄するケイ。
「地面を……地面を踏み抜いて汁が……っ!」
 なんて。
 言ってる向かいでぶわああさ、と空気を吸いこみ、傘みたいに広がるアレクシアのスカート。
「!!!」
 まるでパラシュートした人みたいにひらひらとさっきの勢い嘘でしたみたいな優雅さでアレクシアは落ちて来たのだった。

「すごいの〜、穴から落ちる時の、不思議さんちの、アリスさんみたいなの〜」
 ぼよんぼよん畑からうようよ飛び出す蔓に絡まれながら、むしろわっしょいされて運ばれて行きながら、望月 忍(ja3942)は暢気に言った。
「カッカッカ! どうだ、凄いだろー!」
「確かに、凄いの〜、でも私今、いろんな所蔓に引っ掴まれて、ちょっと大変〜、わ〜降ろして〜、じ、じゃあ皆〜あ、後でね〜」
 スカートひらひらさせながら、手を振りつつ横切っていく忍。
 困っているのは辛うじて伝わってくるものの、大変感はあんまりなかったけど。
 っていう天然な感じがだいぶ可愛いものの、危機感ゼロだったけど。
 大丈夫なのだろうか。

「………………」
 とかいう諸先輩方のいろいろにちょっと言葉を失い、でも顔はクールなままでちょっと黙りこむケイ。
 だからこんなお仕事ではなくて、もっと有意義な仕事にケイのキメ顔は使われるべきだったとか思うと残念でならないし、四国作戦終わりで初めて受けた個人的なお仕事がこれだったなんて可哀想でならないし、でもこれもう仕事受けちゃったからにはやって貰うしかないので今日はこのままもう頑張って貰おうと思うわけです。
 だからここは、そんなキメ顔のケイの横顔越しに、あえて更に紅鬼 姫乃(jb3683)の様子もお伝えしておこうと思うわけです。

「あはははーおっきなトランポリンだー、わーいわーい遊ぼ遊ぼ!!」

 見て頂いてお分かりの通り、様子が完全に「お子様がひしめき合って隣の奴が飛んでんのか自分が飛んでんのかもう分からない具合で弾まされてるやつ」だったけれど、そういう子供たちがもれなく楽しそうなのと同じく、姫乃も楽しそうに弾んでいるので多分これはこれで成立していると解釈して頂ければいいのではないかと思う。
 でもこうなってしまうともう自分では止まれないスパイラルになることを姫乃はまだ気付いておらず、つまり、トランポリンの難しさというのは、自ら発進でいくかいかないかみたいな所にあって、あんまり勢い良く飛び続けたら何処まで飛んじゃうのかって怖いし、地面抜けるんじゃないかって心配もあるし、でも受け身になちゃったらその途端弾まされる奴になっちゃって自分で止まれなくなっちゃうっていうこの微妙なバランスが。


●どうでもいい。どうでもいいんですごめんなさい。うっかりしてました。ここへきてまだ全くサーバントの能力に触れていないことに気付きました。
 だからこれはトランポリンではなくてトランポリンみたいな畑で、敵であるサーバントの身体の一部だったし、問題はぼよんぼよんだけじゃなくて他にもあって、それらで一体どうなるかというと、先程も少し述べた通り、こうなる。
「うわ本当にっ……ぼよんぼよんしてやがるっです」
 こちら、美少年エロ画z……いえ、えー無理矢理迫られてる美少n……いえ、えー。両手をがっちり蔓にホールドされた格好でもがく、エドヴァルド・王(jb4655)さんです。
 そう。この畑はぼよんぼよんしているだけではなくて、さっき忍もわっしょいされちゃってたけど、とにかく面倒臭いくらい蔓がうようよしてるんである。で、その蔓は撃退士の身体から何かをちゅうちゅうと吸ったりなんかして花を咲かせて、皆さんの欲望をマイルドに露呈させてしまうんである怖いね。

 そしてこちら、相変わらず両手がっちりホールドで足首もがっちりホールドされてるエドヴァルドさんです。
 気が強そうな緑色の釣り目を細めながらもがく姿はとってもセクs……じゃなくて、上気した頬がとっても可愛……じゃなくて、えー……とっても大変そうです。最初こそ最初こそ金色の大剣「シュガール」で絡んでくる蔓をばっさばっさしてはりましたが、その気の強そうな顔つきとは裏腹に、闘志よりも譲り合い精神が先に出ちゃう所が災いしたのか、あれよあれと言う間にこのざまとなってらっしゃいます。
「く……そっ……ちょ、やめやがる、ですっ……! ひっ」
 ぼよーーーーん。
 そうして蔓に手足を取られたエドヴァルドは、地面に叩きつけられるようにして押さえつけられる。
「くっ……」
 両手を後ろ手にとられながらも、這い回ってくる蔓から逃げるようによじり、決して屈服しない芯の強さを想わせる瞳で敵を捉え。
 けれどその細身の身体を捉えた蔓は遠慮も会釈もなく服の隙間から侵入してきて肌に吸い付きちゅうちゅうと。
「うぁーーーーぁっ……っ!!!」

 大丈夫です。きっとぎり大丈夫です。サーバントとの戦闘シーンです。成立してます、ぎり成立してます、彼ちゃんと服とか着てますし!
 ですよね! アレクシアさん!
(なるほど。敵国に捉えられた美しい王子と残忍な敵国な王の仕打ちか……! ありだ!)
 なしです分かってますごめんなさい。
 でも、アレクシアさんが獲物を狙う鷹の如し腐った目をぎらぎらさせて見てらっしゃるんですよほんとですよ。
「ああエドヴァルド王! エドヴァルド王! なんという屈辱的なお姿!」
 ざわめきだす民衆。
 みたいな風情でざわめき出すアレクシアさんから咲いたとっても腐った色の(どんな色なんだろ……)美しい花々。
「俺は……オウではなくてワンでありやがる……です」
 知ってました、ごめんなさい。
 でも、「正直に言おう! 可愛い子が蔓にからめとられるなんて魂が歓喜ですごっつぁん!」なんて本音をぶちまけてくれたオトコマエなアレクシアさんの熱意に打たれてしまいましたその心意気に答えたいと思いましたただこの件と「おう」「わん」の件は全く関係ないです重ねてごめんなさい。

「でも俺には……人にねだるような願望はねぇと思いやがるですから……大丈夫だと、思う、ですが……」
 ぐったりとした気だるげな(若干エロい)目つきで、おずおずと辺りを見回すエドヴァルド。
 が。しかし、蔓から咲き誇った青紫系の花々は、無情にも青少年の青少年らしい欲望を露呈してしまうのである。

『このおどおどした性格にサヨナラしてぇんですよ! もっと男として頼られてぇんです! 守りたいんでやがるですよ! それで守った暁には、そんな女子の柔らかいむちむちした太股に膝枕されt』

「やめりゃああああああああ!!」←王さん(気持ちだけ)猛ダッシュ。「違ぇです! こんなコト思ってねぇんですっ!」
 目元を真っ赤にしてぶんぶん首を振るも手足はロックオンのままなのでじったばた。
「斬る! ぶった斬りやがるです、花っ!」
「手伝おう」
 そこへにゅっとフレームインしてくるイケメンせm……じゃないえーケイ様。
 ただ思い切り顔が逆むいてます大丈夫ですか。
「ひーーーーっ!!」
 確かにいきなりそんな体制で話し掛けられたらそりゃそうなる。
 でも、蔓に足取られて思いっきり逆さ吊りにされている状態にも関わらず、ケイは従容としたもので、
「問題ない。切れば済む」
 とか言った傍から打刀で蔓をぶった斬り、頭から地面に激突し、この間一切表情を変えず全てをクールな表情で立ち上がり、エドヴァルドの蔓だってバシバシ斬った。
「喋る花なんて、気色悪いな」
 そしてクールに一言。
 あり得ないくらいのキメ顔も、ここまでくると確かにちょっともうかっこいい。

「そう! 美形な男はそれはそれで美味しいが可愛い男の恥じらう姿のエエ感じに比べたら満月と新月の差はあるだろうそうだろうそこの立派な男の娘ーッ!」
 っていう間にも、アレクシアさんは蔓をずろずろずろーーーーっって引き出しながら振り向きざまに誰かをびしーっ!!!!!
 と指さした先には。

「設定。元々英国系ではあるがつい最近までスイスの寄宿学校に在中。表面上は勝気・我侭・唯我独尊の権化して行動するも内心は寂しがりや。学業・運動共に真面目に発揮して優等生足るプライドを自らに備えている。しかしながら支援の意味を心得てるが故に戦う際にまずは仲間の消耗の把握に務める為自らをアスヴァ」
 なんて設定とかの件でもうプレ的なあれの半分を使いはたしてしまったグレイシア・明守華=ピークス(jb5092)さん。

「あ、間違えた」
 ではなかったらしい。

 びしーっ。
 ともう一回やり直したアレクシアの指の先には、今まさに蔓に手足を取られやっぱりじったばたしている亀山 淳紅(ja2261)の姿。
「えええええ!」
 いきなり話振られて淳紅パニック。
 ちがうちがう自分違うからー!
 みたいな拒絶に思いっきり首を振り振り。万年赤面症の頬をもっと赤くして拒絶して振り振り。
 あら可愛い。
 音符型の髪留めがあら可愛い。
 でも別に女装が趣味の人とかでは決してなくて(似合いそうだけど)、ただうっかり、紅白’芸’合戦で女装姿を披露しちゃって、尚且つ成り行きでブラつけて依頼に参加してる所を晒されちゃったせいで、一部の心ない人達からソーシャルなんとかとかで「ブラの人」とか「ハムの人」みたいな呼ばれ方をしている少年なだけなんである。
 ほんと誰がそんなブラシーン晒したんでしょうね。いたいけな少年のイメージ壊すなんて悪い奴ですよねほんとに。誤解が蔓延するじゃないですか。ねえ。

「だから! ブラの人が定着してしまう前に今日はブラの人じゃない一面を見せに来た! 自分と言えば歌! これや! このイメージに戻すんや! いうわけで一番淳ちゃん、いっきまーす♪」
 それでは聞いて下さい、トランポリンポリンポリン。
 果たして彼は、跳び跳ねてるなかでどれだけ歌えるのか!
「トランポリン、ポッリンポリン♪ トランポよん、あふ、あ、ちょちょっと待ってアカン、そこはアカンちょ、こら蔓! アカ」
 ぼよんぼよんぼよんぼよb……。
 あ、ブラの人だ。ブラの人が運ばれていくよ。ブラの人が。
「があああ!!! ブラの人言うなぁぁぁああー!」
 切ない淳紅の絶叫と共に放たれるマジックスクリュー。

「ふふふ! さあもっともっと私の目を楽しませてくれ男の娘! っていうかもう可愛い娘と男の娘はパンチラしたりバニーさんになって私の目を楽しませてくれてもいいと思うんだ……!!」
 ふんぬーっ、てアレクシアさん、鼻息。鼻息出てるから。凄い出てるから。興奮し過ぎだから。外見の美貌なかったら完全にただのおっさんだから。落ち着いて。
 でもアレクシアさんが興奮しちゃうのも仕方ない。
「んっもうっ、邪魔しちゃっ、だめなの〜! 悪戯する、お手手は、やけど、させちゃうの〜」
 こちらごおおっと、フレイムシュートを炸裂させながらも、スカート危うくひらひらさせてる忍。
 の周りに咲き乱れた可愛らしい小花。
 達が虫の声みたいな合唱で可愛らしく歌いだしたそれに、「くぅくぅ♪」言って甘えてごろごろしてる姫乃。
 に向かい、『喉ってええよね……知っとる? 声の違いは勿論身体の大きさとかにも左右されるけど、大きくは喉の中にある声帯で決まってるんよ。凄いよなぁ! 自分ね、人が声を出すときの喉の動きとかだーいすきなんやー……だから……なぁ……よーく見せて、声だしてみてーや……』
 とかなんか妙に色っぽい声で淳紅の願望を喋る赤い花がすり寄って行き、かと思うとその蔓に絡め取られた淳紅本体も運ばれて行き。
「くうくうくうくう」
 姫乃から咲いた「甘えん坊願望の花」がそんな淳紅にすり寄って行き。
「でも不思議やねぇ、植物やのにどこで声だしてるんやろう」
 花に頬を撫でられながらうっとりとしたように呟く淳紅。
 っていうこのもう一体がなんかもう物凄いあれな秘密な花園と化してたりしたし、アレクシアさんはそれをずーっと絡んでくる蔓をぶっちぶちやりながら眺めている気満開だったのだけれど、いかんせん姫乃の尻尾に注意なのである。
「くぅくぅ! や、やめて、やめてよぅやめ……やめ……てって! 言ってるでしょォォッッ!!」
 ばああああん!!!!
 秘密の花園に突如として響き渡るファイアワークスの破裂音。
「仏の顔も三度までよ」
 いきなりキッと顔つきを変えた姫乃が辺りの蔓をぎっちょんぎっちょんにやり始めたのである。
「尻尾は駄目なんだから」
 彼女は尻尾を掴まれると大激怒するのだ。
 覚えておいた方がいい。



●こうして、踏んだり蹴ったりになりながらも本体に辿りついた撃退士達は、しっかりそれを始末したという。
「……ふ……ふふ……随分と愉快な真似をしてくれやがって……楽に逝けると思いやがったら大間違い、です」
 もちろん、オーバーキル気味に。
 で、蔓の件で負った傷なんかは、アレクシアとグレイシアが「ライトヒール」で癒してくれたわけなのだったが。
「ただすまん! ソウルの傷は癒せないんだ!」
 だって。残念。




 おしまい。










依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
ぴよぴよは正義・
望月 忍(ja3942)

大学部7年151組 女 ダアト
大切なのは楽しむこと・
アレクシア・フランツィスカ(ja7716)

大学部6年32組 女 アストラルヴァンガード
おねだりウエイトレス・
紅鬼 姫乃(jb3683)

大学部3年43組 女 ナイトウォーカー
コワモテボイス・
エドヴァルド・王(jb4655)

大学部3年227組 男 ディバインナイト
撃退士・
一条 ケイ(jb4753)

大学部8年188組 男 阿修羅
ArchangelSlayers・
グレイシア・明守華=ピークス(jb5092)

高等部3年28組 女 アストラルヴァンガード